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特開2024-134377樹脂組成物、硬化体及びその製造方法、封止剤、接着剤、並びに、解体性接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134377
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化体及びその製造方法、封止剤、接着剤、並びに、解体性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20240926BHJP
   C08G 65/44 20060101ALI20240926BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240926BHJP
   C09J 171/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G65/44
C09J163/00
C09J171/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044643
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】福圓 真一
【テーマコード(参考)】
4J005
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J005AA26
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
4J036AC01
4J036AC02
4J036AC12
4J036AC16
4J036AD08
4J036DC40
4J036DC41
4J036FA01
4J036FB12
4J036JA06
4J036JA07
4J040EC061
4J040EE062
4J040HA306
4J040HC23
4J040KA14
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】粘度調整が可能であり、硬化物の耐溶剤性を維持しつつ、低吸水性及び低誘電性を有し、さらに溶剤を使用しなくても加工時の流動性が改善された、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルが、置換されていてもよい炭素数7~25の飽和又は不飽和炭化水素基を有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R13は置換されていてもよい炭素数15の飽和又は不飽和炭化水素基、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、及び、下記式(3)で表される置換基のうちのいずれかであり、R11及びR12のいずれもが水素原子であることはない。)
【化2】
(式(3)中、R31は、各々独立して置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基を形成するか、又は、2つのR31に含まれる原子が互いに結合して炭素数1~8の環状アルキル基を形成しており、R32は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立して、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。)
【請求項4】
前記式(1)のR11が、前記式(3)で表される置換基であることを特徴とする、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(3)で表される置換基が、t-ブチル基であることを特徴とする、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテルが、前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項3に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(2)中、R21は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子であり、R22は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子である。)
【請求項7】
前記ポリフェニレンエーテルは、前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、前記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対して、
前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が51mol%以上100mol%未満であり、
前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が0mol%超49mol%以下である
ことを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂組成物。
【化4】
・・・式(4)
(式(4)中、R41、R42、R43は、各々独立して、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、又は、置換されていてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する、炭素数7~25の有機基であり、R41、R42、R43のうちの少なくとも1つが、置換されていてもよい窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する炭素数7~25の有機基である。)
【請求項9】
前記ポリフェニレンエーテルが、前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式(2)中、R21は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子であり、R22は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子である。)
【請求項10】
前記ポリフェニレンエーテルは、前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、前記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、
前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が7~50mol%であり、
前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が50~93mol%である
ことを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリフェニレンエーテルと前記エポキシ樹脂の合計量に対する、
前記ポリフェニレンエーテルの含有比率が0.5~59.0質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有比率が41.0~99.5質量%である
ことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が、60000未満であることを特徴とする、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする、硬化体。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、溶媒を使用せず0~70℃にて混合し、その後、100~300℃にて熱硬化させることを特徴とする、硬化体の製造方法。
【請求項15】
前記熱硬化させる工程において、25℃において液状の硬化促進剤を用いることを特徴とする、請求項14に記載の硬化体の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の硬化体を含むことを特徴とする、封止剤。
【請求項17】
請求項13に記載の硬化体を含むことを特徴とする、接着剤。
【請求項18】
請求項13に記載の硬化体を含むことを特徴とする、解体性接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化体及びその製造方法、封止剤、接着剤、並びに、解体性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を構成する絶縁材料としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂等を含浸させたプリプレグが主に使用されていた。次世代高速通信では、高周波を用いるため伝送損失が増加傾向にあり、伝送損失を低減するべく、エポキシ樹脂組成物の低誘電化が検討されている。
また、近年、液状封止材料、アンダーフィル材料、接着剤等、液状のエポキシ樹脂組成物の市場が拡大しているのに伴い、硬化物の耐溶剤性を維持しつつ、低流動・低吸水・低誘電特性に優れた、溶剤を用いない液状硬化剤及び改質剤のニーズが高まっている。
ここで、低誘電正接、低吸水性、耐熱性等を改善するための改質剤としては、ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」ともいう。)が知られており、電気・電子分野、自動車分野、食品・包装分野の製品・部品用材料、その他の各種工業材料分野の材料として幅広く用いられている。特に、その低誘電特性を活かし、基板材料等の電気電子用途など、様々な用途における改質剤としての応用が進められている。
【0003】
エポキシ樹脂は低粘度液状のものから、溶融時高粘度である固体状のものまで幅広い仕様があり、基材に含侵させる製造条件、硬化条件などに併せ、粘度を増減することが求められる。粘度調整剤としては、低誘電正接であること、エポキシ樹脂と反応可能であり、硬化物より抽出されないことが求められ、粘度の異なる2種類以上のエポキシ樹脂の混合系、高分子量化したビスフェノールA型エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂)等を添加することが知られている。
しかしながら、近年、電気絶縁特性に対する要求はますます厳しくなっており、さらに低吸水且つ低誘電なエポキシ樹脂系の粘度調整剤が求められている。例えば、特許文献1及び2には、より低誘電率、低誘電正接なフェノキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、ポリフェニレンエーテルをプリント配線板等に用いる場合には、有機溶媒に溶解して用いられている。しかしながら、2,6-ジメチルフェノールに代表される、1価フェノールから誘導される繰返し単位を有する高分子量のポリフェニレンエーテルは、クロロホルム等の非常に毒性が高い溶媒には溶解するものの、良溶媒として知られているトルエン等の芳香族系溶媒に対しても、室温で高濃度では溶けにくいことが知られている。
そのため、特許文献3には、低分子量化したポリフェニレンエーテルを、溶媒を用いることなく220~260℃の高温にてエポキシ樹脂と混合したエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-101449号公報
【特許文献2】特開2007-277333号公報
【特許文献3】特表2003-527462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に開示されたような、エポキシ樹脂の改質剤としてのフェノキシ樹脂やポリフェニレンエーテルは、固形であり、粘度を低減させるため多量の溶剤を用いて溶液を調合するか、高温でエポキシ樹脂自体に融解させる調合方法が必要になる、という課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粘度調整が可能であり、硬化物の耐溶剤性を維持しつつ、低吸水性及び低誘電性を有し、さらに溶剤を使用しなくても加工時の流動性が改善された、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含む樹脂組成物、硬化体及びその製造方法、封止剤、接着剤、並びに、解体性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
