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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134306
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240926BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20240926BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/56 E
H05K5/00 D
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044541
(22)【出願日】2023-03-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠生
【テーマコード(参考)】
4E360
5E322
5F061
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB70
4E360CA02
4E360EA03
4E360EE07
4E360GA11
4E360GB99
4E360GC08
5E322AA01
5E322AB01
5E322EA10
5E322FA05
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA02
5F061CB03
5F061FA02
(57)【要約】
【課題】プリント基板に高さの高い電気部品が存在して、ケースの第1部位の高さが第2部位より高くなった場合でも、樹脂材をスムーズに流して、樹脂材に気泡を生じさせにくくする。
【解決手段】電気部品にプリント基板からの長さが第1部品距離である第1電気部品と、プリント基板からの長さが第1部品距離より短い第2部品距離である第2部品とが含まれる。また、ケースの内、第1部品が配置される第1部位のプリント基板からの長さである第1ケース距離は、第2部品が配置される第2部位のプリント基板からの長さである第2ケース距離より長い。そして、プリント基板の流入口は、ケースの第2部位に開口し、ケースにはプリント基板の流入口と対向する部位から第1部位に向かうにつれてプリント基板からの長さであるケース傾斜距離を漸増する傾斜部が形成されている。流入口から流入された樹脂材は、傾斜部に沿ってスムーズに第1部位に流れ込むこととなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気部品を保持し、前記電気部品間に電気回線をプリントするプリント基板と、
このプリント基板を保持するケースと、
このケース内で、前記電気部品と前記プリント基板とを埋設する樹脂材とを備える電子装置であって、
前記プリント基板には、前記樹脂材を前記ケース内に流入する流入口が開口しており、
前記電気部品には、前記プリント基板から端面迄の長さが第1部品距離である第1電気部品と、前記プリント基板から端面迄の長さが前記第1部品距離より短い第2部品距離である第2電気部品とが含まれ、
前記ケースの内、前記第1電気部品が配置される第1部位の前記プリント基板から内面までの長さである第1ケース距離は、前記第2電気部品が配置される第2部位の前記プリント基板から内面迄の長さである第2ケース距離より長く、
前記プリント基板の前記流入口は、前記ケースの前記第2部位に開口しており、
前記ケースには、前記プリント基板の前記流入口と対向する部位から前記第1部位に向かうにつれて、前記プリント基板から内面迄の長さであるケース傾斜距離を漸増する傾斜部が形成されている
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記電気部品には、複数の前記第1電気部品が含まれ、
前記ケースの前記第1部位には、複数の前記第1電気部品が纏めて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
複数の前記第1電気部品の前記第1部品距離は互いに異なり、複数の前記第1電気部品の内、前記第1部品距離が長い前記第1電気部品が、中央部に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ケースの前記傾斜部は、前記プリント基板の前記流入口と対向する部位から、複数の前記第1電気部品の内、中央部に位置する前記第1電気部品が配置される前記第1部位との間に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記ケースの前記第1ケース距離は、前記第1電気部品の前記第1部品距離より長く、前記ケースの内面と前記第1電気部品の端面との間には、
