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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134378
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】角度検出装置およびポジショナ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20240926BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20240926BHJP
   F15B 9/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01D5/16 V
G01D5/20 110C
F15B9/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044644
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上野山 寛人
【テーマコード(参考)】
2F077
3H001
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077CC02
2F077JJ03
2F077JJ09
2F077JJ23
2F077TT11
3H001AA01
3H001AB06
3H001AB07
3H001AD01
(57)【要約】
【課題】正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定して磁界の角度を検出する。
【解決手段】角度検出装置は、MRセンサ10と、MRセンサ10の出力電圧V,Vを測定するセンサ出力測定部111,112と、電圧V,Vに基づいてMRセンサ10に印加される磁界の角度を算出する角度算出部118と、電圧V,Vから既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定して、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する判定部116とを備える。角度算出部118は、算出した値を正確な値として採用するかどうかを、判定部116から得られた結果に基づいて判定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1乃至第4の磁気抵抗効果素子からなる第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と出力電圧の位相が異なるように配置された第5乃至第8の磁気抵抗効果素子からなる第2のブリッジ回路とから構成されたMRセンサと、
前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧をそれぞれ測定するように構成されたセンサ出力測定部と、
前記センサ出力測定部によって測定された前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧に基づいて、外部の磁界発生部から前記MRセンサに印加される磁界の角度を算出するように構成された角度算出部と、
前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第1の判定部とを備え、
前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の角度検出装置において、
前記MRセンサを複数備え、
前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、
前記第1の判定部は、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の角度検出装置において、
前記磁界の角度変化における前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第2の判定部をさらに備え、
前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に加えて、前記第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の角度検出装置において、
前記MRセンサを複数備え、
前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、
前記第1の判定部は、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記第2の判定部は、前記磁界の角度変化における前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、
前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1、第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の角度検出装置において、
前記第1の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2とし、点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)と点(-1,0)と点(1,0)とを頂点とする三角形において、頂点(-1,0)の内角をA、頂点(1,0)の内角をBとし、点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)と点(0,1)と点(0,-1)とを頂点とする三角形において、頂点(0,1)の内角をC、頂点(0,-1)の内角をDとしたとき、arcsinA+arcsinB=90°という条件とarcsinC+arcsinD=90°という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の角度検出装置において、
前記第1の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2とし、点(1,0)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをA、点(-1,0)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをB、点(0,-1)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをC、点(0,1)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをDとしたとき、ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件とベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項7】
請求項3または4記載の角度検出装置において、
前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、AMR素子であり、
前記第2の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2としたとき、前記角度算出部が前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αと、前記角度算出部が前回の時刻における前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αとから、前記出力電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを、ΔV=Vm1cos2α-Vm1cos2α、ΔV=Vm2sin2α-Vm2sin2αにより算出し、算出したΔV,ΔVと前記振幅Vm1,Vm2と前記角度αとαとの差Δαとについて、[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]/4≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項8】
請求項3または4記載の角度検出装置において、
前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、GMR素子またはTMR素子であり、
前記第2の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2としたとき、前記角度算出部が前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αと、前記角度算出部が前回の時刻における前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αとから、前記出力電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを、ΔV=Vm1cosα-Vm1cosα、ΔV=Vm2sinα-Vm2sinαにより算出し、算出したΔV,ΔVと前記振幅Vm1,Vm2と前記角度αとαとの差Δαとについて、[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とする角度検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の角度検出装置と、
バルブ制御運転時に、前記角度算出部によって正確な値として採用された磁界の角度に基づいてバルブの開度実測値を求めるように構成された開度実測値生成部と、
前記バルブ制御運転時に、前記バルブの開度設定値と前記開度実測値とに基づいて前記バルブの開度を制御するための制御信号を生成するように構成された制御信号生成部とを備え、
前記MRセンサは、前記バルブの開閉によって移動する前記磁界発生部から印加される磁界の角度を検出するように配置されることを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた角度検出装置と、角度検出装置を用いたポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、角度センサとして、回転体に取り付けられた磁石による磁界の回転角度を測定するセンサが知られている。角度測定には、磁気抵抗効果(MR:Magneto Resistance effect)素子などを用いたセンサ回路が使用される(特許文献1~4参照)。
【0003】
図33は従来のMRセンサの構成を示すブロック図である。MRセンサ10は、磁場のベクトル変化によって電気抵抗が変化するMR素子で構成された2つのブリッジ回路100,101から構成される。ブリッジ回路100は、MR素子R1とMR素子R2とを直列に接続した直列回路103と、MR素子R3とMR素子R4とを直列に接続した直列回路104とを並列に接続したものである。同様に、ブリッジ回路101は、MR素子R5とMR素子R6とを直列に接続した直列回路105と、MR素子R7とMR素子R8とを直列に接続した直列回路106とを並列に接続したものである。
【0004】
図示しない回転体と共に磁石がブリッジ回路100,101の周囲を回転すると、ブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向が変化してブリッジ回路100,101のMR素子R1~R8の抵抗値が変化する。図34に示すようにMRセンサ10のブリッジ回路100,101に対して磁界を角度α=0°~360°の向きで印加した場合、ブリッジ回路100の出力電圧Vを余弦(cos)波で表せるとすると、ブリッジ回路101の出力電圧Vを正弦(sin)波で表すことができる。
【0005】
MR素子R1~R8として異方性磁気抵抗効果(AMR:Anisotropic Magneto Resistance effect)素子を用いる場合、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの周期が180°であるため、以下の式が得られる。