〔2〕前記ポリフェニレンエーテルが、置換されていてもよい炭素数7~25の飽和又は不飽和炭化水素基を有することを特徴とする、上記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする上記〔2〕に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R13は置換されていてもよい炭素数15の飽和又は不飽和炭化水素基、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、及び、下記式(3)で表される置換基のうちのいずれかであり、R11及びR12のいずれもが水素原子であることはない。)
【化2】
(式(3)中、R31は、各々独立して置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基を形成するか、又は、2つのR31に含まれる原子が互いに結合して炭素数1~8の環状アルキル基を形成しており、R32は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立して、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。)
〔4〕前記式(1)のR11が、前記式(3)で表される置換基であることを特徴とする、上記〔3〕に記載の樹脂組成物。
〔5〕前記式(3)で表される置換基が、t-ブチル基であることを特徴とする、上記〔4〕に記載の樹脂組成物。
〔6〕前記ポリフェニレンエーテルが、前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする上記〔3〕に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(2)中、R21は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子であり、R22は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子である。)
〔7〕前記ポリフェニレンエーテルは、前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、前記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対して、
前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が51mol%以上100mol%未満であり、
前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が0mol%超49mol%以下である
ことを特徴とする、上記〔6〕に記載の樹脂組成物。
〔8〕前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、上記〔2〕に記載の樹脂組成物。
【化4】
・・・式(4)
(式(4)中、R41、R42、R43は、各々独立して、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、又は、置換されていてもよい窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する、炭素数7~25の有機基であり、R41、R42、R43のうちの少なくとも1つが、置換されていてもよい窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する炭素数7~25の有機基である。)
〔9〕前記ポリフェニレンエーテルが、前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むことを特徴とする、上記〔8〕に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式(2)中、R21は、各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子であり、R22は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基又はハロゲン原子である。)
〔10〕前記ポリフェニレンエーテルは、前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、前記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、
前記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が7~50mol%であり、
前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が50~93mol%である
ことを特徴とする、上記〔9〕に記載の樹脂組成物。
〔11〕前記ポリフェニレンエーテルと前記エポキシ樹脂の合計量に対する、
前記ポリフェニレンエーテルの含有比率が0.5~59.0質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有比率が41.0~99.5質量%である
ことを特徴とする、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔12〕前記ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が、60000未満であることを特徴とする、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔13〕上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の樹脂組成物からなることを特徴とする、硬化体。
〔14〕上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の樹脂組成物を、溶媒を使用せず0~70℃にて混合し、その後、100~300℃にて熱硬化させることを特徴とする、硬化体の製造方法。
〔15〕前記熱硬化させる工程において、25℃において液状の硬化促進剤を用いることを特徴とする、上記〔14〕に記載の硬化体の製造方法。
〔16〕上記〔13〕に記載の硬化体を含むことを特徴とする、封止剤。
〔17〕上記〔13〕に記載の硬化体を含むことを特徴とする、接着剤。
〔18〕上記〔13〕に記載の硬化体を含むことを特徴とする、解体性接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘度調整が可能であり、硬化物の耐溶剤性を維持しつつ、低吸水性及び低誘電性を有し、さらに溶剤を使用しなくても加工時の流動性が改善された、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含む樹脂組成物、硬化体及びその製造方法、封止剤、接着剤、並びに、解体性接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、この本実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
なお、本明細書において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、本明細書において、置換基とは、例えば、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子等をいう。
【0012】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルが含有する一部又は全部の水酸基が変性されたポリフェニレンエーテルを、単に「ポリフェニレンエーテル」と表現する場合がある。従って、「ポリフェニレンエーテル」と表現された場合には、特に矛盾が生じない限り、未変性のポリフェニレンエーテル及び変性されたポリフェニレンエーテルの両方を含む。
【0013】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルと、エポキシ樹脂と、を含む。
改質剤としてDSCによるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルを用いることによって、樹脂組成物の硬化処理時の流動性と硬化物の耐熱性をより高度に両立できる結果、樹脂組成物の粘度調整が可能となり、硬化物の耐溶剤性、低吸水性及び低誘電性を良好に維持でき、さらに溶剤を使用しなくても加工時の流動性についても確保できる。
【0014】
また、本実施形態の樹脂組成物では、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂の合計量に対して、前記ポリフェニレンエーテルの含有比率が0.5~59.0質量%であり、前記エポキシ樹脂の含有比率が41.0~99.5質量%であることが好ましい。前記ポリフェニレンエーテルの含有比率が0.5質量%以上で、且つ、前記エポキシ樹脂の含有比率が99.5質量%以下であることで、樹脂組成物の硬化物がより低誘電性化される傾向にある。また、前記ポリフェニレンエーテルの含有比率が59.0質量%以下で、且つ、前記エポキシ樹脂の含有比率が41.0質量%以上であることで、より良好に硬化できる傾向にある。
なお、本実施形態の樹脂組成物の粘度は、前記ポリフェニレンエーテル及び前記エポキシ樹脂の選定により、加工方法や硬化条件に併せ適宜調整可能である。
【0015】
(ポリフェニレンエーテル)
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルを含み、該ポリフェニレンエーテルは、DSCによるガラス転移温度が-100℃~50℃であるポリフェニレンエーテルである。
前記ポリフェニレンエーテルのDSCによるガラス転移温度は、-100℃以上であることを要し、-80℃以上であることが好ましく、-50℃以上であることがより好ましい。前記ポリフェニレンエーテルのDSCによるガラス転移温度が-100℃以上であれば樹脂組成物を硬化させた硬化物の耐熱性を発現できる。
また、前記ポリフェニレンエーテルのDSCによるガラス転移温度は、50℃以下であることを要し、25℃以下であることが好ましく、-5度以下であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度50℃以下であれば樹脂組成物の硬化処理温度80~300℃において十分な流動性を維持できる。
【0017】
なお、前記DSCによるガラス転移温度を調整する方法としては、例えば、高分子鎖間の相互作用を弱め、高分子鎖が動き易くする分子設計を行うことでガラス転移温度を下げることが可能である。特に限定はされないが、例えば、長鎖アルキル基を有する繰り返し単位をポリフェニレンエーテルに導入すればガラス転移温度を下げることが可能である。また、長鎖アルキル基を有する繰り返し単位の導入比率や、長鎖アルキル基の鎖長を適宜調整することによりDSCによるガラス転移温度を調整することが可能である。
また、示差走査熱量を測定するための測定装置については、特に限定はされず、市販のものを用いることができる。例えば、前記示差走査熱量測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製「DSC250」を用いることができる。
【0018】
前記ポリフェニレンエーテルは、樹脂組成物の硬化処理時の流動性と硬化物の耐熱性をより高度に両立する観点から、置換されていてもよい炭素数7~25の飽和又は不飽和炭化水素基を有することが好ましい。本実施形態の樹脂組成物を硬化させた硬化物の耐熱性向上の観点から、前記ポリフェニレンエーテルは、好ましくは炭素数20以下、さらに好ましくは炭素数15の飽和又は不飽和炭化水素基を有する。
さらに、前記樹脂組成物の硬化処理温度(80~300℃程度)において十分な流動性を維持する観点から、前記ポリフェニレンエーテルは、より好ましくは炭素数8以上、さらに好ましくは炭素数9以上の飽和又は不飽和炭化水素基を有する。
【0019】
また、前記ポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化6】
