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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134330
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】地下構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
E02D29/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044572
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄介
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147CA02
2D147DB03
2D147GA03
2D147GA05
(57)【要約】
【課題】複数の地下構造物の継ぎ目部からの地下構造物の背面の土砂の流入抑制の確実化を図ることが可能となる地下構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】地下構造物の施工方法は、掘割部を形成する掘削工程と、継ぎ目部を介して互いに連なるように複数の地下構造物を掘割部に構築する躯体構築工程と、外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体を、構築された複数の地下構造物の継ぎ目部を覆うように掘割部に設置する設置工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の施工方法であって、
掘割部を形成する掘削工程と、
継ぎ目部を介して互いに連なるように複数の前記地下構造物を前記掘割部に構築する躯体構築工程と、
外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体を、構築された複数の前記地下構造物の継ぎ目部を覆うように前記掘割部に設置する設置工程と、を備える、地下構造物の施工方法。
【請求項2】
前記地下構造物は、河川に沿って延在する堤防に並設され、
前記掘削工程では、前記堤防に関して前記河川とは反対側にて前記堤防に沿って前記掘割部を形成し、
前記設置工程では、透水性を有する前記中詰構造体である透水中詰構造体を前記継ぎ目部を覆うように前記掘割部に設置する、請求項1に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項3】
前記設置工程では、前記中詰構造体の外形を構成する金属籠と、前記金属籠の内部に収容された砕石と、を有する蛇篭を前記中詰構造体として設置する、請求項1又は2に記載の地下構造物の施工方法。
【請求項4】
前記躯体構築工程では、複数の前記地下構造物として、U型擁壁とボックスカルバートとを互いに連なるように構築し、前記U型擁壁の下部には地盤改良を行わず、前記ボックスカルバートの下部には地盤改良を行い、
前記設置工程では、前記U型擁壁と前記ボックスカルバートとの前記継ぎ目部を覆うように前記中詰構造体を前記掘割部に設置する、請求項1又は2に記載の地下構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに隣接するボックスカルバートの境界となるべき箇所にコンクリート製の基礎ブロックを設置し、この基礎ブロックに弾性材を介してボックスカルバートを配置するコンクリート製品の施工方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-108271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
互いに連なるように構築された複数の地下構造物においては、例えば地震の際に複数の地下構造物の継ぎ目部(構造目地)が開く目開きが生じ、地下構造物の背面の土砂が継ぎ目部から流入することがある。そのため、地下構造物の施工において、例えば、可撓継手、シート、又は鉄板等の目開き対策部材を用いて継ぎ目部を覆うことが考えられる。しかしながら、従来の目開き対策部材では、大きい目開きに対しては目開き対策部材が破損する可能性がある。
【0005】
