(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134392
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】三価クロム化成皮膜の変色抑制剤、及び、それを用いた三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/30 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
C23C22/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044663
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232656
【氏名又は名称】日本表面化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白川 周平
(72)【発明者】
【氏名】谷川 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】坪田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 利昭
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA07
4K026AA22
4K026BA08
4K026BB08
4K026CA14
4K026CA15
4K026CA19
4K026CA27
4K026CA38
4K026DA03
(57)【要約】
【課題】良好な処理効率で、且つ、三価クロム化成皮膜の変色を良好に抑制することが可能な三価クロム化成皮膜の変色抑制剤、及び、それを用いた三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法を提供する。
【解決手段】ケイ素化合物を一種または二種以上と、炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上と、を含み、pHが7.0~13.0である、三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物を一種または二種以上と、
炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上と、
を含み、
pHが7.0~13.0である、三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項2】
前記ケイ素化合物が、ケイ酸、ケイ酸ナトリウム、または、コロイダルシリカである、請求項1に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項3】
前記モノカルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、グリコール酸、または、安息香酸である、請求項1に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、または、フタル酸である、請求項1に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項5】
前記ケイ素化合物の前記三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるケイ酸イオン濃度が0.01~40g/Lである、請求項1に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項6】
前記炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩の前記三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるカルボン酸イオン濃度が0.01~30g/Lである、請求項1に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
【請求項7】
亜鉛もしくは亜鉛合金めっき表面に三価クロム化成皮膜が形成された金属材を準備する工程と、
前記金属材を請求項1~6のいずれか一項に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤が設けられた浴槽に浸漬する工程と、
前記浸漬した金属材を前記浴槽から取り出して乾燥する工程と、
を含む、三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三価クロム化成皮膜の変色抑制剤、及び、それを用いた三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっき等を始めとするめっき皮膜に対し、耐食性や耐傷性の向上を目的として、六価クロムを使用したクロメート処理が多用されていた。しかしながら、環境問題や人体への影響を懸念して、現在は三価クロム化成皮膜処理が主流となっている(特許文献1)。
【0003】
三価クロム化成皮膜の形成により、環境負荷や人体への影響を低減しつつ、めっき皮膜の耐食性や耐傷性を向上させることができるが、一方で、三価クロム化成皮膜は梅雨の多湿な環境下などにおいて表面が処理直後から変色するという問題がある。めっき皮膜の表面が変色すると、めっき品の外観が変化するため製品としての価値が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-9319号公報
【特許文献2】特開2003-313675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、このような三価クロム化成皮膜の変色問題に対し、コロイダルシリカを含むpH1.8~2.2の組成液を用いて三価クロム化成皮膜の変色防止処理を行っている(特許文献2の実施例)。
