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  • 特開-発泡成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134382
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/44 20060101AFI20240926BHJP
   C08J 9/232 20060101ALI20240926BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B29C44/44
C08J9/232 CFD
B29C44/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044651
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三浦 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】近田 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭志
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA68
4F074AD04
4F074AD13
4F074AG11
4F074AG20
4F074BA32
4F074BB02
4F074BC12
4F074CA35
4F074CA39
4F074CA48
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA12
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
4F214AA24
4F214AB02
4F214AC01
4F214AG20
4F214AJ08
4F214AR20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UF11
4F214UF31
4F214UF34
4F214UQ01
(57)【要約】
【課題】変形が防止または低減された発泡成形体を提供し得る、発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】ホッパー(3)から発泡粒子輸送配管(4)および充填機(1)を介して成形金型(2)内の成形空間(21)に脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を充填する工程を有し、前記ホッパー(3)内の圧力は大気圧であり、充填エア供給部(5)から充填エアを供給し、調整エア供給部(6)から調整エアを供給する、発泡成形体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形装置を用いて脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を成形する、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法であって、
前記成形装置は、
前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を収容するホッパーと、
調整エア供給部を備える発泡粒子輸送配管と、
充填エア供給部を備える充填機を備える成形金型と、を有し、
前記ホッパーと前記充填機とは、前記発泡粒子輸送配管により接続されており、かつ、
前記成形金型は、内部に成形空間を有しており、
前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法は、
前記ホッパーから前記発泡粒子輸送配管および前記充填機を介して前記成形空間に前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を充填する充填工程を有し、
前記充填工程において、
前記ホッパー内の圧力は大気圧であり、
前記充填エア供給部から充填エアを供給し、かつ、
前記調整エア供給部から調整エアを供給する、
脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記充填工程において、前記充填エアの圧力は0.30MPa(ゲージ圧)以上0.68MPa(ゲージ圧)未満である、請求項1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記充填工程において、前記調整エアの圧力は0.01MPa(ゲージ圧)以上0.34MPa(ゲージ圧)未満である、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記充填工程において、前記充填エアの圧力100%に対する前記調整エアの圧力の割合は5%~50%である、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記充填工程において、前記ホッパーに収容される前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の内圧は大気圧以上0.22MPa(絶対圧)以下である、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
前記充填工程において、前記ホッパーに収容される前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の内圧は0.13MPa(絶対圧)~0.18MPa(絶対圧)である、請求項5に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂発泡粒子である、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂といった熱可塑性樹脂の発泡粒子を成形してなる発泡成形体は、容器、包装材料、衛生用品等の種々の用途に使用されている。このような熱可塑性樹脂発泡粒子を成形する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-70587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷低減の観点から、生分解性の熱可塑性樹脂である脂肪族ポリエステル系樹脂を発泡成形体用途に利用する技術が検討されている。
【0005】
本発明者らは、脂肪族ポリエステル系樹脂からなる発泡成形体について鋭意検討する中で、ポリスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂といった従来の熱可塑性樹脂からなる発泡粒子と同様の方法で脂肪族ポリエステル系樹脂からなる発泡粒子を成形した場合、得られる発泡成形体において、過剰な変形(「ヒケ」ともいう)が発生する問題があることを新規に見出した。
【0006】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供し得る、新規の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕成形装置を用いて脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を成形する、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法であって、前記成形装置は、前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を収容するホッパーと、調整エア供給部を備える発泡粒子輸送配管と、充填エア供給部を備える充填機を備える成形金型と、を有し、前記ホッパーと前記充填機とは、前記発泡粒子輸送配管により接続されており、かつ、前記成形金型は、内部に成形空間を有しており前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法は、前記ホッパーから前記発泡粒子輸送配管および前記充填機を介して前記成形空間に前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を充填する充填工程を有し、前記充填工程において、前記ホッパー内の圧力は大気圧であり、前記充填エア供給部から充填エアを供給し、かつ、前記調整エア供給部から調整エアを供給する、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔2〕前記充填工程において、前記充填エアの圧力は0.30MPa(ゲージ圧)以上0.68MPa(ゲージ圧)未満である、〔1〕に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔3〕前記充填工程において、前記調整エアの圧力は0.01MPa(ゲージ圧)以上0.34MPa(ゲージ圧)未満である、〔1〕または〔2〕に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔4〕前記充填工程において、前記充填エアの圧力100%に対する前記調整エアの圧力の割合は5%~50%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔5〕前記充填工程において、前記ホッパーに収容される前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の内圧は大気圧以上0.22MPa(絶対圧)以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔6〕前記充填工程において、前記ホッパーに収容される前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の内圧は0.13MPa(絶対圧)~0.18MPa(絶対圧)である、〔5〕に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
