(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134339
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】受信装置、送受信システム、及び受信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20240926BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H04L7/00 410
H04L25/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044583
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 舞
(72)【発明者】
【氏名】橘 文彦
【テーマコード(参考)】
5K029
5K047
【Fターム(参考)】
5K029AA03
5K029CC01
5K047AA08
5K047GG34
5K047MM38
(57)【要約】
【課題】受信信号に基づき好適にデータを再生する受信装置、送受信システム、及び受信方法を提供する。
【解決手段】一実施形態の受信装置は、各々が互いに異なるタイミングでアナログ信号からデジタル値をサンプルする複数のコンバータと、デジタル値のオフセットを校正するデジタル処理回路と、を備える。複数のコンバータは、第1コンバータ及び第2コンバータを含む。デジタル処理回路は、第1アナログ信号を用いた第1動作において、第1コンバータによって生じる第1オフセットと、第2コンバータによって生じる第2オフセットとを校正し、第2アナログ信号を用いた第2動作において、第1オフセットが校正された第1コンバータ及び第2オフセットが校正された第2コンバータに共通して生じる第3オフセットを校正するように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が互いに異なるタイミングでアナログ信号からデジタル値をサンプルする複数のコンバータと、
前記デジタル値のオフセットを校正するデジタル処理回路と、
を備え、
前記複数のコンバータは、第1コンバータ及び第2コンバータを含み、
前記デジタル処理回路は、
第1アナログ信号を用いた第1動作において、前記第1コンバータによって生じる第1オフセットと、前記第2コンバータによって生じる第2オフセットとを校正し、
第2アナログ信号を用いた第2動作において、前記第1オフセットが校正された前記第1コンバータ及び前記第2オフセットが校正された前記第2コンバータに共通して生じる第3オフセットを校正する
ように構成された、
受信装置。
【請求項2】
前記デジタル処理回路は、
前記第1動作において、前記第3オフセットの校正を停止し、
前記第2動作において、前記第1オフセットの校正及び前記第2オフセットの校正を停止する
ように構成された、請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記第1動作において、
前記第1コンバータは、前記第1アナログ信号から第1デジタル値をサンプルし、
前記第2コンバータは、前記第1アナログ信号から第2デジタル値をサンプルし、
前記デジタル処理回路は、前記第1デジタル値に基づいて前記第1オフセットを校正し、前記第1デジタル値及び前記第2デジタル値の差に基づいて前記第2オフセットを校正し、
前記第2動作において、
前記第1コンバータは、前記第2アナログ信号から第3デジタル値をサンプルし、
前記第2コンバータは、前記第2アナログ信号から第4デジタル値をサンプルし、
前記デジタル処理回路は、前記第3デジタル値及び前記第4デジタル値の和に基づいて前記第3オフセットを校正する
ように構成された、
請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
前記第1動作は、前記第2動作の前に実行される、
請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
前記第1アナログ信号は、ランダム信号であり、
前記第2アナログ信号は、前記ランダム信号と異なるデータ信号である、
請求項1記載の受信装置。
【請求項6】
前記ランダム信号のパターン長は、前記複数のコンバータの数と互いに素である、
請求項5記載の受信装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の受信装置と、
前記受信装置に前記アナログ信号を送信するように構成された送信装置と、
を備えた、送受信システム。
【請求項8】
前記送信装置は、前記第1動作において、前記複数のコンバータの数と互いに素なパターン長を有するランダム信号を前記第1アナログ信号として選択するように構成された、
請求項7記載の送受信システム。
【請求項9】
前記送信装置は、前記複数のコンバータの数、又は前記複数のコンバータの数に関する素数を前記受信装置から受信するように構成された、
請求項8記載の送受信システム。
【請求項10】
各々が互いに異なるタイミングでアナログ信号からデジタル値をサンプルする第1コンバータ及び第2コンバータと、前記デジタル値のオフセットを校正するデジタル処理回路と、を備える受信装置における受信方法であって、
第1アナログ信号を用いた第1動作において、前記第1コンバータによって生じる第1オフセットと、前記第2コンバータによって生じる第2オフセットと、を校正することと、
第2アナログ信号を用いた第2動作において、前記第1オフセットが校正された前記第1コンバータ及び前記第2オフセットが校正された前記第2コンバータに共通して生じる第3オフセットを校正することと、
を備えた、受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、受信装置、送受信システム、及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信装置と受信装置とは伝送路を介して接続される。送信装置は、アナログ信号にデータを重畳する。受信装置は、送信装置から送信されて伝送路を通過したアナログ信号を受信する。受信装置は、アナログ信号を処理する受信回路を備える。受信回路は、アナログ信号に基づき、デジタル信号を生成する。受信回路は、生成されたデジタル信号に基づき、データを再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログ信号に基づき好適にデジタル信号を生成する受信装置、送受信システム、及び受信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の受信装置は、各々が互いに異なるタイミングでアナログ信号からデジタル値をサンプルする複数のコンバータと、上記デジタル値のオフセットを校正するデジタル処理回路と、を備える。上記複数のコンバータは、第1コンバータ及び第2コンバータを含む。