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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134388
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】発熱機能付き熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20240926BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20240926BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F24H9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044657
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 将人
(72)【発明者】
【氏名】長谷 有太
【テーマコード(参考)】
3L036
3L103
【Fターム(参考)】
3L036AA01
3L103AA05
3L103BB26
3L103CC01
3L103CC26
3L103DD64
(57)【要約】
【課題】設置スペースを小さくできる発熱機能付き熱交換装置を提供する。
【解決手段】本発明による発熱機能付き熱交換装置は、外周壁100と、外周壁100の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びるとともに第1流体が通される第1流路101bを形成する複数のセル101aを区画形成する隔壁101とを有するハニカム構造部10、を備えるハニカム構造体1と、ハニカム構造体1に電圧を印加するための一対の電極端子2と、ハニカム構造体1及び電極端子2の外面を覆う絶縁材3と、絶縁材3との間に第2流体が通される第2流路5を形成するジャケット4と、を備え、電極端子2を通しての電圧の印加によるハニカム構造体1の発熱により第1流体を加熱できるとともに、第1流体及び/又はハニカム構造体1と第2流体との間で熱交換ができるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びるとともに第1流体が通される第1流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部、を備えるハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体に電圧を印加するための一対の電極端子と、
前記ハニカム構造体及び前記電極端子の外面を覆う絶縁材と、
前記絶縁材との間に第2流体が通される第2流路を形成するジャケットと、
を備え、
前記電極端子を通しての電圧の印加による前記ハニカム構造体の発熱により前記第1流体を加熱できるとともに、前記第1流体及び/又は前記ハニカム構造体と前記第2流体との間で熱交換ができるように構成されている、
発熱機能付き熱交換装置。
【請求項2】
前記ハニカム構造部は、柱状又は筒状である、
請求項1に記載の発熱機能付き熱交換装置。
【請求項3】
前記ハニカム構造部の熱伝導率は30W/(m・k)以上である、
請求項1に記載の発熱機能付き熱交換装置。
【請求項4】
前記複数のセルには、両端が目封じされた目封じセルが含まれており、
前記目封じセルには、前記ハニカム構造部の材料よりも比熱が高い材料で構成された蓄熱体が封入されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の発熱機能付き熱交換装置。
【請求項5】
前記ハニカム構造部には触媒が担持されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の発熱機能付き熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機能付き熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタネーションに代表される発熱反応を制御するため触媒反応装置には加熱装置と熱交換器が組み込まれている。加熱装置は反応を開始するために必要な熱を与えるために用いられ、熱交換器は反応進行中に発生する熱を回収するために用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、メタネーション反応を用いることにより、メタン(CH4)を主成分とするガスを製造するガス製造設備が記載されている。ガス製造設備には、加熱装置(温度調節器)とメタネーション反応装置とが設けられている。加熱装置は、メタネーション反応装置への入力ガスを加熱する。メタネーション反応装置は、加熱装置によって加熱された入力ガスをメタネーション反応させる。また、メタネーション反応装置には外部からの冷媒が供給されており、メタネーション反応装置と冷媒との熱交換によりメタネーション反応の熱が回収される。すなわち、メタネーション反応装置は、反応装置と熱交換器とを兼ねている。
【0004】
下記の特許文献2には、亜硫酸ガスと酸素との発熱反応により三酸化硫黄を生成する転化装置と、転化装置の内部に設けられることにより転化装置の内部における熱を回収して発熱反応の反応温度を調整する熱交換装置と、亜硫酸ガス、水及びヨウ素のブンゼン反応によりヨウ化水素及び硫酸を生成し、ヨウ化水素の分解反応により水素及びヨウ素を生成するISサイクル装置とを備え、ISサイクル装置は、熱交換装置により回収した熱を前記ブンゼン反応又は/及び分解反応の熱源として利用する硫酸及び水素生成システムが記載されている。転化装置前段に位置する洗浄装置では、洗浄水にて冷却しながら亜硫酸ガスの一部を洗浄している。このことから、転化装置に入るガスは、酸化反応が進行する温度未満であると考えられ、転化装置前段に加熱装置が配置されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-093216号公報
【特許文献2】特開2022-107895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の設備では、メタネーション反応装置が熱交換器を兼ねているものの、メタネーション反応装置とは別に加熱装置が設けられているので、設置スペースが大きくなってしまう。また、特許文献2の転化装置も熱交換器を内蔵しているものの、転化装置とは別に加熱装置を設ける必要があり、加熱装置を別に設ける場合に設置スペースが大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、設置スペースを小さくできる発熱機能付き熱交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
