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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134328
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20240926BHJP
   C08F 16/14 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08F293/00
C08F16/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044568
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(71)【出願人】
【識別番号】000157603
【氏名又は名称】丸善石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 征樹
【テーマコード(参考)】
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J026HA10
4J026HA22
4J026HA29
4J026HA32
4J026HA35
4J026HA38
4J026HA48
4J026HB01
4J026HB02
4J026HB03
4J026HB04
4J026HB05
4J026HB06
4J026HB08
4J026HB10
4J026HB11
4J026HB19
4J026HB32
4J026HB34
4J026HB39
4J026HB43
4J026HB46
4J026HB47
4J026HE01
4J100AE09P
4J100AE10P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100CA01
4J100CA27
4J100DA28
4J100FA04
4J100HA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる方法を提供すること。
【解決手段】末端にチオエステル基を有するビニルエーテル系ポリマーの存在下で疎水性モノマーに光を照射して光重合させる工程を含む、式(2)で表される、ビニルエーテル系ポリマーと疎水性モノマーのブロック共重合体の製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるビニルエーテル系ポリマーの存在下で疎水性モノマーに光を照射して光重合させる工程を含む、下記式(2)で表されるブロック共重合体の製造方法。
【化1】
〔式(1)中、
1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、
3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示し(R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、X1~X2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示し、a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示す。)、
4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示し(R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示し、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。但し、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。)、
nは、1~10の整数を示し、
pは、繰り返し単位の繰り返し数を示す。〕
【化2】
〔式(2)中、
Zは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を示し、
qは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返し数を示し、
1、R2、R3、R4、n及びpは、前記と同義である。〕
【請求項2】
前記疎水性モノマーが、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、N-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、オレフィン系疎水性モノマー、(メタ)アクリロニトリル系疎水性モノマー、N-ビニル基含有複素環系疎水性モノマー、ハロゲン化ビニル系疎水性モノマー、及びカルボン酸ビニル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性モノマーが、疎水性共役モノマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性モノマーが、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、及びN-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
3が、-C(R5)(R6)-CN、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、又は-C(R19)(CN)-(CH2d-OHである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
4が、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ブロック共重合体が、微粒子状ブロック共重合体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
下記式(2)で表されるブロック共重合体を含む、微粒子。
【化3】
〔式(2)中、
1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、
3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示し(R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、X1~X2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示し、a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示す。)、
4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示し(R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示し、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。但し、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。)、
nは、1~10の整数を示し、
pは、繰り返し単位の繰り返し数を示し、
Zは、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を示し、
qは、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返し数を示す。〕
【請求項9】
前記疎水性モノマーが、疎水性共役モノマーである、請求項8に記載の微粒子。
【請求項10】
下記式(1)で表されるビニルエーテル系ポリマーを含有する、光重合開始剤。
【化4】
〔式(1)中、
1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、
3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示し(R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、X1~X2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示し、a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示す。)、
