(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134294
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電極、二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20240926BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240926BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/50 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/52 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240926BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240926BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240926BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240926BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240926BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/50
H01M4/52
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/136
H01M10/0568
H01M50/296
H01M50/284
H01M50/249
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044522
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小板橋 惟子
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】休石 紘史
(72)【発明者】
【氏名】沖 充浩
(72)【発明者】
【氏名】盛本 さやか
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM09
5H029AM12
5H029AM16
5H029DJ09
5H029EJ07
5H040AA36
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY08
5H040DD08
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA13
5H050EA12
5H050HA00
(57)【要約】
【課題】 実施形態は、サイクル性能に優れる電極、該電極を含む二次電池、該二次電池を含む電池パック、並びに、該電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【解決手段】 実施形態によれば、電極が提供される。電極は、活物質と、チタン含有固体電解質とを含む。活物質は、遷移金属酸化物を含む。X線吸収微細構造スペクトルにおいて、放電状態の電極についての第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たす。アナターゼ型二酸化チタンについての第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しい。第1入射X線エネルギーは、第2入射X線エネルギーよりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質と、チタン含有固体電解質とを含む電極であって、
前記活物質は遷移金属酸化物を含み、
放電状態の前記電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、
入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、
前記入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たし、かつ、
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、
入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、
前記入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、前記第1X線吸収量Iと等しく、
前記第1入射X線エネルギーが、前記第2入射X線エネルギーよりも高い、電極。
【請求項2】
前記チタン含有固体電解質は、チタン含有リチウムリン酸複合酸化物を含む、請求項1記載の電極。
【請求項3】
前記第1入射X線エネルギーと、前記第2入射X線エネルギーとの差が1eV以上4eV以下である、請求項1又は請求項2記載の電極。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物は、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、五酸化ニオブ、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型チタン複合酸化物及び単斜晶型ニオブチタン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2記載の電極。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物は、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物、硫酸鉄、バナジウム酸化物、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2記載の電極。
【請求項6】
正極と、
負極と、
電解質と
を含む二次電池であって、
前記正極及び前記負極からなる群より選択される少なくとも1つは、請求項1又は請求項2に記載の電極である二次電池。
【請求項7】
前記電解質はフッ素原子を含有する、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
請求項6に記載の二次電池を含む電池パック。
【請求項9】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に含む請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
複数の前記二次電池を含み、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項8に記載の電池パック。
【請求項11】
請求項8に記載の電池パックを含む車両。
【請求項12】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池においては、充放電サイクルに伴って電極の放電容量が低下する課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019-239890号公報
【特許文献2】特開2009-140910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、サイクル性能に優れる電極、該電極を含む二次電池、該二次電池を含む電池パック、並びに、該電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電極が提供される。電極は、活物質と、チタン含有固体電解質とを含む。活物質は、遷移金属酸化物を含む。
【0006】
放電状態の電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たす。
【0007】
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しい。第1入射X線エネルギーは、第2入射X線エネルギーよりも高い。
【0008】
他の実施形態によれば、実施形態の電極を含む二次電池が提供される。
【0009】
他の実施形態によれば、実施形態の二次電池を含む電池パックが提供される。
【0010】
他の実施形態によれば、実施形態の電池パックを含む車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
【
図2】
図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
【
図3】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
【
図4】
図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
【
図5】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
【
図6】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
【
図7】
図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
【
図8】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
【
図9】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【
図10】チタン含有固体電解質の一例を示す、X線吸収微細構造スペクトル。
