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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134312
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20240926BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02K7/14 Z
H02K5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044547
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 荘太郎
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605AA04
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC05
5H605DD09
5H605DD24
5H607AA04
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD16
5H607EE26
5H607FF01
5H607FF04
5H607JJ06
(57)【要約】
【課題】騒音の発生を抑制することができるモータを提供する。
【解決手段】モータは、回転駆動力を発生させる駆動体と、駆動体が発生させた回転駆動力を負荷体に伝達するマグネットカップリングと、駆動体が内部に配置されるように駆動体を覆うケースと、を備え、マグネットカップリングは、駆動体の前側面から棒状に延び、駆動体が発生させる回転駆動力によって回転する第1軸と、第1軸に固定され、第1軸と共に回転する第1磁性体と、第1磁性体との間で回転駆動力を伝達可能な位置で回転可能に配置される第2磁性体と、第2磁性体を回転可能に支持し、回転駆動力を負荷体に伝達する第2軸と、を有し、ケースは、少なくとも第1軸および第1磁性体が内部に位置するように駆動体を覆う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を発生させる駆動体と、
前記駆動体が発生させた回転駆動力を負荷体に伝達するマグネットカップリングと、
前記駆動体が内部に配置されるように前記駆動体を覆うケースと、
を備え、
前記マグネットカップリングは、
前記駆動体の前側面から棒状に延び、前記駆動体が発生させる回転駆動力によって回転する第1軸と、
前記第1軸に固定され、前記第1軸と共に回転する第1磁性体と、
前記第1磁性体との間で回転駆動力を伝達可能な位置で回転可能に配置される第2磁性体と、
前記第2磁性体を回転可能に支持し、回転駆動力を前記負荷体に伝達する第2軸と、
を有し、
前記ケースは、少なくとも前記第1軸および前記第1磁性体が内部に位置するように前記駆動体を覆うモータ。
【請求項2】
前記ケースは、前記第2軸の直径よりも大きい直径の貫通穴を有し、
前記第2軸の一部および前記第2磁性体は、前記ケースの内部に位置し、前記第2軸の前記一部ではない部分が前記貫通穴を通って前記ケースの外側に延びた請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第2軸および前記第2磁性体は、前記ケースの外部に位置し、
前記第1磁性体と前記第2磁性体との間で前記ケースを介して回転駆動力が伝達される請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記ケースは、
前記第1軸および前記第1磁性体の側に配置され、少なくとも前記第1軸および前記第1磁性体を覆う前ケースと、
前記駆動体の前記前側面とは反対側の後側面および前記前側面と前記後側面とを繋ぐ側面を覆う後ケースと、
を有し、
前記前ケースの厚みは、前記後ケースの厚みよりも大きい請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ケースの内部において、前記第1軸および前記第1磁性体の周りを囲むように配置された前方吸音材、
