(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134344
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 99/00 20230101AFI20240926BHJP
【FI】
H10B99/00 441
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044601
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 玲華
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 究
(72)【発明者】
【氏名】吉村 瑶子
(72)【発明者】
【氏名】浜井 貴将
(72)【発明者】
【氏名】太田 健介
(72)【発明者】
【氏名】東 悠介
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正道
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA12
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA60
(57)【要約】
【課題】 優れた不揮発性記憶特性を有する記憶装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る記憶装置は、キャパシタ10に電荷が蓄えられた第1の状態と、キャパシタから電荷が消去された第2の状態とに基づいてデータを記憶する記憶装置であって、キャパシタは、第1の電極11と、第2の電極12と、第1の電極と第2の電極との間に設けられ、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)とを含有する第1の誘電体層13と、第1の電極と第1の誘電体層との間に設けられた第2の誘電体層14と、第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に設けられ、金属元素を含有する複数の部分が離散的に設けられた中間領域15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタに電荷が蓄えられた第1の状態と、前記キャパシタから電荷が消去された第2の状態とに基づいてデータを記憶する記憶装置であって、
前記キャパシタは、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)とを含有する第1の誘電体層と、
前記第1の電極と前記第1の誘電体層との間に設けられた第2の誘電体層と、
前記第1の誘電体層と前記第2の誘電体層との間に設けられ、金属元素を含有する複数の部分が離散的に設けられた中間領域と、
を備える
記憶装置。
【請求項2】
キャパシタに電荷が蓄えられた第1の状態と、前記キャパシタから電荷が消去された第2の状態とに基づいてデータを記憶する記憶装置であって、
前記キャパシタは、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)とを含有する第1の誘電体層と、
前記第1の電極と前記第1の誘電体層との間に設けられた第2の誘電体層と、
前記第1の誘電体層と前記第2の誘電体層との間に設けられ、金属元素を含有する中間領域と、
を備え、
前記キャパシタに前記第1の状態を設定するときには、前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位よりも高い第1の電圧が前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加され、
前記キャパシタに前記第2の状態を設定するときには、前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位よりも低い第2の電圧が前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加され、
前記第1の電圧の絶対値は、前記第2の電圧の絶対値よりも大きい
記憶装置。
【請求項3】
前記中間領域は、前記金属元素としてチタン(Ti)を含有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記中間領域は、窒素(N)をさらに含有する
請求項3に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記第1の誘電体層は、反強誘電性を有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項6】
前記第1の誘電体層は、前記第2の誘電体層よりも高い比誘電率を有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記第1の誘電体層は、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)の少なくとも一方をさらに含有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項8】