=Vm1cos2α+Voff ・・・(1)
=Vm2sin2α+Voff ・・・(2)
【0006】
m1は出力電圧Vの最大振幅、Vm2は出力電圧Vの最大振幅、Voffは出力電圧Vのオフセット、Voffは出力電圧Vのオフセットである。オフセットVoff,Voffと振幅Vm1,Vm2とを事前に求めておけば、出力電圧V,Vを測定することにより、磁界の角度αを算出することができる。また、MR素子R1~R8として巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistance effect)素子またはトンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magneto resistance effect)素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期が360°であるため、式(1)、式(2)の2αがαとなる。
【0007】
ただし、式(1)、式(2)は正確な角度検出をするうえで十分な磁界がかけられている状態の場合で、十分な磁界がかけられていない場合には、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの関係性が不明瞭となる(必ずしも正弦波,余弦波の関係とはならない)。例えばMRセンサ10と磁石130とが図35のような位置関係にある場合、MRセンサ10が十分な磁界がかけられている状態となり、磁界の角度αを検出することが可能である。一方、MRセンサ10と磁石130とが図36のような位置関係にある場合、MRセンサ10に印加される磁界の強度が不十分となり、角度αを検出することが不可能となる。図35図36では、実線131の内側がMRセンサ10の角度検出可能範囲を示している。
【0008】
図37は、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いた場合の磁界の角度αとブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vとの関係を示す図である。図37の500は角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサに印加されている範囲を示し、501は磁界の強度が不十分な範囲を示している。
【0009】
以上のように、従来の技術では、MRセンサの検知範囲を超えるような磁石の動きを検知する際、検知範囲外のときは出力電圧V,Vの関係が不明瞭となるため、どのタイミングからセンシングすれば角度を正確に検知できるかタイミングが分からないという課題があった。また、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に検知できるか分からないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第10571305号明細書
【特許文献2】欧州特許第2672285号明細書
【特許文献3】特開2021-148447号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0191546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定して磁界の角度を検出することができる角度検出装置およびポジショナを提供することを目的とする。
また、本発明は、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に算出可能かどうかを判定して磁界の角度を検出することができる角度検出装置およびポジショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の角度検出装置は、第1乃至第4の磁気抵抗効果素子からなる第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と出力電圧の位相が異なるように配置された第5乃至第8の磁気抵抗効果素子からなる第2のブリッジ回路とから構成されたMRセンサと、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧をそれぞれ測定するように構成されたセンサ出力測定部と、前記センサ出力測定部によって測定された前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧に基づいて、外部の磁界発生部から前記MRセンサに印加される磁界の角度を算出するように構成された角度算出部と、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第1の判定部とを備え、前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、前記MRセンサを複数備え、前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、前記第1の判定部は、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、前記磁界の角度変化における前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定するように構成された第2の判定部をさらに備え、前記角度算出部は、算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1の判定部から得られた結果に加えて、前記第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の角度検出装置の1構成例は、前記MRセンサを複数備え、前記センサ出力測定部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧を測定し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて前記磁界発生部から印加される磁界の角度を算出し、前記第1の判定部は、前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧から既知のオフセットを減算して既知の振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、前記第2の判定部は、前記磁界の角度変化における前記第1、第2のブリッジ回路の出力電圧の平均変化率が所定の条件を満たすかどうかをMRセンサ毎に判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかをMRセンサ毎に判定し、前記角度算出部は、前記複数のMRセンサのそれぞれについて算出した値を前記磁界の角度の正確な値として採用するかどうかを、前記第1、第2の判定部から得られた結果に基づいて判定することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2とし、点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)と点(-1,0)と点(1,0)とを頂点とする三角形において、頂点(-1,0)の内角をA、頂点(1,0)の内角をBとし、点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)と点(0,1)と点(0,-1)とを頂点とする三角形において、頂点(0,1)の内角をC、頂点(0,-1)の内角をDとしたとき、arcsinA+arcsinB=90°という条件とarcsinC+arcsinD=90°という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知のオフセットをVoff、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2とし、点(1,0)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをA、点(-1,0)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをB、点(0,-1)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをC、点(0,1)を始点とし点((V-Voff)/Vm1,(V-Voff)/Vm2)を終点とするベクトルをDとしたとき、ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件とベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、AMR素子であり、前記第2の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2としたとき、前記角度算出部が前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αと、前記角度算出部が前回の時刻における前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αとから、前記出力電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを、ΔV=Vm1cos2α-Vm1cos2α、ΔV=Vm2sin2α-Vm2sin2αにより算出し、算出したΔV,ΔVと前記振幅Vm1,Vm2と前記角度αとαとの差Δαとについて、[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]/4≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の角度検出装置の1構成例において、前記第1乃至第8の磁気抵抗効果素子は、GMR素子またはTMR素子であり、前記第2の判定部は、前記第1のブリッジ回路の出力電圧をV、前記第2のブリッジ回路の出力電圧をV、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm1、前記出力電圧Vの既知の振幅をVm2としたとき、前記角度算出部が前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αと、前記角度算出部が前回の時刻における前記出力電圧V,Vに基づいて算出した磁界の角度αとから、前記出力電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを、ΔV=Vm1cosα-Vm1cosα、ΔV=Vm2sinα-Vm2sinαにより算出し、算出したΔV,ΔVと前記振幅Vm1,Vm2と前記角度αとαとの差Δαとについて、[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]≒1が成立するときに、前記MRセンサによって正確な角度算出が可能なタイミングと判定することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のポジショナは、前記角度検出装置と、バルブ制御運転時に、前記角度算出部によって正確な値として採用された磁界の角度に基づいてバルブの開度実測値を求めるように構成された開度実測値生成部と、前記バルブ制御運転時に、前記バルブの開度設定値と前記開度実測値とに基づいて前記バルブの開度を制御するための制御信号を生成するように構成された制御信号生成部とを備え、前記MRセンサは、前記バルブの開閉によって移動する前記磁界発生部から印加される磁界の角度を検出するように配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1の判定部を設けることにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定して磁界の角度を検出することができる。また、本発明では、複数のMRセンサがある場合に、どのセンサを選択すれば角度を正確に算出可能かどうかを判定して磁界の角度を検出することができる。
