(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134348
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】位相変調器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044606
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健次
(72)【発明者】
【氏名】副島 成雅
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】小田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 達弥
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA17
2K102BA07
2K102BB04
2K102BB08
2K102BC04
2K102BD09
2K102CA30
2K102DA05
2K102DC08
2K102DD03
2K102EA08
2K102EB08
(57)【要約】
【課題】位相変調器において、伝搬光が電極で吸収されるのを抑える技術を提供する。
【解決手段】位相変調器は、光導波路を含む半導体層と、半導体層上に設けられているクラッド層であって、第1キャビティ及び第2キャビティが形成されている、クラッド層と、第1キャビティを介して半導体層の上面に接している第1電極と、第2キャビティを介して半導体層の上面に接している第2電極と、を備えている。第1電極は、第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極を有する。第2電極は、第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調器であって、
光導波路を含む半導体層と、
前記半導体層上に設けられているクラッド層であって、前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び前記半導体層の前記上面の他の一部を露出させる第2キャビティが形成されている、クラッド層と、
前記第1キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第1電極と、
前記第2キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第2電極と、を備えており、
前記光導波路は、前記第1電極が前記半導体層の前記上面に接する位置と前記第2電極が前記半導体層の前記上面に接する位置の間に配置されており、前記第1電極と前記第2電極の間に電圧を印加したときに、伝搬する伝搬光の位相が変化するように構成されており、
前記第1電極は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極を有しており、
前記第2電極は、前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有している、位相変調器。
【請求項2】
前記半導体層は、
前記第1電極に接する第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2電極に接する第2導電型の第2半導体領域と、を有しており、
前記光導波路は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間に配置されている、請求項1に記載の位相変調器。
【請求項3】
前記第1キャビティ内には前記第1透明電極のみが設けられており、
前記第2キャビティ内には前記第2透明電極のみが設けられている、請求項2に記載の位相変調器。
【請求項4】
前記第1電極は、前記第1透明電極を介して前記第1半導体領域に電気的に接続されている第1配線電極を含み、
前記第1配線電極は、前記第1キャビティの外に設けられており、
前記第2電極は、前記第2透明電極を介して前記第2半導体領域に電気的に接続されている第2配線電極を含み、
前記第2配線電極は、前記第2キャビティの外に設けられている、請求項3に記載の位相変調器。
【請求項5】
前記第1透明電極及び前記第2透明電極は、透明導電性酸化物(TCO)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の位相変調器。
【請求項6】
位相変調器の製造方法であって、
半導体層に光導波路を形成する光導波路形成工程と、
前記半導体層上にクラッド層を形成するクラッド層形成工程であって、前記クラッド層には前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び前記半導体層の前記上面の他の一部を露出させる第2キャビティが形成されている、クラッド層形成工程と、
透明電極膜を形成する透明電極膜形成工程であって、前記透明電極膜は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極及び前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有している、透明電極膜形成工程と、を備えている、位相変調器の製造方法。
【請求項7】
前記透明電極膜を熱処理する熱処理工程、をさらに備えており、
前記透明電極膜は、透明導電性酸化物(TCO)であり、
前記熱処理は、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱を含む、請求項6に記載の位相変調器の製造方法。
【請求項8】
