(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134292
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 41/42 20210101AFI20240926BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20240926BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F25B41/42
F25B39/02 U
F25B1/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044519
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 賢知
(57)【要約】
【課題】各伝熱管の入口での水頭圧に差を生じさせることなく、各伝熱管に液冷媒を均等な流量で流入させることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】膨張弁と気液分離器と冷媒分配装置と蒸発器とを配管を用いて環状に接続した冷凍サイクルを有する冷却装置に関連する。蒸発器は、上下方向に間隔を存して配置され、水平にのびる伝熱管を複数有する。冷媒分配装置は、気液分離器の液冷媒出口に連通する水平方向に長手の液冷媒分配ヘッダと、気液分離器のガス冷媒出口に連通し、液冷媒分配ヘッダよりも上方に配置されるガス冷媒分配ヘッダと、ガス冷媒分配ヘッダから分岐され下方にのびると共に、液冷媒分配ヘッダに接続管を用いて接続される複数の立管と、各立管の下端に夫々設けられ、液冷媒を溜めるトラップと、を有し、トラップの下流側に夫々前記伝熱管が接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張弁と気液分離器と冷媒分配装置と蒸発器とを配管を用いて環状に接続した冷凍サイクルを有する冷却装置であって、
前記蒸発器は、鉛直方向を上下方向とし、上下方向に間隔を存して配置され、水平にのびる伝熱管を複数有するものにおいて、
前記冷媒分配装置は、
前記気液分離器の液冷媒出口に連通する水平方向に長手の液冷媒分配ヘッダと、
前記気液分離器のガス冷媒出口に連通し、前記液冷媒分配ヘッダよりも上方に配置されるガス冷媒分配ヘッダと、
前記ガス冷媒分配ヘッダから分岐され下方にのびると共に、前記液冷媒分配ヘッダに接続管を用いて接続される複数の立管と、
各立管の下端に夫々設けられ、液冷媒を溜めるトラップと、を有し、
前記トラップの下流側に夫々前記伝熱管が接続される冷却装置。
【請求項2】
前記ガス冷媒出口から流出するガス冷媒を前記ガス冷媒分配ヘッダ及び前記蒸発器をバイパスさせるバイパス配管と、
前記バイパス配管に介設され、前記バイパス配管を流れる冷媒の流量を開度に応じて変化させるバイパス量調整弁と、
前記立管を流れる液冷媒が前記バイパス配管に流入することなく、前記バイパス配管にガス冷媒のみが流れるように前記バイパス量調整弁の開度を制御する制御装置と、
を更に備える請求項1に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクルを有する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、冷凍サイクルを有する冷却装置が開示されている。この冷却装置では、熱交換を行う凝縮器が、上下方向に間隔を存して配置されて水平にのびる伝熱管としての冷媒経路を複数有する。各冷媒経路に冷媒を均等に分配する分配装置(分配器)として、主管が鉛直方向にのびる所謂垂直ヘッダが用いられている。この種の垂直ヘッダを備える蒸発器は、下記特許文献2に開示されている。また、下記特許文献3に開示された蒸発器では、流量調整用毛細管を用いて伝熱管としての各扁平管に夫々冷媒を分配している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5921777号公報
【特許文献2】特開平8-005195号公報
【特許文献3】国際公開第2013/160957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、垂直ヘッダや流量調整用毛細管を用いると、各伝熱管の入口での水頭圧に差が生じてしまう。特に流量調整用毛細管は、毛細管を流通する際の圧力損失を利用して流量の均一化を図る方式であるため、圧力損失が生じ難い比較的遅い流速である場合には水頭圧の影響が顕著になる。これに起因して、各伝熱管に流入する液冷媒の流量に差が生じ、冷却能力の低下を招来する。