本発明は、複数の地下構造物の継ぎ目部からの地下構造物の背面の土砂の流入抑制の確実化を図ることが可能となる地下構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、地下構造物の施工方法であって、掘割部を形成する掘削工程と、継ぎ目部を介して互いに連なるように複数の地下構造物を掘割部に構築する躯体構築工程と、外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体を、構築された複数の地下構造物の継ぎ目部を覆うように掘割部に設置する設置工程と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る地下構造物の施工方法では、掘削工程により、掘割部が形成される。躯体構築工程により、継ぎ目部を介して互いに連なるように複数の地下構造物が掘割部に構築される。設置工程により、外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体が、構築された複数の地下構造物の継ぎ目部を覆うように掘割部に設置される。これにより、例えば継ぎ目部が開く目開きが生じたとしても、中詰構造体が地下構造物の背面の土砂の流入を抑制する。したがって、本発明の一態様に係る地下構造物の施工方法によれば、複数の地下構造物の継ぎ目部からの地下構造物の背面の土砂の流入抑制の確実化を図ることが可能となる。
【0008】
一実施形態において、地下構造物は、河川に沿って延在する堤防に並設され、掘削工程では、堤防に関して河川とは反対側にて堤防に沿って掘割部を形成し、設置工程では、透水性を有する中詰構造体である透水中詰構造体を継ぎ目部を覆うように掘割部に設置してもよい。ここで、従来、目開き対策部材とは別の手法として、複数の地下構造物の躯体背面の埋戻し土をセメント改良して継ぎ目部を覆うことが考えられる。しかしながら、河川に沿って延在する堤防に地下構造物が並設される場合には、河川の管理上、河川からの浸透水を堤防の地盤内に通す要請があることを考慮する必要がある。この点、中詰構造体として透水性を有する透水中詰構造体を用いることで、例えば継ぎ目部が開く目開きが生じたとしても、透水中詰構造体が、地下構造物の背面の土砂の流入を抑制する。また、堤防の地盤内を通る河川からの浸透水は、透水中詰構造体を通過可能である。したがって、河川に沿って延在する堤防に並設される複数の地下構造物において、堤防の地盤内を通る河川からの浸透水の流れを許容しつつ、複数の地下構造物の継ぎ目部から地下構造物の背面の土砂が流入することを抑制可能となる。
【0009】
一実施形態において、設置工程では、中詰構造体の外形を構成する金属籠と、金属籠の内部に収容された砕石と、を有する蛇篭を中詰構造体として設置してもよい。この場合、従来の目開き対策部材を大きい目開きに対応させようとすると例えば特注品になる等部材コストの増大が問題となるところ、金属籠と砕石とを用いて中詰構造体を構成するため、安価且つ容易に構成することができる。
【0010】
一実施形態において、躯体構築工程では、複数の地下構造物として、U型擁壁とボックスカルバートとを互いに連なるように構築し、U型擁壁の下部には地盤改良を行わず、ボックスカルバートの下部には地盤改良を行い、設置工程では、U型擁壁とボックスカルバートとの継ぎ目部を覆うように中詰構造体を掘割部に設置してもよい。この場合、躯体構築工程により、U型擁壁の下部では地盤改良が行われておらず、ボックスカルバートの下部では地盤改良が行われている。そのため、U型擁壁の下部とボックスカルバートの下部とで地震の際の揺れ方が異なりやすく、目開きが生じやすい傾向となる。ここで、設置工程により、U型擁壁とボックスカルバートとの継ぎ目部を覆うように中詰構造体が掘割部に設置される。これにより、目開きが生じやすい傾向となる継ぎ目部において、地下構造物の背面の土砂が流入することを有効に抑制可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の地下構造物の施工方法によれば、複数の地下構造物の継ぎ目部からの地下構造物の背面の土砂の流入抑制の確実化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る地下構造物の施工方法の対象となる地下構造物を例示する横断面図である。
図2】(a)は、図1の地下構造物の継ぎ目部を例示する側断面図である。(b)は、(a)の継ぎ目部を覆う中詰構造体の設置例を示す概略平面図である。
図3】実施形態に係る地下構造物の施工方法の流れを示すフローチャートである。
図4】(a)は、土留め壁打設工程を例示する断面図である。(b)は、掘削工程を例示する断面図である。
