(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134329
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コモンモードノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240926BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044569
(22)【出願日】2023-03-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年(2022年)4月13日 香港に製品を出荷することにより公開
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 則隆
(72)【発明者】
【氏名】阪上 剛
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 託司
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070BA12
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】本開示は、素体と外部電極との接続信頼性を向上させることを目的とする。
【解決手段】コモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、金属電極部4と、Niめっき層6と、Snめっき層7と、を備える。金属電極部4は、素体2の上面U2、下面L2、及び、側面S2にわたって配置されている。Niめっき層6は、金属電極部4の上面U4、下面L4、及び、側面S4にわたって配置されている。Snめっき層7は、Niめっき層6の上面U6、下面L6、及び、側面S6にわたって配置されている。金属電極部4は、銀を含む電極である。金属電極部4は、内部に複数の空孔H1が形成された構造であるポーラス構造を有する。金属電極部4の空孔率は、15%以上、30%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の上面、下面、及び、側面にわたって配置された金属電極部と、
前記金属電極部の上面、下面、及び、側面にわたって配置されたNiめっき層と、
前記Niめっき層の上面、下面、及び、側面にわたって配置されたSnめっき層と、を備え、
前記金属電極部は、銀を含む電極であり、内部に複数の空孔が形成された構造であるポーラス構造を有し、
前記金属電極部の空孔率は、15%以上、30%以下である、
コモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
前記金属電極部は、ガラスを更に含み、
前記金属電極部における前記ガラスの重量パーセントは、2重量パーセント以上、10重量パーセント以下である、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
前記金属電極部と前記Niめっき層との間において、前記金属電極部の前記上面、前記下面、及び、前記側面にわたって配置された導電性樹脂層を更に備え、
前記金属電極部は、
前記素体の前記上面に配置された第1部分と、
前記素体の前記下面に配置された第2部分と、
前記素体の前記側面に配置された第3部分と、を有し、
前記第1部分は、上から見て前記第3部分側とは反対側の端である第1先端を含み、
前記第2部分は、下から見て前記第3部分側とは反対側の端である第2先端を含み、
前記導電性樹脂層は、
前記金属電極部の前記第1先端と、
前記金属電極部の前記第2先端と、を覆っている、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
前記金属電極部と前記Niめっき層との間において、前記金属電極部の前記上面、前記下面、及び、前記側面にわたって配置された導電性樹脂層を更に備え、
前記金属電極部は、
前記素体の前記上面に配置された第1部分と、
前記素体の前記下面に配置された第2部分と、
前記素体の前記側面に配置された第3部分と、を有し、
前記第1部分は、上から見て前記第3部分側とは反対側の端である第1先端を含み、
前記第2部分は、下から見て前記第3部分側とは反対側の端である第2先端を含み、
前記導電性樹脂層は、
前記第1部分に重なって配置された第4部分と、
前記第2部分に重なって配置された第5部分と、
前記第3部分に重なって配置された第6部分と、を有し、