前記第1の誘電体層は、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)のいずれも含有し、前記第1の誘電体層中のジルコニウム(Zr)の濃度は、前記第1の誘電体層中のハフニウム(Hf)の濃度よりも高い
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項9】
前記第2の誘電体層は、シリコン(Si)及び酸素(O)を含有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項10】
前記第2の誘電体層は、4nm以下の厚さを有する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【請求項11】
前記第1の誘電体層に含有された前記金属元素の濃度は、前記中間領域から遠ざかるにしたがって減少し、
前記第2の誘電体層に含有された前記金属元素の濃度は、前記中間領域から遠ざかるにしたがって減少する
請求項1又は2に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反強誘電性を有する誘電体層を含むキャパシタを記憶素子として用いた記憶装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0352187号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れた不揮発性記憶特性を有する記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る記憶装置は、キャパシタに電荷が蓄えられた第1の状態と、前記キャパシタから電荷が消去された第2の状態とに基づいてデータを記憶する記憶装置であって、前記キャパシタは、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)とを含有する第1の誘電体層と、前記第1の電極と前記第1の誘電体層との間に設けられた第2の誘電体層と、前記第1の誘電体層と前記第2の誘電体層との間に設けられ、金属元素を含有する複数の部分が離散的に設けられた中間領域と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る記憶装置のキャパシタの構成を模式的に示した断面図である。
【
図2】実施形態に係る記憶装置のキャパシタの中間領域の構成を模式的に示した平面図である。
【
図3】実施形態に係る記憶装置の原理を示した図である。
【
図4】実施形態に係る記憶装置の原理を示した図である。
【
図5】実施形態に係る記憶装置の原理を示した図である。
【
図6】実施形態に係る記憶装置の原理を示した図である。
【
図7】実施形態に係る記憶装置を不揮発性RAMに適用したときの全体的な構成を示したブロック図である。
【
図8】実施形態に係る記憶装置を不揮発性RAMに適用したときのメモリセルアレイ領域の一部を示した電気回路図である。
【
図9A】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図9B】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図9C】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図10A】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図10B】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図10C】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図11A】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図11B】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図11C】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図12A】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図12B】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図12C】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図12D】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図12E】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図13A】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図13B】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【