【
図11】チタン含有固体電解質の他の例を示す、X線吸収微細構造スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0013】
(第1の実施形態)
充放電サイクルに伴って電極の放電容量が低下する要因の一つとして、電極中の活物質が劣化することが挙げられる。活物質の劣化は、例えば、副反応によって生じたフッ酸が、活物質と接触することにより生じ得る。
【0014】
本発明者らは、この結果を踏まえて更に研究した結果、第1の実施形態に係る電極を実現した。
【0015】
第1の実施形態に係る電極は、活物質と、チタン含有固体電解質とを含む。活物質は、遷移金属酸化物を含む。
【0016】
放電状態の電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たす。
【0017】
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しい。第1入射X線エネルギーは、第2入射X線エネルギーよりも高い。
【0018】
チタン含有固体電解質は、フッ酸を捕捉(トラップ)できる。そのため、例えば、副反応によって生じたフッ酸が、活物質と接触することを抑制することができる。したがって、活物質の劣化を抑制できる。
【0019】
第1X線吸収量は、放電状態の電極についてのX線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際の相対値である。第2X線吸収量は、アナターゼ型二酸化チタンについてのXAFSスペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際の相対値である。
【0020】
Ti-K吸収端のXAFSスペクトルにおいて、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲は、X線吸収端近傍構造(XANES:X-ray Absorption Near Edge Structure)領域である。XANES領域において、第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量と第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量とが等しく、かつ第1入射X線エネルギーが第2入射X線エネルギーよりも高いことは、放電状態の電極が、アナターゼ型二酸化チタンよりも価数が大きい材料を含むことを意味している。アナターゼ型二酸化チタンの価数は、例えば4価である。
【0021】
なお、XANES領域内の、第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量と第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量とが等しくなる点のすべてにおいて、第1入射X線エネルギーが第2入射X線エネルギーよりも高くてもよい。XANES領域内の、第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量と第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量とが等しくなる点のうち、少なくとも一点において、第1入射X線エネルギーが第2入射X線エネルギーよりも高くてもよい。
【0022】
アナターゼ型二酸化チタンよりも価数が大きい材料の例には、例えばチタン含有固体電解質が含まれ得る。アナターゼ型二酸化チタンよりも価数が大きいチタン含有固体電解質は、後述するように表面積が大きい。そのため、効率的にフッ酸を捕捉することができる。したがって、サイクル性能を向上できる。
【0023】
以下、実施形態に係る電極について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
係る電極は、例えば、非水電解質電池用であり得る。非水電解質電池は、例えば、アルカリ金属イオンをキャリアイオンとする非水電解質電池であり得る。例えば、リチウム電池(リチウムイオン電池)であり得る。係る電極は、例えば、二次電池用であり得る。
【0025】
非水電解質電池の製造工程においては、水が不可避不純物として混入しやすい。電極と組み合わせる非水電解質として、フッ素原子を含有する非水電解質を用いた場合、水と非水電解質とが副反応を生じ、非水電解質の分解産物として、フッ酸(フッ化水素、HF)が生成し得る。非水電解質の詳細については、後述する。
【0026】
フッ酸は、電極に含まれる材料に接触した際に、例えば遷移金属を溶出させることがある。溶出した遷移金属は、例えば、電極上に堆積し得る。そのほか、フッ酸は、電極を電解質と組み合わせた場合に、電解質と反応してフッ化リチウムを形成し得る。フッ化リチウムは、例えば、電極上に堆積し得る。電極上に堆積したこれらの物質は、抵抗上昇の要因となり得る。
【0027】
係る電極は、チタン含有固体電解質を含む。そのため、遷移金属の溶出、及び、フッ化リチウムの形成を抑制できる。したがって、電極の出力性能を向上できる。
【0028】
チタン含有固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。チタン含有固体電解質は、例えば、粒子状であり得る。チタン含有固体電解質粒子は、表面の少なくとも一部が非晶質であり得る。
【0029】
チタン含有固体電解質が完全に非晶質である、すなわち非晶質固体電解質であると、非水電解質と組み合わせた際に、非水電解質との副反応が増加する可能性がある。そのため、チタン含有固体電解質は、少なくとも一部が結晶質であることが好ましい。
【0030】
チタン含有固体電解質は、チタン含有複合酸化物を含むことが好ましい。チタン含有複合酸化物は、例えば、チタン含有リチウムリン酸複合酸化物であり得る。チタン含有リチウムリン酸複合酸化物の例としては、例えば、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質が挙げられる。上記一般式中のMαは、チタン(Ti)を含む。Mαは、チタン(Ti)のみからなってもよく、又は、Tiと、例えば、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上とを含んでもよい。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0031】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物のうち、組成にTiを含む化合物;及び、Li1+x+yAlxMγ2-xSiyP3-yO12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物のうち、組成にTiを含む化合物を挙げることができる。
【0032】
チタン含有固体電解質の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0033】
チタン含有固体電解質中のリチウムリン酸複合酸化物の含有量は、98質量%よりも多いことが好ましい。チタン含有固体電解質がリチウムリン酸複合酸化物を98質量%よりも多く含む場合、フッ酸捕捉効果を得やすくできるため、サイクル性能及び出力性能を向上することができる。チタン含有固体電解質中のリチウムリン酸複合酸化物の割合は、100質量%にすることができる。
【0034】
図10は、実施形態の電極が含み得るチタン含有固体電解質の一例を示すX線吸収微細構造スペクトルである。横軸は入射X線エネルギー、縦軸はX線吸収量の相対値である。X線吸収量の相対値とは、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1として規格化したX線吸収量の値である。スペクトル10は、アナターゼ型二酸化チタンのXAFSスペクトルである。スペクトル11は、チタン含有固体電解質の一例に係るXAFSスペクトルである。スペクトル10及び11は、各スペクトルにおける入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1として規格化されている。
【0035】
スペクトル11において、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の、ある入射X線エネルギーを第1入射X線エネルギーa、第1入射X線エネルギーaについてのX線吸収量を第1X線吸収量とする。第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たすようにする。
【0036】
さらに、スペクトル10において、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の、ある入射X線エネルギーを第2入射X線エネルギーb、第2入射X線エネルギーbについてのX線吸収量を第2X線吸収量とする。第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しくなるようにする。
【0037】
上記のようにすると、チタン含有固体電解質のスペクトル11上には、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなるような点aをとることができる。したがって、スペクトル11に係るチタン含有固体電解質を含む電極は、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなり得る。すなわち、当該電極のXAFSスペクトルは、アナターゼ型二酸化チタンのXAFSスペクトルと比較して高エネルギー側にシフトし得る。
【0038】
スペクトル11に示した例に係るチタン含有固体電解質は、例えば、以下のようにして、チタン含有固体電解質を表面処理することにより、作製できる。表面処理に供するチタン含有固体電解質としては、結晶質のものを用いることができる。表面処理は、例えば、以下のような酸処理により行うことができる。