項目1.本発明は、一実施形態において、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びるとともに第1流体が通される第1流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部、を備えるハニカム構造体と、ハニカム構造体に電圧を印加するための一対の電極端子と、ハニカム構造体及び電極端子の外面を覆う絶縁材と、絶縁材との間に第2流体が通される第2流路を形成するジャケットと、を備え、電極端子を通しての電圧の印加によるハニカム構造体の発熱により第1流体を加熱できるとともに、第1流体及び/又はハニカム構造体と第2流体との間で熱交換ができるように構成されている、発熱機能付き熱交換装置に関する。
【0009】
項目2.本発明は、ハニカム構造部は、柱状又は筒状である、項目1に記載の発熱機能付き熱交換装置に関していてよい。
【0010】
項目3.本発明は、ハニカム構造部の熱伝導率は30W/(m・k)以上である、項目1又は2に記載の発熱機能付き熱交換装置に関していてよい。
【0011】
項目4.本発明は、複数のセルには、両端が目封じされた目封じセルが含まれており、目封じセルには、ハニカム構造部の材料よりも比熱が高い材料で構成された蓄熱体が封入されている、項目1から3までのいずれか1項に記載の発熱機能付き熱交換装置に関していてよい。
【0012】
項目5.本発明は、ハニカム構造部には触媒が担持されている、項目1から4までのいずれか1項に記載の発熱機能付き熱交換装置に関していてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発熱機能付き熱交換装置の一実施形態によれば、電極端子を通しての電圧の印加によるハニカム構造体の発熱により第1流体を加熱できるとともに、第1流体と第2流体との間で熱交換ができるように構成されているので、加熱装置及び熱交換器を別個に設ける場合と比較して、設置スペースを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1による発熱機能付き熱交換装置を示す正面図である。
図2図1の発熱機能付き熱交換装置を示す右側面図である。
図3図2の線III-IIIに沿う発熱機能付き熱交換装置の断面図である。
図4図3の線IV-IVに沿う発熱機能付き熱交換装置の断面図である。
図5図1の発熱機能付き熱交換装置の第1変形例を示す正面図である。
図6図1の発熱機能付き熱交換装置の第2変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1による発熱機能付き熱交換装置を示す正面図であり、図2図1の発熱機能付き熱交換装置を示す右側面図であり、図3図2の線III-IIIに沿う発熱機能付き熱交換装置の断面図であり、図4図3の線IV-IVに沿う発熱機能付き熱交換装置の断面図である。図5図1の発熱機能付き熱交換装置の第1変形例を示す正面図であり、図6図1の発熱機能付き熱交換装置の第2変形例を示す正面図である。
【0017】
図1図4に示す発熱機能付き熱交換装置は、ハニカム構造体1と、一対の電極端子2と、絶縁材3と、ジャケット4とを備えている。
【0018】
ハニカム構造体1は、ハニカム構造部10を有している。ハニカム構造部10は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁100と、外周壁100の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びるとともに第1流体が通される第1流路101bを形成する複数のセル101aを区画形成する隔壁101とを有している。
【0019】
ハニカム構造部10は、柱状又は筒状であってよい。柱状及び筒状とは、セル101aの延伸方向(ハニカム構造部10の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解してよい。ハニカム構造部10の軸方向長さとハニカム構造部10の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状及び筒状には、ハニカム構造部10の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。柱状とは、図1図5に示すように外周壁100の内側の全体に隔壁101が形成された形状であり得る。筒状とは、図6に示すように外周壁100の内側に隔壁101が形成されていない部分が含まれている形状であり得る。ハニカム構造部10が筒状であるとき、ハニカム構造部10は、外周壁100の内側に配置された内周壁102をさらに有していてよい。隔壁101は外周壁100と内周壁102との間に形成されていてよく、内周壁102の内側には一端から他端までハニカム構造部10を貫通する貫通孔103(隔壁101が形成されていない領域)が設けられていてよい。ハニカム構造部10が筒状であるとき、弁等の流路切換手段がハニカム構造部10の前端に設けられてよい。流路切換手段は、第1流体の流路を第1流路101bと貫通孔103との間で切り替えることができる。
【0020】
ハニカム構造部10の端面の外形は任意であるが、図1図4に示すように四角形であってもよいし、図5図6に示すように円形であってもよい。ハニカム構造部10の端面の外形は、図示の態様に限定されず、例えばオーバル形又は他の多角形(五角形、六角形、七角形、八角形等)等の他の形状であってもよい。図6では円筒状のハニカム構造部10を示しているが、筒状のハニカム構造部10の外形も任意である。
【0021】
ハニカム構造部10の大きさは、耐熱性を高める(外周壁100の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0022】
セル101aの延伸方向に垂直な断面におけるセル101aの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造部10にガスを流したときの圧力損失が小さくなる。
【0023】
