(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134311
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の施工方法及び施工装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/08 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
E04G21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044546
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】戸田 伸親
(72)【発明者】
【氏名】木原 康成
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敬
(72)【発明者】
【氏名】林 裕悟
(72)【発明者】
【氏名】大西 貴之
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA13
(57)【要約】
【課題】打設リフト高が高いコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上できるコンクリート構造物の施工方法及び施工装置を提供する。
【解決手段】型枠12により画成された成形空間11内にコンクリート13を打設して締固めを行う方法であり、振動部23に対して所定位置に検知部24を設けたバイブレータ21を巻上装置22に支持させ、巻上装置22を成形空間11の上方に配置した後、振動部23を成形空間11内に配置して打設し、振動部23が浸漬されたことを検知して打設を停止する打設工程S2と、振動部23を振動させて締固めを行うことでコンクリート層13aを形成する締固め工程S3と、巻上装置22によりバイブレータ21を巻上げて上方に振動部23を配置する巻上工程S4と、を繰返し、コンクリート層13aを積層する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠により画成された成形空間内にコンクリートを打設し、バイブレータの振動部を前記コンクリートに浸漬して振動させることで前記コンクリートの締固めを行うコンクリート構造物の施工方法であって、
前記振動部に対して所定位置に検知部を設けた前記バイブレータを巻上装置に支持させるとともに該巻上装置を前記成形空間の上方に配置する準備工程と、
前記振動部を前記成形空間内に配置した状態で前記コンクリートを打設し、前記振動部が浸漬されたことを前記検知部により検知したときに前記コンクリートの打設を停止する打設工程と、
前記コンクリートの打設停止後に、前記振動部を所定期間振動させて前記締固めを行うことでコンクリート層を形成する締固め工程と、
前記コンクリートの締固め後に、前記巻上装置により前記バイブレータを巻上げ、前記コンクリート層より上方の前記成形空間内に前記振動部を配置する巻上工程と、
を繰り返すことで、前記成形空間内に所望の前記コンクリート層を積層する、コンクリート構造物の施工方法。
【請求項2】
前記成形空間内の複数の位置において、前記コンクリートを打設するとともに前記バイブレータで締固めを行う、請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法。
【請求項3】
複数回積層して硬化した前記コンクリート層の上部に、前記型枠又は別の型枠により新たな成形空間を形成するとともに、前記巻上装置を前記新たな成形空間の上方に移動し、
前記打設工程、前記締固め工程及び前記巻上工程を実施して新たなコンクリート層を積層する、請求項1に記載のコンクリート構造物の施工方法。
【請求項4】
成形空間を画成する型枠と、前記成形空間にコンクリートを打設する打設部と、打設された前記コンクリートの締固めを行う締固め部と、を備え、前記締固め部は、前記コンクリートに振動部を浸漬して振動させるバイブレータを有する、コンクリート構造物の施工装置であって、
前記締固め部は、前記振動部に対して所定位置に検知部が設けられた前記バイブレータと、前記成形空間の上方に配置されて前記バイブレータを巻上可能に支持する巻上装置と、を有し、
前記振動部が前記コンクリートに浸漬されたことを前記検知部により検知したとき、前記打設部の打設を停止させて前記振動部を所定期間振動させ、
