(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134347
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/70 20060101AFI20240926BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B03C3/70 Z
B03C3/41 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044605
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】桐谷 諭史
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA02
4D054AA04
4D054BA01
4D054BB26
4D054EA19
(57)【要約】
【課題】碍子収容部を構成する板材の腐食の発生を低減させることが可能な電気集塵装置を提供すること。
【解決手段】電気集塵装置は、放電極を支持する碍子4が内部に設置される碍子室13と、碍子室13の天井13cに形成され、外部から取り込まれる空気が通過する開口部7と、碍子室13の内部空間に設けられ、開口部7を介して外部から取り込まれ碍子室13の内部に吹き出される空気の吹出し方向を変更する吹出し方向変更部8とを備え、開口部7を通過する空気が、複数の方向に分散して流れるように、吹出し方向変更部8が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電極を支持する碍子が内部に設置される碍子収容部と、
前記碍子収容部の天井又は壁に形成され、外部から取り込まれる空気が通過する開口部と、
前記碍子収容部の内部空間に設けられ、前記開口部を介して外部から取り込まれ前記碍子収容部の内部に吹き出される前記空気の吹出し方向を変更する吹出し方向変更部と、
を備え、
前記開口部を通過する前記空気が、複数の方向に分散して流れるように、又は、前記放電極が内部に設置された電極収容部と接しつつ前記碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れるように、前記吹出し方向変更部が形成されている電気集塵装置。
【請求項2】
前記吹出し方向変更部は、前記開口部に対向する位置に設置され、前記開口部を通過した前記空気の流れ方向を変更する板部を有し、
前記板部は、前記開口部を通過した前記空気を、複数の方向に分散させる請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記吹出し方向変更部は、前記開口部が形成された前記碍子収容部の前記天井又は前記壁に設置され、前記板部を支持する棒状の支持部材を更に有し、
前記板部は、板面が前記天井又は前記壁に対して平行又は斜め方向に設置されるように、前記支持部材によって支持されている請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記吹出し方向変更部は、一端部にて前記開口部に接続され、他端部にて前記空気が吹き出される吹出し口が形成されたダクトを有し、
前記ダクトは、前記開口部を通過した前記空気を、前記電極収容部と接しつつ前記碍子収容部を構成する板材以外に向かって吹き出させる請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記ダクトの前記他端部に形成された前記吹出し口から吹き出された空気が、前記碍子収容部の内部空間の中間部分に向かって流れるように、前記ダクトの前記吹出し口は、前記中間部分へ向けて設けられている請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記ダクトの前記他端部に形成された前記吹出し口から吹き出された空気が、前記碍子収容部の天井部に向かって流れるように、前記ダクトは、前記開口部から屈曲又は湾曲して設けられている請求項4に記載の電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置(EP:Electrostatic Precipitator)は、プラントなどにおいて排ガス清浄を目的として設置され、排ガスや空気に含まれる煤塵粒子(ダスト、粒子状物質などとも呼ばれる。)を煙突等から大気に放出する前に除去する。電気集塵装置は、ケーシングの内部に、粒子を帯電させる放電極と、放電極に対向して配置される集塵極などを備え、ケーシングの天井部に荷電装置を備える。
【0003】
荷電装置が放電極に高電圧を印加し、集塵極と放電極との間に直流高電圧が印加されることによって、コロナ放電が生じる。コロナ放電によって、電気集塵装置内を流れるガスに含まれる粒子が帯電し、帯電した粒子は集塵極と放電極の間の電界下で粒子に作用するクーロン力の働きにより集塵極に捕集される。
