(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134291
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース基板、および電子装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/18 20060101AFI20240926BHJP
C08G 59/06 20060101ALI20240926BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20240926BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20240926BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240926BHJP
C08L 71/10 20060101ALI20240926BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240926BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240926BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20240926BHJP
H05K 1/05 20060101ALI20240926BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08G59/18
C08G59/06
C08G59/14
C08G65/40
C08L63/00 C
C08L71/10
C09K5/14 E
C08J5/18
B32B15/092
H05K1/05 A
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044518
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智將
(72)【発明者】
【氏名】大葉 昭良
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直輝
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
4J005
4J036
5E315
5E322
【Fターム(参考)】
4F071AA41
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5E315AA03
5E315BB03
5E315BB04
5E315CC14
5E315GG01
5E322EA11
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】その硬化物が高い熱伝導性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物と、式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
【化1】
式(1-1)において、Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
【化2】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、
熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物と、
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
【化1】
式(1-1)において、Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
【化2】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化3】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、メチル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1~R8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項9】
発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、請求項8に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
【請求項10】
金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、請求項8に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
【請求項11】
請求項10に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【請求項12】
式(1-2)で表されるエポキシ化合物を含む、熱硬化性樹脂組成物であって、
【化4】
式(1-2)において、Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表す、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項16】
発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、請求項15に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
【請求項17】
金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、請求項15に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
【請求項18】
請求項17に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【請求項19】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂を含む、熱硬化性樹脂組成物であって、
【化5】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化6】
式(1-3)において、
Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
*は、連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(3)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化7】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は、連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1、R4、R5、およびR8は、メチル基であり、R2、R3、R6、およびR7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項23】
請求項20に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R1~R8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項24】
請求項19に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項25】
請求項19に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項26】
請求項19に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
室温で固形のエポキシ樹脂をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項27】
請求項19乃至26のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項28】
発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、請求項27に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
【請求項29】
金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、請求項27に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
【請求項30】
請求項29に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂シート、当該樹脂シートの硬化物を熱伝導性シートとして備える電子装置、当該樹脂シートの硬化物を備える金属ベース基板、および当該金属ベース基板を備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の高集積化や電子機器の処理能力の急速な向上に伴い、処理能力の高い電子部品からは多くの熱が発生する。そのため電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる熱対策が非常に重要な課題になっている。このような放熱対策として、プリント配線基板、半導体パッケージ、筐体、ヒートパイプ、放熱板、熱拡散板等の放熱部材には、金属、セラミックス、高分子組成物等の放熱材料からなる熱伝導性部材が適用されている。
【0003】