4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示し(R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示し、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。但し、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。)、
nは、1~10の整数を示し、
pは、繰り返し単位の繰り返し数を示す。〕
【請求項11】
光RAFT重合開始剤である、請求項10に記載の光重合開始剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体の製造方法に関する。より詳細には、ビニルエーテル系ブロック共重合体の製造方法、ビニルエーテル系ブロック共重合体を含む微粒子、及び光重合開始剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエーテル系モノマーと疎水性モノマーとのブロック共重合体は、高分子界面活性剤、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、リソグラフィーのテンプレート剤等として利用されている。
このようなブロック共重合体を製造する方法として、リビングカチオン重合法が知られているが(特許文献1、非特許文献1~2)、リビングカチオン重合法の場合には金属触媒が必要であり、コストが増大するという問題があった。また、リビングカチオン重合法でビニルエーテル系モノマーと重合反応が進行する疎水性モノマーは種類が限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-40245号公報
【特許文献2】特開2016-210887号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules,27,3714-3720(1994)
【非特許文献2】高分子論文集,72,486-490(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルと酢酸ビニル又はN-ビニルピロリドンとの共重合体を製造する方法として、S-シアノメチル-N-メチル-N-フェニルカルバモジチオアートを用いて重合させたポリ(2-ヒドロキシエチルビニルエーテル)をマクロ連鎖移動剤として用いて、酢酸ビニルやN-ビニルピロリドンをラジカル重合開始剤存在下でラジカルRAFT重合させる方法が知られている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献2に記載のラジカルRAFT重合法は、共重合反応に先立ってマクロ連鎖移動剤を予め精製しておく必要があった。また、スチレンや(メタ)アクリル酸エステルといった共役モノマーを用いた場合に重合反応が進行しないときがあった。
【0006】
本発明の課題は、ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のビニルエーテル系ポリマーを光重合開始剤として用いて疎水性モノマーを光重合させることによって、ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<11>を提供するものである。
<1> 下記式(1)で表されるビニルエーテル系ポリマー(以下、「ビニルエーテル系ポリマー(1)」とも称する)の存在下で疎水性モノマーに光を照射して光重合させる工程を含む、下記式(2)で表されるブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」とも称する)の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも称する)。
【0009】
【化1】
【0010】
〔式(1)中、
1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、
3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示し(R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、X1~X2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示し、a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示す。)、
4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示し(R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示し、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。但し、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。)、
nは、1~10の整数を示し、
pは、繰り返し単位の繰り返し数を示す。〕
【0011】
【化2】
【0012】
〔式(2)中、
Zは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を示し、
qは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返し数を示し、
1、R2、R3、R4、n及びpは、前記と同義である。〕
【0013】
<2> 前記疎水性モノマーが、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、N-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、オレフィン系疎水性モノマー、(メタ)アクリロニトリル系疎水性モノマー、N-ビニル基含有複素環系疎水性モノマー、ハロゲン化ビニル系疎水性モノマー、及びカルボン酸ビニル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーである、<1>に記載の製造方法。
<3> 前記疎水性モノマーが、疎水性共役モノマーである、<1>に記載の製造方法。
<4> 前記疎水性モノマーが、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、及びN-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーである、<1>に記載の製造方法。
【0014】
<5> R3が、-C(R5)(R6)-CN、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、又は-C(R19)(CN)-(CH2d-OHである、<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> R4が、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)である、<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7> 前記ブロック共重合体が、微粒子状ブロック共重合体である、<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
<8> ブロック共重合体(2)を含む、微粒子(以下、「本発明の微粒子」とも称する)。
<9> 前記疎水性モノマーが、疎水性共役モノマーである、<8>に記載の微粒子。
<10> ビニルエーテル系ポリマー(1)を含有する、光重合開始剤(以下、「本発明の光重合開始剤」とも称する)。
<11> 光RAFT重合開始剤である、<10>に記載の光重合開始剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法、本発明の光重合開始剤によれば、ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる。