前記透明電極膜形成工程は、
前記第1キャビティ内及び前記第2キャビティ内を含む前記クラッド層上に前記透明電極膜を成膜することと、
前記透明電極膜の一部に開口部を形成し、前記第1キャビティ内に設けられている前記第1透明電極と前記第2キャビティ内に設けられている前記第2透明電極を絶縁することと、を有しており、
前記熱処理は、前記透明電極膜の一部に前記開口部を形成する前に、又は、前記透明電極膜の一部に前記開口部を形成した後に実施される、請求項7に記載の位相変調器の製造方法。
【請求項9】
前記クラッド層形成工程は、前記クラッド層の上面を平坦化することを含む、請求項6に記載の位相変調器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、光フェーズドアレイ(Optical Phased Array:OPA)に用いられる位相変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、光フェーズドアレイに用いられる位相変調器の一例が開示されている。この種の位相変調器の一例は、光導波路を含む半導体層と、半導体層に接している電極と、を備えている。電極は、半導体層に接している第1電極と、前記半導体層に接しているとともに前記第1電極から離れて配置されている第2電極と、を有している。光導波路は、第1電極と第2電極の間に電圧が印加されたときに、その屈折率又は光吸収率が変化するように構成されている。屈折率又は光吸収率が変化すると、光導波路を伝搬する伝搬光の位相が変化する。
【0003】
光フェーズドアレイは、このような位相変調器を利用して相互に位相差を有する複数の伝搬光を生成し、その複数の伝搬光の各々を対応する送信アンテナから出射するように構成されている。送信アンテナから出射される複数の伝搬光は、特定の偏向角度を有する光ビームとなる。光ビームの偏向角度は、複数の伝搬光の位相差に依存する。このため、位相変調器を備えた光フェーズドアレイは、第1電極と第2電極の間に印加する電圧を制御することによって出射する光ビームを走査することができる。このように、位相変調器を備えた光フェーズドアレイは、例えば機械的なミラー構造を用いてなくても光ビームの偏向角度を変えることができるという特徴を有している。このような光フェーズドアレイは、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)装置に搭載され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2021/0026216号
【特許文献2】特開2021-103147号公報
【特許文献3】特開2020-166061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送信アンテナから出射される光ビームのスキャン角を広角化するためには、隣り合う光導波路のピッチ間距離を小さくしなければならない。しかしながら、本発明者らの検討によると、隣り合う光導波路のピッチ間距離を小さくすると、光導波路を伝搬する伝搬光の一部が電極で吸収され、光損失が大きくなるという問題が顕在化してくることが分かってきた。本明細書は、位相変調器において、伝搬光が電極で吸収されるのを抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する位相変調器は、光導波路を含む半導体層と、前記半導体層上に設けられているクラッド層であって、前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び前記半導体層の上面の他の一部を露出させる第2キャビティが形成されている、クラッド層と、前記第1キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第1電極と、前記第2キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第2電極と、を備えていてもよい。前記光導波路は、前記第1電極が前記半導体層の前記上面に接する位置と前記第2電極が前記半導体層の前記上面に接する位置の間に配置されており、前記第1電極と前記第2電極の間に電圧を印加したときに、伝搬する伝搬光の位相が変化するように構成されていてもよい。前記第1電極は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極を有していてもよい。前記第2電極は、前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有していてもよい。この位相変調器によると、前記第1電極及び前記第2電極の各々の少なくとも一部が透明電極を含んでいるので、伝搬光が前記第1電極及び前記第2電極で吸収されるのを抑えることができる。
【0007】
本明細書が開示する位相変調器の製造方法は、半導体層に光導波路を形成する光導波路形成工程と、前記半導体層上にクラッド層を形成するクラッド層形成工程であって、前記クラッド層には前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び前記半導体層の前記上面の他の一部を露出させる第2キャビティが形成されている、クラッド層形成工程と、前記クラッド層上に透明電極膜を形成する透明電極膜形成工程であって、前記透明電極膜は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極及び前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有している、透明電極膜形成工程と、を備えていてもよい。この製造方法によると、伝搬光の吸収が抑えられた位相変調器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】光フェーズドアレイの要部斜視図を模式的に示す図である。