前記第4部分は、上から見て前記第6部分側とは反対側の端である第4先端を含み、
前記第5部分は、下から見て前記第6部分側とは反対側の端である第5先端を含み、
上から見て、前記第4先端は、前記第1先端と前記第6部分との間に位置し、
下から見て、前記第5先端は、前記第2先端と前記第6部分との間に位置する、
請求項1に記載のコモンモードノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にコモンモードノイズフィルタに関し、より詳細には、金属電極部を備えるコモンモードノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコモンモードフィルタ(コモンモードノイズフィルタ)は、磁性体部を有する素体と、磁性体部の表面に施された非晶質ガラスコート層と、素体上に配置されている外部電極と、を備える。外部電極は、導電性樹脂層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、素体と外部電極との間で剥離が発生する可能性がある。より詳細には、素体と、外部電極の導電性樹脂層との密着が弱いために、素体と導電性樹脂層との間で剥離が発生する可能性がある。そのため、素体と外部電極との接続信頼性の向上が望まれる。
【0005】
本開示は、素体と(金属電極部を含む)外部電極との接続信頼性を向上させることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るコモンモードノイズフィルタは、素体と、金属電極部と、Niめっき層と、Snめっき層と、を備える。前記金属電極部は、前記素体の上面、下面、及び、側面にわたって配置されている。前記Niめっき層は、前記金属電極部の上面、下面、及び、側面にわたって配置されている。前記Snめっき層は、前記Niめっき層の上面、下面、及び、側面にわたって配置されている。前記金属電極部は、銀を含む電極である。前記金属電極部は、内部に複数の空孔が形成された構造であるポーラス構造を有する。前記金属電極部の空孔率は、15%以上、30%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、素体と外部電極との接続信頼性が向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るコモンモードノイズフィルタの断面図である。
【
図2】
図2は、同上のコモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【
図3】
図3は、同上のコモンモードノイズフィルタの平面図である。
【
図4】
図4は、同上のコモンモードノイズフィルタの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るコモンモードノイズフィルタの断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係るコモンモードノイズフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、コモンモードノイズフィルタに関する。コモンモードノイズフィルタは、信号のディファレンシャルモード(差動モード)の成分を通過させる一方で、コモンモードのノイズ成分を減衰させる。コモンモードノイズフィルタは、電子機器の回路基板に実装される。
【0010】
下記の各実施形態においては、本開示のコモンモードノイズフィルタについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
また、本開示では、上、下、左、右、前、後の方向を説明に用いるが、これによりコモンモードノイズフィルタの使用方向を限定する趣旨ではない。
【0012】
(実施形態1)
(概要)
図1~
図3に、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1を示す。
図2は斜視図、
図3は平面図、
図1は、
図3のX1-X1面においてコモンモードノイズフィルタ1を切断したときの断面図である。
【0013】
図1、
図2に示すように、本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、金属電極部4と、Ni(ニッケル)めっき層6と、Sn(スズ)めっき層7と、を備える。金属電極部4は、素体2の上面U2、下面L2、及び、側面S2にわたって配置されている。Niめっき層6は、金属電極部4の上面U4、下面L4、及び、側面S4にわたって配置されている。Snめっき層7は、Niめっき層6の上面U6、下面L6、及び、側面S6にわたって配置されている。金属電極部4は、銀を含む電極である。金属電極部4は、内部に複数の空孔H1が形成された構造であるポーラス(多孔質)構造を有する。金属電極部4の空孔率は、15%以上、30%以下である。