前記ケースの前記第1部位に流入する前記樹脂材が通過する流路部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記ケースの内周と、前記プリント基板の外周との間には、前記樹脂材が通過可能な樹脂材通過隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記ケースの前記第1部位の前記第1ケース距離は、前記ケースの前記傾斜部の前記ケース傾斜距離が最も長い部位の長さである第3ケース距離と同等以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の記載は電子装置に関し、例えばエンジンの制御装置等として用いて有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気部品が実装されたプリント基板を収納するケース内へ樹脂材の充填性を高める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-211107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ケースとプリント基板との間に樹脂材を流入するようにしている。しかし、ケースとプリント基板との間に充分な隙間が無い場合もある。そのような場合には、プリント基板に流入口を設けて、その流入口から樹脂材を注入する事が考えられる。ただ、樹脂材には所定の粘度がある為、流入口から入った樹脂材が、流入口周辺に停滞すると、製造工程の時間が掛かってしまう事となる。
【0005】
また、プリント基板に実装される電気部品に、プリント基板からの高さの高いものがある場合、ケースのうち、高さの高い電気部品に対応する部位(第1部位)を他の部位(第2部位)より高くすることが考えられる。するとケースに傾斜を設けて樹脂材を注入したとしても、各方向から第1部位に樹脂材が流れ込むこととなる。その為、樹脂材の複数の流れが合流してしまい、樹脂材中に気泡が生じてしまう虞がある。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、プリント基板に配置される電気部品にプリント基板からの高さの高い電気部品が存在して、ケースの第1部位の高さが第2部位より高くなった場合でも、樹脂材をスムーズに流せるようにすることを課題とする。また、第1部位へ樹脂材を流れやすくして、樹脂材に気泡を生じさせにくくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1は、複数の電気部品を保持し電気部品間に電気回線をプリントするプリント基板と、このプリント基板を保持するケースと、このケース内で電気部品とプリント基板とを埋設する樹脂材とを備える電子装置である。そして、本開示の第1の電子装置は、プリント基板に樹脂材をケース内に流入する流入口が開口しており、電気部品にプリント基板から端面迄の長さが第1部品距離である第1電気部品と、プリント基板から端面迄の長さが第1部品距離より短い第2部品距離である第2電気部品とが含まれている。また、ケースの内、第1電気部品が配置される第1部位のプリント基板から内面迄の長さである第1ケース距離は、第2電気部品が配置される第2部位のプリント基板から内面迄の長さである第2ケース距離より長い。そして、プリント基板の流入口は、ケースの第2部位に開口しており、ケースには、プリント基板の流入口と対向する部位から第1部位に向かうにつれてプリント基板から内面迄の長さであるケース傾斜距離を漸増する傾斜部が形成されている。
【0008】
本開示の第1の電子装置は、プリント基板の流入口と対向する部位から第1部位に向かうにつれてケース傾斜距離を漸増する傾斜部がケースに形成されているので、流入口から流入された樹脂材は、傾斜部に沿ってスムーズに第1部位に流れ込むこととなる。そして、第1部位に流れ込んだ樹脂材はプリント基板に向けて均一に樹脂材の液面を上昇させる。その為、樹脂材内に気泡を閉じこめにくくすることができる。
【0009】
本開示の第2の電子装置は、電気部品に複数の第1部品が含まれている。そして、ケースの第1部位には、複数の第1部品が纏めて配置されている。複数の第1部品を第1部位に纏めることで、ケースの体積を小さくすることが可能である。
【0010】
本開示の第3は、複数の第1部品の第1部品距離が互いに異なることを想定している。即ち、第1部品でも第1部品距離が異なる場合があることを前提としていえる。そして、複数の第1部品の内、第1部品距離が長い第1部品を、中央部に配置している。中央部に最も第1部品距離が長い第1部品を配置することで、ケース内にバランスを良くすることができる。
【0011】
