(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134390
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】新規なビニル系重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
C08F8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044660
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰央
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA06P
4J100AB02P
4J100AL02P
4J100BA15H
4J100BA28H
4J100BA29H
4J100BA31H
4J100BA41H
4J100BC43H
4J100BC75H
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA06
4J100HA11
4J100HA19
4J100HA33
4J100HA35
4J100HA61
4J100HC42
4J100HC43
4J100HD04
4J100HE05
4J100HE14
4J100HG28
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】新規な末端変性ビニル系重合体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体:
【化1】
式(1)中、
R
1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH
3)-または-N(CH
2CH
3)-であり;
R
2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、2であり;
2個ずつ存在するR
3、R
4およびR
5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
R2は3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
R3は、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【請求項3】
R2の炭素数は、1~6個であり、
R3の炭素数は、0~2個であり、
R4およびR5は、いずれも水素である、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【請求項4】
上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【化2】
【請求項5】
上記末端変性ビニル系重合体は、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【請求項6】
上記末端変性ビニル系重合体の主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【請求項7】
上記末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、
ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、請求項1に記載の末端変性ビニル系重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の末端変性ビニル系重合体を含む、界面活性剤。
【請求項9】
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有している末端変性ビニル系重合体の製造方法であって、
ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する、製造方法:
【化3】
【化4】
式(1)および式(2a)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH
2、-N(CH
3)Hもしくは-N(CH
2CH
3)H、または、これらの塩であり;
R
1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH
3)-または-N(CH
2CH
3)-であり;
R
2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2a)において2個ずつ存在するR
3、R
4およびR
5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有している末端変性ビニル系重合体の製造方法であって、
ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、
得られた反応物を還元する工程と、
を有する、製造方法:
【化5】
【化6】
式(1)および式(2b)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH
2、-N(CH
3)Hもしくは-N(CH
2CH
3)H、または、これらの塩であり;
R
1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH
3)-または-N(CH
2CH
3)-であり;
R
2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2b)において2個ずつ存在するR
3、R
4およびR
5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項11】
R2は3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
R3は、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
R2の炭素数は、1~6個であり、
R3の炭素数は、0~2個であり、
R4およびR5は、いずれも水素である、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項13】
上記一般式(2a)で表される化合物は、以下の式(iv)~(vi)から選択されるいずれかの構造を有する、請求項9に記載の製造方法。
【化7】
【請求項14】
上記一般式(2b)で表される化合物は、以下の式(vii)で表される構造を有する、請求項10に記載の製造方法。
【化8】
【請求項15】
上記末端変性ビニル系重合体は、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項16】
上記末端変性ビニル系重合体の主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項17】
上記末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、
ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、請求項9または10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビニル系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル系重合体は、耐候性、耐熱性、耐油性、透明性等を有するため、様々な用途に用いられている。
【0003】
ビニル系重合体の分子末端および/または側鎖に官能基を導入(変性)してなる変性ビニル系重合体は、導入した官能基の種類に応じて、種々の物性を有し得ることが知られている。
【0004】
上記のような変性ビニル系重合体は、当該変性ビニル系重合体が有する物性に応じて、種々の用途に使用されている。例えば、特許文献1および2には、変性ビニル系重合体を含む硬化性組成物が開示されており、特許文献3には変性ビニル系重合体を含む界面活性剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-119334号
【特許文献2】特開2011-074326号
【特許文献3】特開昭63-012602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変性ビニル系重合体およびその利用に関する技術には、いまだ開発の余地が多くあり、従来知られていない機能あるいは物性を有する新規な変性ビニル系重合体の開発が期待されている。
【0007】
上記のような状況にあって、本発明の一態様は、界面活性剤およびポリマー改質用マクロモノマー等に利用できる、新規な末端変性ビニル系重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る末端変性ビニル系重合体は、下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する:
【0009】
【0010】
式(1)中、
R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、2であり;
2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、界面活性剤およびポリマー改質用マクロモノマー等に利用できる、新規な末端変性ビニル系重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0013】
〔1.末端変性ビニル系重合体〕