前記所定期間経過後に、前記巻上装置により前記バイブレータを巻上げて前記振動部を上方に移動させ、前記打設部の打設を再開させる、コンクリート構造物の施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の施工方法及び施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物を施工する際、型枠内にコンクリートを打設した後、バイブレータによりコンクリートに振動を与えて締固めることが行われている。下記特許文献1では、コンクリートを複数層に層分けして打設することが行われている。特許文献1では、コンクリートホースの吐出側とケーブル付き棒型振動機の振動機側とを、滑車を用いて吊持したコンクリート打込み・締固め装置及び方法が提案されていた。滑車を利用してコンクリートホースの吐出口とケーブル付き棒型振動機の振動機とをコンクリート打込みに対応して引上げつつ作動させることで、打込まれた直後のコンクリートの締固めが行なわれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、打設リフト高が高いコンクリート構造物を施工する場合、バイブレータの配置や上方への移動を人力で行うとすれば、足元の悪い高所でバイブレータの配置、締固め、引上げを行わなければならず、重労働の作業が必要で、生産性が悪かった。
また、特許文献1のように、打込むコンクリートの性質に対応する作業速度、作業継続時間などのデータに基づいてコンクリートホースや振動機の引上げを制御すると、施工前に手間を要する上、高橋脚などのように打設リフト高が高いコンクリート構造物を施工する場合には、コンクリートの打設位置が高くなるに従い、バイブレータの位置に誤差が生じ易いために修正等に手間を要するなどの問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、打設リフト高が高いコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上できるコンクリート構造物の施工方法及び施工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のコンクリート構造物の施工方法は、型枠により画成された成形空間内にコンクリートを打設し、バイブレータの振動部を前記コンクリートに浸漬して振動させることで前記コンクリートの締固めを行うコンクリート構造物の施工方法であって、前記振動部に対して所定位置に検知部を設けた前記バイブレータを巻上装置に支持させるとともに該巻上装置を前記成形空間の上方に配置する準備工程と、前記振動部を前記成形空間内に配置した状態で前記コンクリートを打設し、前記振動部が浸漬されたことを前記検知部により検知したときに前記コンクリートの打設を停止する打設工程と、前記コンクリートの打設停止後に、前記振動部を所定期間振動させて前記締固めを行うことでコンクリート層を形成する締固め工程と、前記コンクリートの締固め後に、前記巻上装置により前記バイブレータを巻上げ、前記コンクリート層より上方の前記成形空間内に前記振動部を配置する巻上工程と、を繰り返すことで、前記成形空間内に所望の前記コンクリート層を積層することを特徴としている。
【0007】
このような施工方法によれば、振動部に対して所定位置に検知部を設けたバイブレータを巻上装置に支持させて成形空間の上方に配置するので、巻上装置によりバイブレータを巻上げて成形空間内に振動部を配置すれば、検知部を振動部に対して所定位置に配置できる。そのため成形空間内にバイブレータの振動部及び検知部を巻上装置により容易に配置できる。
そして、振動部を成形空間内に配置した状態でコンクリートを打設する打設工程と、振動部がコンクリートに浸漬されたときに打設を停止し、振動部により所定期間の締固めを行うことでコンクリート層を形成する締固め工程と、巻上装置によりバイブレータを巻上げることで形成されたコンクリート層より上方に振動部を配置する巻上工程と、を繰り返すことで、複数のコンクリート層を積層する。そのため成形空間内に複数のコンクリート層を積層する際、バイブレータの配置、締固め、引上げ、コンクリートの打設及び停止を自動化でき、成形空間内に複数のコンクリート層を自動で積層することができる。
その結果、打設リフト高が高いコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上することができる。
【0008】
本発明のコンクリート構造物の施工方法では、前記成形空間内の複数の位置において、前記コンクリートを打設するとともに前記バイブレータで締固めを行ってもよい。
このように構成すれば、平面的に大きなコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上することができる。
【0009】
本発明のコンクリート構造物の施工方法では、複数回積層して硬化した前記コンクリート層の上部に、前記型枠又は別の型枠により新たな成形空間を形成するとともに、前記巻上装置を前記新たな成形空間の上方に移動し、前記打設工程、前記締固め工程及び前記巻上工程を実施して新たなコンクリート層を積層してもよい。
