(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134411
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】パッティングライン案内装置、パッティングライン情報提供システム、パッティングライン案内方法、パッティングライン情報提供方法、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
A63B71/06 U
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044702
(22)【出願日】2023-03-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】503152358
【氏名又は名称】服部 武
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 武
(57)【要約】
【課題】 ゴルフプレーヤが所望するボール位置からの、より正確なパッティングラインを提供するための技術を提供すること。
【解決手段】 グリーン上に切られるカップの位置に対する複数の仮想位置からのパッティングラインを、サーバから受信し、該複数の仮想位置からのパッティングラインの中からプレーヤが選択したパッティングラインの情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーン上に切られるカップの位置に対する複数の仮想位置からのパッティングラインを、サーバから受信する受信手段と、
前記複数の仮想位置からのパッティングラインの中からプレーヤが選択したパッティングラインの情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とするパッティングライン案内装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記カップの位置を中心とする円上もしくは楕円上に設定された複数の仮想位置からのパッティングラインを前記サーバから受信することを特徴とする請求項1に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項3】
複数のグリーン上に切られるカップの位置に対して複数の仮想位置からのパッティングラインを一括してサーバから受信する受信手段と、
プレーするグリーンを画面上で遷移させる遷移手段と、
グリーン上のパッティングラインの中から特定のパッティングラインを選択する選択手段と、
前記選択したパッティングラインの情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とするパッティングライン案内装置。
【請求項4】
さらに、
パッティングラインの情報の出力方法をユーザ操作に応じて選択する選択手段を備え、
前記出力手段は、前記選択手段により選択された出力方法でパッティングラインの情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項5】
前記出力手段は、
前記複数の仮想位置を表す画面を表示し、該画面に対するユーザ操作に応じて選択された仮想位置からのパッティングラインを表示することを特徴とする請求項1に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項6】
前記出力手段は、
前記パッティングライン上の位置がユーザ操作に応じて指示された場合には、該位置の周辺を拡大した拡大画面を生成し、該生成した拡大画面を表示することを特徴とする請求項5に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項7】
前記出力手段は、
前記複数の仮想位置のうちユーザ操作に応じて選択された仮想位置からのパッティングラインの情報を音声出力することを特徴とする請求項1に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項8】
前記出力手段は、
前記複数の仮想位置のうちユーザ操作に応じて選択された仮想位置からのパッティングラインの情報の印刷データを印刷装置に対して出力することを特徴とする請求項1に記載のパッティングライン案内装置。
【請求項9】
複数のグリーン上に切られるカップの位置に対して複数の仮想位置からのパッティングラインを一括してサーバから受信する受信手段と、
前記受信したパッティングラインのうち、プレーヤがプレーするホール分のパッティングラインの情報を、該プレーヤの端末に分配する分配手段と
を備えることを特徴とするパッティングライン情報提供システム。
【請求項10】
パッティングライン案内装置が行うパッティングライン案内方法であって、
前記パッティングライン案内装置の受信手段が、グリーン上に切られるカップの位置に対する複数の仮想位置からのパッティングラインを、サーバから受信する受信工程と、
前記パッティングライン案内装置の出力手段が、前記複数の仮想位置からのパッティングラインの中からプレーヤが選択したパッティングラインの情報を出力する出力工程と
を備えることを特徴とするパッティングライン案内方法。
【請求項11】
パッティングライン案内装置が行うパッティングライン案内方法であって、