上記デジタル処理回路は、第1アナログ信号を用いた第1動作において、上記第1コンバータによって生じる第1オフセットと、上記第2コンバータによって生じる第2オフセットとを校正し、第2アナログ信号を用いた第2動作において、上記第1オフセットが校正された上記第1コンバータ及び上記第2オフセットが校正された上記第2コンバータに共通して生じる第3オフセットを校正するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る受信装置を含む送受信システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る受信回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータの構成の一例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る受信回路に含まれるデジタル処理回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る受信回路に含まれるオフセット調整回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図6】第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる基準用個別調整回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図7】第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる参照用個別調整回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図8】第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる同相調整回路の構成の一例を示すブロック図。
【
図9】第1実施形態に係る受信装置における個別調整動作を含むランダム信号受信動作の一例を示すフローチャート。
【
図10】第1実施形態に係る受信装置における同相調整動作を含むデータ信号受信動作の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第2実施形態に係る送信装置に記憶される乱数表のデータ構造の一例を示す図。
【
図13】第2実施形態に係る送信装置におけるランダム信号送信動作の一例を示すフローチャート。
【
図14】第2実施形態の変形例に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図15】第2実施形態の変形例に係る送信装置に記憶される乱数表のデータ構造の一例を示す図。
【
図16】第2実施形態の変形例に係る送信装置におけるランダム信号送信動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。
【0008】
なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。同様の構成を有する要素同士を特に区別する場合、同一符号の末尾に、互いに異なる文字又は数字を付加する場合がある。
【0009】
1. 第1実施形態
1.1 構成
1.1.1 送受信システム
まず、第1実施形態に係る受信装置を含む送受信システムの構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る受信装置を含む送受信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
送受信システム1は、例えば、100Gbps級の高速シリアル通信を実現する送受信系である。送受信システム1は、データを一方の装置又は回路から他方の装置又は回路へ伝送するように構成される。具体的には、送受信システム1は、送信装置2、伝送路3、及び受信装置4を備える。送受信システム1は、同じプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良いし、互いに異なるプリント基板上に設けられた複数の装置又は回路により構成されても良い。
【0011】
送信装置2は、伝送路3を介して受信装置4に信号TR及び/TRを送信するように構成される。信号TR及び/TRは、差動信号である。信号TR及び/TRは、例えば、複数のパルス信号を含む信号である。信号TR及び/TRの各パルス信号には、データが重畳される。信号TR及び/TRのパルス信号毎の電圧レベルは、1以上のビットのデータに対応する。当該パルス信号に重畳されたデータが、送信装置2から伝送路3を介して受信装置4に伝達される。
【0012】
伝送路3は、信号TR及び/TRを受信装置4へ伝送するための物理的又は空間的な伝送媒体である。伝送路3は、例えば、送信装置2と受信装置4との間を接続する配線である。伝送路3は、伝送媒体の構造や材質に応じて、様々な伝送特性を有し得る。伝送路3の伝送特性は、例えば、特定の周波数帯域における利得の損失を伴う周波数特性を有する。
【0013】
送信装置2によって送信された信号TR及び/TRは、伝送路3を通過することによって、伝送路3の伝送特性に応じた損失を受ける。これにより、伝送路3を通過した信号TR及び/TRには、シンボル間干渉(ISI:Inter-Symbol Interference)が発生する。このため、伝送路3を通過した信号TR及び/TRは、受信装置4の初段回路においてアナログ信号として処理される。以下では、伝送路3を通過して損失を受けた信号TR及び/TRを、信号RV及び/RVと呼ぶ。
【0014】
受信装置4は、伝送路3を介して送信装置2から信号RV及び/RVを受信するように構成される。受信装置4は、信号RV及び/RVに基づいて、送信装置2によって信号TR及び/TRに重畳されたデータを復号する。受信装置4は、信号TR及び/TRに重畳されたデータを正しく復号するための受信回路を有する。
【0015】
1.1.2 受信回路
図2は、第1実施形態に係る受信装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
受信装置4は、受信回路として、例えば、パッドP1及びP2、AFE10、TI-ADC20、DSP30、CDR40、並びにCNT50を含む。
【0017】
パッドP1及びP2の各々は、伝送路3と接続される端子である。
図2の例では、送信装置2から伝送路3を介して、パッドP1及びP2がそれぞれ信号RV及び/RVを受信する場合が示される。
【0018】
AFE10は、アナログフロントエンド(Analog Front End)である。AFE10は、例えば、連続時間線形イコライザ(CTLE:Continuous Time Linear Equalizer)及び可変ゲインアンプ(VGA:Variable Gain Amplifier)を含む。CTLEは、伝送路3の周波数特性を補償するような周波数特性を備えた増幅回路である。VGAは、利得(ゲイン)を変更することが可能な増幅回路である。AFE10には、パッドP1及びP2からそれぞれ信号RV及び/RVが入力される。AFE10は、CTLE及びVGAを用いて、信号RV及び/RVに対してアナログ処理を実行する。AFE10は、信号RV及び/RVに基づき、信号Sin及び/Sinを生成する。すなわち、信号Sin及び/Sinは、信号RV及び/RVと同様、アナログ信号である。AFE10は、信号Sin及び/SinをTI-ADC20に出力する。
【0019】
TI-ADC20は、タイム・インタリーブ方式のADコンバータである。TI-ADC20には、アナログ処理回路10から信号Sin及び/Sinが入力され、CDR40から信号CLKが入力される。TI-ADC20は、信号CLKに基づいて、信号Sin及び/Sinを信号X0に変換する。TI-ADC20は、信号X0をデジタル処理回路30に出力する。
【0020】
信号CLKは、n個のクロック信号を含む。nは、1以上の整数(例えば、32)である。信号CLKのn個のクロック信号は、例えば、少なくとも360°/nずつ位相が異なる。以下では、信号CLK内のn個のクロック信号は、信号CLK_1、…、及びCLK_nのように区別して示される場合がある。信号CLKの周波数は、送信装置2によって信号TR及び/TRに埋め込まれたクロック信号の周波数と等しくても異なっていてもよい。