【
図2】位相変調器の一実施形態の要部断面図であり、
図3のII-II線に対応した要部断面図を模式的に示す図である。
【
図3】位相変調器の要部平面図を模式的に示す図である。
【
図4】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図5】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図6】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図7】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図8】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図9】
図2に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図10】位相変調器の一実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図11】
図10に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図12】
図10に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図13】
図10に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図14】
図10に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図であ
【
図15】位相変調器の一実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図16】
図15に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図17】
図15に示す位相変調器の製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図18】位相変調器の一実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図19】位相変調器の一実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(光フェーズドアレイの構成)
図1に示すように、光フェーズドアレイ1は、光導波路4と、分配器6と、位相変調器8と、送信アンテナ9と、を備えている。これら光導波路4と分配器6と位相変調器8と送信アンテナ9は、基板2上に光集積回路として構成されている。
【0010】
分配器6は、光導波路4が複数に分岐されるように構成されており、光導波路4に入力された伝搬光を同位相の複数の伝搬光に分割する。分割された複数の伝搬光の各々は、位相変調器8で位相変調される。位相変調された複数の伝搬光は、送信アンテナ9に入力される。送信アンテナ9は、複数の光導波路4の各々に対応して設けられた回折格子を備えており、位相変調された複数の伝搬光を外部に向けて光ビームとして出射する。光フェーズドアレイ1の位相変調器8は、複数の伝搬光の位相差を制御し、出射する光ビームの偏向角度を調整することができる。このような光フェーズドアレイ1は、特に限定されるものではないが、例えばLiDAR装置に搭載される。
【0011】
(位相変調器の構造)
以下、図面を参照して位相変調器8について説明する。なお、図示明瞭化のために、繰り返し配置されている構造についてはその一部にのみ符号を付すことがある。
【0012】
図1~
図3に示すように、位相変調器8は、基板2に形成された複数の光導波路4を備えている。複数の光導波路4は、x方向に隣り合うように配置されている。複数の光導波路4の各々は、y方向に沿って分配器6と送信アンテナ9の間を延びている。なお、x方向は基板2の主面2Sに平行な一方向を示し、y方向は基板2の主面2Sに平行であってx方向に直交する方向を示し、z方向は基板2の主面2Sに直交(x方向とy方向の各々に直交)する方向を示す。
図2に示されるように、破線で囲まれる部分が位相変調器8を構成する単位ユニット10である。隣り合う光導波路4の間の距離をピッチ間距離10Dという。以下、単位ユニット10を位相変調器8と称して説明する。
【0013】
位相変調器8は、基板2と、基板2上に設けられているクラッド層16と、第1電極40と、第2電極50と、を備えている。基板2は、絶縁層12と、絶縁層12上に積層された半導体層14と、を有している。絶縁層12の材料は、特に限定されるものではないが、例えば酸化シリコン(SiO2)であってもよい。半導体層14の材料は、特に限定されるものではないが、例えばシリコンであってもよい。半導体層14は、光導波路4と、p型半導体領域22と、n型半導体領域32と、を有している。
【0014】
光導波路4は、半導体層14の一方の主面2Sに露出する位置に設けられている。この例では、光導波路4は、半導体層14の一部として形成されたノンドープの領域である。この例に代えて、光導波路4は、半導体層14とは異なる半導体材料、例えば窒化シリコンで形成されていてもよい。光導波路4は、z軸方向から見たときに(以下、「平面視したときに」という)、第1電極40と第2電極50の間に配置されている。また、光導波路4は、平面視したときに、p型半導体領域22とn型半導体領域32の間に設けられている。光導波路4は、半導体層14の主面2Sから突出する凸部4Aを有している。光導波路4に凸部4Aが設けられていると、凸部4Aがクラッド層16に覆われて伝搬光が光導波路4内に効果的に閉じ込められる。凸部4Aは、必要に応じて、形成されなくてもよい。