本発明の一実施形態に係る末端変性ビニル系重合体(以下、「本末端変性ビニル系重合体」と称する場合がある)は、下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する:
【0014】
【0015】
式(1)中、R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、2であり;
2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
本末端変性ビニル系重合体は、上記の構成を有するために、ポリアミド、ポリエステル等のポリマー改質用マクロモノマー;界面活性剤;エポキシ硬化剤;固定型配位子等の種々の用途に好適に利用することができる。例えば、本末端変性ビニル系重合体をポリマー改質用マクロモノマーとして使用した場合、破断ひずみ及び面衝撃強度に優れる共重合体を提供することができる。
【0017】
本末端変性ビニル系重合体は、上記一般式(1)で表される末端構造と、ビニル系重合体からなる主鎖構造と、からなる重合体であると言える。以下、本末端変性ビニル系重合体を構成する末端構造および主鎖構造について詳細に説明する。
【0018】
(末端構造)
本末端変性ビニル系重合体は、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する。ここで、「末端構造を1つ以上有する」とは、本末端変性ビニル系重合体が、主鎖であるビニル系重合体の少なくとも1つの末端に上記一般式(1)で表される末端構造を有することを意味する。本末端変性ビニル系重合体が有する上記一般式(1)で表される末端構造の数は1つ以上である限り特に限定されず、例えば、主鎖であるビニル系重合体が線状(直鎖状)重合体である場合、上記線状重合体の一方の末端のみが上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよい。また、主鎖であるビニル系重合体が、3つ以上の末端を有する分枝状重合体である場合、上記分枝状重合体の1つの末端のみが上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、2以上の一部の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、全ての末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよい。
【0019】
上記一般式(1)で表される末端構造を有するビニル系重合体の2種類以上を含む組成物も、本発明の範囲に含まれる。例えば、この組成物は、一方の末端のみに上記一般式(1)で表される末端構造を有する線状重合体と、両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する線状重合体と、の両方の重合体を含むものであってもよい。
【0020】
上記一般式(1)で表される末端構造のより具体的な態様について以下に詳説する。
【0021】
上記一般式(1)中、R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-である。中でも、R1は、-O(CO)-または-NH-であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中、R2は炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0023】
R2における炭素数は、1~8個であり、1~6個であることが好ましい。
【0024】
R2が有し得るヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)等が挙げられる。
【0025】
R2は線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよく、環状構造であってもよい。また、R2が環状構造である場合、R2はヘテロ環構造を有していてもよい。
【0026】
より具体的に、R2は、3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。なお、本明細書において、3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールとは、通常は1価であるアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから水素原子を2個除いた基を表す。すなわち、3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、他の分子との結合箇所を3箇所有するものである。
【0027】
上記一般式(1)中、R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0028】
R3における炭素数は、0~8個であり、0~6個であることが好ましく、0~4個であることがより好ましく、0~2個であることがさらに好ましい。なお、R3の炭素数が0であるとは、R3が単結合であるか、ヘテロ原子のみからなることを意味する。
【0029】
R3が有し得るヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)等が挙げられる。
【0030】
R3は線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよく、環状構造であってもよい。また、R3が環状構造である場合、R3はヘテロ環構造を有していてもよい。
【0031】
より具体的に、R3は、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。なお、本明細書において、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールとは、通常は1価であるアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから水素原子は1個除いた基を表す。すなわち、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、他の分子との結合箇所を2箇所有するものである。なお、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンとも称する。
【0032】
上記一般式(1)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基である。これらの中でも、反応性の高い末端構造となることから、R4およびR5は水素であることが好ましい。したがって、R4またはR5の少なくとも1つは水素であることが好ましく、R4およびR5は、いずれも水素であることがより好ましい。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態において、上記一般式(1)中、R2の炭素数は、1~6個であり、R3の炭素数は、0~2個であり、R4およびR5は、いずれも水素である。
【0034】
上記一般式(1)中、nは2である。換言すると、上記一般式(1)で表される末端構造は、下記一般式(1’)で表される構造を2つ有する。
-R3-N(R4)R5 (1’)
すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造は、R3、R4およびR5で表される構造を2つずつ有する。
【0035】
上記一般式(1)で表される末端構造中に2つずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。換言すると、上記一般式(1)で表される末端構造中に2つずつ存在する上記一般式(1’)で表される構造は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
上記一般式(1)で表される末端構造の具体例としては、以下の式(i)~(iii)で表される構造が挙げられる。本末端変性ビニル系重合体は、末端構造として以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有することが好ましい。
【0037】
【0038】
(主鎖)
本末端変性ビニル系重合体は、ビニル系単量体に由来する構成単位から構成される主鎖構造を有する。
【0039】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖を構成する構成単位の由来となるビニル系単量体としては、ビニル基を有する限り特に限定されない。当該ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、マレイミド系単量体、塩素含有ビニル系単量体、フッ素含有ビニル系単量体、ケイ素含有ビニル系単量体、ニトリル基含有ビニル系単量体、アミド基含有ビニル系単量体、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類などが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどが挙げられる。
【0041】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびスチレンスルホン酸の塩などが挙げられる。
【0042】
マレイミド系単量体としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
【0043】
塩素含有ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルなどが好適に挙げられる。
【0044】
フッ素含有ビニル系単量体としては、例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0045】