本開示の第4は、ケースの傾斜部を、プリント基板の流入口と複数の第1部品の内中央部に配置される第1部品との間に形成している。傾斜部を複数の第1部品の内中央部に向けて形成することで、傾斜部より第1部位に流入した樹脂材を第1部位内でスムーズに流すことができる。
【0012】
本開示の第5は、ケースの第1ケース距離を第1部品の第1部品距離より長くしている。これにより、ケースの第1部位の内面と第1電気部品の端面との間に、樹脂材が通過する流路部を形成している。本開示の第5によれば、プリント基板の流入口から流入されケースの傾斜部を流れた樹脂材を、まず、第1部位の流路部に流入させることができる。そして、第1部位に流入した樹脂材を、プリント基板に向けて均一に液面上昇させることが可能となる。
【0013】
本開示の第6は、ケースの内周とプリント基板の外周との間に、樹脂材が通過可能な樹脂材通過隙間が形成されている。樹脂材はプリント基板の流入口よりケース内に流入し、第1部位に流れ込んだ樹脂材はプリント基板に向けて均一に樹脂材の液面を上昇させる。液面を上昇させた樹脂材は、ケースの内周とプリント基板の外周との間に形成された樹脂材通過隙間を通過することで、液面の上昇を継続させることができる。これにより、ケースの内面とプリント基板との間に気泡が閉じ込められるのを抑制することができる。
【0014】
本開示の第7は、ケースの第1部位の第1ケース距離の長さを、ケースの傾斜部のケース傾斜距離が最も長い部位の長さである第3ケース距離と同等以上に設定している。ケースの第1ケース距離が傾斜部の最大長さである第3ケース距離以上であるので、傾斜部を流れた樹脂材がケースの第1部位に流れ込みやすくなっている。これによっても、流入口より流入した樹脂材を第1部位にスムーズに流すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、プリント基板の側面図である。
図2図2は、プリント基板の正面図である。
図3図3は、プリント基板をケースに装着した一例の状態を模式的に示す断面図である。
図4図4は、ケースの平面図である。
図5図5は、ケースの側面図である。
図6図6は、ケースに電気部品を装着した他の例の状態を模式的に示す平面図である。
図7図7は、ケースに電気部品を装着した更に他の例の状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。図1は、電子装置10に用いるプリント基板100を側面から見た図で、図2はプリント基板100を正面から見た図ある。プリント基板100は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、テフロン樹脂製の板材でできている。エポキシ樹脂の場合、ガラス繊維で強化したエポキシ基板とするのが望ましい。そして、プリント基板100は、長辺が100~200ミリメートル程度、短辺が80~150ミリメートル程度の凡そ長方形形状をしている。プリント基板100には各種の電気部品が実装されている。図1及び図2においては、電解コンデンサ111がプリント基板100に配置されている。また、プリント基板100には、メモリを内蔵するマイコン121、抵抗122、コンデンサ123、半導体チップ124、トランジスタ125、ダイオード126や電界効果トランジスタMOFSET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)127等も配置されている。
【0017】
ここで、電解コンデンサ111はその端面1101とプリント基板100との間の長さである第1部品距離H10が30ミリメートル程度となっている。一方、マイコン121等の他の電気部品では、その端面1201とプリント基板100との間の長さである第2部品距離H20が10ミリメートル程度未満である。例えば、マイコン121の高さは、1.5ミリメートル程度である。そこで、第1部品距離H10が大きい電解コンデンサ111等を第1電気部品110と総称し、第2部品距離H20が相対的に短いマイコン121等を第2電気部品120と総称する。なお、図1に於いて、第1部品距離H10及び第2部品距離H20は、上下方向となっているが、実際のプリント基板100の配置は、車両等との関係で定まる、図1の左右方向が車両に取り付けられた状態で、天地方向となる場合もある。
【0018】
プリント基板100には、樹脂材140(図3図示)を注入する流入口150が開口している。樹脂材140は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂であり、ケース200内に流入する状態では液状である。後述するように、液状の樹脂材140はケース200内に流入後硬化させる。硬化させた後には、第1電気部品110や第2電気部品120の防水を行うと共に、第1電気部品110や第2電気部品120を熱的、機械的衝撃から保護する封止材として機能する。樹脂材140は、液状の状態では所定の粘度はあるが流動性が高く、流入口150からケース200内に流入する。例えば、エポキシ樹脂を用いた場合には、樹脂材140の流動性は、2パスカル・秒(Pa・s)程度であり、ウレタン樹脂の場合は1.5パスカル・秒(Pa・s)程度である。樹脂材140は、ケース200に流入後、加熱して硬化させている。従って、ケース200が車両に組付けられた状態では、樹脂材140がケース200から漏れ出ることはない。