図13C】実施形態に係る記憶装置の具体的な動作の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係る記憶装置(不揮発性記憶装置)の構成を模式的に示した断面図である。
【0009】
本実施形態に係る記憶装置は、記憶素子としてキャパシタ10が用いられる。キャパシタ10は、第1の電極(下部電極)11と、第2の電極(上部電極)12と、第1の誘電体層13と、第2の誘電体層14と、中間領域15とを含んでいる。
【0010】
第1の電極11及び第2の電極12は金属材料等の導電材料で形成されており、第1の電極11と第2の電極12との間に第1の誘電体層13、第2の誘電体層14及び中間領域15を含む積層構造が設けられている。
【0011】
第1の誘電体層13は、第1の電極11と第2の電極12との間に設けられ、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)とを含有している。本実施形態では、第1の誘電体層13は、ハフニウム(Hf)及び酸素(O)を含有するハフニウム酸化物(HfO2 )で形成されている。第1の誘電体層13は、反強誘電性を有している。また、第1の誘電体層13は、第2の誘電体層14よりも高い比誘電率を有している。
【0012】
第2の誘電体層14は、第1の電極11と第1の誘電体層13との間に設けられ、シリコン(Si)及び酸素(O)を含有している。具体的には、第2の誘電体層14は、シリコン酸化物(SiO2 )で形成されている。第2の誘電体層14の厚さは、4nm以下であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。
【0013】
中間領域15は、第1の誘電体層13と第2の誘電体層14との間に設けられ、所定の金属元素を含有している。本実施形態では、中間領域15に含有されている所定の金属元素として、チタン(Ti)が用いられる。また、中間領域15は、窒素(N)をさらに含有していてもよい。本実施形態では、中間領域15は、チタン窒化物(TiN)で形成されている。中間領域15は、所定の金属元素の窒化物等で形成された1つの層が連続的に設けられていてもよいが、中間領域15の実質的な厚さは極めて薄いため、通常は所定の金属元素及び窒素を含有する複数の部分が離散的に設けられている。すなわち、中間領域15は、通常は所定の金属元素の窒化物等で形成された複数の部分が離散的に設けられている。
【0014】
図2は、中間領域15の構成(複数の部分が離散的に設けられている場合の構成)を模式的に示した平面図である。
図2に示すように、中間領域15は、所定の金属元素を含有する複数の金属含有部分15pが離散的に設けられた構造を有している。具体的には、本実施形態では、金属含有部分15pはチタン窒化物(TiN)を含有している。
【0015】
中間領域15は、第1の誘電体層13及び第2の誘電体層14それぞれに接している。そのため、中間領域15に含有されている所定の金属元素が、第1の誘電体層13及び第2の誘電体層14に拡散している場合もある。この場合、第1の誘電体層13に含有されている所定の金属元素(Ti)の濃度は中間領域15から遠ざかるにしたがって減少し、第2の誘電体層14に含有される所定の金属元素(Ti)の濃度は中間領域15から遠ざかるにしたがって減少している。
【0016】
上述したように、本実施形態では、記憶素子としてキャパシタが用いられている。したがって、通常の誘電体メモリと同様に、本実施形態でも、キャパシタ10に電荷が蓄えられている第1の状態(キャパシタ10に所定量以上の電荷が蓄えられている状態)と、キャパシタ10から電荷が消去された第2の状態(キャパシタ10に所定量以上の電荷が蓄えられていない状態)とに基づいてデータが記憶される。具体的には、本実施形態では、第1の誘電体層13の反強誘電性を用いてデータが記憶される。反強誘電性を有する第1の誘電体層13を用いることで、高サイクル耐性を有し且つ動作電圧の低い記憶装置を得ることが可能である。
【0017】
次に、
図3~
図6を参照して、本実施形態に係る記憶装置の原理を説明する。
【0018】
図3は、キャパシタ10に電圧を印加して、キャパシタ10を第1の状態に設定するときの状態を模式的に示した図である。
図4は、キャパシタ10を第1の状態に設定した後に、キャパシタ10に印加されている電圧がゼロになったときの状態を模式的に示した図である。
図5は、キャパシタ10に電圧を印加して、キャパシタ10を第2の状態に設定するときの状態を模式的に示した図である。
【0019】