これらの放熱部材の中でも、エポキシ樹脂組成物から成形される熱伝導性エポキシ樹脂成形体は、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性等に優れているため、注型品、積層板、封止材、熱伝導性シート、接着剤等として電気電子分野を中心に広く使用されている。
【0004】
熱伝導性エポキシ樹脂成形体を構成するエポキシ樹脂組成物は、樹脂、ゴム等の高分子マトリックス材料中に、熱伝導率の高い熱伝導性充填剤を配合したものが知られている。熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、石英等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、金、銀、銅等の金属、炭素繊維、黒鉛等が用いられている。
【0005】
さらに高い熱伝導性が要求される場合には、エポキシ樹脂に特殊な熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性エポキシ樹脂組成物や熱伝導性エポキシ樹脂成形体が提案されている(たとえば、特許文献1)。また、エポキシ樹脂自体の熱伝導率や耐熱性を向上させることも提案されている(たとえば、特許文献2)。特許文献2では、メソゲン基を有する液晶性エポキシ樹脂等を重合することにより、熱伝導性を向上させた絶縁組成物を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-193504号公報
【特許文献2】特願2004-331811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献2に記載の樹脂組成物は、熱伝導性の点においてさらなる改善の余地を有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、特定のメソゲン骨格を有する化合物が、高熱伝導性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、金属ベース基板、および電子装置が提供される。
[1]式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物と、
を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
【化1】
式(1-1)において、Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
【化2】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である、
熱硬化性樹脂組成物。
[2]項目[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(d-EP)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化3】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
[3]項目[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7が水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[4]項目[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、メチル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[5]項目[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1~R
8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[6]項目[1]乃至[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[7]項目[1]乃至[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[8]項目[1]乃至[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[9]発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、項目[8]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
[10]金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、項目[8]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
[11]項目[10]に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
[12]式(1-2)で表されるエポキシ化合物を含む、熱硬化性樹脂組成物であって、
【化4】
式(1-2)において、Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表す、
熱硬化性樹脂組成物。
[13]項目[12]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[14]項目[12]または[13]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[15]項目[12]乃至[14]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[16]発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、項目[15]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
[17]金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、項目[15]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
[18]項目[17]に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
[19]式(3)で表されるフェノキシ樹脂を含む、熱硬化性樹脂組成物であって、
【化5】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化6】
式(1-3)において、
Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
*は、連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
[20]項目[19]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(3)におけるXは、式(2)で表される2価の基を含み、
【化7】
式(2)において、R
1~R
8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は、連結位置を表す、熱硬化性樹脂組成物。
[21]項目[20]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[22]項目[20]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1、R
4、R
5、およびR
8は、メチル基であり、R
2、R
3、R
6、およびR
7は、水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[23]項目[20]に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記式(2)で表される基において、R
1~R
8のすべてが水素原子である、熱硬化性樹脂組成物。
[24]項目[19]乃至[23]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化促進剤をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[25]項目[19]乃至[24]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
熱伝導性フィラーをさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[26]項目[19]乃至[25]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
室温で固形のエポキシ樹脂をさらに含む、熱硬化性樹脂組成物。
[27]項目[19]乃至[26]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[28]発熱部材と、
放熱部材と、
前記発熱部材と前記放熱部材との間に設けられた熱伝導性シートと、を備える電子装置であって、
前記熱伝導性シートは、項目[27]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、電子装置。
[29]金属基板と、
熱伝導性シートと、
金属層と、をこの順で備える金属ベース基板であって、
前記熱伝導性シートは、項目[27]に記載の樹脂シートの硬化物からなる、金属ベース基板。
[30]項目[29]に記載の金属ベース基板を備える、電子装置。
本発明によれば、高い熱伝導性を有する熱伝導性シートを製造するために用いることができる熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い熱伝導性を有する熱伝導性シートを製造するために用いることができる熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る金属ベース基板の構造を示す断面模式図である。