〔7〕前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂発泡粒子である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供し得る、新規の脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る発泡成形体の製造方法において使用する成形装置の概略構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施例に係る発泡成形体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0012】
本明細書において、X単量体に由来する繰り返し単位を「X単位」と称する場合がある。繰り返し単位は、構成単位ともいえる。
【0013】
〔1.本発明の一実施形態の技術思想〕
熱可塑性樹脂発泡粒子を成形(例えば、型内発泡成形)する際の工程の一つに、ホッパーから金型内の成形空間に、輸送配管を通じて、熱可塑性樹脂発泡粒子を輸送および充填する充填工程がある。従来の熱可塑性樹脂発泡粒子の充填方法は、以下のクラッキング充填法(方法(1))、加圧充填法(方法(2))、圧縮充填法(方法(3))に大別することができる。
【0014】
方法(1)、方法(2)、および方法(3)のいずれにおいても、金型に取り付けられた充填機から充填エアを噴出させて空気の流れを作り、この空気の流れによって熱可塑性樹脂発泡粒子をホッパーから金型内の成形空間に輸送する点は共通している。一方で、方法(1)、方法(2)、および方法(3)は、熱可塑性樹脂発泡粒子を円滑に成形空間に充填(輸送)するための手段において相違する。
【0015】
方法(1)は、金型(移動型および移動型)に配置されたコアベントやコアベントホールなどの通気孔からだけでは、充填時に使用する空気を充分に排気できない場合に採用する方法である。方法(1)においては、熱可塑性樹脂発泡粒子の充填時に、移動型と固定型とを完全に型閉めせず、僅かな(例えば成形体の底部の厚さの10%分の)隙間(クラッキング)を開けておき、この移動型と固定型との間の隙間からも充填時に使用する空気を排出する方法である。
【0016】
方法(2)は、充填する熱可塑性樹脂発泡粒子を予め空気加圧した状態でホッパー内に貯留しておき、金型を型閉めした状態で成形空間を大気解放することで、その差圧を用いて成形空間内に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する方法である。
【0017】
方法(3)は、充填する熱可塑性樹脂発泡粒子を予め空気加圧されたホッパー内に貯留しておき、金型を型閉めした状態で、金型内の成形空間内をホッパーと同圧またはホッパーよりも低い圧力に空気加圧した状態(成形空間圧力を付した状態)で、成形空間内に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する方法である。方法(3)においては、通常、ホッパー内と成形空間内とは、熱可塑性樹脂発泡粒子の充填中、既定の圧力(上記成形空間圧力)に制御される。
【0018】
ポリスチレン系樹脂発泡粒子やポリオレフィン系樹脂発泡粒子といった従来の熱可塑性樹脂粒子の型内発泡成形においては、上記の方法(1)、方法(2)、および方法(3)のいずれの充填方法も採用することができ、一般的に使用もされている。
【0019】
一方で、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を用いた型内発泡成形においては、従来の充填方法(方法(1)、方法(2)、および方法(3))を採用した場合、得られる発泡成形体において、過剰な変形が生じるという新たな課題が存在することを本発明者らは新規に見出した。上記の課題を解決すべく、発泡成形体の変形の原因について鋭意検討したところ、本発明者らは、ホッパーから成形空間への輸送過程において、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の連泡率が悪化(増大)していることが、得られる発泡成形体において過剰な変形が発生する要因となっていることを、新規に見出した。
【0020】
かかる脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の連泡率の悪化の原因としては、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子が、従来の熱可塑性樹脂粒子と比較して脆いことが考えられる。より具体的には、方法(1)、方法(2)、および方法(3)の方法ではいずれも充填エアが強すぎるため、輸送の過程で脂肪族ポリエステル系発泡粒子に強い衝撃がかかり、当該衝撃により脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子外層の気泡が破壊されることが原因として考えられる。また、方法(2)および方法(3)の方法で脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を充填した場合、ホッパーが予め加圧されているため、ホッパーから発泡粒子輸送配管に発泡粒子を排出した際に脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子に強い衝撃がかかり、当該衝撃により脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子外層の気泡が破壊されることも原因として考えられる。
【0021】
上記の知見を得た本発明者らは、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の輸送過程における連泡率の悪化を抑制することができれば、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供できると考えた。そして、かかる知見に基づきさらに鋭意検討を進めた結果、(1)充填工程においてホッパーは加圧せず(ホッパー内の圧力を大気圧とする)、(2)適度な充填エアを供給し、さらに(3)追加のエア(調整エア)を輸送管内に供給することにより、輸送過程における脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の連泡率の悪化を抑制でき、その結果、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0022】
本発明の一態様は、上記の本発明者らの見出した脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の独自の物性および当該物性により生じた新規の課題を考慮して設計されたものである。それゆえ、このような物性を有さない従来の熱可塑性樹脂粒子を成形することを前提とした従来技術からは容易に相当しえず、従来技術と技術的思想を異にする新規な方法であるといえる。
【0023】
〔2.発泡成形体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る発泡成形体の製造方法は、成形装置を用いて脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を成形する、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法であって、前記成形装置は、前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を収容するホッパーと、調整エア供給部を備える発泡粒子輸送配管と、充填エア供給部を備える充填機を備える成形金型と、を有し、前記ホッパーと前記充填機とは、前記発泡粒子輸送配管により接続されており、かつ、前記成形金型は、内部に成形空間を有しており前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体の製造方法は、前記ホッパーから前記発泡粒子輸送配管および前記充填機を介して前記成形空間に前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を充填する充填工程を有し、前記充填工程において、前記ホッパー内の圧力は大気圧であり、前記充填エア供給部から充填エアを供給し、かつ、前記調整エア供給部から調整エアを供給する、方法である。