このようにすれば、複数回積層して形成されたコンクリート層の上部に新たな成形空間を形成して、巻上装置を新たな成形空間の上方に移動し、打設工程、締固め工程及び巻上工程を再び実施して新たなコンクリート層を積層するため、打設リフト高がより高いコンクリート構造物であっても作業の手間を少なく抑えて施工することが可能である。
【0010】
上記課題を解決する本発明のコンクリート構造物の施工装置は、成形空間を画成する型枠と、前記成形空間にコンクリートを打設する打設部と、打設された前記コンクリートの締固めを行う締固め部と、を備え、前記締固め部は、前記コンクリートに振動部を浸漬して振動させるバイブレータを有する、コンクリート構造物の施工装置であって、前記締固め部は、前記振動部に対して所定位置に検知部が設けられた前記バイブレータと、前記成形空間の上方に配置されて前記バイブレータを巻上可能に支持する巻上装置と、を有し、前記振動部が前記コンクリートに浸漬されたことを前記検知部により検知したとき、前記打設部の打設を停止させて前記振動部を所定期間振動させ、前記所定期間経過後に、前記巻上装置により前記バイブレータを巻上げて前記振動部を上方に移動させ、前記打設部の打設を再開させることを特徴としている。
【0011】
本発明の施工装置によれば、締固め部が振動部に対して所定位置に検知部が設けられたバイブレータと、成形空間の上方に配置されてバイブレータを巻上可能に支持する巻上装置と、を有しているので、巻上装置によりバイブレータを巻上げて振動部を成形空間内の上方の位置に配置するだけで、振動部に対して検出部を所定位置に配置できてコンクリートに振動部が浸漬されたことを検知できる。
そして、振動部がコンクリートに浸漬されたことを検知部により検知したとき、打設部の打設を停止させて振動部を所定期間振動させ、所定期間経過後に巻上装置によりバイブレータを巻上げて振動部を上方に移動させ、打設部の打設を再開させるので、上述のような打設工程と締固め工程と巻上工程とを自動で繰り返すことができ、成形空間内に複数のコンクリート層を自動で効率よく積層することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート構造物の施工方法およびコンクリート構造物の施工装置によれば、打設リフト高が高いコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る施工方法を用いてコンクリート構造物を施工する状態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る施工方法における成形空間の横断面であり、打設部及び締固め部の配置を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る施工方法の概略を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る施工方法を用いたコンクリート構造物の施工途中の状態を示す縦断面図であり、最下領域の施工初期の状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る施工方法を用いたコンクリート構造物の施工途中の状態を示す縦断面図であり、最下領域の施工中期の状態を示す。
【
図6】本発明の実施形態に係る施工方法を用いたコンクリート構造物の施工途中の状態を示す縦断面図であり、中間領域の施工状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。本実施形態では、コンクリート構造物として高橋脚を施工する例を用いて説明する。
図1は本実施形態の施工方法によりコンクリート構造物を施工する状態を示す縦断面図であり、
図2は成形空間の横断面図である。
【0015】
本実施形態のコンクリート構造物の施工方法に用いる施工装置10について説明する。本実施形態の施工装置10は、成形空間11を画成する型枠12と、成形空間11にコンクリート13を打設する打設部14と、打設されたコンクリート13の締固めを行う締固め部15と、各部の動作を制御する制御部16と、を備えている。
【0016】
本実施形態の型枠12は、コンクリート構造物の高さ方向の一部分に対応した形状の成形空間11を画成していて、環状の横断面形状を有する。成形空間11には上端に上向きに開口した上端開口11aが形成されている。
【0017】
打設部14は、コンクリート13の供給源17と、供給源17からのコンクリート13が圧送される圧送配管18と、圧送配管18から分岐して複数設けられて下端が開口した打設配管19と、を備えている。供給源17には、圧送ポンプ(不図示)が設けられており、コンクリート13の打設及び停止が制御可能に構成されている。圧送配管18は成形空間11に沿うように上方に配置されている。打設配管19は成形空間11に沿う複数の位置に水平方向に間隔をあけて配置され、それぞれ圧送配管18から下方に延び、下端が成形空間11内に挿入されている。下端の開口が、形成されるコンクリート層13aの直上となる高さ位置に配置されるのが好ましい。