【0019】
なお、流入口150は直径が10ミリメートル程度の円形で、プリント基板100を貫通している。流入口150はプリント基板100の中心近くに開口しており、流入口150から流入した樹脂材140がケース200の全体に流れやすくなっている。かつ、流入口150は、第1電気部品110が配置される位置の近辺に開口している。換言すれば、流入口150と第1電気部品110との間に第2電気部品120を極力配置しないようにしている。尤も、流入口150と第1電気部品110との間に、第2電気部品120を一切配置しないようにすることは、実用的でないので、ある程度の第2電気部品120の配置は避けられない。第2電気部品120が介在すると、流入口150から第1電気部品110までの距離が伸びることも避けられないが、本開示では、後述する傾斜部230をケース200に設けることで、樹脂を第1電気部品110の位置に流し込むようにしている。
【0020】
プリント基板100には、第1電気部品110や第2電気部品120を電気接続する電気回路がプリントされている。プリントされた電気回路はコネクタ130にも電気接続している。コネクタ130は、図示しないバッテリの電源線と接地線と電気接続して、バッテリからの電流を受けるようになっている。また、コネクタ130には、図示しない各種センサとも電気接続し、各種センサからの電気信号をプリント基板100上のマイコン121や半導体チップ124に伝達する。更に、コネクタ130を介して、プリント基板100の第2電気部品120は、各種アクチュエータとも電気接続し、各種アクチュエータを駆動する電気信号を出力する。なお、図2の例では、二輪車の内燃機関の燃料噴射や点火の制御と、二輪車の回転電機の回転駆動や発電の制御を行っている。そして、内燃機関の制御用の信号は比較的低出力であるのに対し、回転電機の駆動電流は比較的大電流となる。その為、図2の例ではコネクタ130は2つ用意され、一方は内燃機関の制御用の端子が接続され、他方は回転電機の駆動用の端子が接続される。
【0021】
電子装置10に用いるケース200の平面視は、図4に示すように、プリント基板100と略同一形状となる長方形形状となっている。なお、平面視とは、ケース200の内部が見える方向で、図5の上方から下方を見た図である。ケース200は、アルミニウム合金をダイキャスト成形して形成している。ケース200の周辺部には、コネクタ130を通過させるコネクタ開口部202が形成されている。かつ、ケース200の周辺部には、ケース200を車両に固定するためのフランジ部203も形成されている。そして、フランジ部203には、ボルト通し穴204が開口している。図4の上方のボルト通し穴204は長孔となっており、車両への組付け時の位置調整がしやすくなっている。
【0022】
図5に示すように、ケース200の外表面には放熱フィン205が形成されている。放熱フィン205は、プリント基板100に実装された電気部品で発生した熱を外部に放出するものである。発熱の多い電気部品としては、電界効果トランジスタ127が代表的である。図2の例では、電界効果トランジスタ127の周囲に固定穴105が開口しており、プリント基板100はこの固定穴105を用いてケース200のネジ穴201にネジ止めされている。即ち、プリント基板100は発熱の多い電気部品の辺りでケース200に接するようになっている。
【0023】
図3及び図5に示すように、ケース200には傾斜部230が形成されている。より具体的には、ケース200の内、第1電気部品110が配置される第1部位210では、ケース200の内面とプリント基板100との間の距離である第1ケース距離H11が、第1部品距離H10より5ミリメートル程度長くなるように形成されている。また、ケース200の内、第2電気部品120が配置される第2部位220では、ケース200の内面とプリント基板100との間の距離である第2ケース距離H21が、第2部品距離H20より5ミリメートル程度長くなるように形成されている。そして、流入口150は、ケース200の第2部位220に対向する位置に開口している。傾斜部230は、ケース200の内、流入口150の開口する第2部位220から、第1部位210に向けて、プリント基板100からケース内面迄の長さであるケース傾斜距離H30を漸増する形状に形成されている。なお、傾斜部230の傾斜角度は20度より大きくするのが望ましく、本例では30度としている。
【0024】