【0024】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係る発泡成形体の製造方法」を「本製造方法」と称する場合があり、「脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合がある。また、本製造方法で得られる発泡成形体は、「脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体」ともいえる。
【0025】
本製造方法は、上述の構成を有するため、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0026】
また、本製造方法では、生分解性樹脂である脂肪族ポリエステル系樹脂を使用するため、得られる発泡成形体は、廃棄による土壌汚染および/または海洋汚染を抑制することができる。これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」および/または目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献が期待できる。
【0027】
先ず、本製造方法において使用する材料(原料)について説明する。
【0028】
<発泡粒子>
本製造方法において使用される発泡粒子は、脂肪族ポリエステル系樹脂を用いて得られた脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を発泡させることで得られる。さらに、発泡成形体は、前記発泡粒子を成形(例えば、型内発泡成形)することにより得られる。発泡粒子は、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を発泡させてなる、ともいえる。
【0029】
発泡粒子の原料となる脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、具体的には、例えば、以下の方法で得ることができる:
(1)脂肪族ポリエステル系樹脂と、タルク等の気泡調整剤等と、脂肪酸アミド等のその他の添加剤と、を混合し、混合物を得る;
(2)得られた混合物を、例えば押出機を使用して、加熱しながら溶融混錬することにより、溶融した樹脂組成物を得る;
(3)得られた樹脂組成物を、水冷後、切断することにより、脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を得る。
【0030】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、具体的には、例えば、以下の方法で脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を発泡して得ることができる:
(1)水等の分散媒と、脂肪族ポリエステル系樹脂粒子と、必要に応じて1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(TBCH)等の架橋剤、第三リン酸カルシウム等の分散剤およびアルカンスルホン酸ナトリウム等の分散助剤と、を容器内で混合する;
(2)得られた混合物を攪拌機などで撹拌しつつ、二酸化炭素、エタノール、混合ブタン(例えばノルマルブタンとイソブタンの混合物)等の発泡剤を容器内に加えて分散液を調製する;
(3)分散液を発泡温度まで昇温し、さらに必要に応じて容器内の圧力を発泡圧力まで昇圧させる;
(4)容器内の温度及び圧力をそれぞれ発泡温度および発泡圧力付近で一定時間保持する;
(5)次いで、容器内の分散液を大気圧下に放出することにより、発泡粒子を得る。
ここで、前記(2)から、前記(5)において分散液を放出し終えるまで、容器内の分散液(混合物)を、例えば撹拌機などで撹拌し続ける。また、前記(1)および(2)の工程を併せて、「分散工程」と称する場合がある。
【0031】
このようにして得られた発泡粒子は、必要に応じてヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液等で洗浄されてもよい。
【0032】
あるいは、耐圧容器内にて上述した脂肪族ポリエステル系樹脂粒子に発泡性ガス(発泡剤)を含浸させた後、発泡剤を含有している脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を発泡機に投入して、水蒸気等で発泡させることにより、発泡粒子を得てもよい。
【0033】
前記発泡粒子の形状は特に限定されないが、例えば、球形あるいは略球形であってもよい。
【0034】
(脂肪族ポリエステル系樹脂)
上述したように、発泡粒子は、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を発泡させてなるものである。換言すれば、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、樹脂成分として、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む。本明細書において、発泡粒子中の「樹脂成分」とは、当該発泡粒子に含まれている成分のうち、発泡剤、気泡調整剤およびその他の添加剤などを除いた、当該発泡粒子を実質的に構成している樹脂の成分を意図する。
【0035】
発泡粒子の樹脂成分は、当該樹脂成分100重量%中、脂肪族ポリエステル系樹脂を、例えば50重量%より多く含み、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがよりさらに好ましく、100重量%含むことが特に好ましい。換言すれば、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の樹脂成分は、脂肪族ポリエステル系樹脂のみから構成されていることが特に好ましい。発泡粒子の樹脂成分中における脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が多いほど、得られる発泡成形体の廃棄による土壌汚染を抑制することができるという利点を有する。という利点を有する。
【0036】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペートポリエチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリエチレンオキザレート、ポリブチレンオキザレート、ポリネオペンチルオキザレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケートおよびポリカプロラクトン等からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0037】
脂肪族ポリエステル系樹脂の中でも、土壌分解性に加えて海洋分解性も有するポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が好ましい。換言すれば、発泡粒子の樹脂成分は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含むことが好ましい。
【0038】
発泡粒子の樹脂成分は、当該樹脂成分100重量%中、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を50重量%より多く含むことが好ましい。本明細書において、樹脂成分100重量%中、「X」樹脂を50重量%より多く含む発泡粒子を、X樹脂発泡粒子と称する場合がある。例えば、樹脂成分100重量%中、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を50重量%より多く含む発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂発泡粒子とも称する。脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂発泡粒子であることが好ましい。当該構成によると、発泡成形体の廃棄による土壌汚染および海洋汚染を抑制(低減)することができる、という利点を有する。
【0039】
発泡粒子の樹脂成分は、当該樹脂成分100重量%中、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがよりさらに好ましく、100重量%含むことが特に好ましい。換言すれば、発泡粒子の樹脂成分は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂のみから構成されることが特に好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の樹脂成分中のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の含有量が多いほど、得られる発泡成形体の廃棄による土壌汚染および/または海洋汚染を抑制することができるという利点を有する。