【0018】
締固め部15は、コンクリート13に浸漬して振動させるバイブレータ21と、成形空間11の上方に配置されてバイブレータ21を巻上可能に支持する巻上装置22と、を備えている。複数のバイブレータ21及び巻上装置22が成形空間11に沿う複数の位置に水平方向に間隔をあけて配置されている。
【0019】
バイブレータ21の下端側には、コンクリート13に浸漬して振動させる振動部23と、振動部23に対して所定位置となるように配置されて振動部23がコンクリート13に浸漬されたことを検知する検知部24と、を備えている。本実施形態の検知部24は、例えば振動部23におけるコンクリート13に浸漬する領域のうちの最上部に配置されている。
【0020】
制御部16は、供給源17、バイブレータ21、巻上装置22等の各部の駆動を制御可能に構成されている。
【0021】
制御部16は、振動部23がコンクリート13に浸漬されたことを検知部24により検知したとき、打設部14の打設を停止させて振動部23を所定期間振動させる。また、制御部16は、所定期間の振動後に巻上装置22を駆動させてバイブレータ21を巻上げることで、バイブレータ21の振動部23及び検知部24を上方に移動させる。バイブレータ21を巻上げる際、振動部23は成形空間11内における次のコンクリート13の打設時に必要となる所定位置に配置させる。成形空間11内の所定位置は、次に形成されるコンクリート層13aの高さ位置であり、コンクリート13が打設されたときに浸漬される位置である。この位置は予め設定しておくことができる。制御部16は、振動部23を成形空間11の所定位置に配置した後、打設部14の供給源17を駆動してコンクリート13の打設を再開させる。
【0022】
次に、このような施工装置10を用いたコンクリート構造物の施工方法について説明する。
図3は本実施形態の施工方法を示すフローチャートである。
図4乃至
図6はコンクリート構造物の施工途中の状態を示す縦断面図であり、
図4は最下領域の施工初期、
図5は最下領域の施工中期、
図6は中間領域の施工状態を示す。なお、
図4、
図6ではコンクリート13の打設中の状態を示し、
図5ではバイブレータ21の振動部23が駆動している状態を示している。
【0023】
図3に示すように、まず準備工程S1では、コンクリート構造物に対応した足場26を設け、型枠12により成形空間11を画成する。本実施形態では型枠12により高橋脚の高さ方向の一部分に対応した成形空間11を画成する。
【0024】
続いて、打設部14及び締固め部15をそれぞれ配置する。
【0025】
打設部14は、圧送配管18を成形空間11に沿って上方に配置するとともに、複数の打設配管19をそれぞれ圧送配管18に接続して下端を成形空間11内に配置する。制御部16および供給源17は、施工現場の任意の位置に設置する。供給源17と圧送配管18とを接続する。制御部16は、締固め部15および供給源17の必要箇所と接続する。
【0026】
締固め部15は、複数のバイブレータ21に振動部23と、振動部23に対して所定位置に配置される検知部24と、をそれぞれ下端側に設け、各バイブレータ21の上端側をそれぞれ巻上装置22に支持させる。
【0027】
各巻上装置22を成形空間11の上端開口11aの上方に配置する。本実施形態では複数のバイブレータ21及び巻上装置22を、成形空間11に沿う複数の位置に水平方向に間隔をあけて配置している。各巻上装置22は、足場26に固定して設置している。
【0028】
巻上装置22を設置した後、打設工程S2と、締固め工程S3と、巻上工程S4と、を繰り返し行うことで、成形空間11内に複数のコンクリート層13aを積層する。
【0029】
打設工程S2では、バイブレータ21の振動部23を成形空間11内の所定位置に配置した後、供給源17に設けられたコンクリート13用の圧送ポンプを駆動させて、成形空間11内にコンクリート13を打設する。コンクリート13は、供給源17から圧送配管18、打設配管19を経て、成形空間11内へ供給される。振動部23を成形空間11内の所定位置に配置するには、制御部16により巻上装置22を制御してバイブレータ21を巻上又は下方に降ろすことで、振動部23を予め設定されている高さ位置に自動で配置することができる。このとき検知部24も振動部23に対して所定位置に配置される。
【0030】
成形空間11内にコンクリート13が堆積することで、振動部23がコンクリート13に浸漬されると、検知部24によりコンクリート13の浸漬状態が検知され、検知信号が制御部16に伝達される。この検知信号に基づいて、制御部16が供給源17の駆動を停止することでコンクリート13の打設を停止し、打設工程S2を終了する(