図6は、キャパシタ10に印加される電圧Vとキャパシタ10の分極Pとの関係を模式的に示した図である。特性aは本実施形態のキャパシタ構造(中間領域15が設けられた構造)を用いた場合の特性であり、特性bは比較例のキャパシタ構造(中間領域15が設けられていない構造)を用いた場合の特性である。電圧Vprは、キャパシタ10に分極が生じるときの印加電圧であり、本実施形態のキャパシタ構造を用いた場合と比較例のキャパシタ構造を用いた場合とで基本的には同じ値である。
【0020】
図3に示されるように、キャパシタ10に電荷が蓄えられた第1の状態を設定するときには、第2の電極12の電位が第1の電極11の電位よりも高くなるように、電圧Vpr(プログラム電圧、第1の電圧)を第1の電極11と第2の電極12との間に印加する。すなわち、キャパシタ10に電圧Vprを印加する。これにより、
図6に示すように、キャパシタ10に分極が生じる。なお、実際には、キャパシタ10に分極が確実に生じるように、電圧Vprよりも僅かに大きい電圧Vpr+αをキャパシタ10に印加することが好ましい。本実施形態では、説明を簡単化するため、キャパシタ10に電圧Vprを印加してキャパシタ10に分極が生じる場合を想定して説明する。キャパシタ10に電圧Vprを印加すると、電圧Vprに応じた電荷がキャパシタ10に蓄えられる。具体的には、以下に述べるように、電圧Vprは実質的に第1の誘電体層13に印加される。
【0021】
本実施形態では、上述したように、第1の誘電体層13と第2の誘電体層14との間にチタン窒化物(TiN)を含有する中間領域15が設けられている。このような構造を用いた場合、中間領域15にはチタン窒化物に基づくチャージトラップが存在する。そのため、第1の電極11と第2の電極12との間に電圧Vprを印加すると、中間領域15内のチャージトラップに負電荷がトラップされ、電圧Vprに応じた電荷が中間領域15に蓄えられる。
【0022】
また、キャパシタ10に印加された電圧Vprは実質的に第1の誘電体層13に印加されるため、第1の誘電体層13のキャパシタンスをC1とし、中間領域15に蓄えられる電荷の量をQとすると、
Q=C1×Vpr
と表される。
【0023】
図4に示されるように、キャパシタ10を第1の状態に設定した後に、キャパシタ10に印加されている電圧(第1の電極11と第2の電極12との間に印加されている電圧)がゼロになった後も、中間領域15にトラップされた負電荷は中間領域15に保持されている。そのため、中間領域15に保持された負電荷に起因する内部電荷IEが第1の誘電体層13に生じており、キャパシタ10には中間領域15にトラップされた電荷に基づく電荷が保持されている。すなわち、
図6に示すように、キャパシタ10に印加されている電圧がゼロになった後も、内部電荷IEによってキャパシタ10に生じた分極は維持されている。内部電界IEは、中間領域15に保持されている電荷の量Qによって決まる。すなわち、内部電界IEの値は電圧Vprの値によって決まる。
【0024】
図5に示されるように、キャパシタ10から電荷が消去された第2の状態を設定するときには、第2の電極12の電位が第1の電極11の電位よりも低くなるように、電圧Ver(消去電圧、第2の電圧)を第1の電極11と第2の電極12との間に印加する。すなわち、電圧Vprの極性と逆の極性の電圧Verをキャパシタ10に印加する。具体的には、
Ver=Vorg-Vpr
で表される電圧Verをキャパシタ10に印加する。なお、電圧Vorgは、
図6に示すように、比較例のキャパシタ構造(中間領域15が設けられていない構造)における消去電圧である。
【0025】
上述したように、第1の誘電体層13には、中間領域15に保持された負電荷に起因する内部電荷IEが存在している。すでに述べたことからわかるように、内部電荷IEに基づく電圧はVprである。そのため、キャパシタ10に保持された電荷を消去する、すなわち中間領域15に保持された電荷を消去するためには、
図6に示すように、電圧Vorgから内部電荷IEを打ち消すための電圧Vprを差し引いた電圧をキャパシタ10に印加する必要がある。したがって、キャパシタ10に印加される消去電圧Verは、上述したように、Vorg-Vprとなる。
図6から明らかなように、消去電圧Verは負極性であり、消去電圧Verの絶対値はプログラム電圧Vprの絶対値よりも小さい。
【0026】
電圧Verをキャパシタ10に印加することにより、中間領域15にトラップされていた電荷がトラップから離脱し、キャパシタ10に保持されていた電荷が消去される。これにより、
図6に示すように、キャパシタ10の分極は実質的にゼロになる。
【0027】
上述したことからわかるように、比較例のキャパシタ構造(中間領域15が設けられていない構造)の場合には、消去電圧Vorgは正の値である。したがって、比較例のキャパシタ構造の場合には、プログラム電圧Vprを印加してキャパシタを第1の状態に設定した後に、キャパシタに印加されている電圧がゼロになると、キャパシタ10に蓄えられていた電荷が消去されてしまう。すなわち、比較例のキャパシタ構造の場合には、不揮発性を有する記憶装置を得ることはできない。
【0028】