【0039】
酸処理は、例えば、フッ酸水溶液に、チタン含有固体電解質を投入し、攪拌することによって行うことができる。フッ酸水溶液の濃度は、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。攪拌温度は、25℃以上45℃以下の範囲にすることが好ましい。攪拌時間は、1時間以上80時間以下の範囲にすることが好ましい。
【0040】
酸処理により、チタン含有固体電解質粒子の表面を非晶質化することができる。フッ酸水溶液の濃度を1質量%以上とすると、表面の非晶質化を効率的に進行させることができる。フッ酸水溶液の濃度を5質量%以下とすると、非晶質化が過度に進行することを抑制できる。そのため、チタン含有固体電解質粒子の内部の結晶構造を保ちやすい。したがって、粒子表面が非晶質であり、かつ、粒子の少なくとも一部が結晶質であるチタン含有固体電解質粒子が得られやすい。このようなチタン含有固体電解質粒子は、非晶質化の状態が安定であり、好ましい。
【0041】
酸処理は、フッ素原子を含有する液状電解質に水を添加した液体に、チタン含有固体電解質を浸漬することによっても、行うことができる。液状電解質の詳細については、後述する。フッ素原子を含有する液状電解質としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、又はビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)を電解質塩として含む液状電解質が挙げられる。液状電解質が含む電解質塩の種類は、1種又は2種以上にすることができる。液体中の水の濃度は、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましい。液体中の水の濃度を0.1質量%以上にすることにより、酸処理を効率的に行うことができる。液体中の水の濃度を1質量%以下とすることにより、非晶質化が過度に進行することを抑制できる。
【0042】
表面処理を行うことにより、チタン含有固体電解質の価数が大きくなり得る。そのため、表面処理を施したチタン含有固体電解質を含む電極は、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなり得る。
【0043】
また、表面処理を行うことにより、チタン含有固体電解質粒子の表面積が増加し得る。これは、表面処理によって粒子表面が非晶質化することに起因する。表面が非晶質であるチタン含有固体電解質粒子は、フッ酸を効率的に捕捉できる。
【0044】
これは、以下のようなメカニズムによるものであると考えられる。チタン含有固体電解質は、表面にフッ酸を捕捉可能な官能基を有している。上記のような表面処理によりチタン含有固体電解質粒子の表面を非晶質化すると、粒子の表面積が増加する。よって、フッ酸を捕捉可能な官能基が増加するため、チタン含有固体電解質粒子が捕捉可能なフッ酸の量が増加する。
【0045】
したがって、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高い電極は、チタン含有固体電解質のフッ酸捕捉能が高い。そのため、サイクル性能、及び、出力性能を向上できる。
【0046】
第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差(シフト量)は、1eV以上4eV以下の範囲内であることが好ましく、3eV以上3.5eV以下の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差が大きいと、チタン含有固体電解質において非晶質化している部分が多い傾向にある。
【0048】
第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差が過度に大きい場合、チタン含有固体電解質の内部まで非晶質化している可能性がある。チタン含有固体電解質の内部まで非晶質化している場合、チタン含有固体電解質のフッ酸捕捉能が低くなる可能性がある。第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差は、4.0eV以下であることが好ましく、3.5eV以下の範囲内であることがより好ましい。
【0049】
また、第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差が過度に小さい場合、チタン含有固体電解質の表面の少なくとも一部が非晶質であることによる、フッ酸捕捉能の向上効果が小さくなる可能性がある。第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差は、1.0eV以上であることが好ましく、3.0eV以上であることがより好ましい。
【0050】
図11は、チタン含有固体電解質の他の例を示すX線吸収微細構造スペクトルである。横軸は入射X線エネルギー、縦軸はX線吸収量の相対値である。スペクトル12は、チタン含有固体電解質の他の例に係るXAFSスペクトルである。チタン含有固体電解質の他の例は、上記の表面処理を行っていないことの他は、先に説明したスペクトル11に係るチタン含有固体電解質と同様のものである。
【0051】
スペクトル10及び12は、各スペクトルにおける入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1として規格化されている。
【0052】
スペクトル12において、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の、ある入射X線エネルギーを第1入射X線エネルギーc、第1入射X線エネルギーcについてのX線吸収量を第1X線吸収量とする。第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たすようにする。
【0053】
さらに、スペクトル10において、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の、ある入射X線エネルギーを第2入射X線エネルギーd、第2入射X線エネルギーdについてのX線吸収量を第2X線吸収量とする。第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しくなるようにする。
【0054】
スペクトル12上には、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなる点cは存在しない。したがって、電極がスペクトル12に係るチタン含有固体電解質を含む場合には、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなり得ない。
【0055】
X線吸収微細構造スペクトルは、以下のようにして取得することができる。
【0056】
<X線吸収微細構造解析>
(測定用サンプルの準備)
アナターゼ型二酸化チタン、チタン含有固体電解質等の物質について解析を行う場合には、解析に供する物質の粉末を、X線吸収微細構造(XAFS)解析に供する。アナターゼ型二酸化チタンとしては、市販のアナターゼ型二酸化チタン粉末のうち、純度99.5%以上のものを用いることができる。
【0057】
電極について解析を行う場合には、以下に説明するように、測定用電極を用いて電気化学測定セルを作製し、次いで電気化学測定セルを放電することにより、電極を放電状態とする。
【0058】
測定対象の電極が電池に組み込まれている場合には、以下のようにして電池から測定対象の電極を取り出し、洗浄および乾燥してから電気化学測定セルの作製に用いる。まず、電極を内蔵する電池を、アルゴンを充填したグローブボックス中で分解する。分解した電池から、測定対象の電極を取り出す。この電極を、適切な溶媒で洗浄する。洗浄に用いる溶媒としては、例えばメチルエチルカーボネートなどを用いることができる。洗浄した電極を、真空乾燥する。かくして、測定用電極を得る。
【0059】
次いで、測定用電極を用いて、電気化学測定セルを作製する。電気化学測定セルは、測定用電極と、対極としての金属リチウム箔と、非水電解質とを用いて作製できる。非水電解質は、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)中に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1Mの濃度で溶解させて調製したものを用いる。
【0060】
作製した電気化学測定セルを0.05Cで放電し、測定用電極の電位が、金属リチウム基準で3.0Vになるように調整する。このようにして、電極を放電状態とする。
【0061】
放電状態の電極を、X線吸収微細構造(XAFS)解析に供する。
【0062】
(XAFS解析)
XAFS解析は、大型放射光施設SPring-8などの放射光施設を用いて行うことができる。
【0063】
Ti-K端のXAFSの測定条件は以下のとおりである。
・分光器:Si(111)二結晶分光器
・高次光除去:Rhコートミラー6mrad
・入射X線サイズ:縦1mm×横1mm
・測定法:透過法
・検出器:イオンチャンバー
以上の条件で、入射X線エネルギーが4600eV以上6000eV以下の範囲における入射光強度I0および透過光強度I1を測定する。次式により、I0及びI1から、各入射X線エネルギーについてのX線吸収量を求める。式におけるμtは、X線吸収量を示す。
【0064】
【0065】
入射X線エネルギーをx軸、X線吸収量(μt)をy軸としてプロットすることにより、XAFSスペクトルを得ることができる。X線散乱による強度変化を表すVictoreen式を用いて、吸収端前のデータを最小二乗法により近似して、バックグラウンドを減算する。かくして、XAFSスペクトルからバックグラウンドを除去する。