【0040】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂)
本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂」を、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)」または「P3HA」と称する場合がある。以下では、P3HAについて説明する。
【0041】
P3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート単位を必須の構成単位(モノマー単位)として有する重合体である。本明細書において、「3-ヒドロキシアルカノエート」を「3HA」と称する場合もある。P3HAとしては、具体的には、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む重合体が好ましい:
[-CHR-CH-CO-O-]・・・(1)。
一般式(1)中、RはC2n+1で表されるアルキル基を示し、nは1~15の整数を示す。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。nとしては、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。
【0042】
P3HAとしては、特に微生物から産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAは、3HA単位が、全て(R)-3HAであるポリ[(R)-3HA]である。
【0043】
P3HAは、3HA単位(特に一般式(1)の繰り返し単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましい。また、繰り返し単位(モノマー単位)としては、3HA単位のみであってもよいし、3HA単位に加えて、3HA以外の単量体に由来する繰り返し単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位等)を含んでいてもよい。
【0044】
3HA単位の具体例としては、3-ヒドロキシブチレート単位、3-ヒドロキシバレレート単位および3-ヒドロキシヘキサノエート単位などが挙げられる。3-ヒドロキシブチレートは、融点および引張強度がプロピレンに近い。それ故、本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシブチレート単位を含むことが好ましい。本明細書において、「3-ヒドロキシブチレート」を「3HB」と称する場合もある。
【0045】
P3HAは、3HB単位(モノマー単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。P3HAとしては、特に、3HB単位を含み、かつ3HBが全て(R)-3HBである重合体(微生物によって産生された重合体)が好ましい。
【0046】
P3HAが2種以上の繰り返し単位を含む場合、含有量が最も多い繰り返し単位以外の繰り返し単位の由来となるモノマーをコモノマーと称する。本明細書において、「コモノマーに由来する繰り返し単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
【0047】
コモノマーとしては、特に限定されないが、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)または4-ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)などが好ましい。
【0048】
P3HAの具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(以下、「P3HB3HV」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「P3HB3HH」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(以下、「P3HB4HB」と称する場合がある。)等が挙げられる。特に、加工性および発泡成形体の物性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)またはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。本発明の一実施形態において、上述したP3HAとしては、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
なお、「-コ-X」は、コモノマー単位としてX単位を含むことを意図する。
【0050】
P3HAは、3HB単位を必須の繰り返し単位(構成単位)として有し、かつコモノマー単位を有することが好ましい。すなわち、P3HAは、3HB単位とコモノマー単位とを有する共重合体であることが好ましい。P3HAが3HB単位とコモノマー単位とを有する場合について説明する。この場合、P3HAにおける全繰り返し単位100モル%中の3HB単位とコモノマー単位との比率(3HB単位/コモノマー単位)としては、99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)がより好ましく、95/5(モル%/モル%)~85/15(モル%/モル%)がさらに好ましい。P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が1モル%以上であれば、P3HAの溶融混練可能な温度域と熱分解温度域とが十分に離れているため、得られる発泡粒子が加工性に優れるという利点を有する。一方、P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が20モル%以下であれば、溶融混練時のP3HA系組成物の結晶化が早く、生産性が高い。このような各モノマー単位の比率を有するP3HAは、当業者に公知の方法、例えば国際公開WO2009/145164号に記載の方法に準拠して作製することができる。
【0051】
なお、P3HA中の各モノマー単位の比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることができる。
【0052】
本発明の一実施形態において、P3HAの製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。P3HAの微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。
【0053】
3HBと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌として、具体的には、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、P3HB3HHに関し、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入することでP3HB3HHの生産性を向上させたアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましい。P3HAの製造方法では、アルカリゲネス・ユートロファス AC32株等の微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が好適に用いられる。またコポリマー生産菌に関して、前記以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良い。また、微生物(菌)の培養条件についても、生産したいP3HAに合わせて、基質の種類を含む様々な培養条件の最適化をすればよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、P3HAを生産する微生物を培養する方法は特に限定されず、例えば、国際公開第WO2019/142717号に記載の方法を使用することができる。
【0055】
発泡粒子の樹脂成分は、脂肪族ポリエステル系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。脂肪族ポリエステル系樹脂以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、変性デンプンおよび変性セルロース等が挙げられる。
【0056】