【0015】
p型半導体領域22は、半導体層14の一方の主面2Sに露出する位置に設けられており、第1電極40と光導波路4の間に配置されている。p型半導体領域22は、第1電極40と光導波路4の各々に接している。p型半導体領域22は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y方向に沿って延びている。なお、p型半導体領域22は、第1電極40と接する部分にp型不純物濃度が濃く調整された高濃度領域を有していてもよい。
【0016】
n型半導体領域32は、半導体層14の一方の主面2Sに露出する位置に設けられており、第2電極50と光導波路4の間に配置されている。n型半導体領域32は、第2電極50と光導波路4の各々に接している。n型半導体領域32は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y方向に沿って延びている。なお、n型半導体領域32は、第2電極50と接する部分にn型不純物濃度が濃く調整された高濃度領域を有していてもよい。
【0017】
クラッド層16は、半導体層14の一方の主面2Sを覆うように設けられている。クラッド層16は、光導波路4よりも屈折率が小さい材料で構成されている。クラッド層16の材料は、特に限定されるものではないが、例えば酸化シリコン(SiO2)であってもよい。クラッド層16には第1キャビティ24及び第2キャビティ34が形成されている。第1キャビティ24は、クラッド層16を貫通しており、半導体層14の一方の主面2Sのうちp型半導体領域22が形成されている範囲の一部を露出させるように形成されている。第1キャビティ24は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y方向に沿って延びている。第2キャビティ34は、クラッド層16を貫通しており、半導体層14の一方の主面2Sのうちn型半導体領域32が形成されている範囲の一部を露出させるように形成されている。第2キャビティ34は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y方向に沿って延びている。第1キャビティ24及び第2キャビティ34はいずれも、クラッド層16の上面から半導体層14の一方の主面2Sに向けて先細り形状に形成されている。
【0018】
第1電極40と第2電極50は、光導波路4を間に置いてx軸方向に離れて配置されており、電気的に絶縁されている。第1電極40は、クラッド層16上に成膜されている。第1電極40は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y軸方向に沿って延びている。第2電極50も同様に、クラッド層16上に成膜されている。第2電極50は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y軸方向に沿って延びている。
【0019】
第1電極40は、第1透明電極42と、第1配線電極44と、を有している。第1透明電極42は、クラッド層16の第1キャビティ24内に設けられており、p型半導体領域22に接している。この例では、第1キャビティ24内には第1透明電極42のみが設けられている。第1透明電極42はまた、クラッド層16の第1キャビティ24の外であって、クラッド層16の上面にも延びている。第1配線電極44は、クラッド層16の第1キャビティ24の外に設けられており、クラッド層16の上面に延びた第1透明電極42上の一部に設けられている。第1配線電極44は、第1透明電極42を介してp型半導体領域22に電気的に接続されている。このように、第1配線電極44は、光導波路4の凸部4Aから積層方向(z軸方向)及び面方向(x軸方向)に離れた位置にある。
【0020】
第2電極50は、第2透明電極52と、第2配線電極54と、を有している。第2透明電極52は、クラッド層16の第2キャビティ34内に設けられており、n型半導体領域32に接している。この例では、第2キャビティ34内には第2透明電極52のみが設けられている。第2透明電極52はまた、クラッド層16の第2キャビティ34の外であって、クラッド層16の上面にも延びている。第2配線電極54は、クラッド層16の第2キャビティ34の外に設けられており、クラッド層16の上面に延びた第2透明電極52上の一部に設けられている。第2配線電極54は、第2透明電極52を介してn型半導体領域32に電気的に接続されている。このように、第2配線電極54は、光導波路4の凸部4Aから積層方向(z軸方向)及び面方向(x軸方向)に離れた位置にある。
【0021】
第1電極40の第1透明電極42及び第2電極50の第2透明電極52は、光導波路4を伝搬する伝搬光に対して透明な材料である。透明電極42,52の材料は、透明導電性酸化物(TCO)であってもよい。透明導電性酸化物(TCO)は、特に限定されるものではないが、例えば酸化インジウム系(InO系)、酸化スズ系(SnO系)、および酸化亜鉛系(ZnO系)であってもよい。これら酸化物半導体にドーピングされる不純物は、例えばインジウム(In)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、フッ素(F)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ゲルマニウム(Ge)、モリブテン(Mo)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、テルル(Te)、ホウ素(B)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、シリコン(Si)からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