【0066】
バックグラウンドを除去したXAFSスペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVのときのX線吸収量を1として、X線吸収量を規格化する。かくして、規格化したスペクトルを得ることができる。
【0067】
電極を放電状態としてからXAFS解析することにより、例えば電極中の活物質に含まれ得るTi原子を4価とすることができる。そのため、比較基準となるアナターゼ型二酸化チタンと、測定対象の電極とで、Tiの価数を揃えることができる。
【0068】
実施形態に係る電極について、さらに詳細に説明する。
【0069】
係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、チタン含有固体電解質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。活物質は、遷移金属酸化物を含む。
【0070】
活物質含有層は、活物質として、1種類の遷移金属酸化物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の遷移金属酸化物を組み合わせて含んでいてもよい。活物質は、遷移金属酸化物と、他の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。
【0071】
活物質の形態は、特に限定されない。活物質は、例えば、一次粒子の形態をとることもできるし、一次粒子が凝集してなる二次粒子の形態をとることもできる。活物質は、一次粒子と、二次粒子との混合物でもよい。活物質は、いわゆる粒子と呼ばれる大きさよりも、より大きな寸法を有する粒状又は塊状の形態を有していてもよい。
【0072】
活物質は、例えば、一次粒子及び二次粒子が集合した粉末状の形態をとり得る。活物質の粉末の平均粒子径は、0.1μm以上30μm以下の範囲内にあり得る。活物質の粉末の平均粒子径は、0.5μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0073】
平均粒子径の測定には、レーザー回折散乱法を用いることができる。レーザー回折散乱法によって得られる粒度分布チャートにおける、累積体積分布が50%となるような粒子径を、平均粒子径(D50)とする。
【0074】
活物質の比表面積は、特に制限されないが、0.1m2/g以上200m2/g未満の範囲内であり得る。比表面積は、5m2/g以上200m2/g未満であることが好ましい。
【0075】
比表面積が5m2/g以上であれば、電解質との接触面積を確保することができるため、良好な放電レート特性が得られやすく、また充電時間を短縮できる。一方、比表面積が200m2/g未満であれば、電解質との反応性が高くなり過ぎないため、寿命特性を向上させることができる。また、活物質を含有するスラリーの塗工性を良好にできる。スラリーについては、後述する。
【0076】
ここで、比表面積の測定は、粉体粒子表面に吸着占有面積が既知である分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法を用いる。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET(Brunauer, Emmett, Teller)法であり、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論である。これにより求められた比表面積のことをBET比表面積と称する。
【0077】
以下に、係る電極を負極とする場合と、正極とする場合に分けて説明する。
【0078】
1)負極
まず、実施形態に係る電極を負極とする場合について説明する。
【0079】
第1の実施形態に係る電極を負極とする場合は、活物質が含む遷移金属酸化物の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、五酸化ニオブ(Nb2O5)、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン酸化物が挙げられる。
【0080】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aMI
2-bTi6-cMII
dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、MIは、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0081】
上記単斜晶型ニオブチタン酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0082】
単斜晶型ニオブチタン酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0083】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0084】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0085】
活物質含有層中の活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)は、68質量%以上96質量%以下の割合で配合することが好ましい。チタン含有固体電解質は、0.05質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。結着剤は、2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0086】
負極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合の合計は、100質量%にすることができる。このとき、各材料の配合割合は、上述の割合にかかわらず、任意の値であってもよい。例えば、負極活物質を上記の割合で配合する場合には、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合を任意の値とすることにより、負極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合の合計を100質量%に調整することができる。導電剤又は結着剤の配合割合は、0質量%であってもよい。
【0087】
負極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合が、すべて上記の数値範囲内であり、かつ、配合割合の合計が100質量%であることが特に好ましい。
【0088】
チタン含有固体電解質の量を0.05質量%以上とすることにより、出力性能をより向上できる。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。エネルギー密度向上を図る上で、チタン含有固体電解質は30質量%以下にすることが好ましい。
【0089】
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体は、例えば、上記の材料を含む金属箔であり得る。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0090】
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0091】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
【0092】
負極の作製において、スラリーの溶媒としては、例えば水を用いることができる。
【0093】
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
【0094】
2)正極
続いて、実施形態に係る電極が正極である場合について説明する。
【0095】
例えば、第1の実施形態に係る電極を正極とする場合は、活物質の例には、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。酸化物は、遷移金属酸化物であり得る。遷移金属酸化物は、遷移金属と酸素とを含む化合物であり得る。遷移金属の種類は、1種又は2種以上にすることができる。遷移金属酸化物は、遷移金属と酸素からなる化合物であってもよく、遷移金属及び酸素以外の元素を含む化合物であってもよい。遷移金属酸化物の例には、例えば、リン酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩などのポリアニオン化合物が含まれる。リン酸塩の例としては、例えば、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物を挙げることができる。硫酸塩の例としては、例えば、硫酸鉄を挙げることができる。
【0096】
遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0097】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0098】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0099】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0100】
正極活物質含有層において、正極活物質は、80質量%以上98質量%以下の割合で配合することが好ましい。チタン含有固体電解質は、0.05質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。結着剤は、2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0101】