前記パッティングライン案内装置の受信手段が、複数のグリーン上に切られるカップの位置に対して複数の仮想位置からのパッティングラインを一括してサーバから受信する受信工程と、
前記パッティングライン案内装置の遷移手段が、プレーするグリーンを画面上で遷移させる遷移工程と、
前記パッティングライン案内装置の選択手段が、グリーン上のパッティングラインの中から特定のパッティングラインを選択する選択工程と、
前記パッティングライン案内装置の出力手段が、前記選択したパッティングラインの情報を出力する出力工程と
を備えることを特徴とするパッティングライン案内方法。
【請求項12】
パッティングライン情報提供システムが行うパッティングライン情報提供方法であって、
前記パッティングライン情報提供システムの受信手段が、複数のグリーン上に切られるカップの位置に対して複数の仮想位置からのパッティングラインを一括してサーバから受信する受信工程と、
前記パッティングライン情報提供システムの分配手段が、前記受信したパッティングラインのうち、プレーヤがプレーするホール分のパッティングラインの情報を、該プレーヤの端末に分配する分配工程と
を備えることを特徴とするパッティングライン情報提供方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のパッティングライン案内装置の各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーン上でのパッティングラインをゴルフプレーヤに提供するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場におけるグリーンの情報をゴルフプレーヤに提供するための方法には、グリーンの傾斜を示す情報を紙で提供する方法や、ゴルフプレーヤが所持する端末にダウンロードする方法など、様々な方法がある。
【0003】
また、実際のプレー中にグリーンに乗ったゴルフボールからピンへの方向を周囲から撮影し、カップまでのボールの転がるラインを示す方法がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”弾道計測アプリShot Visionがついに日本語化!こいつは神アップデートか?”、[online]、[令和5年3月1日検索]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=nXAbBqRKJyA>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、グリーン全体の傾斜や芝目の方向を提供する技術が従来からあるが、この技術を利用する場合、その日のピンの位置に対して、ゴルフプレーヤ自身がラインや強さを推測することになり、正確な情報を得ることは困難である。
【0006】
また、非特許文献1に開示の技術では、撮影してラインを出すまでに時間を要する。また、ボールからピンへの方向の周囲をスキャンすることが必要で、手間もかかり、天候にも影響され、正確な情報とならないことがある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑み、ゴルフプレーヤが所望するボール位置からの、より正確なパッティングラインを提供するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパッティングライン案内装置は、グリーン上に切られるカップの位置に対する複数の仮想位置からのパッティングラインを、サーバから受信する受信手段と、前記複数の仮想位置からのパッティングラインの中からプレーヤが選択したパッティングラインの情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴルフプレーヤが所望するボール位置からの、より正確なパッティングラインを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゴルフプレーヤに所望のパッティングラインを提供可能なシステムの構成例を示す図。
【
図2】サーバ100のハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図3】端末160のハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図4】サーバ100が第1ホール~第18ホールのそれぞれのホールについてパッティングラインを求めて登録するために行う処理のフローチャート。
【
図5】ステップS401およびステップS402の処理の一例を説明する図。
【
図6】ステップS401およびステップS402の処理の一例を実施するためのサーバ100の機能構成例を示すブロック図。
【
図8】方向1~4のそれぞれに対して求めた軌跡を示す図。
【
図9】仮想位置K1~K3のそれぞれについて求めたパッティングラインおよび強さの一例を示す図。
【
図10】複数のパッティングラインと強さの一例を示す図。
【
図11】ボールが転がる軌跡がグリーンのアンジュレーションに大きく左右されることを説明する図。
【
図12】ホールごとのパッティングラインのテーブルの構成例を示す図。
【
図13】パッティングラインをゴルフプレーヤに提供するために端末160が行う処理のフローチャート。
【