従って、傾斜部230のケース傾斜距離H30は、第1部位210に接する部位で最も長くなる。この最も長くなったケース傾斜距離H30が第3ケース距離H31で、本例では第3ケース距離H31は第1ケース距離H11より5ミリメートル程度短くなっている。尤も、第3ケース距離H31は第1ケース距離H11より長くなければ良く、第3ケース距離H31と第1ケース距離H11とを同じにしても良い。寧ろ、第3ケース距離H31を第1ケース距離H11と同じにすれば、傾斜部230を流れた樹脂材140がそのまま第1部位に入って、樹脂材140の流れがスムーズになって望ましい。
【0025】
流入口150からケース200に注入された樹脂材140は、まず、傾斜部230の最も浅い部位に滴下する。その為、滴下時に空気を巻き込むことを抑制できている。滴下した樹脂材140は、傾斜部230に沿って流れる。そして、ケース200の第1部位210に流入する。この際、上述のように、第1部位210では、第1ケース距離H11が、第1部品距離H10より5ミリメートル程度長くなるように形成されているので、第1部位210に流入した樹脂材140の流れは、第1電気部品110によって阻害されることはない。
【0026】
換言すれば、第1ケース距離H11が、第1部品距離H10より長くなるように形成されることで、ケース200の内面と第1電気部品110の端面1101との間に流路部240が形成される。その為、プリント基板100の流入口150から流入された樹脂の流れは、以下のようになる。ケース200内に注入された樹脂材140は、まず、傾斜部230を流れる。樹脂材140は、注入時の圧力と重力により傾斜部230に滞留することはなく、傾斜部230をケース200の第1部位210に向けて流れる。即ち、樹脂材140は常に定められた流路(傾斜部230)から第1部位210に流れることとなる。その為、樹脂材140が全周から第1部位210に流入することは無く、空気の巻き込みも抑制される。そして、第1部位210に流入した樹脂材140は、流路部240を流れて、第1部位210にまんべんなく広がることとなる。
【0027】
上述のように、傾斜部230を形成することで樹脂材140の流れ方向が規制されている。その為、第1部位210における流路部240においても、樹脂材140の流れ方向は一定している。その結果、第1電気部品110のように第1部品距離H10の長い部品のであっても、第1電気部品110と第1部位210との間に気泡が滞留することが抑制される。何らかの原因で気泡が生じたとしても、その気泡は流路部240を流れる樹脂材140の流れによって押し出されることとなる。
【0028】
ここで、気泡は硬化した後の樹脂材140にとっては欠損部と見做すことができる。また硬化後の樹脂材140において、気泡を含む部分と気泡を含まない部分とでは熱膨張係数も異なる。従って、気泡が樹脂材140内に閉じ込められると、その個所に応力集中を招く可能性がある。これが第1部品距離H10の高い第1電気部品110の付近で生じると、第1電気部品110に過大な応力が掛かる恐れがある。このように、樹脂材140内に気泡が閉じ込められることは、内部の電子部品の保護機能を阻害する要因となる。それに対し、本開示では、流路部240内の樹脂材140の流れを整流することで、気泡の閉じ込めを抑制している。
【0029】
上述のように、ケース200が車両に組付けられた状態では、図3図5の上下方向と天地方向とは一致していない。ただ、樹脂材140を流入させる状態では、図3及び図5の上下方向は天地方向となっている。従って、傾斜部230より第1部位210に流入して第1部位210にまんべんなく広がった樹脂材140は、樹脂材140の注入に応じて液面を上昇させることとなる。まず、第1部位210の流路部240を樹脂材140で満たし、次いで、傾斜部230を樹脂材140の液面が上昇することとなる。
【0030】
傾斜部230での樹脂材140の液面上昇に伴って、コネクタ130の配置される位置まで樹脂材140が満たされるようになる。ここで、コネクタ130の図3において最も下方となる位置とプリント基板100との距離を、コネクタ距離H40とする。このコネクタ距離H40は、第1部品距離H10と第2部品距離H20との中間である。その為、コネクタ130は第1電気部品110と第2電気部品120との中間の高さの第3電気部品であるとも考えられる。若しくは、コネクタ130は第1電気部品110よりコネクタ距離H40が短いので、第2電気部品120の一部であるとも考えられる。
【0031】
本開示では、コネクタ130の周囲に気泡が残されるのも抑制できる。何故なら、第1部位210が液状の樹脂材140で充填された後も、傾斜部230によって樹脂材140の液面が一定に、ほぼ水平に上昇するからである。すると、コネクタ130の位置でも、下面側から徐々に樹脂材140が充填される。また、樹脂材140の流れは、常に一方側(下方側)からの流れとなるので他方側(上方側)の樹脂材通過隙間151から気泡が排出される。その為、表面積の大きいコネクタ130であっても、気泡溜まりを抑制できる。