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されているように処理液が酸性であるとコロイダルシリカなどのケイ素化合物がゲル化してしまい、浸漬処理で三価クロム化成皮膜の表面処理を行うことが困難となる。その結果、三価クロム化成皮膜の処理効率が低下するという問題が生じる。また、三価クロム化成皮膜の変色抑制効果についても未だ開発の余地がある。
【0007】
本発明は、良好な処理効率で、且つ、三価クロム化成皮膜の変色を良好に抑制することが可能な三価クロム化成皮膜の変色抑制剤、及び、それを用いた三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ケイ素化合物と所定のカルボン酸とを含み、pHが7.0~13.0に制御された変色抑制剤を用いることで、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本発明は以下の(1)~(7)によって規定される。
(1)ケイ素化合物を一種または二種以上と、
炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上と、
を含み、
pHが7.0~13.0である、三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(2)前記ケイ素化合物が、ケイ酸、ケイ酸ナトリウム、または、コロイダルシリカである、前記(1)に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(3)前記モノカルボン酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、グリコール酸、または、安息香酸である、前記(1)または(2)に記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(4)前記ジカルボン酸が、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、または、フタル酸である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(5)前記ケイ素化合物の前記三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるケイ酸イオン濃度が0.01~40g/Lである、前記(1)~(4)のいずれかに記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(6)前記炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩の前記三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるカルボン酸イオン濃度が0.01~30g/Lである、前記(1)~(5)のいずれかに記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤。
(7)亜鉛もしくは亜鉛合金めっき表面に三価クロム化成皮膜が形成された金属材を準備する工程と、
前記金属材を前記(1)~(6)のいずれかに記載の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤が設けられた浴槽に浸漬する工程と、
前記浸漬した金属材を前記浴槽から取り出して乾燥する工程と、
を含む、三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な処理効率で、且つ、三価クロム化成皮膜の変色を良好に抑制することが可能な三価クロム化成皮膜の変色抑制剤、及び、それを用いた三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例2~4、9、比較例1~4の各二値化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0013】
<三価クロム化成皮膜の変色抑制剤>
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤は、ケイ素化合物を一種または二種以上と、炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上とを含み、pHが7.0~13.0に制御されている。このような構成により、良好な処理効率で、且つ、三価クロム化成皮膜の変色を良好に抑制することができる。
【0014】
亜鉛めっき等を始めとするめっき皮膜に対し、耐食性や耐傷性の向上を目的として三価クロム化成皮膜が形成されている。このような三価クロム化成皮膜は、梅雨時期や夏場、或いは海外輸出で赤道を通過する際に、高温・高湿環境下にさらされることで、表面が変色する問題がある。本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤によって、このような三価クロム化成皮膜の変色が良好に抑制される。本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤の変色抑制効果の具体例を以下に示す。
まず、金属材の亜鉛もしくは亜鉛合金めっき表面に三価クロム化成皮膜を形成したものを、60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽で168時間静置した後、恒温恒湿槽から試験片を取り出し、以下のようにして外観観察試験を行う。
(外観観察試験)
外観観察試験は、試験片の一方の表面の画像を取得し、これを二値化することで、当初白色だった領域に対し、黒色に表示された領域を変色した領域とする。評価面積が4000mm2であり、変色した領域の面積を画像処理ソフト等で取得し、当該変色領域の面積を評価面積で除することで変色面積割合(%)を求める。当該変色面積割合が10%以下のとき、変色抑制効果が良好である。
【0015】