図14】ステップS1304で表示される画面の構成例を示す図。
【
図15】ステップS1306で表示される画面の構成例を示す図。
【
図16】仮想位置からのパッティングラインを求めるための他の方法のフローチャート。
【
図17】同心円上に指定されたボールの仮想位置Kiを示す図。
【
図18】(a)は、Ki直線に対して直交する複数の線分を示す図、(b)は、右側のパッティングラインの一例を示す図。
【
図20】拡大画面の表示に係る処理のフローチャート。
【
図21】パッティングラインをゴルフプレーヤに提供するために端末160が行う処理のフローチャート。
【
図22】操作部304における画面遷移の一例を示す図。
【
図24】ゴルフプレーヤに所望のパッティングラインを提供可能なシステムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
先ず、ゴルフプレーヤに所望のパッティングラインを提供可能なシステム(パッティングライン情報提供システム)の構成例について、
図1を用いて説明する。
図1に示す如く、本実施形態に係るシステムは、サーバ100と端末160とを有し、サーバ100と端末160との間は無線のネットワーク150を介して互いにデータ通信が可能なように構成されている。尚、
図1では端末160の台数を1としているが複数台の端末160をネットワーク150に接続しても良い。
【0013】
先ず、サーバ100について説明する。サーバ100は、第1ホール~第18ホールのそれぞれのホールについて、グリーン上のカップの位置を中心とする円上の複数の位置についてパッティングラインを求めて保持しておき、端末160から取得要求を受けると、該保持している各ホールのパッティングラインを該端末160に対して送信する。
【0014】
サーバ100のハードウェア構成例について、
図2のブロック図を用いて説明する。
【0015】
CPU201は、RAM202に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行し、これにより、サーバ100全体の動作制御を行うと共に、サーバ100が行う処理として説明する各種の処理を実行する。
【0016】
RAM202は、ROM203や記憶装置205からロードされたコンピュータプログラムやデータを格納するためのエリア、I/F206を介して端末160から受信したデータを格納するためのエリア、CPU201が各種の処理を実行する際に用いるワークエリア、など、各種のエリアを提供することができる。
【0017】
ROM203には、サーバ100の設定データ、サーバ100の起動に係るコンピュータプログラムやデータ、サーバ100の基本動作に係るコンピュータプログラムやデータ、などが格納されている。
【0018】
操作部204は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのユーザインターフェースであり、ユーザが操作することで各種の指示をCPU201に対して入力することができる。
【0019】
記憶装置205には、OS,サーバ100が行う処理として説明する各種の処理をCPU201に実行もしくは制御させるためのコンピュータプログラムやデータ、などが保存されている。
【0020】
I/F206は、ネットワーク150を介して端末160との間のデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0021】
CPU201、RAM202、ROM203、操作部204、記憶装置205、I/F206はいずれもシステムバス207に接続されている。
【0022】
次に、端末160について説明する。端末160はパッティングライン案内装置として機能する端末であり、スマートフォン、タブレット端末装置などが適用可能である。端末160は、ゴルフプレーヤが所持する端末であっても良いし、ゴルフプレーヤのゴルフカートに備わっている端末であっても良い。端末160は、サーバ100から各ホールのパッティングラインをダウンロードし、ゴルフプレーヤが指定したボール位置に対応するパッティングラインをゴルフプレーヤに通知するための表示を行う。
【0023】
端末160のハードウェア構成例について、
図3のブロック図を用いて説明する。
【0024】
CPU301は、RAM302に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて各種の処理を実行し、これにより、端末160全体の動作制御を行うと共に、端末160が行う処理として説明する各種の処理を実行する。
【0025】
RAM302は、ROM303や記憶装置305からロードされたコンピュータプログラムやデータを格納するためのエリア、I/F306を介してサーバ100から送信されたデータを格納するためのエリア、CPU301が各種の処理を実行する際に用いるワークエリア、など、各種のエリアを提供することができる。
【0026】
ROM303には、端末160の設定データ、端末160の起動に係るコンピュータプログラムやデータ、端末160の基本動作に係るコンピュータプログラムやデータ、などが格納されている。
【0027】
操作部304は、タッチパネル画面であり、ユーザからの操作入力を受け付けると共に、画像や文字を表示することができる。
【0028】