図4参照)。
【0031】
締固め工程S3では、制御部16によりコンクリート13の打設を停止した後に、振動部23を所定期間振動させてコンクリート13の締固めを行う。コンクリート13の打設停止時には、バイブレータ21の振動部23がコンクリート13に浸漬されているため、振動部23を振動させることで打設されたコンクリート13を締固めることができる(
図5参照)。コンクリート13を締固めた後、所定時間経過すると、コンクリート層13aが形成される。
【0032】
巻上工程S4では、締固め工程S3の後に、制御部16により巻上装置22を駆動させ、バイブレータ21を巻上げる。巻上装置22を駆動させることで、バイブレータ21の下端側に配置された振動部23及び検知部24を上昇させる。バイブレータ21の巻上げは、形成されたコンクリート層13aが硬化していない状態で速やかに行われる必要がある。そして、締固め工程S3で形成されたコンクリート層13aより上方において予め設定された成形空間11内の所定位置に振動部23を配置する。
【0033】
これらの打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4を行うことで、1層のコンクリート層13aが形成される。
【0034】
本実施形態では、巻上工程S4まで終了したら、コンクリート層13aが目標積層数に到達したか否かを判定する(高さ判定工程S5)。目標積層数(目標高さ)に到達していない場合には、再び打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4を繰り返し行う。これにより成形空間11内に複数のコンクリート層13aを形成することができる(
図6参照)。
【0035】
その際、各巻上工程S4では、次に形成されるコンクリート層13aに対応した成形空間11内の所定位置が予め設定されているため、バイブレータ21を巻上げて振動部23を所定位置に配置でき、振動部23に対応する位置に検知部24を配置できる。
【0036】
そのため各打設工程S2では、コンクリート13を成形空間11内に確実に打設でき、打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4を自動で複数繰り返すことで、所望のコンクリート層13aを積層することができる。
【0037】
本実施形態では、高さ判定工程S5において、目標積層数(目標高さ)に到達したと判断された後、さらに目標打設リフト高さに到達したか否かが判定され(リフト高さ判定工程S6)、未達の場合には、再び準備工程S1を行う。
【0038】
準備工程S1では、複数のコンクリート層13aを積層形成した後、積層されたコンクリート層13aを硬化させてから、コンクリート層13aの上部に、足場26を継ぎ足し、型枠12により新たな成形空間11を形成する。このとき、新たな型枠12用いてもよいが、本実施形態では硬化させた複数のコンクリート層13aを形成する際に使用した型枠12を硬化したコンクリート層13aの上方に移動させて新たな成形空間11を形成している。
【0039】
また各巻上装置22を新たな成形空間11の上方に移動して新たな成形空間11の上端開口11aの上方に配置し、各巻上装置22を足場26に固定して設置するとともに、振動部23及び検知部24を備えたバイブレータ21を巻上装置22に支持する。なお、巻上装置22の移動には、例えばクレーンを用いて上方に移動させる。
【0040】
その後、打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4を上記と同様にして複数回繰り返すことで、複数の新たなコンクリート層13aを積層する。
そして目標打設リフト高さに到達するまで、準備工程S1における型枠12の設置及び締固め部15の移動と、打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4とを複数回繰り返すことで、コンクリート層13aを積層してコンクリート構造物を施工する。リフト高さ判定工程S6において、所定の高さまでコンクリート13の打設が完了したら、処理を終了する。このような工程を実行することで、高橋脚のように打設リフト高が顕著に高いコンクリート構造物を簡便に構築することができる。
【0041】
以上のような本実施形態のコンクリート構造物の施工方法によれば、振動部23に対して所定位置に検知部24を設けたバイブレータ21を巻上装置22に支持させて成形空間11の上方に配置するので、巻上装置22によりバイブレータ21を巻上げて成形空間11内に振動部23を配置すれば、検知部24を振動部23に対して所定位置に配置できる。そのため成形空間11内にバイブレータ21の振動部23及び検知部24を巻上装置22により容易に配置できる。なお、振動部23に対する検知部24の位置関係は任意に設定できる。また、検知部24は、振動部23に直接取り付けてもよいし、振動部23との位置関係を一定に保持できるのであれば、別の方法で配置してもよい。
