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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134336
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/82 20060101AFI20240926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240926BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
D21H19/82
B65D65/40 D
B32B29/00
D21H19/20
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044579
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美沙紀
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB85
4F100AA08D
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4F100AK16C
4F100AK26A
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4L055EA05
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4L055EA32
4L055FA11
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】プラスチックの使用量を低減し、折り曲げ後の耐水性や耐ブロッキング性などの加工適性とヒートシール性に優れた包装用紙を提供すること。
【解決手段】紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層以上の樹脂コーティング層を有する包装用紙であって、前記樹脂コーティング層のうち、紙基材に近い樹脂コーティング層を第一樹脂コーティング層、第一樹脂コーティング層の紙基材と反対面に位置した樹脂コーティング層を第二樹脂コーティング層…と構成された包装用紙であり、前記樹脂コーティング層が、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含み、かつ前記樹脂コーティング層の最外樹脂コーティング層に含まれる樹脂よりも融点の低い樹脂が最外樹脂コーティング層以外の層に1種以上含まれること特徴とする包装用紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層の樹脂コーティング層を有する包装用紙であって、前記樹脂コーティング層の全ての層が、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含み、かつ前記樹脂コーティング層のうち、最外層の樹脂の融点よりも融点の低い樹脂が最外層以外の層に1種以上含まれることを特徴とする包装用紙。
【請求項2】
前記樹脂コーティング層の片面当たりの総塗工量が2~20g/mの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記樹脂コーティング層の最外層の樹脂の融点が90℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項4】
前記樹脂コーティング層の最外層以外のいずれか1種以上の層に顔料が含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項5】
前記紙基材と樹脂コーティング層との間に、更に顔料とバインダーを含むアンダー層を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項6】
前記紙基材に針葉樹晒しクラフトパルプを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項7】
前記紙基材に紙力剤としてポリアクリルアミドを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項8】
紙基材に使用されるパルプのカナダ標準ろ水度(フリーネス)が250~650mlCSFであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項9】
融点が低い樹脂と、最外層の樹脂の融点の差が、5℃~85℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【請求項10】
アイオノマーがエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩であり、
ならびに/又は、
エチレンコポリマーがエチレン・アクリル酸共重合物、エチレン・メタクリル酸共重合物、エチレン・アクリル酸エステル共重合物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合物、及び/若しくは、エチレン酢酸ビニル共重合物である、請求項1又は2に記載の包装用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの使用量を低減した包装用紙に関する。また、折り曲げ後の耐水性や耐ブロッキング性などの加工適性とヒートシール性に優れた包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因になっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
【0003】
一方で、プラスチックゴミ対策として微生物によって完全に分解され得る生分解性プラスチックの応用が世界中で提案されている。生分解プラスチックは自然界で一定期間の内に分解されるが、分解されるまではやはりゴミであり、それらの使用量および廃棄量が低減されない限りにおいては、即効性のある対策とは言えない(特許文献1、2参照)。
【0004】