セル101aを区画形成する隔壁101の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁101の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造部10の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁101の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造部10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁101の厚みは、セル101aの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル101aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁101を通過する部分の長さとして定義される。
【0024】
ハニカム構造部10は、セル101aの延伸方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造部10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁100部分を除くハニカム構造部10の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0025】
ハニカム構造部10の外周壁100を設けることは、ハニカム構造部10の構造強度を確保し、また、セル101aを流れる流体が外周壁100から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁100の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁100を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁101との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁100の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁100の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁100の箇所をセル101aの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁100の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0026】
ハニカム構造部10は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造部10は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、体積抵抗率は0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造部10の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0027】
ハニカム構造部10の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、珪素-炭化珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造部10の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造部10の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部10が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造部10の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部10が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0028】
ハニカム構造部10が珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、ハニカム構造部10に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部10に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部10に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0029】
一対の電極端子2は、ハニカム構造体1に電圧を印加するためのものである。電極端子2を通してハニカム構造体1に電圧が印加されることで、ジュール熱によりハニカム構造体1を発熱させることが可能である。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vがより好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0030】
電極端子2の形状は任意であるが、図示のように電極端子2は柱状であってよい。電極端子2は、外周壁100の表面に対して起立するように設けられていてよい。電極端子2は、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで対向するように配設されている。しかしながら、ハニカム構造部10の周方向に係る電極端子2の配置位置は任意である。
【0031】
電極端子2の材質は、セラミックスまたはカーボンで構成されている。電極端子2の材質がセラミックスであると、ハニカム構造体1への電気的な接続が可能となる。また、電極端子2の先端に金属端子がそれぞれ接合されていてもよい。セラミックス又はカーボン製の電極端子2と金属端子との接合は、かしめ加工、溶接、導電性接着剤等により行うことができる。金属端子の材質としては、鉄合金やニッケル合金等の導電性金属を採用することができる。
【0032】
電極端子2を構成するセラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられ、更には、一種以上の金属を含む複合材(サーメット)を挙げることができる。サーメットの具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極端子2を構成するカーボンとしては、カーボンを主成分とすることが好ましい。カーボンを主成分とするとは、電極端子2を構成する全成分に対してカーボンの含有量が50質量%以上であることを意味する。カーボンの含有量は、より好ましくは、80質量%以上であり、更により好ましくは90質量%以上である。
【0033】
図示はしないが、ハニカム構造体1は、外周壁100と電極端子2との間に設けられた電極層をさらに有していてよい。
【0034】