正極活物質、チタン含有固体電解質及び結着剤の配合割合の合計は、100質量%にすることができる。このとき、各材料の配合割合は、上述の割合にかかわらず、任意の値であってもよい。例えば、正極活物質を上記の割合で配合する場合には、チタン含有固体電解質及び結着剤の配合割合を任意の値とすることにより、正極活物質、チタン含有固体電解質及び結着剤の配合割合の合計を100質量%に調整することができる。結着剤の配合割合は、0質量%であってもよい。
【0102】
正極活物質、チタン含有固体電解質及び結着剤の配合割合が、すべて上記の数値範囲内であり、かつ、配合割合の合計が100質量%であることが特に好ましい。
【0103】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0104】
導電剤を加える場合には、正極活物質は、77質量%以上95質量%以下の割合で配合することが好ましい。チタン含有固体電解質は、0.05質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。結着剤は、2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0105】
正極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合の合計は、100質量%にすることができる。このとき、各材料の配合割合は、上述の割合にかかわらず、任意の値であってもよい。例えば、正極活物質を上記の割合で配合する場合には、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合を任意の値とすることにより、正極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合の合計を100質量%に調整することができる。結着剤の配合割合は、0質量%であってもよい。
【0106】
正極活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤の配合割合が、すべて上記の数値範囲内であり、かつ、配合割合の合計が100質量%であることが特に好ましい。
【0107】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電極を電解質と組み合わせて用いる場合に、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0108】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0109】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0110】
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。正極の作製において、スラリーの溶媒としては、例えばN-メチルピロリドン(NMP)を用いることができる。
【0111】
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、チタン含有固体電解質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
【0112】
第1の実施形態に係る電極は、活物質と、チタン含有固体電解質とを含む。活物質は、遷移金属酸化物を含む。
【0113】
放電状態の電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たす。
【0114】
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しい。第1入射X線エネルギーは、第2入射X線エネルギーよりも高い。そのため、係る電極は、サイクル性能を向上できる。
【0115】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。正極及び負極のうち少なくとも一方が、第1の実施形態に係る電極である。つまり、係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含む。
【0116】
係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
【0117】
また、係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0118】
さらに、係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0119】
係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0120】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0121】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第1の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。第1の実施形態に係る電極を正極として含む場合、負極は、第1の実施形態に係る電極でなくてもよい。例えば、負極は、第1の実施形態で説明したチタン含有固体電解質を含んでいなくてもよい。
【0122】
負極の詳細のうち、第1の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
【0123】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0124】
負極は、例えば、第1の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0125】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極集電体と、正極活物質含有層は、それぞれ、第1の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。第1の実施形態に係る電極を負極として含む場合、正極は、第1の実施形態に係る電極でなくてもよい。例えば、正極は、第1の実施形態で説明したチタン含有固体電解質を含んでいなくてもよい。正極の詳細のうち、第1の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
【0126】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0127】
正極活物質の平均一次粒子径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。平均一次粒子径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0128】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0129】
正極は、例えば、第1の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
【0130】
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0131】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0132】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0133】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0134】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0135】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0136】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0137】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示すことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、下記のとおりである。
【0138】
酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0139】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表され0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiyP3-yO12で表されMγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1である化合物を挙げることができる。
【0140】
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、LixPOyNzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合物(例えば、Li2.9PO3.3N0.46);ガーネット型構造のLa5+xAxLa3-xMδ2O12で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5である化合物;Li3Mδ2-xL2O12で表されMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;Li7-3xAlxLa3Zr3O12で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+xLa3Mδ2-xZrxO12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択される1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr2O12);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0141】