包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋や容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が特に多く使用されている。プラスチックの使用量を低減するための対策手段として、紙でプラスチックを代替することが提案されている。しかしながら、紙でプラスチックを代替する場合であっても、袋や容器に加工する際にはヒートシール剤としてポリエチレンやポリプロピレンが多量にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は商品コンセプトによって様々だが、概ね30~50g/m程度であり、用途によっては300g/mと多量に用いられる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替したラミネート紙においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急に、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-148444号公報
【特許文献2】特開2013-141763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラスチックの使用量を低減でき、また、折り曲げ後の耐水性(以降、「耐折性」と略称する場合がある)や耐ブロッキング性などの加工適性(以降、耐折性と耐ブロッキング性を含めて「加工適性」と略称する場合がある)とヒートシール性に優れた包装用紙に関する。
【0007】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、ポリラミ紙と略称する場合がある)のポリエチレンやポリプロピレンの使用量を低減するために、少なくとも2層の樹脂コーティング層を有する包装用紙であって、前記樹脂コーティング層の全ての層が、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含み、かつ前記樹脂コーティング層のうち、最外層の樹脂の融点よりも融点の低い樹脂が最外層以外の層に1種以上含まれることを特徴とする。前記樹脂コーティング層に含まれる樹脂は造膜性に優れた樹脂であるため、良好な耐折性を付与することができる。また、これらの樹脂はヒートシール性にも優れているため、ヒートシール適性を付与することもできる。このような構成であれば、最外層以外のいずれかの融点が低く柔らかい樹脂を含む層によって耐折性が付与され、かつ、融点が高く粘着性の乏しい樹脂を含む最外層によって耐ブロッキング性が付与されることにより、優れた加工適性の包装用紙を得ることができる。
【0009】
本発明においては、前記樹脂コーティング層の片面当たりの総塗工量が2~20g/mの範囲であることが好ましい。このような構成であれば、優れた加工適性を保持しつつも、プラスチックの使用量が片面あたり30g/mを超える従来のポリラミ紙と比較して、樹脂コーティング層に含まれるプラスチックの使用量を従来の約7~67%にまで削減することができる。
【0010】
本発明においては、前記樹脂コーティング層の最外層の樹脂の融点が90℃以上であることが好ましい。このような構成とすることで、融点が90℃以上の樹脂は粘着性に乏しいため耐ブロッキング性に優れた包装用紙を得ることができる。
【0011】
本発明においては、前記樹脂コーティング層の最外層以外のいずれか1種以上の層に顔料が含まれることが好ましい。このような構成とすることで、顔料が目止めの役割を担いより良好な耐折性の包装用紙となる。
【0012】
本発明においては、前記紙基材と樹脂コーティング層との間に、更に顔料とバインダーを含むアンダー層を有することが好ましい。このような構成とすることで、アンダー層が目止めの役割を担いより良好な耐折性の包装用紙となる。
【0013】
本発明においては、前記紙基材に針葉樹晒しクラフトパルプを含むことが好ましい。このような構成とすることで、紙基材の伸びが向上し紙基材が割れにくくなり、耐折性が良好な包装用紙となる。
【0014】
本発明においては、前記紙基材に紙力剤としてポリアクリルアミドを含むことが好ましい。このような構成とすることで、ポリアクリルアミドがパルプ繊維間の絡み合いを補強することで紙基材の紙力が増し、耐折性が悪化しにくい包装用紙となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、プラスチック使用量が低減でき、折り曲げ後の耐水性や耐ブロッキング性などの加工適性とヒートシール性に優れた包装用紙を製造することが可能である。本発明の包装用紙であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における包装用紙は、例えば、食品包装における一次袋や二次袋、アイスクリーム等の食糧カップ、カップ容器のフタ材、コーヒー等の飲料用コップ、ホットスナック等の食糧容器及びトレー、箱、ケース、器等の紙製容器全般に加工可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明について実施形態の一例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0017】
本実施形態においては、樹脂コーティング層を少なくとも2層有し、前記樹脂コーティング層の全ての層が、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含み、かつ前記樹脂コーティング層のうち、最も紙基材から遠い層である最外層の樹脂の融点よりも融点の低い樹脂が最外層以外の層に1種以上含まれることを特徴とする。融点の低い樹脂は造膜性に優れるので、高い目止め効果が生じ、耐水性、耐油性を付与しやすくなる。さらに、融点の低い樹脂は柔らかいため、包装用紙を折り曲げ加工した場合にも、樹脂コーティング層が折り曲げに従って伸び縮みしやすく、割れが発生しにくいので、折り曲げ後の耐水性が損なわれにくい。ここで使われる樹脂の融点は、100℃以下とすることが好ましい。より好ましくは70~95℃である。一方欠点としては、柔らかい樹脂であるために粘着性も高く、ブロッキングが発生しやすくなってしまう。そこで本実施形態においては、最外層以外の最も融点が低い樹脂よりも最外層の樹脂の融点が高いことを特徴とする。すなわち、内側により融点の低い樹脂を含む樹脂コーティング層を配置し、融点の高い樹脂を含む樹脂コーティング層を最外層として配置する。層中に樹脂が複数含まれる場合は、ここでいう融点とは、樹脂混合物の融点とする。最外層に含まれるより高い融点の樹脂は硬く、粘着性に乏しく、耐ブロッキング性に優れるため、最外層に耐ブロッキング性が付与される。最外層の樹脂の融点は、85℃以上とすることが好ましい。より好ましくは90℃以上である。融点の異なる2種以上の樹脂コーティング層をこの順に重ねることで、耐折性と耐ブロッキング性両方のバランスのいい包装用紙を得ることができる。さらに最も融点が低い樹脂と、最外層の樹脂の融点の差が、5℃~85℃、例えば、5℃~80℃、5℃~70℃であることが好ましい。このような融点の差であれば、耐水性、耐油性、および加工特性優れつつ、耐ブロッキング性に優れた包装用紙を得ることができるからである。