ケイ素含有ビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
ニトリル基含有ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0047】
アミド基含有ビニル系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
【0048】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどが挙げられる。
【0049】
アルケン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどが挙げられる。
【0050】
共役ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0051】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖を構成する構成単位の由来となるビニル系単量体としては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステルおよびアリルアルコールなども好適に挙げられる。
【0052】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、上述したビニル系単量体のうち1種のビニル系単量体に由来する構成単位のみを含む単独重合体であってもよく、2種以上の任意のビニル系単量体に由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0053】
特に、重合体末端の変性が比較的容易であることから、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構成単位、スチレン系単量体に由来する構成単位またはイソブチレンに由来する構成単位のうち1つ以上を主成分とすることが好ましい。すなわち、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレンまたはポリイソブチレンを主成分とすることが好ましい。本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体およびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とする共重合体であってもよい。
【0054】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリ(メタ)アクリレートを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖がポリ(メタ)アクリレートを主成分とする場合、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0055】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリスチレンを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、スチレン系単量体に由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖がポリスチレンを主成分とする場合、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中スチレン系単量体に由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0056】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリイソブチレンを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、イソブチレンに由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖がポリイソブチレンを主成分とする場合、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中イソブチレンに由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0057】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリレート、スチレンおよびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体またはイソブチレンに由来する構成単位を、合計で50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体およびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とする場合、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体またはイソブチレンに由来する構成単位を、合計で、60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0058】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、上記のビニル系単量体に由来する構成単位に加えて、ビニル系単量体以外の単量体(その他の単量体)に由来する構成単位を含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリルおよびアクリルアミド等が挙げられる。
【0059】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖におけるその他の単量体に由来する構成単位の含有量は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、50モル%未満であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがよりさらに好ましく、0モル%であってもよい。
【0060】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖の構造は特に限定されず、線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよい。すなわち、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は線状重合体であってもよく、分枝状重合体であってもよい。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態において、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は線状重合体であることが好ましく、上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有することが好ましい。
【0062】
本末端変性ビニル系重合体の主鎖であるビニル系重合体の重合法は、特に限定されず、例えば、特開2005-232419公報、特開2006-291073公報、特開2016-88944公報に記載の重合法が挙げられる。
【0063】
なお、本末端変性ビニル系重合体の主鎖であるビニル系重合体は、当該ビニル系重合体内(特に末端部に)に、ビニル系単量体以外の物質(例えば、重合触媒等)に由来する構造を有する場合がある。例えば、後述するメルカプタン類を使用した重合方法によりビニル系重合体を重合した場合、得られるビニル系重合体は、その末端に、当該メルカプタン類に由来するS基を含む構造を有する場合がある。このような末端にS基を有するビニル系重合体を主鎖とする場合、本末端変性ビニル系重合体は、上記一般式(1)で表される末端構造と、ビニル系単量体からなる主鎖構造との間に、上記メルカプタン類に由来するS基を含む構造さらに有する場合がある。
【0064】
本末端変性ビニル系重合体としては、その末端に上記一般式(1)で表される末端構造を有していればよく、上記のように、上記一般式(1)で表される末端構造と、ビニル系単量体からなる主鎖構造との間に、重合触媒等のビニル系単量体以外の物質に由来する構造(例えば、S基を含む構造)をさらに有していてもよい。このような態様もまた、本発明の一実施形態に含まれる。
【0065】
(重量平均分子量)
本末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography;SEC)で測定したときに、重量平均分子量が550以上であることが好ましく、1,200以上であることがより好ましく、2,400以上であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量は、1,100,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有する末端変性ビニル系重合体を提供できる。
【0066】
(数平均分子量)
本末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定したときに、数平均分子量が500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。また、数平均分子量は、600,000以下であることが好ましく、100,000であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有する末端変性ビニル系重合体を提供できる。
【0067】