【
図2】本実施形態に係る金属ベース基板を用いた電子装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物は、
式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物と、
式(d-EP)で表される、2つのエポキシ基を有する2官能エポキシ化合物と、を含む。
【0014】
【0015】
式(1-1)において、Zは、-C(=O)-、-CH2-、または-NH-を表す。
【0016】
【0017】
式(d-EP)において、Xは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
【0018】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物を含む。式(1-1)で表される化合物は、平面性が高く、高い剛直性を有する。よって、これを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0019】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、式(d-EP)で表される、メソゲン骨格を有するエポキシ2官能エポキシ化合物を含む。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、このようなメソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含むことにより、得られる硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0020】
以下に、第一の実施形態における熱硬化性樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0021】
(ジヒドロキシ化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる、上記式(1-1)で表される化合物としては、2,7-ジヒドロキシフルオレノン(2,7-ジヒドロキシ-9H-フルオレン-9-オン)(式(1-1)中のZが-C(=O)-である化合物)、2,7-ジヒドロキシフルオレン(式(1-1)中のZが-CH2-である化合物)、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール(式(1-1)中のZが-NH-である化合物)が挙げられる。
中でも、高い熱伝導性を有するとともに、取扱い性が良好であることから、2,7-ジヒドロキシフルオレノンを用いることが好ましい。
【0022】
上記式(1-1)で表される化合物は、市販の製品を使用してもよいし、または当該分野で公知の方法により合成してもよい。たとえば、2,7-ジヒドロキシフルオレノンの合成方法は、はTetrahedron (2019), 75(2), 236―245.に記載されている。
【0023】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中の上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物の配合量は、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、2質量%以上25質量%以下であり、好ましくは、5質量%以上20質量%である。ジヒドロキシ化合物を上記範囲内で配合することにより、得られる樹脂組成物の流動性を所望の程度に調整することができるとともに、硬化物の熱伝導性を向上することができる。
【0024】
(2官能エポキシ化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる2官能エポキシ化合物は、式(d-EP)で表される化合物である。
【0025】
【0026】
前記式(d-EP)中のXは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、メソゲン骨格を有する2官能エポキシ化合物を含むことにより、得られる硬化物が高い熱伝導性および高い耐熱性を有する。
【0027】
式(d-EP)中のX基が有するメソゲン骨格としては、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、シクロヘキシルベンゼン骨格、およびそれらの誘導体が挙げられる。X基が上記のメソゲン骨格を有することにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有し得る。
【0028】
一実施形態において、式(d-EP)のX基の少なくとも1つは、式(2)で表される基である。式(d-EP)のX基が式(2)で表されるメソゲン骨格である2官能エポキシ化合物を用いることにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有するとともに、優れた耐熱性を有する。
【0029】
【0030】
式(2)において、R1~R8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す。
【0031】
一実施形態において、上記2官能エポキシ化合物は、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である基である化合物である。中でも、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基(メチル基)であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である(X基が「テトラメチルビフェニル基」)、エポキシ化合物である。このような2官能エポキシ化合物を用いることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0032】
一実施形態において、上記2官能エポキシ化合物は、式(2)中のR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である(X基が「ビフェニル基」)、エポキシ化合物である。このような2官能エポキシ化合物を用いることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた熱伝導性と耐熱性とを有する。
【0033】
一実施形態において、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物は、X基として、テトラメチルビフェニル基とビフェニル基とを含む化合物であることが好ましい。このような2官能エポキシ化合物を組み合わせて含むことにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0034】
上記2官能エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中の上記式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物の配合量は、当該熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、2質量%以上40質量%以下であり、好ましくは、4質量%以上30質量%である。2官能エポキシ化合物を上記範囲内で配合することにより、得られる樹脂組成物の硬化特性を適切な程度に調整することができる。
【0036】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類および配合量は、特に限定されず、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。
【0037】
用いることができる硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、イミダゾール類などの窒素原子含有化合物を用いることが好ましい。
【0038】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられる。
【0039】
前記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等が挙げられる。
前記3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等が挙げられる。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、アリルフェノール等が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0040】
硬化促進剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、0.01質量%~10質量%であり、好ましくは、0.02質量%~5質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~1.5質量%である。
【0041】
(熱伝導性フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。熱伝導性フィラーを配合することにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を、放熱部材を作製するための材料として使用することができる。熱伝導性フィラーは、たとえば、20W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性無機粒子を含むことができる。高熱伝導性無機粒子としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、および酸化マグネシウムが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素を用いる場合、窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を用いることによって、得られる熱硬化性樹脂組成物の熱伝導性をより一層高めることができる。凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