【0018】
本発明の実施形態においては、樹脂コーティング層が3層以上で構成されていても良い。3層以上の場合においても、樹脂コーティング層の最外層に含まれる樹脂よりも融点の低い樹脂が最外層以外の層に1種以上含まれることを特徴とする。樹脂コーティング層を3層以上とすることで、樹脂コーティング層に発生する微小なピンホールをより確実に埋めることができるので、包装用紙の透気度をさらに改善することができ、耐水性、耐油性、防湿性が更に向上する。本実施形態においては、紙基材に最も近い最内樹脂コーティング層に含まれる樹脂の融点が、他の樹脂コーティング層の樹脂の融点よりも低いことが好ましい。例えば、樹脂コーティング層が3層構成である場合、中間に位置する樹脂コーティング層に含まれる樹脂の融点が最外層、最内層の樹脂の融点より低い場合よりも、最内樹脂コーティング層に含まれる樹脂の融点が最外層、中間層の樹脂の融点よりも低い場合の方が耐折性に優れる傾向にある。
【0019】
本発明の実施形態においては、樹脂コーティング層中の樹脂には、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上を含むことを特徴とする。樹脂コーティング層は、樹脂からなり、加工適性に影響を及ぼさない限り、上記以外のどのような樹脂を含んでも良く、さらに複数の樹脂を混合しても良い。各樹脂コーティング層においては、上記から選択される樹脂が主成分となることが好ましく、また、さらには上記から選択される樹脂が樹脂層中90質量%以上含むことが好ましく、また、樹脂コーティング層中の樹脂には、アイオノマー、エチレンコポリマー、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択されるいずれか1種以上から成ることが好ましい。ここでアイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂のことを指し、樹脂と金属カチオンが分子間結合して凝集体となるものすべてを含む。例えば、エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル酸共重合物の金属塩、ウレタン・アクリル酸共重合物の金属塩、ウレタン・メタクリル酸共重合物の金属塩、スチレン・アクリル酸共重合物の金属塩、スチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合物の金属塩等である。本発明においては、優れた耐折性と耐ブロッキング性付与できることから、アイオノマーの中でもエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩が好ましい。また、エチレンコポリマーとしては、耐折性が特に優れることから、エチレン・アクリル酸共重合物、エチレン・メタクリル酸共重合物、エチレン・アクリル酸エステル共重合物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合物、エチレン酢酸ビニル共重合物のいずれかであることが好ましい。熱可塑性ウレタンとしては、特に制限はないが、エステル系、エステル・エーテル系、カーボネート系、芳香族イソシアネート系のいずれかの熱可塑性ウレタンであることが好ましい。ポリ塩化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン単独でも、他の高分子との共重合体でも良い。特に制限はないが、共重合体として例えばラテックス、塩化ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸のいずれかとの共重合体であることが好ましい。ポリ乳酸としては、ポリ乳酸単体でも、他の高分子との共重合体でも良い。乳酸としては、L-乳酸とD-乳酸が存在し、それらを重合してポリ乳酸とするが、L-乳酸とD-乳酸の比率は、ヒートシール性能に影響を及ぼさない限りどの比率でも良い。また、共重合体としては、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族環状エステル、ジカルボン酸、多価アルコール類のいずれかとの共重合体であることが好ましい。ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、ポリブチレンサクシネート単体でも、他の高分子との共重合体でも良い。特に制限はないが、共重合体として例えばアジピン酸やポリエチレングリコール等との共重合体でも良い。これらの樹脂はヒートシール性に優れた樹脂であるため、最外樹脂コーティング層に含む場合には加工適性に加えてヒートシール性を付与した包装用紙を得ることができる。また、アイオノマー、エチレンコポリマーのいずれか1種以上であることが更に好ましい。アイオノマー樹脂、特にエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩は耐折性と耐ブロッキング性に特に優れているため高い加工適性とヒートシール性を併せ持つ包装用紙を得ることができる。エチレンコポリマー樹脂は、耐折性が特に優れ、また耐油性にも優れるため高いバリア性能を持つ包装用紙を得ることができる。具体的な実施形態例においては、例えば、包装用紙は、最外層の樹脂コーティング層として、融点が90~99℃、好ましくは融点が95℃~99℃のアイオノマー、(例えば、エチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩)または融点が140~160℃の塩化ビニリデンを含む層を有し、また、上記最外層の樹脂の融点よりも低い融点を有する樹脂コーティング層として、融点が80℃以上90℃未満、好ましくは85℃以上90℃未満のアイオノマー、(例えば、エチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩)または融点が80℃以上90℃未満、好ましくは85℃以上90℃未満のエチレン・アクリル酸共重合物、エチレン・メタクリル酸共重合物、エチレン・アクリル酸エステル共重合物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合物、もしくはエチレン酢酸ビニル共重合物を含む層を有する。