を更に備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記駆動体のうち前記第1軸の回転軸を囲む側面と前記ケースとの間に配置された側方吸音材、
を更に備え、
前記第1軸が延びる方向における前記前方吸音材の厚みが、前記第1軸が延びる方向に垂直な方向における前記側方吸音材の厚みよりも大きい請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記駆動体には、前記第1軸が延びる方向において前記駆動体の中央よりも前記第1軸とは反対側に制御基板が設けられ、
前記側方吸音材は、前記第1軸が延びる方向において中央よりも前記第1軸の側の第1部分と、中央よりも前記第1軸とは反対側の第2部分と、からなり、
前記第2部分の熱伝導率は、前記第1部分の熱伝導率よりも高い請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記駆動体のうち前記前側面とは反対側の後側面と前記ケースとの間に配置された後方吸音材、
を更に備え、
前記前方吸音材の前記第1軸が延びる方向の厚みが、前記後方吸音材の前記第1軸が延びる方向の厚みよりも大きい請求項5に記載のモータ。
【請求項9】
前記ケースの内部において、前記駆動体のうち前記前側面とは反対側の後側面と前記ケースとの間に配置された後方吸音材、
を更に備え、
前記駆動体には、前記第1軸が延びる方向において中央よりも前記第1軸とは反対側に制御基板が設けられ、
前記後方吸音材の前記第1軸が延びる方向への熱伝導率が、前記前方吸音材の前記第1軸が延びる方向への熱伝導率よりも高い請求項5に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モータを開示する。当該モータにおいて、吸音カバーは、駆動体から駆動軸が延びる方向以外の方向において、駆動体を囲む。吸音カバーによって、駆動体から発生する騒音が抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-069012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のモータにおいて、駆動軸に発生する振動は、例えば駆動される負荷体に伝達される。負荷体は、伝達された振動によって騒音を発生することがある。このため、駆動軸を介して外部に騒音が発生する。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、騒音の発生を抑制することができるモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るモータは、回転駆動力を発生させる駆動体と、駆動体が発生させた回転駆動力を負荷体に伝達するマグネットカップリングと、駆動体が内部に配置されるように駆動体を覆うケースと、を備え、マグネットカップリングは、駆動体の前側面から棒状に延び、駆動体が発生させる回転駆動力によって回転する第1軸と、第1軸に固定され、第1軸と共に回転する第1磁性体と、第1磁性体との間で回転駆動力を伝達可能な位置で回転可能に配置される第2磁性体と、第2磁性体を回転可能に支持し、回転駆動力を負荷体に伝達する第2軸と、を有し、ケースは、少なくとも第1軸および第1磁性体が内部に位置するように駆動体を覆う。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、マグネットカップリングによって、駆動体で発生した振動が負荷体に伝達されることが抑制される。ケースは、少なくとも第1軸および第1磁性体を覆う。このため、騒音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるモータの概要を示す斜視図である。
図2】実施の形態1におけるモータの断面図である。
図3】実施の形態1におけるモータの吸音材の断面図である。
図4】実施の形態2におけるモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるモータの概要を示す斜視図である。図2は実施の形態1におけるモータの断面図である。図3は実施の形態1におけるモータの吸音材の断面図である。
【0011】