【0005】
本開示の目的は、各伝熱管の入口での水頭圧に差を生じさせることなく、各伝熱管に液冷媒を均等な流量で流入させることができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、膨張弁と気液分離器と冷媒分配装置と蒸発器とを配管を用いて環状に接続した冷凍サイクルを有する冷却装置に関連する。蒸発器は、鉛直方向を上下方向とし、上下方向に間隔を存して配置され、水平にのびる伝熱管を複数有する。冷媒分配装置は、気液分離器の液冷媒出口に連通する水平方向に長手の液冷媒分配ヘッダと、気液分離器のガス冷媒出口に連通し、液冷媒分配ヘッダよりも上方に配置されるガス冷媒分配ヘッダと、ガス冷媒分配ヘッダから分岐され下方にのびると共に、液冷媒分配ヘッダに接続管を用いて接続される複数の立管と、各立管の下端に夫々設けられ、液冷媒を溜めるトラップと、を有し、トラップの下流側に夫々前記伝熱管が接続される。
【0007】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する冷却装置に関連する。冷却装置は、ガス冷媒出口から流出するガス冷媒をガス冷媒分配ヘッダ及び蒸発器をバイパスさせるバイパス配管と、バイパス配管に介設され、バイパス配管を流れる冷媒の流量を開度に応じて変化させるバイパス量調整弁と、立管を流れる液冷媒がバイパス配管に流入することなく、バイパス配管にガス冷媒のみが流れるようにバイパス量調整弁の開度を制御する制御装置と、を更に備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、膨張弁を通過した気液混合冷媒が気液分離器に流入すると、気液分離器で気液分離された液冷媒は液冷媒出口から液冷媒分配ヘッダに流入する一方で、ガス冷媒はガス冷媒出口からガス冷媒分配ヘッダを介して立管に流入する。このとき、液冷媒分配ヘッダの各出口(各接続管との接続点)は同じ高さであるため、各出口には一様な水頭圧がかかる。即ち、液冷媒分配ヘッダの各出口に水頭圧の差が生じない。これにより、液冷媒分配ヘッダから各接続管を介して各立管に流入する液冷媒の流量は均等となる。各立管に流入した液冷媒は、各立管内を重力落下し、各トラップに溜められる。各トラップで封水されるため、各立管内にかかるガス冷媒の圧力が均等になる。これにより、各伝熱管の入口での水頭圧に差を生じさせることなく、各立管に流入する液冷媒の流量が均等となることと相俟って、各伝熱管に液冷媒を均等な流量で流入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による冷却装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1の効果を説明するためのグラフである。
【
図3】実施の形態1に対する比較例を説明するためのグラフである。
【
図4】実施の形態2に係る冷却装置の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態2の効果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。各図においては、作図の都合上、一部の構成要素の図示が省略されている場合がある。
【0011】
実施の形態1
図1は、実施の形態1による冷却装置1の構成例を示す図である。冷却装置1は、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4、気液分離器5、冷媒分配装置6、蒸発器7、及び蒸発圧力調整弁8を備える。冷却装置1は、冷却媒体(冷媒)を循環させる配管を有し、当該配管には、配管11,12,13,14,15,16,17が含まれる。冷却装置1では、当該配管を用いて、上述した各機器が環状に接続され、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4、気液分離器5、冷媒分配装置6、蒸発器7、及び蒸発圧力調整弁8の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが形成されている。冷凍サイクルを利用することで、蒸発器7が設置される空間内の空気が冷却される。冷凍サイクル自体は公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0012】