発泡粒子には、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む樹脂成分に加え、脂肪族ポリエステル系樹脂粒子および/または発泡粒子の製造時に使用され得る添加剤、結晶核剤、気泡調整剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、分散剤、分散助剤等が含まれていてもよい。発泡粒子には、これら以外に本発明の一実施形態の効果を阻害しない範囲で、使用可能なその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては例えば、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。その他の成分は1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらその他の成分の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。このような添加剤、気泡調整剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、分散剤、分散助剤等およびその他成分についての種類および添加量等の使用方法については、一例として、国際公開第2021/002092号にて開示されている種類および添加量等の使用方法を採用することができる。
【0057】
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物が好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の製造過程および/または発泡粒子の製造過程において架橋剤を使用することにより、架橋された発泡粒子をえることができる。換言すれば、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものであることが好ましい。
【0058】
架橋剤として用いる有機過酸化物としては、使用する脂肪族ポリエステル系樹脂の種類等にもよるが、1時間半減期温度が90℃~160℃の有機過酸化物が好ましく、110℃~160℃の有機過酸化物がより好ましく、110℃~125℃の有機過酸化物がさらに好ましく、114℃~124℃の有機過酸化物が特に好ましい。そのような有機過酸化物として、具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO、1時間半減期温度:92℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC、1時間半減期温度:121℃)および1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(TBCH、1時間半減期温度:116℃)等が挙げられる。1時間半減期温度が90℃以上である有機過酸化物を使用する場合、所望のゲル分率の発泡粒子を得られる傾向があるという利点を有する。一方、1時間半減期温度が160℃以下である有機過酸化物を使用する場合、未反応の架橋剤が最終生成物中に残存しにくいという利点を有する。
【0059】
架橋剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されない。架橋剤の使用量は、得られる発泡粒子において所望する架橋の程度および独立気泡率について適宜設定すればよい。また、架橋剤の使用量は発泡粒子のゲル分率と正の相関関係があり、発泡粒子のゲル分率の値に大きく影響する。そのため、得られる発泡粒子のゲル分率を考慮して架橋剤の使用量を厳密に設定することもまた、望ましい。
【0060】
発泡粒子のゲル分率は、発泡粒子100重量%に対して、30重量%~95重量%であることが好ましく、50重量%~90重量%であることがより好ましく、60重量%~85重量%であることがさらに好ましい。発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して(a)30重量%以上である場合、発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するという利点を有し、(b)95重量%以下である場合、低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体が得られ易いという利点を有する。
【0061】
以下、本製造方法の含み得る各工程について詳説する。
【0062】
<発泡成形体の製造方法>
(充填工程)
以下、先ず本製造方法の含む充填工程において使用する成形装置について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態において使用する成形装置100の概略構成の一例を示す模式図である。
【0063】
図1に示すように、成形装置100は、少なくとも、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を収容するホッパー3と、調整エア供給部6を備える発泡粒子輸送配管4と、充填エア供給部5を備える充填機1を備える成形金型2と、を有する。また、矢印は、発泡粒子の輸送方向(移動方向)を示している。
【0064】
成形装置100において、ホッパー3と、充填機1とは、発泡粒子輸送配管4により接続されている。成形装置100は、ホッパー3に収容された発泡粒子が、発泡粒子輸送配管4および充填機1中をこの順で通過して、成形金型2内に供給されるように構成されている。
【0065】
図示はしないが、充填機1は、充填機1に充填エアを供給する充填エア供給部5に加え、その先端が成形金型2の発泡粒子導入口を閉鎖できるように備えられたピストン、および、発泡粒子輸送配管4から供給された発泡粒子を充填機1内に導入する導入口を備える。
【0066】
成形金型2は、固定金型と、移動金型と、備えており、当該移動金型が固定金型に向けて移動することにより、成形金型2が型閉じされ、固定金型および移動金型からなる成形空間21が形成されるように構成されている。換言すれば、成形金型2は、固定金型および移動金型からなる成形空間21を有する。
【0067】
図示はしないが、ホッパー3は、ホッパー3に収容された発泡粒子を発泡粒子輸送配管4に供給する発泡粒子出口を備えており、この発泡粒子出口を介して発泡粒子輸送配管4と連結されている。また、発泡粒子出口は、発泡粒子出口の開閉の制御を可能とするシャッターを備えていてもよい。
【0068】
充填エア供給部5および調整エア供給部6は、少なくとも、エア発生装置(充填エア発生装置52および調整エア発生装置62)、ならびに、エア供給管(充填エア供給管51および調整エア供給管61)を有しており、充填エア供給管51および調整エア供給管61は、その末端の開口部にエア排出口を有する。充填エア供給部5および調整エア供給部6は、エア発生装置で発生したエア(充填エアまたは調整エア)を、エア供給管を通して、エア排出口より、それぞれ、充填機1および発泡粒子輸送配管4内に供給する。エア排出口は、成形金型2の方向に開口しており、供給されたエアを成形金型2の方向に噴出させることで、発泡粒子の輸送方向に空気の流れを形成する。成形装置100は、この空気の流れにのせてホッパー3より発泡粒子輸送配管4内に供給された発泡粒子を、発泡粒子輸送配管4および充填機1を介して成形金型2内に供給するように構成されている。
【0069】
なお、図1においては、成形装置100が充填機1、充填エア供給部5および調整エア供給部6をそれぞれ1つずつ有する態様を例に挙げて図示しているが、成形装置100は、2つ以上の充填機1、充填エア供給部5および/または調整エア供給部6を有するものであってもよい。また、図1においては、成形装置100が、充填エア発生装置52および調整エア発生装置62をそれぞれ個別に有する態様を例に挙げて図示しているが、成形装置100において、充填エア発生装置52および調整エア発生装置62としては、1つのエア発生装置を共通化(共用)して使用してもよい。そのような態様もまた本発明の一態様に含まれる。
【0070】
本製造方法の充填工程は、ホッパー3に収容された発泡粒子を、発泡粒子輸送配管4および充填機1を介して成形金型2が有する成形空間21に充填する工程である。
【0071】
充填工程においては、ホッパー3内の圧力は大気圧である。本明細書において、「ホッパー内の圧力は大気圧である」とは、当該ホッパー3内の圧力を操作しないこと(特に、加圧しないこと)を意図する。「ホッパー内の圧力は大気圧である」は、「ホッパー内を大気圧下とする」と言い換えることもできる。充填工程において、ホッパー3内の圧力が大気圧であることで、発泡粒子がホッパー3から発泡粒子輸送配管4内に供給された際にホッパー3内と、発泡粒子輸送配管4内との圧力差により急速に変形(特に、膨張)することを防止または低減でき、発泡粒子内部の気泡の連泡化を防止または低減することができる。そして、その結果、変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【0072】
充填工程において、ホッパー3から発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給する際の、充填エアおよび供給エアを供給する態様(供給のタイミング)は、特に限定されないが、例えば、以下の態様であり得る:
(1)ホッパー3のシャッターを開けて、ホッパー3から発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給すると同時に、充填エア供給部5から充填エアを供給し、調整エア供給部6から調整エアを供給する;
(2)発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給する前に、予め充填エア供給部5から充填エアを、調整エア供給部6から調整エアを供給開始しておいた後に、ホッパー3のシャッターを開けて、ホッパー3から発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給する;または、
(3)発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給する前に、予め供給開始しておいた充填エア供給部5からの充填エア、および、調整エア供給部6からの調整エアを、ホッパー3のシャッターを開けてホッパー3に吹き戻した後に、ホッパー3から発泡粒子を発泡粒子輸送配管4内に供給する。
【0073】
充填工程において、充填エア供給部5から供給される充填エアの圧力は、0.10MPa(ゲージ圧)~1.00MPa(ゲージ圧)とすることが好ましく、0.15MPa(ゲージ圧)~0.90MPa(ゲージ圧)とすることが好ましく、0.3MPa(ゲージ圧)以上0.68MPa(ゲージ圧)未満とすることが特に好ましく、0.40MPa(ゲージ圧)~0.60MPa(ゲージ圧)であってもよい。充填エアの圧力を上記の範囲とすることにより、効率的に発泡粒子を充填することができる。また、特に、充填エアの圧力を0.3MPa(ゲージ圧)以上0.68MPa(ゲージ圧)未満とすることにより、効率的に発泡粒子を充填できるとともに、充填エアにより形成される空気の流れが過剰に強くなること、および、強い空気の流れにより発泡粒子に強い衝撃がかかり、発泡粒子が破損すること(特に、発泡粒子外層の気泡の連泡化)、を抑制することができ、その結果、表面性に優れ、かつ、より変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【0074】
充填工程において、調整エア供給部6から供給される調整エアの圧力は、0.01MPa(ゲージ圧)~0.50MPa(ゲージ圧)とすることが好ましく、0.01MPa(ゲージ圧)~0.45MPa(ゲージ圧)とすることが好ましく、0.01MPa(ゲージ圧)以上0.34MPa(ゲージ圧)未満とすることが特に好ましく、0.02MPa(ゲージ圧)~0.30MPa(ゲージ圧)であってもよい。調整エアの圧力を上記の範囲とすることにより、効率的に発泡粒子を充填することができる。また、特に、調整エアの圧力を0.01MPa(ゲージ圧)以上0.34MPa(ゲージ圧)未満とすることにより、調整エアにより形成される空気の流れが過剰に強くなること、および、強い空気の流れにより発泡粒子に強い衝撃がかかり、発泡粒子が破損すること(特に、発泡粒子外層の気泡の連泡化)を抑制することができ、その結果、表面性に優れ、かつ、より変形の抑制された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【0075】
充填工程における、充填エアの圧力に対する調整エアの圧力の割合(調整エア圧力割合)は、1.0%~70.0%であることが好ましく、3.0%~55.0%であることがより好ましく、5.0%~50.0%であることが特に好ましい。調整エア圧力割合を上記の範囲とすることにより、表面性に優れ、かつ、より変形が防止または低減された脂肪族ポリエステル系樹脂発泡成形体を提供することができる、という利点を有する。
【0076】
充填工程において、ホッパー3内に収容される発泡粒子は無加圧(大気圧と同値の内圧)のものであってもよく、収容前に加圧され、大気圧よりも高い所定の内圧を付与された物であってもよい。ホッパー3内に収容される発泡粒子の内圧は、大気圧以上0.22MPa(絶対圧)以下であることが好ましく、大気圧を越えて(0.10MPa(絶対圧)を越えて)0.22MPa(絶対圧)以下であることがより好ましく、0.13MPa(絶対圧)~0.18MPa(絶対圧)であることがさらに好ましく、0.14MPa(絶対圧)~0.17MPa(絶対圧)であることがよりさらに好ましい。発泡粒子の内圧を上記の範囲、特に、0.13MPa(絶対圧)~0.18MPa(絶対圧)とすることにより、表面性と内部融着率に優れる発泡成形体を提供することができる。なお、発泡粒子に内圧を付与する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば特開平7-178747号あるいは特開2022-104389号等にて開示されている方法を採用することができる。
【0077】
充填工程においては、上記のように、成形金型2の備える移動金型および固定金型が型閉じすることにより、成形空間21が形成される。この型閉じを行う際に、充填された発泡粒子が漏れない程度の隙間(クラッキング)を敢えて残し、発泡粒子を充填した後に完全に型閉じしても構わない。このようにクラッキングがある状態で成形空間21に発泡粒子を充填することで、充填時に使用する充填エアおよび調整エアをクラッキングから排出しながら、充填工程を実施することがでる。これにより、発泡粒子の輸送方向により効率的に空気の流れを形成することができ、成形空間21に発泡粒子を効率的に充填することができる。クラッキングがある状態で充填工程を実施する場合、クラッキング量としては、型内発泡成形しようとする発泡成形体の型開き(型閉じ)方向の発泡成形体寸法の1%~30%とすることが好ましく、2%~25%とすることがより好ましい。特に、より表面性に優れる発泡成形体を提供する観点から、無加圧の(内圧が大気圧と同値の)発泡粒子を充填に供する場合は、上記の量のクラッキングを設けた状態で充填工程を実施することが好ましい。
【0078】
(加熱工程)
本製造方法においては、充填工程により成形金型2内に充填された発泡粒子を水蒸気で加熱することで成形する、加熱工程を含むものであってよい。加熱工程は発泡粒子を加熱成形する工程であるとも言える。加熱工程における発泡粒子の加熱成形方法は従来公知であり、例えば、一方加熱、逆一方加熱および両面加熱から選択される1つ以上の方法を適用することができる。加熱工程では、一方加熱、逆一方加熱および/または両面加熱の前に、さらに任意で、成形金型2の予備加熱を行ってもよい。より具体的な発泡粒子の加熱成形方法としては、例えば、特開2012-233182号あるいは特願2022-050566号等にて開示されている方法を採用することができる。
【0079】
加熱工程において実施される種々の加熱における水蒸気圧、実施時間等の加熱条件は、適宜決定することができる。例えば、予備加熱を行う際の水蒸気圧は0.01~0.30MPa(ゲージ圧)であってもよいし、加熱時間は1~30秒であってもよい。一方加熱を行う際の水蒸気圧は0.01~0.30MPa(ゲージ圧)であってもよいし、加熱時間は1~30秒であってもよい。逆一方加熱を行う際の水蒸気圧は0.01~0.30MPa(ゲージ圧)であってもよいし、加熱時間は1~30秒であってもよい。両面加熱を行う際の水蒸気圧は0.01~0.30MPa(ゲージ圧)であってもよいし、加熱時間は1~30秒であってもよい。
【0080】
本製造方法において、充填工程に供される(充填前の)発泡粒子の連泡率(連続気泡率ともいう)は、7.0%以下であることが好ましく、6.5%以下であることがより好ましく、6.0%以下であることがさらに好ましく、5.5%以下であることがよりさらに好ましく、5.0%以下であることが特に好ましい。充填前の連泡率が上記の範囲内である発泡粒子を充填工程で使用することにより、より変形が抑制された発泡成形体を提供することができる。発泡粒子の充填前の連泡率は低いほど好ましく、0%であってもよい。なお、発泡粒子の連泡率は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0081】
上記のように、充填工程における発泡粒子の連泡率の過度な増大が生じること、換言すれば、充填後の連泡率が過度に高い発泡粒子を成形に供することが、得られる発泡成形体において過剰な変形が生じる原因となりうる。したがって、より変形が抑制された発泡成形体を提供する観点からは、充填後の(金型内の)発泡粒子の連泡率は、7.5%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましく、6.5%以下であることがさらに好ましく、6.0%以下であることがよりさらに好ましく、5.5%以下であることが特に好ましい。
【0082】
(その他の工程)
本製造方法は、上述した充填工程および加熱工程に加えて、保熱工程(蒸らし工程)、冷却工程および取り出し工程等のその他の工程を含んでいてもよい。これらのその他の工程の実施条件は、適宜決定することができる。例えば、冷却工程で噴霧する水の温度は1~60℃であってもよいし、冷却時間は1~500秒であってもよい。
【0083】
〔3.発泡成形体〕