本発明の微粒子は、ビニルエーテル系モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返しからなるセグメントと疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返しからなるセグメントとを有しながらも、簡便にかつ低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図2】実施例2で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図3】実施例3で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図4】実施例4で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図5】実施例5で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図6】実施例6で得られたブロック共重合体の合成を示すGPCクロマトグラムの図である。
図7】実施例7で得られた微粒子のAFM像を示す図である。
図8】実施例8で得られた微粒子のAFM像を示す図である。
図9】実施例9で得られた微粒子のAFM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔ブロック共重合体の製造方法〕
本発明の製造方法は、下記式(1)で表されるビニルエーテル系ポリマーの存在下で疎水性モノマーに光を照射して光重合させる工程を含むものである。この工程によって、下記式(2)で表されるブロック共重合体が得られる。なお、本明細書において、「ビニルエーテル系ポリマー」とは、ビニルエーテル系モノマーに由来する繰り返し単位を少なくとも有するポリマーを意味する。
【0019】
【化3】
【0020】
〔式(1)中、
1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、
3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示し(R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、X1~X2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示し、a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示す。)、
4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示し(R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示し、R28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示し、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。但し、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。)、
nは、1~10の整数を示し、
pは、繰り返し単位の繰り返し数を示す。〕
【0021】
【化4】
【0022】
〔式(2)中、
Zは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を示し、
qは、前記疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返し数を示し、
1、R2、R3、R4、n及びpは、前記と同義である。〕
【0023】
式(1)及び(2)中の各記号について説明する。
式(1)及び(2)中、R1は、炭素数1~5のアルカンジイル基を示す。
1で示されるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R1で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは2又は3である。
1で示されるアルカンジイル基としては、例えば、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1で示されるアルカンジイル基としては、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基がより好ましい。
【0024】
式(1)及び(2)中、nは1~10の整数を示すが、1~6の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1~3の整数が特に好ましい。なお、nが2~10の整数の場合、n個のR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
式(1)及び(2)中、R2は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
2で示されるアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R2で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1又は2である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
これらの中でも、R2としては、入手容易性の観点から、水素原子が好ましい。
【0026】
式(1)及び(2)中、R3は、-C(R5)(R6)-CN、-C(R7)(R8)-X1、-C(R9)(R10)(R11)、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R20)(R21)-CON(R22)H、又は-C(R23)(R24)-CON(R25)(R26)を示す。これらの中でも、R3としては、入手容易性の観点から、-C(R5)(R6)-CN、-C(R12)(R13)-(CH2a-COOR14、-C(R15)(X2)-(CH2b-COOR16、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OHが好ましく、-C(R17)(CN)-(CH2c-COOR18、-C(R19)(CN)-(CH2d-OH、-C(R5)(R6)-CNがより好ましく、-C(R5)(R6)-CNが特に好ましい。
【0027】
式(1)及び(2)中、R4は、-S-R27、-S-X3、-S-R28-X4、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、又は-N(X10)(R3411)を示す。これらの中でも、R4としては、入手容易性の観点から、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)、-N(R328)(R339)、-N(X10)(R3411)が好ましく、-N(R29)(R30)、-N(R31)(X5)、-N(X6)(X7)がより好ましく、-N(R31)(X5)が特に好ましい。
【0028】
上記R5~R21、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基を示すが、水素原子が好ましい。また、R22、R25及びR26は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示す。
また、上記R27及びR29~R31は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルキル基を示す。
5~R26、R27及びR29~R31で示されるアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R5~R26、R27及びR29~R31で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルへキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
-N(R29)(R30)において、R29及びR30は隣接する窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。当該複素環としては、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、インドール環、ピリミジン環が挙げられる。