【0014】
本実施形態によれば、金属電極部4に複数の空孔H1が形成されていることにより、金属電極部4の伸縮により生じる応力を緩和することができる。例えば、コモンモードノイズフィルタ1を回路基板等に半田付け実装するために、コモンモードノイズフィルタ1を高温に晒した場合に、素体2の熱膨張率と金属電極部4の熱膨張率との違いによって、素体2と金属電極部4との間に応力が発生し得る。この応力は、金属電極部4を素体2から引き剥がすように作用することがある。しかしながら、金属電極部4に複数の空孔H1が形成されていることにより、応力が緩和されるので、金属電極部4が素体2から引き剥がされ難い。言い換えると、素体2と金属電極部4(を含む外部電極3)との接続信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、空孔率が30%より大きい場合と比較して、本実施形態では金属電極部4の機械的強度を高められる。
【0016】
(詳細)
(1)全体構成
以下、コモンモードノイズフィルタ1の構成について、より詳細に説明する。
【0017】
図1、
図2に示すように、コモンモードノイズフィルタ1は、素体2と、複数(
図2では4つ)の外部電極3と、を備える。複数の外部電極3の各々は、金属電極部4と、Niめっき層6と、Snめっき層7と、を含む。
【0018】
(2)素体
素体2の形状は、直方体状である。素体2は、上下方向に積層した複数の絶縁体層を含む。複数の絶縁体層は、例えば、フェライトを材料として含む。また、素体2は、複数の絶縁体層の間に配置された複数のコイル導体を更に含む。複数のコイル導体は、複数の外部電極3と一対一で対応している。各コイル導体は、対応する外部電極3に電気的に接続されている。
【0019】
素体2は、上面U2と、下面L2と、複数(
図2では4つ)の側面S2と、を有する。4つの側面S2はそれぞれ、右面S21と、左面S22と、前面S23と、後面S24と、である。
【0020】
下面L2は、上面U2とは反対側の面である。側面S2は、上面U2及び下面L2と交差する面である。また、側面S2は、上面U2と下面L2とをつなぐ面である。
【0021】
左面S22は、右面S21とは反対側の面である。後面S24は、前面S23とは反対側の面である。右面S21及び左面S22は、前面S23及び後面S24と交差する面である。また、右面S21及び左面S22は、前面S23と後面S24とをつなぐ面である。
【0022】
(3)外部電極
4つの外部電極3は、素体2の表面に形成されている。4つの外部電極3の各々は、素体2の上面U2、下面L2、及び、側面S2にわたって配置されている。
【0023】
以下では、4つの外部電極3をそれぞれ、外部電極3A、3B、3C、3Dとも呼ぶ。
【0024】
図2に示すように、外部電極3A、3Cは、素体2の上面U2、下面L2、及び、右面S21にわたって配置されている。外部電極3B、3Dは、素体2の上面U2、下面L2、及び、左面S22にわたって配置されている。
【0025】
外部電極3A、3Bは、左右方向に並んでいる。外部電極3C、3Dは、左右方向に並んでいる。
【0026】
ただし、複数の外部電極3の配置は、
図2で示す配置に限定されない。少なくとも1つの外部電極3が、素体2の上面U2、下面L2、及び、前面S23にわたって配置されていてもよい。また、少なくとも1つの外部電極3が、素体2の上面U2、下面L2、及び、後面S24にわたって配置されていてもよい。
【0027】
複数の外部電極3は、構造が互いに一致している。なお、外部電極3A、3Cは、外部電極3B、3Dに対して左右対称である。以下では、複数の外部電極3のうち、外部電極3Aの構造について説明して、外部電極3B~3Dについての説明は省略する。
【0028】
図2に示すように、外部電極3Aは、上部分31と、下部分32と、側部33と、を有する。
【0029】
上部分31は、素体2の上面U2に配置されている。上から見て、上部分31の形状は、長方形状である。上部分31は、素体2の上面U2と右面S21との境界から、左へ突出している。
【0030】
下部分32は、素体2の下面L2に配置されている。下から見て、下部分32の形状は、長方形状である。下部分32は、素体2の下面L2と右面S21との境界から、左へ突出している。