【0020】
本発明の実施形態においては、紙基材の少なくとも一方の面に、樹脂を含有する樹脂コーティング層用塗工液を塗工し、乾燥することで樹脂コーティング層を設けることができる。樹脂コーティング層に用いる樹脂が水系エマルジョンであることが好ましい。これらを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることができ、さらにVOC排出が無くなることで自然環境に対する負荷をより小さくすることができる。
【0021】
本発明の実施形態においては、樹脂コーティング層用塗工液には、樹脂を含む水系エマルジョンの他に、各種助剤を本発明の目的とする効果を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料、ワックスなどの滑剤、クレーや炭酸カルシウムなどの顔料などである。例えば、樹脂塗工液において、樹脂100部に対して、顔料、例えば、カオリンクレー、重質炭酸カルシウム、または、軽質炭酸カルシウムを25~75部、または40~60部添加することが好ましい。これにより耐折性に優れた包装用紙を得られる場合がある。また、樹脂塗工液において、樹脂100部に対して、顔料に加えて、0.05~0.5部の分散剤を加えることも好ましい。なお、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で上述以外の助剤を含んでもよい。
【0022】
本発明において樹脂コーティング層の総塗工量は、固形分換算で2~20g/mとすることが好ましい。より好ましくは3~15g/mである。樹脂コーティング層の総塗工量をこの範囲とすることで十分な耐折性を得ることができる。塗工量が2g/m未満の場合には、十分な耐折性が得られないおそれがある。逆に20g/mを超える場合には、十分な耐折性は得られるが、プラスチックの使用量も増えるためプラスチック削減効果に乏しくなるおそれがある。なお、樹脂コーティング層を紙基材の両面に設ける場合は、紙基材の両面に設けた樹脂コーティング層の塗工量の合計が固形分換算で4~30g/mであることが好ましく、5~25g/mであることがより好ましい。十分な耐折性を得つつ、プラスチックの削減効果に優れる。なお、本発明の包装用紙において、樹脂コーティング層は、基紙の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、樹脂コーティング層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、紙基材の表面の全面を覆うように設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明において各樹脂コーティング層の塗工量は、紙基材に最も近い最内層の塗工量が、他の層よりも多い方が好ましい。このような構成とすることで、紙基材やアンダー層等の最内層の直下にある層に存在する空隙を埋め、最内層のピンホールの発生を抑制できるので、良好な耐折性と耐水性や耐油性を付与することができる。最内層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で1.5~10g/mであることが好ましく、より好ましくは3~8g/mである。他の樹脂コーティング層は、ピンホールの少ない最内層の上にオーバーコートすることで、相対的に少ない塗工量で紙基材の表面を覆うことができる。樹脂コーティング層の樹脂量を増やすことはプラスチックの使用量を増やすことにもつながるので、表面を覆う最低量で済ますことが望ましい。最内層以外の樹脂コーティング層の各層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で0.5~5g/mであることが好ましく、より好ましくは1~3g/mである。
【0024】
本発明における樹脂コーティング層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0025】
本発明の実施形態においては、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、紙基材と樹脂コーティング層以外に任意の層を設けても良い。例えば、顔料とバインダーを含むアンダー層を紙基材と樹脂コーティング層の間に設けてもよい。アンダー層を紙基材と樹脂コーティング層の間に設けることで、樹脂コーティング層用塗工液が紙基材に浸透することを防ぐ目止め効果が生じるので、少ない塗工量の樹脂コーティング層でも欠点の少ない樹脂膜が形成しやすくなり、プラスチックの使用量を増やすことなくより良好な耐折性、耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。アンダー層の構成としては、顔料とバインダーの併用であることが好ましい。例えば、顔料100質量部に対して、5~100質量部のバインダーを含むことができる。アンダー層中の顔料およびバインダーとしては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料とバインダーを用いることができるほか、アンダー層には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。アンダー層に用いられる顔料の一例としては、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、またはアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント(以降、「PP粒子」と略称する場合がある))などが挙げられる。アンダー層に用いられるバインダーの一例としては、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の合成樹脂類等を例示できる。具体的なアンダー層の構成例としては、顔料として、カオリンクレーを5~35質量部および重質炭酸カルシウムを65~95質量部含み、バインダーとして、リン酸エステル化澱粉を1~5質量部およびスチレンブタジエン共重合ラテックスを15~45質量部含む構成等が挙げられる。このような構成を有することにより、より耐折性に優れた包装用紙を得られる場合がある。