(分子量分布(Mw/Mn))
本末端変性ビニル系重合体は、分子量分布、すなわち、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることがよりさらに好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有する末端変性ビニル系重合体を提供できる。分子量分布の下限値は、理論上、1である。
【0068】
本明細書におけるビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、SECで測定し、ポリスチレン換算値で算出された値とする。ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の具体的な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0069】
〔2.末端変性ビニル系重合体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る末端変性ビニル系重合の製造方法(以下、「本製造方法」と称する場合がある)としては、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体、すなわち、本末端変性ビニル系重合体を提供できる限り特に限定されないが、以下の方法(1)または方法(2)の製造方法を、好適な製造方法として挙げることができる:
方法(1):ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する方法。
【0070】
【0071】
式(2a)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH2、-N(CH3)Hもしくは-N(CH2CH3)H、または、これらの塩であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(2a)において2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
方法(2):ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、得られた反応物を還元する工程と、を有する方法。
【0073】
【0074】
式(2b)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH2、-N(CH3)Hもしくは-N(CH2CH3)H、または、これらの塩であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(2b)において2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0075】
上記式(2a)および(2b)において、Xにおける塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩あるいは、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。
【0076】
なお、本製造方法に係る一般式(1)で表される末端構造については、上記にて説明した通りである。
【0077】
本製造方法によれば、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を提供することができる。したがって、本製造方法は、本末端変性ビニル系重合体の製造方法として好適に利用することができる。
【0078】
以下、方法(1)および方法(2)を例に挙げて、本製造方法の具体的な態様について詳細に説明するが、本末端変性ビニル系重合体の製造方法は、これらの方法には限定されない。
【0079】
(方法(1))
本発明の一実施形態において、本製造方法の一態様として、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する、末端変性ビニル系重合体の製造方法を提供する(方法(1))。本明細書において、この方法(1)による末端変性ビニル系重合体の製造方法を「第一の製造方法」と称する場合がある。
【0080】
(第1の反応工程)
第一の製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程(第1の反応工程と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2a)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2a)で表される化合物に由来する末端構造、すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得ることができる。
【0081】
第1の反応工程において、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、溶媒中に末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、上記一般式(2a)で表される化合物とを溶解させ、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2a)で表される化合物を加熱(および必要に応じて攪拌する)方法が挙げられる。
【0082】
第1の反応工程において、上記の反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、上記反応は求核置換反応であるため、極性溶媒が好ましい。第1の反応工程において使用し得る極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0083】
第1の反応工程において、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2a)で表される化合物を加熱する温度(加熱温度)は限定されないが、例えば、30℃~120℃であり、50℃~100℃であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。
【0084】
第1の反応工程における加熱時間は特に限定されないが、反応に供したビニル系重合体が有する全てのハロゲン基が、上記一般式(2a)で表される化合物と反応(置換)するまで加熱を継続することが好ましい。具体的な加熱時間としては、例えば、30分間~6時間であり得る。
【0085】
上記のように、第一の製造方法により得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2a)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち、得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造においては、R1はXにおいてビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、Hまたは塩を構成する金属元素等)が結合に置換された構造となり、R1、R2、R3、R4およびR5は、同じ構造となる。したがって、第一の製造方法において使用する一般式(2a)で表される化合物におけるR2、R3、R4およびR5のより詳細な態様については、上記〔1.末端変性ビニル系重合体〕項の記載を適宜援用する。
【0086】
上記一般式(2a)で表される化合物の具体例としては、以下の式(iv)~(vi)で表される構造が挙げられる。一般式(2a)で表される化合物としては、以下の式(iv)~(vi)から選択されるいずれかの化合物が好ましい。
【0087】
【0088】
(方法(2))
本発明の一実施形態において、本製造方法の一態様として、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、得られた反応物を還元する工程と、を有する、末端変性ビニル系重合体の製造方法を提供する(方法(2))。本明細書において、この方法(2)による末端変性ビニル系重合体の製造方法を「第二の製造方法」と称する場合がある。
【0089】
(第2の反応工程)
第二の製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程(第2の反応工程と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2b)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得る。
【0090】
第2の反応工程において、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、溶媒中に末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、上記一般式(2b)で表される化合物とを溶解させ、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2b)で表される化合物を加熱(および必要に応じて攪拌する)方法が挙げられる。
【0091】
第2の反応工程において、上記の反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、上記反応は求核置換反応であるため、極性溶媒が好ましい。第2の反応工程において使用し得る極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0092】