図1および図2に示されるように、モータ100は、駆動体1、マグネットカップリング2、ケース3、支持部材4、および吸音材5を備える。モータ100は、ファンの羽等の負荷体Lに回転駆動力を与える。
【0012】
駆動体1は、回転子と固定子とを含む電動機を内部に有する。駆動体1は、回転駆動力を発生させる。駆動体1は、電線10と制御基板11とを有する。電線10は、外部電源に接続され、外部電源から駆動体1に電力を供給する。制御基板11は、駆動体1の動作を制御する。
【0013】
マグネットカップリング2の一側は、駆動体1に取り付けられる。マグネットカップリング2の他側は、負荷体Lに接続される。マグネットカップリング2は、駆動体1が発生させた回転駆動力を負荷体Lに伝達可能である。マグネットカップリング2は、第1軸20、第1磁性体21、第2磁性体22、第2軸23、および軸支持体24を有する。
【0014】
第1軸20は、駆動体1に取り付けられる。第1軸20は、棒状を呈し、駆動体1の前側面1aから延びる。第1軸20は、駆動体1が発生させる回転駆動力によって回転軸として回転可能である。なお、第1軸20は、回転子の一部であってもよく、駆動体1の一部とみなされてもよい。
【0015】
第1磁性体21は、カップリングの一次側として、円盤状の第1カップリング面を有する。第1磁性体21は、第1カップリング面において、マグネットカップリング2を実現するための磁力特性を有する。例えば、磁力特性として、円盤の中心の周りにN極とS極とが一周にわたって交互に配置される。第1磁性体21は、第1カップリング面の円盤の中心が回転軸と一致するように、第1軸20の駆動体1とは反対側の端部に固定される。この状態において、第1磁性体21は、第1軸20に支持される。第1磁性体21は、第1軸20と共に回転可能である。
【0016】
第2磁性体22は、カップリングの二次側として、円盤状の第2カップリング面を有する。第2磁性体22は、第2カップリング面において、マグネットカップリング2を実現するための磁力特性であって、第1カップリング面に対応する磁力特性を有する。第2カップリング面は、第1カップリング面と離れた位置で、向かい合うように配置される。ここで、第1磁性体21と第2磁性体22との距離は、第1カップリング面と第2カップリング面との間で、負荷体Lの動作に必要な回転駆動力が伝達されることが可能な距離に保たれる。
【0017】
第2軸23は、棒状を呈する。第2軸23の一端部は、第2磁性体22に固定される。第2軸23の長手方向に垂直な断面における中心が、第2カップリング面の円盤の中心と一致する。このようにして、第2軸23は、第2磁性体22を、回転軸を中心として回転可能に支持する。第2軸23の他端部は、負荷体Lに取り付けられる。
【0018】
軸支持体24は、回転軸を中心として第2軸23を回転可能に支持する。具体的には、軸支持体24は、一対の軸受24aと筒体24bとを有する。一対の軸受24aは、互いに同軸となるよう並ぶ。一対の軸受24aの各々の内輪には、第2軸23が圧入される。筒体24bは、内部において、一対の軸受24aの外輪を支持する。図示されないが、筒体24bは、モータ100の外部の部材によって、図1に示される位置に固定される。このようにして、軸支持体24は、回転軸の軸心のズレを抑制しながら第2軸23を回転可能に支持する。
【0019】
図示されないが、ケース3は、モータ100の外部の部材によって、図1に示される位置に固定される。特に、ケース3は、軸支持体24との距離が変わらないように固定される。ケース3は、駆動体1を全体的に覆う。即ち、ケース3は、駆動体1の前側面1a、駆動体1の前側面1aとは反対を向く後側面1b、および駆動体1の前側面1aと後側面1bとを繋ぐ側面1cを覆う。言い換えると、駆動体1は、ケース3の内部に配置される。ケース3は、更に、マグネットカップリング2の少なくとも一部を覆う。具体的には、ケース3は、少なくとも第1軸20および第1磁性体21が内部に位置するように駆動体1を覆う。実施の形態1において、ケース3は、更に、第2軸23の一部および第2磁性体22が内部に位置するようにこれらを覆う。
【0020】
ケース3の材質は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属であってもよいし、ポリプロピレン、ABS樹脂等の樹脂であってもよい。また、ケース3の材質は、箇所によってそれぞれ異なってもよい。