【0026】
本発明の実施形態においては、紙基材の樹脂コーティング層を塗工していない面に印刷層を設けてもよい。包装用紙を袋や紙コップとして加工した際に、容器の外側面には内容物の表示や宣伝として印刷が行われることがあるが、印刷層を設けることによって良好な印刷適性を与えることができる。また、印刷層の上に印刷を施してからさらにその上に樹脂コーティング層を設けることも可能である。印刷層の構成としては特に限定するものではなく、前述のアンダー層と同様に顔料とバインダーおよび各種助剤を含有させることができ、また、公知の印刷用塗工紙の塗工層と同様の構成とすることができる。
【0027】
本発明の実施形態においては、紙基材を平滑化処理する工程を含んでも良い。紙基材を平滑化処理する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。例えば、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー等の公知の各種平滑化装置を用いることができる。また、片艶クラフト紙などに用いられるような、ヤンキードライヤーの鏡面を転写し平滑化処理する工程を含んでも良い。平滑化処理を行った面に樹脂コーティング層を塗工することで、樹脂コーティング層用塗工液が紙基材表面に均一に塗工されやすくなることで高い目止め効果も得られ、良好な耐折性、耐水性、耐油性を有する包装用紙を得ることができる。
【0028】
本発明の実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の基紙を用いることができる。基紙の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、好ましくは、250~650mlCSF、さらには、400~620mlCSF、例えば、480~580mlCSFである。
【0029】
本実施形態において、パルプ主成分としてはLBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ)を使用することが好ましく、さらに、LBKPに加えて、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)を全パルプ100質量部に対して1~50質量部使用することが好ましい。より好ましくは70~95質量部のLBKPおよび5~30質量部のNBKP、例えば、85~95質量部のLBKPおよび5~15質量部のNBKPを使用することが好ましい。NBKPを加えることで、紙基材の伸びが向上し、折り曲げ時にも紙基材が割れにくくなり、耐折性が向上する。例えば、基紙の主成分となるパルプとしては、具体的に、カナディアンスタンダードフリーネス460~580mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部を含むパルプを使用することができる。または、例えば、カナディアンスタンダードフリーネス400~500mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ85~95部、カナディアンスタンダードフリーネス460~580mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ5~15部を含むパルプを使用することができる。
【0030】
本発明の実施形態においては、紙基材に填料を含まないことが好ましい。填料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。紙基材中に填料が含まれることでパルプの繊維間結合が阻害されて紙基材の紙力が低下し、折り曲げ時に紙基材が割れやすくなる。紙基材の割れに追随して樹脂コーティング層の割れも発生しやすくなり、折り曲げ後の耐水性が悪化する恐れがある。なお、本発明の目的とする効果を損なわない範囲であれば上記填料を含んでもよい。
【0031】
また、紙基材には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていても良い。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていても良い。紙基材に湿潤紙力増強剤が含まれている場合は、包装用紙のリサイクル性が劣るので、紙基材には、湿潤紙力剤が含まれないことが好ましい。製紙用添加剤の配合方法としては、パルプスラリー中に含んでもよく、または製紙後にサイズプレスやゲートロール等で紙基材の内部に含浸させても良い。特に紙力剤としてポリアクリルアミドを含むことが好ましい。ポリアクリルアミドを含有する紙基材は、ポリアクリルアミドがパルプ繊維間の絡み合いを補強することで紙基材の紙力が増し、折り曲げ時に紙基材が割れにくくなる。紙基材が割れにくくなることで樹脂コーティング層の割れも発生しにくくなり、折り曲げ後の耐水性が悪化しにくくなる。例えば、紙基材には、パルプ100質量部に対して、0.05~1.0質量部のサイズ剤と0.05~1.0質量部のポリアクリルアミドを含むことができ、さらには、パルプ100質量部に対して、0.1~0.4質量部のロジンサイズ剤を含むことができる。
【0032】
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きであっても良い。
【0033】
本発明の実施形態において、包装用紙の坪量は特に限定するものではないが、例えば10~1000g/mである。軟包装にも使用できる包装用紙の坪量としては、30~500g/mが好ましく、30~350g/mであればより好ましい。
【実施例0034】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0035】
(実施例1)
(紙基材の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン705、荒川化学工業社製)0.3部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量が58g/mである基紙を作製し、紙力剤としてポンド式サイズプレスによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を乾燥含浸量が2g/mとなるように含浸して乾燥し、キャレンダーによる平滑化処理を行い米坪が60g/mである紙基材を得た。