【0042】
振動部23を成形空間11内に配置した状態でコンクリート13を打設する打設工程S2と、振動部23がコンクリート13に浸漬されたときに打設を停止し、振動部23により所定期間の締固めを行うことでコンクリート層13aを形成する締固め工程S3と、巻上装置22によりバイブレータ21を巻上げることで形成されたコンクリート層13aより上方に振動部23および検知部24を配置する巻上工程S4と、を繰り返すことで、型枠12内に複数のコンクリート層13aを積層形成する。そのため、成形空間11内に複数のコンクリート層13aを積層形成する際、バイブレータ21の配置、締固め、引上げ、コンクリート13の打設及び停止を自動化でき、成形空間11内に複数のコンクリート層13aを自動で積層形成することができる。その結果、打設リフト高が高いコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態の施工方法によれば、成形空間11の水平方向に間隔をあけた複数の位置でコンクリート13を打設するとともにバイブレータ21でコンクリート13の締固めを行うので、平面的に大きなコンクリート構造物であっても、作業の手間を少なくして生産性を向上することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の施工方法によれば、複数積層形成されたコンクリート層13aの上部に、型枠12又は別の型枠12により新たな成形空間11を形成し、巻上装置22を新たな成形空間11の上方に移動し、打設工程S2、締固め工程S3及び巻上工程S4を実施して複数の新たなコンクリート層13aを積層形成している。そのため、打設リフト高がより高いコンクリート構造物であっても作業の手間を少なく抑えて施工することが可能である。
【0045】
また、本実施形態の施工方法によれば、締固め部15が振動部23に対して所定位置に検知部24が設けられたバイブレータ21と、成形空間11の上方に配置されてバイブレータ21を巻上可能に支持する巻上装置22と、を有する施工装置10を用いているので、巻上装置22によりバイブレータ21を巻上げて振動部23を成形空間11内の上方の位置に配置するだけで、振動部23に対して検知部24を所定位置に配置できてコンクリート13に振動部23が浸漬されたことを検知できる。
【0046】
そして、振動部23がコンクリート13に浸漬されたことを検知部24により検知したとき、コンクリート13の打設を停止させて振動部23を所定期間振動させ、所定期間経過後に巻上装置22によりバイブレータ21を巻上げて振動部23を上方に移動させ、コンクリート13の打設を再開させるようにした。このように、本実施形態では、打設工程S2と締固め工程S3と巻上工程S4とを自動で繰り返すことができる。
【0047】
なお、上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
【0048】
例えば上記実施形態では、成形空間11の水平方向に間隔をあけた複数の位置で、コンクリート13を打設するとともにバイブレータ21で締固めを行ったが、成形空間11に水平方向1か所でコンクリート13を打設するとともにバイブレータ21で締固めを行う方法であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、型枠12により画成された成形空間11内に複数のコンクリート層13aを形成して硬化させた後、この複数のコンクリート層13aの上方に型枠12により新たな成形空間11を形成してさらに複数のコンクリート層13aを形成したが、最初に画成した成形空間11内に全てのコンクリート層13aを形成して硬化させて施工を終了する方法であってもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態では、打設配管19の下端開口の高さ位置を調整して配置したが、例えば打設配管19自体を昇降させてもよく、圧送配管18に異なる長さの打設配管19を接続して下端開口の高さ位置を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 施工装置
11 成形空間
11a 上端開口
12 型枠
13 コンクリート
13a コンクリート層
14 打設部
15 締固め部
16 制御部
17 供給源
18 圧送配管
19 打設配管
21 バイブレータ
22 巻上装置
23 振動部
24 検知部
26 足場
S1 準備工程
S2 打設工程
S3 締固め工程
S4 巻上工程
S5 高さ判定工程
S6 リフト高さ判定工程