上記式(1)では、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、及び、式(3)で表される置換基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
ただし、R11及びR12のいずれもが水素原子であることはない。
好ましいR11及びR12としては、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、及び、式(3)で表される置換基の中から選択される少なくとも一つである。さらに好ましくは、R11が式(3)で表される置換基である。特に好ましくは、R11が式(3)で表される置換基であり、且つ、R12が水素原子である。
【0020】
【化7】
(式(3)中、R31は各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基であるか、又は2つのR31がそれらに含まれる原子が互いに結合して炭素数1~8の環状アルキル基を形成しており、R32は各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立して、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。)
また、上記式(3)で表される置換基としては、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基、及び、これらの基における末端の炭化水素基の水素がフェニル基で置換された基等が挙げられる。上記式(3)で表される置換基として、より好ましくは、tert-ブチル基、シクロヘキシル基であり、さらに好ましくは、tert-ブチル基である。また、これらに含まれる原子が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0021】
そして、本実施形態の樹脂組成物では、上記式(1)中、R11がt-ブチル基であり、且つ、R12が水素原子である態様が好ましい。
【0022】
なお、上記式(1)では、R13は、置換されていてもよい炭素数15の飽和又は不飽和炭化水素基であり、好ましくは、R13がC1531-2n(nは各々独立して0~3の整数である)で表される。
【0023】
また、前記ポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含んでもよい。
【化8】
(式(2)中、R21は各々独立して、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R22は各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【0024】
また、上記式(2)では、R21は、各々独立して、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。加えて、上記式(2)中、2つのR21は、共に同じ構造であることが好ましい。
【0025】
さらに、上記式(2)中、R22は各々独立して、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。上記式(2)中、2つのR22は、同一でも異なっていてもよい。好ましい態様としては、2つのR22がいずれも水素原子である態様や、一方が水素原子で且つ他方が炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくはメチル基)である態様が挙げられる。
【0026】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルをNMR、質量分析等の手法で解析することによりその構造を同定できる。
前記ポリフェニレンエーテルの構造を同定する具体的方法としては、フラグメンテーションを起こしにくいことが知られている電界脱離質量分析法(FD-MS)を実施し、検出されるイオンの間隔により繰り返しユニットを推定することが可能である。さらに電子イオン化法(EI)でフラグメントイオンのピーク解析やNMRによる構造解析と組み合わせることでポリフェニレンエーテルの構造を推定する方法が挙げられる。また、例えばH NMR等の解析手法を用いて求めることができる。
前記ポリフェニレンエーテルの構造は、より具体的には、後述の実施例に記載の方法により、同定することができる。
【0027】
また、前記ポリフェニレンエーテルは、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対して、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が51mol%以上100mol%未満であり、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が0mol%超49mol%以下であることが好ましい。
【0028】
さらに、室温にて液状とする観点から、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が、51mol%以上であることが好ましく、より好ましくは55mol%以上であり、さらに好ましくは60mol%以上である。
さらにまた、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより発現させる観点から、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が、95mol%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは90mol%以下である。
【0029】
また、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有量は用途に応じ適宜選択することが可能である。例えば、粘度調整としてより高粘度に調整したい場合には、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は多い方が好ましい。
【0030】
本実施形態のポリフェニレンエーテル100mol%に対して、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計モル比率は、80mol%以上であることが好ましく、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上であり、100mol%であってもよい。
【0031】
上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位のモル比率、及び、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のモル比率は、例えばH-NMR、13C-NMR等の解析手法を用いて求めることができ、より具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0032】
また、上記式(2)のフェノールは未置換のオルト位を有さないため(即ち、ヒドロキシル基が結合する炭素原子に関してオルト位の2つの炭素原子には水素原子が結合しないため)、フェノール性ヒドロキシル基とパラ位の炭素原子において支配的に別のフェノール性モノマーと反応できる。従って、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(5)の構造を有する繰り返し単位を含む。
【化9】
(式(5)中、R21とR22は式(2)におけるR21とR22と同じである。)
【0033】
上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位における、式(5)の構造を有する繰り返し単位のモル基準での含有量は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、さらに好適には99%であり、100%であってもよい。
【0034】
一方、上記式(1)のフェノールのR11及びR12は各々独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基及び前述の式(3)で表される置換基のうちのいずれかであり(ただし、R11及びR12のいずれもが水素原子であることはない)、R11及びR12のうちのいずれか一方が水素原子である場合、フェノール性ヒドロキシル基に加えて、フェノールのオルト位又はパラ位のいずれかで別のフェノール性モノマーと反応し得る。
従って、上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(6)の構造単位、下記式(7)の構造単位、下記式(8)の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことができる。
【化10】
【化11】
【化12】
(式(6)、式(7)、式(8)中のR11、R12、R13は、上記式(1)におけるR11、R12、R13と同様である。)
【0035】
上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位における、上記式(6)の構造単位、上記式(7)の構造単位、上記式(8)の構造単位のモル基準での合計含有量は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、さらに好適には99%であり、100%であってもよい。
【0036】
また、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化13】
上記式(4)中、R41、R42、R43は、各々独立して、炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基、及び置換されていてもよい窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する炭素数7~25の有機基であり、R41、R42、R43のうち1つ以上が、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1つ以上の原子を有する炭素数7~25の有機基である。
【0037】
上記式(4)中、R41、R42、R43のうち1つ以上が、硫黄原子を有する炭素数8~20の有機基であることが好ましく、硫黄原子を有する炭素数9~15の有機基であることがさらに好ましい。
【0038】
さらに、上記式(4)のフェノールとしては、具体的には、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾールであることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位に加え、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含んでもよい。
【0040】
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対して、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が7~50mol%であり、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率が50~93mol%であることが好ましい。
【0041】
室温にて液状とする観点から、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率は、7mol%以上であることが好ましく、より好ましくは10mol%以上であり、さらに好ましくは15mol%以上である。
また、樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより発現させる観点から、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有比率は、50mol%以下であることが好ましく、より好ましくは30mol%以下であり、さらに好ましくは20mol%以下である。
【0042】
また、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の含有量は、用途に応じ適宜選択することが可能である。例えば、粘度調整としてより高粘度に調整したい場合には、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は多い方が好ましい。