【0004】
高電圧を印加する放電極をケーシング等から絶縁しつつ、放電極を上方から吊り支持するため、支持碍子(以下、単に「碍子」という。)が用いられている。碍子は、ガスに含まれるダスト(粒子)で汚損されると、絶縁抵抗が低下し破損するおそれがある。そこで、碍子の内部にシールエアが吹き込まれる。
【0005】
下記の特許文献1には、碍子の上部に設けられた通気孔から碍子内部に吹き込まれるシールエアとしての高圧空気によって、装置筐体内のガスや塵埃が碍子内へ侵入することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気集塵装置において、碍子は、碍子室(上記特許文献1では碍子収納ケース)の内部に設置されている。碍子室の内部には外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がシールエアとして碍子の上部に設けられた通気孔から碍子内部に吹き込まれる。碍子内部に吹き込まれた空気は、ケーシング(装置筐体)の電極室へ流れ込む。
【0008】
碍子室の内部に外部から空気を取り込むため、碍子室の天井面又は壁面に開口部が設けられる。外部空気は、エアファン又はケーシング内部の負圧を利用して、開口部を介して碍子室内に取り込まれる。
【0009】
碍子室の壁面や底面は、鋼板製の板材であり、板材を挟んで排ガスが流れる電極室と接している。外部空気が碍子室の内部に取り込まれた際、碍子室の壁面や底面は、外部空気によって温度が低下し冷却される。電極室内の湿度が高い場合、碍子室の壁面や底面の電極室側(接ガス側)において露点雰囲気となり、電極室側(接ガス側)に結露が発生する。常時結露が発生した状態となると、板材が酸化する。電極室内のガスには硫黄(S)分が含まれることがあり、板材の腐食が進行しやすいという問題がある(酸露点腐食)。
【0010】
腐食が生じると碍子室の強度部材の強度低下や、腐食して生じた錆片の電極室内への脱落が起きるおそれがある。脱落した錆片が集塵極と放電極の間に引っ掛かると、集塵極と放電極間の距離が短くなり、安定したコロナ放電が得られない。また、錆片によって集塵極と放電極の間が短絡状態となることで、高電圧を印加できなくなり、電気集塵装置の捕集性能が低下する。
【0011】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、碍子収容部を構成する板材の腐食の発生を低減させることが可能な電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の電気集塵装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示に係る電気集塵装置は、放電極を支持する碍子が内部に設置される碍子収容部と、前記碍子収容部の天井又は壁に形成され、外部から取り込まれる空気が通過する開口部と、前記碍子収容部の内部空間に設けられ、前記開口部を介して外部から取り込まれ前記碍子収容部の内部に吹き出される前記空気の吹出し方向を変更する吹出し方向変更部とを備え、前記開口部を通過する前記空気が、複数の方向に分散して流れるように、又は、前記放電極が内部に設置された電極収容部と接しつつ前記碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れるように、前記吹出し方向変更部が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、碍子収容部を構成する板材の腐食の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置を示す斜視図であり、部分的に内部を示している。
【
図2】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の上方内部を示す部分斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置を示す縦断面図であり、ガス流れ方向に対して平行方向に切断した図(ガス流れ直交方向矢視図)である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置を示す縦断面図であり、ガス流れ方向に対して垂直方向に切断した図(ガス流れ方向矢視図)である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の吹出し方向変更部の第1実施例を示す斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の吹出し方向変更部の第2実施例を示す斜視図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の吹出し方向変更部の第3実施例を示す斜視図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の吹出し方向変更部の第4実施例を示す斜視図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る電気集塵装置の吹出し方向変更部の第5実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の一実施形態に係る電気集塵装置1について、図面を参照して説明する。