【0032】
液状の樹脂材140の液面上昇に伴い、ケース200の第2部位220も樹脂材140によって満たされる。ここで、ケース200の内周とプリント基板100の外周との間には、上述のように、樹脂材140が通過可能な樹脂材通過隙間151が形成されている。樹脂材通過隙間151の幅は2ミリメートル未満であるが、樹脂材通過隙間151はプリント基板100の略全周に亘って形成されている。
【0033】
流入口150よりケース200内に流入し、ケース200の第2部位も満たした樹脂材140の液面は更に上昇することとなる。この樹脂材140の液面上昇の流れは、樹脂材通過隙間151が存在することにより、阻害されることはない。その為、図3に於いて、プリント基板100の下方の面に気泡を残すこともない。樹脂材140はプリント基板100の下面に全面的に接するまで液面を上昇させる。
【0034】
なお、気泡を少なくするためには、事前にケース200やプリント基板100を予熱させることが望ましい。何故なら、樹脂材140は流動性を持たせるために高温の液状としているからである。高温の樹脂材140が低温のケース200やプリント基板100に接すると、樹脂材140の温度が低下し、それに応じて樹脂材140の流動性が低下することとなる。本例では、ケース200では表面積の大きい放熱フィン205や第1部位210、傾斜部230を中心に予熱するのが望ましい。また、プリント基板100では、やはり表面積の大きい第1電気部品110を中心に予熱するのが望ましい。また、ケース200やプリント基板100に樹脂材140を注入した後で真空引きをすることも望ましい。その場合には、8キロパスカル(kPa)程度の真空引きが望ましい。
【0035】
流入口150よりケース200に注入された樹脂材140が、樹脂材通過隙間151を満たすと、樹脂材140はプリント基板100の上面に沿って広がることとなる。なお、プリント基板100はケース200の開口部より5ミリメートル程度嵌り込んで保持されている。プリント基板100の上面を全て満たして、樹脂材140は更に液面を上昇させる。最終的に、ケース200内の全ての空間を樹脂材140で満たす。その後、上述のように、樹脂材140を加熱して、硬化させる。加熱の条件として、ウレタン樹脂では摂氏80度程度の温度とし、エポキシ樹脂の例では摂氏80度から125度程度の温度としている。
【0036】
なお、流入口150の位置は、図2に示したように、プリント基板100の略中央とすることが望ましい位置である。ただ、図3に示すように、第1電気部品110がプリント基板100の略中央に配置されているような例では、流入口150の位置はプリント基板100の略中央から外れた位置となる。流入口150の位置は、ケース200の第2部位220に対応する位置であればよい。特に、流入口150から流入した液状の樹脂材140が傾斜部230に流れ込む位置であればよい。
【0037】
また、図2の例では、第1電気部品110は複数(4つ)配置されており、流入口150は、複数配置された第1電気部品110の端部に配置されている。これは、流入口150の位置をプリント基板100の略中央とすることを優先させた結果である。ただ、図4に示すように、流入口150の位置は、ケース200の第1部位210の端となる。その為、流入口150より第1部位210に流入した樹脂材140は、流路部240を一方の端から他方の端に向かって流れることとなる。勿論、流路部240の流路断面積や樹脂材140の注入量を調節することで、樹脂材140は流路部240を円滑に流れる。
【0038】
ただ、図6に示すように、傾斜部230を複数配置した第1電気部品110の内、中央に位置する第1電気部品110に向けて形成するようにしてもよい。この場合には、傾斜部230よりケース200の第1部位210に流入した樹脂材140は、中央から両端に向けて流路部240を流れることとなる。図5の配置の方が、流路部240を流れる樹脂材140の移動距離を短くすることができ、樹脂材140を流す上で望ましい配置である。
【0039】
図6では、複数配置された第1電気部品110の第1部品距離H10は記載されていないが、複数配置された第1電気部品110のそれぞれで、第1部品距離H10が異なる場合もある。その場合には、第1部品距離H10が他の第1電気部品110より長い第1電気部品110を中央部に配置するのが望ましい。何故なら、他の第1電気部品110は第1部品距離H10が短い結果、ケース200の流路部240の流路断面積を大きくすることができる。その為、中央部に流入した樹脂材140を、両端に向けて円滑に流すことが可能となるからである。
【0040】