【0043】
本実施形態のポリフェニレンエーテル100mol%に対して、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計モル比率は、80mol%以上であることが好ましく、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上であり、100mol%であってもよい。
【0044】
上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、上記式(2)のフェノールから誘導された繰返し単位との合計100mol%に対する、上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位、及び、上記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のモル比率は、例えばH-NMR、13C-NMR等の解析手法を用いて求めることができる。
【0045】
上記式(4)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(9)の構造単位を有し、ポリフェニレンエーテルの末端に付加し得る。
【化14】
(式(9)中のR41、R42、R43は、上記式(4)におけるR41、R42、R43と同様である。)
【0046】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、流動化の観点より、重量平均分子量が60000未満であることが好ましく、より好ましくは40000未満であり、さらに好ましくは20000未満である。
【0047】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、下記式(10)の部分構造、下記式(11)の部分構造、下記式(12)の部分構造、及び下記式(13)の部分構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有してもよい。
【化15】
【化16】
【化17】
(式(12)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、上記飽和若しくは不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
【化18】
(式(13)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、上記飽和又は不飽和の2価の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
【0048】
なお、式(10)の部分構造、式(11)の部分構造、式(12)の部分構造、式(13)の部分構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造は、後述の変性工程により導入されてよく、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基の酸素原子と直接結合してよい。
【0049】
(ポリフェニレンエーテルの製造方法)
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、例えば、上記式(1)のフェノールを含む一価の原料フェノールの酸化重合を行う工程を少なくとも含む方法により得られる。上記酸化重合を行う工程は、上記式(1)のフェノール及び上記式(2)のフェノールを含む原料フェノールを酸化重合する工程であることが好ましい。
【0050】
上記式(1)のフェノールとしては、3-ペンタデシルフェノール、市販のカルダノール、3-ペンタデシルフェノールに炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基又は上記式(3)で表される置換基を導入した変性3-ペンタデシルフェノール、市販のカルダノールに炭素数1~12の直鎖状飽和炭化水素基又は上記式(3)で表される置換基を導入した変性カルダノール、等が挙げられる。前記3-ペンタデシルフェノールや市販のカルダノールに導入する置換基としては、多分岐化抑制、ゲル化抑制の観点よりR11に嵩高い置換基であるtert-ブチル基、シクロヘキシル基を導入すること、又はR11とR12の両方にメチル基を導入することが好ましい。R11とR12への置換基の導入方法としては、A)ルイス酸存在下、ハロゲン化アルキルを反応させる方法や、B)ブレンステッド酸存在下、イソブテン等を反応させる方法が挙げられる。
式(1)のフェノールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記式(2)のフェノールとしては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3-ジエチル-6-n―プロピルフェノール、2,3,6-トリブチルフェノール、2,6-ジ-n-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチル-3-n-ブチルフェノール、2,6-ジメチル-3-t-ブチルフェノール等が挙げられる。中でも、特に、安価であり入手が容易であるため、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノールが好ましい。
上記式(2)のフェノールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、前記ポリフェニレンエーテルは、例えば、上記式(4)のフェノールを含む一価の原料フェノールの酸化重合を行う工程を少なくとも含む方法により得られる。上記酸化重合を行う工程は、上記式(4)のフェノール及び上記式(2)のフェノールを含む原料フェノールを酸化重合する工程であることが好ましい。
【0053】
上記式(4)のフェノールとしては、市販品としては4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾールが好ましい。
【0054】
ここで、ポリフェニレンエーテルの製造方法では、酸化重合工程において、重合溶剤としてポリフェニレンエーテルの良溶剤である芳香族系溶剤を用いることができる。
ここで、ポリフェニレンエーテルの良溶剤とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶剤であり、このような溶剤を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼンのようなニトロ化合物;等が挙げられる。
【0055】
本実施形態で用いられる重合触媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることが可能な公知の触媒系を使用できる。一般的に知られている触媒系としては、酸化還元能を有する遷移金属イオンと当該遷移金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば、銅化合物とアミン化合物からなる触媒系、マンガン化合物とアミン化合物からなる触媒系、コバルト化合物とアミン化合物からなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミン化合物を加えることもある。
【0056】
本実施形態で好適に使用される重合触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物並びにアミン化合物からなる触媒であり、より好ましくは、アミン化合物として下記式(14)で表されるジアミン化合物を含む触媒である。
【化19】
(式(14)中、R14、R15、R16、R17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素原子ではない。R18は、炭素数2から5の直鎖状又はメチル分岐を持つアルキレン基である。)
【0057】
ここで述べられた触媒成分の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては、第一銅化合物、第二銅化合物又はそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また、第一銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲン又は酸から使用時に合成してもよい。しばしば用いられる方法は、先に例示の酸化第一銅とハロゲン化水素(又はハロゲン化水素の溶液)を混合して作製する方法である。
【0058】
前記ハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。また、これらは、水溶液や適当な溶剤を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
【0059】
これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、銅原子のモル数に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0060】
次に、前記触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する。例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-エチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-N-エチルエチレンジアミン、N-n-プロピルエチレンジアミン、N,N’-n-プロピルエチレンジアミン、N-i-プロピルエチレンジアミン、N,N’-i-プロピルエチレンジアミン、N-n-ブチルエチレンジアミン、N,N’-n-ブチルエチレンジアミン、N-i-ブチルエチレンジアミン、N,N’-i-ブチルエチレンジアミン、N-t-ブチルエチレンジアミン、N,N’-t-ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’-トリメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-1-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ジアミノペンタン等が挙げられる。本実施形態にとって好ましいジアミン化合物は、2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2又は3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して0.01モルから10モルの範囲が好ましい。
【0061】
本実施形態においては、前記重合触媒の構成成分として、第1級アミン及び第2級モノアミンを含むことができる。第2級モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-i-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N-フェニルメタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルプロパノールアミン、N-(m-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(2’,6’-ジメチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-クロロフェニル)エタノールアミン、N-エチルアニリン、N-ブチルアニリン、N-メチル-2-メチルアニリン、N-メチル-2,6-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0062】
また、前記重合触媒の構成成分として、第3級モノアミン化合物を含むこともできる。第3級モノアミン化合物とは、脂環式第3級アミンを含めた脂肪族第3級アミンである。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。これらの使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