【0021】
例えば、ケース3は、前ケース30と後ケース31とに分解可能である。後ケース31は、更に第1後ケース32と第2後ケース33とに分解可能である。前ケース30の全体的な厚みは、後ケース31の全体的な厚みよりも大きい。
【0022】
前ケース30は、ケース3のうち第1軸20および第1磁性体21の側に配置される。前ケース30は、少なくとも第1軸20および第1磁性体21を覆う。前ケース30は、更に、第2軸23の一部および第2磁性体22を覆う。言い換えると、第2軸23の一部、第2磁性体22、第1磁性体21、および第1軸20は、ケース3のうち前ケース30の内部に配置される。第2軸23の当該一部でない部分は、前ケース30に設けられた貫通穴3aを通って、前ケース30の外側に延びる。
【0023】
貫通穴3aの直径は、第2軸23の直径よりも10%程度大きい。例えば、第2軸23の直径が10mm程度であるとき、貫通穴3aの直径は11mmから12mm程度である。貫通穴3aと第2軸23との間には、1mmから2mm程度の隙間が生じる。そのため、第2軸23と前ケース30を含むケース3とが接触することが抑制される。
【0024】
後ケース31は、駆動体1のうち前ケース30が覆う部分以外の部分を覆う。具体的には、後ケース31は、駆動体1の後側面1bおよび側面1cを覆う。特に、第1後ケース32は、後側面1bを覆う。第2後ケース33は、筒状を呈し、側面1cを覆う。側面1cの一部には、引き出し穴1dが設けられる。引き出し穴1dから電線10が外部に引き出される。
【0025】
支持部材4は、ケース3の内部において、防振材6を介してケース3と相対的に移動しないように取り付けられる。支持部材4は、駆動体1がケース3に対して相対的に移動しないように駆動体1を支持する。支持部材4は、金属等の高い剛性を有する部材からなる。例えば、剛性を向上させるために、支持部材4の板の部分の厚みは、ケース3の厚みよりも大きい。ケース3の厚みと支持部材4の厚みとが異なるため、ケース3と支持部材4との共振が発生しにくい。支持部材4は、前部材40と後部材41とを備える。
【0026】
前部材40には、枠部40aと固定部40bとが含まれる。枠部40aには、円盤状の中心に穴が空いた前部分と筒状の横部分とが含まれる。枠部40aの前部分は、駆動体1の前側面1aに接する。第1軸20は、枠部40aの前部分に空いた穴の内部に位置する。枠部40aの横部分の内径は、駆動体1の側面1cの外形と一致する。枠部40aの横部分は、駆動体1の側面1cに接する。
【0027】
固定部40bは、枠部40aからケース3の方に延びる。固定部40bは、ケース3に防振材6を介して固定される。
【0028】
後部材41には、枠部41aと固定部41bとが含まれる。枠部41aには、円盤状の中心に穴が空いた後部分と筒状の横部分とが含まれる。枠部41aの後部分は、駆動体1の後側面1bに接する。枠部41aの横部分の内径は、駆動体1の側面1cの外形と一致する。枠部41aの横部分は、駆動体1の側面1cに接する。
【0029】
固定部41bは、枠部41aからケース3の方に延びる。固定部41bは、ケース3に防振材6を介して固定される。
【0030】
支持部材4は、枠部40aの前部分と枠部41aの後部分とで、第1軸20が延びる方向において駆動体1を挟むことで、駆動体1の位置が第1軸20が延びる方向へ移動することを抑制する。特に、駆動体1が回転駆動力を発生させる際、駆動体1は、第1軸20が延びる方向へ振動しやすい傾向がある。支持部材4は、枠部40aの横部分で駆動体1の前側の側面1cを挟み、枠部41aの横部分で駆動体1の後側の側面1cを挟むことで、駆動体1が第1軸20が延びる方向に垂直な方向へ駆動体1が移動することを抑制する。
【0031】
防振材6の素材は、硬質のゴム、等のある程度高い弾性を有する樹脂である。駆動体1で発生して支持部材4を介して伝達された振動は、防振材6によって減衰される。防振材6は、当該振動がケース3へ伝達されることを抑制する。
【0032】
吸音材5は、ケース3の内部においてケース3と支持部材4との間に隙間なく収まる。吸音材5は、前方吸音材50と後方吸音材51と側方吸音材52とを有する。吸音材5は、箇所によって吸音性および熱伝導性が異なってもよい。