【0029】
28及びR32~R34は、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~12のアルカンジイル基を示す。
28及びR32~R34で示されるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R28及びR32~R34で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。R28及びR32~R34で示されるアルカンジイル基としては、R1で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0030】
1~X2、X3~X11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のアントラセニル基、置換若しくは非置換のピレニル基、又は置換若しくは非置換のピリジル基を示す。
これらの中でも、X1~X11としては、置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のナフチル基、置換又は非置換のピリジル基が好ましく、置換又は非置換のフェニル基がより好ましい。
【0031】
a~dは、それぞれ独立して、0~8の整数を示すが、好ましくは0~4、より好ましくは0~2である。
【0032】
5~R34、X1~X11における置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ハロアルキル基等が挙げられる。なお、置換基の置換位置及び置換個数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
式(1)及び(2)中、pは、繰り返し単位の繰り返し数(重合度)を示す。
pとしては、微粒子形成やポリマーとしての機能発現の観点から、5~1000の整数が好ましく、10~500の整数がより好ましく、20~300の整数が特に好ましい。
本明細書における繰り返し単位の繰り返し数(重合度)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析(展開溶媒:10mmоl/L臭化リチウムを含有するN,N-ジメチルホルムアミド)によってポリスチレン換算の数平均分子量として求めることができる。
【0034】
式(2)中、Zは、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を示す。本明細書において「疎水性モノマー」とは、水への溶解性が1wt%未満のモノマーを意味する。
疎水性モノマーとしては、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、N-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、オレフィン系疎水性モノマー、(メタ)アクリロニトリル系疎水性モノマー、N-ビニル基含有複素環系疎水性モノマー、ハロゲン化ビニル系疎水性モノマー、及びカルボン酸ビニル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーが挙げられる。これら疎水性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
疎水性モノマーとしては、疎水性共役モノマーが好ましく、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、及びN-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーがより好ましく、芳香族ビニル系疎水性モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーが特に好ましい。
本発明によれば、疎水性モノマーとして疎水性共役モノマーを用いた場合でも、ブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる。また、疎水性共役モノマー(好ましくは芳香族ビニル系疎水性モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマー)を用いた場合には微粒子状ブロック共重合体を得やすくなり、更にヘミアセタールジチオエステルが末端に存在しない安定な重合体とすることができる。
【0036】
芳香族ビニル系疎水性モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、2-n-ブチルスチレン、3-n-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、2-tert-ブチルスチレン、3-tert-ブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2-tert-ブトキシスチレン、3-tert-ブトキシスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系疎水性モノマー;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン系疎水性モノマーが好ましく、スチレン系疎水性モノマーがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル系疎水性モノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸C1-8アルキル系疎水性モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル酸C1-4アルキル系疎水性モノマーが特に好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
N-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーとしては、N-アルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーが好ましく、N-C1-10アルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、N,N-ジC1-10アルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーがより好ましく、N-C1-6アルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマー、N,N-ジC1-6アルキル(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーが特に好ましい。例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0037】
オレフィン系疎水性モノマーは、鎖状オレフィン系疎水性モノマーでも環状オレフィン系疎水性モノマーでもよい。例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、1,3-ブタジエン、ヘキセン、オクテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキセン等が挙げられる。
(メタ)アクリロニトリル系疎水性モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
N-ビニル基含有複素環系疎水性モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルインドール、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル系疎水性モノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
カルボン酸ビニル系疎水性モノマーとしては、飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル系疎水性モノマーが好ましい。例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ラウリル酸ビニル等が挙げられる。
【0038】