第1電極40の第1配線電極44は、光フェーズドアレイ1に設けられた制御端子(図示省略)と第1透明電極42を電気的に接続するための配線に接続される。第1配線電極44の材料は、金属で構成されており、特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム(Al)であってもよい。
図3に示すように、第1配線電極44は、平面視したときに、y軸方向に沿って第1透明電極42の一端から他端まで延びて形成されていてもよい。この例に代えて、第1配線電極44は、平面視したときに、y軸方向における第1透明電極42の一部にのみ接するように形成されていてもよい。
【0023】
第2電極50の第2配線電極54は、光フェーズドアレイ1に設けられた制御端子(図示省略)と第2透明電極52を電気的に接続するための配線に接続される。第2配線電極54の材料は、金属で構成されており、特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム(Al)であってもよい。
図3に示すように、第2配線電極54は、平面視したときに、y軸方向に沿って第2透明電極52の一端から他端まで延びて形成されていてもよい。第2配線電極54は、平面視したときに、y軸方向における第2透明電極52の一部にのみ接するように形成されていてもよい。
【0024】
(位相変調器の動作)
第1電極40に第2電極50よりも正となる電圧が印加されると、第1電極40からp型半導体領域22と光導波路4とn型半導体領域32を経由して第2電極50に電流が流れる。これにより、光導波路4のキャリア濃度が増加し、光導波路4を伝搬する伝搬光の位相が変化する。位相変調器8は、光導波路4を伝搬する伝搬光の位相を調整し、位相変調した伝搬光を送信アンテナ9(
図1参照)に出力する。
【0025】
光導波路4を伝搬する伝搬光の分布は、光導波路4の周囲を含む範囲である。光導波路4を伝搬する伝搬光の一部は、第1電極40の第1透明電極42及び第2電極50の第2透明電極52に接触する。例えば、これら接触する部分が不透明な金属電極の場合、伝搬光の一部がその金属電極で吸収され、光損失が増加する。一方、位相変調器8では、これら接触する部分が透明電極42、52で構成されているので、そのような光損失が抑えられる。このため、位相変調器8は、伝搬光の強度を維持したまま伝搬光を送信アンテナ9(
図1参照)に出力することができる。この結果、光フェーズドアレイ1(
図1参照)がLiDAR装置に搭載された場合、LiDAR装置は長距離の測長が可能となる。
【0026】
また、光フェーズドアレイ1(
図1参照)がLiDAR装置に搭載された場合、送信アンテナ9から出射される光ビームのスキャン角を広角化するためには、隣り合う光導波路4のピッチ間距離10Dを小さくしなければならない。例えば、波長1550nmの光ビームをスキャン角度60°で出射するためには、隣り合う光導波路4のピッチ間距離10Dを1.55μm以下とする必要がある。しかしながら、光導波路4のピッチ間距離10Dを小さくすると、上記したような伝搬光の一部が金属電極で吸収されて光損失が増加するという問題が顕在化してくる。透明電極42、52を有する位相変調器8は、このような光損失の増加を抑えることができる。この結果、位相変調器8を含む光フェーズドアレイ1が搭載されたLiDAR装置は、光損失の増加を抑えながら隣り合う光導波路4のピッチ間距離10Dを小さくすることができるので、スキャン角を広角化することができる。さらに、光導波路4のピッチ間距離10Dを小さくすることができるので、光フェーズドアレイ1を小型化することもできる。
【0027】
また、位相変調器8では、第1電極40の第1配線電極44が、第1キャビティ24を間に置いて光導波路4から離れた側に配置されている。同様に、位相変調器8では、第2電極50の第2配線電極54が、第2キャビティ34を間に置いて光導波路4から離れた側に配置されている。このように、配線電極44,54と光導波路4の間に距離が確保されているので、伝搬光の一部が配線電極44,54で吸収されて光損失が増加することが抑えられている。なお、クラッド層16の膜厚を十分に確保すれば、配線電極44,54がキャビティ24,34で囲まれた内側に配置されてもよい。この場合、光導波路4のピッチ間距離10Dを小さくすることができるので、光フェーズドアレイ1を小型化することもできる。
【0028】
(位相変調器の製造方法)
以下、
図4~
図9を参照して位相変調器8の製造方法を説明する。まず、
図4に示すように、絶縁層12と半導体層14が積層した基板2を準備する。
【0029】
次に、
図5に示すように、エッチング技術を利用して半導体層14の一部を除去し、光導波路4の凸部4Aを形成する。次に、イオン注入技術を利用してp型不純物及びn型不純物を半導体層14の一部に導入し、導入した不純物を活性化させてp型半導体領域22及びn型半導体領域32を形成する。
【0030】
次に、
図6に示すように、成膜技術を利用して半導体層14上にクラッド層16を成膜する。クラッド層16の上面には、光導波路4の凸部4Aに対応した凹凸が形成される。
【0031】
次に、