上記化合物のうち1以上を固体電解質として用いることができる。上記固体電解質を2以上用いてもよい。
【0142】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0143】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0144】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0145】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0146】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0147】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0148】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0149】
6)負極端子
負極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し1V以上3V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0150】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0151】
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0152】
図1は、二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0153】
図1及び
図2に示す二次電池100は、
図1に示す袋状外装部材2と、
図1及び
図2に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0154】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0155】
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、
図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0156】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0157】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0158】
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0159】
実施形態に係る二次電池は、
図1及び
図2に示す構成の二次電池に限らず、例えば
図3及び
図4に示す構成の電池であってもよい。
【0160】
図3は二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。
図4は、
図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0161】
図3及び
図4に示す二次電池100は、
図3及び
図4に示す電極群1と、
図3に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0162】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0163】
電極群1は、
図4に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0164】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0165】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分を含む。この部分は、負極集電タブ3cとして働く。
図4に示すように、負極集電タブ3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0166】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ3cと同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ3cに対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0167】
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含んでいる。そのため、係る二次電池は、サイクル性能を向上することができる。
【0168】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、組電池が提供される。係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0169】
係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0170】
次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0171】
図5は、組電池の一例を概略的に示す斜視図である。
図5に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
【0172】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、
図5の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0173】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0174】
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を含む。したがって、優れたサイクル性能を達成することができる。
【0175】
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0176】
係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0177】
また、係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0178】
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0179】
図6は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図7は、
図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0180】
図6及び
図7に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0181】
図6に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0182】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0183】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、
図7に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0184】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0185】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0186】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0187】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0188】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0189】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0190】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0191】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0192】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0193】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0194】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0195】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0196】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0197】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0198】