式(2)中、qは、疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返し数(重合度)を示す。
qとしては、微粒子形成やポリマーとしての機能発現の観点から、5~1000の整数が好ましく、10~500の整数がより好ましく、20~300の整数が特に好ましい。
【0039】
ビニルエーテル系ポリマー(1)は、市販品を用いても公知の方法に従って合成して得たものを用いてもよい。例えば、ビニルエーテル系ポリマー(1)は、特開2016-210887号公報に記載の方法により合成できる。具体的には、下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」とも称する)及びラジカル重合開始剤の存在下で、下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」とも称する)をリビングラジカル重合させることにより合成できる。式(3)で表される化合物は連鎖移動剤として作用する。
【0040】
【化5】
【0041】
〔式(3)中、R3及びR4は、前記と同義である。〕
【0042】
【化6】
【0043】
〔式(4)中、R1、R2及びnは、前記と同義である。〕
【0044】
化合物(4)としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、1-ヒドロキシプロパン-2-イルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、2-エトキシエチルビニルエーテル、2-(2-メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル、2-(2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル等が挙げられる。化合物(4)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でも、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましく、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテルがより好ましく、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルが特に好ましい。
【0045】
化合物(3)としては、例えば、S-シアノメチル-N-メチル-N-フェニルカルバモジチオアート、S-シアノメチル-N,N-ジフェニルカルバモジチオアート、S-2-シアノプロパン-2-イル-N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモジチオアート、S-シアノメチル-N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモジチオアート、メチル2-[N-メチル-N(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]プロパノアート、ベンジル1H-ピロール-1-カルボジチオアート等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの連鎖移動剤の中でも、反応性が良好で且つ重合制御が容易な点で、S-シアノメチル-N-メチル-N-フェニルカルバモジチオアート、S-シアノメチル-N,N-ジフェニルカルバモジチオアート、ベンジル1H-ピロール-1-カルボジチオアートが好ましく、S-シアノメチル-N-メチル-N-フェニルカルバモジチオアートがより好ましい。
【0046】
連鎖移動剤の使用量は、化合物(4)100モル部に対して、通常0.001~20モル部の範囲、好ましくは0.01~10モル部の範囲、より好ましくは0.1~5モル部の範囲である。
【0047】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤、過酸化物系ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0048】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド]などの油溶性アゾ系ラジカル重合開始剤;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド)四水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン]二塩酸塩などの水溶性アゾ系ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0049】
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、ペルオキシオクタン酸t-ブチル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、ペルオキシイソ酪酸t-ブチル、過酸化ラウロイル、ペルオキシピバリン酸t-アミル、ペルオキシピバリン酸t-ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0050】
ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は特に限定されないが、化合物(4)100モル部に対して、通常0.001~20モル部の範囲、好ましくは0.01~10モル部の範囲、より好ましくは0.05~5モル部の範囲である。
【0051】
リビングラジカル重合は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類などを使用することができる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
溶媒の使用量は特に限定されないが、化合物(4)100質量部に対して、通常10~1000質量部、好ましくは20~500質量部である。
【0052】
リビングラジカル重合の重合温度としては、-20℃~200℃が好ましく、40℃~160℃がより好ましい。重合時間は、通常1~144時間、好ましくは3~108時間である。
【0053】
ビニルエーテル系ポリマー(1)のGPC分析によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常1,000~1,000,000、好ましくは1,500~500,000、より好ましくは2,000~200,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0~2.0、好ましくは1.0~1.8、より好ましくは1.0~1.6である。なお、ビニルエーテル系ポリマー(1)の数平均分子量は、化合物(3)及びラジカル開始剤の使用量により調整できる。
【0054】
次に、光重合工程について詳細に説明する。光重合工程は、ビニルエーテル系ポリマー(1)の存在下で疎水性モノマーに光を照射して光重合させる工程である。
疎水性モノマーとしては、Zで示される疎水性モノマーに由来する繰り返し単位を与えるものが挙げられる。
ビニルエーテル系ポリマー(1)は、光重合開始剤(好ましくは光RAFT重合開始剤)として作用する。ビニルエーテル系ポリマー(1)は、リビングラジカル重合で得られたものをそのまま使用しても反応液から単離したものを使用してもよい。
ビニルエーテル系ポリマー(1)の使用量は特に限定されないが、疎水性モノマー100モル部に対して、通常1~10,000モル部の範囲、好ましくは5~5,000モル部の範囲、より好ましくは10~1,000モル部の範囲である。
【0055】
照射する光としては、紫外線、可視光線、X線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
紫外線照射装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。
照射強度は、通常0.1~100mW/cm2、好ましくは0.5~20mW/cm2である。
【0056】
光重合工程は、バルク重合法、分散重合法、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の一般的な重合法で行うことができる。