図7に示すように、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング技術を利用してクラッド層16に第1キャビティ24及び第2キャビティ34を形成する。第1キャビティ24及び第2キャビティ34はいずれも、クラッド層16の上面から半導体層14の一方の主面2Sに向けて先細り形状に形成されている。本明細書では、
図6及び
図7に示す工程はクラッド層形成工程と称される。
【0032】
次に、
図8に示すように、スパッタ技術を利用してキャビティ24,34内及びクラッド層16上に透明電極膜70を成膜する。スパッタ技術はステップカバレッジが良好なので、透明電極膜70はコンフォーマルに成膜される。また、キャビティ24,34が先細り形状に形成されているので、これらキャビティ24,34内に透明電極膜70が良好に成膜される。なお、スパッタ技術に代えて、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術又はALD(Atomic Layer Deposition)技術を用いて透明電極膜70を成膜してもよい。
【0033】
次に、透明電極膜70の消衰係数及び電気抵抗値を調整するために熱処理工程を実施する。この熱処理工程は、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱の組み合わせで構成される。この例では、最初に酸素(O2)雰囲気で加熱を行い、次に、窒素(N2)雰囲気で加熱を行う。酸素(O2)雰囲気の加熱は、特に限定されるものではないが、例えば400℃、20分の条件で実施される。窒素(N2)雰囲気の加熱は、特に限定されるものではないが500℃、60分の条件で実施される。
【0034】
透明電極膜70に必要とされる特性は、低い消衰係数と低い電気抵抗値である。透明電極膜70の材料である透明導電性酸化物(TCO)では、その酸素欠陥(酸素空孔及び格子間酸素)がキャリアとして働く。透明導電性酸化物(TCO)内のキャリアは、電気伝導性を持つとともに、光の透過を阻害する。透明導電性酸化物(TCO)に対して酸素雰囲気中の加熱を行うと、酸素欠陥が埋まり、キャリアの消失による電気抵抗値の上昇と消衰係数の低下が起きる。一方、透明導電性酸化物(TCO)に対して非酸素雰囲気中の加熱を行うと、酸素が抜けてキャリアの生成による電気抵抗値の低下と消衰係数の上昇が起きる。消衰係数の上下幅及び電気抵抗値の上下幅は、酸素雰囲気中の加熱及び非酸素雰囲気中の加熱の条件に依存する。このように、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱を組み合わせることで、透明導電性酸化物(TCO)の消衰係数と電気抵抗値を調整することができる。この例では、酸素欠陥による消衰係数の上昇を抑えた状態で、必要な導電性を確保した電気抵抗値となるように、酸素雰囲気中の加熱及び非酸素雰囲気中の加熱の条件が調整されている。また、この熱処理では、消衰係数と電気抵抗値を調整に加えて、透明電極膜70内に成膜時に形成された酸素欠陥以外の他の種類の欠陥も消失させることができる。なお、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱を実施する順序は特に限定されるものではない。
【0035】
次に、
図9に示すように、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング技術を利用して透明電極膜70に開口部を形成し、第1透明電極42と第2透明電極52を形成する。開口部の幅は、第1透明電極42と第2透明電極52が電気的に絶縁される限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、光導波路4の凸部4Aの上方にある透明電極膜70の開口部は、第1キャビティ24及び第2キャビティ34の端部まで延びていてもよい。なお、この例では、透明電極膜70に開口部を形成する前に上記した熱処理を実施しているが、この例に代えて、透明電極膜70に開口部を形成した後に上記した熱処理を実施してもよい。本明細書では、
図8及び
図9に示す工程は透明電極膜形成工程と称される。
【0036】
その後、スパッタ技術を利用してアルミニウムの電極膜を成膜した後に、フォトリソグラフィー技術及びウェットエッチング技術を利用して電極膜を加工し、第1配線電極44及び第2配線電極54を形成する。これらの工程を経て、位相変調器8を製造することができる。
【0037】
(位相変調器の変形例)
以下、いくつかの位相変調器8の変形例を説明する。
図2及び
図3に示す位相変調器8と共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
(位相変調器の第1の変形例)
図10に示す位相変調器8の第1の変形例は、クラッド層16の上面が平坦化されているとともに、第1キャビティ24及び第2キャビティ34が略垂直に形成されていることを特徴としている。このような構成によると、第1キャビティ24及び第2キャビティ34の幅を狭くすることができるので、光導波路4のピッチ間距離10Dが小さくなり、光フェーズドアレイ1を小型化することができる。
【0039】
(位相変調器の第1の変形例の製造方法)
まず、上記した
図4~
図6までの工程を実施する。次に、
図11に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を利用してクラッド層16の上面を平坦化する。このように、この製造方法では、クラッド層形成工程に平坦化処理が追加されている。
【0040】
次に、
図12に示すように、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング技術を利用してクラッド層16に第1キャビティ24及び第2キャビティ34を形成する。第1キャビティ24及び第2キャビティ34はいずれも、クラッド層16の上面から半導体層14の一方の主面2Sに向けて略垂直に形成されている。クラッド層16の上面が平坦化処理されているので、フォトリソグラフィーによるパターン形成が容易となる。