【0031】
側部33は、素体2の右面S21に配置されている。側部33は、上部分31と下部分32とをつないでいる。右から見て、側部33の形状は、長方形状である。また、側部33の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。
【0032】
(4)金属電極部
図1に示すように、外部電極3Aの金属電極部4は、上部分31(
図2参照)の一部である第1部分41と、下部分32の一部である第2部分42と、側部33の一部である第3部分43と、を有する。
【0033】
第1部分41は、素体2の上面U2に配置されている。上から見て、第1部分41の形状は、長方形状である。第1部分41は、素体2の上面U2と右面S21との境界から、左へ突出している。第1部分41は、金属電極部4の上面U4を含む。
【0034】
第2部分42は、素体2の下面L2に配置されている。下から見て、第2部分42の形状は、長方形状である。第2部分42は、素体2の下面L2と右面S21との境界から、左へ突出している。第2部分42は、金属電極部4の下面L4を含む。
【0035】
第3部分43は、素体2の右面S21に配置されている。第3部分43は、第1部分41と第2部分42とをつないでいる。右から見て、第3部分43の形状は、長方形状である。また、第3部分43の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。第3部分43は、金属電極部4の側面S4を含む。
【0036】
また、金属電極部4は、内部に複数の空孔H1を含む。複数の空孔H1は、金属電極部4の全体に分散している。すなわち、複数の空孔H1は、金属電極部4の一部の領域に偏在することなく、全体に略均一に分布している。
【0037】
(5)Niめっき層
Niめっき層6は、金属電極部4を覆っている。
【0038】
図1に示すように、外部電極3AのNiめっき層6は、上部分31の一部である第7部分61と、下部分32の一部である第8部分62と、側部33の一部である第9部分63と、を有する。
【0039】
第7部分61は、金属電極部4の上面U4に配置されている。第7部分61は、金属電極部4の第1部分41を覆っている。上から見て、第7部分61の形状は、長方形状である。第7部分61は、金属電極部4の上面U4と側面S4との境界から、左へ突出している。第7部分61は、Niめっき層6の上面U6を含む。
【0040】
第8部分62は、金属電極部4の下面L4に配置されている。第8部分62は、金属電極部4の第2部分42を覆っている。下から見て、第8部分62の形状は、長方形状である。第8部分62は、金属電極部4の下面L4と側面S4との境界から、左へ突出している。第8部分62は、Niめっき層6の下面L6を含む。
【0041】
第9部分63は、金属電極部4の側面S4に配置されている。第9部分63は、金属電極部4の第3部分43を覆っている。第9部分63は、第7部分61と第8部分62とをつないでいる。右から見て、第9部分63の形状は、長方形状である。また、第9部分63の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。第9部分63は、Niめっき層6の側面S6を含む。
【0042】
(6)Snめっき層
Snめっき層7は、Niめっき層6を覆っている。
【0043】
図1に示すように、外部電極3AのSnめっき層7は、上部分31の一部である第10部分71と、下部分32の一部である第11部分72と、側部33の一部である第12部分73と、を有する。
【0044】
第10部分71は、Niめっき層6の上面U6に配置されている。第10部分71は、Niめっき層6の第7部分61を覆っている。上から見て、第10部分71の形状は、長方形状である。第10部分71は、Niめっき層6の上面U6と側面S6との境界から、左へ突出している。
【0045】
第11部分72は、Niめっき層6の下面L6に配置されている。第11部分72は、Niめっき層6の第8部分62を覆っている。下から見て、第11部分72の形状は、長方形状である。第11部分72は、Niめっき層6の下面L6と側面S6との境界から、左へ突出している。
【0046】
第12部分73は、Niめっき層6の側面S6に配置されている。第12部分73は、Niめっき層6の第9部分63を覆っている。第12部分73は、第10部分71と第11部分72とをつないでいる。右から見て、第12部分73の形状は、長方形状である。また、第12部分73の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。