【0022】
また、本発明では、第2の判定部を設けることにより、磁界発生部がMRセンサの角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみ磁界の角度を検出したいといった状況に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の抵抗値が最小になる磁界の方向を説明する図である。
図4図4は、MR素子としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合のピン層の磁化方向を説明する図である。
図5図5は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係の1例を示す図である。
図6図6は、MR素子としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係の1例を示す図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、MRセンサのブリッジ回路の出力電圧の幾何学的関係を説明する図である。
図9図9は、MRセンサのブリッジ回路の出力電圧の平均変化率を説明する図である。
図10図10は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の場合別の角度算出部の判定結果を示す図である。
図11図11は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の1例を示す図である。
図12図12は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図13図13は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図14図14は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図15図15は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図16図16は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図17図17は、MRセンサと磁界発生部の位置関係の別の例を示す図である。
図18図18は、本発明の第2の実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。
図19図19は、本発明の第2の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図20図20は、バルブの1例を示す図である。
図21図21は、本発明の第2の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図22図22は、本発明の第2の実施例に係るポジショナの動作を説明するフローチャートである。
図23図23は、本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。
図24図24は、本発明の第3の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図25図25は、本発明の第3の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図26図26は、本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の動作を説明するフローチャートである。
図27図27は、本発明の第4の実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。
図28図28は、本発明の第4の実施例に係るデータ処理制御部の構成を示すブロック図である。
図29図29は、本発明の第4の実施例に係るMRセンサと磁界発生部との関係を示す図である。
図30図30は、本発明の第4の実施例に係るポジショナの動作を説明するフローチャートである。
図31図31は、MRセンサのブリッジ回路の出力電圧の幾何学的関係を説明する図である。
図32図32は、本発明の第1~第4の実施例に係る角度検出装置またはポジショナを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図33図33は、従来のMRセンサの構成を示すブロック図である。
図34図34は、MRセンサに印加される磁界の角度を説明する図である。
図35図35は、MRセンサが磁界の角度を検出可能な場合を示す図である。
図36図36は、MRセンサが磁界の角度を検出不可能な場合を示す図である。
図37図37は、MR素子としてAMR素子を用いる場合の磁界の角度とMRセンサのブリッジ回路の出力電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。角度検出装置1は、角度センサであるMRセンサ10と、データ処理制御部11とを備えている。
【0025】
MRセンサ10は、印加される磁界の角度によって磁界発生部12の位置を検出する。データ処理制御部11は、MRセンサ10の出力信号に基づいて磁界の角度を算出する。
図2は本実施例のデータ処理制御部11の構成を示すブロック図である。データ処理制御部11は、電源110と、センサ出力測定部111,112と、記憶部113と、オフセット算出部114と、オフセット記憶部115と、判定部116,117と、角度算出部118と、制御信号生成部119とを備えている。
【0026】
MRセンサ10の構成は図33に示したとおりである。データ処理制御部11の電源110がONになると図33におけるブリッジ回路100のPとGNDの間、およびブリッジ回路101のQとGNDの間のそれぞれに、一定電圧Vがかかり電流Iが流れる。
ブリッジ回路100の中点電位差(直列回路103の中点と直列回路104の中点との電位差)Vをブリッジ回路100の出力電圧とし、ブリッジ回路101の中点電位差(直列回路105の中点と直列回路106の中点との電位差)Vをブリッジ回路101の出力電圧とする。
【0027】
MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、図3の矢印で示すように、ブリッジ回路100のMR素子R1とR4の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一であり、MR素子R2とR3の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一である。ブリッジ回路100の隣り合うMR素子の抵抗値が最小になる磁界の方向は直交している。同様に、ブリッジ回路101のMR素子R5とR8の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一であり、MR素子R6とR7の抵抗値が最小になる磁界の方向が同一である。ブリッジ回路101の隣り合うMR素子の抵抗値が最小になる磁界の方向は直交している。そして、ブリッジ回路100とブリッジ回路101は、抵抗値が最小になる磁界の方向が45°ずれるように配置されている。
【0028】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、図4の矢印で示すように、ブリッジ回路100のMR素子R1とR4のピン層の磁化方向が同一であり、MR素子R2とR3のピン層の磁化方向が同一である。ブリッジ回路100の隣り合うMR素子のピン層の磁化方向は逆方向になっている。同様に、ブリッジ回路101のMR素子R5とR8のピン層の磁化方向が同一であり、MR素子R6とR7のピン層の磁化方向が同一である。ブリッジ回路101の隣り合うMR素子のピン層の磁化方向は逆方向になっている。そして、ブリッジ回路100とブリッジ回路101は、ピン層の磁化方向が直交するように配置されている。
【0029】
磁界発生部12(磁石)は、ブリッジ回路100,101に作用する磁界を発生させる。磁界発生部12は、MR素子R1~R8の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面(図3図4の紙面と平行な面)に対して垂直な平面上の軌道を移動する。
【0030】
図34に示したようにMRセンサ10のブリッジ回路100,101に対して磁界を角度α=0°~360°の向きで印加した場合、ブリッジ回路100の出力電圧Vを余弦(cos)波で表せるとすると、ブリッジ回路101の出力電圧Vを正弦(sin)波で表すことができる。
【0031】
MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期は180°、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、出力電圧V,Vの周期は360°である。このため、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、磁界の角度αと出力電圧V,Vとの関係は図5のようになる。また、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合、磁界の角度αと出力電圧V,Vとの関係は図6のようになる。ただし、図5図6は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加されている場合を示している。
【0032】
上記のとおりブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vはそれぞれcos波、sin波で表すことができるが、一般的にどちらにもオフセットが存在する。ブリッジ回路100の出力電圧VのオフセットをVoffとし、ブリッジ回路101の出力電圧VのオフセットをVoffとする。Vm1は出力電圧Vの最大振幅、Vm2は出力電圧Vの最大振幅である。角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加されている場合、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vは、MR素子R1~R8としてAMR素子を用いる場合、式(1)、式(2)のように表すことができる。
【0033】
図7は本実施例の角度検出装置1の動作を説明するフローチャートである。角度検出装置1の工場出荷時に、オフセット算出部114は、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとを算出する(図7ステップS100)。
【0034】
具体的には例えば工場の作業者が磁界発生部12(磁石)を移動させることで、MRセンサ10のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10に印加される範囲となることが必要である。
【0035】
データ処理制御部11のセンサ出力測定部111は、MRセンサ10のブリッジ回路100の出力電圧Vを測定し、センサ出力測定部112は、ブリッジ回路101の出力電圧Vを測定する。センサ出力測定部111,112によって測定された出力電圧V,Vの値は、記憶部113に格納される。
【0036】
データ処理制御部11のオフセット算出部114は、例えば工場の作業者から算出処理の実行指示があったときに、ブリッジ回路100の出力電圧Vの最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm1として算出し、出力電圧Vの最大値と最小値の合計を2で割った値をオフセットVoffとして算出する。同様に、オフセット算出部114は、ブリッジ回路101の出力電圧Vの最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm2として算出し、出力電圧Vの最大値と最小値の合計を2で割った値をオフセットVoffとして算出する。オフセット算出部114によって算出された振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとは、オフセット記憶部115に格納される。