【0043】
熱伝導性フィラーの配合量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、40質量%~90質量%であり、好ましくは、50質量%~80質量%である。熱伝導性フィラーを上記範囲内の量で用いることにより、得られる樹脂組成物の取扱い性を維持しつつ、その硬化物の熱伝導性を向上することができる。また熱伝導性フィラーは、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0044】
(シランカップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物中における熱伝導性フィラーの相溶性を向上させることができる。カップリング剤は、熱硬化性樹脂組成物に添加してもよいし、熱伝導性フィラー表面に処理して使用してもよい。
【0045】
シランカップリング剤の配合量は、上記熱伝導性フィラーの質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下である。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤が挙げられる。
【0047】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、熱伝導性フィラー以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調整することができる。この混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
【0048】
上記溶剤としては特に限定されないが、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0049】
当該樹脂ワニスに、熱伝導性フィラーを添加し、三本ロール等を用いて混練することにより、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。混練時に添加することにより、熱硬化性樹脂中に無機フィラーをより均一に分散させることが可能であるが、これに限定されない。熱伝導性フィラーは、混練時に添加してもよいが、樹脂ワニスの混合時に添加してもよい。混練後に冷却固化し、混練物を、顆粒状、タブレット状、またはシート状に加工してもよい。
【0050】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物は、式(1-2)で表されるエポキシ化合物を含む。
【化12】
【0051】
式(1-2)において、Zは、-C(=O)-、-CH2-、または-NH-を表す。
【0052】
上記式(1-2)で表されるエポキシ化合物は、平面性が高く、高い剛直性を有する。よって、これを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0053】
以下に、第二の実施形態における熱硬化性樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0054】
(エポキシ化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる、上記式(1-2)で表される、グリシジルオキシ基を有するエポキシ化合物としては、式(1-2)中のZが-C(=O)-であるフルオレノン誘導体、式(1-2)中のZが-CH2-であるフルオレン誘導体、および式(1-2)中のZが-NH-であるカルバゾール誘導体が挙げられる。
中でも、高い熱伝導性を有するとともに、取扱い性が良好であることから、フルオレノン誘導体を用いることが好ましい。
【0055】
上記式(1-2)で表されるエポキシ化合物は、上記式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物を、アルカリ金属水酸化物の存在下、エピハロヒドリンと反応させて、このジヒドロキシ化合物をグリシジル化することにより合成することができる。
【0056】
上記エポキシ化合物の合成で用いられるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、γ-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用できる。入手がよういであるため、エピクロルヒドリンが好ましく用いられる。エピハロヒドリンの使用量は、式(1-1)のジヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対し、例えば、2~20モルであり、好ましくは、4~10モルである。
【0057】
上記反応で使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらは、固形物をしてもよいし、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、当該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加するとともに、減圧下、または常圧下で連続的に水およびエピハロヒドリンを留出させ、さらに分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す手法を用いることが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、式(1-1)のジヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して、例えば、0.3~10.0モルであり、好ましくは、1.0~5.0モルであり、より好ましくは、1.2~3.0モルである。
【0058】
上記のエピハロヒドリンを用いるジヒドロキシ化合物のグリシジル化反応の反応温度は、通常、30~90℃であり、好ましくは、35~80℃である。反応時間は、通常、0.5~10時間であり、好ましくは1~8時間である。反応終了後、生成した反応混合物を、水洗および/または蒸留等の公知の手段により精製し、目的のエポキシ化合物を得ることができる。
【0059】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。用いることができる硬化促進剤およびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用される硬化促進剤と同様である。
【0060】
(熱伝導性フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。用いることができる熱伝導性フィラーおよびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用される熱伝導性フィラーと同様である。
【0061】
(シランカップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。用いることができるシランカップリング剤およびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用されるシランカップリング剤と同様である。
【0062】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラー以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調製することができる。混合方法および用いる溶剤は、第一の実施形態に従う熱硬化性樹脂組成物の製造方法と同様である。
【0063】
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物は、式(3)で表されるフェノキシ樹脂を含む。
【化13】
【0064】
式(3)において、
nは繰り返し単位を表す数であり、2~50の整数を表し、好ましくは、5~40の整数であり、より好ましくは、6~30の整数であり、さらにより好ましくは、8~20の整数であり
Xは、メソゲン骨格を有する2価の基であり、
Yは、式(1-3)で表される2価の基であり、
【化14】
式(1-3)において、
Zは、-C(=O)-、-CH
2-、または-NH-を表し、
*は、連結位置を表す。
【0065】
上記式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、平面性および剛直性が高い構造単位を含み、よってこのようなフェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0066】
以下に、第三の熱硬化性樹脂組成物に用いられる成分について説明する。
【0067】
(フェノキシ樹脂)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる、上記式(3)で表されるフェノキシ樹脂において、式(3)中のXは、メソゲン骨格を有する2価の基である。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられるフェノキシ樹脂は、メソゲン骨格を有する構造単位(X)を含むことにより、その硬化物が高い熱伝導性および高い耐熱性を有する。
【0068】