【0021】
TI-ADCが出力する信号X0は、デジタル信号である。信号X0は、連続する複数のデジタル値を含む。信号X0に含まれる1個のデジタル値のビットの値は、信号CLKの1個のクロック信号(具体的には、クロック信号のエッジ)に基づいて、信号Sin及び/Sinの1個のシンボルからサンプリングされる。1個のデジタル値は、例えば、7ビットデータである。信号X0に含まれる連続するn個のデジタル値の各ビットの値は、信号CLKのn個のクロック信号に基づいて、信号Sin及び/Sinの連続するn個のシンボルからサンプリングされる。以下では、信号X0に含まれる連続するn個のデジタル値のTI-ADC20による生成周期は、単に「周期」とも呼ぶ。また、信号X0に含まれる連続するn個のデジタル値は、「1周期分の信号X0」とも呼ぶ。また、信号X0に含まれる連続するn個のデジタル値は、値X0_1、…、及びX0_nのように区別して示される場合がある。
【0022】
DSP30は、デジタル処理回路である。DSP30は、例えば、フィードフォワードイコライザ(FFE:Feed Forward Equalizer)、判定帰還型イコライザ(DFE:Decision Feedback Equalizer)、及びデータ判定回路を含む。DSP30の構成については後述する。DSP30には、信号X0が入力される。DSP30は、例えば、FFE、DFE、及びデータ判定回路を用いて、信号X0に対してデジタル処理を実行する。具体的には、DSP30は、信号X0に基づき、信号X1及びXf、並びにデータA1及びAfを生成する。DSP30は、信号X1及びデータA1を、CDR40に出力する。DSP30は、信号Xf及びデータAfを、後続の回路(図示せず)に出力する。信号X1及びXf、並びにデータA1及びAfの生成の詳細については、後述する。
【0023】
CDR40は、クロックデータリカバリ回路である。CDR40には、周期毎に信号X1及びデータA1が入力される。CDR40は、信号X1及びデータA1に基づき、信号CLKの位相の補正量を算出する。CDR40は、算出された位相の補正量に基づき、信号CLKを再生する。CDR40は、再生された信号CLKを周期毎にTI-ADC20に出力する。このように、CDR40は、1周期分の信号X0から生成される信号X1及びデータA1に基づいて、後続する1周期分の信号X0のサンプリングタイミングの基準となる信号CLKを再生する。このようなTI-ADC20、DSP30、及びCDR40による周期毎の循環処理は、「CDRループ」とも呼ばれる。
【0024】
CNT50は、例えば、CPUのようなプロセッサ、及びROM(Read Only Memory)を含む。CNT50は、受信回路の全体を制御する。具体的には、例えば、CNT50は、信号MODEに基づき、DSP30を制御する。信号MODEは、DSP30による信号X0の電圧レベルを調整する動作の制御に用いられる信号である。
【0025】
1.1.3 ADコンバータ
次に、第1実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータ(TI-ADC)の内部構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係る受信回路に含まれるADコンバータの構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
TI-ADC20は、複数のADC21を含む。複数のADC21は、n個のADC21-1、21-2、21-3、…、21-nを含む(nは、2以上の整数)。n個のADC21-1~21-nの各々は、アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータである。
【0027】
n個のADC21-1~21-nには、信号Sin及び/Sinが共通して入力される。また、n個のADC21-1~21-nにはそれぞれ、信号CLK_1~CLK_nが入力される。n個のADC21-1~21-nはそれぞれ、信号CLK_1~CLK_nに基づき、値X0_1~X0_nをサンプルする。このように、信号X0に含まれる連続するn個のデジタル値X0_1~X0_nはそれぞれ、異なるADC21-1~21-nによってサンプリングされる。
【0028】
n個のADC21-1~21-nはそれぞれ、異なる変換特性を有し得る。具体的には、例えば、信号TR及び/TRが、ある期間において送信される値の平均値が0となるランダム信号の場合、n個のADC21-1~21-nからそれぞれ出力される値X0_1~X0_nの平均値は、いずれも0とみなせることが望ましい。しかしながら、信号TR及び/TRがランダム信号の場合でも、n個のADC21-1~21-nからそれぞれ出力される値X0_1~X0_nの平均値は、0からずれ得る。また、n個のADC21-1~21-nからそれぞれ出力される値X0_1~X0_nの平均値は、互いに異なり得る。このような平均値の微少なずれは、オフセットとも称される。このため、後続するDSP30では、値X0_1~X0_nに生じるオフセットの差の調整が実行される。
【0029】
1.1.4 デジタル処理回路
次に、第1実施形態に係る受信回路に含まれるデジタル処理回路(DSP)の内部構成について説明する。
図4は、第1実施形態に係る受信回路に含まれるデジタル処理回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
DSP30は、オフセット校正回路31、オフセット調整回路32、FFE33、データ判定回路34、FFE35、DFE36、及びデータ判定回路37を含む。
【0031】
オフセット校正回路31には、TI-ADC20から信号X0が入力される。また、オフセット校正回路31には、オフセット調整回路32からオフセット校正用コードCosが入力される。オフセット校正用コードCosは、1周期分の信号X0に含まれるn個のデジタル値にそれぞれ対応するn個のデジタル値(コード)の集合である。オフセット校正回路31は、オフセット校正用コードCosを用いて、1周期分の信号X0に含まれるn個のデジタル値毎に、オフセットの校正動作を実行する。オフセット校正回路31は、オフセット校正動作の結果として、オフセット校正用コードCosに応じて信号X0のオフセットが校正された信号X0’を生成する。例えば、オフセット校正回路31は、1周期分の信号X0に含まれるn個のデジタル値に、オフセット校正用コードCosに含まれるn個のコードをそれぞれ加算することによって、信号X0’を生成する。つまり、信号X0’は、信号X0と同様、デジタル信号である。1周期分の信号X0’は、n個のデジタル値の集合である。オフセット校正回路31は、信号X0’をオフセット調整回路32に出力する。信号X0’は、更にFFE33にも出力される。
【0032】
オフセット調整回路32には、オフセット校正回路31から信号X0’が入力される。また、オフセット調整回路32には、CNT50から信号MODEが入力される。オフセット調整回路32は、信号X0’に基づいて、オフセット校正用コードCosを生成する。オフセット調整回路32によって生成されたオフセット校正用コードCosは、オフセット校正回路31に出力される。
【0033】
オフセット調整回路32によるオフセット校正用コードCosの更新の有無は、信号MODEによって制御される。オフセット校正用コードCosを更新する場合、オフセット調整回路32は、例えば、2種類のオフセット更新動作を実行する。2種類のオフセット更新動作の切り替えは、信号MODEによって更に制御される。
【0034】