電極層は、導電性を有する材料によって形成される。電極層は、酸化物セラミックス、又は金属若しくは金属化合物と酸化物セラミックスとの混合物であることが好ましい。金属として、単体金属又は合金のいずれでもよく、例えばシリコン、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、タングステン、Ni-Cr合金などを好適に用いることができる。金属化合物として、酸化物セラミックス以外の物であって、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属珪化物、金属ホウ化物、複合酸化物等が挙げられ、例えばFeSi2、CrSi2、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどを好適に用いることができる。金属と金属化合物は、いずれも、単独一種でもよく、二種以上を併用しても良い。酸化物セラミックスとしては、具体的には、ガラス、コージェライト、ムライトなどがある。ガラスは、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種の成分からなる酸化物を更に含んでも良い。上記群より選択される少なくとも一種を更に含んでいると、電極層の強度がより向上する点でより好ましい。
【0035】
電極層の形成領域に特段の制約はないが、ハニカム構造体1の均一発熱性を高めるという観点からは、各電極層は外周壁100の外面上で外周壁100の周方向及びセル101aの延伸方向に帯状に延設することが好ましい。具体的には、各電極層は、ハニカム構造体1の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層の軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。
【0036】
各電極層の厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることがより好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。各電極層の厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。5mm以下であると、破損する恐れが低減される。各電極層の厚みは、厚みを測定しようとする電極層の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、各電極層の外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0037】
電極層の電気抵抗率については特に制限はないが、1×10-7~5×10-1Ω・mであることが好ましい。電極層の電気抵抗率が5×10-1Ω・m以下であると、通電加熱時の抵抗を小さくすることができる。電極層の電気抵抗率は、5×10-7~2.5×10-1Ω・mであることがより好ましく、1×10-6~1.25×10-1Ω・mであることが更により好ましい。本発明において、電極層の電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0038】
絶縁材3は、ハニカム構造体1及び電極端子2の外面を覆う部材である。絶縁材3は、ハニカム構造体1と電極端子2との接続位置を除いてハニカム構造体1の外周壁100の外周面全体を覆う絶縁材本体30と、絶縁材本体30から立設されて電極端子2の外面を覆う絶縁材筒部31とを有していてよい。ハニカム構造部10の軸方向に係る絶縁材本体30の長さは、ハニカム構造部10の軸方向長さと同じか、又はハニカム構造部10の軸方向長さより長くてよい。絶縁材筒部31は電極端子2の基端部及び中間部の外面を覆っていてよく、電極端子2の先端部は露出されていてよい。電極端子2の先端部には図示しない金属端子が接続され得る。
【0039】
ジャケット4は、絶縁材3との間に第2流体が通される第2流路5を形成するための部材である。第2流路5は、絶縁材3とジャケット4との間の空間である。第2流路5は、ハニカム構造体1の周方向全域に渡って形成されていてよい。
【0040】
ジャケット4は、絶縁材3を介してハニカム構造体1の外周壁100上に配置されてよい。ジャケット4は、ハニカム構造部10の軸方向に関する両端に配置されて内面が絶縁材本体30の外面に接するように配置された端部40と、ハニカム構造部10の軸方向に関して端部40間に配置された中間部41とを有している。端部40及び中間部41は互いに一体に設けられた筒状の部分である。中間部41の内面間距離(内径)は絶縁材3の外面間距離(外径)よりも大きく、中間部41の内面と絶縁材3の外面との間に第2流路5が形成されている。ハニカム構造部10の軸方向に係る中間部41の長さは、同方向に係る絶縁材本体30の長さよりも短くてよい。
ハニカム構造部10の軸方向に係る中間部41の長さは、ハニカム構造部10の軸方向長さと同じか、又はハニカム構造部10の軸方向長さよりも短くてよい。
【0041】
ジャケット4の全体としての外形はハニカム構造部10の外形と同じであってよい。図示の態様のようにハニカム構造部10の外形が角柱状であるとき、ジャケット4の全体としての外形も角柱状であってよい。
【0042】
第2流路5の高さ(ハニカム構造部10の軸方向に直交する方向に係る絶縁材3の外面とジャケット4の内面との離間距離)は、ハニカム構造部10の軸方向及び/又は周方向に均一であってよいが、異なっていてもよい。図示の中間部41は、大部411と、大部411よりも内面間距離が小さな小部412とを有している。大部411の位置における第2流路5の高さは、小部412の位置における第2流路5の高さよりも高くされている。ハニカム構造部10の軸方向に関して、大部411は小部412の両側に配置されている。小部412は、ハニカム構造部10の軸方向に係るハニカム構造部10の中心位置を間に含むように延在されていてよい。
【0043】
ジャケット4には、第2流路5に第2流体を供給するための供給口42と、第2流路5から第2流体を排出するための排出口43とが設けられていてよい。供給口42及び排出口43は、ハニカム構造体1の軸方向及び/又は周方向に互いに離間して配置されていてよい。図示の態様では、供給口42及び排出口43はハニカム構造体1の軸方向に互いに離間して配置されている。第1流体の流れ方向に関して、供給口42は、排出口43よりも下流側に配置されていてよい。第1流体は図4の左側から右側に向けて流れてよい。
【0044】