第2の反応工程において、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2b)で表される化合物を加熱する温度(加熱温度)は限定されないが、例えば、30℃~120℃であり、50℃~100℃であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。
【0093】
第2の反応工程における加熱時間は特に限定されないが、反応に供したビニル系重合体が有する全てのハロゲン基が、上記一般式(2b)で表される化合物と反応(置換)するまで加熱を継続することが好ましい。具体的な加熱時間としては、例えば、30分間~6時間であり得る。
【0094】
(還元工程)
第二の製造方法は、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体、すなわち、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元する工程を有する。当該工程においては、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元することで、すなわち、当該反応物の末端のニトロ基を還元してアミノ基に変換することで、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得る。第二の製造方法において得られる末端変性ビニル系重合体の末端構造は、上記一般式(1)において、R4およびR5がいずれもHである末端構造である。
【0095】
還元工程において、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元する方法としては、特に限定されないが、上記第2の反応工程で得られた反応物と、還元剤と、を反応させる方法が挙げられる。
【0096】
還元工程において使用し得る還元剤としては、例えば、塩化アンモニウム、水素、ヒドラジン、水素化アルミニウムリチウムおよび水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0097】
上記のように、第二の製造方法により得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2b)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち、得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造において、R1はXにおいて、ビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、Hまたは塩を構成する金属元素等)が結合に置換された構造となり、R2およびR3は同じ構造となる。したがって、第二の製造方法において使用する一般式(2b)で表される化合物におけるR1、R2およびR3のより詳細な態様については、上記〔1.末端変性ビニル系重合体〕項の記載を適宜援用する。
【0098】
上記一般式(2b)で表される化合物の具体例としては、以下の式(vii)で表される構造が挙げられる。副反応が少なく、定量的にビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基との反応を進行できることから、一般式(2b)で表される化合物としては、以下の式(vii)で表される化合物が好ましい。
【0099】
【0100】
(方法(3))
本発明の一実施形態において、本製造方法の上記方法(1)または方法(2)以外の一態様として、ビニル系重合体の末端に位置する水酸基、またはカルボキシル基等のハロゲン基以外の官能基と、下記一般式(2c)の化合物とを反応させる工程を有する、末端変性ビニル系重合体の製造方法を提供する(方法(3)):
【0101】
【0102】
式(2c)中、
X’は、-OH、-NH2、-N(CH3)H、-N(CH2CH3)H、-COOH、-COZまたは-Zであり(Zは、ハロゲン原子であり);
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(2c)において2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
本明細書において、この方法(3)による末端変性ビニル系重合体の製造方法を「第三の製造方法」と称する場合がある。
【0103】
(第3の反応工程)
第三の製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置する水酸基、またはカルボキシル基等のハロゲン基以外の官能基と、下記一般式(2c)の化合物とを反応させる工程(第3の反応工程と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2c)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2c)で表される化合物に由来する末端構造、すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得ることができる。
【0104】
上記のように、第三の製造方法により得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2c)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち、得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造においては、R1はX’においてビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、H、OHまたはZ等)が結合に置換された構造となり、R1、R2、R3、R4およびR5は、同じ構造となる。したがって、第三製造方法において使用する一般式(2c)で表される化合物におけるR2、R3、R4およびR5のより詳細な態様については、上記〔1.末端変性ビニル系重合体〕項の記載を適宜援用する。
【0105】
(ビニル系重合体調製工程)
第一の製造方法および第二の製造方法は、ハロゲン基が末端に位置するビニル系重合体を調製する工程(ビニル系重合体調製工程)をさらに有していてもよい。ハロゲン基が末端に位置するビニル系重合体の調製(重合)方法としては、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等の公知の種々の重合法を採用することができる。また、第三の製造方法は、ハロゲン基以外の官能基が末端に位置するビニル系重合体を調製する工程をさらに有していてもよい。ハロゲン基以外の官能基が末端に位置するビニル系重合体の調製(重合)方法としては、特開平1-203412号に記載のような、メルカプトエタノール等の水酸基を有するメルカプタン類、または、メルカプト酢酸等のカルボキシル基を有するメルカプタン類を使用した重合方法などを利用することもできる。
【0106】
以下、リビングラジカル重合法を例に挙げて、ビニル系重合体調製工程の具体的な一態様について詳説する。
【0107】
ビニル系重合体の原料となるビニル系単量体としては、上記〔1.末端変性ビニル系重合体〕項に記載の各ビニル系単量体を適宜使用することができる。
【0108】
リビングラジカル重合としては、(a)ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、(b)有機テルル化合物、コバルトポルフィリン錯体および/またはニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合法、(c)有機ハロゲン化物などを開始剤として使用し、かつ遷移金属錯体を触媒として使用する原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)法、(d)有機ハロゲン化物などを開始剤として使用し、かつ窒素、酸素等を中心原子とする有機分子を触媒として使用する重合法(可逆移動触媒重合(RTCP))などを挙げることができるが、ビニル系重合体の分子量および分子量分布の制御が容易であることから、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0109】
リビングラジカル重合においては、重合条件を制御することにより、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することができる。例えば、重合の開始剤の種類を制御することで、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することができる。具体的に、重合開始点が1箇所ある開始剤を使用した場合、片方の末端にハロゲン基が位置する線状ビニル系重合体を調製することができ、重合開始点が2箇所ある開始剤を使用すると、両方の末端にハロゲン基が位置する線状ビニル系重合体を調製することができる。
【0110】
重合開始点が1箇所ある開始剤としては、2-ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、(1-ブロモエチル)ベンゼン、アリルブロミド、2-ブロモプロピオン酸メチル、クロロ酢酸メチル、2-クロロプロピオン酸メチル、(1-クロロエチル)ベンゼン等が挙げられる。また、重合開始点が2箇所ある開始剤としては、ジエチル2,5-ジブロモアジペート、ジメチル2,5-ジブロモアジペート、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル等が挙げられる。
【0111】
ビニル系重合体調製工程において、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することで、上記第1の反応工程または第2の反応工程でビニル系重合体と反応する、一般式(2a)で表される化合物または一般式(2b)で表される化合物の数、すなわち、最終的に得られる末端変性ビニル系重合体における、一般式(1)で表される末端構造の数を制御することができる。