【0036】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材の片面に、融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が4.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第一樹脂コーティング層を設け、次いで第一樹脂コーティング層の上に融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が2.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第二樹脂コーティング層を設け、坪量66g/mの包装用紙を作製した。
【0037】
(実施例2)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の樹脂を融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)に変更し、次いで第二樹脂コーティング層の上に融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が2.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第三樹脂コーティング層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0038】
(実施例3)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の上に融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が2.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第三樹脂コーティング層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0039】
(実施例4)
実施例1において、第一樹脂コーティング層の樹脂を融点85℃の水系エチレン・アクリル酸共重合物エマルジョン(商品名:MICHEM FLEX P1883、マイケルマン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0040】
(実施例5)
実施例1において、第一樹脂コーティング層の樹脂を融点88℃の水系エチレン・酢酸ビニルエマルジョン(商品名:アクアテックス MC-3800、ジャパンコーティングレジン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0041】
(実施例6)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の樹脂を融点153℃の水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:サランラテックス L411A、旭化成社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0042】
(実施例7)
実施例1において、第一樹脂コーティング層の塗工液を50部のカオリンクレー(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)と分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.1部に水を加え、コーレス分散機を用いて水分散した顔料スラリーに、樹脂として融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)100部を添加し、さらに水を加えて分散した塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0043】
(実施例8)
(アンダー層用塗工液の調製)カオリンクレー(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)20部および重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)80部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部およびスチレンブタジエン共重合ラテックス(商品名:L-1432X、旭化成ケミカルズ社製、粒子径182nm)30部を添加し、さらに水を加えて分散させ、固形分濃度50%のアンダー層用塗工液を調製した。
【0044】
(アンダー層付き紙基材の作製)
実施例1で得られた紙基材の片面に、アンダー層用塗工液を乾燥塗工量が20g/mになるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し、キャレンダーによる平滑化処理を行い坪量が80g/mのアンダー層付き紙基材を作製した。
【0045】
(包装用紙の作製)
上記で得られたアンダー層付き紙基材のアンダー層面に、融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が4.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第一樹脂コーティング層を設け、次いで第一樹脂コーティング層の上に融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が2.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第二樹脂コーティング層を設け包装用紙を作製した。
【0046】
(実施例9)
(紙基材の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス450mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ90部、カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ10部、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン705、荒川化学工業社製)0.3部、中性ロジンサイズ剤(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて基紙を作製し、キャレンダーによる平滑化処理を行い坪量が250g/mである紙基材を得た。