【0041】
次に、
図13に示すように、スパッタ技術を利用してキャビティ24,34内及びクラッド層16上に透明電極膜70を成膜する。透明電極膜70は、キャビティ24,34が完全に充填されるように厚く成膜される。次に、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱の組み合わせで構成される熱処理を実施し、透明電極膜70の消衰係数及び電気抵抗値を調整する。なお、この熱処理は、透明電極膜70に開口部を形成した後に実施されてもよい。
【0042】
次に、
図14に示すように、CMP技術を利用して透明電極膜70の上面を平坦化した後に、フォトリソグラフィー技術及び反応性イオンエッチング技術を利用して透明電極膜70に開口部を形成し、第1透明電極42と第2透明電極52を形成する。
【0043】
その後、スパッタ技術を利用してアルミニウムの電極膜を成膜した後に、フォトリソグラフィー技術及びウェットエッチング技術を利用して電極膜を加工し、第1配線電極44及び第2配線電極54を形成する。これらの工程を経て、位相変調器8の第1の変形例を製造することができる。
【0044】
(位相変調器の第2の変形例)
図15に示す位相変調器8の第2の変形例は、第1キャビティ24内に第1透明電極42と第1配線電極44が積層して配置されており、第2キャビティ34内に第2透明電極52と第2配線電極54が積層して配置されていることを特徴としている。このような構成によると、キャビティ24,34の外に配線電極44,54を配設するためのスペースを広く確保する必要がないので、光導波路4のピッチ間距離10Dが小さくなり、光フェーズドアレイ1を小型化することができる。
【0045】
(位相変調器の第2の変形例の製造方法)
クラッド層16にキャビティ34,24を形成するまでの工程は、第1の変形例と同一である。次に、
図16に示すように、スパッタ技術を利用してキャビティ24,34内及びクラッド層16上に透明電極膜70を成膜する。透明電極膜70は、キャビティ24,34が充填されないように薄く成膜される。次に、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱の組み合わせで構成される熱処理を実施し、透明電極膜70の消衰係数及び電気抵抗値を調整する。なお、この熱処理は、クラッド層16上に成膜された透明電極膜70を除去した後に実施されてもよい。
【0046】
次に、
図17に示すように、エッチング技術又はCMP技術を利用してクラッド層16上に成膜された透明電極膜70を除去する。これにより、第1キャビティ24内に第1透明電極42が残存し、第2キャビティ34内に第2透明電極52が残存する。
【0047】
その後、スパッタ技術を利用してアルミニウムの電極膜を成膜した後に、フォトリソグラフィー技術及びウェットエッチング技術を利用して電極膜を加工し、第1配線電極44及び第2配線電極54を形成する。これらの工程を経て、位相変調器8の第2の変形例を製造することができる。
【0048】
(位相変調器の第3の変形例)
図18に示す位相変調器8の第3の変形例は、第1キャビティ24内に設けられている第1透明電極42が、高濃度透明電極42aと、低濃度透明電極42bと、を有している。高濃度透明電極42aは、低濃度透明電極42bよりもドーピングされる不純物の濃度が濃く、キャリア濃度が高く調整されている。位相変調器8の第3変形例では、第2キャビティ34内に設けられている第2透明電極52も、高濃度透明電極52aと、低濃度透明電極52bと、を有している。第2透明電極52の構成は、第1透明電極42と同一である。以下では第1透明電極42についてのみ説明するが、第2透明電極52も同様である。
【0049】
高濃度透明電極42aと低濃度透明電極42bは、この順で積層している。高濃度透明電極42aは、半導体層14に形成されたp型半導体領域22と低濃度透明電極42bの間に設けられており、p型半導体領域22と低濃度透明電極42bの各々に接している。低濃度透明電極42bのz軸方向の厚みは、高濃度透明電極42aのz軸方向の厚みよりも大きい。
【0050】
透明電極42のキャリア濃度が小さいと、伝搬光の吸収が抑えられる。一方、透明電極42のキャリア濃度が小さいと、p型半導体領域22に対するコンタクト抵抗が増加する。位相変調器8の第3の変形例では、キャリア濃度が高い高濃度透明電極42aが設けられているので、p型半導体領域22と透明電極42の間のコンタクト抵抗が低下する。一方、低濃度透明電極42bのキャリア濃度が低いので、低濃度透明電極42bにおける伝搬光の吸収が抑えられている。このように、位相変調器8の第3の変形例では、伝搬光の吸収の抑制とコンタクト抵抗の増加の抑制を両立することができる。
【0051】
(位相変調器の第4の変形例)