【0037】
次に、オフセット算出部114は、角度検出装置1が化学プラント等の現場に設置された後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図7ステップS101)。このステップS101の処理はステップS100と同様に実施できる。オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS101の処理によって更新される。振幅Vm1,Vm2の値を再度算出する理由は、現場の温度によって振幅Vm1,Vm2が変化するためである。
【0038】
次に、セットアップ実行後のプラント運転時に、センサ出力測定部111は、MRセンサ10のブリッジ回路100の出力電圧Vを測定し、センサ出力測定部112は、ブリッジ回路101の出力電圧Vを測定する(図7ステップS102)。
【0039】
データ処理制御部11の判定部116は、ステップS102で測定された出力電圧V,Vからオフセットを減算して振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図7ステップS103)。
【0040】
具体的には、判定部116は、まずステップS102で測定された出力電圧Vから、オフセット記憶部115に記憶されている出力電圧VのオフセットVoffを減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている出力電圧Vの振幅Vm1で除算する。オフセットVoffを減算して振幅Vm1で除算した値をV’(=(V-Voff)/Vm1)とする。同様に、判定部116は、ステップS102で測定された出力電圧Vから、オフセット記憶部115に記憶されている出力電圧VのオフセットVoffを減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている出力電圧Vの振幅Vm2で除算する。オフセットVoffを減算して振幅Vm2で除算した値をV’(=(V-Voff)/Vm2)とする。
【0041】
’=(V-Voff)/Vm1をx軸(横軸)にとり、V’=(V-Voff)/Vm2をy軸(縦軸)にとったxy平面上に、電圧V’,V’をプロットすると、MRセンサ10によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は、図8に示すように中心が(0,0)、直径が2の円200上の点となる。
【0042】
点(V’,V’)と点(-1,0)と点(1,0)とを頂点とする三角形T1において、頂点(-1,0)の内角をA、頂点(1,0)の内角をBとし、三角形T1の内角Aと向かい合う対辺の長さをa、内角Bと向かい合う対辺の長さをbとする。また、点(V’,V’)と点(0,1)と点(0,-1)とを頂点とする三角形T2において、頂点(0,1)の内角をC、頂点(0,-1)の内角をDとし、三角形T2の内角Cと向かい合う対辺の長さをcとする。このとき、正弦定理により、次式が成立する。
a/sinA=b/sinB=c/sinC=2 ・・・(3)
【0043】
判定部116は、次の式(4)または式(5)のうち少なくとも一方が成立するときに電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。
arcsinA+arcsinB=90° ・・・(4)
arcsinC+arcsinD=90° ・・・(5)
【0044】
式(4)が成立することは、三角形T1が円200に内接する直角三角形であり、点(V’,V’)が円200上の点であることを意味する。式(5)が成立することは、三角形T2が円200に内接する直角三角形であり、点(V’,V’)が円200上の点であることを意味する。
判定部116は、式(4)、式(5)のどちらも成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0045】
一方、データ処理制御部11の判定部117は、ステップS102で測定された出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。
【0046】
上記のように、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vは、式(1)、式(2)のように表すことができる。式(1)、式(2)より、式(6)、式(7)が得られる。
-Voff=Vm1cos2α ・・・(6)
-Voff=Vm2sin2α ・・・(7)
【0047】
さらに、式(6)、式(7)より、式(8)が得られる。
(V-Voff)/(V-Voff)=(Vm2/Vm1)tan2α
・・・(8)
【0048】
式(8)より、磁界の角度αの計算式は式(9)のようになる。
α=(1/2)tan-1[{Vm1(V-Voff)}/{Vm2(V-Voff)}] ・・・(9)
【0049】
なお、式(1)、式(2)、式(6)~式(8)はAMR素子を用いる場合の式であり、GMR素子またはTMR素子を用いる場合には、式(1)、式(2)、式(6)~式(8)中の2αをαにすればよい。
したがって、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子を用いる場合には、式(9)の代わりに式(10)を使用すればよい。
α=tan-1[{Vm1(V-Voff)}/{Vm2(V-Voff)}] ・・・(10)
【0050】
本実施例のように2つのフルブリッジ回路100,101を使用する場合は、式(9)、式(10)のようにtanを用いて角度αを計算する。AMR素子を用いる場合、tanを使用することで、sin波、cos波の位相が45°ずれる。また、GMR素子またはTMR素子を用いる場合、tanを使用することで、sin波、cos波の位相が90°ずれる。
【0051】
図9に示すように磁界発生部12が移動しているときに、最新の時刻tにおける磁界の角度をα、前回の時刻tにおける磁界の角度をαとする。時刻tから時刻tにおける電圧Vの変化ΔV、電圧Vの変化ΔVは式(11)、式(12)のようになる。
ΔV=Vm1cos2α-Vm1cos2α ・・・(11)
ΔV=Vm2sin2α-Vm2sin2α ・・・(12)
【0052】
したがって、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率は式(13)、式(14)のようになる。
ΔV/Δα=(Vm1cos2α-Vm1cos2α)/(α-α
・・・(13)
ΔV/Δα=(Vm2sin2α-Vm2sin2α)/(α-α
・・・(14)
【0053】
α-αが0に限りなく近づくと、式(15)、式(16)に示すように平均変化率が微分相当となる。
【0054】
【数1】
【0055】
式(15)、式(16)より式(17)が得られる。
{(-2Vm1sin2α/Vm1+(2Vm2cos2α/Vm2}/4=1 ・・・(17)
【0056】
なお、式(1)、式(2)、式(11)~式(17)はAMR素子を用いる場合の式であり、GMR素子またはTMR素子を用いる場合には、式(1)、式(2)、式(11)~式(17)中の2αをαにすればよい。
【0057】
角度αとαの差Δαが微小のとき(時刻tとtの差が微小のとき)、式(17)より式(18)が得られる。
[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]/4≒1 ・・・(18)
【0058】
式(18)はAMR素子を用いる場合の式であり、GMR素子またはTMR素子を用いる場合には、角度αとαの差Δαが微小のとき、式(19)が得られる。
[{(1/Vm1)×(ΔV/Δα)}+{(1/Vm2)×(ΔV/Δα)}]≒1 ・・・(19)
【0059】
角度算出部118は、前回の時刻tにおける出力電圧V,Vと、オフセット記憶部115に記憶されているオフセットVoff,Voffと振幅Vm1,Vm2とに基づいて、磁界の角度αを算出する(図7ステップS104)。具体的には、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、式(9)により角度αを算出する。また、角度算出部118は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、式(10)により角度αを算出する。同様に、角度算出部118は、最新の時刻tにおける出力電圧V,Vと、オフセットVoff,Voffと振幅Vm1,Vm2とに基づいて、式(9)または式(10)により磁界の角度αを算出する(ステップS104)。
【0060】
なお、前回の時刻tにおける角度αは、前回角度算出を行ったときの角度αであるから、再度の算出を行わずに前回算出した角度αを、角度αとしてもよい。
【0061】
判定部117は、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(18)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図7ステップS105)。また、判定部117は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(19)の条件を満たすかどうかを判定することにより、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS105)。
【0062】
MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117は、角度算出部118によって算出された磁界の角度α,αと、オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1,Vm2とに基づいて、式(11)、式(12)により電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出する。そして、判定部117は、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1,Vm2と既知の値Δαとについて式(18)が成立するときに、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(18)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(18)の左辺が、1±β(βは所定の許容範囲を規定する実数)の範囲内にあるときに式(18)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(18)が成立しないと判定する。
【0063】
MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合には、式(11)、式(12)中の2αをαにした式により、電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出すればよい。判定部117は、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1,Vm2と既知の値Δαとについて式(19)が成立するときに、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が所定の条件を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117は、式(19)が成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。このとき、判定部117は、式(19)の左辺が、1±βの範囲内にあるときに式(19)が成立すると判定し、1±βの範囲外のときに式(19)が成立しないと判定する。
【0064】