本製造方法によれば、脂肪族ポリエステル系樹脂を原料とする発泡成形体(以下、「本発泡成形体」と称する。)を得ることができる。本発泡成形体は、本製造方法により製造されるため、変形の抑制された発泡成形体となる。なお、発泡成形体の変形量は、後述する実施例に記載の方法によって評価することができる。
【0084】
耐衝撃性の観点から、本発泡成形体の内部融着率は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、75%以上であることがよりさらに好ましく、80%であることが最も好ましい。なお、発泡成形体の内部融着率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0085】
本発泡成形体は、例えば、包装用緩衝材(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンディショナー本体やその室外機、洗濯機、空気清浄器、加湿器、炊飯器、電子レンジ、オーブン、トースター、扇風機、蓄電池用ユニット等の家電包装用緩衝材、トランスミッション、ルーフ、フード、ドア、電池、エンジン等の自動車物品包装用緩衝材等)、物流資材(例えば、農産箱、魚箱等)、断熱材、土木建築部材、自動車部材(例えばツールボックス、嵩上げ材、座席シート用芯材、バンパー芯材、ティビアパッド、ドアトリム等)等に好適に使用することができる。
【実施例0086】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0087】
〔材料〕
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0088】
(脂肪族ポリエステル系樹脂)
P3HA:P3HB3HH(モノマー比率:3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点145℃)であり、国際公開WO2009/145164の段落[0064]~[0125]に記載の方法に準拠して作製した。
【0089】
(結晶核剤)
ペンタエリスリトール(ノイライザーP:三菱ケミカル株式会社)
(滑剤)
ベヘン酸アミド(東京化成工業株式会社製)
エルカ酸アミド(東京化成工業株式会社製)
(気泡調整剤)
タルク(林化成株式会社製タルカンパウダーPKS)
(架橋剤(有機過酸化物))
1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(TBCH:日油株式会社製)
(発泡剤)
二酸化炭素(エア・ウォーター株式会社製)
(分散剤)
第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製、比重3.1、pH6)
(分散助剤)
アルカンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製ラテムルPS)。
【0090】
(洗浄剤)
ヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業社製)。
【0091】
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例において実施した測定および評価方法に関して、以下に説明する。
【0092】
(発泡粒子のゲル分率の測定)
発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(1)~(5)の通りであった:(1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れた;(2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流した;(3)得られた加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理した;(4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定した;(5)以下の式により、ゲル分率を算出した:ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
【0093】
(発泡粒子の見掛け密度の測定)
発泡粒子密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈めた;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cm)とした;(3)下記式(1)により、発泡粒子の見掛け密度を算出した。
発泡粒子の見掛け密度(g/cm)=Wd/Vd・・・(1)
(発泡粒子の内圧の測定)
発泡粒子内圧の測定方法は、以下の(1)~(5)の通りであった:(1)内圧付与後の発泡粒子の重量W1(g)を測定した;(2)当該発泡粒子を150℃、30分間加熱し、当該発泡粒子内の無機ガスを散逸させた;(3)無機ガスを散逸させた発泡粒子について、再度、当該発泡粒子の重量W2(g)を測定した;(4)無機ガスを散逸させる前後の発泡粒子の重量差(W1-W2)から無機ガスの重量(ΔW)を算出した;(5)理想気体の状態方程式(具体的には以下の式)より発泡粒子の内圧P(MPa(絶対圧))を算出した:
発泡粒子の内圧P(MPa(絶対圧))=(1+(ΔW/28.8)×0.082×(273+T)×(ρ×1000/W2))/9.87
上記の式において、Tは内圧付与後の発泡粒子の重量を測定した際の温度(室温)であり、ρは、内圧付与後の発泡粒子(重量W1の発泡粒子)の見かけ密度(g/cc)である。
【0094】
ここで、発泡粒子(内圧付与後の発泡粒子)の見かけ密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈めた;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cc)とした;(3)以下の式により、発泡粒子の見かけ密度を算出した;
発泡粒子の見かけ密度(g/cc)=Wd/Vd。
【0095】
(発泡粒子の連泡率の測定)
発泡粒子の連泡率(連続気泡率)の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、ASTM D2856-87の手順C(PROCEDURE C)に記載の方法に準拠して、発泡粒子の真の体積Vc(cm)を測定した;(2)次いで、Vcを測定後の発泡粒子の全量を、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、発泡粒子の見かけ上の体積Va(cm)を求めた;(3)以下の式により、発泡粒子の連泡率を算出した;
発泡粒子の連泡率(%)=(Va-Vc)×100/Va
(発泡成形体の表面性の評価)
発泡成形体の表面を目視で観察し、以下の基準に基づいて、表面性を評価した。なお、数字が大きいほど、発泡成形体の表面に存在するヒケが少ないこと、換言すれば、表面性に優れることを意図する;
4(特に良好):発泡成形体の表面に、ヒケがほとんど見られない。
3(良好):発泡成形体の表面に、ヒケが僅かに見られる。
2(合格):発泡成形体の表面に、ヒケがやや見られる。
1(不良):発泡成形体の表面に、ヒケが顕著に見られる。
【0096】
(発泡成形体の内部融着率)
図2に、本実施例で得られた発泡成形体200の形状を示す。発泡成形体200は仕切り部202を有する箱型形状(外寸:縦150mm×横300mm×高さ130mm、立壁部201の厚さ20mm、仕切り部202の厚さ120mm、底部203の厚さ50mm)である。
【0097】
発泡成形体の融着性の評価は以下の(1)~(4)に従って行った:(1)型内発泡成形体200の立壁部201の縦方向の1辺において、両端からそれぞれ中心部に向かって縦方向に20mm移動した2地点において、カッターを用いて、幅方向に20mm、高さ方向に30mm~50mmの切り込み(切り込み204a、204b)を入れた。(2)その後、上記操作により切り込みを入れた立壁部201の上記1辺を、発泡成形体の外側に向かって幅方向に手で引っ張り破断させた。結果、発泡成形体は、図2において破断面205として示す位置で破断した。(3)得られた20mm×110mmの破断面205を目視で観察し、破断面205内に存在する全発泡粒子、および破断面205内において発泡粒子界面以外で破断している発泡粒子(すなわち発泡粒子自体が破断している発泡粒子)の数をそれぞれ計測した。(4)以下の式に基づき発泡成形体の融着率を算出した;
発泡成形体の融着率(%)=(破断面205内において発泡粒子界面以外で破断している発泡粒子数/破断面205内に存在する全発泡粒子数)×100。
【0098】
(発泡成形体の変形量)
発泡成形体を、水平の面上に、当該発泡成形体の凹部が水平面と対向するよう(すなわち、発泡成形体の底部203を上にして)静置し、発泡成形体と水平面との隙間にテーパーゲージを、テーパーゲージが発泡成形体と水平面との両方に当接するまで差し込み、当該隙間の大きさを測定した。この測定された隙間の大きさを、発泡成形体の変形量とした。この変形量が小さいほど、変形のより低減された発泡成形体であるといえる。