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、電池パックは、優れたサイクル性能を達成できる。
【0199】
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0200】
係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0201】
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0202】
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0203】
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0204】
次に、実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0205】
図8は、車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0206】
図8に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図8に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0207】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0208】
図8では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0209】
次に、
図9を参照しながら、実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0210】
図9は、車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。
図9に示す車両400は、電気自動車である。
【0211】
図9に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0212】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、
図9に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0213】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0214】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0215】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0216】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0217】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0218】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0219】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば
図9に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0220】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0221】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0222】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0223】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0224】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0225】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0226】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0227】
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、電池パックのサイクル性能が高いため、車両の信頼性が高い。
【実施例0228】
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0229】
(実施例1)
<LATPの表面処理>
LATP粒子として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3の粒子を用意した。LATP粒子の表面処理は以下のようにして行った。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のビーカーに、2質量%のフッ酸水溶液を入れ、LATP粒子を投入した。攪拌は、45℃で80時間行った。攪拌の後、LATP粒子を取り出して水洗した。こうして、表面処理LATP粒子を得た。
【0230】
<負極の作製>
負極活物質として、単斜晶型ニオブチタン酸化物(Nb2TiO7)粉末を準備した。ニオブチタン酸化物粉末の平均二次粒子径は、7.5μmであった。ニオブチタン酸化物粉末の比表面積は、4.0m2/gであった。また、導電剤としてアセチレンブラックを準備し、結着剤としてCMCとSBRを準備した。チタン含有固体電解質としては、先に説明した表面処理LATP粒子を準備した。次に、負極活物質、導電剤、CMC、SBRおよびチタン含有固体電解質を、88質量%:5質量%:2質量%:2質量%:3質量%の割合で、溶媒としての水に加えて混合し、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。次いで、120℃の恒温槽内で塗膜を乾燥させて負極活物質含有層を形成した。負極活物質含有層をプレスし、負極を得た。
【0231】
(実施例2~9)
LATPの表面処理における、フッ酸濃度、攪拌温度及び攪拌時間を表1に示す通りに変更したことの他は、実施例1と同様にして、負極を作製した。
【0232】
(比較例1)
負極の作製において、チタン含有固体電解質として、表面処理LATP粒子の代わりに、表面処理の施されていないLATP粒子を用いたことの他は、実施例1と同様にして、負極を作製した。なお、比較例1においてはLATPの表面処理を行っていないため、表1における比較例1のフッ酸濃度、攪拌温度及び攪拌時間の欄は「-」で示した。
【0233】
(実施例10)
LATPの表面処理は、実施例1と同様にして行った。
<正極の作製>
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)粉末を準備した。導電剤として、アセチレンブラックを準備した。結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。チタン含有固体電解質としては、先に説明した表面処理LATP粒子を準備した。次に、正極活物質、導電剤、結着剤およびチタン含有固体電解質を、87質量%:5質量%:5質量%:3質量%の割合で、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。次いで、120℃の恒温槽内で塗膜を乾燥させ、正極活物質含有層を形成した。正極活物質含有層をプレスし、正極を得た。
【0234】
(実施例11~18)
LATPの表面処理における、フッ酸濃度、攪拌温度及び攪拌時間を表2に示す通りに変更したことの他は、実施例10と同様にして、正極を作製した。
【0235】
(比較例2)
正極スラリーの調製において、表面処理LATP粒子を、表面処理の施されていないLATP粒子に変更したことの他は、実施例10と同様にして、正極を作製した。なお、比較例2においてはLATPの表面処理を行っていないため、表2における比較例2のフッ酸濃度、攪拌温度及び攪拌時間の欄は「-」で示した。
【0236】
<電気化学測定セルの作製>
測定用電極と、対極としての金属リチウム箔と、非水電解質とを用いて、電気化学測定セルを作製した。測定用電極として、各実施例及び各比較例で作製した電極を用いた。非水電解質は、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)中に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1Mの濃度で溶解させて調製した。
【0237】
<0.2C放電容量の測定>
(実施例1~9,比較例1)
作製した電気化学測定セルを、金属リチウム電極基準で1.0V~3.0Vの電位範囲
で、室温で充放電させた。充電時及び放電時の電流値は、0.2C(時間放電率)とした。放電時の容量を測定し、0.2C放電容量(初回放電容量)とした。
【0238】
(実施例10~18,比較例2)
電気化学測定セルの充放電の電位範囲を、金属リチウム電極基準で3.0V~4.2Vに変更したこと以外は、実施例1~9,比較例1で行ったのと同様にして放電時の容量を測定し、0.2C放電容量(初回放電容量)とした。
【0239】
<10C/0.2C放電容量比の測定>
放電時の電流値を10Cに変更したこと以外は、各実施例及び比較例について行った0.2C放電容量の測定と同様にして、電気化学測定セルを充放電させた。放電時の容量を測定し、10C放電容量とした。10C放電容量の、初回放電容量に対する放電容量の比を求めた。
【0240】
<充放電サイクル試験>
(実施例1~9,比較例1)