1種類目のオフセット更新動作は、n個のADC21-1~21-nからそれぞれ出力される値X0_1~X0_nに、個別のオフセットが生じる場合を想定する。この場合、オフセット調整回路32は、値X0_1~X0_n間のオフセットの差が無くなる(0となる)ように、オフセット校正用コードCosを更新する。具体的には、オフセット調整回路32は、値X0_1~X0_nのうちの1個の値に生じるオフセットを基準オフセットとする。そして、オフセット調整回路32は、他の(n-1)個の値に生じるオフセット(参照オフセット)を基準オフセットに揃える。以下では、1種類目のオフセット更新動作は、個別調整動作とも呼ぶ。すなわち、個別調整動作では、n個のADC21-1~21-nの各々に独立に生じるオフセットが無くなるように、オフセット校正用コードCosが更新される。なお、値X0_1~X0_nのうちのどの値に生じるオフセットを基準オフセットとするかは、任意に選択することができる。
【0035】
2種類目のオフセット更新動作は、n個のADC21-1~21-nからそれぞれ出力される信号X0_1~X0_nに、同一のオフセット(共通オフセット)が生じる場合を想定する。この場合、オフセット調整回路32は、信号X0_1~X0_nに共通して生じる共通オフセットが無くなる(0となる)ように、オフセット校正用コードCosを更新する。以下では、2種類目のオフセット更新動作は、同相調整動作とも呼ぶ。すなわち、同相調整動作では、例えば、AFE10内のCTLE及びVGA等の特性の変化によってn個のADC21-1~21-nに共通に生じるオフセットが無くなるように、オフセット校正用コードCosが更新される。
【0036】
FFE33には、信号X0’が入力される。FFE33は、1周期分の信号X0’に含まれるn個のデジタル値毎に、演算対象のデジタル値、及び演算対象のデジタル値の前後数シンボル分のデジタル値を用いた演算処理を実行する。FFE33は、演算処理の結果として、信号X1を生成する。つまり、信号X1は、信号X0及びX0’と同様、デジタル信号である。1周期分の信号X1は、n個のデジタル値の集合である。FFE33は、信号X1をデータ判定回路34及びFFE35に出力する。信号X1は、更にCDR40にも出力される。
【0037】
データ判定回路34には、信号X1が入力される。データ判定回路34は、信号X1に基づいて、送信装置2によって符号化されたデータをデータA1として判定する。具体的には、送信装置2が送信する信号TR及び/TRにPAM4が適用される場合、データ判定回路34は、1周期分の信号X1に含まれるn個のデジタル値毎に、2ビットのデータを判定する。すなわち、データA1は、1周期分の信号X1に含まれるn個のデジタル値毎に、2ビットのデータを有する。データ判定回路34は、データA1をCDR40に出力する。
【0038】
FFE35には、信号X1が入力される。なお、FFE35には、データ判定回路34及びCDR40に入力される信号X1とは異なる信号X1’(図示せず)が入力されてもよい。この場合、FFE35に入力される信号X1’は、信号X1に基づいて生成される。FFE35は、1周期分の信号X1に含まれるn個のデジタル値毎に、演算対象のデジタル値、及び演算対象のデジタル値の前後数シンボル分のデジタル値を用いた演算処理を実行する。FFE35による演算処理は、FFE33による演算処理とは異なり得る。FFE35は、演算処理の結果として、信号X2を生成する。つまり、信号X2は、信号X0、X0’、及びX1と同様、デジタル信号である。1周期分の信号X2は、n個のデジタル値の集合である。FFE35は、信号X2をDFE36に出力する。
【0039】
DFE36には、信号X2が入力される。DFE36は、1周期分の信号X2に含まれるn個のデジタル値毎に、演算対象のデジタル値、及び演算対象のデジタル値の前後数シンボル分のデジタル値に基づく演算処理を実行する。DFE36は、演算処理の結果として、信号Xfを生成して出力する。つまり、信号Xfは、信号X0、X0’、X1、及びX2と同様、デジタル信号である。1周期分の信号Xfは、n個のデジタル値の集合である。DFE36が生成した信号Xfは、データ判定回路37、及び後続する回路に出力される。
【0040】
データ判定回路37には、信号Xfが入力される。データ判定回路37は、信号Xfに基づいて、送信装置2によって符号化されたデータをデータAfとして判定する。具体的には、送信装置2が送信する信号TR及び/TRにPAM4が適用される場合、データ判定回路37は、1周期分の信号Xfに含まれるn個のデジタル値毎に、2ビットのデータを判定する。データ判定回路37が判定したデータAfは、後続する回路に出力される。
【0041】
1.1.5 オフセット調整回路
次に、第1実施形態に係る受信回路に含まれるオフセット調整回路の内部構成について説明する。
図5は、第1実施形態に係る受信回路に含まれるオフセット調整回路の構成の一例を示すブロック図である。
図5では、信号X0’のうち値X0_1~X0_nに対応する値はそれぞれ、値X0’_1~X0’_nのように示される。また、オフセット校正用コードCosのうち値X0’_1~X0’_nに適用されるコードはそれぞれ、コードCos_1~Cos_nのように示される。また、
図5では、値X0_1に生じるオフセットを基準オフセットとする場合が一例として示される。
【0042】
オフセット調整回路32は、基準用個別調整回路61-1、(n-1)個の参照用個別調整回路61-2、61-3、…、及び61-n、同相調整回路62、並びにn個の加算回路63-1、63-2、63-3、…、及び63-nを含む。
【0043】
基準用個別調整回路61-1には、値X0’_1が入力される。基準用個別調整回路61-1には、信号MODEが更に入力される。基準用個別調整回路61-1は、個別コードCid_1を出力する。個別コードCid_1は、値X0_1に個別に生じるオフセット(すなわち、基準オフセット)に対応する。信号MODEは、基準用個別調整回路61-1による個別コードCid_1の更新動作を実行するか否かを切り替える信号を含む。
【0044】
参照用個別調整回路61-2~61-nにはそれぞれ、値X0’_2~X0’_nが入力される。参照用個別調整回路61-2~61-nの各々には、値X0‘_1及び信号MODEが更に入力される。参照用個別調整回路61-2~61-nはそれぞれ、個別コードCid_2~Cid_nを出力する。個別コードCid_2~Cid_nはそれぞれ、値X0_2~X0_nに個別に生じるオフセット(すなわち、参照オフセット)に対応する。信号MODEは、参照用個別調整回路61-2~61-nによる個別コードCid_2~Cid_nの更新動作を実行するか否かを切り替える信号を含む。
【0045】
同相調整回路62には、値X0’_1~X0’_nが入力される。同相調整回路62には、信号MODEが更に入力される。同相調整回路62は、共通コードCcmを出力する。共通コードCcmは、値X0_1~X0_nに共通して生じるオフセット(すなわち、共通オフセット)に対応する。信号MODEは、同相調整回路62による共通コードCcmの更新動作を実行するか否かを切り替える信号を含む。
【0046】
加算回路63-1~63-nにはそれぞれ、個別コードCid_1~Cid_nが入力される。加算回路63-1~63-nの各々には、共通コードCcmが更に入力される。加算回路63-1~63-nはそれぞれ、個別コードCid_1~Cid_nと、共通コードCcmとの和を、コードCos_1~Cos_nとして出力する。
【0047】
1.1.6 基準用個別調整回路
次に、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる基準用個別調整回路の内部構成について説明する。