式(3)中のX基が有するメソゲン骨格としては、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、シクロヘキシルベンゼン骨格、およびそれらの誘導体が挙げられる。X基が上記のメソゲン骨格を有することにより、このフェノキシ樹脂は、高い熱伝導性を有し得る。
【0069】
一実施形態において、式(3)のX基の少なくとも1つは、式(2)で表される基である。式(2)で表されるメソゲン骨格を有する構造を含むことにより、フェノキシ樹脂は高い熱伝導性を有するとともに、優れた耐熱性を有し、よってこれを含む本実施形態の熱硬化性樹脂は、高い熱伝導性を有し得る。
【0070】
【0071】
式(2)において、R1~R8は、独立して、水素原子または炭素数1~4の直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、*は連結位置を表す。
【0072】
一実施形態において、式(2)で表される基は、好ましくは、R1、R4、R5、およびR8が炭素数1~4のアルキル基であり、R2、R3、R6、およびR7が水素原子である基である。中でも、式(2)においてR1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である基(「テトラメチルビフェニル基」と称する)が、これらを含むフェノキシ樹脂の熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで両立できる点で好ましい。
【0073】
一実施形態において、式(2)で表される基は、R1、R4、R5、およびR8が炭素数1のアルキル基であり、かつR2、R3、R6、およびR7が水素原子である基(「ビフェニル基」と称する)であってもよい。このような基を含むことにより、フェノキシ樹脂は優れた熱伝導性と耐熱性とを有する。
【0074】
一実施形態において、式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、X基として、テトラメチルビフェニル基とビフェニル基とを含むことが好ましい。これらの基を組み合わせて含むフェノキシ樹脂は、熱伝導性と耐熱性とを優れたバランスで有し得る。
【0075】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、Y基として、上記式(1-3)で表される2価の基を含む。式(1-3)で表される基は、平面性が高く、高い剛直性を有する。よって、このような基を含むフェノキシ樹脂は、高い熱伝導性を有し、結果として、これを含む熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、高い熱伝導性を有する。
【0076】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、たとえば、1,000~10,000であり、好ましくは、2,000~8,000であり、より好ましくは、3,000~7,000であり、さらにより好ましくは、3,500~6,500である。Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。Mwを上記範囲とすることで、フェノキシ樹脂の熱伝導性をより向上することができる。
【0077】
本実施形態において、式(3)で表されるフェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて分子量分布曲線を得ることにより測定できる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散度(PDI:Mw/Mn)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出する。
【0078】
GPCの測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0079】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂の分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.00~7.00であり、好ましくは2.00~6.00であり、より好ましくは3.50~5.50である。分散度を上記範囲とすることで、フェノキシ樹脂の熱伝導性および流動性をより向上させることができる。
【0080】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1000以下の低分子量フェノキシ樹脂を含んでもよい。フェノキシ樹脂が低分子量フェノキシ樹脂を含む場合、低分子量フェノキシ樹脂は、GPC測定により得られた分子量分布全体の全面積100%に占める、重量平均分子量Mwが1,000以下に該当する成分の面積総和の割合として、例えば、5%以上60%以下、好ましくは、5%以上50%以下の量である。上記範囲の量で、低分子量フェノキシ樹脂を含むフェノキシ樹脂は、流動性が改善され、取り扱い性に優れる。よって、たとえば、本実施形態の樹脂組成物をシートまたはフィルムの形態に加工する場合の加工安定性が改善される。
【0081】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂のエポキシ当量は、本発明の効果の観点から、例えば、300~6,000g/eqであり、好ましくは、350~5,000g/eqであり、より好ましくは、400~4,500g/eqである。
【0082】
式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、上述の構造を備えることにより、その硬化物が高い熱伝導性を有する。フェノキシ樹脂の硬化物の熱伝導率は、例えば、0.3W/(m・K)以上である。フェノキシ樹脂自体が高い熱伝導性を有することにより、これを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物もまた、高い熱伝導性を有し得る。
【0083】
(フェノキシ樹脂の製造)
本実施形態で用いられる、式(3)で表されるフェノキシ樹脂は、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物と、式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物とを反応させることにより合成することができる。式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物は、上記第一の実施形態における式(d-EP)の二官能エポキシ化合物と同様である。また、式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物は、上記第一の実施形態における式(1-1)のジヒドロキシ化合物と同様である。
【0084】
【0085】
【0086】
上記の反応は、無溶媒下または反応溶媒の存在下で、反応触媒を用いて行うことができる。
【0087】
使用できる反応溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどを好適に用いることができる。反応溶媒を用いることで初期の粘度を低減させることができ、原料モノマーの反応性が向上する。
【0088】
上記反応触媒としては、従来公知の重合触媒を用いることができ、アルカリ金属水酸化物、第三アミン化合物、第四アンモニウム化合物、第三ホスフィン化合物、および第四ホスホニウム化合物、イミダゾール化合物が好適に使用される。
【0089】
具体的には、式(d-EP)で表される2官能エポキシ化合物と、式(1-1)で表われるジヒドロキシ化合物と、反応触媒と、必要に応じて反応溶媒とを添加し、攪拌下に溶融混合する。溶融混合する際の加熱温度は90~150℃程度、混合時間は30分間~2時間程度、反応圧力は常圧で行われる。溶融混合後、混合溶液を昇温し、所定の反応温度において減圧または常圧下で重合反応を行う。反応温度は140~180℃程度、反応時間は2時間~10時間程度、反応圧力は1~760Torr程度で行われる。
【0090】
反応終了後に溶媒置換などを行なうことで好適な溶媒に溶解した樹脂として得ることが可能である。また、溶媒反応で得られたフェノキシ樹脂は、蒸発器等を用いた脱溶媒処理をすることにより、溶媒を含まない固形状の樹脂として得ることもできる。
【0091】
上記の合成方法における、出発物質の使用量、反応温度、反応時間等の反応条件を適宜選択して重合度を調整することにより、所望の重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0092】
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。用いることができる硬化促進剤およびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用される硬化促進剤と同様である。
【0093】
(熱伝導性フィラー)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。用いることができる熱伝導性フィラーおよびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用される熱伝導性フィラーと同様である。
【0094】
(シランカップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。用いることができるシランカップリング剤およびその配合量は、上記第一の実施形態にしたがう熱硬化性樹脂組成物で使用されるシランカップリング剤と同様である。
【0095】
(エポキシ樹脂)
一実施形態において、熱硬化性樹脂組成物は、上記フェノキシ樹脂とは別個の他のエポキシ樹脂を含んでもよい。具体的には、エポキシ樹脂の一部または全部は、室温(25℃)で固形のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0096】