【0112】
リビングラジカル重合においては、開始剤に加えて、重合触媒、多座アミン(配位子)、塩基、還元剤、溶媒等を使用してもよい。これらの各成分の種類および量は、当業者が適宜選択可能である。
【0113】
〔3.本末端変性ビニル系重合体の用途〕
本末端変性ビニル系重合体の用途は特に限定されないが、例えば、ポリマー改質用マクロモノマー;界面活性剤;エポキシ硬化剤;固定型配位子等の種々の用途に好適に利用することができる。
【0114】
(ポリマー改質用マクロモノマー)
本発明の一実施形態において、本末端変性ビニル系重合体からなるポリマー改質用マクロモノマーを提供する。本末端変性ビニル系重合体をポリマー改質用マクロモノマーとして使用した場合、ポリマーの物性を変化させることができる。本末端変性ビニル系重合体によるポリマー改質効果の一例としては、本末端変性ビニル系重合体からなるマクロモノマーを配合しなかった場合と比して、破断ひずみおよび衝撃強度に優れる共重合体(樹脂)を提供できることが挙げられる。
【0115】
本末端変性ビニル系重合体からなるポリマー改質用マクロモノマーを適用するポリマーとしては特に限定されないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0116】
(界面活性剤)
本発明の一実施形態において、末端変性ビニル系重合体を含む界面活性剤を提供する。本末端変性ビニル系重合は、優れた界面活性作用を有するため、界面活性剤として好適に利用することができる。
【0117】
〔4.まとめ〕
本発明の一実施形態は、以下の構成を含んでいてもよい。
〔1〕下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体:
【0118】
【0119】
式(1)中、
R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、2であり;
2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
〔2〕R2は3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
R3は、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
〔3〕R2の炭素数は、1~6個であり、
R3の炭素数は、0~2個であり、
R4およびR5は、いずれも水素である、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
〔4〕上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
【0120】
【0121】
〔5〕上記末端変性ビニル系重合体は、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
〔6〕上記末端変性ビニル系重合体の主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
〔7〕上記末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、〔1〕に記載の末端変性ビニル系重合体。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の末端変性ビニル系重合体を含む、界面活性剤。
〔9〕下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有している末端変性ビニル系重合体の製造方法であって、
ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する、製造方法:
【0122】
【0123】
【0124】
式(1)および式(2a)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH2、-N(CH3)Hもしくは-N(CH2CH3)H、または、これらの塩であり;
R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2a)において2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
〔10〕下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有している末端変性ビニル系重合体の製造方法であって、
ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、
得られた反応物を還元する工程と、
を有する、製造方法:
【0125】
【0126】
【0127】
式(1)および式(2b)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH2、-N(CH3)Hもしくは-N(CH2CH3)H、または、これらの塩であり;
R1は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH3)-または-N(CH2CH3)-であり;
R2は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R3は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2b)において2個ずつ存在するR3、R4およびR5の構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
〔11〕R2は3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
R3は、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、〔9〕~〔10〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔12〕R2の炭素数は、1~6個であり、
R3の炭素数は、0~2個であり、
R4およびR5は、いずれも水素である、〔9〕~〔11〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔13〕上記一般式(2a)で表される化合物は、以下の式(iv)~(vi)から選択されるいずれかの構造を有する、〔9〕に記載の製造方法。
【0128】
【0129】
〔14〕上記一般式(2b)で表される化合物は、以下の式(vii)で表される構造を有する、〔10〕に記載の製造方法。
【0130】
【0131】
〔15〕上記末端変性ビニル系重合体は、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、〔9〕~〔14〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔16〕上記末端変性ビニル系重合体の主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、〔9〕~〔15〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔17〕上記末端変性ビニル系重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、
ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、〔9〕~〔16〕のいずれか1つに記載の製造方法。
【0132】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0133】
以下、本発明の一実施形態を実施例により具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0134】
[分析方法]
(重合転化率)
ビニル系重合体の製造における、単量体の重合体への転化率は、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph,GC(株式会社島津製作所製、GC-2000))を用いて測定した。カラムには、Agilent J&W社製、GCカラムHP-1を用いた。また、トルエンをスタンダードとして測定した。
【0135】
(官能基の定性分析および定量分析)
重合体における官能基の定性分析および定量分析は、1H NMR(Bruker 400MHz NMR)を用いて行なった。重合体30mgを重クロロホルム0.8gに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料とした。
【0136】
(重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn))
重合体の重量平均分子量および数平均分子量の分析は、SEC(HLC-8420GPC)を用いて行った。カラムにはTOSOH TSKgel SuperHM-Lを用い、スタンダードにはポリスチレンスタンダードサンプルを用いた。溶離液はクロロホルムにトリエチルアミン1.5重量%添加した混合溶媒を用いた。重合体3mgを混合溶媒3mlに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料とした。
【0137】
(臭素末端分析)