圧縮機2は、配管11を流れる冷媒を吸い込み、吸い込んだ冷媒を圧縮(断熱圧縮)する。つまり、圧縮機2において冷凍サイクルの圧縮行程が実行される。
【0013】
凝縮器3は、圧縮機2で圧縮された冷媒と外気との熱交換を行う。これにより、圧縮機2から配管12を介して凝縮器3に流入した冷媒は凝縮(放熱)される。つまり、凝縮器3において冷凍サイクルの凝縮行程が実行される。
【0014】
膨張弁4は、凝縮器3で凝縮された冷媒を絞り膨張させる。これにより、凝縮器3から配管13を介して膨張弁4に流入した冷媒は減圧され、気液混合冷媒となる。つまり、膨張弁4において冷凍サイクルの膨張行程が実行される。
【0015】
気液分離器5は、膨張弁4で減圧された冷媒を液相冷媒(以下「液冷媒」という)Clと気相冷媒(以下「ガス冷媒」という)Cgとに分離する。気液分離器5は、液冷媒出口51とガス冷媒出口52を有する。液冷媒出口51は、配管15を介して後述する液冷媒分配ヘッダ61に接続されている。ガス冷媒出口52は、配管16を介して後述するガス冷媒分配ヘッダ62に接続されている。
【0016】
蒸発器7は、水平にのびる複数本の伝熱管71,72,73を備える。伝熱管71,72,73は、鉛直方向である上下方向に間隔を存して配置されている。図示簡略化のため、
図1では3本の伝熱管71,72,73を配置した場合を例に、
図2では5本の伝熱管#1~#5を配置した場合を例に説明したが、伝熱管の本数はこれに限定されない。伝熱管の本数は、冷却装置1の目標冷却能力に応じて設定することができる。
【0017】
冷媒分配装置6から各伝熱管71,72,73に液冷媒Clが流入すると、各伝熱管71,72,73を流れる液冷媒Clと蒸発器7に流入する空気との間で熱交換が行われる。熱交換により当該空気の熱を吸熱した液冷媒Clは蒸発し、それにより気液混相となり、各伝熱管71,72,73から気相の冷媒が排出される。つまり、蒸発器7において冷凍サイクルの蒸発行程が実行される。送風機(不図示)により送り出されて蒸発器7での熱交換により冷却された当該空気により、冷却対象の空間内の空気が冷却される。
【0018】
なお、蒸発器7には、熱交換の効率を高めるために、伝熱管71,72,73に板状のフィン(図示省略)が伝熱管長手方向に対して直角に設けられている。フィンは、結露により生じた水が溜まらないように、その主面を垂直に配置(即ち、フィンの主面が水平方向を向く姿勢で配置)する必要がある。このため、水平方向に長手の伝熱管71,72,73は、上下方向に間隔を存して並設される。
【0019】
蒸発圧力調整弁8は、蒸発器7で蒸発した気体の冷媒を減圧する。減圧後の冷媒の圧力は、蒸発圧力調整弁8の開度に応じて決まる。つまり、蒸発圧力調整弁8において冷凍サイクルの減圧行程が実行される。蒸発圧力調整弁8で減圧された冷媒は圧縮機2に供給される。
【0020】
ところで、蒸発器7の性能を適切に得るためには、各伝熱管71,72,73に液冷媒を均等な流量で流入させる必要がある。上記従来例の如く垂直ヘッダを用いると、各伝熱管の入口での水頭圧に差が生じてしまう。これに起因して、各伝熱管に流入する液冷媒の流量に差が生じることで、各伝熱管での熱交換量にばらつきが生じ、蒸発器の熱交換効率を低下させてしまう恐れがある。特に自動車の環境試験室などに適用されて低温から高温までの環境を作り出す冷却装置のように、冷却装置1に設定される目標温度範囲が広い場合に対応することができず、冷却能力の低下を招来する。
【0021】
そこで、本実施の形態では、冷媒分配装置6が、液冷媒分配ヘッダ61と、ガス冷媒分配ヘッダ62と、立管63a,63b,63cと、接続管64と、トラップ65a,65b,65cとを備える構成を採用する。
【0022】
液冷媒分配ヘッダ61は、例えば、水平方向にのびる配管で構成される。液冷媒分配ヘッダ61の複数の出口、即ち、複数の接続管64の接続点は、上下方向の高さ位置が同一であるため、各出口には一様な水頭圧がかかる。このように水頭圧の差を無くすことにより、液冷媒分配ヘッダ61から各接続管64に流入する液冷媒の流量を均等にすることができる。
【0023】
ガス冷媒分配ヘッダ62は、例えば、一方向にのびる配管で構成される均圧ヘッダである。ガス冷媒分配ヘッダ62の内部には、配管16を介して流入するガス冷媒の圧力が均等にかかる。ガス冷媒分配ヘッダ62は、液冷媒分配ヘッダ61よりも上方に配置され、液冷媒分配ヘッダ61からガス冷媒分配ヘッダ62に液冷媒が流入しないようにしている。なお、
図1に示す例では、ガス冷媒分配ヘッダ62は、水平方向にのびる姿勢で配置されているが、必ずしも水平配置しなくてもよい。
【0024】