一実施形態において、上記他のエポキシ樹脂は、室温で固形のエポキシ樹脂に加え、室温で液状のエポキシ樹脂または室温で半固形のエポキシ樹脂を含む。これにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の成形性が改善される。
【0097】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物が、上記室温で固形のエポキシ樹脂を含む場合、その配合量は、当該熱硬化性樹脂組成物の熱伝導性フィラーを除いた成分(樹脂分)に対して、例えば、5質量%以上40質量%以下であり、好ましくは、10質量%以上30質量%以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を改善することができるとともに、得られる硬化物の熱伝導性および絶縁性をより向上させることができる。
【0098】
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性フィラー以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調製することができる。混合方法および用いる溶剤は、第一の実施形態に従う熱硬化性樹脂組成物の製造方法と同様である。
【0099】
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、上記第一、第二または第三の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られるシート状物である。樹脂シートの具体的な形態は、キャリア基材と、キャリア基材上に設けられた、上記実施形態の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える。
【0100】
本実施形態の樹脂シートは、たとえばワニス状の熱硬化性樹脂組成物をキャリア基材上に塗布して得られた塗布膜(樹脂層)に対して、溶剤除去処理を行うことにより得ることができる。樹脂シート中の溶剤含有率は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることができる。たとえば80℃~200℃、1分間~30分間の条件で溶剤除去処理を行うことができる。
【0101】
本実施形態の樹脂シート(樹脂層)は、好ましくは、Bステージ状態である。
【0102】
また、本実施形態において、上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。
【0103】
本実施形態の樹脂基板は、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。この樹脂基板は、LED、パワーモジュールなどの電子部品を搭載するためのプリント基板の材料として用いることができる。
【0104】
[電子装置]
樹脂シートの硬化物は、発熱体と、放熱体との間に介在する熱伝導性シートとして使用される。
【0105】
発熱体としては、半導体素子、LED素子、半導体素子やLED素子等が搭載された基板、Central Processing Unit(CPU)、パワー半導体、リチウムイオン電池、燃料電池等を挙げることができる。
放熱体としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、放熱(冷却)フィン等を挙げることができる。
放熱絶縁部材は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で一部が構成されていればよく、具体的には、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる放熱シート、当該放熱シートと基板とが積層された積層体(例えば、
図1の金属ベース基板100)等を挙げることができる。前記基板は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、放熱絶縁部材の放熱性を良好なものとすることができる。
前記放熱絶縁部材は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物で一部が構成されており、その熱伝導率は、好ましくは12W/m・K以上、さらに好ましくは15W/m・K以上である。
放熱絶縁部材および放熱体は、発熱体の片面に形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。また、前記発熱体と前記放熱絶縁部材との間、または前記放熱絶縁部材と前記放熱体との間には、放熱性に影響を与えない範囲で、各種基材や層が設けられていてもよい。
【0106】
本実施形態において、前記発熱体と、前記放熱絶縁部材と、前記放熱体とは、前述のものから適宜組み合わせて、積層構造体を得ることができる。当該積層構造体は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、半導体装置、スマートフォン、LED電球・ライト、パワーモジュール、リチウムイオン電池、燃料電池、無線基地局、無停電電源装置等の各種用途に用いることができる。
以下、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分について説明する。
【0107】
[金属ベース基板]
本実施形態の金属ベース基板(放熱樹脂部材)100について
図1に基づいて説明する。
図1は、金属ベース基板100の構成の一例を示す概略断面図である。
【0108】
上記金属ベース基板100は、
図1に示すように、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備えることができる。この絶縁層102は、上記の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層、熱硬化性樹脂組成物の硬化物および積層板からなる群から選択される一種で構成することが可能である。これらの樹脂層、積層板のそれぞれは、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物(樹脂シート)で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる硬化体であってもよい。
【0109】
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄、錫等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、金属層103は、好ましくは銅層またはアルミニウム層であり、特に好ましくは銅層である。銅またはアルミニウムを用いることで、金属層103の回路加工性を良好なものとすることができる。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
【0110】
金属層103の厚みの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.035mm以上であれば、高電流を要する用途に適用できる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、10.0mm以下であり、好ましくは5mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
【0111】
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、金属基板101の放熱性を良好なものとすることができる。
金属基板101の厚さは、本発明の目的が損なわれない限り、適宜設定できる。
【0112】
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の金属ベース基板100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
【0113】
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.6mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、金属ベース基板100全体としての放熱性を向上させることができる。
【0114】
本実施形態において、金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であるが、熱伝導性及び耐熱性に優れることから、LEDやパワーモジュールを用いるプリント基板として用いることが可能である。
【0115】
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
【0116】
[半導体装置]
実施形態の金属ベース基板(放熱絶縁部材)100は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、例えば半導体装置等の電子装置に用いることができる。
図2は、金属ベース基板100を用いた半導体装置の一例を示す概略断面図である。
金属ベース基板100の金属層103上に接着層202(ダイアタッチ材)を介して半導体素子201が搭載されている。半導体素子201は、ボンディングワイヤ203を介して金属ベース基板100に形成された接続用電極部に接続されており、金属ベース基板100に実装されている。
そして、半導体素子201は、金属ベース基板100上に封止樹脂層205により一括封止されている。
【0117】
金属ベース基板100の金属基板101側には、熱伝導層206(サーマル・インターフェース材(TIM))を介してヒートシンク207が設けられている。ヒートシンク207は熱伝導性に優れた材料から構成されており、アルミニウム、鉄、銅などの金属が挙げられる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0119】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