【0063】
本実施形態では、従来より重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについても、何ら制限されない。そのような界面活性剤として、例えば、Aliquat336やCapriquatの商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。その使用量は、重合反応混合物の全量100質量%に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
【0064】
本実施形態の重合における酸素含有ガスとしては、純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、さらには空気と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。重合反応中の系内圧力は、常圧で充分であるが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0065】
重合の温度は、特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応選択性の低下やゲルが生成するおそれがあるので、0~60℃、好ましくは10~40℃の範囲である。
【0066】
ポリフェニレンエーテルの製造方法では、アルコール等の貧溶剤中で重合を行うこともできる。
【0067】
本実施形態において、重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、又はエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて、触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生成物を除去処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。上記の様に触媒である金属イオンが実質的に失活されている状態であれば、該混合物を加熱するだけで脱色される。また既知の還元剤を必要量添加する方法でも可能である。既知の還元剤としては、ハイドロキノン、亜二チオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0068】
前記ポリフェニレンエーテルの製造方法においては、銅触媒を失活させた化合物を抽出するため水を添加し、有機相と水相に液液分離を行った後、水相を除去することで有機相から銅触媒を除去してよい。この液液分離工程は、特に限定しないが、静置分離、遠心分離機による分離等の方法が挙げられる。上記液液分離を促進させるためには、公知の界面活性剤等を用いてもよい。
【0069】
続いて、前記ポリフェニレンエーテルの製造方法においては、液液分離後の上記ポリフェニレンエーテルが含まれた有機相を、溶剤を揮発させることで濃縮・乾燥させてよい。
【0070】
上記有機相に含まれる溶剤を揮発させる方法としては、特に限定はしないが、有機相を高温の濃縮槽に移し溶剤を留去させて濃縮する方法やロータリーエバポレーター等の機器を用いてトルエンを留去させて濃縮する方法等が挙げられる。加熱による熱劣化を抑制する観点より、減圧下での低温濃縮がより好ましい。
【0071】
乾燥工程における乾燥処理の温度としては、少なくとも60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましい。ポリフェニレンエーテルの乾燥を60℃以上の温度で行うと、ポリフェニレンエーテル粉体中の高沸点揮発成分の含有量を効率よく低減できる。
【0072】
前記ポリフェニレンエーテルを高効率で得るためには、乾燥温度を上昇させる方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を上昇させる方法が製造効率の観点から好ましい。乾燥工程は、混合機能を備えた乾燥機を使用することが好ましい。混合機能としては、撹拌式、転動式の乾燥機等が挙げられる。これにより処理量を多くすることができ、生産性を高く維持できる。
【0073】
本実施形態のポリフェニレンエーテルは上記式(2)のフェノールから誘導されるポリフェニレンエーテルを酸化剤の存在下で上記式(1)又は上記式(4)のフェノール化合物と平衡化する再分配反応によって製造することもできる。再分配反応は、当該技術において公知であり、例えばCooperらの米国特許第3496236号明細書、及びLiskaらの米国特許第5880221号明細書に記載されている。
【0074】
なお、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基へ官能基を導入する方法に限定はなく、例えば、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基と、炭素-炭素2重結合を有するカルボン酸(以下カルボン酸)とのエステル結合の形成反応により得られる。
エステル結合の形成法は、公知の様々な方法を利用することができる。例えば、a.カルボン酸ハロゲン化物とポリマー末端の水酸基との反応、b.カルボン酸無水物との反応によるエステル結合の形成、c.カルボン酸との直接反応、d.エステル交換反応による方法、等が挙げられる。
aのカルボン酸ハロゲン化物との反応は最も一般的な方法の一つである。カルボン酸ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物が一般的に用いられるが、他のハロゲンを利用しても構わない。反応は、水酸基との直接反応、水酸基のアルカリ金属塩との反応いずれでも構わない。カルボン酸ハロゲン化物と水酸基との直接反応ではハロゲン化水素等の酸が発生するため、酸をトラップする目的でアミン等の弱塩基を共存させてもよい。
bのカルボン酸無水物との反応やcのカルボン酸との直接反応では、反応点を活性化し、反応を促進するために、例えばカルボジイミド類やジメチルアミノピリジン等の化合物を共存させても構わない。
dのエステル交換反応の場合は、必要に応じて、生成したアルコール類の除去を行うことが望ましい。また、反応を促進させるために公知の金属触媒類を共存させても構わない。反応後は、アミン塩等の副生物等を除くために、水、酸性、又はアルカリ性の水溶液で洗浄しても構わないし、ポリマー溶液をアルコール類のような貧溶媒中に滴下し、再沈殿により、目的物を回収しても構わない。またポリマー溶液を洗浄後、減圧下に溶媒を留去し、ポリマーを回収しても構わない。
【0075】
前記変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、上述の本実施形態の多官能変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に限定されることなく、上述の、酸化重合工程、銅抽出及び副生成物除去工程、液液分離工程、濃縮・乾燥工程の順序や回数等を適宜調整してよい。
【0076】
なお、3-ペンタデシルフェノールや市販のカルダノール及び、任意で式(2)のフェノールとしての2,6-ジメチルフェノールを酸化重合を行った後に、得られたポリフェニレンエーテルに対して、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を導入することによって得られたものであってもよく、また、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールとしての変性3-ペンタデシルフェノールや変性カルダノール及び、任意で式(2)のフェノールとしての2,6-ジメチルフェノールの酸化重合を行うことによって得られたものであってもよく、さらに例示的にいえば、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールとしての変性3-ペンタデシルフェノールや変性カルダノール及び、任意で式(2)のフェノールとしての2,6-ジメチルフェノールを酸化重合を行った後に、得られたポリフェニレンエーテルに対して、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を導入することによって得られたものであってもよい。
【0077】
また、例示的にいえば、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(4)のフェノールとしての4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール及び、任意で式(2)のフェノールとしての2,6-ジメチルフェノールの酸化重合を行った後に、得られたポリフェニレンエーテルに対して、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を導入することによって得られたものであってもよい。
【0078】
(エポキシ樹脂)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したポリフェニレンエーテルに加えて、エポキシ樹脂を含む。該エポキシ樹脂は、一分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はない。硬化物の耐熱性を発現させる観点より、2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂が好ましい。一分子中に1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の例としては、フェニルグリシジルエーテル、フェノールポリ(n=2~8)エチレンオキサイドグリシジルエーテル、パラ-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、ジブロモフェニルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
また、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は1種でも2種以上でもよい。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂は、好適に使用できる。このようなエポキシ樹脂は市販品として入手が可能である。
【0079】
前記エポキシ樹脂としては、使用用途において固体と液状のものを任意に選択することができる。液状のエポキシ樹脂としては主鎖の繰り返し単位の数が小さいエポキシ樹脂を選定すればよく、例えば、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0080】
また、前記エポキシ樹脂の25℃における粘度は、25℃における粘度が5~30Pa・sであることが好ましく、5~25Pa・sであることがより好ましく、5~20Pa・sであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は1種でも2種以上でもよい。
【0081】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記ポリフェニレンエーテルと上記エポキシ樹脂に加え、硬化剤を含み、所望により、過酸化物、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤をさらに含むことができる。本実施形態に係る溶媒を含む樹脂組成物の構成要素について以下に説明する。
【0082】
(硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物では、上述したポリフェニレンエーテル及びエポキシ樹脂に加えて、硬化促進剤を使用することができる。例えば、イミダゾール類、アミン類、有機ホスフィン類、フェノール樹脂類等から選択できる。具体的には、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス-2,6-ジメトキシフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、o-クレゾールノボラック、フェノールノボラック、アリル化フェノールノボラック、ビスフェノー ルAノボラックが挙げられる。硬化促進剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。硬化剤としては、室温での作業性や樹脂組成物への分散性を改善できるため、25℃において液状の硬化促進剤が好ましい。具体的には、1-メチルイミダゾール、アリル化フェノールノボラック等が挙げられる。