図7は、第1電気部品110を複数並べて配置した際に、傾斜部230を端に位置する第1電気部品110側に設けた例を示す。図6図7に示すように、第1部位210や傾斜部230の位置は、プリント基板100に配置される第1電気部品110の場所に応じて、適宜選択可能である。
【0041】
また、上述の例では、傾斜部230をケース200と一体に形成したが、傾斜部230を別部品として、ケース200に配置するようにしても良い。また、図3の例ではケース200の第1部位210の底面を水平にしているが、第1部位210にも傾斜を設けるようにしても良い。その場合には流路部240を流れる樹脂材140の流れをよりスムーズにすることができる。第1部位210に傾斜を設ける場合も、別部品として形成した底部を第1部位210に組付けても良い。
【0042】
また、上述したのは本開示の望ましい例ではあるが、本開示は種々に変更可能である。例えば、電子装置10はエンジン制御の用途に限定されない。各種の製品の制御装置として利用可能である。また、ケース200の材料もアルミニウム合金には限定されない。他の金属としてもよく、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリアミド、ポリカーボネート等の樹脂製としてもよい。また、上述した寸法は一例であり、求められる性能等に応じて適宜設定することが可能である。
【0043】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0044】
(技術的思想1)
複数の電気部品を保持し、前記電気部品間に電気回線をプリントするプリント基板と、
このプリント基板を保持するケースと、
このケース内で、前記電気部品と前記プリント基板とを埋設する樹脂材とを備える電子装置であって、
前記プリント基板には、前記樹脂材を前記ケース内に流入する流入口が開口しており、
前記電気部品には、前記プリント基板から端面迄の長さが第1部品距離である第1電気部品と、前記プリント基板から端面迄の長さが前記第1部品距離より短い第2部品距離である第2電気部品とが含まれ、
前記ケースの内、前記第1電気部品が配置される第1部位の前記プリント基板から内面までの長さである第1ケース距離は、前記第2電気部品が配置される第2部位の前記プリント基板から内面迄の長さである第2ケース距離より長く、
前記プリント基板の前記流入口は、前記ケースの前記第2部位に開口しており、
前記ケースには、前記プリント基板の前記流入口と対向する部位から前記第1部位に向かうにつれて、前記プリント基板から内面迄の長さであるケース傾斜距離を漸増する傾斜部が形成されている
ことを特徴とする電子装置。
【0045】
(技術的思想2)
前記電気部品には、複数の前記第1電気部品が含まれ、
前記ケースの前記第1部位には、複数の前記第1電気部品が纏めて配置されている
ことを特徴とする技術的思想1に記載の電子装置。
【0046】
(技術的思想3)
複数の前記第1電気部品の前記第1部品距離は互いに異なり、複数の前記第1電気部品の内、前記第1部品距離が長い前記第1電気部品が、中央部に配置されている
ことを特徴とする技術的思想2に記載の電子装置。
【0047】
(技術的思想4)
前記ケースの前記傾斜部は、前記プリント基板の前記流入口と対向する部位から、複数の前記第1電気部品の内、中央部に位置する前記第1電気部品が配置される前記第1部位との間に形成されている
ことを特徴とする技術的思想3に記載の電子装置。
【0048】
(技術的思想5)
前記ケースの前記第1ケース距離は、前記第1電気部品の前記第1部品距離より長く、前記ケースの内面と前記第1電気部品の端面との間には、
前記ケースの前記第1部位に流入する前記樹脂材が通過する流路部が形成されている
ことを特徴とする技術的思想1乃至技術的思想4のいずれかに記載の電子装置。
【0049】
(技術的思想6)
前記ケースの内周と、前記プリント基板の外周との間には、前記樹脂材が通過可能な樹脂材通過隙間が形成されている
ことを特徴とする技術的思想1乃至技術的思想5のいずれかに記載の電子装置。
【0050】
(技術的思想7)
前記ケースの前記第1部位の前記第1ケース距離は、前記ケースの前記傾斜部の前記ケース傾斜距離が最も長い部位の長さである第3ケース距離と同等以上である
ことを特徴とする技術的思想1乃至技術的思想6のいずれかに記載の電子装置。
【符号の説明】
【0051】
10 電子装置
100 プリント基板
110 第1電気部品
120 第2電気部品
140 樹脂材
150 流入口
200 ケース
210 第1部位
220 第2部位
230 傾斜部
240 流路部
H10 第1部品距離
H11 第1ケース距離
H20 第2部品距離
H21 第2ケース距離
H30 ケース傾斜距離
H31 第3ケース距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7