図5】(a)は、U型擁壁についての躯体構築工程を例示する断面図である。(b)は、U型擁壁についての設置工程を例示する断面図である。(c)は、U型擁壁についての土留め壁撤去工程を例示する断面図である。
図6】(a)は、ボックスカルバートについての躯体構築工程を例示する断面図である。(b)は、ボックスカルバートについての設置工程を例示する断面図である。(c)は、ボックスカルバートについての土留め壁撤去工程を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法、比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
図1は、実施形態に係る地下構造物の施工方法の対象となる地下構造物を例示する横断面図である。図1には、一例として、躯体1が示されている。本実施形態において、躯体1は、高速道路を構成するコンクリート構造物であり、少なくとも一部が地盤2に埋設されている。図2(a)は、図1の地下構造物の継ぎ目部を例示する側断面図である。図1及び図2(a)に示されるように、躯体1は、継ぎ目部3を介して互いに連なるように構築された複数の地下構造物10を有している。
【0015】
本実施形態において、地下構造物の施工方法の対象となる複数の地下構造物10は、堤防4に並設されている。堤防4は、河川5に沿って延在するように設けられている。複数の地下構造物10は、堤防4に沿って形成された掘割部6に構築されている。掘割部6は、堤防4に関して河川5とは反対側に形成されている。後述するように、複数の地下構造物10は、形成された掘割部6の内部で構築され、掘割部6を埋め戻すことで少なくとも一部が地盤2に埋設される。
【0016】
複数の地下構造物10として、下側の一部が地盤2に埋設されたU型擁壁11と、全体が地盤2に埋設されたボックスカルバート12と、が継ぎ目部3を介して互いに連なるように構築されている。
【0017】
U型擁壁11は、底版11aと、底版11aの両端部からそれぞれ上方に延びている側壁11bと、を有している。U型擁壁11では、上側が開口しており、底版11a上に舗装11cが施工される。ボックスカルバート12は、底版12aと、底版12aの両端部からそれぞれ上方に延びている側壁12bと、天井を構成する頂版12cと、頂版12cの端部に立設された妻壁12dを有している。ボックスカルバート12は、上側が閉じており、妻壁12dを除く頂版12c上が土12eで覆われる。ボックスカルバート12は、内部空間12fに舗装が施工される。
【0018】
複数の地下構造物10のうち、ボックスカルバート12の下方では、砕石置換13と地盤改良14とが行われている。ボックスカルバート12の頂版12c上に土12eが被せられることから、ボックスカルバート12の底版12aの下方に加わる荷重が大きくなる。ボックスカルバート12の下方では、圧密沈下が生じ得る。ここでの圧密沈下とは、土12e及びボックスカルバート12等の荷重によって、ボックスカルバート12の下方の地盤2を構成する土が押し潰されて体積が圧密し、長期間に亘ってじわじわと沈下していく現象を意味する。そのため、圧密沈下を抑制するために、ボックスカルバート12の下方(ここでは砕石置換13の下方)の地盤2に対して、例えば機械攪拌工法による地盤改良14が行われる。
【0019】
一方、複数の地下構造物10のうち、U型擁壁11の下方では、砕石置換15が行われている。U型擁壁11の下方では、砕石置換15の下方の地盤2に対して、例えば高圧噴射攪拌工法による地盤改良16が行われてもよい。この地盤改良16は、仮設の土留め壁17の安定性を向上させるためのものであり、圧密沈下を抑制するための地盤改良14とは異なる。U型擁壁11の上方には土が被せられず、掘削により元々存在していた土が除かれている。施工前と比べて土被り厚が小さくなるため、ボックスカルバート12の場合のような圧密沈下は生じづらい。そのため、U型擁壁11の下方の地盤2では、圧密沈下を抑制するための地盤改良14を行わなくてもよい。
【0020】
しかしながら、ボックスカルバート12の下方の地盤2とU型擁壁11の下方の地盤2とで地盤改良の態様が異なることで、ボックスカルバート12とU型擁壁11との継ぎ目部3では、地震等に対する揺れの相対的な違いが生じやすくなる。揺れの相対的な違いが生じると、ボックスカルバート12とU型擁壁11との継ぎ目部3において目開き量が大きくなりやすい。目開き量は、継ぎ目部3が開く目開きの大きさである。
【0021】