立管63a,63b,63cは、伝熱管71,72,73に対応させてガス冷媒分配ヘッダ62から夫々分岐されて下方にのびる配管である。各立管63a,63b,63cの内部にも、ガス冷媒分配ヘッダ62と同様に、ガス冷媒の圧力が均等にかかる。立管63a,63b,63cは、接続管64を用いて分配ヘッダ61に夫々接続されている。これにより、分配ヘッダ61から接続管64を介して流入する液冷媒が均等な流量で立管63a,63b,63c内に流入し、立管63a,63b,63c内を重力落下する。
【0025】
トラップ65a,65b,65cは、立管63a,63b,63cの下端に一体または別体で形成され、例えば、U字配管で構成される。各トラップ65a,65b,65cには、各立管63a,63b,63c内を重力落下した液冷媒が溜められる。各トラップ65a,65b,65cの下流側は、配管17を介して対応する伝熱管71,72,73に夫々接続されている。各トラップ65a,65b,65cの封水により、各立管63a,63b,63cのガス冷媒の圧力を均等にすると共に、立管63a,63b,63cから各伝熱管71,72,73へのガス冷媒の流入を抑制している。
【0026】
冷却装置1は、制御装置10を更に備える。制御装置10は、膨張弁4及び蒸発圧力調整弁8の各開度の制御を含め、上述した各機器を制御することで、冷却装置1の運転を統括制御するコンピュータである。
【0027】
本実施の形態によれば、冷却装置1の運転を開始すると、膨張弁4を通過した気液混合冷媒が気液分離器5に流入し、気液分離器5で液冷媒Clとガス冷媒Cgとに気液分離される。液冷媒Clは液冷媒出口51から配管15を介して液冷媒分配ヘッダ61に流入する一方で、ガス冷媒Cgはガス冷媒出口52からガス冷媒分配ヘッダ62を介して立管63a,63b,63cに流入する。このとき、液冷媒分配ヘッダ61の各出口(各接続管64との接続点)は同じ高さであるため、各出口には一様な水頭圧がかかる。即ち、液冷媒分配ヘッダ61の各出口に水頭圧の差が生じない。液冷媒分配ヘッダ61の圧力損失は微小であるため、液冷媒分配ヘッダ61から各接続管64を介して各立管63a,63b,63cに流入する液冷媒の流量は均等となる。
【0028】
各立管63a,63b,63cに流入した液冷媒Clは、各立管63a,63b,63c内を重力により流れ落ち(滴下し)、各トラップ65a,65b,65cに溜められる。各トラップ65a,65b,65cで封水されるため、各立管63a,63b,63c内にかかるガス冷媒Cgの圧力が均等になる。これにより、各立管63a,63b,63cに流入する液冷媒の流量が均等となることと相俟って、各伝熱管71,72,73に液冷媒を均等な流量で流入させることができる。従って、冷却装置1の冷却能力を向上させることができる。
【0029】
なお、何らかの原因で冷媒配管(例えば、配管16や立管63a,63b,63c)中の圧力変動が生じ、ガス冷媒が各トラップ65a,65b,65cの封水を破って各伝熱管71,72,73に流れ込む場合があるが、この場合も各伝熱管71,72,73に流入する液冷媒の流量は均等であるため、冷却装置1の冷却能力が損なわれることはない。
【0030】
更に、本実施の形態の効果について説明する。
図2は、実施の形態1の効果を説明するためのグラフである。
図3は、実施の形態1に対する比較例を説明するためのグラフである。各グラフの縦軸は、5本の伝熱管#1~#5の位置、即ち、各伝熱管#1~#5の出口に夫々設けられた温度計(熱電対)の位置を示す。各グラフの横軸は、伝熱管#1~#5の出口の空気温度(即ち、5個の温度計により測定した空気温度)の平均値を平均温度とし、各温度計の測定温度の平均温度からの偏差(ずれ)を示す。各温度計の測定温度が平均温度と同じ場合、偏差は0となる。また、
図2及び
図3には、目標温度が20℃である場合と目標温度が-10℃である場合とを示している。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態では、目標温度が20℃(このときの蒸発器7の入口温度は30.6℃)である場合、5個の温度計により測定された空気温度の偏差の最大値は1.2K、標準偏差は0.8Kであることが確認された。これより、蒸発器7で熱交換された空気の温度が蒸発器7の伝熱管#1~#5の高さの位置に関係なく均等であることから、各伝熱管#1~#5に流入する液冷媒の流量を均等にできることが判った。また、目標温度を-10℃(このときの蒸発器7の入口温度は0.3℃)に変更しても、偏差の最大値は1.1K、標準偏差は0.7Kであることが確認された。これより、冷却装置1に設定される目標温度が-10℃~20℃と30℃の差がある広い場合でも、各伝熱管#1~#5に流入する液冷媒の流量を均等にでき、冷却装置1の冷却能力が高いことが判った。