【0047】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材の片面に、融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が4.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第一樹脂コーティング層を設け、次いで第一樹脂コーティング層の上に融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)を乾燥塗工量が2.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して第二樹脂コーティング層を設け、坪量256g/mの包装用紙を作製した。
【0048】
(比較例1)
実施例1において、樹脂コーティング層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0049】
(比較例2)
実施例1において、第一樹脂コーティング層の樹脂を融点96℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)に変更し、第二以降の樹脂コーティング層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0050】
(比較例3)
実施例1において、第一樹脂コーティング層の樹脂を融点153℃の水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:サランラテックス L411A、旭化成社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0051】
(比較例4)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の樹脂を融点89℃の水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0052】
(比較例5)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の樹脂を融点187℃の水系スチレン・アクリルエマルジョン(商品名:ブライトーンFC-621、サカタインクス社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0053】
(比較例6)
実施例1において、第二樹脂コーティング層の樹脂を融点180℃のポリビニルアルコール水溶液(商品名:JMR-20H、日本酢ビ・ポバール社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
【0054】
各実施例および比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0055】
(1)融点
JIS K 7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して、樹脂コーティング層に用いた樹脂の融点を測定した。
【0056】
(2)ヒートシール強度
得られた包装用紙を、幅15mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の樹脂面同士を重ね合わせ、ホットタック試験機(Labthink社製、型番:HTT-L1)で、一定条件(接着幅:15mm、温度:180℃、圧力0.2MPa、押し当て時間1.0秒)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:300mm/分)で剥離して、ヒートシール強度を測定した。数値が大きいほどヒートシール強度が高いことを示す。本発明においては、ヒートシール強度が3.00N/15mm以上で良好なヒートシール強度があると判定した。
【0057】
(3)ヒートシール材破性
(2)で得られた剥離後の包装用紙の剥離面を目視によって評価した。
○:シール部の全部分が紙基材から材破しており、実用できる。
△:シール部の一部が紙基材から材破しており、実用できる。
×:シール部が樹脂コーティング層の界面で剥離している、または接着しておらず、実用できない。
【0058】
(4)折り曲げ部耐水性
得られた包装用紙を、幅8cm、長さ10cmのサイズにカットし、樹脂コーティング層側を外側に二つ折りにして、折り目部分に沿って5kgの金属製ロールを押し当てて1往復通過させた。折り部は抄紙のMD方向(Machine Direction;抄紙機の進行方向)が折り目となるようにした。折り曲げ部を開いて、樹脂コーティング層側の折り曲げ部に、メチレンブルー水溶液(メチレンブルー染料4g/L)を塗り、30分後に拭き取り、折り曲げ部の染色具合を目視で確認して以下の3段階で評価を行った。
○:折り曲げ部が染色しておらず、実用できる。
△:折り曲げ部の一部が染色しているが、実用できる。
×:折り曲げ部の半分以上が染色している、または樹脂コーティング層の反対面までメチレンブルー液が浸透しているため、実用できない。
【0059】
(5)ブロッキング性
得られた包装用紙を幅5cm、長さ7cmのサイズにカットし、樹脂コーティング層側を同じサイズにカットしたPPC用紙と重ね合わせて、60℃65%RHに調温した恒温槽で24時間、250g/mの荷重をかけ、試験後のサンプルとPPC用の貼り付き具合を目視で評価した。
○:サンプルとPPC用紙との貼り付きがなく、実用できる。
△:サンプルとPPC用紙との貼り付きがあるが軽度であり、実用できる。
×:サンプルとPPC用紙との貼り付きが酷く、実用できない。
【0060】
【表1】
【0061】
表1より明らかなように、実施例1~9による本発明の包装用紙は比較例1~6で得られた包装用紙と比較して、ヒートシール強度、ヒートシール材破性、折り曲げ部耐水性、ブロッキング性に優れていた。この結果が示す様に、本発明によれば、従来のポリエチレンラミネート量と比較してプラスチックの使用量を低減し、また、折り曲げ後の耐水性や耐ブロッキング性などの加工適性に優れた包装用紙を提供することができる。