図6は、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる基準用個別調整回路の構成の一例を示すブロック図である。基準用個別調整回路61-1は、加算回路71、遅延回路72、及びスイッチ73を含む。
【0048】
加算回路71には、値X0’_1及び遅延回路72の出力値が入力される。加算回路71は、遅延回路72の出力値から、値X0’_1を減算した値を出力する。
【0049】
遅延回路72には、加算回路71からの出力値が入力される。遅延回路72は、加算回路71の出力値を、例えば1周期遅延させて出力する。
【0050】
スイッチ73は、例えば、マルチプレクサやトランジスタで構成される回路である。スイッチ73は、第1入力端73-1、第2入力端73-2、及び出力端73-3を含む。スイッチ73は、信号MODEに応じて、出力端73-3との接続を、第1入力端73-1及び第2入力端73-2のいずれか一方に切り替えるように構成される。スイッチ73の第1入力端73-1には、遅延回路72の出力値が入力される。スイッチ73の第2入力端73-2には、固定コードCid_fix_1が入力される。固定コードCid_fix_1には、個別調整動作によって算出された個別コードCid_1が適用される。スイッチ73の第1入力端73-1と出力端73-3とが接続されている状態(
図6で示される状態)は、個別調整動作を実行中の状態に対応する。スイッチ73の第2入力端73-2と出力端73-3とが接続されている状態は、同相調整動作を実行中の状態、又はオフセット校正用コードCos_1の更新を行っていない状態に対応する。スイッチ73の出力端73-3からの出力値は、個別コードCid_1として、オフセット調整回路32の加算回路63-1に出力される。すなわち、個別コードCid_1は、個別調整動作を実行する場合には、値X0’_1に基づいて更新される。そして、個別コードCid_1は、同相調整動作を実行する場合、又はオフセット校正用コードCos_1の更新を行わない場合には、固定コードCid_fix_1に固定される。
【0051】
1.1.7 参照用個別調整回路
次に、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる参照用個別調整回路の内部構成について説明する。
図7は、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる参照用個別調整回路の構成の一例を示すブロック図である。
【0052】
なお、(n-1)個の参照用個別調整回路61-2~61-nは、同等の構成を有する。このため、
図7では、(n-1)個の参照用個別調整回路61-2~61-nのうちの任意の1個の参照用個別調整回路61-kの構成が一例として示される(2≦k≦n)。参照用個別調整回路61-kは、加算回路81、遅延回路82、及びスイッチ83を含む。
【0053】
加算回路81には、値X0’_1及びX0’_k、並びに遅延回路82の出力値が入力される。加算回路81は、遅延回路82の出力値及び値X0’_1の和から、値X0’_kを減算した値を出力する。
【0054】
遅延回路82には、加算回路81からの出力値が入力される。遅延回路82は、加算回路81の出力値を、例えば1周期遅延させて出力する。
【0055】
スイッチ83は、例えば、マルチプレクサやトランジスタで構成される回路である。スイッチ83は、第1入力端83-1、第2入力端83-2、及び出力端83-3を含む。スイッチ83は、信号MODEに応じて、出力端83-3との接続を、第1入力端83-1及び第2入力端83-2のいずれか一方に切り替えるように構成される。スイッチ83の第1入力端83-1には、遅延回路82の出力値が入力される。スイッチ83の第2入力端83-2には、固定コードCid_fix_kが入力される。固定コードCid_fix_kには、個別調整動作によって算出された個別コードCid_kが適用される。スイッチ83の第1入力端83-1と出力端83-3とが接続されている状態(
図7で示される状態)は、個別調整動作を実行中の状態に対応する。スイッチ83の第2入力端83-2と出力端83-3とが接続されている状態は、同相調整動作を実行中の状態、又はオフセット校正用コードCos_kの更新を行っていない状態に対応する。スイッチ83の出力端83-3からの出力値は、個別コードCid_kとして、オフセット調整回路32の加算回路63-kに出力される。すなわち、個別コードCid_kは、個別調整動作を実行する場合には、値X0’_1及びX0’_kに基づいて更新される。そして、個別コードCid_kは、同相調整動作を実行する場合、又はオフセット校正用コードCos_kの更新を行わない場合には、固定コードCid_fix_kに固定される。
【0056】
1.1.8 同相調整回路
次に、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる同相調整回路の内部構成について説明する。
図8は、第1実施形態に係るオフセット調整回路に含まれる同相調整回路の構成の一例を示すブロック図である。同相調整回路62は、加算回路91、遅延回路92、及びスイッチ93を含む。
【0057】
加算回路91には、値X0’_1~X0’_n、並びに遅延回路92の出力値が入力される。加算回路91は、遅延回路92の出力値から、値X0’_1~X0’_nの和を減算した値を出力する。
【0058】
遅延回路92には、加算回路91からの出力値が入力される。遅延回路92は、加算回路91の出力値を、例えば1周期遅延させて出力する。
【0059】
スイッチ93は、例えば、マルチプレクサやトランジスタで構成される回路である。スイッチ93は、第1入力端93-1、第2入力端93-2、及び出力端93-3を含む。スイッチ93は、信号MODEに応じて、出力端93-3との接続を、第1入力端93-1及び第2入力端93-2のいずれか一方に切り替えるように構成される。スイッチ93の第1入力端93-1には、遅延回路92の出力値が入力される。スイッチ93の第2入力端93-2には、固定コードCcm_fixが入力される。固定コードCcm_fixには、初期値(例えば、0)が適用される。スイッチ93の第1入力端93-1と出力端93-3とが接続されている状態(
図8で示される状態)は、同相調整動作を実行中の状態に対応する。スイッチ93の第2入力端93-2と出力端93-3とが接続されている状態は、個別調整動作を実行中の状態、又はオフセット校正用コードCosの更新を行っていない状態に対応する。スイッチ93の出力端93-3からの出力値は、共通コードCcmとして、オフセット調整回路32の加算回路63-1~63-nの各々に出力される。すなわち、共通コードCcmは、同相調整動作を実行する場合には、値X0’_1~X0’_nに基づいて更新される。そして、共通コードCcmは、個別調整動作を実行する場合、又はオフセット校正用コードCosの更新を行わない場合には、固定コードCcm_fixに固定される。
【0060】
1.2 動作
次に、第1実施形態に係る受信装置の動作について説明する。
【0061】
1.2.1 個別調整動作
まず、第1実施形態に係る受信装置における個別調整動作について説明する。
図9は、第1実施形態に係る受信装置における個別調整動作を含むランダム信号受信動作の一例を示すフローチャートである。個別調整動作は、ランダム信号受信動作時に実行される。ランダム信号受信動作とは、データ信号受信動作の前に、ランダム信号を受信する動作を示す。ランダム信号は、平均値が0となることが保証されるパターン長を有する乱数列が重畳された信号である。具体的には、例えば、ランダム信号は、PRBS(Pseudo Random Binary Sequence)である。ランダム信号は、PRQS(Pseudo Random Quaternary Sequence)であってもよい。ランダム信号には、データ信号とは異なり、受信装置4に送信される予定のデータは重畳されていない。