【0033】
前方吸音材50は、第1素材からなる吸音材である。前方吸音材50は、円盤の中心に穴が空いたいわゆるドーナツ形状を呈する。前方吸音材50に空いた穴の直径は、第1磁性体21の円盤の直径よりも大きい。前方吸音材50は、駆動体1の前側面1aおよび前部材40と前ケース30との間に配置される。前方吸音材50の穴の内側には、少なくとも第1軸20および第1磁性体21が配置される。実施の形態1において、前方吸音材50の穴の内側には、第2軸23の一部および第2磁性体22が更に配置される。前方吸音材50は、配置された状態における第1軸20が延びる方向に第1厚みを有する。
【0034】
後方吸音材51は、第2素材からなる吸音材である。後方吸音材51は、円盤状を呈する。後方吸音材51は、駆動体1の後側面1bおよび後部材41と第1後ケース32との間に配置される。配置された状態における第1軸20が延びる方向に第2厚みを有する。第2厚みは、第1厚みより小さい。
【0035】
第1素材の第1吸音率は、第2素材の第2吸音率よりも高い。吸音率が高いほど、音の振動を多く吸収し得る。第2素材の熱伝導率は、第1素材の熱伝導率よりも高い。特に、第2素材は、内部で熱が伝わりやすい方向が存在する、即ち熱伝導に指向性のある素材である。
【0036】
図3には、吸音材5に使用される第2素材における、指向性のある方向に沿った面による断面が示される。第2素材には、第1伝導面5aと第2伝導面5bと中間伝導部5cと中間吸音部5dとが含まれる。
【0037】
第1伝導面5aおよび第2伝導面5bの各々は、第2素材の1つの表面部分である。例えば、第1伝導面5aは、第2伝導面5bと反対を向く。中間伝導部5cは、第1伝導面5aから第2伝導面5bにわたって2つの面を繋ぐ線状または板状の部材である。中間吸音部5dは、第1伝導面5aと第2伝導面との間に配置され、中間伝導部5cではない部分を埋める。言い換えると、中間吸音部5dが第1伝導面5aと第2伝導面とに挟まれ、中間吸音部5dの中に中間伝導部5cが通される。
【0038】
第1伝導面5a、第2伝導面5b、および中間伝導部5cを構成する素材は、吸音材であって、熱伝導が行われやすい素材である。例えば、第1伝導面5a、第2伝導面5b、および中間伝導部5cを構成する素材は、アルミなどの金属からなる繊維が編まれたものである。例えば、中間吸音部5dの素材は、第1素材と同じまたは近い素材である。第1伝導面5a、第2伝導面5b、および中間伝導部5cを構成する素材の熱伝導率は、中間吸音部5dの素材および第1素材よりも熱伝導率が高い。一方で、中間吸音部5dおよび第1素材の吸音率は、第1伝導面5a、第2伝導面5b、および中間伝導部5cを構成する素材の吸音率よりも高い。
【0039】
このような構成であるため、第2素材において、中間伝導部5cによって熱伝導が積極的に起こることで、第1伝導面5aから第2伝導面5bへの方向または第1伝導面5aから第2伝導面5bへの方向に熱伝導が起こりやすい。また、第1伝導面5aと第2伝導面5bとの間の領域において、中間伝導部5cの体積と中間吸音部5dの体積との比率が変更されることで、第2素材の熱伝導率と吸音率とが変更されることが可能である。
【0040】
図2において、後方吸音材51は、第1軸20が延びる方向への熱伝導率が高くなるように配置される。即ち、後方吸音材51のうち後側面1bと対向する面および当該面とは反対側の面の熱伝導率が高い。第1軸20が延びる方向において、後方吸音材51の当該方向への熱伝導率は、前方吸音材50の当該方向への熱伝導率よりも高い。
【0041】
例えば、側方吸音材52は、筒状を呈する。側方吸音材52は、駆動体1の側面1c、前部材40の横部分、および後部材41の横部分と第2後ケース33との間に配置される。即ち、側方吸音材52は、駆動体1のうち回転軸を囲む側面1cの周りに配置される。側方吸音材52における駆動体1から第2後ケース33への方向の第3厚みは、後方吸音材51の第2厚みよりも小さい。
【0042】