目開き量が大きくなった継ぎ目部3から地下構造物10の背面の土砂が流入することを抑制するため、例えば、可撓継手、シート、又は鉄板等の目開き対策部材を用いて継ぎ目部3を覆うことが考えられる。しかしながら、従来の目開き対策部材では、大きい目開きに対しては目開き対策部材が破損する可能性がある。従来の目開き対策部材を大きい目開きに対応させようとすると、例えば特注品になる等、部材コストの増大が問題となる。また、従来、目開き対策部材とは別の手法として、複数の地下構造物10の躯体1の背面の埋戻し土をセメント改良して継ぎ目部3を覆うことが考えられる。しかしながら、河川5に沿って延在する堤防4に地下構造物10が並設されているため、河川5の管理上、河川5からの浸透水5a(図1の破線)を堤防4の地盤2内に通す要請がある。セメント改良をする場合、セメント改良をした部分が難透水性となるため、河川5からの浸透水5aの流れを阻害してしまう。
【0022】
そこで、外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体が、構築された複数の地下構造物10の継ぎ目部3を覆うように掘割部6に設置される。具体的な一例として、中詰構造体としては、透水中詰構造体20を用いることができる。透水中詰構造体20は、中詰構造体の外形を構成する金属籠と、金属籠の内部に収容された砕石と、を有する蛇篭である。また、蛇篭の金属籠の表面には、例えば不織布等の透水性シートが貼り付けられてもよい。金属籠の表面に透水性シートを貼り付けることで、目開きした継ぎ目部3への地盤2の細粒分の吸い込み(流入)を抑制でき、地盤2の沈下を抑制することができる。
【0023】
中詰構造体は、蛇篭に限定されない。中詰構造体は、中詰構造体の外形を構成する外形構成部と、外形構成部の内部に収容された中詰材と、を有していればよい。中詰構造体は、水が通過できるように構成された構造体であることが好ましい。外形構成部は、金属籠以外の籠体、枠体又は貫通孔を有する箱体等であってもよい。透水中詰構造体20では、複数の中詰材が外形構成部で締め付けるように覆われていることが好ましく、透水中詰構造体20の形状保持剛性を期待することができる。中詰材は、砕石以外のブロック又はコンクリート端材等であってもよい。透水中詰構造体20では、例えば中詰材が一定の重量を有していることが好ましく、透水中詰構造体20が崩れづらく位置ズレしづらい自立性を期待することができる。透水中詰構造体20では、透水性を低下させないように、複数の中詰材が互いに接着又は固着されていないことが好ましい。
【0024】
図2(b)は、図2(a)の継ぎ目部を覆う中詰構造体の設置例を示す概略平面図である。図2(b)には、掘削された掘割部6にボックスカルバート12及びU型擁壁11が構築された後であって、掘割部6の埋め戻し前の状態が平面視で示されている。図2(b)に示されるように、ボックスカルバート12とU型擁壁11との継ぎ目部3を覆うように、透水中詰構造体20が掘割部6に設置される。透水中詰構造体20は、掘割部6において、継ぎ目部3と土留め壁17との間に設置される。
【0025】
透水中詰構造体20は、例えば直方体状であり、平面視で長方形状となっている。透水中詰構造体20の平面視での地下構造物10に沿う長手寸法は、想定される目開き量と、目開きが生じた場合の地下構造物10への掛かり代(ラップ量)とに基づいて、算出されてもよい。例えば、想定される目開き量が600mmであり、目開きが生じた場合の一方の地下構造物10への掛かり代が1000mmである場合、透水中詰構造体20の長手寸法は、下記式(1)のように算出することができる。
600mm+1000mm×2=2600mm ・・・(1)
【0026】
なお、目開きが生じた場合の一方の地下構造物10への掛かり代は、1000mmに限定されず、例えば500mmでもよい。目開きが生じた場合に透水中詰構造体20の掛かりが地下構造物10から外れなければよい。
【0027】
透水中詰構造体20の平面視での地下構造物10と交差する方向に沿う短手寸法は、想定される目開き量が生じた場合に地下構造物10の地盤2からの土圧によって加わる曲げ剛性を考慮して算出されてもよい。例えば、想定される目開き量が600mmである場合、下記式(2)を用いて算出されてもよい。ただし、曲げ照査要否判定値は、上述の曲げ剛性の妥当性を検証するための曲げ照査の要否を判定するための数値である。曲げ照査要否判定値は、例えば2.5程度であってもよい。下記式(2)の不等式が成立する場合、曲げ照査を省略することができる。この場合、透水中詰構造体20の短手寸法は、例えば1000mm程度とされてもよい。
600mm/短手寸法<曲げ照査要否判定値 ・・・(2)
【0028】