光重合工程は、溶媒又は分散媒の存在下又は非存在下で行うことができるが、溶媒又は分散媒の存在下で行うことが好ましい。
溶媒又は分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類などを使用することができる。これらの溶媒又は分散媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
溶媒又は分散媒の使用量は特に限定されないが、疎水性モノマー100質量部に対して、通常50~2000質量部、好ましくは100~1000質量部である。
【0058】
乳化重合法で光重合を行う場合、光重合工程は、好ましくは水の存在下で行われる。また、水とともに乳化剤の存在下で行うこともできる。
乳化剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンメチルエーテルカルボン酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸エステルナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリN-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の非イオン界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキロイルアミドプロピルジメチルグリシン等の両性界面活性剤が挙げられる。乳化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
乳化剤の使用量は特に限定されないが、疎水性モノマー100質量部に対して、通常1~400質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0059】
分散重合法で光重合を行う場合、光重合工程は、好ましくは分散媒の存在下、より好ましくは分散媒及び分散安定剤の存在下で行われる。
分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリN-ビニルピロリドン等が挙げられる。分散安定剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
光重合の重合温度としては、反応効率の観点から、10~160℃が好ましく、15~120℃がより好ましい。重合時間は、通常0.5~96時間、好ましくは1~72時間である。
【0061】
重合の方式は、バッチ式重合法、セミバッチ式重合法及び連続重合法等のいずれの方式でも重合を行うことができる。
【0062】
光重合工程で得られた反応生成物は、必要に応じて精製してもよい。
そして、本発明の製造方法によれば、ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる。また、ビニルエーテル系ポリマー(1)をリビングラジカル重合で調製した場合に、精製処理を行わずにビニルエーテル系ポリマー(1)を光重合工程に用いることができるため、工業的に極めて有用である。
特に、疎水性モノマーとして疎水性共役モノマーを用いた場合であってもブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造でき、このようにして得られるブロック共重合体は、高分子界面活性剤、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、リソグラフィーのテンプレート剤、表面改質剤等として有用である。
また、ブロック共重合体(2)のGPC分析によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常1000~500000、好ましくは2500~200000、より好ましくは5000~100000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0~4.0、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~4.5である。
また、ブロック共重合体(2)は、好ましくは微粒子状ブロック共重合体である。微粒子状の場合には、化粧品材料等として有用である。
【0063】
〔微粒子〕
本発明の微粒子は、ブロック共重合体(2)を含むものである。
本発明の微粒子において、式(2)中の各記号は前記と同義である。すなわち、式(2)中のZで示される繰り返し単位を与える疎水性モノマーとしては、疎水性共役モノマーが好ましく、芳香族ビニル系疎水性モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマー、及びN-置換(メタ)アクリルアミド系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーがより好ましく、芳香族ビニル系疎水性モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系疎水性モノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマーが特に好ましい。
【0064】
また、本発明の微粒子の平均粒子径(Dh)は、溶媒又は分散媒に分散可能なサイズとする観点から、好ましくは1~1000nm、より好ましくは5~500nm、特に好ましくは10~300nmである。
粒子径分布(PDI)は、均一性の観点から、好ましくは0.01~0.8、より好ましくは0.01~0.65、特に好ましくは0.01~0.5である。
変動係数(CV)は、粒子径測定における再現性の観点から、好ましくは0~20%、より好ましくは0~10%、特に好ましくは0~5%である。
本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法で測定される体積平均粒子径を意味し、平均粒子径、粒子径分布(PDI)及び変動係数(CV)は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0065】
そして、本発明の微粒子は、ビニルエーテル系モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返しからなるセグメントと疎水性モノマーに由来する繰り返し単位の繰り返しからなるセグメントとを有しながらも、簡便にかつ低コストで製造可能である。また、ビニルエーテルユニットは細胞毒性が低い特徴を有する。したがって、本発明の微粒子は、化粧品材料等として有用である。
【0066】
〔光重合開始剤〕
本発明の光重合開始剤は、ビニルエーテル系ポリマー(1)を含有するものである。
本発明の光重合開始剤によれば、ビニルエーテル系モノマーと幅広い種類の疎水性モノマーとのブロック共重合体を簡便にかつ低コストで製造できる。本発明の光重合開始剤は、光RAFT重合開始剤として特に有用である。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
<GPC測定>
Mn及びMw/Mnの分析は、ポリスチレン換算のGPCを用いて行った。分析条件は、カラム:TSKgelカラムG-MHHR-M×2(東ソー(株)製)、溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(10mmol/L臭化リチウム含有)、測定温度:40℃、流速:1.0mL/分にて測定した。
【0069】
1H NMR測定>
1H NMR測定は、JEOL社製JNM-ECX500 IIを用いて行った。モノマー転化率(モノマーのうち、初期に存在したモノマーの総量に対して重合反応によってポリマーに組み込まれた割合を指す。)は、重合後の反応溶液を均一に溶解する溶媒(重水、重メタノール、重ジメチルスルホキシド、または重クロロホルム)に溶解させ、生成ポリマーと残存モノマーのピーク面積比から求めた。
【0070】
<動的光散乱(DLS)による粒子径測定>
DLSによる粒子径測定は、Malvern社製Zetasizer Nano-ZSPを用い、173°の散乱角で行った。測定データはZeta Software Ver.7.02にてキュムラント法で解析し、粒子径(Dh)と粒子径分布(PDI)を算出した。また、得られた平均粒子径は9回以上の測定で得られた結果であり、その粒子径測定結果の標準偏差から変動係数(CV)を算出した。
【0071】
<原子間力顕微鏡(AFM)測定>