重合体の末端臭素基をアクリル酸カリウムで置換した後、1H NMRにより置換基の根元のH量を計算することで求めた。末端臭素基の置換方法を次に示す。ビニル系重合体に大過剰量のジメチルアセトアミドおよびアクリル酸カリウムを加え、得られた溶液を50℃にて30分間攪拌した。得られた溶液に過剰量の酢酸エチルおよび水を加え、得られた混合物から有機層のみを採取した。その後、有機層を濃縮して、末端臭素基をアクリル酸カリウムで置換したビニル重合体を得た。得られたビニル重合体を重クロロホルムに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料として、1H NMR測定を行った。その結果、4.8~5.2ppmの範囲にアクリル酸カリウムで置換された置換基の根元のHのシグナルが確認され、その積分値からビニル系重合体の末端臭素量を算出した。
【0138】
(引張試験評価)
JIS K 6251:2017に準拠して引張試験を実施し、成形体の降伏点応力、破断点ひずみおよび破断点応力を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体をダンベル3号型に切り抜き、23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0139】
(動的粘弾性(tanδ)評価)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御製、DVA-200)を用いて、引張モード、ひずみ0.05%、温度-70~400℃で測定を行い、振動数10Hz、35℃における成形体の動的粘弾性(tanδ)を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を8mm×6mmに切り抜き、23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0140】
(面衝撃強度)
東洋精機社製デュポン式衝撃試験機にて、15mm半球状撃芯を用いて荷重300~500gで落錘試験を行い、破壊エネルギー(J)を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0141】
(1%重量減少温度の測定)
示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス製、STA7200)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下、0~500℃で測定を行った。1%重量減少温度を成形体の1%重量が減少した温度として測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0142】
〔実施例1〕
[製造例1]
製造例1-1:重合体1-1の製造
フラスコにメタノール160g、アクリル酸ブチル320g、2-ブロモイソ酪酸エチル55.3g、トリエチルアミン4.3g、臭化第二銅0.16g、およびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン0.16gを添加した。次に、フラスコ内を窒素バブリングした。なお、「窒素バブリング」とは、フラスコまたは溶液などの対象物に窒素を流入して対象物から酸素を除去することを意図する。窒素バブリング後、フラスコ内の混合物を加熱し、45℃まで昇温した。
【0143】
別途、メタノール49g、アスコルビン酸0.25gおよびトリエチルアミン0.29gを混合してメタノール溶液を得た。このメタノール溶液を窒素バブリングした後、上記フラスコ内に5.1ml/hで滴下した。
【0144】
メタノール溶液の滴下開始から0.5時間後、フラスコ内に窒素バブリングしたアクリル酸ブチル480gを1.5時間かけて滴下した。メタノール溶液滴下開始から4時間後、アタクリル酸ブチルの転化率が95%以上に達したことをガスクロマトグラフィーにより確認し、メタノール溶液の滴下を止めた。その後、フラスコ内の反応溶液を100℃かつ真空下で1時間濃縮した。濃縮した反応溶液に、酢酸ブチル800g、キョーワード500(協和化学製)8g、キョーワード700(協和化学製)8g、ラヂオライト900(昭和化学製)8gを添加し、80℃で1時間攪拌した。次に、得られた反応溶液をろ過した。得られたろ液を100℃かつ真空下で2時間濃縮することで、片末端に臭素を有するポリアクリル酸ブチル(重合体1-1)を得た。得られた重合体1-1の数平均分子量は2574であり、分子量分布は1.30であることをSECにより確認した。更に重合体1-1は1分子あたり平均0.86の臭素末端を有していることを1H NMRにより確認した。
【0145】
製造例1-2:重合体1-2の製造
フラスコにメタノール160g、アクリル酸ブチル309g、アクリル酸エチル83g、アクリル酸2-メトキシエチル9g、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル12g、トリエチルアミン4.3g、臭化第二銅0.16g、およびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン0.16gを添加した。次に、フラスコ内を窒素バブリングした。また、フラスコ内の混合物を加熱し、45℃まで昇温した。
【0146】
別途、メタノール49g、アスコルビン酸0.25gおよびトリエチルアミン0.29gを混合してメタノール溶液を得た。このメタノール溶液を窒素バブリングした後、上記フラスコ内に5.1ml/hで滴下した。
【0147】
メタノール溶液の滴下開始から0.5時間後、フラスコ内に窒素バブリングしたアクリル酸ブチル463g、アクリル酸エチル124g、およびアクリル酸2-メトキシエチル13gの混合液を1.5時間かけて滴下した。メタノール溶液滴下開始から4時間後、アタクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの転化率がそれぞれ95%以上に達したことをガスクロマトグラフィーにより確認し、メタノール溶液の滴下を止めた。その後、フラスコ内の反応溶液を100℃かつ真空下で1時間濃縮した。濃縮された反応溶液に、酢酸ブチル1000g、キョーワード500(協和化学製)10g、キョーワード700(協和化学製)10gおよびラヂオライト900(昭和化学製)10gを添加し、80℃で1時間攪拌した。次に、得られた反応溶液をろ過した。得られたろ液を100℃かつ真空下で2時間濃縮することで、両末端に臭素を有するアクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの共重合体(重合体1-2)を得た。得られた重合体1-2の数平均分子量は35316であり、分子量分布は1.1であることをSECにより確認した。更に重合体1-2は1分子あたり平均1.9個の臭素末端を有していることを1H NMRにより確認した。
【0148】
(実施例1-1)
フラスコに重合体1-1を10gとN,N-ジメチルアセトアミド10gを添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながらトリス(2-アミノエチル)アミン0.95gを添加した。続いて、フラスコを80℃で1時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール30gと水30gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がトリス(2-アミノエチル)アミンに由来する構造に置換されてなる末端変性ビニル系重合体(重合体1-3)を得た。得られた重合体1-3の数平均分子量は3355であり、分子量分布は1.80であることをSECにより確認した。更に重合体1-3は臭素末端が完全に無くなっていることを1H NMRにより確認した。
【0149】
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-3を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、有機層および水層は共に懸濁状態にあり、油水の界面が活性化されたことが示唆された。
【0150】
(実施例1-2)
トリス(2-アミノエチル)アミンの量を1.90gに変更した以外は実施例1-1と同様の操作を行い、末端変性ビニル系重合体(重合体1-4)を得た。得られた重合体1-4の数平均分子量は3445であり、分子量分布は1.31であることをSECにより確認した。更に重合体1-4は臭素末端が完全に無くなっていることを1H NMRにより確認した。
【0151】
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-4を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、有機層および水層は共に懸濁状態にあり、油水の界面が活性化されたことが示唆された。
【0152】
(実施例1-3)
フラスコに重合体1-2を50gと、N,N-ジメチルアセトアミド50gと、を添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながらトリス(2-アミノエチル)アミン1.83gを添加した。続いて、フラスコを80℃で1時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール150gと水150gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-2の臭素末端がトリス(2-アミノエチル)アミンに由来する構造に置換されてなる末端変性ビニル系重合体(重合体1-5)を得た。得られた重合体1-5の数平均分子量は22416であり、分子量分布は1.52であることをSECにより確認した。更に重合体1-5は臭素末端が完全に無くなっていることを1H NMRにより確認した。
【0153】