次に、地下構造物の施工方法の手順について説明する。図3は、実施形態に係る地下構造物の施工方法の流れを示すフローチャートである。本実施形態に係る地下構造物の施工方法では、まず、土留め壁打設工程が行われる(ステップS01)。図4(a)は、土留め壁打設工程を例示する断面図である。図4(a)に示されるように、土留め壁打設工程では、まず、地盤2に一対の土留め壁17が打設される。土留め壁17は、例えば、複数の鋼矢板によって構成されてもよい。鋼矢板は、鋼矢板の長手方向に直交する平面で切断した断面において台形状を呈する鋼板である。鋼矢板は、複数の鋼板が連結されてもよい。
【0029】
続いて、掘削工程が行われる(ステップS02)。図4(b)は、掘削工程を例示する断面図である。掘削工程は、堤防4に関して河川5とは反対側に堤防4に沿って掘割部6を形成する工程である。図4(b)に示されるように、地盤2に土留め壁17が打設された後には、平面視における一対の土留め壁17の内側に位置する地盤2を掘削する掘削工程が行われる。地盤2の掘削によって地表2aよりも下方に躯体1を構築するための空間である掘割部6が形成される。
【0030】
続いて、躯体構築工程が行われる(ステップS03)。図5(a)は、U型擁壁についての躯体構築工程を例示する断面図である。図6(a)は、ボックスカルバートについての躯体構築工程を例示する断面図である。躯体構築工程は、継ぎ目部3を介して互いに連なるように複数の地下構造物10を掘割部6に構築する工程である。図5(a)及び図6(a)に示されるように、躯体構築工程では、掘割部6が形成された後には、型枠の設置を行ってコンクリートの打設等を行うことによってU型擁壁11及びボックスカルバート12を含む躯体1を掘割部6に構築する。
【0031】
続いて、設置工程が行われる(ステップS04)。図5(b)は、U型擁壁についての設置工程を例示する断面図である。図6(b)は、ボックスカルバートについての設置工程を例示する断面図である。設置工程は、構築された複数の地下構造物10の継ぎ目部3を覆うように透水中詰構造体20を掘割部6に設置する工程である。設置工程では、躯体1が掘割部6に構築された後には、図5(b)に示されるように、継ぎ目部3の箇所の躯体1の背面と土留め壁17との間に、透水中詰構造体20を設置する。なお、継ぎ目部3がボックスカルバート12同士の目地部分である場合には、図6(b)に示されるように、継ぎ目部3の箇所のボックスカルバート12の頂版12cの上に、透水中詰構造体20を設置してもよい。
【0032】
続いて、土留め壁撤去工程が行われる(ステップS05)。図5(c)は、U型擁壁についての土留め壁撤去工程を例示する断面図である。図6(c)は、ボックスカルバートについての土留め壁撤去工程を例示する断面図である。土留め壁撤去工程は、掘割部6の埋め戻しと、土留め壁17の撤去とを行う工程である。図5(c)及び図6(c)に示されるように、躯体1の背面と土留め壁17との間の空間の埋め戻しを、地表2aに達するまで行う。このとき、躯体1の背面と土留め壁17との間の空間に下方から埋め戻し土を充填させながら、支保工等の撤去を行ってもよい。
【0033】
以上説明したような地下構造物の施工方法によれば、掘削工程により、掘割部6が形成される。躯体構築工程により、継ぎ目部3を介して互いに連なるように複数の地下構造物10が掘割部6に構築される。設置工程により、外形を構成する金属籠(外形構成部)の内部に砕石(中詰材)が収容された透水中詰構造体20(中詰構造体)が、構築された複数の地下構造物10の継ぎ目部3を覆うように掘割部6に設置される。これにより、例えば継ぎ目部3が開く目開きが生じたとしても、透水中詰構造体20が地下構造物10の背面の土砂の流入を抑制する。したがって、地下構造物の施工方法によれば、複数の地下構造物10の継ぎ目部3からの地下構造物10の背面の土砂の流入抑制の確実化を図ることが可能となる。
【0034】
地下構造物10は、河川5に沿って延在する堤防4に並設され、掘削工程では、堤防4に関して河川5とは反対側にて堤防4に沿って掘割部6を形成し、設置工程では、透水性を有する中詰構造体である透水中詰構造体20を継ぎ目部3を覆うように掘割部6に設置する。ここで、従来、目開き対策部材とは別の手法として、複数の地下構造物の躯体背面の埋戻し土をセメント改良して継ぎ目部を覆うことが考えられる。しかしながら、河川に沿って延在する堤防に地下構造物が並設される場合には、河川の管理上、河川からの浸透水を堤防の地盤内に通す要請があることを考慮する必要がある。この点、中詰構造体として透水性を有する透水中詰構造体20を用いることで、例えば継ぎ目部3が開く目開きが生じたとしても、透水中詰構造体20が、地下構造物10の背面の土砂の流入を抑制する。また、堤防4の地盤2内を通る河川5からの浸透水は、透水中詰構造体20を通過可能である。したがって、河川5に沿って延在する堤防4に並設される複数の地下構造物10において、堤防4の地盤2内を通る河川5からの浸透水5aの流れを許容しつつ、複数の地下構造物10の継ぎ目部3から地下構造物10の背面の土砂が流入することを抑制可能となる。