角度算出部118は、判定部116,117から得られた結果に基づいて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図7ステップS106)。本実施例では、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することも可能である。
【0065】
判定部116による判定は、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内か外かを判定することができる。磁界発生部12が停止しているときも判定が可能である。ただし、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内にあるときに磁界発生部12が動いているか停止しているかを判定することはできない。
【0066】
同様に、判定部117による判定は、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内か外かを判定することができる。判定部117による判定では、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内にあるときに磁界発生部12が動いているか停止しているかを判定することができるが、磁界発生部12が停止しているときに角度検出可能範囲内か外かを判定することはできない。
【0067】
判定部116,117の何れの方法においてもノイズの影響を受けるが、判定部117による判定の方がノイズの影響を受け易い。また、判定部117による判定は、サンプリング時間によって精度が変わってくることもあるので、一般的には判定部116による判定の方が安定している。
【0068】
磁界発生部12が直線的に動く構成において、MRセンサ10の角度検出可能範囲内において磁界発生部12が停止したときのみ磁界の角度α(磁界発生部12の位置)を検出するようなシステムにおいては、判定部116と判定部117の両方の判定を用いることで対応できる。
【0069】
MRセンサ10と磁界発生部12の位置関係の場合別の角度算出部118の判定結果を図10に示す。図10の「センシング判定」が角度算出部118の判定結果、「第1の判定部」が判定部116の判定結果、「第2の判定部」が判定部117の判定結果を示している。「○」は正確な角度算出が可能なタイミングという結果を示し、「×」は正確な角度算出が不可能なタイミングという結果を示している。
【0070】
図10の「a」は、図11に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲(実線131の内側)外で停止している場合を示し、「b」は、図12に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外でMRセンサ10に近づく方向に動いている場合を示している。図10の「c」は、図13に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内でMRセンサ10に近づく方向に動いている場合を示し、「d」は、図14に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内で停止している場合を示している。図10の「e」は、図15に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内でMRセンサ10から遠ざかる方向に動いている場合を示し、「f」は、図16に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外でMRセンサ10から遠ざかる方向に動いている場合を示し、「g」は、図17に示すように磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲外で停止している場合を示している。
【0071】
図10から分かるように、角度算出部118は、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することが可能である。角度算出部118は、判定部116から角度算出可能という判定結果が得られたときに正確な角度算出が可能なタイミングと判定し(ステップS106においてYES)、ステップS104で算出した角度αを磁界の角度αの正確な値として採用する(図7ステップS107)。
【0072】
制御信号生成部119は、上位装置4から与えられた角度設定値と角度算出部118によって算出された角度αとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する(図7ステップS108)。この制御信号を、磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に供給することにより、物体の位置を制御することができる。
以上のステップS102~S108の処理が、例えばオペレータの指示によって角度検出装置1の動作が終了するまで(図7ステップS109においてYES)、繰り返し実施される。
【0073】
なお、上記の例では、判定部116から得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定しているが、判定部116,117の両方の判定結果を用いる方が好適な場合もある。具体的には、磁界発生部12がMRセンサ10の角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみを検出したい場合には、判定部116,117の両方の判定結果を使用する。この場合、角度算出部118は、判定部116から角度算出が可能という判定結果が得られ、判定部117から角度算出が不可能という判定結果が得られたときに正確な角度算出が可能なタイミングと判定し(ステップS106においてYES)、ステップS104で算出した角度αを磁界の角度αの正確な値として採用すればよい(ステップS107)。
【0074】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、MRセンサ10に印加される磁界の角度αを算出する例について説明した。本実施例では、第1の実施例で説明した角度検出装置を利用し、磁界の角度αに基づいて、磁界発生部12が取り付けられた物体の位置を算出して制御する具体例について説明する。
【0075】
図18は本実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。ポジショナ1aは、上位装置4から与えられたバルブ3の弁開度の設定値とバルブ3の弁開度の実測値との偏差を算出し、その偏差に応じた空気圧操作信号を生成して操作器2に与えることにより、バルブ3の開度を制御する。ポジショナ1aは、MRセンサ10と、データ処理制御部11aと、電空変換部13と、空気圧増幅部14とを備えている。
【0076】
MRセンサ10は、バルブ3の開度をポジショナ1aのフィードバックレバーの変位によって検出する。データ処理制御部11aは、MRセンサ10の出力信号に基づいて、バルブ3の開度を制御するための制御信号を生成する。具体的には、データ処理制御部11aは、MRセンサ10の出力信号に基づいてバルブ3の開度の実測値を算出し、上位装置4から与えられたバルブ3の開度の設定値と開度の実測値との偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する。
【0077】
電空変換部13は、データ処理制御部11aによって生成された制御信号を空気圧信号に変換して出力する。具体的には、電空変換部13は、例えば減圧弁(図示せず)から供給された空気の給気圧を、制御信号に応じた圧力に変換し、空気圧信号として出力する。
【0078】
空気圧増幅部14は、電空変換部13から出力された空気圧信号の圧力を増幅して操作器2に出力する。具体的には、空気圧増幅部14は、例えば減圧弁から供給された空気の給気圧を、電空変換部13から出力された空気圧信号の圧力に応じて調圧し、空気圧操作信号として出力する。
【0079】
図19は本実施例のデータ処理制御部11aの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11aは、電源110と、センサ出力測定部111,112と、記憶部113と、オフセット算出部114aと、オフセット記憶部115と、判定部116,117と、角度算出部118と、開度実測値生成部120と、制御信号生成部121とを備えている。
【0080】
図20に示す操作器2は、ポジショナ1aから供給される出力空気圧に応じてバルブステム(弁棒)31を上下動させて、バルブ本体30の開度を調節する。
MRセンサ10は、バルブステム31の上下動に応じて回転するフィードバックレバー32の鉛直面(図20の紙面と平行な面)上での回転角度を検出する。すなわち、図21に示すように磁界発生部12をフィードバックレバー32に取り付けると、フィードバックレバー32の回転に伴って磁界発生部12が鉛直面(図21では紙面に対して垂直な面)上を移動する。そこで、磁界発生部12の軌道に対してセンサ面(図21の紙面)が垂直となるようにMRセンサ10を設置すればよい。バルブステム31の上下動に応じて磁界発生部12が移動することにより、バルブ3の開度に応じた方向の磁界がMRセンサ10のブリッジ回路100,101に印加される。
【0081】
図22は本実施例のポジショナ1aの動作を説明するフローチャートである。ポジショナ1aの工場出荷時に、オフセット算出部114aは、第1の実施例のオフセット算出部114と同様に、MRセンサ10のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとを算出する(図22ステップS200)。
【0082】
具体的には例えば工場の作業者がポジショナ1aのフィードバックレバー32を移動させることで、フィードバックレバー32に取り付けられた磁界発生部12が移動し、MRセンサ10のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させることができる。オフセット算出部114aは、センサ出力測定部111,112によって測定され、記憶部113に格納された出力電圧(V,V)の組を全て読み出し、オフセット算出部114と同様に振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとを算出する。オフセット算出部114aによって算出された振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとは、オフセット記憶部115に格納される。
【0083】
次に、オフセット算出部114aは、ポジショナ1aが化学プラント等の現場のバルブ3に取り付けられた後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、ブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2を再度算出する(図22ステップS201)。
【0084】
ここでは、オフセット算出部114aは、所定の範囲内の磁界の角度α(すなわちバルブ開度)に対応する制御信号を電空変換部13に出力する。上記で説明した電空変換部13と空気圧増幅部14と操作器2の動作により、バルブ3の開度が制御信号に応じた開度に設定される。上記のように、MRセンサ10のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの値は、センサ出力測定部111,112によって測定され、記憶部113に格納される。
【0085】
オフセット算出部114aは、電空変換部13に出力する制御信号を変更しながら出力電圧V,Vを測定させて、予め定められた範囲の角度αについて出力電圧V,Vを測定し終えた後に、記憶部113に格納された出力電圧(V,V)の組を全て読み出し、オフセット算出部114と同様に振幅Vm1,Vm2を算出すればよい。なお、ここで設定する角度αは、MRセンサ10の角度検出可能範囲内である必要がある。オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1,Vm2の値は、ステップS201の処理によって更新される。