本開示に係る電気集塵装置1は、例えば、石炭焚きや重油焚きの発電プラントや焼却炉等の産業用燃焼設備の下流側の煙道内に設けられる排ガス処理設備に設置される。
【0016】
電気集塵装置1は、
図1,
図3及び
図4に示すように、ダストやミスト等の粒子を除去するため、粒子を帯電させる放電極2と、放電極2に対向して配置される集塵極3と、集塵極3に付着した粒子を下部のホッパーに落下させる槌打装置(図示せず。)などを備える。
【0017】
電気集塵装置1は、ケーシング11を備え、ケーシング11は、
図1から
図4に示すように、放電極2、集塵極3及び槌打装置などを内部に収容する電極室12と、電極室12とは板材15によって隔てられた碍子室13を有する。電極室12は、本開示に係る電極収容部の一例であり、碍子室13は、本開示に係る碍子収容部の一例である。
【0018】
図1に示すように、電極室12の内部には、粒子を含むガスが入口1Aから出口1Bへ向けて流れる。
図1から
図4に示すように、碍子室13の内部には、碍子4が複数設置される。
図1に示すように、電気集塵装置1は、ケーシング11の天井部に荷電装置5を備える。
【0019】
荷電装置5が放電極2に高電圧を印加し、放電極2と集塵極3との間に直流高電圧が印加されることによって、コロナ放電が生じる。コロナ放電によって、電気集塵装置1内を流れるガスに含まれる粒子が帯電し、帯電した粒子は放電極2と集塵極3の間の電界下で粒子に作用するクーロン力の働きにより集塵極3に捕集される。
【0020】
碍子4は、放電極2に接続される電気導体を電気集塵装置1のケーシング11等の他の構造物から絶縁し、かつ、放電極2を上方から吊り支持する。放電極2は、電気導体を介して、外部の高圧電源と接続される。
図1及び
図2に示すように、碍子4の位置に応じて、碍子室13は電極室12のガス流れ方向へ複数設けられる。
【0021】
図1から
図4に示すように、碍子室13は、略直方体形状であり、ガス流れ方向に対して垂直方向に長く、例えばケーシング11の幅方向の全長と略同じ長さを有する。碍子室13の側壁13aと底面部13bは、鋼板製の板材15を備え、電極室12と接している。すなわち、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15によって、電極室12と碍子室13が隔てられている。
【0022】
図2及び
図5から
図9に示すように、碍子室13の内部には開口部7を介して外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がシールエアとして碍子4の上部に設けられた通気孔6(
図5から
図9参照)から碍子4の内部に吹き込まれる。碍子4の内部に吹き込まれた空気は、ケーシング11の電極室12へ流れ込む。開口部7は、一つの碍子室13に対して1又は複数形成される。
【0023】
碍子4の内部にシールエアが吹き込まれることによって、碍子4が、電極室12を流れるガスに含まれるダスト(粒子)で汚損されたり、絶縁抵抗が低下して破損したりすることを防止できる。
【0024】
図5から
図9に示すように、碍子室13の内部に外部から空気を取り込むため、碍子室13の天井13c又は端壁13dに開口部7が設けられる。外部空気は、エアファン又はケーシング11内部の負圧を利用して、開口部7を介して碍子室13内に取り込まれる。端壁13dは、ケーシング11の幅方向端部に位置する壁部である。
【0025】
外部空気が碍子室13の内部に取り込まれた際、碍子室13の側壁13aや底面部13bは、外部空気によって温度が低下し冷却されるおそれがある。電極室12内の湿度が高い場合、側壁13aや底面部13bの電極室12側(接ガス側)において露点雰囲気となり、電極室12側(接ガス側)に結露が発生してしまう。
【0026】
これに対して、碍子室13の内部空間には、開口部7を介して外部から取り込まれ碍子室13の内部に吹き出される外部空気の吹出し方向を変更する吹出し方向変更部8が設けられる。吹出し方向変更部8は、開口部7を通過する外部空気が、複数の方向に分散して流れるように、又は、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって流れるように、形成されている。外部空気が、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって流れる方向とは、例えば、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15に対して平行な方向である。これにより、外部空気は、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15に向かって流れる量が低減する、又は、板材15に向かって直接流れないため、板材15が外部空気によって冷却されにくい。その結果、板材15の電極室12側(接ガス側)の面において結露が発生しづらくなり、板材15における腐食の発生を低減又は防止できる。