側方吸音材52は、中央部において第1部分52aと第2部分52bとに分けられる。第1軸20が延びる方向において、第1部分52aは、第2部分52bよりも第1軸20の側に存在する。具体的には、第2部分52bが制御基板11と隣り合うように側方吸音材52が配置される。第1部分52aの吸音率は、第2部分52bの吸音率よりも高い。第2部分52bの全体の熱伝導率は、第1部分52aの全体の熱伝導率よりも高い。第2部分52bは、駆動体1を向く面から第2後ケース33を向く面へ向かって熱伝導率の指向性を有してもよい。なお、第1部分52aには第1素材が使用され、第2部分52bには第2素材が使用されてもよい。
【0043】
電線10から電力が供給されるまたは電線10を介して動作指令が送られることで、駆動体1が動作を開始する。このとき、駆動体1よって、第1軸20および第1磁性体21を回転させる回転駆動力が発生する。第1磁性体21は、磁力によって、第2磁性体22に回転駆動力を伝達する。伝達された回転駆動力は、第2磁性体22、第2軸23を介して負荷体Lに伝達される。当該回転駆動力が負荷体Lを回転させることで、第1軸20、第1磁性体21、第2磁性体22、および第2軸23が共に回転する。
【0044】
当該回転によって、駆動体1、第1軸20および第1磁性体21が振動する。第1磁性体21と第2磁性体22とが直接には接していないので、当該振動は、第2磁性体22および第2軸23には、伝達されない。即ち、当該振動は、ケース3の外部には伝達されない。
【0045】
駆動体1の振動は、ケース3に伝達されるまでに防振材6によって減衰される。駆動体1の振動によって発生する騒音は、吸音材5によって吸音される。支持部材4によって駆動体1が第1軸20が延びる方向へ強く挟まれるため、当該振動が抑制される。また、前方吸音材50および後方吸音材51が側方吸音材52よりも厚いため、当該方向への振動によって発生した騒音が吸収されやすい。また、当該振動によって第1軸20および第1磁性体21が振動したとしても、第2磁性体22は、第2軸23に第1軸20の軸心のズレを伝達させることなく回転する。
【0046】
第1軸20および第1磁性体21の振動によって発生する騒音は、周りに存在する前方吸音材50によって吸音される。また、前ケース30の貫通穴3aと第2軸23との間の隙間が1mmから2mmと小さいため、第1軸20および第1磁性体21の振動によって発生する騒音は、当該隙間からはほとんど漏れない。また、前ケース30の厚みが大きいため、前ケース30の内部から外部への音の振動が減衰される。このように、ケース3の内部で発生した振動および騒音が、ケース3の外部に漏れることが抑制される。
【0047】
駆動体1において、第1軸20とは反対側の制御基板11が発熱しやすい。後方吸音材51は、制御基板11からの熱を第1後ケース32の後方側に高い熱伝導率で運ぶ。側方吸音材52の第2部分は、制御基板11からの熱を第2後ケース33に高い熱伝導率で運ぶ。
【0048】
以上で説明した実施の形態1によれば、モータ100は、駆動体1とマグネットカップリング2とケース3とを備える。ケース3は、少なくとも第1軸20および第1磁性体21を覆う。マグネットカップリング2によって、駆動体1で発生した振動は、負荷体Lに伝達されない。また、駆動体1で発生した振動によって振動して騒音が発生し得る第1軸20および第1磁性体21がケース3に覆われるため、第1軸20および第1磁性体21から発生する騒音が外部に漏れることが抑制される。その結果、騒音の発生を抑制することができる。
【0049】
更に、従来であれば、例えば換気扇用のモータについて市場で報告される不具合の原因のうち、騒音が原因となることが多かった。即ち、当該モータの回転性能が落ちていないにも関わらず、騒音性が増大したことによって利用者から報告を受け、モータを交換せざるを得ないことがあった。モータ100において騒音の発生が抑制されるため、モータ100が設置される期間を長くすることができる。
【0050】
また、ケース3は、貫通穴3aを有する。ケース3の内部には、第2軸23の一部および第2磁性体22が配置される。第2軸23の当該一部ではない部分は、貫通穴3aから外側に延びる。このため、第1磁性体21と第2磁性体22との回転駆動力の伝達率を高い状態に保つことができる。また、第1軸20等で発生する騒音は、貫通穴3aと第2軸23との間の隙間からしか漏れない。このため、騒音が外部に漏れることを抑制することができる。
【0051】