【0099】
〔製造例1〕
<発泡粒子の作製>
(脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子)
(1)脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の作製の作製(樹脂粒子製造工程)
100重量部のP3HAと、ペンタエリスリトール1.0重量部と、ベヘン酸アミド0.50重量部と、エルカ酸アミド0.50重量部と、タルク0.10重量部とを計量し、ドライブレンドして、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を調製した。調製した脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)に供給し、当該脂肪族ポリエステル系樹脂組成物をシリンダー設定温度130℃~160℃にて溶融混練した(溶融混練工程)。押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから179℃の溶融混練された脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を吐出した。吐出された脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を、50℃の水で水冷後、切断して、長さ/直径が2.0の円柱状の脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を得た(樹脂粒子成形工程)。
【0100】
(2)脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子の作製(発泡工程)
樹脂粒子製造工程で得られた脂肪族ポリエステル系樹脂粒子100重量部(2.5Kg)と、水系分散媒として純水200重量部と、架橋剤として1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(TBCH)2.0重量部と、分散剤として第三リン酸カルシウムを1.0重量部と、分散助剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム0.05重量部とを、内容積10Lの攪拌翼付き耐圧容器内に供給し、攪拌翼を260rpmで回転させ、耐圧容器内の原料を攪拌した。以降、分散液の放出が終わるまで、耐圧容器内の内容物(分散液)を攪拌し続けた。
【0101】
耐圧容器内に窒素を導入した後、真空引きを行い、耐圧容器内の酸素を除去した。さらに、耐圧容器内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、分散液を調製した(分散工程)。その後、耐圧容器内の温度を129.0℃の発泡温度まで昇温した。さらに、耐圧容器に二酸化炭素を供給して耐圧容器内の圧力を3.3MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧した(昇温-昇圧工程)。次いで、耐圧容器内の温度および圧力をそれぞれ、発泡温度および発泡圧力付近で30分間保持した(保持工程)。保持工程後、耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.6mmの開口オリフィスを通して、前記耐圧容器の分散液を大気圧下に放出し、脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を得た(放出工程)。
【0102】
得られた発泡粒子を、該発泡粒子表面に付着した分散剤等をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、75℃で乾燥した。得られた発泡粒子の見掛け密度は0.076g/cm(発泡粒子倍率16倍)であり、ゲル分率は67重量%であった。
【0103】
〔実施例1〕
製造例1で得られた発泡粒子を40℃の耐圧容器に供給した。耐圧容器内の温度を40℃に維持した状態で、耐圧容器内の発泡粒子を、空気を用いて加圧処理し、当該発泡粒子の内圧を0.16MPa(絶対圧)とした。耐圧容器を20℃まで冷却し、耐圧容器内部の発泡粒子(内圧を付与された発泡粒子)を取り出した。
【0104】
<発泡成形体の成形>
図2に示す発泡成形体200(外寸:縦150mm×横300mm×高さ130mm、立壁部201の厚み20mm、仕切り部202の厚み120mm、底部203の厚み50mm)を成形可能な固定型および移動型からなる成形金型(発泡成形体200を6個成形することのできる成形金型)を成形機(DABO社製DPM-1300)に搭載した。当該成形金型に充填エア供給部を備える充填機を計12本(発泡成形体200の1個につき充填機2本)接続し、当該充填機に調整エア供給部を備える発泡粒子輸送配管を介して、上記の内圧を付与された発泡粒子が収容されたホッパーを接続した。予め充填エア供給部から充填エアを、調整エア供給部から調整エアを供給開始しておいた後に、ホッパーのシャッターを開けてホッパー内の発泡粒子を、クラッキング量を6mmに設定した成形金型の、成形空間内に充填した(充填工程)。なお、充填工程におけるホッパー内の圧力、成形空間圧力、充填エア圧力、調整エア圧力、および調整エア圧力割合は表1の通りであった。
【0105】
充填完了後、固定型に向かって移動型を駆動させ、成形金型を完全に型閉じした後、成形金型を水蒸気で予熱し、さらに、成形金型を水蒸気で一方加熱および逆一方加熱し、加えて、成形金型を水蒸気で両面加熱した。かかる操作により、充填された発泡粒子を融着させ、発泡成形体を得た(発泡成形工程)。ここで、一方加熱および逆一方加熱のときの水蒸気圧力(水蒸気圧力A)を0.03MPa(ゲージ圧)とし、両面加熱のときの水蒸気圧力(水蒸気圧力B)を0.14MPa(ゲージ圧)とした。得られた発泡成形体を金型から取り出し、75℃で乾燥した。乾燥後の発泡成形体について、内部融着率および変形量を測定し、表面性を評価し、結果を表1に示す。
【0106】
また、上記と同様の操作で別途成形金型内に発泡粒子を充填し、充填完了後に成形金型を型閉じせず、成形金型内に充填された発泡粒子を取り出した。この充填後の発泡粒子の連泡率を測定した。結果を表1に示す。
【0107】
〔実施例2~15〕
充填エア圧力、調整エア圧力、および/または、発泡粒子内圧を表1に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により発泡粒子を成形金型内に充填および加熱することで、発泡成形体を製造した。各物性の測定結果および各評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
〔比較例1~5〕
ホッパー内の圧力、成形空間圧力、充填エア圧力、調整エア圧力、および/または、発泡粒子内圧を表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により発泡粒子を成形金型内に充填および加熱することで、発泡成形体を製造した。各物性の測定結果および各評価結果を表2に示す。なお、比較例3および4においては、成形空間に圧縮空気を送り込むことで(成形金型を加熱する水蒸気配管より圧縮空気のみを送り込み)、成形空間圧力を0.05MPa(ゲージ圧)にあらかじめ調整した後に発泡粒子を充填し、充填中も成形空間圧力を0.05MPa(ゲージ圧)に維持した。また、比較例5においては充填不良が発生し、発泡成形体を得ることが出来なかった。
【0110】
〔参考例1~3〕
脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子に代えてポリプロピレン(PP)系樹脂発泡粒子(株式会社カネカ製エペラン-PP(発泡倍率30倍))を使用し、さらに、ホッパー内の圧力、成形空間圧力、充填エア圧力、調整エア圧力、および/または、発泡粒子内圧を表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により発泡粒子を成形金型内に充填および加熱することで、発泡成形体を製造した。各物性の測定結果および各評価結果を表2に示す。なお、参考例3における成形空間圧力の調整方法は、比較例3と同様での方法であった。
【0111】
【表2】
【0112】
表1および2中、(G)はゲージ圧であることを表す。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の一実施形態は、食品容器、包装材料、衛生用品、自動車部材(特に、ツールボックス等)、包装用緩衝材(特に、家電用)、農産箱、魚箱、物流資材、断熱材、土木建築部材等の様々な用途の発泡成形体の製造方法として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
100 成形装置
1 充填機
2 成形金型
3 ホッパー
4 発泡粒子輸送管
5 充填エア供給部
6 調整エア供給部
21 成形空間
51 充填エア供給管
52 充填エア発生装置
61 調整エア供給管
62 調整エア発生装置
図1
図2