微粒子の形状観察は、島津社製SPM-9600を用いて行った。マイカ基板上にサンプル(微粒子の水分散液)を塗布し、十分に風乾させたものをダイナミックモードで測定した。その際、シリコンカンチレバー(オリンパス社製OMCL-AC160TS-C3)を用いて測定した。
【0072】
<調製例1 ポリ(2-ヒドロキシエチルビニルエーテル)の合成>
試験管に撹拌子を入れ、更にS-シアノメチル-N-メチル-N-フェニルカルバモジチオアート(以下、「CMPCD」と記載する)を0.050g、モノマーとして2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(以下、「HEVE」と記載する)を4.011g(CMPCD 1モルに対して200モル倍)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬工業(株)製「V-601」)を0.021g(CMPCD 1モルに対して0.4モル倍)入れ、よく攪拌した。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、70℃の油浴中で重合反応を開始した。反応開始から6時間または24時間経過後に冷却及び空気への暴露により重合を停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。
6時間の重合では、モノマー転化率(モノマーであるHEVEのうち、初期に存在したモノマーの総量に対して重合反応によってポリマーに組み込まれた割合)が13%、得られたポリ(2-ヒドロキシエチルビニルエーテル)(以下、「PHEVE」と記載する)のMnが2100、Mw/Mnが1.52であった。
また、24時間の重合では、モノマー転化率が21%、得られたPHEVEのMnが3800、Mw/Mnが1.40であった。
【0073】
<調製例2 ポリ(ジエチレングリコールモノビニルエーテル)の合成>
モノマーをジエチレングリコールモノビニルエーテル(以下、「DEGV」と記載する)5.999g(CMPCD 1モルに対して200モル倍)に変更した以外は、調製例1と同様にして重合反応を行った。24時間経過後に冷却及び空気への暴露により重合を停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。
その結果、モノマー転化率が25%、得られたポリ(ジエチレングリコールモノビニルエーテル)(以下、「PDEGV」と記載する)のMnが6300、Mw/Mnが1.46であった。
【0074】
<調製例3 ポリ(2-メトキシエチルビニルエーテル)の合成>
試験管に撹拌子を入れ、更にCMPCDを0.218g、モノマーとして2-メトキシエチルビニルエーテル(以下、「MOVE」と記載する)を20.000g(CMPCD 1モルに対して200モル倍)、V-601を0.093g(CMPCD 1モルに対して0.4モル倍)、水酸化リチウム一水和物を0.017g(CMPCD 1モルに対して0.4モル倍)、超純水(富士フイルム和光純薬工業(株)製)20.000gを入れ、よく攪拌した。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、70℃の油浴中で重合反応を開始した。反応開始から72時間経過後に冷却及び空気への暴露により重合を停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。
その結果、モノマー転化率が28%、得られたポリ(2-メトキシエチルビニルエーテル)(以下、「PMOVE」と記載する)のMnが5500、Mw/Mnが1.31であった。
【0075】
<参考例1 HEVEモノマーを含むPHEVE溶液への光照射>
調製例1における24時間の重合終了後の試験管中には、生成したPHEVE(Mn=3800、Mw/Mn=1.40)の他、未反応のHEVEが含まれていた(PHEVEに対して、3.762モル%)。この試験管中の溶液に凍結脱気を再度3回行った後、試験管を密閉し、室温にてUV-LED(ピーク波長365nm、14.2mW/cm2)の光を2日間照射した。光源は、株式会社テクノシグマ社製PER-365(出力507mW)を直接試験管に差し込んで使用した(以下、本光源を「UV-LED」と記載する)。その後、空気への暴露を行い、1H NMR分析、GPC分析を行った。
その結果、PHEVEは光照射前と全く同じであった(Mn=3800、Mw/Mn=1.40)。このように、残存した未反応HEVEは、調製例1で得られたPHEVE存在下における光の照射では反応しないことが確認された。また同様にして、DEGVを含むPDEGV溶液及びMOVEを含むPMOVE溶液にも光をそれぞれ2日間照射したが変化はなかった。
【0076】
<実施例1 スチレンを含むPHEVE溶液への光照射>
(1)調製例1における24時間の重合終了後の試験管から、3.377gの溶液(PHEVE 0.799g含む)を採取して新たな試験管に入れ、そこにスチレン(以下、「St」と記載する)を4.030g(PHEVEに対して、200モル%)、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)を9.428g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、室温にてUV-LEDの光を3日間照射した。
(2)その間、1時間経過後、2時間経過後、4時間経過後、8時間経過後、24時間経過後、48時間経過後、72時間経過後にそれぞれ反応溶液を抜き取り、その抜き取った溶液を空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。時間経過と共により高分子量体へと変化し、Stの残存量が減少したため、PHEVEとポリスチレン(以下、「PSt」と記載する)からなるブロック共重合体の合成が確認された。各時間で得られたGPCの分析結果を図1に示す。
【0077】
<実施例2 酢酸ビニルを含むPHEVE溶液への光照射>
調製例1における24時間の重合終了後の試験管から、PHEVEを0.691g含む混合溶液を採取して新たな試験管に入れ、そこに酢酸ビ二ルを3.235g(PHEVEに対して、200モル%)、溶媒としてメタノールを6.519g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、室温にてUV-LEDの光を25時間照射した。その間、1時間経過後、2時間経過後、4時間経過後、8時間経過後、25時間経過後にそれぞれ反応溶液を抜き取り、その抜き取った溶液を空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。時間経過と共により高分子量体へと変化し、酢酸ビニルの残存量が減少したため、PHEVEとポリ酢酸ビニルからなるブロック共重合体の合成が確認された。各時間で得られたGPCの分析結果を図2に示す。
【0078】
<実施例3 N-ビニルピロリドンを含むPHEVE溶液への光照射>
調製例1における24時間の重合終了後の試験管から、PHEVEを1.100g含む混合溶液を採取して新たな試験管に入れ、そこにN-ビニルピロリドンを5.914g(PHEVEに対して、200モル%)、溶媒としてメタノールを3.486g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し70℃に加熱した湯浴に浸すと同時に、UV-LEDの光を25時間照射した。その間、1時間経過後、2時間経過後、4時間経過後、8時間経過後、25時間経過後にそれぞれ反応溶液を抜き取り、その抜き取った溶液を空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。時間経過と共により高分子量体へと変化し、N-ビニルピロリドンの残存量が減少したため、PHEVEとポリ(N-ビニルピロリドン)からなるブロック共重合体の合成が確認された。各時間で得られたGPCの分析結果を図3に示す。
【0079】
<実施例4 N,N-ジエチルアクリルアミドを含むPHEVE溶液への光照射>