【0032】
一方、
図3に示すように、上記従来例の如く流量調整用毛細管を用いる比較例では、目標温度が20℃(このときの蒸発器入口温度は30.3℃)である場合、5個の温度計により測定された空気温度の偏差の最大値は19.7K、標準偏差は12.4Kであり、本実施の形態と比較して著しく大きくなることが確認された。これより、上方の伝熱管よりも下方の伝熱管で空気が冷やされやすいことから、特に伝熱管#5に流入する液冷媒の流量が、伝熱管#1に流入する液冷媒の流量よりも多く、流量差が大きくなることが判った。この流量差は、流量調整用毛細管で流量調整しきれず、各伝熱管#1~#5の入口の水頭圧に差が生じることに起因するものと考えられる。また、目標温度を-10℃(このときの蒸発器入口温度は-0.2℃)に変更しても同様に、偏差の最大値は7.8K、標準偏差は4.0Kであることが確認された。これより、冷却装置1に設定される目標温度に関わらず、冷却装置1の冷却能力が低いことが判った。
【0033】
なお、流量調整用毛細管において例えば20℃のような高温時に空気温度の偏差が大きくなる要因は次のように考えられる。高温時は、例えば-10℃のような低温時と比較して蒸発器内の冷媒圧力が高く(凝縮器圧力に近づく)、膨張弁4による絞り膨張量が少なくなる。そして、冷媒があまり気化せず気相比が小さくなり、冷媒の比体積[m3/kg]が小さくなり、低温時と同じ質量流量[kg/s]を流す場合は体積流量[m3/s]及び流速が小さくなる。そのため毛細管での流動抵抗が減って各分岐流路で流量の不均一化が生じてしまう。それに対して、本実施の形態では、前述のように、高温時でも低温時と同様に性能(冷却能力)を発揮することができる。
【0034】
実施の形態2
図4は、実施の形態2による冷却装置1の構成例を示す図である。冷却装置1は、バイパス配管18と、バイパス配管18に介設されるバイパス量調整弁9とを更に備える。
【0035】
バイパス配管18の一方は、気液分離器5のガス冷媒出口52とガス冷媒分配ヘッダ62との間の配管16に接続されている。バイパス配管18の他方は、蒸発圧力調整弁8と圧縮機2との間の配管11に接続されている。バイパス量調整弁9は、バイパス配管18を流れる冷媒の流量を開度に応じて変化させる。バイパス量調整弁9の開度は、制御装置10により制御することができる。
【0036】
本実施の形態では、制御装置10により、ガス冷媒Cgが水封を破らないように、且つ、各立管63a,63b,63cを流れる液冷媒Clがバイパス配管18に流入することなく、バイパス配管18にガス冷媒Cgのみが流れるようにバイパス量調整弁9の開度を制御する。これにより、各伝熱管71,72,73に液冷媒をより一層均等な流量で流入させることができる。
【0037】
更に、本実施の形態の効果について説明する。
図5は、実施の形態2の効果を説明するためのグラフである。
図5の横軸は、バイパス量調整弁9の開度(%)であり、開度0%は実施の形態1に対応する。
図5の縦軸は、実施の形態1で説明したように、5個の温度計により測定された伝熱管#1~#5出口の空気温度の標準偏差である。
【0038】
本実施の形態によれば、バイパス量調整弁9の開度を、各立管63a,63b,63cを流れる液冷媒Clがバイパス配管18に流入することなく、バイパス配管18にガス冷媒Cgのみが流れる開度(例えば20%)に制御することで、標準偏差が最小値0.56Kとなることが確認された。従って、各伝熱管71,72,73に液冷媒をより一層均等な流量で流入させることができることが判った。また、バイパス量調整弁9の開度を20%よりも小さくすると(例えば、開度10%,15%)、各伝熱管71,72,73に流入するガス冷媒Cg増加していくが、標準偏差が0.74Kであることが確認され、上記実施の形態1(開度0%、標準偏差0.78K)よりも良好な結果が得られることが判った。
【符号の説明】
【0039】
1…冷却装置、2…圧縮機、3…凝縮器、4…膨張弁、5…気液分離器、51…液冷媒出口、52…ガス冷媒出口、6…冷媒分配装置、61…液冷媒分配ヘッダ、62…ガス冷媒分配ヘッダ、63a,63b,63c…立管、64…接続管、65a,65b,65c…トラップ、7…蒸発器、71,72,73…伝熱管、8…蒸発圧力調整弁、9…バイパス量調整弁、10…制御装置、11,12,13,14,15,16,17…配管、18…バイパス配管