(ケイ素化合物)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤に含まれるケイ素化合物としては、ケイ酸、ケイ酸ナトリウム、または、コロイダルシリカがより好ましい。このうち、ケイ酸ナトリウムであるのが特に好ましい。
【0016】
(コロイダルシリカ)
コロイダルシリカは、球状コロイダルシリカであってもよく、鎖状コロイダルシリカであってもよく、球状コロイダルシリカと鎖状コロイダルシリカとを両方用いてもよい。球状コロイダルシリカは通常のものを使用することができる。鎖状コロイダルシリカは、一次粒子が数個から数十個鎖状に結合したものである。鎖状コロイダルシリカは直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。鎖状コロイダルシリカの粒子サイズについては、径3~30nmで、長さ30~500nmの粒子であってもよい。球状コロイダルシリカ、鎖状コロイダルシリカは、公知のものを用いることができ、市販品のコロイダルシリカとして入手することができる。鎖状コロイダルシリカの具体例としては日産化学(株)のスノーテックス(登録商標)UP(固形分20質量%)、スノーテックス(登録商標)OUP(固形分15質量%)が挙げられ、球状コロイダルシリカの具体例としては日産化学(株)スノーテックス(登録商標)XS(固形分20質量%)、スノーテックス(登録商標)CXS(固形分14質量%)、スノーテックス(登録商標)OXS(固形分10質量%)、スノーテックス(登録商標)S(固形分30質量%)、スノーテックス(登録商標)OS(固形分20質量%)、スノーテックス(登録商標)C(固形分20質量%)、スノーテックス(登録商標)30(固形分30質量%)、スノーテックス(登録商標)O(固形分20質量%)、日揮触媒化成(株)のカタロイドSI-30(固形分30質量%)、カタロイドSI-550(固形分20質量%)が挙げられる。
【0017】
ケイ素化合物の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるケイ酸イオン(SiO3
2-)濃度は0.01~40g/Lであるのが好ましい。当該ケイ酸イオン濃度が0.01g/L以上であると変色抑制効果がより向上する。また、当該ケイ酸イオン濃度が40g/L以下であると処理後の試験片に白色結晶物(塩類)が残留して外観を損ねることを抑制することができる。ケイ素化合物の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるケイ酸イオン濃度は0.05~10g/Lであるのがより好ましく、0.05~2g/Lであるのが更により好ましい。ケイ素化合物がコロイダルシリカである場合は、三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるSiO2濃度が0.01~40g/Lであるのが好ましく、0.05~10g/Lであるのがより好ましい。
【0018】
(モノカルボン酸、ジカルボン酸またはその塩)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤に含まれる炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、グリコール酸、または、安息香酸、またはその塩が好ましい。本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤に含まれる炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩としては、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、または、フタル酸、またはその塩が好ましい。本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤がこれらのモノカルボン酸、ジカルボン酸またはその塩を含むことで、三価クロム化成皮膜の変色抑制効果が更に向上する。
【0019】
炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩の三価クロム化成皮膜の変色抑制剤におけるカルボン酸イオン濃度は0.01~30g/Lであるのが好ましい。当該カルボン酸イオン濃度が0.01g/L以上であると、三価クロム化成皮膜の変色抑制効果が向上する。また、当該カルボン酸イオン濃度が30g/L以下であると、処理後の試験片に白色結晶物(塩類)が残留して外観を損ねることを抑制することができる。当該カルボン酸イオン濃度は、0.1~10g/Lであるのがより好ましい。
【0020】
(水性媒体)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤は、前述のケイ素化合物、モノカルボン酸またはその塩、及び、ジカルボン酸またはその塩が、水性媒体に溶解してなる。水性媒体としては、水等が挙げられる。前述のケイ素化合物、モノカルボン酸またはその塩、及び、ジカルボン酸またはその塩が、水性媒体に溶解してなる変色抑制剤とすることで、効率良く表面に三価クロム化成皮膜が形成された金属材の浸漬処理を行うことができる。
【0021】
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤は、ケイ素化合物を一種または二種以上と、炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上と、のみで構成されていてもよく、さらに水性媒体、及び/または、その他の成分を含んでいてもよい。
【0022】