【0027】
以下、本実施形態に係る吹出し方向変更部8の実施例について説明する。
<実施例1>
吹出し方向変更部8は、例えば、
図5及び
図6に示すように、板部16と、支持部材17を有する。板部16は、開口部7に対向する位置に設置され、開口部7を通過した空気の流れ方向を変更する。板部16は、例えば金属製の平板である。板部16は、穴の無い材料でもよいし、空気の一部を通過させることが可能な網(メッシュ)やパンチングメタルでもよい。
【0028】
図5に示す例では、開口部7は、天井13cに形成される。支持部材17は、棒状部材であって、開口部7が形成された碍子室13の天井13cに設置され、板部16を支持する。板部16は、板面が天井13cに対して平行に設置されるように、支持部材17によって支持されている。支持部材17は、1枚の板部16に対して複数本が設けられる。支持部材17における板部16の位置を調節することによって、開口部7と板部16の間の距離を調整でき、碍子室13に流入する外部空気の空気量を調整できる。
【0029】
また、
図6に示すように、開口部7が端壁13dに形成される場合も、同様に吹出し方向変更部8が設けられる。
図6に示す例では、ダクト18が開口部7を貫通して設けられており、支持部材17は、ダクト18のフランジ18aに設置され、板部16を支持する。このとき、ダクト18の内部を流れる空気は、碍子室13内部の温度によって加温される。板部16は、板面が端壁13dに対して平行に設置される。支持部材17における板部16の位置を調節することによって、フランジ18aと板部16の間の距離を調整できる。
【0030】
これにより、開口部7を介して外部から取り込まれ碍子室13の内部に吹き出される外部空気は、板部16に当たった後、開口部7と板部16の間の隙間(
図5)、又は、フランジ18aと板部16の間の隙間(
図6)から複数の方向に分散して流れ、板材15に流れる量が低減する、又は、板材15に直接流れない。
【0031】
なお、板部16は、凹形状に湾曲した曲面板でもよく、凹面が開口部7側となるように設置されてもよいし、凹面が開口部7とは反対の碍子室13の内部側となるように設置されてもよい。
【0032】
また、本開示に係る板部16は、開口部7を通過した空気が板部16に当たって、複数の方向に分散させることができ、外部空気が、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15に流れる量が低減する、又は、板材15に直接流れないようにすること、あるいは、外部空気が板材15に直接流れても、ダクト18で加温されるようにできればよく、上述した態様に限定されない。例えば、板部16は、板面が天井13c又は端壁13dに対して平行ではなく、斜め方向に設置されてもよい。さらに、板部16は、開口部7が形成された天井13c、端壁13d又はダクト18のフランジ18aに設置された支持部材17以外に設置されてもよく、例えば、板部16が、底面部13bに載置されている構成でもよい。
【0033】
<実施例2>
吹出し方向変更部8は、例えば、
図7から
図9に示すように、ダクト18を有する。ダクト18は、筒状部材であって、ダクト18の内部には、外気から取り込まれた空気が流通する。ダクト18の内部を流れる空気は、碍子室13内部の温度によって加温される。ダクト18の断面は円形でもよいし四角形などでもよい。
【0034】
ダクト18は、一端部にて開口部7に接続され、他端部にて空気が吹き出される吹出し口19が形成されている。吹出し方向変更部8において、外部空気は、開口部7を通過して、ダクト18の内部を流れ、ダクト18の他端部に形成された吹出し口19から吹き出される。ダクト18は、開口部7を通過した空気を、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって吹き出させる。ダクト18の長さを調整することによって、碍子室13内部における吹出し口19の位置を任意に設定でき、任意の位置で空気を吹き出させることができる。
【0035】
図7に示す例では、開口部7は、天井13cに形成される。ダクト18は、一端部の開口部7との接続部分から他端部の吹出し口19までL字状に曲げられており、ダクト部材のエルボなどで構成される。ダクト18は、吹出し口19が碍子室13の中間部分へ向くような形状を有している。吹出し口19は、碍子室13の内部空間の中間部分を向いて開口している。
【0036】