本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、電極端子2を通しての電圧の印加によるハニカム構造体1の発熱により第1流体を加熱できるとともに、第1流体及び/又はハニカム構造体1と第2流体との間で熱交換ができるように構成されている。第2流体と第1流体との間の熱交換はハニカム構造体1を通して行われ得る。すなわち、本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、第1流体を加熱するための加熱装置と、第1流体及び/又はハニカム構造体1と第2流体との間で熱交換を行うための熱交換器を兼ねている。本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、これら加熱装置及び熱交換器を別個に設ける場合と比較して、設置スペースを小さくできる。また、本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、これら加熱装置及び熱交換器を別個に設ける場合と比較して、メンテナンス性を向上できる。
【0045】
本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、メタネーションに代表される発熱反応を伴う発熱反応装置に組み込まれる。本実施の形態の発熱機能付き熱交換装置は、第1流体の発熱反応を起こすための反応装置をさらに兼ねていてよい。第1流体は、発熱反応により他の物質に変化される流体であり得る。第1流体としては、種々の流体が用いられるが、例えば炭化水素及び/又は水蒸気等が用いられ得る。第2流体は冷媒であり得る。第2流体としては、種々の流体が用いられるが、例えば水等が用いられ得る。
【0046】
第1流体の発熱反応を開始させるためにはエネルギーの入力又は加熱が必要となる。第1流体の反応初期に電極端子2を通しての電圧の印加によるハニカム構造体1の発熱により第1流体を加熱することができる。このとき、第2流体の循環(第2流路5への第2流体の供給及び第2流路5からの第2流体の排出)は停止されていてよい。第1流体の反応が進んだとき、第2流体の循環が開始され、第2流体との熱交換により第1流体の反応熱を回収することができる。このとき、ハニカム構造体1への電圧の印加が停止されていてよい。第2流体は発熱反応装置内の他の装置に供給され、その他の装置において回収熱が利用される。
【0047】
ハニカム構造部10の熱伝導率は30W/(m・k)以上であることが好ましい。熱伝導率が30W/(m・k)以上であることで、第2流体との熱交換による第1流体の反応熱の回収をより確実に行うことができる。熱伝導率は50W/(m・k)以上であることがより好ましく、120W/(m・k)以上であることが更により好ましい。熱伝導率の上限値に特に制限はないが、ハニカム構造部10の主成分との関係により熱伝導率の上限値は300W/(m・k)程度であり得る。
【0048】
熱伝導率を30W/(m・k)以上とする観点から、ハニカム構造部10の材料としては、例えば骨材としてSiC粒子を主体とし、SiC粒子間に金属Siを含むSi-SiC質の材料(焼結体)を用いることができる。
【0049】
図4に特に表すように、複数のセル101aには、両端が目封じされた目封じセル101cが含まれていてよく、目封じセル101cには、ハニカム構造部10の材料よりも比熱が高い材料で構成された蓄熱体6が封入されていてよい。蓄熱体6は、第1流体の反応熱を蓄えることができる。ハニカム構造体1を通しての第2流体と蓄熱体6との熱交換により、第1流体の反応熱の回収をより確実に行うことができる。特に、反応終了後の余剰熱を蓄熱体6に溜め、その余剰熱を回収できる。なお、図1及び図3等では目封じセル101cの図示を省略している。
【0050】
蓄熱体6としては種々の材料を用いることができるが、例えばハニカム構造部10の材料が炭化珪素であるとき、蓄熱体6としては花崗岩等を用いることができる。
【0051】
隔壁101は多孔質としてもよい。目封じセル101cに隣接するセル101aを通過する第1流体は、隔壁101及び目封じセル101c(蓄熱体6)を通過して他のセル101aに流入してよい。これにより、蓄熱体6が第1流体の反応熱をより確実に蓄えることができる。隔壁101を多孔質とする場合、隔壁101の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることがより好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。ハニカム構造部10の隔壁101の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることがより好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0052】
ハニカム構造部10には触媒が担持されていてよい。種々の触媒を用いることができるが、触媒としては、例えば三元触媒及び/又は酸化ニッケル等を用いることができる。
【0053】
絶縁材3は、ハニカム構造体1に印加された電圧による電流が第2流体及びジャケット4に漏れることを抑える機能と、第1流体及び/又はハニカム構造体1と第2流体との間で円滑に熱を移動させる機能とを有することが好ましい。換言すると、絶縁材3は、高い電気抵抗と高い熱伝導率との両立又はバランスをとることが好ましい。絶縁材3としては、比較的高い体積抵抗率と比較的高い熱伝導率を持つ材料(アルミナ等)を使用することができる。アルミナの体積抵抗率は1010Ω・cm超であり、アルミナの熱伝導率は30W/(m・k)である。絶縁材3(アルミナ膜)の厚みは30μm以上かつ800μm以下とすることができる。絶縁材3は、ハニカム構造体1及び電極端子2の外周面に絶縁材3の材料を塗布することで形成できる。絶縁材3の厚みはその材料の塗布量で調節できる。
【0054】
また、絶縁材3は、第1流体がハニカム構造体1の外部に漏れ出ることを抑える機能と、第2流体がハニカム構造体1に入り込むことを抑える機能とを有することが好ましい。換言すると、絶縁材3は、高い気密性及び/又は液密性を有していることが好ましい。これらは、絶縁材3の気孔率を調節することで確保することができる。気密性及び/又は液密性を確保するため、絶縁材3の気孔率は10%以下であることが好ましい。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
1 :ハニカム構造体
10 :ハニカム構造部
100 :外周壁
101 :隔壁
101a :セル
101b :第1流路
101c :目封じセル
2 :電極端子
3 :絶縁材
4 :ジャケット
5 :第2流路
6 :蓄熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6