【0062】
ランダム信号受信動作を開始すると(開始)、受信装置4のCNT50は、オフセット調整回路32を、固定コードCcm_fixを共通コードCcmに適用しつつ、個別コードCid_1~Cid_nを更新する状態にする(S11)。具体的には、CNT50は、信号MODEを用いて、基準用個別調整回路61-1内のスイッチ73の第1入力端73-1と出力端73-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、参照用個別調整回路61-k内のスイッチ83の第1入力端83-1と出力端83-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、同相調整回路62内のスイッチ93の第2入力端93-2と出力端93-3とを接続する。これにより、オフセット調整回路32から出力されるコードCos_1~Cos_nはそれぞれ、固定コードCcm_fixと、個別コードCid_1~Cid_nとの和となる。
【0063】
S11の処理の後、受信装置4は、ランダム信号を受信する(S12)。
【0064】
オフセット校正回路31は、固定コードCcm_fix及び個別コードCid_1~Cid_nによって算出されるコードCos_1~Cos_nに基づき、信号X0_1~X0_nのオフセットをそれぞれ校正する(S13)。具体的には、オフセット校正回路31は、信号X0_1~X0_nに、コードCos_1~Cos_nをそれぞれ加算することにより、信号X0’_1~X0’_nを生成する。
【0065】
オフセット調整回路32は、S13の処理で生成された信号X0’_1~X0’_nに基づき、個別コードCid_1~Cid_nを更新する(S14)。具体的には、基準用個別調整回路61-1は、信号X0’_1に基づき、個別コードCid_1を更新する。参照用個別調整回路61-kは、信号X0’_1及びX0’-kに基づき、個別コードCid_kを更新する。
【0066】
受信装置4は、ランダム信号が終了したか否かを判定する(S15)。
【0067】
ランダム信号が終了していない場合(S15;no)、受信装置4は、ランダム信号の受信を継続する(S12)。そして、後続するS13~S15の処理が実行される。このように、ランダム信号が終了するまで、S12~S15の処理が繰り返される。
【0068】
ランダム信号が終了した場合(S15;yes)、CNT50は、S14の処理で更新された個別コードCid_1~Cid_nを固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nとして記憶する(S16)。
【0069】
S16の処理の後、個別調整動作を含むランダム信号受信動作は終了となる(終了)。
【0070】
1.2.2 同相調整動作
次に、第1実施形態に係る受信装置における同相調整動作について説明する。
図10は、第1実施形態に係る受信装置における同相調整動作を含むデータ信号受信動作の一例を示すフローチャートである。同相調整動作は、データ信号受信動作時に実行される。すなわち、同相調整動作は、個別調整動作の後に実行される。
【0071】
データ信号受信動作を開始すると(開始)、受信装置4のCNT50は、オフセット調整回路32を、固定コードCcm_fixを共通コードCcmに適用しつつ、固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nを個別コードCid_1~Cid_nに適用する状態にする(S21)。具体的には、CNT50は、信号MODEを用いて、基準用個別調整回路61-1内のスイッチ73の第2入力端73-2と出力端73-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、参照用個別調整回路61-k内のスイッチ83の第2入力端83-2と出力端83-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、同相調整回路62内のスイッチ93の第2入力端93-2と出力端93-3とを接続する。これにより、オフセット調整回路32から出力されるコードCos_1~Cos_nはそれぞれ、固定コードCcm_fixと、固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nとの和となる。すなわち、オフセット調整回路32は、オフセット校正用コードCosの更新を行わない状態になる。
【0072】
S21の処理の後、受信装置4は、データ信号を受信する(S22)。
【0073】
オフセット校正回路31は、コードCos_1~Cos_nに基づき、信号X0_1~X0_nのオフセットをそれぞれ校正する(S23)。具体的には、オフセット校正回路31は、信号X0_1~X0_nに、コードCos_1~Cos_nをそれぞれ加算することにより、信号X0’_1~X0’_nを生成する。
【0074】
CNT50は、共通コードCcmを調整するか否かを判定する(S24)。例えば、AFE10内のCTLE及びVGAの特性がランダム信号受信動作時における特性から変化したことを検知した場合、CNT50は、共通コードCcmを調整すると判定する。また、例えば、AFE10内のCTLE及びVGAの特性がランダム信号受信動作時における特性から変化していないことを検知した場合、CNT50は、共通コードCcmを調整しないと判定する。なお、データ信号受信動作時は常に共通コードCcmを調整するとしてもよい。
【0075】
共通コードCcmを調整すると判定した場合(S24;yes)、CNT50は、オフセット調整回路32を、固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nを個別コードCid_1~Cid_nに適用しつつ、共通コードCcmを更新する状態にする(S25)。具体的には、CNT50は、信号MODEを用いて、基準用個別調整回路61-1内のスイッチ73の第2入力端73-2と出力端73-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、参照用個別調整回路61-k内のスイッチ83の第2入力端83-2と出力端83-3とを接続する。CNT50は、信号MODEを用いて、同相調整回路62内のスイッチ93の第1入力端93-1と出力端93-3とを接続する。これにより、オフセット調整回路32から出力されるコードCos_1~Cos_nはそれぞれ、固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nと、共通コードCcmとの和となる。
【0076】
オフセット調整回路32は、S23の処理で生成された信号X0’_1~X0’_nに基づき、共通コードCcmを更新する(S26)。具体的には、同相調整回路62は、信号X0_1~X0_nのオフセットが校正された信号である信号X0’_1~X0’_nに基づき、共通コードCcmを更新する。
【0077】
受信装置4は、データ信号が終了したか否かを判定する(S27)。
【0078】
データ信号が終了していない場合(S27;no)、受信装置4は、データ信号の受信を継続する(S22)。そして、後続するS23~S27の処理が実行される。このように、データ信号が終了するまで、S22~S27の処理が繰り返される。
【0079】
データ信号が終了した場合(S27;yes)、CNT50は、S26の処理で更新された共通コードCcmを固定コードCcm_fixとして記憶する(S28)。
【0080】