図8に示す例では、開口部7は、天井13cに形成される。ダクト18は、一端部の開口部7から2箇所の他端部の吹出し口19まで途中でT字状に分岐して形成されており、ダクト部材のチーズ(ティー)などで構成される。ダクト18は、吹出し口19が碍子室13の2箇所の中間部分へ向くような形状を有している。2つの吹出し口19は、それぞれ碍子室13の内部空間の中間部分を向いて開口している。
【0037】
以上、
図7及び
図8に示す例では、ダクト18に形成された吹出し口19から吹き出された空気は、碍子室13の内部空間の中間部分に向かって流れる。すなわち、開口部7を通過した外部空気は、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって流れる。ここで、碍子室13の内部空間の中間部分とは、例えば、一方向に長い碍子室13の内部空間の長手方向の中間部分である。
【0038】
図9に示す例では、開口部7は、端壁13dに形成される。ダクト18は、碍子室13の天井13cに向かって流れるように、ダクト18は、開口部7との接続部分から屈曲又は湾曲して設けられている。ダクト18は、一端部の開口部7との接続部分から他端部の吹出し口19までL字状に曲げられており、ダクト部材のエルボなどで構成される。吹出し口19は、碍子室13の天井13cを向いて開口している。これにより、ダクト18に形成された吹出し口19から吹き出された空気が、碍子室13の天井13cに向かって流れる。碍子室13の天井13cは、電極室12と接さず、外気側に接しているため、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15とは異なる。すなわち、開口部7を通過した外部空気は、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって流れる。
【0039】
以上、本実施形態によれば、
図5及び
図6に示すように、開口部7を通過する外部空気が、吹出し方向変更部8の板部16によって複数の方向に分散して流れる。または、
図7~
図9に示すように、吹出し方向変更部8のダクト18に形成された吹出し口19から吹き出された空気が、碍子室13の内部空間の中間部分、又は、碍子室13の天井13cに向かって流れる。したがって、開口部7を通過した外部空気は、電極室12と接しつつ碍子室13を構成する板材15以外に向かって流れる。
【0040】
これにより、碍子室13を構成する側壁13aや底面部13bの板材15に、外部空気が直接流れないため、板材15において局所的な温度低下が生じず、外部空気によって板材15が冷却されにくい。また、外部空気は、ダクト18の内部を流れるとき、碍子室13内部の温度によって加温される。その結果、板材15の電極室12側(接ガス側)の面において結露が発生しづらくなり、板材15における腐食の発生を低減又は防止できる。
【0041】
従来、板材15の腐食による強度低下を防ぐため、板材15の補修が生じていたが、本実施形態によれば、補修頻度を減らすことができる。また、錆片の脱落によって安定したコロナ放電が得られないなどの荷電障害によるプラント運転中の不具合発生というリスクを低減することもできる。
【0042】
また、吹出し方向変更部8によって外部空気が複数の方向に分散して流れたり、碍子室13の内部空間の中間部分に向かって流れたりすることから、碍子室13内の碍子4に外部空気が直接当たることを防止でき、かつ、複数の碍子4のそれぞれの内部に流入する空気量をバランス良く配分できる。さらに、吹出し口19から吹き出された空気が碍子室13の内部において攪拌されやすくなるため、外部空気が碍子室13内で適切に加温されてから碍子4の内部に流入する。これらにより、碍子4における結露の発生も低減又は防止できる。
【0043】
以上説明した実施形態に記載の電気集塵装置は例えば以下のように把握される。
本開示に係る電気集塵装置(1)は、放電極(2)を支持する碍子(4)が内部に設置される碍子収容部(13)と、前記碍子収容部の天井(13c)又は壁(13d)に形成され、外部から取り込まれる空気が通過する開口部(7)と、前記碍子収容部の内部空間に設けられ、前記開口部を介して外部から取り込まれ前記碍子収容部の内部に吹き出される前記空気の吹出し方向を変更する吹出し方向変更部(8)とを備え、前記開口部を通過する前記空気が、複数の方向に分散して流れるように、又は、前記放電極が内部に設置された電極収容部(12)と接しつつ前記碍子収容部を構成する板材(15)以外に向かって流れるように、前記吹出し方向変更部が形成されている。
【0044】