また、ケース3は、前ケース30と後ケース31とを有する。前ケース30の厚みは、後ケース31の厚みよりも大きい。このため、騒音が発生しやすい前ケース30の側の方が、静音性能を高くすることができる。
【0052】
また、モータ100は、前方吸音材50を更に備える。前方吸音材50は、第1軸20の回転軸の周りを囲む。このため、第1軸20および第1磁性体21で発生した騒音を吸収することができ、騒音が外部に漏れることを抑制できる。特に、ケース3に貫通穴3aが設けられている場合であっても、第1軸20および第1磁性体21で発生した騒音が貫通穴3aまで伝達されるまでに、前方吸音材50によって当該騒音が吸収され得る。
【0053】
また、モータ100は、側方吸音材52を更に備える。前方吸音材50の第1厚みは、側方吸音材52の第3厚みよりも大きい。このため、特に騒音が発生しやすい第1軸20の周辺で発生する騒音をより前方吸音材50に吸収させることができる。
【0054】
また、側方吸音材52は、第1部分52aと第2部分52bとを有する。第2部分52bは、駆動体1に対して制御基板11が配置される側に存在する。第2部分の熱伝導率は、第1部分の熱伝導率よりも高い。このため、制御基板11で発生した熱を、ケース3の側に高い効率で移動させることができる。その結果、吸音材5が配置されていても、駆動体1の周囲に熱がこもることを抑制することができる。
【0055】
また、モータ100は、後方吸音材51を更に備える。前方吸音材50の第1厚みは、後方吸音材51の第2厚みよりも大きい。このため、特に騒音が発生しやすい第1軸20の周辺で発生する騒音をより前方吸音材50に吸収させることができる。
【0056】
また、後方吸音材51の第1軸20が延びる方向への熱伝導率は、前方吸音材50の同じ方向への熱伝導率よりも大きい。このため、制御基板11で発生した熱を、ケース3の側に高い効率で移動させることができる。
【0057】
なお、モータ100は、2本の第1軸20が両側に延びる両軸のモータであってもよい。この場合であっても、両軸と水平な面に対して面対称となるよう図2に示されるケース3、吸音材5の構造が実現されることで、同様の効果が奏される。
【0058】
なお、マグネットカップリング2は、図2に示される円盤面が対向する形式でなくてもよい。例えば、マグネットカップリング2は、第1磁性体21の周りを第2磁性体22が囲む形式であってもよい。
【0059】
実施の形態2.
図4は実施の形態2におけるモータの断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0060】
実施の形態2において、マグネットカップリング2のうち第2磁性体22および第2軸23がケース3の外部に位置する。第1磁性体21と第2磁性体22とは、実施の形態1と同様に向かい合う。第1磁性体21と第2磁性体22との間には、前ケース30の対向部30aが位置する。この状態においても、第1磁性体21と第2磁性体22との間で、ケース3の対向部30aを介して回転駆動力の伝達が行われ得る。
【0061】
実施の形態2において、前ケース30の素材は、樹脂、アルミニウム、オーステナイト系のステンレス、等の非磁性または磁化が起こりにくい素材からなる。なお、前ケース30のうち、対向部30aの部分のみが、非磁性または磁化が起こりにくい素材であってもよい。対向部30aの部分の厚みは、前ケース30の対向部30aでない部分の厚みよりも小さい。例えば、対向部30aの厚みは、2mmから3mm程度であることが望ましい。実施の形態1と異なり、前ケース30には貫通穴3aが設けられない。そのため、実施の形態1では貫通穴3aから外部に漏れていた騒音が、実施の形態2では存在しなくなる。その結果、より静音性の高いモータ100を得ることができる。
【0062】
実施の形態2において、前方吸音材50の第1厚みは、後方吸音材51の第2厚みと同程度であってよい。
【0063】
以上で説明した実施の形態2によれば、第2軸23および第2磁性体22は、ケース3の外部に位置する。第1磁性体21と第2磁性体22との間で、ケース3を介して回転駆動力が伝達される。この際、第1軸20と第1磁性体21とは、ケース3に完全に覆われる。特に、実施の形態2では、貫通穴3aが設けられない。このため、第1軸20等の振動によって発生した騒音がケース3の外に漏れることが抑制される。