【0047】
(7)空孔率
金属電極部4の空孔率をHR[%]、以下で説明する切断面における複数の空孔H1の総面積をA1[m2]、以下で説明する切断面における金属電極部4の全体の面積(複数の空孔H1の総面積を含む)をA2[m2]と置くと、本開示において、金属電極部4の空孔率は、次式で定義される。
【0048】
[数1]
HR=A1×100/A2
上記切断面は、金属電極部4の第1部分41と、第2部分42と、第3部分43と、を含む。さらに、上記切断面の法線は、第1部分41と第2部分42との対向方向(上下方向)と、第3部分43から第1部分41と第2部分42とが突出している方向(左方向)と、の両方と直交する。つまり、上記切断面の法線は、前後方向と平行である。さらに、上記切断面は、上記切断面の法線方向(前後方向)における金属電極部4の中心を通る。
【0049】
よって、外部電極3Aの金属電極部4、及び、外部電極3Bの金属電極部4に対して定義される上記切断面は、
図3のX1-X1面である。また、外部電極3Cの金属電極部4、及び、外部電極3Dの金属電極部4に対して定義される上記切断面は、
図3のX2-X2面である。
【0050】
金属電極部4の空孔率HRは、[数2]を満たす。
【0051】
[数2]
15≦HR≦30
また、[数2]を満たす範囲で、空孔率は、17.5%以上が好ましい。また、[数2]を満たす範囲で、空孔率は、20%以上が更に好ましい。
【0052】
(8)金属電極部の材料
上述の通り、金属電極部4は、銀を含む電極である。また、金属電極部4は、ガラスを更に含む。
【0053】
金属電極部4を形成する際に、金属電極部4の材料としてのガラスの量を調整することで、金属電極部4の空孔率をある程度制御できる。金属電極部4におけるガラスの重量パーセントは、2wt(重量パーセント)以上、10wt(重量パーセント)以下であることが好ましい。
【0054】
(9)製造工程
金属電極部4は、銀と、ガラスフリット(マイクロガラス)と、を材料として含む。ガラスフリットは、ガラス転移温度が比較的低い材料である。ガラスフリットのガラス転移温度は、例えば、600℃以下である。
【0055】
金属電極部4は、溶剤と、銀と、ガラスフリットと、を含む導電性ペーストが焼成されることで形成される。より詳細には、まず、素体2の表面に上記導電性ペーストが塗布される。その後、導電性ペーストが素体2と共に焼成される。これにより、素体2の表面に金属電極部4が形成される。
【0056】
導電性ペーストが焼成される前の時点では、導電性ペースト中にガラスフリットが分散している。導電性ペーストが焼成されることで、まずガラス転移が始まり、その後、銀の粒成長が始まる。焼成を終えることで、金属電極部4の形成が完了する。
【0057】
ガラス転移により、ガラス(ガラスフリット)は、拡散して素体2に浸透する。つまり、ガラスが導電性ペーストから素体2へと移動する。すると、ガラスが存在していた場所に空孔H1が生じる。
【0058】
焼成温度が比較的低いと、銀の粒成長があまり進行しないため、金属電極部4の内部には比較的多くの空孔H1が残留する。一方で、焼成温度が比較的高いと、銀の粒成長が進行することによって、一部の空孔H1が失われるので、金属電極部4の内部には比較的少数の空孔H1が残留する。
【0059】
焼成温度は、ガラス転移温度よりも高い。ガラス転移温度が比較的低いガラスフリットを導電性ペーストに含ませることで、焼成温度を比較的低い温度とすることができる。焼成温度は、例えば、665℃以上、765℃以下が好ましい。また、焼成温度は、680℃以上、740℃以下が更に好ましい。
【0060】
金属電極部4の焼成温度と、金属電極部4の空孔率と、金属電極部4の(機械的)強度と、の関係を実験により求めた。その結果を、[表1]に示す。
【0061】
【0062】
このように、焼成温度を比較的低い温度とすることにより、金属電極部4の強度の低下を抑制しつつ、空孔率を大きくすることができる。空孔率を大きくすることで、金属電極部4に生じる応力が緩和されるので、金属電極部4が素体2から引き剥がされ難くなる。
【0063】
コモンモードノイズフィルタ1の製造工程は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップと、を含む。第1ステップでは、素体2に導電性ペーストを塗布する(
図4のST1)。より詳細には、素体2のうち、複数の外部電極3を形成する複数の箇所にそれぞれ導電性ペーストを塗布する。第2ステップでは、導電性ペーストを素体2と共に焼成する(