【0083】
(架橋剤)
本実施形態の樹脂組成物では、架橋反応を起こすか、又は、促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、数平均分子量が4,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が4,000以下であると、溶媒を含む樹脂組成物の粘度の増大を抑制でき、また加熱成形時の良好な樹脂流動性が得られる。数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定した値としてよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
【0084】
前記架橋剤は、架橋反応の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤は、1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。本明細書にいう「炭素-炭素不飽和二重結合」とは、架橋剤がポリマー又はオリゴマーである場合、主鎖より分岐した末端に位置する二重結合をいう。炭素-炭素不飽和二重結合としては、例えば、ポリブタジエンにおける1,2-ビニル結合が挙げられる。
【0085】
前記架橋剤の数平均分子量が600未満である場合、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、2~4であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が600以上1,500未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、4~26であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が1,500以上4,000未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、26~60であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が上記特定値以上であることにより、本実施形態の溶媒を含む樹脂組成物は、架橋剤の反応性が一層高まり、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が一層向上し、その結果、一層優れた耐熱性を付与できる。一方で、架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が、上記特定値以下であることにより、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を付与できる。
【0086】
前記架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等の分子中にアクリル基やメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤は、これらの中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0087】
(有機過酸化物)
本実施形態では、ポリフェニレンエーテル及び架橋剤の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することもできる。
前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も樹脂組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電正接(さらに誘電率も低いことが好ましい)を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0088】
前記有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは155~185℃であり、より好ましくは160~180℃、さらに好ましくは165~175℃である。本明細書において、1分間半減期温度とは、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気化で熱分解させる方法で確認される値である。
【0089】
前記有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上であることにより、ポリフェニレンエーテル含有樹脂組成物を加熱加圧成型に供す際、ポリフェニレンエーテルを十分に溶融させてから架橋剤との反応が開始されることになるので、成型性に優れる傾向にある。一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が185℃以下であることにより、通常の加熱加圧成型条件(例えば最高到達温度200℃)での有機過酸化物の分解速度が十分であるため、架橋剤との架橋反応を効率的かつ緩やかに進めることができるので、良好な電気特性(特に誘電正接)を有する硬化物を形成可能である。
【0090】
ここで、1分間半減期温度が155~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、t-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、t-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-t-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、及びt-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
【0091】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。前記熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビ、ニル芳香族化合物の単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0092】
また、前記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有比率は、20質量%以上であることが好ましく、22質量%以上であることがより好ましく、99質量%以下であることができる。前記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有比率が20質量%以上であることにより、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が一層向上し、金属箔との密着強度が一層向上する傾向にある。
【0093】
前記ビニル芳香族化合物としては、分子内に芳香環及びビニル基を有すればよく、例えば、スチレン等が挙げられる。オレフィン系アルケン化合物としては、分子内に直鎖若しくは分岐構造を有するアルケンであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、及びイソプレン等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテルとの相溶性に一層優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0094】
なお、前記水素添加物における水素添加率は、特に限定されず、オレフィン系アルケン化合物由来の炭素-炭素不飽和二重結合が一部残存していてもよい。
【0095】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~300,000、より好ましくは20,000~290,000、さらに好ましくは30,000~280,000である。重量平均分子量が10,000以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、硬化した際に耐熱性に一層優れる傾向にある。重量平均分子量が300,000以下であることにより、本実施形態の樹脂組成物は、加熱成形時に一層良好な樹脂流動性を有する傾向にある。重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定した値としてよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
【0096】
なお、本実施形態の樹脂組成物は、上記で説明された種類及び重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むこともできる。
【0097】
(難燃剤)
本実施形態の樹脂組成物は、さらに難燃剤を含むことが好ましい。前記難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中の他の含有成分と相溶しないものであれば特に制限されない。好ましくは、難燃剤は、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル及び/又は架橋剤と相溶しない。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、難燃剤は、難燃剤と変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性、樹脂組成物の塗工性、実装された電子回路基板の特性に一層優れる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
【0098】
前記難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94のV-0レベルの難燃性を維持するという観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂と架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電正接を低く維持できる観点から(好ましくはさらに誘電率も低く維持できる観点から)、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0099】
(シリカフィラー)
本実施形態の樹脂組成物は、さらにシリカフィラーを含有してもよい。前記シリカフィラーとしては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカ等が挙げられる。シリカフィラーの含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部に対して、10~100質量部であることができる。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
【0100】
本実施形態の樹脂組成物は、上述した各成分の他にも、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤等を更に含むことができる。
【0101】
<硬化体>
本実施形態の硬化体は、本実施形態の樹脂組成物を硬化させてなることができる。
例えば、溶剤を実質的に使用せず、本実施形態の樹脂組成物を混合し、その後、100~300℃にて熱硬化させ、本実施形態の樹脂組成物の硬化体を得ることができる。硬化体を得る際の樹脂組成物の混合条件としては、特に限定はされないが、0~70℃が好ましく、より好ましくは0~50℃、さらに好ましくは0~30℃である。室温付近で樹脂組成物を混合することにより取扱い性が向上する。
また、本実施形態の樹脂組成物を硬化させる際には、25℃において液状の硬化促進剤を用いることができる。液状の硬化促進剤であれば、室温付近において樹脂組成物を混合する際に樹脂組成物へ均一に分散可能である。
【0102】
<封止剤>
本実施形態の封止剤は、上述した本実施形態の樹脂組成物の硬化体を含み、様々な用途に用いることができる。例えば、半導体パッケージ用の半導体封止用樹脂組成物に用いることが可能である。半導体パッケージの封止成形方法としては、トランスファー成形法、アンダーフィル工法等が挙げられる。封止用エポキシ樹脂組成物の形態は、液状、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状であることが好ましい。