<実施例A1、比較例A1>
(ジヒドロキシ化合物を含む熱硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す配合で、各成分を混合して、樹脂組成物を得た。表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表1中の各成分の量の単位は質量部である。
【0121】
(フェノール化合物)
・フェノール化合物1:下記式(1-4)で表される2,7-ジヒドロキシフルオレノン(東京化成工業社製)
【化18】
・フェノール化合物2:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR-55617)
【0122】
(2官能エポキシ化合物)
・2官能エポキシ化合物1:下記式(4)で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、YX-4000H、室温で固形)
【化19】
【0123】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-メチル-イミダゾール
【0124】
(熱硬化性樹脂組成物の物性測定)
(熱伝導率の測定)
実施例A1または比較例A1の樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を180℃、30min行い、10mm□×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて180℃、180minの硬化を行い、樹脂成形体1(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、10mm□×厚み1mmに加工したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて、Xeフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、密度(Sp)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。結果を以下の表1に示す。
熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm3]
【0125】
【0126】
<実施例B1、比較例B1>
(エポキシ化合物を含む熱硬化性樹脂組成物の調製)
表2に示す配合で、各成分を混合して、樹脂組成物を得た。表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表2中の各成分の量の単位は質量部である。
【0127】
(エポキシ化合物)
・エポキシ化合物1:下記方法で得られた、下記式(1-5)で表されるフルオレノン骨格エポキシ化合物
(エポキシ化合物1の合成)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、2,7-ジヒドロキシフルオレノンを12.6重量部、エピクロロヒドリン68.5重量部、テトラブチルアンモニウムクロライド0.1重量部、ジメチルスルホキシド2.5重量部を加え、撹拌下で60℃にまで昇温し、2時間反応した。50%水酸化ナトリウム水溶液16.2重量部を60分かけて滴下し、更に80℃で6時間反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物に固形分が約30%となるようにTHFを加え溶解し、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、減圧下で乾燥することで目的とするエポキシ化合物1を収率84%で得た。得られたエポキシ化合物1は赤~赤褐色粘調エポキシ樹脂であり、室温で静置することで結晶性を帯びた樹脂状固体として得られた。
【化20】
【0128】
・エポキシ化合物2:下記式(4)で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、YX-4000H、室温で固形)
【化21】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-メチル-イミダゾール
【0129】
(熱硬化性樹脂組成物の物性測定)
(熱伝導率の測定)
実施例B1または比較例B1の樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を180℃、30min行い、10mm□×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて180℃、180minの硬化を行い、樹脂成形体1(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、10mm□×厚み1mmに加工したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて、Xeフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、密度(Sp)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。結果を以下の表1に示す。
熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm3]
【0130】
【0131】
<実施例C1~C5、比較例C1~C2>
(フェノキシ樹脂の調製)
下記の方法を用いて、フェノキシ樹脂1~7を調製した。フェノキシ樹脂の調製に使用した原料モノマーを、以下に示す。
・エポキシモノマー1:下記式(4)で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、YX-4000H、室温で固形)
【化22】
【0132】
・エポキシモノマー2:下記式(5)で表されるエポキシ化合物(DIC社製、HP-4032D、室温で液状)
【化23】
【0133】
・フェノールモノマー1:下記式(1-4)で表される2,7-ジヒドロキシフルオレノン(東京化成工業社製)
【化24】
【0134】
・フェノールモノマー2:4,4'-ビフェノール(東京化成工業社製)
【0135】
(フェノキシ樹脂1の調製)
エポキシモノマー1(73.9重量部)、フェノールモノマー1(24.1重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、1.75であった。得られた混合液を170℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂1を得た。反応は5時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。下記式(3)で表されるフェノキシ樹脂1(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は1.9であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー1由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは2240である)を91重量部得た。
【化25】
【0136】
(フェノキシ樹脂2の調製)
エポキシモノマー1(76.2重量部)、フェノールモノマー1(21.7重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、2.0であった。得られた混合液を160℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂2を得た。反応は5時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。式(3)で表されるフェノキシ樹脂2(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は2.1であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー1由来構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは3600である)を92重量部得た。
【0137】
(フェノキシ樹脂3の調製)
エポキシモノマー1(74.4重量部)、フェノールモノマー1(23.6重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、1.8であった。得られた混合液を160℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂3を得た。反応は7時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。式(3)で表されるフェノキシ樹脂3(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は2.9であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー1由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは7145である)を91重量部得た。
【0138】
(フェノキシ樹脂4の調製)