図19に示す位相変調器8の第4の変形例は、光導波路4の凸部4Aを覆うクラッド層16上に第3電極60を備えていることを特徴としている。第3電極60は、第3透明電極62と、第3配線電極64と、を有している。第3透明電極62は、クラッド層16を介して、光導波路4の凸部4Aに対向しており、平面視したときに、光導波路4の凸部4Aと重複する位置に配置されている。第3透明電極62は、平面視したときに、光導波路4が延びる方向、即ち、y軸方向に沿って延びている。第3透明電極62のキャリア濃度は、第1透明電極42及び第2透明電極52のキャリア濃度よりも薄い。第3配線電極64は、第3透明電極62上に設けられている。第3配線電極64は一対の電極で構成されており、これら一対の電極は、平面視したときに、y軸方向に離れて配置されている。第3配線電極64を構成する一対の電極間には、第3透明電極62が設けられている。このため、第3配線電極64を構成する一対の電極間に電圧を印加すると、第3透明電極62を介して電流が流れる。第3透明電極62のキャリア濃度は薄く調整されているので、第3透明電極62に電流が流れると、ジュール熱によって第3透明電極62が発熱する。位相変調器8の第4の変形例は、第1電極40と第2電極50を用いた伝搬光の位相調整に加えて、第3電極60で発生させた熱によっても伝搬光の位相を調整することができる。このため、位相変調器8の第4の変形例は、より高精度に伝搬光の位相を調整することができる。
【0052】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0053】
(第1特徴)
位相変調器であって、
光導波路を含む半導体層と、
前記半導体層上に設けられているクラッド層であって、前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び第2キャビティが形成されている、クラッド層と、
前記第1キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第1電極と、
前記第2キャビティを介して前記半導体層の前記上面に接している第2電極と、を備えており、
前記光導波路は、前記第1電極が前記半導体層の前記上面に接する位置と前記第2電極が前記半導体層の前記上面に接する位置の間に配置されており、前記第1電極と前記第2電極の間に電圧を印加したときに、伝搬する伝搬光の位相が変化するように構成されており、
前記第1電極は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極を有しており、
前記第2電極は、前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有している、位相変調器。
【0054】
(第2特徴)
前記半導体層は、
前記第1電極に接する第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2電極に接する第2導電型の第2半導体領域と、を有しており、
前記光導波路は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域の間に配置されている、特徴1に記載の位相変調器。
【0055】
(第3特徴)
前記第1キャビティ内には前記第1透明電極のみが設けられており、
前記第2キャビティ内には前記第2透明電極のみが設けられている、特徴2に記載の位相変調器。
【0056】
(第4特徴)
前記第1電極は、前記第1透明電極を介して前記第1半導体領域に電気的に接続されている第1配線電極を含み、
前記第1配線電極は、前記第1キャビティの外に設けられており、
前記第2電極は、前記第2透明電極を介して前記第2半導体領域に電気的に接続されている第2配線電極を含み、
前記第2配線電極は、前記第2キャビティの外に設けられている、特徴3に記載の位相変調器。
【0057】
(第5特徴)
前記第1透明電極及び前記第2透明電極は、透明導電性酸化物(TCO)である、特徴1~4のいずれか1つに記載の位相変調器。
【0058】
(第6特徴)
位相変調器の製造方法であって、
半導体層に光導波路を形成する光導波路形成工程と、
前記半導体層上にクラッド層を形成するクラッド層形成工程であって、前記クラッド層には前記半導体層の上面の一部を露出させる第1キャビティ及び第2キャビティが形成されている、クラッド層形成工程と、
前記クラッド層上に透明電極膜を形成する透明電極膜形成工程であって、前記透明電極膜は、前記第1キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第1透明電極及び前記第2キャビティ内の少なくとも一部に設けられている第2透明電極を有している、透明電極膜形成工程と、を備えている、位相変調器の製造方法。
【0059】
(第7特徴)
前記透明電極膜を熱処理する熱処理工程、をさらに備えており、
前記透明電極膜は、透明導電性酸化物(TCO)であり、
前記熱処理は、酸素雰囲気中の加熱と非酸素雰囲気中の加熱を含む、特徴6に記載の位相変調器の製造方法。
【0060】
(第8特徴)
前記透明電極膜形成工程は、
前記第1キャビティ内及び前記第2キャビティ内を含む前記クラッド層上に前記透明電極膜を成膜することと、
前記透明電極膜の一部に開口部を形成し、前記第1キャビティ内に設けられている前記第1透明電極と前記第2キャビティ内に設けられている前記第2透明電極を絶縁することと、を有しており、
前記熱処理は、前記透明電極膜の一部に前記開口部を形成する前に、又は、前記透明電極膜の一部に前記開口部を形成した後に実施される、特徴7に記載の位相変調器の製造方法。
【0061】
(第9特徴)
前記クラッド層形成工程は、前記クラッド層の上面を平坦化することを含む、特徴6~8のいずれか1つに記載の位相変調器の製造方法。
【0062】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0063】
2:基板、 4:光導波路、 4A:凸部、 8:位相変調器、 10:単位ユニット、 10D:ピッチ間距離、 12:絶縁層、 14:半導体層、 16:クラッド層、 22:p型半導体領域、 24:第1キャビティ、 32:n型半導体領域、 34:第2キャビティ、 40:第1電極、 42:第1透明電極、 44:第1配線電極、 50:第2電極、 52:第2透明電極、 54:第2配線電極、