【0035】
設置工程では、透水中詰構造体20の外形を構成する金属籠と、金属籠の内部に収容された砕石と、を有する蛇篭を中詰構造体として設置する。これにより、従来の目開き対策部材を大きい目開きに対応させようとすると例えば特注品になる等部材コストの増大が問題となるところ、金属籠と砕石とを用いて中詰構造体を構成するため、安価且つ容易に構成することができる。
【0036】
躯体構築工程では、複数の地下構造物10として、U型擁壁11とボックスカルバート12とを互いに連なるように構築し、U型擁壁11の下部には地盤改良を行わず、ボックスカルバート12の下部には地盤改良14を行い、設置工程では、U型擁壁11とボックスカルバート12との継ぎ目部3を覆うように透水中詰構造体20を掘割部6に設置する。これにより、U型擁壁11の下部とボックスカルバート12の下部とで地震の際の揺れ方が異なり目開きが生じやすい傾向となったとしても、設置工程により、U型擁壁11とボックスカルバート12との継ぎ目部3を覆うように透水中詰構造体20が掘割部に設置されるため、目開きが生じやすい傾向となる継ぎ目部3において、地下構造物10の背面の土砂が流入することを有効に抑制可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0038】
上記実施形態では、図2に示されるように、継ぎ目部3がU型擁壁11とボックスカルバート12との目地部分である場合を主に説明したが、図6(b)に示されるように、継ぎ目部3がボックスカルバート12同士の目地部分であってもよい。また、継ぎ目部3がU型擁壁11同士の目地部分であってもよい。
【0039】
上記実施形態では、地下構造物10(躯体1)は、高速道路を構成するコンクリート構造物であったが、これに限定されない。例えば、地下構造物は、地下水路用であってもよいし、電線類のための空間を形成するものであってもよい。
【0040】
上記実施形態では、地下構造物10は、河川5に沿って延在する堤防4に並設され、掘削工程では、堤防4に関して河川5とは反対側にて堤防4に沿って掘割部6を形成したが、この例に限定されない。地下構造物は、河川及び堤防に近接していなくてもよい。この場合、中詰構造体は、透水性を有していなくてもよい。
【0041】
なお、以下、本発明の種々の態様の構成要件を記載する。
<発明1>
地下構造物の施工方法であって、
掘割部を形成する掘削工程と、
継ぎ目部を介して互いに連なるように複数の前記地下構造物を前記掘割部に構築する躯体構築工程と、
外形を構成する外形構成部の内部に中詰材が収容された中詰構造体を、構築された複数の前記地下構造物の継ぎ目部を覆うように前記掘割部に設置する設置工程と、を備える、地下構造物の施工方法。
<発明2>
前記地下構造物は、河川に沿って延在する堤防に並設され、
前記掘削工程では、前記堤防に関して前記河川とは反対側にて前記堤防に沿って前記掘割部を形成し、
前記設置工程では、透水性を有する前記中詰構造体である透水中詰構造体を前記継ぎ目部を覆うように前記掘割部に設置する、発明1に記載の地下構造物の施工方法。
<発明3>
前記設置工程では、前記中詰構造体の外形を構成する金属籠と、前記金属籠の内部に収容された砕石と、を有する蛇篭を前記中詰構造体として設置する、発明1又は2に記載の地下構造物の施工方法。
<発明4>
前記躯体構築工程では、複数の前記地下構造物として、U型擁壁とボックスカルバートとを互いに連なるように構築し、前記U型擁壁の下部には地盤改良を行わず、前記ボックスカルバートの下部には地盤改良を行い、
前記設置工程では、前記U型擁壁と前記ボックスカルバートとの前記継ぎ目部を覆うように前記中詰構造体を前記掘割部に設置する、発明1~3の何れか一項に記載の地下構造物の施工方法。
【符号の説明】
【0042】
3…継ぎ目部、4…堤防、5…河川、6…掘割部、10…地下構造物、11…U型擁壁、12…ボックスカルバート、14…地盤改良、20…透水中詰構造体(中詰構造体)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6