エポキシモノマー1(75.4重量部)、フェノールモノマー1(22.6重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、100℃~110℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、1.9であった。得られた混合液を160℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂4を得た。反応は7時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。式(3)で表されるフェノキシ樹脂4(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は2.0であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー1由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは4000である)を88重量部得た。
【0139】
(フェノキシ樹脂5の調製)
エポキシモノマー2(72.6重量部)、フェノールモノマー1(25.3重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー2とフェノールモノマー1との当量比(Ep/Ph)は、1.9であった。得られた混合液を160℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂5を得た。反応は5時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。上記式(3)で表されるフェノキシ樹脂5(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は2.1であり、Xはエポキシモノマー2由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー1由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは2980である)を93重量部得た。
【0140】
(フェノキシ樹脂6の準備)
下記の式(6)で表されるビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YP-55)を、フェノキシ樹脂6として使用した。
【0141】
【0142】
(フェノキシ樹脂7の調製)
エポキシモノマー1(75.9重量部)、フェノールモノマー2(22.1重量部)、トリフェニルホスフィン(TPP)(0.04重量部)、及び溶剤(シクロヘキサノン)(2重量部)を反応器に投下し、110℃~120℃で1時間溶融混合した。エポキシモノマー1とフェノールモノマー2との当量比(Ep/Ph)は、2.0であった。得られた混合液を160℃に昇温し、当該温度で減圧下にて溶剤を除去しながら反応させ、GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させ、フェノキシ樹脂1を得た。反応は10時間行った。反応後、室温まで冷却し、得られた固体を粉砕し赤褐色粉末状固体として回収した。下記式(3)で表されるフェノキシ樹脂7(式(3)中の繰り返し単位数nの平均値は2.6であり、Xはエポキシモノマー1由来の構造単位であり、Yはフェノールモノマー2由来の構造単位であり、GPCによる重量平均分子量Mwは4200である)を3.7重量部得た。
【0143】
(フェノキシ樹脂の物性測定)
上記実施例C1~C5、比較例C1~C2で得られたフェノキシ樹脂1~7の溶剤溶解性を測定した。結果を、表3-1に示す。
【0144】
(溶剤溶解性(THF))
上記実施例C1~C5、比較例C1~C2で得られた各フェノキシ樹脂1~7を、テトラヒドロフラン(THF)と混合し、60℃まで加温して完全に溶解して、不揮発分30%のTHF溶解物を得た。室温(25℃)まで冷却したときのTHF溶解物の濁りの有無で、フェノキシ樹脂の溶剤溶解性を判断した。室温まで冷却した場合に、THF溶解物が透明であった場合を「A」とし、室温まで冷却した場合に、THF溶解物が少しでも濁った場合を「B」と評価した。結果を、表3-1に示す。
【0145】
(溶剤溶解性(DMF))
上記実施例C1~C5、比較例C1~C2で得られた各フェノキシ樹脂1~7を、DMFと混合し、60℃まで加温して完全に溶解して、不揮発分30%のDMF溶解物を得た。室温(25℃)まで冷却したときのDMF溶解物の濁りの有無で、フェノキシ樹脂の溶剤溶解性を判断した。室温まで冷却した場合に、DMF溶解物が透明であった場合を「A」とし、室温まで冷却した場合に、DMF溶解物が少しでも濁った場合を「B」と評価した。結果を、表3-1に示す。
【0146】
(熱拡散率)
上記実施例C1~C5、比較例C1~C2で得られたフェノキシ樹脂1~7と、硬化促進剤1(2-メチル-イミダゾール)を、表3-1で示す配合量で混合して、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を180℃、30min行い、10mm□×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて180℃、180minの硬化を行い、樹脂成形体1(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、10mm□×厚み1mmに加工したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて、Xeフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。熱拡散率の値が大きいほど、熱伝導性が高いことを示す。測定結果を、表3-1に示す。
【0147】
【0148】
<実施例C6、比較例C3~C4>
(フェノキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の調製)
表3-2に示す配合で、各成分を混合して、樹脂組成物を得た。表3-2中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表3-2中の各成分の量の単位は質量部である。
(フェノキシ樹脂)
・フェノキシ樹脂2:上記「フェノキシ樹脂2の調製」で得られたフェノキシ樹脂2
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON HP-7200、室温で固形)
(硬化剤)
・硬化剤1:シアネート樹脂(Lonza社製、Primaset「PT-30」)
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:ノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR-55617)
(熱伝導性フィラー)
・熱伝導性フィラー1:凝集窒化ホウ素(水島合金鉄社製、HP40)
【0149】
(硬化物の物性測定)
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物について、以下の物性を測定した。
【0150】
(熱伝導率)
・樹脂成形体の作製
得られた熱伝導性フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を用い、0.018mmの銅箔で挟みセットし、コンプレッション成形を10MPaで180℃、90minを行い、樹脂成形体(熱伝導率測定用サンプル1)を得た。得られた成形体から10mm□の熱拡散率測定用サンプルを切り出し、熱拡散率測定に用いた。
【0151】
・樹脂成形体の密度(比重)
密度(比重)測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、上記の樹脂成形体から、縦2cm×横2cmに切り出したものを用いた。密度(比重)(ρ)の単位をg/cm3とする。
【0152】
・樹脂成形体の比熱
得られた上記の樹脂成形体について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
【0153】
・樹脂成形体の熱伝導率の測定
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、10mm□に切り出したものを試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA467 HyperFlashを用いて非定常法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。結果を表3-2に示す。
熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]
【0154】
(ガラス転移温度)
得られた成形体の銅箔を除去した後、8mm幅の短冊状に試験片を切り出した。試験片に関し、動的粘弾特性装置(セイコーインスツル社製、DMS6100)を用いて、測定温度範囲0℃~400℃、昇温速度5℃/分の条件下で熱機械分析をおこない、ガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度の単位は℃である。
【0155】
(5%重量減少温度)
上記で得られた各熱硬化性樹脂組成物を、180℃で90分間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を、小型粉砕機で粉砕してサンプルとし、TG-DTAで、サンプル量10mg、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30~600℃、空気雰囲気下で、5%重量減少温度Td5(℃)を測定した。5%重量減少温度が高いほど、耐熱性が高いことを示す。結果を表3-2に示す。
【0156】
(体積抵抗率)
上記で得られた銅箔付きの各熱硬化性樹脂組成物成形体をエッチングすることでガード付き円電極を作製し25℃における体積抵抗率、および175℃における体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の単位は、Ω・mである。体積抵抗率の値が高いほど、絶縁性が高いことを示す。結果を表3-2に示す。
【0157】