S28の処理の後、同相調整動作を含むデータ信号受信動作は終了となる(終了)。
【0081】
1.3 第1実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、個別調整動作において、基準用個別調整回路61-1は、値X0’_1に基づき、個別コードCid_1を算出する。参照用個別調整回路61-kは、値X0’_1及びX0’_kの差に基づき、個別コードCid_kを算出する。これにより、オフセット校正回路31は、ADC21_1~21_nにそれぞれ起因して値X0_1~X0_nに個別に生じるオフセットを、個別コードCid_1~Cid_nによって校正することができる。このため、値X0’_1~X0’_n間で互いに異なるオフセットが生じることを抑制できる。したがって、受信特性の劣化を抑制できる。
【0082】
また、同相調整動作において、同相調整回路62は、値X0’_1~X0’_nの和に基づき、共通コードCcmを算出する。これにより、オフセット校正回路31は、例えば、AFE10内のCTLE及びVGA等のように、TI-ADC20の前段の回路の特性の変化に応じて値X0_1~X0_nに共通に生じるオフセットを、共通コードCcmによって校正することができる。このため、値X0’_1~X0’_nに共通してオフセットが生じることを抑制できる。したがって、受信特性の劣化を抑制できる。
【0083】
また、個別調整動作は、ランダム信号の受信時に実行される。これにより、受信信号に起因して生じるオフセットが生じないようにすることができる。このため、個別調整動作で、ADC21_1~21_nにそれぞれ起因して値X0_1~X0_nに個別に生じるオフセットを、精度よく校正することができる。
【0084】
また、同相調整動作は、データ信号の受信時に実行される。これにより、実運用の際の特性変化にオフセット校正用コードCosを追従させることができる。
【0085】
また、個別調整動作は、共通コードCcmに固定コードCcm_fixを適用した状態で実行される。同相調整動作は、個別調整動作によって算出された個別コードCid_1~Cid_nを固定コードCid_fix_1~Cid_fix_nとして適用した状態で実行される。これにより、値X0_1~X0_nに共通に生じるオフセットと、値X0_1~X0_nに個別に生じるオフセットと、を個別に算出することができる。
【0086】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ランダム信号のパターン長が受信装置からの情報に基づいて決定される点において、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第1実施形態と同等の構成及び動作については、説明を適宜省略する。
【0087】
2.1 送信装置
図11は、第2実施形態に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図である。送信装置2は、受信回路101、選択回路102、及び送信回路103を含む。また、送信装置2は、乱数表104を記憶する。
【0088】
受信回路101は、受信装置4からの情報を受信する。具体的には、受信回路101は、受信装置4から、TI-ADC20に含まれる複数のADC21の数(ADC数)を受信する。なお、受信回路101と受信装置4との間の通信は、伝送路3を介した高速シリアル通信でなくてもよい。
【0089】
選択回路102は、乱数表104を参照し、ADC数nと、ランダム信号受信動作で用いられるランダム信号の候補のパターン長と、の最大公約数を算出する。選択回路102は、算出された最大公約数が1となる(すなわち、ADC数nと互いに素なパターン長を有するランダム信号)をランダム信号受信動作で用いられるランダム信号として選択する。
【0090】
送信回路103は、ランダム信号受信動作において、選択回路102によって選択されたパターン長を有するランダム信号を受信装置4に送信する。送信回路103と受信装置4との間の通信は、伝送路3を介した高速シリアル通信である。
【0091】
図12は、第2実施形態に係る送信装置に記憶される乱数表のデータ構造の一例を示す図である。乱数表104には、受信装置4における個別調整動作に用いられる可能性があるランダム信号と、当該ランダム信号に対応するパターン長とが対応づけて記憶される。乱数表104に記憶されるパターン長は、対応するランダム信号の平均値が0となることが担保される乱数列の長さに対応する。
【0092】
図12の例では、例えば、ランダム信号PRBS7、…、PRBS15、…、及びPRBS31のパターン長がそれぞれ、127、…、32767、…、及び2147483647であることが示される。なお、乱数表104には、ランダム信号にPRQSが適用される場合が記憶されていてもよい。この場合、ランダム信号PRQS(N)のパターン長は、PRBS(2N)と等しくなる(Nは、自然数)。
【0093】
乱数表104を参照することにより、選択回路102は、どの長さのパターン長を有するランダム信号を個別調整動作に用いるかを決定することができる。
【0094】
2.2 ランダム信号送信動作
図13は、第2実施形態に係る送信装置におけるランダム信号送信動作の一例を示すフローチャートである。
【0095】
ランダム信号送信動作を開始すると(開始)、送信装置2の受信回路101は、受信装置4からADC数nを受信する(S31)。
【0096】
送信装置2の選択回路102は、個別調整動作に用いるランダム信号の候補として、乱数表104からランダム信号を選択する(S32)。
【0097】
選択回路102は、S31の処理で受信されたADC数nと、S32の処理で選択されたランダム信号のパターン長とが互いに素であるか否かを判定する(S33)。
【0098】
ADC数nとランダム信号のパターン長とが互いに素である場合(S33;yes)、選択回路102は、S32の処理で選択されたランダム信号を、個別調整動作に用いることができるランダム信号であると判定する。そして、送信回路103は、S32の処理で選択されたランダム信号を、伝送路3を介して受信装置4に送信する(S34)。
【0099】
ADC数nとランダム信号のパターン長とが互いに素でない場合(S33;no)、選択回路102は、S32の処理で選択されたランダム信号を、個別調整動作に用いることができないランダム信号であると判定する。そして、S33の処理で“no”と判定された場合、又はS34の処理の後、送信装置2は、ランダム信号の送信が終了したか否かを判定する(S35)。なお、S33の処理で“no”と判定された場合、送信装置2は、S35の処理を実行せず、S32の処理を実行してもよい。
【0100】
ランダム信号の送信が終了していない場合(S35;no)、選択回路102は、個別調整動作に用いるランダム信号の候補として、乱数表104から未選択のランダム信号を選択する(S32)。そして、後続するS33~S35の処理が実行される。このように、ランダム信号の送信が終了するまで、S32~S35の処理が実行される。
【0101】
ランダム信号の送信が終了している場合(S35;yes)、ランダム信号送信動作は終了となる(終了)。
【0102】
2.3 第2実施形態に係る効果
ランダム信号のパターン長とADC数nとが互いに素でない場合、ADC21-1~21-nの各々は、ランダム信号において平均値が0となることが保証されているパターンの一部しか受信できない。これにより、ランダム信号自体の平均値は0であるが、値X0’_1~X0’_nの各々の平均値が0となることが保証されない場合がある。このような信号に対して個別調整動作を実行すると、ADC21_1~21_n間の特性差に起因するオフセットと、信号に起因するオフセットとを切り分けることができない。このため、個別コードCid_1~Cid_nの精度が劣化する可能性があり、好ましくない。