【0086】
次に、プラント運転時のステップS202~S207の処理は、第1の実施例のステップS102~S107と同じである。
次に、開度実測値生成部120は、角度算出部118によって算出された角度αに基づいてバルブ3の現在の開度実測値PVを求める(図22ステップS208)。開度実測値PVは、角度αと開度実測値PVとの既知の関係に基づいて求めることができる。
【0087】
制御信号生成部121は、上位装置4から与えられたバルブ3の開度設定値SPと開度実測値PVとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成して電空変換部13に出力する(図22ステップS209)。こうして、バルブ3の開度を制御することができる。
以上のステップS202~S209の処理が、例えばプラントの運転が停止するまで(図22ステップS210においてYES)、繰り返し実施される。
【0088】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例では、第1の実施例においてMRセンサが複数設けられている場合について説明する。図23は本発明の第3の実施例に係る角度検出装置の構成を示すブロック図である。角度検出装置1bは、複数のMRセンサ10-1,10-2と、データ処理制御部11bとを備えている。
【0089】
本実施例では、磁界発生部12は、図24に示すように複数のMRセンサ10-1,10-2のセンサ面(図24の紙面と平行な面)に対して垂直な平面上の軌道を移動する。図24では、実線131-1の内側がMRセンサ10-1の角度検出可能範囲を示し、実線131-2の内側がMRセンサ10-2の角度検出可能範囲を示している。隣り合うMRセンサ10-1,10-2は、それぞれの角度検出可能範囲131-1,131-2が重なるように配置されている。
【0090】
図25は本実施例のデータ処理制御部11bの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11bは、電源110と、センサ出力測定部111-1,111-2,112-1,112-2と、記憶部113と、オフセット算出部114bと、オフセット記憶部115と、判定部116b,117bと、角度算出部118bと、制御信号生成部119とを備えている。
【0091】
図26は本実施例の角度検出装置1bの動作を説明するフローチャートである。角度検出装置1bの工場出荷時に、オフセット算出部114bは、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとを算出すると共に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧V,Vの振幅Vm1,Vm2とオフセットVoff,Voffとを算出する(図26ステップS300)。
【0092】
以下の説明では、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V,VをV1,V1、振幅Vm1,Vm2をVm11,Vm21、オフセットVoff,VoffをVoff1,Voff1とする。同様に、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V,VをV2,V2、振幅Vm1,Vm2をVm12,Vm22、オフセットVoff,VoffをVoff2,Voff2とする。
【0093】
例えば工場の作業者が磁界発生部12を移動させることで、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10-1に印加される範囲となることが必要である。
【0094】
データ処理制御部11bのセンサ出力測定部111-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路100の出力電圧V1を測定し、センサ出力測定部112-1は、ブリッジ回路101の出力電圧V1を測定する。センサ出力測定部111-1,112-1によって測定された出力電圧V1,V1の値は、記憶部113に格納される。
【0095】
オフセット算出部114bは、例えば工場の作業者から算出処理の実行指示があったときに、出力電圧V1の最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm11として算出し、出力電圧V1の最大値と最小値の合計を2で割った値をオフセットVoff1として算出する。同様に、オフセット算出部114bは、出力電圧V1の最大値と最小値とを検出し、この最大値と最小値の差を2で割った値を振幅Vm21として算出し、出力電圧V1の最大値と最小値の合計を2で割った値をオフセットVoff1として算出する。
【0096】
MRセンサ10-2についても同様に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101に作用する磁界の方向を変化させる。このとき、磁界発生部12の位置は、角度検出にとって十分な強度の磁界がMRセンサ10-2に印加される範囲となることが必要である。
【0097】
センサ出力測定部111-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路100の出力電圧V2を測定し、センサ出力測定部112-2は、ブリッジ回路101の出力電圧V2を測定する。センサ出力測定部111-2,112-2によって測定された出力電圧V2,V2の値は、記憶部113に格納される。
【0098】
オフセット算出部114bは、MRセンサ10-1の場合と同様にして、振幅Vm12,Vm22とオフセットVoff2,Voff2とを算出する。
オフセット算出部114bによって算出された振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22とオフセットVoff1,Voff2,Voff1,Voff2とは、オフセット記憶部115に格納される。
【0099】
次に、オフセット算出部114bは、角度検出装置1bが化学プラント等の現場に設置された後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、MRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図26ステップS301)。このステップS301の処理はステップS300と同様に実施できる。オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22の値は、ステップS301の処理によって更新される。
【0100】
次に、セットアップ実行後のプラント運転時に、センサ出力測定部111-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路100の出力電圧V1を測定し、センサ出力測定部112-1は、MRセンサ10-1のブリッジ回路101の出力電圧V1を測定する。センサ出力測定部111-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路100の出力電圧V2を測定し、センサ出力測定部112-2は、MRセンサ10-2のブリッジ回路101の出力電圧V2を測定する(図26ステップS302)。
【0101】
データ処理制御部11bの判定部116bは、ステップS302で測定されたV1,V1からオフセットを減算して振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する。また、判定部116bは、ステップS302で測定されたV2,V2からオフセットを減算して振幅で除算した値が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図26ステップS303)。
【0102】
具体的には、判定部116bは、まずステップS302で測定された出力電圧V1から、オフセット記憶部115に記憶されているオフセットVoff1を減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm11で除算する。同様に、判定部116bは、ステップS302で測定された出力電圧V1から、オフセット記憶部115に記憶されているオフセットVoff1を減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm21で除算する。
【0103】
出力電圧V1からオフセットVoff1を減算して振幅Vm11で除算した値をV’(=(V1-Voff1)/Vm11)、出力電圧V1からオフセットVoff1を減算して振幅Vm21で除算した値をV’(=(V1-Voff1)/Vm21)とすれば、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は図8と同じ円200上の点となる。
【0104】
判定部116bは、出力電圧V1,V1から算出した点(V’,V’)と点(-1,0)と点(1,0)とを頂点とする三角形T1において、頂点(-1,0)の内角をA、頂点(1,0)の内角をBとし、出力電圧V1,V1から算出した点(V’,V’)と点(0,1)と点(0,-1)とを頂点とする三角形T2において、頂点(0,1)の内角をC、頂点(0,-1)の内角をDとしたとき、式(4)または式(5)のうち少なくとも一方が成立するときに電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。判定部116は、式(4)、式(5)のどちらも成立しないときは、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0105】
同様に、判定部116bは、ステップS302で測定された出力電圧V2から、オフセット記憶部115に記憶されているオフセットVoff2を減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm12で除算する。また、判定部116bは、ステップS302で測定された出力電圧V2から、オフセット記憶部115に記憶されているオフセットVoff2を減算し、減算した結果をオフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm22で除算する。
【0106】
出力電圧V2からオフセットVoff2を減算して振幅Vm12で除算した値をV’(=(V2-Voff2)/Vm12)、出力電圧V2からオフセットVoff2を減算して振幅Vm22で除算した値をV’(=(V2-Voff2)/Vm22)とすれば、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は図8と同じ円200上の点となる。
【0107】
判定部116bは、出力電圧V2,V2から算出した点(V’,V’)と点(-1,0)と点(1,0)とを頂点とする三角形T1において、頂点(-1,0)の内角をA、頂点(1,0)の内角をBとし、出力電圧V1,V1から算出した点(V’,V’)と点(0,1)と点(0,-1)とを頂点とする三角形T2において、頂点(0,1)の内角をC、頂点(0,-1)の内角をDとしたとき、式(4)または式(5)のうち少なくとも一方が成立するときに電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。判定部116は、式(4)、式(5)のどちらも成立しないときは、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0108】
角度算出部118bは、前回の時刻tにおける出力電圧V=V1,V=V1と、オフセットVoff=Voff1,Voff=Voff1と振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21とに基づいて、MRセンサ10-1について磁界の角度αを算出する(図26ステップS304)。また、角度算出部118bは、最新の時刻tにおける出力電圧V=V1,V=V1と、オフセットVoff=Voff1,Voff=Voff1と振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21とに基づいて、MRセンサ10-1について磁界の角度αを算出する(ステップS304)。