本実施形態では、上述したように、消去電圧Verは負の値である。そのため、キャパシタ10に印加されている電圧がゼロになっても、キャパシタ10に蓄えられている電荷は消去されずにキャパシタ10に保持されている。したがって、本実施形態では、中間領域15を設けることで、不揮発性を有する記憶装置を得ることが可能となる。
【0029】
次に、上述したキャパシタ10を不揮発性RAMに適用した場合について説明する。
図7は、不揮発性RAMの全体的な構成を示したブロック図である。
図8は、不揮発性RAMのメモリセルアレイ領域の一部を示した電気回路図である。
【0030】
図7に示すように、本実施形態の不揮発性RAMは、メモリセルアレイ領域100、ワード線制御回路110及びビット線制御回路120を含んでいる。
【0031】
図8に示すように、メモリセルアレイ領域100には複数のメモリセル30が設けられており、各メモリセル30には直列接続されたキャパシタ10及びトランジスタ20が含まれている。トランジスタ20のゲートにはワード線40が接続され、トランジスタ20のソース及びドレインの一方の端子にはビット線50が接続され、他方の端子にはキャパシタ10が接続されている。
【0032】
メモリセル30に対して書き込み或いは読み出しを行う場合には、選択されたメモリセル30に接続されたワード線40を介して選択されたメモリセル30に含まれるトランジスタ20をオン状態に設定する。そして、書き込みを行う場合には、選択されたメモリセル30に接続されたビット線50を介して、選択されたメモリセル30に含まれるキャパシタ10を第1の状態又は第2の状態に設定する。一方、読み出しを行う場合には、選択されたメモリセル30に接続されたビット線50を介して、選択されたメモリセル30に含まれるキャパシタ10に設定されている第1の状態又は第2の状態を検出する。
【0033】
次に、本実施形態に係る記憶装置の具体的な動作を、
図9A~
図9C、
図10A~
図10C、
図11A~
図11C、
図12A~
図12E及び
図13A~
図13Cを参照して説明する。すなわち、上述したキャパシタ10を不揮発性RAMに適用した場合の具体的な動作を説明する。なお、各図において、横軸は、キャパシタ10への印加電圧V(第1の電極11を基準として第2の電極12に印加される電圧)である。縦軸は、キャパシタ10の分極量Pであり、キャパシタ10に蓄えられる電荷量に対応する。
【0034】
まず、キャパシタ10を消去状態に設定するときの動作を説明する。すなわち、キャパシタ10を第2の状態に設定するときの動作を説明する。
【0035】
図9A~
図9Cは、キャパシタ10が第1の状態(キャパシタ10に電荷が蓄えられている状態)に設定されているときの消去動作を示した図である。
【0036】
図9Aは、キャパシタ10が第1の状態に設定されているときの状態であり、キャパシタ10に電荷が蓄えられており、中間領域15には電荷がトラップされている。この状態で、
図9Bに示すように、キャパシタ10に消去電圧Verを印加することで、キャパシタ10に蓄えられている電荷が消去され、中間領域15にトラップされていた電荷が中間領域15から離脱する。その後、
図9Cに示すように、キャパシタ10への印加電圧をゼロにすることで、消去動作が終了する。
【0037】
図10A~
図10Cは、キャパシタ10が第2の状態(キャパシタ10に電荷が蓄えられていない状態)に設定されているときの消去動作を示した図である。基本的な電圧印加動作は、上述したキャパシタ10が第1の状態に設定されているときの電圧印加動作と同じである。
【0038】
図10Aは、キャパシタ10が第2の状態に設定されているときの状態であり、キャパシタ10には電荷が蓄えられていない。この状態で、
図10Bに示すようにキャパシタ10に消去電圧Verを印加する。その後、
図10Cに示すようにキャパシタ10への印加電圧をゼロにすることで、消去動作が終了する。
【0039】
次に、キャパシタ10に対して書き込みを行うときの動作を説明する。すなわち、キャパシタ10を第1の状態或いは第2の状態に設定するときの動作を説明する。
【0040】
図11A~
図11Cは、キャパシタ10に第1の状態を設定するときの書き込み動作を示した図である。
【0041】
まず、
図11Aに示すように、上述した
図9A~
図9C或いは
図10A~
図10Cに示した動作によってキャパシタを消去状態に設定する。この状態では、キャパシタ10に電荷は蓄えられておらず、中間領域15には電荷はトラップされていない。
【0042】
次に、
図11Bに示すように、キャパシタ10にプログラム電圧Vprを印加することで、キャパシタ10には電荷が蓄えられ、中間領域15には電荷がトラップされる。これにより、キャパシタ10は第1の状態に設定される。
【0043】
図11Cは、キャパシタ10にプログラム電圧Vprを印加してキャパシタ10を第1の状態に設定してから一定時間が経過した後の状態である。トランジスタ20をオン状態にしてキャパシタ10にプログラム電圧Vprを印加した後、トランジスタ20はオフ状に設定され、キャパシタ10はフローティング状態となる。本実施形態では、キャパシタ10がフローティング状態に移行した後、時間の経過によってキャパシタ10に印加されている電圧が最終的にゼロになったとしても、キャパシタ10の中間領域15に電荷がトラップされているため、トラップされた電荷によって生じる内部電界によって、キャパシタ10には電荷が保持されている。