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-5を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、有機層および水層は共に懸濁状態にあり、油水の界面が活性化されたことが示唆された。
【0154】
(実施例1-4)
フラスコに重合体1-1を150gと、N,N-ジメチルアセトアミド150gと、を添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながら炭酸カリウム13.5g、ジアミノ安息香酸16.4gを添加した。続いて、フラスコを80℃で4時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール450gと水450gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がジアミノ安息香酸に由来する構造に置換されてなる末端変性ビニル系重合体(重合体1-6)を得た。得られた重合体1-6の数平均分子量は2628であり、分子量分布は1.19であることをSECにより確認した。更に重合体1-6は臭素末端が完全にジアミノ安息香酸のエステル基に置き換わったことを1H NMRにより確認した。
【0155】
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-6を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、水層は懸濁状態にあり、油水の界面が活性化されたことが示唆された。
【0156】
(実施例1-5)
フラスコに重合体1-1を50gと、N,N-ジメチルアセトアミド50gと、を添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながら炭酸カリウム4.5g、ジニトロ安息香酸5.2gを添加した。続いて、フラスコを80℃で4時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール150gと水150gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がジニトロ安息香酸に由来する構造に置換されてなる重合体(重合体1-7’)を得た。得られた重合体1-7’の数平均分子量は3126であり、分子量分布は1.10であることをSECにより確認した。更に得られた重合体1-7’は臭素末端が完全にジニトロ安息香酸のエステル基に置き換わったことを1H NMRにより確認した。
【0157】
続いて、フラスコに得られた重合体1-7’を10gと、エタノール4gと、水10gと、鉄粉0.91gと、塩化アンモニウム0.69gとを加え、80℃で9時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール10gを加えてからろ過した。得られたろ液に水20gを加え、撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-7’の末端基が有するニトロ基がアミノ基に変換されてなる重合体(重合体1-7)を得た。得られた重合体1-7の数平均分子量は2981であり、分子量分布は1.29であることをSECにより確認した。更に重合体1-7は臭素末端が完全にジアミノ安息香酸のエステル基に置き換わったことを1H NMRにより確認した。
【0158】
(実施例1-6)
フラスコに重合体1-1を10gとN,N-ジメチルアセトアミド10gを添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながらメラミン1.64gを添加した。続いて、フラスコを120℃で13時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール30gと水30gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がメラミンに由来する構造に置換されてなる重合体(重合体1-8)を得た。得られた重合体1-8の数平均分子量は3009であり、分子量分布は1.12であることをSECにより確認した。更に重合体1-8は臭素末端の94%が無くなっていることを1H NMRにより確認した。
【0159】
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-8を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、水層は懸濁状態にあり、油水の界面が活性化されたことが示唆された。
【0160】
(比較例1-1)
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-3を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、有機層および水層は共に清澄であり、油水の界面は活性化されなかったことが示唆された。
【0161】
(比較例1-2)
水1gと、酢酸ブチル1gと、重合体1-3を0.1gと、をバイアル瓶に入れ、ボルテックスミキサーで1000rpm、1分間攪拌し、1分間静置させた。静置後のバイアル瓶内部を目視にて確認したところ、有機層および水層は共に清澄であり、油水の界面は活性化されなかったことが示唆された。
【0162】
【0163】
表1より、末端が未変性である比較例1-1および1-2の重合体は、界面活性能力を示さない一方で、ジアミン末端を有する末端変性ビニル系重合体(すなわち、本末端変性ビニル系重合体)である実施例1-1~1-6の重合体は、界面活性能力を有することが示された。このことから、本末端変性ビニル系重合体は界面活性剤として好適に利用できることが示唆された。
【0164】
〔実施例2〕
[製造例2]
製造例2-1
製造例1-1と同様の操作を行い、片末端に臭素を有するポリアクリル酸ブチル(重合体2-1)を得た。得られた重合体2-1の数平均分子量は2574であり、分子量分布は1.30であることをSECにより確認した。更に重合体2-1は1分子あたり平均0.86の臭素末端を有していることを1H NMRにより確認した。
【0165】
製造例2-2
製造例1-2と同様の操作を行い、両末端に臭素を有するアクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの共重合体(重合体2-2)を得た。得られた重合体2-2の数平均分子量は35316であり、分子量分布は1.1であることをSECにより確認した。更に重合体2-2は1分子あたり平均1.9の臭素末端を有していることを1H NMRにより確認した。
【0166】
(実施例2-1)
重合体1-1に代えて、重合体2-1を使用したこと以外は、実施例1-4と同様の操作を行い、重合体2-1の臭素末端がジアミノ安息香酸に由来する構造に置換されてなる末端変性ビニル系重合体(重合体2-3)を得た。得られた重合体2-3の数平均分子量は2628であり、分子量分布は1.19であることをSECにより確認した。更に重合体2-3は臭素末端が完全にジアミノ安息香酸のエステル基に置き換わったことを1H NMRにより確認した。
【0167】
(実施例2-2)
重合体1-1に代えて、重合体2-1を使用したこと以外は、実施例1-2と同様の操作を行い、末端変性ビニル系重合体(重合体2-4)を得た。得られた重合体2-4の数平均分子量は3445であり、分子量分布は1.31であることをSECにより確認した。更に重合体2-4は臭素末端が完全に無くなっていることを1H NMRにより確認した。
【0168】
(実施例2-3および2-4)
フラスコに12-アミノドデカン酸、アジピン酸、次亜リン酸ナトリウム一水和物を添加し、10分間窒素を流してフラスコ内を窒素置換した。200℃に加熱しながら、重合体2-3を添加した。更にイソホロンジアミンを添加し、200℃で2時間加熱攪拌した。その後、230℃で2時間更に加熱攪拌した。更にSumilizer GA-80を添加して210℃、5分間加熱攪拌することで、ポリアミド系重合体を得た。得られたポリアミド系重合体を170℃で4時間真空乾燥させた後、250℃、5MPaで0.5mm厚さに圧縮させてポリアミド系成形体を得た。得られた重合体の数平均分子量および分子量分布はSECにより確認した。また成形体の物性を引張試験、動的粘弾性測定、TG/DTA測定により評価した。結果を表2に示す。
【0169】
(実施例2-5)
重合体2-3の代わりに重合体2-4を用いた以外は実施例2-3と同様の操作を行い重合体及び成形体を得、各物性を測定および評価した。結果を表2に示す。
【0170】
(比較例2-1)
重合体2-3を使用しなかったこと以外は実施例2-3と同様の操作を行い重合体および成形体を得、各物性を測定および評価した。結果を表2に示す。
【0171】
【0172】
表2により、ジアミン末端を有する末端変性ビニル系重合体を共重合させた実施例2-3~2-5のポリアミド系重合体からなる成形体は、ジアミン末端を有する末端変性ビニル系重合体を共重合させていないポリアミド系重合体からなる比較例2-1の成形体と比して、破断ひずみおよび面衝撃強度に加え、動的粘弾性にも優れることが分かる。一方で、降伏点応力、破断応力、1%重量減少温度はほぼ変化が無かった。以上より、ジアミン末端を有する末端変性ビニル系重合体(すなわち、本末端変性ビニル系重合体)を共重合させたポリアミド系樹脂は、破断ひずみおよび面衝撃強度に優れ、柔軟性や低温特性が向上することが示唆された。このことから、本末端変性ビニル系重合体はポリマー改質用マクロモノマーとして好適に利用できることが示唆された。
本発明の一実施形態によれば、新規な末端変性ビニル系重合体を提供することができる。本発明の一実施形態に係る新規な末端変性ビニル系重合体は、界面活性剤、ポリマー改質用マクロモノマー等の用途に好適に利用できる。