図4のST2)。これにより、複数の金属電極部4が形成される。第3ステップでは、複数の金属電極部4の各々の表面にNiめっき層6を形成する(
図4のST3)。第4ステップでは、Niめっき層6の表面にSnめっき層7を形成する(
図4のST4)。
【0064】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係るコモンモードノイズフィルタ1Fについて、
図5を用いて説明する。実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1Fは、導電性樹脂層5を更に備える点で、実施形態1のコモンモードノイズフィルタ1と相違する。その他の構成は、実施形態1と実施形態2とで共通である。
【0066】
導電性樹脂層5は、外部電極3の構成である。すなわち、複数の外部電極3の各々は、金属電極部4と、導電性樹脂層5と、Niめっき層6と、Snめっき層7と、を含む。
【0067】
コモンモードノイズフィルタ1Fの製造工程では、素体2の表面に金属電極部4が形成された後に、金属電極部4を覆うように導電性樹脂層5が形成される。その後、導電性樹脂層5を覆うようにNiめっき層6が形成され、Niめっき層6を覆うようにSnめっき層7が形成される。
【0068】
導電性樹脂層5は、電気絶縁性の樹脂材料と、金属粉末等の導電性粒子と、を材料として含む。導電性樹脂層5は、樹脂材料及び導電性粒子を含む導電性樹脂ペーストを金属電極部4に塗布し、乾燥させることにより形成される。
【0069】
複数の外部電極3は、構造が互いに一致している。なお、外部電極3A、3Cは、外部電極3B、3Dに対して左右対称である。以下では、複数の外部電極3のうち、外部電極3Aの構造について説明して、外部電極3B~3Dについての説明は省略する。
【0070】
導電性樹脂層5は、外部電極3Aの上部分31(
図2参照)の一部である第4部分51と、下部分32の一部である第5部分52と、側部33の一部である第6部分53と、を有する。
【0071】
第4部分51は、金属電極部4の上面U4に配置されている。第4部分51は、金属電極部4の第1部分41を覆っている。上から見て、第4部分51の形状は、長方形状である。第4部分51は、金属電極部4の上面U4と側面S4との境界から、左へ突出している。
【0072】
第5部分52は、金属電極部4の下面L4に配置されている。第5部分52は、金属電極部4の第2部分42を覆っている。下から見て、第5部分52の形状は、長方形状である。第5部分52は、金属電極部4の下面L4と側面S4との境界から、左へ突出している。
【0073】
第6部分53は、金属電極部4の側面S4に配置されている。第6部分53は、金属電極部4の第3部分43を覆っている。第6部分53は、第4部分51と第5部分52とをつないでいる。右から見て、第6部分53の形状は、長方形状である。また、第6部分53の形状は、左右方向に厚さを有する板状である。
【0074】
このように、導電性樹脂層5は、金属電極部4とNiめっき層6との間において、金属電極部4の上面U4、下面L4、及び、側面S4にわたって配置されている。
【0075】
また、実施形態1と同様に、金属電極部4は、素体2の上面U2に配置された第1部分41と、素体2の下面L2に配置された第2部分42と、素体2の側面S2に配置された第3部分43と、を有する。
【0076】
第1部分41は、上から見て第3部分43側とは反対側の端である第1先端410を含む。第1先端410は、より詳細には、第1部分41の左端である。
【0077】
第2部分42は、下から見て第3部分43側とは反対側の端である第2先端420を含む。第2先端420は、より詳細には、第2部分42の左端である。
【0078】
導電性樹脂層5は、金属電極部4の第1先端410と、金属電極部4の第2先端420と、を覆っている。より詳細には、導電性樹脂層5は、金属電極部4を(金属電極部4の全体を)覆っている。
【0079】
導電性樹脂層5は、金属を主な組成とする金属電極部4と比較して、柔軟性が高い。そのため、外部電極3に外力が与えられた場合に、素体2に加わる衝撃を導電性樹脂層5で緩和することができる。
【0080】
(実施形態3)
以下、実施形態3に係るコモンモードノイズフィルタ1Gについて、
図6を用いて説明する。実施形態2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態のコモンモードノイズフィルタ1Gは、導電性樹脂層5が金属電極部4の一部分のみを覆っている点で、実施形態2のコモンモードノイズフィルタ1と相違する。その他の構成は、実施形態2と実施形態3とで共通である。