(pH)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤は、pHが7.0~13.0に制御されている。このような構成によれば、三価クロム化成皮膜の変色抑制効果が向上する。また、pHが7.0以上であると変色抑制剤がゲル化せず、より効率良く表面に三価クロム化成皮膜が形成された金属材の浸漬処理を行うことができる。また、pHが13.0以下であると、三価クロム化成皮膜の溶解などが著しく進むことが原因で耐食性が低下してしまうことを抑制することができる。本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤は、pHが8.0~12.0に制御されているのがより好ましい。
【0023】
(金属材)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤によって処理する対象となる金属材は、亜鉛、または、亜鉛ニッケル合金、亜鉛鉄合金、錫亜鉛合金、亜鉛ダイカスト等の亜鉛合金が挙げられる。また、当該金属材は、例えば、鉄系材料や鉄系部品などの金属基材の表面に形成された、亜鉛、または、亜鉛ニッケル合金、亜鉛鉄合金、錫亜鉛合金、亜鉛ダイカスト等の亜鉛合金のめっきであってもよい。
【0024】
(三価クロム化成皮膜)
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤によって変色が抑制される金属材表面の三価クロム化成皮膜としては、特に限定されない。当該三価クロム化成皮膜は、例えば、1)三価クロム化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、3)有機酸、4)コロイダルシリカ、5)硫酸、硝酸、塩酸又は水酸化ナトリウムからなるpH調整剤等を含む皮膜であってもよい。
【0025】
<三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法>
本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜を有する金属材の処理方法としては、まず、表面に三価クロム化成皮膜が形成された金属材を準備する。当該金属材は、亜鉛もしくは亜鉛合金めっき表面を有してもよい。
次に、金属材を本発明の実施形態に係る三価クロム化成皮膜の変色抑制剤が設けられた浴槽に浸漬する。このとき、浴温は10~50℃であるのが好ましく、処理効率の観点から室温であるのがより好ましい。また、浸漬時間は10~60秒であるのが好ましい。このような構成によれば、より良好に三価クロム化成皮膜の変色を抑制することができる。浸漬時間は20~40秒であるのがより好ましい。
次に、浸漬した金属材を浴槽から取り出し、恒温槽などを用いて乾燥する。乾燥は70~90℃で10~30分行うことが好ましく、75~85℃で15~25分行うことがより好ましい。
このようにして、金属材の三価クロム化成皮膜に変色抑制効果を付与することができる。
【実施例0026】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0027】
(実施例1~9、比較例1~4)
試験片として、片面が4000mm2の表面積を有する平板状に形成された鉄鋼板を準備した。
【0028】
次に、当該試験片の表面に、以下の条件で電気Znめっきを施した。
(電気Znめっき条件)
・金属亜鉛濃度:10g/L
・苛性ソーダ濃度:120g/L
・光沢剤濃度(日本表面化学株式会社製ハイパージンク9000A):12mL/L
・光沢剤濃度(日本表面化学株式会社製ハイパージンク9000BS):1mL/L
・軟水化剤濃度(日本表面化学株式会社製ハイパーソフト):10mL/L
・不純金属抑制剤濃度(日本表面化学株式会社製H-0624):4mL/L
・陰極電流密度:1A/dm2
・めっき浴温:25℃
・めっき処理時間:40分間
・めっき膜厚:5~7μm
【0029】
次に、試験片のZnめっきの表面に三価クロム化成皮膜を形成した。具体的には、硫酸クロム及びコロイダルシリカを含有する三価クロム化成皮膜処理剤(日本表面化学株式会社製TR-175SR)を準備し、当該三価クロム化成皮膜処理剤を設けた浴槽に試験片を30℃で30秒間浸漬した。続いて、試験片を浴槽から取り出し、恒温槽を用いて80℃で20分間の乾燥を行うことで、試験片のZnめっきの表面に三価クロム化成皮膜を形成した。
【0030】
次に、純水を設けた浴槽内に、表1に示す化合物を表1に示す組成となるように投入して変色抑制剤をそれぞれ準備した。続いて、三価クロム化成皮膜を形成した試験片を浴槽の変色抑制剤中に30秒間浸漬した。このとき、浴温は25℃程度であった。その後、試験片を浴槽から取り出して、80℃の恒温槽で20分間乾燥した。
【0031】
このようにして三価クロム化成皮膜の変色抑制処理を行った試験片について、60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽で168時間静置した。その後、恒温恒湿槽から試験片を取り出し、以下のようにして外観観察試験を行った。
(外観観察試験)
外観観察試験は、試験片の一方の表面の画像を取得し、これを二値化することで、当初白色だった領域に対し、黒色に表示された領域を変色した領域とした。評価面積が4000mm
2であり、変色した領域の面積を画像処理ソフト(ImageJ)によって取得し、当該変色した領域の面積を評価面積で除することで変色面積割合(%)を求めた。
これらの評価結果を表1に示す。
また、実施例2~4、9、比較例1~4について、上述の二値化画像を
図1に示す。
【0032】
【0033】
(考察)
実施例1~9のサンプルは、ケイ素化合物を一種または二種以上と、炭素数1~10のモノカルボン酸またはその塩、及び、炭素数2~10のジカルボン酸またはその塩からなる群から選択される一種または二種以上とを含み、pHが7.0~13.0であったため、三価クロム化成皮膜の変色面積割合が10%以下と良好であった。
比較例1のサンプルは、カルボン酸イオンを含まず、三価クロム化成皮膜の変色面積割合が不良であった。
比較例2、3のサンプルは、ケイ素イオンを含まず、三価クロム化成皮膜の変色面積割合が不良であった。
比較例4のサンプルは、ケイ素イオン及びカルボン酸イオンをいずれも含まず、三価クロム化成皮膜の変色面積割合が最も不良であった。