前記トランスファー成形法の場合には、封止剤はタブレット状態で投入されるため基本的には固形でなければならない。耐熱性、耐湿性、難燃性の観点より、臭素化エポキシ、クレゾールノボラックエポキシ、ビフェニルエポキシ、ナフトールノボラックエポキシが好ましい。また同様な観点より、硬化剤としてはフェノールノボラック、アラルキルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノール、トリスフェノールメタンが好ましい。
また、前記ダイ&フィル工法やアンダーフィル工法の場合には、基本的には液状でなくてはならない。耐熱性、耐湿性の観点より、ビスフェノールA型エポキシ、ナフタレンエポキシが好ましく、ナフタレンエポキシがさらに好ましい。硬化剤としては、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸 無水物、メチルナジック酸等の酸無水物や日本化薬製カヤハードAA、三菱ケミカル製JER-W等の芳香族アミンが好ましい。
【0103】
<接着剤、解体性接着剤>
本実施形態の接着剤は、上述の本実施形態の樹脂組成物の硬化体を含み、様々な用途に用いることができる。例えば、建材、車両(自動車産業等)、電気電子産業用の接着剤用樹脂組成物に用いることが可能である。また、接着接合されている対象部材のリサイクルに適用でき、各種産業における高度な資源リサイクルを可能とする解体性接着剤に用いることができる。解体性接着剤とは、優れた接着強度特性および耐熱性を有しながら、接着・接合部材の使用後に接着体を容易に解体することが可能なエポキシ樹脂接着剤のことを言う。
【0104】
本実施形態の解体性接着剤は、上述の本実施形態の樹脂組成物の硬化体を含み、その特性としては、耐熱性向上のためガラス転移温度が80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。また、使用環境温度及び樹脂組成物のガラス転移温度よりも高い120~250℃にて接着剤硬化物を熱軟化させて解体さること考慮すると、250℃における貯蔵弾性率が80MPa以下であることが好ましく、50MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましい。貯蔵弾性率はシリカ等の無機フィラーの充填率を下げることで調整可能である。解体性接着剤用の樹脂組成物として用いる場合には、解体性を向上させるために熱膨張性マイクロカプセル、膨張黒鉛を含んでもよい。熱膨張性黒鉛とは、一般には、加熱により、元の体積の数倍から場合によって数百倍に膨張する特性を有する黒鉛を指す。熱膨張性マイクロカプセルとは、高分子膜にて液体ガスを包み込んだ微粒子であり、加熱されることにより殻の内部のガス圧が増し、また高分子膜が軟化することで、劇的に体積膨張する粒子のことである。
【0105】
本実施形態の樹脂組成物が高いガラス転移温度を維持しつつ、ガラス転移温度を超えた領域において著しく貯蔵弾性率が減少する理由としては次の通り考察している。2官能以上のエポキシ樹脂へ、単官能のポリフェニレンエーテルを添加することで架橋密度が減少し、高温での貯蔵弾性率を現象することが出来た。一方、マトリックスであるエポキシ樹脂へ、主鎖が剛直なポリフェニレンエーテルを微分散させることで、エポキシ樹脂マトリックスのガラス転移温度の大幅な低下も抑制出来ている。
【実施例0106】
以下、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
<ポリフェニレンエーテルの分析>
(1)ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量
測定装置として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、LC-2030C Plus)を用い、標準ポリスチレンとエチルベンゼンにより検量線を作成し、この検量線を利用して、得られた変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(Mw)の測定を行った。標準ポリスチレンとしては、分子量が、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550のものを用いた。
【0108】
カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用した。溶剤は、クロロホルムを使用し、溶剤の流量は1.0mL/分、カラムの温度は40℃として測定した。測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。上記測定データに基づきGPCにより得られた分子量分布を示す曲線に基づくピーク面積の割合から重量平均分子量を算出した。
【0109】
(2)ガラス転移温度の測定
ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置DSC250(ティー・エイ・インスツルメント)を用いて測定した。窒素雰囲気中、毎分10℃の昇温速度で―90から30℃まで加熱後、-90℃まで毎分20℃で降温し、その後、毎分10℃の昇温速度でガラス転移温度を測定した。
【0110】
<評価>
(1)樹脂組成物の粘度(40℃)
調整した樹脂組成物のサンプルを、粘度計(京都電子工業:EMS―1000S、モーター回転数1000rpm)を用いて、40℃における液粘度を求めた。
(2)流動性
実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の硬化物の板を観察し、以下の基準で樹脂組成物の流動性の判断をした。
○:硬化物に気泡が見られなかった。
×:硬化物に気泡が見られた。
【0111】
(3)トルエン浸漬試験
実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の硬化物のサンプルを、幅5mm、長さ50mmに切削し、十分量のトルエンに24h浸漬した後、その重量減少を以下の基準に従って評価した。
〇(良好):浸漬前後の重量減少が1質量%未満
×(不良):浸漬前後の重量減少が1質量%以上
【0112】
(4)誘電率・誘電正接及び吸水による誘電正接変化
実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の硬化物のサンプルについて、10GHzでの誘電率及び誘電正接を、スプリットシリンダ法にて測定した。測定装置として、ネットワークアナライザー(N5227B、KEYSIGHTTECHNOLOGIES社製)、及びスプリットシリンダ共振器(CR-710、EMラボ株式会社製)を用いた。
後述の方法で作製した樹脂組成物の硬化物のサンプルを、幅40mm、長さ40mm、厚さ約0.5mmの板状に切り出した。次に、200℃℃のオーブンに入れ1時間乾燥させた直後に、誘電率・誘電正接の測定を行った。
また、23℃相対湿度50±2%の環境下に24±2時間静置した。その後、23℃、相対湿度50±2%の環境下で上記測定装置を用いることにより、誘電率・誘電正接の測定を行った。
23℃相対湿度50±2%の環境下に24±2時間静置前後の誘電正接変化を調べることにより、吸水による誘電正接変化を確認した。すなわち、より低い吸水性である硬化物は、誘電正接の上昇が抑制される。
【0113】
(5)ガラス転移温度、250℃の貯蔵弾性率
実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の硬化物のサンプルについて、ガラス転移温度及び貯蔵弾性率を解析した。測定装置として、RSA-G2(TAインスツルメント社製)を用いた。測定条件は下記の通りである。
試料形状 :長さ25mm、幅5mm、厚さ0.5mm
測定周波数:1Hz
測定ひずみ:0.1%(初期値)
測定温度 :-80℃~300℃
昇温速度 :10℃/min
キャリアガス:N
【0114】
<樹脂組成物及びその硬化物の形成に使用される材料>
後述する各実施例及び比較例では、以下に示す材料を使用した。
(ポリフェニレンエーテル)
下記製造例2~5で得られたポリフェニレンエーテルを用いた。
【0115】
(製造例1)
-10℃のデュワー冷却器を接続した1Lのフラスコにカルダノール(商品名 NX-2026、Cardolite社製、345g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(5.9g)を順次加え、撹拌翼で撹拌した。その後、アルミブロック加熱装置で外温を80℃に設定して加熱した。イソブテン(100g)を10時間かけて徐々に導入した。イソブテンの供給を止め、その後、15時間、80℃にて攪拌を継続した。反応溶液の温度を40℃へ下げ、トルエン(300g)を反応溶液へ加えた。さらに5%水酸化ナトリウム水溶液(27g)を滴下した。イオン交換水(320g)を投入し、反応溶液の温度を70℃に昇温し、30分間撹拌した後、分液ロートを用いて、有機層を回収した。イオン交換水(760g)を回収した有機層へ加え、反応溶液の温度を70℃に昇温し、30分間攪拌し後、静置した。分液ロートを用いて、有機層を回収した。洗浄した得られた有機層をロータリーエバポレーターにより濃縮することで淡黄色油状の変性カルダノール(370g)を得た。
得られた化合物の構造同定は、H-NMRにより行った。その結果、反応前のカルダノール原料の2位にtert-ブチル基が導入されたカルダノールが主成分であることがわかった。
【0116】
カルダノール原料: H-NMR(CDCl) δ 7.15-7.10(m,1H),6.78-6.73(m,1H),6.68-6.62(m,2H),5.88-5.77(m,0.37H),5.50-5.29(m,3.44H),5.10-4.95(m,0.80H),4.81-4.64(m,1H),2.88-2.75(m,2.14H),2.55(t,2.13H),2.08-1.98(m,3.31H),1.69-1.53(m,3.15H),1.51-1.12(m,14.10H),0.94-0.85(m,1.95H)
変性カルダノール(生成物): H-NMR(CDCl) δ 7.16(d,1H), 6.69(dd,1H),6.49(d,1H),5.88-5.77(m,0.39H),5.50-5.29(m,3.56H),5.10-4.95(m,0.80H),4.64(s,1H),2.87-2.75(m,2.12H),2.56-2.46(m,2.22H),2.12-1.95(m,3.60),1.65-1.53(m,2.62H),1.43-1.24(m,23.42H),0.96-0.80(m,2.20H)
【0117】
(製造例2)ポリフェニレンエーテル1(PPE1)の合成
反応器上部に窒素ガス導入の為のライン、反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.0リットルのジャケット付き反応器に、窒素ガスを0.77L/分の速度で流しながら、予め調整した0.033gの酸化第一銅及び0.248gの47%臭化水素の混合物と、0.079gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、1.17gのジメチル-n-ブチルアミン、0.38gのジ-n-ブチルアミン、6.40gの2,6-ジメチルフェノール、43.6gの変性カルダノール、0.05gのメチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド、448gのトルエンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ0.53L/分の速度で空気をスパージャーより導入した。重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから120分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、0.35gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水50gの水溶液として添加した。70℃に加温し、70℃にて3時間銅抽出を実施した。その後、静置分離によりポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。ロータリーエバポレーターにより上記有機相の溶剤を除去した。