調製例1における24時間の重合終了後の試験管から、PHEVEを0.420g含む混合溶液を採取して新たな試験管に入れ、そこにN,N-ジエチルアクリルアミドを2.580g(PHEVEに対して、200モル%)、溶媒としてメタノールを10.649g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、室温にてUV-LEDの光を24時間照射し、その後、空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPHEVEと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPHEVEよりも高分子量体へと変化しており、N,N-ジエチルアクリルアミドがすべて重合したことが確認された。このようにして、PHEVEとポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)からなるブロック共重合体(Mn=40600、Mw/Mn=1.46)の合成が確認された。GPCの分析結果を図4に示す。
【0080】
<実施例5 メタクリル酸メチルを含むPHEVE溶液への光照射>
調製例1における24時間の重合終了後の試験管から、PHEVEを0.478g含む混合溶液を採取して新たな試験管に入れ、そこにメタクリル酸メチル(以下、「MMA」と記載する)を2.526g(PHEVEに対して、200モル%)、溶媒としてDMFを10.283g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し70℃に加熱した湯浴に浸すと同時に、UV-LEDの光を46時間照射し、その後、空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPHEVEと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPHEVEよりも高分子量体へと変化しており、MMAが80%転化率にて重合したことが確認された。このようにして、PHEVEとポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と記載する)のブロック共重合体(Mn=27500、Mw/Mn=1.41)の合成が確認された。GPCの分析結果を図5に示す。
【0081】
<実施例6 MMAを含むPMOVE溶液への光照射>
試験管に、調製例3で得られたPMOVEを0.706g、MMAを1.894g(PMOVEに対して、200モル%)、溶媒としてDMFを10.401g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、室温にてUV-LEDの光を24時間照射し、その後、空気へ暴露して重合停止し、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPMOVEと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPMOVEよりも高分子量体へと変化しており、MMAが88%転化率にて重合したことが確認された。このようにして、PMOVEとPMMAのブロック共重合体(Mn=14900、Mw/Mn=1.85)の合成が確認された。GPCの分析結果を図6に示す。
【0082】
<実施例7 PHEVE-PSt共重合体微粒子の作製>
DMFをエタノールに変更し、600rpmの速度で攪拌しながらUV-LEDの光を45.5時間照射したこと以外は、実施例1の(1)と同様にして光重合を行った。
その後、空気へ暴露して重合停止し、DLS測定、AFM測定、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPHEVEと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPHEVEよりも高分子量体へと変化しており、Stが92%転化率にて重合したことが確認された。このようにして、PHEVEとPStのブロック共重合体(Mn=14300、Mw/Mn=3.42)の合成が確認された。また、ブロック共重合体はエタノール中でPSt部分をコア、PHEVE部分をシェルとする微粒子として得られており、DLSによる粒子径測定から、微粒子の粒子径(Dh)は114nm、粒子径分布(PDI)は0.413、変動係数(CV)は2.0%であった。得られた微粒子についてAFM観察した結果を図7に示す。
【0083】
<実施例8 PDEGV-PSt共重合体微粒子の作製>
(1)試験管に、調製例2で得られたPDEGVを0.145g、Stを0.456g(PDEGVに対して、200モル%)、溶媒として1-ブタノールを2.399g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し70℃または110℃に加熱した油浴に浸すと同時に、600rpmの速度で攪拌しながら、UV-LEDの光を24時間照射した。
(2)その後、空気へ暴露して重合停止し、DLS測定、AFM測定、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPDEGVと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPDEGVよりも高分子量体へと変化しており、70℃での重合ではStが91%、110℃での重合ではStが81%転化率にて重合したことが確認された。このようにして、PDEGVとPStのブロック共重合体の合成が確認された(70℃での重合:Mn=24800、Mw/Mn=4.02、110℃での重合:Mn=11800、Mw/Mn=2.09)。また、ブロック共重合体は1-ブタノール中で微粒子として得られており、DLSによる粒子径測定から、70℃での重合では、微粒子の粒子径(Dh)は197nm、粒子径分布(PDI)は0.031、変動係数(CV)は2.1%であった。また、110℃での重合では、微粒子の粒子径(Dh)は149nm、粒子径分布(PDI)は0.145、変動係数(CV)は1.2%であった。得られた微粒子についてAFM観察した結果(2μm×2μmの高さ像)を図8に示す。
【0084】
<実施例9 水中でのPDEGV-PSt共重合体微粒子の作製>
(1)1-ブタノールを超純水に、反応温度を70℃のみにそれぞれ変更したこと以外は、実施例8の(1)と同様にして光重合を行った。
(2)その後、空気へ暴露して重合停止し、DLS測定、AFM測定、1H NMR分析、GPC分析を行った。用いたPDEGVと得られた高分子のGPC分析結果より、得られた高分子はPDEGVよりも高分子量体へと変化しており、Stが98%転化率にて重合したことが確認された。このようにして、PDEGVとPStのブロック共重合体(Mn=29000、Mw/Mn=4.06)の合成が確認された。また、ブロック共重合体は水中でPSt部分をコア、PDEGV部分をシェルとする微粒子として得られており、DLSによる粒子径測定から、微粒子の粒子径(Dh)は106nm、粒子径分布(PDI)は0.073、変動係数(CV)は1.1%であった。得られた微粒子についてAFM観察した結果(2μm×2μmの高さ像)を図9に示す。
【0085】
<比較例1>
試験管に、調製例2で得られたPDEGVを0.145g、Stを0.456g(PDEGVに対して、200モル%)、V-601を0.002g(PDEGVに対して、0.4モル%)、溶媒として超純水を2.399g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、70℃の油浴中、600rpmで24時間攪拌した。
その後、空気へ暴露して、DLS測定を行ったところ、微粒子は確認されず、共重合反応の進行は確認できなかった。
【0086】
<比較例2>
試験管に、調製例1で得られたPHEVEを0.478g、MMAを2.526g(PHEVEに対して、200モル%)、V-601を0.012g(PHEVEに対して、0.4モル%)、溶媒としてDMFを10.271g加えてよく溶かした。次いで、凍結脱気を3回行った後、試験管を密閉し、70℃の油浴中、24時間反応させた。その後、空気へ暴露して、反応混合物を50mLの水に溶解させたところ、用いたPHEVEがそのまま回収され、PHEVEとPMMAのブロック共重合反応の進行は確認できなかった。
【0087】
比較例1、2の結果に示すとおり、ビニルエーテル系ポリマーをマクロ連鎖移動剤として用いてStやMMAのような疎水性共役モノマーをラジカルRAFT重合させた場合には、ブロック共重合反応の進行がみられなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9