【0109】
同様に、角度算出部118bは、前回の時刻tにおける出力電圧V=V2,V=V2と、オフセットVoff=Voff2,Voff=Voff2と振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22とに基づいて、MRセンサ10-2について磁界の角度αを算出する(ステップS304)。さらに、角度算出部118bは、最新の時刻tにおける出力電圧V=V2,V=V2と、オフセットVoff=Voff2,Voff=Voff2と振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22とに基づいて、MRセンサ10-2について磁界の角度αを算出する(ステップS304)。第1、第2の実施例と同様に、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合には、式(9)を使用すればよく、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合には、式(10)を使用すればよい。
【0110】
判定部117bは、MR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(18)の条件を満たすかどうかをMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて判定することにより、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図26ステップS305)。また、判定部117は、MR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合、角度変化における出力電圧V,Vの平均変化率が式(19)の条件を満たすかどうかを判定することにより、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(ステップS305)。
【0111】
MRセンサ10-1のMR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117bは、MRセンサ10-1について算出された磁界の角度α,αと、オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21とに基づいて、式(11)、式(12)により電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出する。そして、判定部117bは、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21と既知の値Δαとについて式(18)が成立するときに、角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、式(18)が成立しないときは、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0112】
MRセンサ10-1のMR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合には、MRセンサ10-1について算出された磁界の角度α,αと、オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21とに基づいて、式(11)、式(12)中の2αをαにした式により、電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出すればよい。判定部117bは、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21と既知の値Δαとについて式(19)が成立するときに、角度変化における出力電圧V1,V1の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、式(19)が成立しないときは、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0113】
同様に、MRセンサ10-2のMR素子R1~R8としてAMR素子が使用されている場合、判定部117bは、MRセンサ10-2について算出された磁界の角度α,αと、オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22とに基づいて、式(11)、式(12)により電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出する。そして、判定部117bは、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22と既知の値Δαとについて式(18)が成立するときに、角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、式(18)が成立しないときは、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0114】
MRセンサ10-2のMR素子R1~R8としてGMR素子またはTMR素子が使用されている場合には、MRセンサ10-2について算出された磁界の角度α,αと、オフセット記憶部115に記憶されている振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22とに基づいて、式(11)、式(12)中の2αをαにした式により、電圧V,Vの変化ΔV,ΔVを算出すればよい。判定部117bは、算出したΔV,ΔVと振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22と既知の値Δαとについて式(19)が成立するときに、角度変化における出力電圧V2,V2の平均変化率が所定の条件を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部117bは、式(19)が成立しないときは、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0115】
角度算出部118bは、判定部116b,117bから得られた結果に基づいてMRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定する(図26ステップS306)。本実施例においても、判定部116bから得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定することが可能である。
【0116】
角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られたときに(ステップS306においてYES)、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについてステップS304で算出した角度αを磁界の角度αの正確な値として採用する(図26ステップS307)。
【0117】
また、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2のうちどちらか一方のみについて正確な角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られたときに(図26ステップS308においてYES)、ステップS304で算出した角度αのうち正確な角度算出が可能と判定されたMRセンサによって得られた角度αを磁界の角度αの正確な値として採用する(図26ステップS309)。
MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が不可能という判定結果が判定部116bから得られたときには磁界の角度αが不定となる。
【0118】
制御信号生成部119は、上位装置4から与えられた角度設定値と角度算出部118bによって算出された角度αとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成する(図26ステップS310)。この制御信号を、磁界発生部12が取り付けられた物体の駆動装置に供給することにより、物体の位置を制御することができる。
【0119】
以上のステップS302~S310の処理が、例えばオペレータの指示によって角度検出装置1bの動作が終了するまで(図26ステップS311においてYES)、繰り返し実施される。
【0120】
以上のように、本実施例では、複数のMRセンサ10-1,10-2を設けることにより、磁界発生部12の位置の検知範囲を広げることができるので、例えば本実施例をポジショナに適用する場合に、バルブステムの動きにおける直線的な領域を拡大したときにおいてもバルブ開度を検知することができる。また、本実施例では、測定精度を向上させることができる。
【0121】
なお、上記の例では、判定部116bから得られた結果のみで、正確な角度算出が可能なタイミングかどうかを判定しているが、判定部116b,117bの両方の判定結果を用いる方が好適な場合もある。具体的には、磁界発生部12がMRセンサ10-1,10-2のどちらか一方または両方の角度検出可能範囲内で停止しているタイミングのみを検出したい場合には、判定部116b,117bの両方の判定結果を使用する。
【0122】
この場合、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2の両方共に角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られ、MRセンサ10-1,10-2の両方共に角度算出が不可能という判定結果が判定部117bから得られたときに(ステップS306においてYES)、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについてステップS304で算出した角度αを磁界の角度αの正確な値として採用する(ステップS307)。また、角度算出部118bは、MRセンサ10-1,10-2のうちどちらか一方のみについて角度算出が可能という判定結果が判定部116bから得られ、角度算出が可能という結果が得られたMRセンサについて角度算出が不可能という判定結果が判定部117bから得られたときに(ステップS308においてYES)、判定部116bが角度算出が可能と判定したMRセンサによって得られた角度αを磁界の角度αの正確な値として採用すればよい(ステップS309)。
【0123】
本実施例では、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能な場合、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて磁界の角度αが得られるが、MRセンサ10-1によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-2によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αに基づいて最終的な角度αを算出するかは、適用するアプリケーションによって異なる。
【0124】
例えば測定精度を高めることを目的として、磁界発生部12がMRセンサ10-1に近いときにはMRセンサ10-1によって得られた角度αを磁界の角度αとして採用し、磁界発生部12がMRセンサ10-2に近いときにはMRセンサ10-2によって得られた角度αを磁界の角度αとして採用できるように、MRセンサ10-1,10-2のそれぞれについて角度αの異なる範囲を予め設定しておく。角度算出部118bは、MRセンサ10-1によって得られた角度αがMRセンサ10-1用に規定された角度範囲の場合には、MRセンサ10-1によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用し、MRセンサ10-2によって得られた角度αがMRセンサ10-2用に規定された角度範囲の場合には、MRセンサ10-2によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用する。