【0082】
実施形態2と同様に、本実施形態の導電性樹脂層5は、金属電極部4とNiめっき層6との間において、金属電極部4の上面U4、下面L4、及び、側面S4にわたって配置されている。金属電極部4は、素体2の上面U2に配置された第1部分41と、素体2の下面L2に配置された第2部分42と、素体2の側面S2に配置された第3部分43と、を有する。第1部分41は、上から見て第3部分43側とは反対側の端である第1先端410を含む。第2部分42は、下から見て第3部分43側とは反対側の端である第2先端420を含む。
【0083】
導電性樹脂層5は、第4部分51と、第5部分52と、第6部分53と、を有する。
【0084】
第4部分51は、第1部分41に重なって配置されている。より詳細には、第4部分51は、第1部分41の一部(第1先端410とその付近を除く部分)に重なって配置されている。
【0085】
第5部分52は、第2部分42に重なって配置されている。より詳細には、第5部分52は、第2部分42の一部(第2先端420とその付近を除く部分)に重なって配置されている。
【0086】
第6部分53は、第3部分43に重なって配置されている。より詳細には、第6部分53は、第3部分43の全体に重なって配置されている。
【0087】
第4部分51は、上から見て第6部分53側とは反対側の端である第4先端510を含む。第4先端510は、より詳細には、第4部分51の左端である。
【0088】
第5部分52は、下から見て第6部分53側とは反対側の端である第5先端520を含む。第5先端520は、より詳細には、第5部分52の左端である。
【0089】
上から見て、第4先端510は、第1先端410と第6部分53との間に位置する。つまり、第4部分51は、第6部分53から、第1先端410の右手前まで延びている。
【0090】
下から見て、第5先端520は、第2先端420と第6部分53との間に位置する。つまり、第5部分52は、第6部分53から、第2先端420の右手前まで延びている。
【0091】
また、導電性樹脂層5は、金属電極部4の上面U4の一部を覆わないように配置されている。より詳細には、導電性樹脂層5の第4先端510より左側では、金属電極部4の上面U4が導電性樹脂層5に覆われていない。第4先端510より左側では、金属電極部4の上面U4はNiめっき層6により覆われている。
【0092】
また、導電性樹脂層5は、金属電極部4の下面L4の一部を覆わないように配置されている。より詳細には、導電性樹脂層5の第5先端520より左側では、金属電極部4の下面L4が導電性樹脂層5に覆われていない。第5先端520より左側では、金属電極部4の下面L4はNiめっき層6により覆われている。
【0093】
このように、本実施形態では、金属電極部4の第1先端410及び第2先端420が導電性樹脂層5に覆われていない。その結果、導電性樹脂層5は、素体2の上面U2及び下面L2に接触しないように配置されている。よって、コモンモードノイズフィルタ1Gが高温に晒された場合に、素体2の熱膨張率と導電性樹脂層5の熱膨張率との違いによって素体2と導電性樹脂層5との間に発生する応力が、緩和される。または、このような応力が発生しなくなる。よって、外部電極3が素体2から引き剥がされ難い。
【0094】
(その他の変形例)
以下、実施形態1~3のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0095】
金属電極部4の材料としての導電性ペーストは、ナノメータサイズのマイクロビーズ等の粒子を含んでいてもよい。マイクロビーズが設けられた場所に空孔H1が生じるので、金属電極部4の空孔率を更に大きくすることができる。
【0096】
外部電極3の個数は、4個に限定されない。外部電極3の個数は、例えば、6個、8個、10個、12個、……、であってもよい。
【0097】
外部電極3は、金属電極部4と、導電性樹脂層5と、Niめっき層6と、Snめっき層7と、に加えて、更に別の層を含んでいてもよい。例えば、金属電極部4と導電性樹脂層5との間、導電性樹脂層5とNiめっき層6との間、又は、Niめっき層6とSnめっき層7との間に、別の層が設けられてもよい。
【0098】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0099】