得られた液状のポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0118】
(製造例3)ポリフェニレンエーテル2(PPE2)の合成
反応器上部に窒素ガス導入の為のライン、反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.0リットルのジャケット付き反応器に、窒素ガスを1.54L/分の速度で流しながら、予め調整した0.11gの酸化第一銅及び0.83gの47%臭化水素の混合物と、0.27gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、3。90gのジメチル-n-ブチルアミン、1.28gのジ-n-ブチルアミン、12.8gの2,6-ジメチルフェノール、87.2gの変性カルダノール、0.05gのメチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド、394gのトルエンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ1.05L/分の速度で空気をスパージャーより導入した。重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから140分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、1.18gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水50gの水溶液として添加した。70℃に加温し、70℃にて3時間銅抽出を実施した。その後、静置分離によりポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。ロータリーエバポレーターにより上記有機相の溶剤を除去した。
得られた液状のポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0119】
(製造例4)ポリフェニレンエーテル3(PPE3)の合成
反応器上部に窒素ガス導入の為のライン、反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.0リットルのジャケット付き反応器に、窒素ガスを1.16L/分の速度で流しながら、予め調整した0.068gの酸化第一銅及び0.511gの47%臭化水素の混合物と、0.164gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、2.41gのジメチル-n-ブチルアミン、0.793gのジ-n-ブチルアミン、43.8gの2,6-ジメチルフェノール、31.2gの4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、0.05gのメチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド、421gのトルエンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ0.79L/分の速度で空気をスパージャーより導入した。重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから120分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、0.73gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水50gの水溶液として添加した。70℃に加温し、70℃にて3時間銅抽出を実施した。その後、静置分離によりポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。ロータリーエバポレーターにより上記有機相の溶剤を除去した。
得られた液状のポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0120】
(製造例5)ポリフェニレンエーテル4(PPE4)の合成
3.9gの2,6-ジメチルフェノール、46.1gの変性カルダノールを用いたこと以外は、製造例2と同様に液状のポリフェニレンエーテルを得た。
得られた液状のポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0121】
(製造例6)ポリフェニレンエーテル5(PPE5)の合成
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した0.092gの酸化第一銅及び0.69gの47%臭化水素の混合物と、0.22gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、3.27gのジメチル-n-ブチルアミン、1.07gのジ-n-ブチルアミン、714.65gのトルエン、65.03gの2,6-ジメチルフェノール、14.97gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ0.84L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は20℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから150分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、この重合混合物に0.99gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水160gの水溶液として添加した。次いで70℃に加温し、70℃にて2時間銅抽出を実施した。その後、静置分離により未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が25質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が6となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が3となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
各分析結果を表1に示す。
【0122】
(製造例7)ポリフェニレンエーテル6(PPE6)の合成
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.02gの酸化第二銅、29.876gの47質量%臭化水素水溶液、9.684gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、46.88gのジ-nブチルアミン、122.28gのブチルジメチルアミン、17.53kgのトルエン、及び1.5kgの2,6-ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入すると同時に、プランジャーポンプより1.62kgの2,6-ジメチルフェノールと、3.12kgのトルエンからなる溶液とを30分かけて重合槽に添加した。乾燥空気を86分間通気し、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、1.03gのハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を溶かした20%メタノール溶液を少量ずつ添加した。ハイドロキノンのメタノール溶液を添加してから30分後、1.61gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水200gの水溶液として添加した。70℃に加温し、70℃にて2時間銅抽出を実施した。その後、静置分離により未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が10となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
各分析結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:jER828、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量約190g/eq、25℃において液状)を用いた。
【0125】
(硬化促進剤)
1-メチルイミダゾール (東京化成工業株式会社、25℃において液状)
【0126】
(充填剤)
シリカフィラー(製品名SO-C2、アドマファイン製)を用いた。
【0127】
以下、各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテルの製造方法を説明する。
[実施例1]
表2に示される組成に従って、エポキシ樹脂、製造例2にて合成したポリフェニレンエーテル、シリカフィラー、硬化促進剤を混合した。その後、撹拌機(THINKY製、型式 AR-100)を用いて分散させ、樹脂組成物を得た。
樹脂組成物を5.0cm×5.0cm×0.5mmの型枠に流し込み、130℃の温度で2時間仮硬化させた後、型枠から成型物を取出し、次いで、200℃の温度で3時間硬化させることで、樹脂組成物の硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0128】
[実施例2]
製造例2にて合成したポリフェニレンエーテルを30質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0129】
[実施例3]
製造例3にて合成したポリフェニレンエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0130】
(実施例4)
製造例5にて合成したポリフェニレンエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0131】
[実施例5]
製造例6にて合成したポリフェニレンエーテルを用い、充填剤としてシリカを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0132】
[比較例1]
ポリフェニレンエーテルを添加せず樹脂組成物を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0133】
[比較例2]
製造例6にて合成したポリフェニレンエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0134】
[比較例3]
製造例7にて合成したポリフェニレンエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びその硬化物を得た。分析結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
表2に示す通り、比較例1に比べ、実施例に示した樹脂組成物の硬化物は、低吸水性・低誘電特性に優れる。また比較例2、3と比較して硬化物の板に気泡が見られなかったため、加工時130℃における流動性についても優れる。比較例2、3に比べて、各実施例に示した樹脂組成物の硬化物は、トルエン浸漬試験にて抽出されることがなく硬化物は耐溶剤性を維持していることを確認できた。
また、比較例1の樹脂組成物に対して、各実施例に示した樹脂組成物は、粘度を増加させることができ、低誘電正接化に加え、加工性に問題ない範囲にてエポキシ樹脂の粘度調整が可能であり、エポキシ樹脂の粘度調整剤として有用であることを確認できた。
さらに、比較例1、2、3の樹脂組成物の硬化物に比べ、実施例1、2に示した樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度を150℃以上に保持したまま、250℃の貯蔵弾性率が低い特徴がある。このため高温加熱時の極端な軟化を利用した解体性接着剤として有用であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、粘度調整が可能であり、硬化物の耐溶剤性を維持しつつ、流動性、低吸水性及び低誘電性にも優れ、取扱い性及び加工性についてお改善がなされているため、電子・電気分野で使用される絶縁材料、封止剤、接着剤、解体性接着剤として産業上の利用価値がある。