【0125】
また、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αに基づいて最終的な角度αを算出する場合には、所定のルールに基づいて角度αの値を算出すればよい。
【0126】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図27は本実施例に係るポジショナの構成を示すブロック図である。ポジショナ1cは、MRセンサ10-1,10-2と、データ処理制御部11cと、電空変換部13と、空気圧増幅部14とを備えている。
【0127】
図28は本実施例のデータ処理制御部11cの構成を示すブロック図である。データ処理制御部11cは、電源110と、センサ出力測定部111-1,111-2,112-1,112-2と、記憶部113と、オフセット算出部114cと、オフセット記憶部115と、判定部116b,117bと、角度算出部118bと、開度実測値生成部120cと、制御信号生成部121とを備えている。
【0128】
図29に示すように磁界発生部12をポジショナ1cのフィードバックレバー32に取り付けると、フィードバックレバー32の回転に伴って磁界発生部12が鉛直面(図29では紙面に対して垂直な面)上を移動する。そこで、磁界発生部12の軌道に対してセンサ面(図29の紙面と平行な面)が垂直となるようにMRセンサ10-1,10-2を設置すればよい。バルブ3のバルブステム31の上下動に応じて磁界発生部12が移動することにより、バルブ3の開度に応じた方向の磁界がMRセンサ10-1,10-2に印加される。
【0129】
図30は本実施例のポジショナ1cの動作を説明するフローチャートである。ポジショナ1cの工場出荷時に、オフセット算出部114cは、第2の実施例のオフセット算出部114a、第3の実施例のオフセット算出部114bと同様に、MRセンサ10-1のブリッジ回路100,101の出力電圧V1,V1の振幅Vm1=Vm11,Vm2=Vm21とオフセットVoff=Voff1,Voff=Voff1とを算出すると共に、MRセンサ10-2のブリッジ回路100,101の出力電圧V2,V2の振幅Vm1=Vm12,Vm2=Vm22とオフセットVoff=Voff2,Voff=Voff2とを算出する(図30ステップS400)。
【0130】
次に、オフセット算出部114cは、ポジショナ1cが化学プラント等の現場のバルブ3に取り付けられた後に、例えば現場のオペレータからセットアップの実行指示があったときに、オフセット算出部114a,114bと同様に、MRセンサ10-1,10-2の出力電圧V1,V2,V1,V2の振幅Vm11,Vm12,Vm21,Vm22を再度算出する(図30ステップS401)。
【0131】
次に、プラント運転時のステップS402~S409の処理は、第3の実施例のステップS302~S309と同じである。
次に、開度実測値生成部120cは、角度算出部118bによって算出された角度αに基づいてバルブ3の現在の開度実測値PVを求める(図30ステップS208)。開度実測値PVは、角度αと開度実測値PVとの既知の関係に基づいて求めることができる。
【0132】
制御信号生成部121は、上位装置4から与えられたバルブ3の開度設定値SPと開度実測値PVとの偏差を算出して、偏差がゼロになるように制御信号を生成して電空変換部13に出力する(図30ステップS411)。こうして、バルブ3の開度を制御することができる。
以上のステップS402~S411の処理が、例えばプラントの運転が停止するまで(図30ステップS412においてYES)、繰り返し実施される。
【0133】
第3の実施例で説明したとおり、MRセンサ10-1,10-2の両方共に正確な角度算出が可能な場合、MRセンサ10-1によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-2によって得られた角度αを最終的に磁界の角度αとして採用するか、MRセンサ10-1,10-2の両方によって得られた角度αに基づいて最終的な角度αを算出するかは、適用するポジショナによって異なる。
【0134】
なお、第3、第4の実施例では、MRセンサの個数を2個としたが、MRセンサの個数を3個以上としてもよい。
【0135】
[第5の実施例]
第1~第4の実施例では、電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たすかどうかを、式(4)、式(5)により判定したが、別の方法によって判定してもよい。
【0136】
上記のとおり、第1、第2の実施例において、V’=(V-Voff)/Vm1をx軸(横軸)にとり、V’=(V-Voff)/Vm2をy軸(縦軸)にとったxy平面上に、電圧V’,V’をプロットすると、MRセンサ10によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は、図31に示すように中心が(0,0)、直径が2の円200上の点となる。
【0137】
点(1,0)を始点とし点(V’,V’)を終点とするベクトルをA、点(-1,0)を始点とし点(V’,V’)を終点とするベクトルをB、点(0,-1)を始点とし点(V’,V’)を終点とするベクトルをC、点(0,1)を始点とし点(V’,V’)を終点とするベクトルをDとしたとき、ベクトルA,B,C,Dは式(20)~式(23)のように定義される。
【0138】
【数2】
【0139】
第1、第2の実施例の判定部116は、ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件とベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件を式で表すと、式(24)のようになる。ベクトルCとベクトルDの内積が0という条件を式で表すと、式(25)のようになる。
【0140】
【数3】
【0141】
判定部116は、ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件とベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のどちらも成立しないときは、正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0142】
図31の関係を第3、第4の実施例に適用することも可能である。出力電圧V1からオフセットVoff1を減算して振幅Vm11で除算した値をV’(=(V1-Voff1)/Vm11)、出力電圧V1からオフセットVoff1を減算して振幅Vm21で除算した値をV’(=(V1-Voff1)/Vm21)とすれば、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は図31と同じ円200上の点となる。
【0143】
ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件式は、式(24)においてV=V1、Voff=Voff1、Vm1=Vm11、V=V1、Voff=Voff1、Vm2=Vm21とした式となる。ベクトルCとベクトルDの内積が0という条件式は、式(25)においててV=V1、Voff=Voff1、Vm1=Vm11、V=V1、Voff=Voff1、Vm2=Vm21とした式となる。
【0144】
第3、第4の実施例の判定部116bは、出力電圧V1,V1から算出したベクトルAとベクトルBの内積が0という条件と、出力電圧V1,V1から算出したベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部116は、出力電圧V1,V1から算出したベクトルAとベクトルBの内積が0という条件と、出力電圧V1,V1から算出したベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のどちらも成立しないときは、MRセンサ10-1によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
【0145】
同様に、出力電圧V2からオフセットVoff2を減算して振幅Vm12で除算した値をV’(=(V2-Voff2)/Vm12)、出力電圧V2からオフセットVoff2を減算して振幅Vm22で除算した値をV’(=(V2-Voff2)/Vm22)とすれば、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングのときに、電圧V’,V’は図31と同じ円200上の点となる。
【0146】
ベクトルAとベクトルBの内積が0という条件式は、式(24)においてV=V2、Voff=Voff2、Vm1=Vm12、V=V2、Voff=Voff2、Vm2=Vm22とした式となる。ベクトルCとベクトルDの内積が0という条件式は、式(25)においててV=V2、Voff=Voff2、Vm1=Vm12、V=V2、Voff=Voff2、Vm2=Vm22とした式となる。
【0147】
判定部116bは、出力電圧V2,V2から算出したベクトルAとベクトルBの内積が0という条件と、出力電圧V2,V2から算出したベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のうち少なくとも一方が成立するときに、電圧V’,V’が所定の幾何学的関係を満たし、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が可能なタイミングと判定する。また、判定部116は、出力電圧V2,V2から算出したベクトルAとベクトルBの内積が0という条件と、出力電圧V2,V2から算出したベクトルCとベクトルDの内積が0という条件のどちらも成立しないときは、MRセンサ10-2によって正確な角度算出が不可能なタイミングと判定する。
以上のようにして、本実施例を第1~第4の実施例に適用することができる。
【0148】
第1~第5の実施例で説明した記憶部113とオフセット算出部114,114a~114cとオフセット記憶部115と判定部116,116b,117,117bと角度算出部118,118bと制御信号生成部119,121と開度実測値生成部120,120cとは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図32に示す。
【0149】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、センサ出力測定部111,111-1,111-2,112,112-1,112-2と電空変換部13等が接続される。本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1~第5の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、MRセンサを使用する角度検出装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1,1b…角度検出装置、1a,1c…ポジショナ、2…操作器、3…バルブ、4…上位装置、10,10-1,10-2…MRセンサ、11,11a~11c…データ処理制御部、12…磁界発生部、13…電空変換部、14…空気圧増幅部、100,101…ブリッジ回路、110…電源、111,111-1,111-2,112,112-1,112-2…センサ出力測定部、113…記憶部、114,114a,114b…オフセット算出部、115…オフセット記憶部、116,116b,117,117b…判定部、118,118b…角度算出部、119,121…制御信号生成部、120,120c…開度実測値生成部。
図1
図2
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