第1の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1、1F、1G)は、素体(2)と、金属電極部(4)と、Niめっき層(6)と、Snめっき層(7)と、を備える。金属電極部(4)は、素体(2)の上面(U2)、下面(L2)、及び、側面(S2)にわたって配置されている。Niめっき層(6)は、金属電極部(4)の上面(U4)、下面(L4)、及び、側面(S4)にわたって配置されている。Snめっき層(7)は、Niめっき層(6)の上面(U6)、下面(L6)、及び、側面(S6)にわたって配置されている。金属電極部(4)は、銀を含む電極である。金属電極部(4)は、内部に複数の空孔(H1)が形成された構造であるポーラス構造を有する。金属電極部(4)の空孔率は、15%以上、30%以下である。
【0100】
上記の構成によれば、素体(2)と金属電極部(4)(を含む外部電極(3))との接続信頼性を向上させることができる。
【0101】
また、第2の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1、1F、1G)では、第1の態様において、金属電極部(4)は、ガラスを更に含む。金属電極部(4)におけるガラスの重量パーセントは、2重量パーセント以上、10重量パーセント以下である。
【0102】
上記の構成によれば、金属電極部(4)の空孔率を15%以上、30%以下の範囲に制御しやすい。
【0103】
また、第3の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1F)は、第1又は2の態様において、導電性樹脂層(5)を更に備える。導電性樹脂層(5)は、金属電極部(4)とNiめっき層(6)との間において、金属電極部(4)の上面(U4)、下面(L4)、及び、側面(S4)にわたって配置されている。金属電極部(4)は、素体(2)の上面(U2)に配置された第1部分(41)と、素体(2)の下面(L2)に配置された第2部分(42)と、素体(2)の側面(S2)に配置された第3部分(43)と、を有する。第1部分(41)は、上から見て第3部分(43)側とは反対側の端である第1先端(410)を含む。第2部分(42)は、下から見て第3部分(43)側とは反対側の端である第2先端(420)を含む。導電性樹脂層(5)は、金属電極部(4)の第1先端(410)と、金属電極部(4)の第2先端(420)と、を覆っている。
【0104】
上記の構成によれば、素体(2)に加わる衝撃を導電性樹脂層(5)で緩和することができる。
【0105】
また、第4の態様に係るコモンモードノイズフィルタ(1G)は、第1又は2の態様において、導電性樹脂層(5)を更に備える。導電性樹脂層(5)は、金属電極部(4)とNiめっき層(6)との間において、金属電極部(4)の上面(U4)、下面(L4)、及び、側面(S4)にわたって配置されている。金属電極部(4)は、素体(2)の上面(U2)に配置された第1部分(41)と、素体(2)の下面(L2)に配置された第2部分(42)と、素体(2)の側面(S2)に配置された第3部分(43)と、を有する。第1部分(41)は、上から見て第3部分(43)側とは反対側の端である第1先端(410)を含む。第2部分(42)は、下から見て第3部分(43)側とは反対側の端である第2先端(420)を含む。導電性樹脂層(5)は、第1部分(41)に重なって配置された第4部分(51)と、第2部分(42)に重なって配置された第5部分(52)と、第3部分(43)に重なって配置された第6部分(53)と、を有する。第4部分(51)は、上から見て第6部分(53)側とは反対側の端である第4先端(510)を含む。第5部分(52)は、下から見て第6部分(53)側とは反対側の端である第5先端(520)を含む。上から見て、第4先端(510)は、第1先端(410)と第6部分(53)との間に位置する。下から見て、第5先端(520)は、第2先端(420)と第6部分(53)との間に位置する。
【0106】
上記の構成によれば、導電性樹脂層(5)(を含む外部電極(3))が素体(2)から引き剥がされ難くなる。
【0107】
第1の態様以外の構成については、コモンモードノイズフィルタ(1、1F、1G)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0108】
1、1F、1G コモンモードノイズフィルタ
2 素体
4 金属電極部
5 導電性樹脂層
6 Niめっき層
7 Snめっき層
41 第1部分
42 第2部分
43 第3部分
51 第4部分
52 第5部分
53 第6部分
410 第1先端
420 第2先端
510 第4先端
520 第5先端
H1 空孔
L2、L4、L6 下面
S2、S4、S6 側面
U2、U4、U6 上面