【0044】
以上のようにして、キャパシタ10に第1の状態が設定される。
【0045】
キャパシタ10に第2の状態を設定するときの書き込み動作では、上述した
図9A~
図9C或いは
図10A~
図10Cに示した動作を単に行えばよい。これにより、キャパシタ10は消去状態、すなわち第2の状態に設定される。
【0046】
次に、キャパシタ10に対して読み出しを行うときの動作を説明する。すなわち、キャパシタ10に設定されている第1の状態或いは第2の状態を検出するときの動作を説明する。
【0047】
図12A~
図12Eは、キャパシタ10に第1の状態が設定されているときの読み出し動作を示した図である。
【0048】
図12Aは、キャパシタ10が第1の状態に設定されているときの状態であり、キャパシタ10には電荷が蓄えられており、中間領域15には電荷がトラップされている。
【0049】
図12Aの状態で、
図12Bに示すように、キャパシタ10に読み出し電圧として消去電圧Verを印加する。これにより、キャパシタ10に蓄えられていた電荷がトランジスタ20を介してビット線50に読み出され、この電荷による電流または電位変化に基づいてキャパシタ10が第1の状態に設定されていることが検出される。また、キャパシタ10に蓄えられていた電荷は読み出し動作によって消去され、中間領域15にトラップされていた電荷は中間領域15から離脱する。
【0050】
その後、
図12Cに示すように、キャパシタ10への印加電圧をゼロにすることで、読み出し動作が終了する。
【0051】
上述したことからわかるように、キャパシタ10に蓄えられていた電荷がビット線50に読み出されることは、キャパシタ10に蓄えられていた電荷が消去されることに対応する。したがって、キャパシタ10を第1の状態に戻すために、キャパシタ10に対して再書き込みを行う必要がある。
【0052】
図12D及び
図12Eは、再書き込み動作を示しており、11B及び11Cに示した書き込み動作と同様にして再書き込みが行われる。
【0053】
図13A~
図13Cは、キャパシタ10に第2の状態が設定されているときの読み出し動作を示した図である。
【0054】
図13Aは、キャパシタ10が第2の状態に設定されているときの状態であり、キャパシタ10には電荷が蓄えられていない。この状態で、
図13Bに示すようにキャパシタ10に読み出し電圧として消去電圧Verを印加する。その後、
図13Cに示すようにキャパシタ10への印加電圧をゼロにすることで、読み出し動作が終了する。キャパシタ10が第2の状態に設定されているときには、キャパシタ10には電荷が蓄えられていないため、電荷移動に伴う電流または電位変化は生じずキャパシタ10が第2の状態に設定されていることが検出される。また、読み出し動作においてキャパシタ10の電荷の量は変化しないため、再書き込み動作は行われない。
【0055】
以上のように、本実施形態では、キャパシタ10に印加されている電圧がゼロになっても、中間領域15にトラップされた電荷に基づく内部電界によってキャパシタ10には電荷が保持されている。したがって、本実施形態では、不揮発性を有する優れた記憶装置を得ることが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施形態において、第1の誘電体層13がハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)のいずれも含有している場合には、第1の誘電体層13中のジルコニウム(Zr)の濃度が第1の誘電体層13中のハフニウム(Hf)の濃度よりも高いことが好ましい。
【0057】
また、上述した実施形態において、第1の誘電体層13は、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方と酸素(O)に加えてさらに、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)の少なくとも一方を含有していてもよい。具体的には、第1の誘電体層13は、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方を含有する酸化物に、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)の少なくとも一方が添加されていてもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…キャパシタ 11…第1の電極 12…第2の電極
13…第1の誘電体層 14…第2の誘電体層
15…中間領域 15p…金属含有部分
20…トランジスタ 30…メモリセル
40…ワード線 50…ビット線
100…メモリセルアレイ領域
110…ワード線制御回路 120…ビット線制御回路