【0103】
第2実施形態によれば、送信装置2の受信回路101は、受信装置4からADC数nを受信する。選択回路102は、ADC数nと、個別調整動作で用いるランダム信号のパターン長とが互いに素となるように、ランダム信号を選択する。これにより、ADC21-1~21-nの各々は、ランダム信号において平均値が0となることが保証されているパターンの全てを受信することができる。このため、値X0’_1~X0’_nの各々の平均値が0となることが保証された状態で、個別調整動作を実行できる。したがって、個別調整動作で算出される個別コードCid_1~Cid_nの精度の劣化を抑制することができる。
【0104】
2.4 第2実施形態の変形例
上述の第2実施形態では、個別調整動作に用いられるランダム信号がADC数nに基づいて決定される場合について説明したが、これに限られない。例えば、個別調整動作に用いられるランダム信号は、受信装置4から送信される素数リストに基づいて決定されてもよい。以下では、第2実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第2実施形態と同等の構成及び動作については、説明を適宜省略する。
【0105】
2.4.1 送信装置
図14は、第2実施形態の変形例に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図14は、第2実施形態における
図11に対応する。送信装置2Aは、受信回路101A、選択回路102A、及び送信回路103を含む。また、送信装置2Aは、乱数表104Aを記憶する。
【0106】
受信回路101Aは、受信装置4からの情報を受信する。具体的には、受信回路101Aは、受信装置4から、ADC数nに関する素数リストを受信する。ADC数nに関する素数リストには、ADC数nの素因数のうち、2以外の素数が含まれる。例えば、ADC数nが30=2×3×5の場合、受信回路101Aは、ADC数nに関する素数リストとして、{3,5}を受信する。
【0107】
選択回路102Aは、乱数表104Aを参照して、ADC数nに関する素数リストと、ランダム信号受信動作で用いられるランダム信号の候補のパターン長に関する素数リストとを比較する。選択回路102Aは、比較の結果、ADC数nに関する素数リスト内に、パターン長に関する素数リスト内の素数と一致する素数がない場合、当該ランダム信号の候補を、ランダム信号受信動作で用いられるランダム信号として選択する。
【0108】
送信回路103は、ランダム信号受信動作において、選択回路102Aによって選択されたパターン長を有するランダム信号を受信装置4に送信する。
【0109】
図15は、第2実施形態の変形例に係る送信装置に記憶される乱数表のデータ構造の一例を示す図である。乱数表104Aには、受信装置4における個別調整動作に用いられる可能性があるランダム信号と、当該ランダム信号に対応するパターン長に関する素数リストと、が対応づけて記憶される。パターン長に関する素数リストには、パターン長の素因数のうち、2以外の素数が含まれる。
【0110】
図15の例では、例えば、ランダム信号PRBS7のパターン長に関する素数リストが{127}であることが示される。ランダム信号PRBS15のパターン長に関する素数リストが{7,31,151}であることが示される。ランダム信号PRBS31のパターン長に関する素数リストが{2147483647}であることが示される。なお、乱数表104Aには、ランダム信号にPRQSが適用される場合が記憶されていてもよい。
【0111】
乱数表104Aを参照することにより、選択回路102Aは、どの長さのパターン長を有するランダム信号を個別調整動作に用いるかを決定することができる。
【0112】
2.4.2 ランダム信号送信動作
図16は、第2実施形態に係る送信装置におけるランダム信号送信動作の一例を示すフローチャートである。
【0113】
ランダム信号送信動作を開始すると(開始)、送信装置2Aの受信回路101Aは、受信装置4からADC数nに関する素数リストを受信する(S41)。
【0114】
送信装置2Aの選択回路102Aは、個別調整動作に用いるランダム信号の候補として、乱数表104Aからランダム信号を選択する(S42)。
【0115】
選択回路102Aは、S41の処理で受信されたADC数nに関する素数リスト内に、S42の処理で選択されたランダム信号のパターン長に関する素数リスト内の素数と一致する素数があるか否かを判定する(S43)。
【0116】
ADC数nに関する素数リスト内に、ランダム信号のパターン長に関する素数リスト内の素数と一致する素数がない場合(S43;no)、選択回路102Aは、S42の処理で選択されたランダム信号を、個別調整動作に用いることができるランダム信号であると判定する。そして、送信回路103は、S42の処理で選択されたランダム信号を、伝送路3を介して受信装置4に送信する(S44)。
【0117】
ADC数nに関する素数リスト内に、ランダム信号のパターン長に関する素数リスト内の素数と一致する素数がある場合(S43;yes)、選択回路102Aは、S42の処理で選択されたランダム信号を、個別調整動作に用いることができないランダム信号であると判定する。そして、S43の処理で“yes”と判定された場合、又はS44の処理の後、送信装置2Aは、ランダム信号の送信が終了したか否かを判定する(S45)。なお、S43の処理で“no”と判定された場合、送信装置2Aは、S45の処理を実行せず、S42の処理を実行してもよい。
【0118】
ランダム信号の送信が終了していない場合(S45;no)、選択回路102Aは、個別調整動作に用いるランダム信号の候補として、乱数表104Aから未選択のランダム信号を選択する(S42)。そして、後続するS43~S45の処理が実行される。このように、ランダム信号の送信が終了するまで、S42~S45の処理が実行される。
【0119】
ランダム信号の送信が終了している場合(S45;yes)、ランダム信号送信動作は終了となる(終了)。
【0120】
2.4.3 第2実施形態の変形例に係る効果
第2実施形態の変形例によれば、送信装置2Aの受信回路101Aは、受信装置4からADC数nに関する素数リストを受信する。選択回路102Aは、ADC数nに関する素数リスト内に、個別調整動作で用いるランダム信号のパターン長に関する素数リスト内の素数と一致する素数がないように、ランダム信号を選択する。これにより、ADC21-1~21-nの各々は、ランダム信号において平均値が0となることが保証されているパターンの全てを受信することができる。このため、値X0’_1~X0’_nの各々の平均値が0となることが保証された状態で、個別調整動作を実行できる。したがって、第2実施形態と同様に、個別調整動作で算出される個別コードCid_1~Cid_nの精度の劣化を抑制することができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1…送受信システム
2…送信装置
3…伝送路
4…受信装置
10…AFE
20…TI-ADC
30…DSP
31…オフセット校正回路
32…オフセット調整回路
33,35…FFE
34,37…データ判定回路
36…DFE
40…CDR
50…CNT
61-1…基準用個別調整回路
61-2,…,61-n…参照用個別調整回路
62…同相調整回路
63-1,…,63-n,71,81,91…加算回路
72,82,92…遅延回路
73,83,93…スイッチ
101,101A…受信回路
102,102A…選択回路
103…送信回路
104,104A…乱数表