電気化学測定セルを、金属リチウム電極基準で1.0V~3.0Vの電位範囲で、室温で充放電させた。充電時及び放電時の電流値は、1Cとした。
【0241】
上記充電及び放電を、1回の充放電サイクルとした。この充放電サイクルを、室温で、100回繰り返して行った。
【0242】
充放電を100サイクル繰り返した後の電気化学測定セルに対し、上述と同様にして、0.2C放電容量を測定した。この時の放電容量を、100サイクル後放電容量とした。100サイクル後放電容量を初回放電容量で除して100を掛けることにより、初回放電容量を100%とした場合の容量維持率(%)を算出した。
【0243】
(実施例10~18,比較例2)
電気化学測定セルの充放電の電位範囲を、金属リチウム電極基準で3.0V~4.2Vに変更したこと以外は、実施例1~9,比較例1で行ったのと同様にして、充放電サイクル試験を行い、容量維持率(%)を算出した。
【0244】
<測定用サンプルの準備>
測定用サンプルとして、市販の純度99.5%のアナターゼ型二酸化チタン粉末を準備した。また、実施例及び比較例の電極を以下のようにして放電状態にして、測定用サンプルとした。
【0245】
電気化学測定セルを0.05Cで放電し、実施例及び比較例の電極の電位が、金属リチウム基準で3.0Vになるように調整した。このようにして、電極を放電状態とした。
【0246】
アルゴンボックス内で、電気化学測定セルから放電状態の電極を取り出し、メチルエチルカーボネート(MEC)で洗浄した。洗浄後の電極を真空乾燥させ、測定用サンプルとした。
【0247】
<XAFS解析>
実施例及び比較例の電極、及び、アナターゼ型二酸化チタンの測定用サンプルを、先に説明したのと同様にして、XAFS解析に供した。XAFS解析は、SPring-8のBL16B2を用いて行った。
【0248】
各実施例及び比較例の電極についての規格化したスペクトルと、アナターゼ型二酸化チタンについての規格化したスペクトルとを、以下のようにして比較し、シフト量を算出した。
【0249】
各実施例及び比較例の電極についての規格化したスペクトルから、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量が0.2である点を取った。アナターゼ型二酸化チタンについての規格化したスペクトルから、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が0.2である点を取った。
【0250】
それぞれの点についての第1入射X線エネルギー(eV)と第2入射X線エネルギー(eV)の差を算出し、「TiO2からのシフト量(eV)I=0.2」とした。
【0251】
上記と同様にして、各スペクトルから、第1X線吸収量が0.5である点、及び、第2X線吸収量が0.5である点をそれぞれ取った。それぞれの点についての第1入射X線エネルギー(eV)と第2入射X線エネルギー(eV)の差を算出し、「TiO2からのシフト量(eV)I=0.5」とした。
【0252】
各実施例及び比較例の測定結果を、表1及び表2に示す。
【0253】
【0254】
【0255】
容量維持率は、サイクル性能の指標となる。10C/0.2C放電容量比は、出力性能の指標となる。
【0256】
実施例の電極は、いずれも、「TiO2からのシフト量(eV)I=0.2」及び「TiO2からのシフト量(eV)I=0.5」が正の値であった。すなわち、第1X線吸収量と第2X線吸収量が、0.2で等しいとき、及び、0.5で等しいとき、のいずれにおいても、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高かった。これは、実施例の電極は、いずれもチタン含有固体電解質として表面処理が施されたLATP粒子を含むためであると考えられる。表面処理LATP粒子は価数が大きいため、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなったと考えられる。
【0257】
比較例の電極は、活物質含有層中にチタン含有固体電解質を含む電極であるものの、いずれも「TiO2からのシフト量(eV)I=0.2」及び「TiO2からのシフト量(eV)I=0.5」が0であった。すなわち、第1X線吸収量と第2X線吸収量が、0.2で等しいとき、及び、0.5で等しいとき、のいずれにおいても、第1入射X線エネルギーが、第2入射X線エネルギーよりも高くなっていなかった。これは、比較例の電極が含むLATP粒子には、いずれも表面処理が施されていないために、LATPの価数が変化しなかったためであると考えられる。
【0258】
実施例の電極は、いずれも、比較例の電極と比較して、10C/0.2C放電容量比及び容量維持率が高かった。そのため、実施例の電極は、出力性能及びサイクル性能に優れることが明らかとなった。
【0259】
また、「TiO2からのシフト量(eV)I=0.2」及び「TiO2からのシフト量(eV)I=0.5」が、1.0以上4.0以下の範囲内である実施例2~9、11~18は、10C/0.2C放電容量比及び容量維持率が特に高かった。「TiO2からのシフト量(eV)I=0.2」及び「TiO2からのシフト量(eV)I=0.5」が、3.0以上3.5以下の範囲内である実施例2,3,5~9、11,12,14~18は、10C/0.2C放電容量比及び容量維持率がさらに高かった。よって、第1入射X線エネルギーと、第2入射X線エネルギーとの差が1eV以上4eV以下である電極は、出力性能及びサイクル性能に特に優れ、当該差が3eV以上3.5eV以下である電極は、出力性能及びサイクル性能にさらに優れることが明らかとなった。
【0260】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電極が提供される。電極は、活物質と、チタン含有固体電解質とを含む。活物質は、遷移金属酸化物を含む。
【0261】
放電状態の電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たす。
【0262】
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、第1X線吸収量Iと等しい。第1入射X線エネルギーは、第2入射X線エネルギーよりも高い。そのため、係る電極は、サイクル性能を向上できる。
【0263】
以下に、実施形態に係る発明を付記する。
【0264】
[1] 活物質と、チタン含有固体電解質とを含む電極であって、
前記活物質は遷移金属酸化物を含み、
放電状態の前記電極についてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、
入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、
前記入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第1入射X線エネルギーにおける第1X線吸収量Iが、0.2≦I≦0.6を満たし、かつ、
アナターゼ型二酸化チタンについてのTi-K吸収端のX線吸収微細構造スペクトルにおいて、
入射X線エネルギーが5500eVであるときのX線吸収量を1とした際、
前記入射X線エネルギーが4930eV以上5000eV以下の範囲内の第2入射X線エネルギーにおける第2X線吸収量が、前記第1X線吸収量Iと等しく、
前記第1入射X線エネルギーが、前記第2入射X線エネルギーよりも高い、電極。
【0265】
[2] 前記チタン含有固体電解質は、チタン含有リチウムリン酸複合酸化物を含む、[1]記載の電極。
【0266】
[3] 前記第1入射X線エネルギーと、前記第2入射X線エネルギーとの差が1eV以上4eV以下である、[1]又は[2]記載の電極。
【0267】
[4] 前記遷移金属酸化物は、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、五酸化ニオブ、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型チタン複合酸化物及び単斜晶型ニオブチタン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の電極。
【0268】
[5] 前記遷移金属酸化物は、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物、硫酸鉄、バナジウム酸化物、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の電極。
【0269】
[6] 正極と、
負極と、
電解質と
を含む二次電池であって、
前記正極及び前記負極からなる群より選択される少なくとも1つは、[1]~[5]のいずれか一項に記載の電極である二次電池。
【0270】
[7] 前記電解質はフッ素原子を含有する、[6]に記載の二次電池。
【0271】
[8] [6]又は[7]に記載の二次電池を含む電池パック。
【0272】
[9] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に含む[8]に記載の電池パック。
【0273】
[10] 複数の前記二次電池を含み、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[8]又は[9]に記載の電池パック。
【0274】
[11] [8]~[10]のいずれか一項に記載の電池パックを含む車両。
【0275】
[12] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[11]に記載の車両。
【0276】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…正極端子、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。