【0064】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
回転駆動力を発生させる駆動体と、
前記駆動体が発生させた回転駆動力を負荷体に伝達するマグネットカップリングと、
前記駆動体が内部に配置されるように前記駆動体を覆うケースと、
を備え、
前記マグネットカップリングは、
前記駆動体の前側面から棒状に延び、前記駆動体が発生させる回転駆動力によって回転する第1軸と、
前記第1軸に固定され、前記第1軸と共に回転する第1磁性体と、
前記第1磁性体との間で回転駆動力を伝達可能な位置で回転可能に配置される第2磁性体と、
前記第2磁性体を回転可能に支持し、回転駆動力を前記負荷体に伝達する第2軸と、
を有し、
前記ケースは、少なくとも前記第1軸および前記第1磁性体が内部に位置するように前記駆動体を覆うモータ。
(付記2)
前記ケースは、前記第2軸の直径よりも大きい直径の貫通穴を有し、
前記第2軸の一部および前記第2磁性体は、前記ケースの内部に位置し、前記第2軸の前記一部ではない部分が前記貫通穴を通って前記ケースの外側に延びた付記1に記載のモータ。
(付記3)
前記第2軸および前記第2磁性体は、前記ケースの外部に位置し、
前記第1磁性体と前記第2磁性体との間で前記ケースを介して回転駆動力が伝達される付記1に記載のモータ。
(付記4)
前記ケースは、
前記第1軸および前記第1磁性体の側に配置され、少なくとも前記第1軸および前記第1磁性体を覆う前ケースと、
前記駆動体の前記前側面とは反対側の後側面および前記前側面と前記後側面とを繋ぐ側面を覆う後ケースと、
を有し、
前記前ケースの厚みは、前記後ケースの厚みよりも大きい付記1から付記3のいずれか一項に記載のモータ。
(付記5)
前記ケースの内部において、前記第1軸および前記第1磁性体の周りを囲むように配置された前方吸音材、
を更に備えた付記1から付記4のいずれか一項に記載のモータ。
(付記6)
前記駆動体のうち前記第1軸の回転軸を囲む側面と前記ケースとの間に配置された側方吸音材、
を更に備え、
前記第1軸が延びる方向における前記前方吸音材の厚みが、前記第1軸が延びる方向に垂直な方向における前記側方吸音材の厚みよりも大きい付記5に記載のモータ。
(付記7)
前記駆動体には、前記第1軸が延びる方向において前記駆動体の中央よりも前記第1軸とは反対側に制御基板が設けられ、
前記側方吸音材は、前記第1軸が延びる方向において中央よりも前記第1軸の側の第1部分と、中央よりも前記第1軸とは反対側の第2部分と、からなり、
前記第2部分の熱伝導率は、前記第1部分の熱伝導率よりも高い付記6に記載のモータ。
(付記8)
前記駆動体のうち前記前側面とは反対側の後側面と前記ケースとの間に配置された後方吸音材、
を更に備え、
前記前方吸音材の前記第1軸が延びる方向の厚みが、前記後方吸音材の前記第1軸が延びる方向の厚みよりも大きい付記5から付記7のいずれか一項に記載のモータ。
(付記9)
前記ケースの内部において、前記駆動体のうち前記前側面とは反対側の後側面と前記ケースとの間に配置された後方吸音材、
を更に備え、
前記駆動体には、前記第1軸が延びる方向において中央よりも前記第1軸とは反対側に制御基板が設けられ、
前記後方吸音材の前記第1軸が延びる方向への熱伝導率が、前記前方吸音材の前記第1軸が延びる方向への熱伝導率よりも高い付記5から付記8のいずれか一項に記載のモータ。
【符号の説明】
【0065】
1 駆動体、 1a 前側面、 1b 後側面、 1c 側面、 1d 穴、 2 マグネットカップリング、 3 ケース、 3a 貫通穴、 4 支持部材、 5 吸音材、 5a 第1伝導面、 5b 第2伝導面、 5c 中間伝導部、 5d 中間吸音部、 6 防振材、 10 電線、 11 制御基板、 20 第1軸、 21 第1磁性体、 22 第2磁性体、 23 第2軸、 24 軸支持体、 24a 軸受、 24b 筒体、 30 前ケース、 30a 対向部、 31 後ケース、 32 第1後ケース、 33 第2後ケース、 40 前部材、 40a 枠部、 40b 固定部、 41 後部材、 41a 枠部、 41b 固定部、 50 前方吸音材、 51 後方吸音材、 52 側方吸音材、 52a 第1部分、 52b 第2部分、 100 モータ、 L 負荷体
図1
図2
図3
図4