この構成によれば、碍子が放電極を支持し、碍子が碍子収容部の内部に設置される。また、碍子収容部の天井又は壁に開口部が形成され、外部から取り込まれる空気が開口部を通過する。吹出し方向変更部が碍子収容部の内部空間に設けられ、開口部を介して外部から取り込まれ碍子収容部の内部に吹き出される空気は、吹出し方向変更部によって、吹出し方向が変更される。吹出し方向変更部は、開口部を通過する外部空気が、複数の方向に分散して流れるように、又は、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れるように、形成されている。これにより、外部空気が、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材に流れる量が低減する、又は、該板材に直接流れないため、板材が外部空気によって冷却されにくい。その結果、板材の電極収容部側の面において結露が発生することを低減又は防止できる。外部空気が、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れる方向とは、例えば、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材に対して平行な方向である。
【0045】
本開示に係る電気集塵装置において、前記吹出し方向変更部は、前記開口部に対向する位置に設置され、前記開口部を通過した前記空気の流れ方向を変更する板部(16)を有してもよく、前記板部は、前記開口部を通過した前記空気を、複数の方向に分散させてもよい。
【0046】
この構成によれば、吹出し方向変更部は、開口部に対向する位置に設置された板部を有し、開口部を通過した外部空気が吹出し方向変更部の板部に当たって、複数の方向に分散される。これにより、外部空気は、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材に流れる量が低減する、又は、該板材に直接流れない。
【0047】
本開示に係る電気集塵装置において、前記吹出し方向変更部は、前記開口部が形成された前記碍子収容部の前記天井又は前記壁に設置され、前記板部を支持する棒状の支持部材(17)を更に有してもよく、前記板部は、板面が前記天井又は前記壁に対して平行又は斜め方向に設置されるように、前記支持部材によって支持されてもよい。
【0048】
この構成によれば、吹出し方向変更部は、棒状の支持部材を更に有し、支持部材が、開口部が形成された碍子収容部の天井又は壁に設置され、板部が支持部材によって支持される。板部の板面は、開口部が形成された碍子収容部の天井又は壁に対して平行又は斜め方向に設置される。これにより、開口部を介して外部から取り込まれ碍子収容部の内部に吹き出される空気は、板部に当たった後、開口部と板部の間の隙間から複数の方向に分散して流れる。
【0049】
本開示に係る電気集塵装置において、前記吹出し方向変更部は、一端部にて前記開口部に接続され、他端部にて前記空気が吹き出される吹出し口(19)が形成されたダクト(18)を有してもよく、前記ダクトは、前記開口部を通過した前記空気を、前記電極収容部と接しつつ前記碍子収容部を構成する板材(15)以外に向かって吹き出させてもよい。
【0050】
この構成によれば、吹出し方向変更部は、一端部にて開口部に接続されたダクトを有し、ダクトの他端部に形成された吹出し口から外部空気を吹き出す。開口部を通過した空気は、ダクトによって、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れる。
【0051】
本開示に係る電気集塵装置において、前記ダクトの前記他端部に形成された前記吹出し口から吹き出された空気が、前記碍子収容部の内部空間の中間部分に向かって流れるように、前記ダクトの前記吹出し口は、前記中間部分へ向けて設けられてもよい。
【0052】
この構成によれば、ダクトの他端部に形成された吹出し口が碍子収容部の内部空間の中間部分に向けて設けられており、ダクトの吹出し口から吹き出された空気が、碍子収容部の内部空間の中間部分に向かって流れる。これにより、開口部を通過した空気は、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れる。ここで、碍子収容部の内部空間の中間部分とは、例えば、一方向に長い碍子収容部の内部空間の長手方向の中間部分である。
【0053】
本開示に係る電気集塵装置において、前記ダクトの前記他端部に形成された前記吹出し口から吹き出された空気が、前記碍子収容部の天井に向かって流れるように、前記ダクトは、前記開口部から屈曲又は湾曲して設けられてもよい。
【0054】
この構成によれば、ダクトが開口部から屈曲又は湾曲して設けられており、ダクトの他端部に形成された吹出し口から吹き出された空気が、碍子収容部の天井部に向かって流れる。これにより、開口部を通過した空気は、電極収容部と接しつつ碍子収容部を構成する板材以外に向かって流れる。
【符号の説明】
【0055】
1 :電気集塵装置
2 :放電極
3 :集塵極
4 :碍子
5 :荷電装置
6 :通気孔
7 :開口部
8 :吹出し方向変更部
11 :ケーシング
12 :電極室(電極収容部)
13 :碍子室(碍子収容部)
13a :側壁
13b :底面部
13c :天井
13d :端壁
15 :板材
16 :板部
17 :支持部材
18 :ダクト
19 :吹出し口