記憶装置305には、OS、端末160が行う処理として説明する各種の処理をCPU301に実行もしくは制御させるためのコンピュータプログラムやデータ、などが保存されている。
【0029】
I/F306は、ネットワーク150を介してサーバ100との間のデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0030】
GPS受信機307は、GPS衛星からの信号に基づいて自身の現在位置を検出する。
【0031】
CPU301、RAM302、ROM303、操作部304、記憶装置305、I/F306、GPS受信機307、はいずれもシステムバス308に接続されている。
【0032】
次に、サーバ100が第1ホール~第18ホールのそれぞれのホールについてパッティングラインを求めて登録するために行う処理について、
図4のフローチャートに従って説明する。サーバ100は、
図4のフローチャートに従った処理を第1ホール~第18ホールのそれぞれについて行う。
【0033】
ステップS401では、CPU201は、グリーンの傾斜(ここで、傾斜とは、ある点を中心に、その点と全周囲のある点との高さの違いであるが、ここでは単に前後左右の高さの変化に言及する)を求めるために必要な情報(グリーン情報)を取得する。
【0034】
ステップS402では、CPU201は、グリーン情報を用いて、グリーン上の各位置における傾斜を表す傾斜情報を取得する。
【0035】
ステップS401およびステップS402の処理の一例を説明する。
図6は、ステップS401およびステップS402の処理の一例を実施するためのサーバ100の機能構成例を示すブロック図である。
図6に示した各機能部はソフトウェア(コンピュータプログラム)で実装しても良いし、ハードウェアで実装しても良い。前者の場合、このソフトウェアはCPU201によって実行される。
【0036】
図5に示す如く、グリーン501の直上からデプスカメラ500を用いてグリーン501の距離画像を撮像する。距離画像入力部601は、デプスカメラ500により撮像された距離画像を取得する。距離画像の各画素の画素値は、デプスカメラ500から、該画素に対応するグリーン501上の位置までの距離を表す。
【0037】
傾斜計算部602は、距離画像における各着目画素について、該着目画素とX方向(横方向)に隣接する一方の画素P1の画素値と他方の画素P2の画素値との差分を、画素P1の画素位置と画素P2の画素位置との差分で割った結果を、着目画素のX方向の傾斜G1として求め、該求めた傾斜G1を記憶装置205に保存する。
【0038】
傾斜計算部603は、距離画像における各着目画素について、該着目画素とY方向(縦方向)に隣接する一方の画素P3の画素値と他方の画素P4の画素値との差分を、画素P3の画素位置と画素P4の画素位置との差分で割った結果を、着目画素のY方向の傾斜G2として求め、該求めた傾斜G2を記憶装置205に保存する。
【0039】
傾斜計算部604は、距離画像における各着目画素について、該着目画素と斜め方向(右上左下方向)に隣接する一方の画素P5の画素値と他方の画素P6の画素値との差分を、画素P5の画素位置と画素P6の画素位置との差分で割った結果を、着目画素の斜め方向(右上左下方向)の傾斜G3として求め、該求めた傾斜G3を記憶装置205に保存する。
【0040】
傾斜計算部605は、距離画像における各着目画素について、該着目画素と斜め方向(左上右下方向)に隣接する一方の画素P7の画素値と他方の画素P8の画素値との差分を、画素P7の画素位置と画素P8の画素位置との差分で割った結果を、着目画素の斜め方向(左上右下方向)の傾斜G4として求め、該求めた傾斜G4を記憶装置205に保存する。
【0041】
これにより、撮影したグリーン上の各位置における傾斜を表す傾斜情報を取得することができる。なお、着目画素における傾斜を求める方法は上記の方法に限らない。また、傾斜を求める方向は4方向に限らない。
【0042】
図4に戻って、次に、ステップS403では、CPU201は、グリーン上に設けられたカップの位置Cを取得する。実際のプレーのために切るカップの位置Cは、たとえば、ゴルフ場のキャディマスター室における装置のオペレータが入力する。この入力は、たとえば、グリーンが写しだされた画面をタッチすることで行う(タッチ位置を位置Cとする)。
【0043】
ステップS404では、CPU201は、カップの位置Cを中心とする半径2~3mの円上にボールの仮想位置を複数設定する。たとえば、CPU201は、カップの位置Cを中心とする半径2~3mの円を四等分した各円弧上に10個の仮想位置を設定する。なお、仮想位置を設定する対象は円上に限らず、たとえば楕円上であっても良い。
【0044】
ステップS405では、CPU201は、それぞれの仮想位置についてパッティングラインを求める。以下に、仮想位置K1からのパッティングラインを求めるための方法の一例を説明する。
【0045】
仮想位置K1についてパッティングラインを求める場合、CPU201は、
図7に示す如く、仮想位置K1から4つの方向(方向1~4)と初速を設定する。そしてCPU201は、仮想位置K1から4つの方向のそれぞれにボールを打った場合のパッティングラインを、グリーンを表す3次元曲面と芝目(順芽、逆芽、芽なし)から算出する。
【0046】
グリーンを表す3次元局面は、たとえば、ステップS402で求めたグリーン上の各位置における傾斜を表す傾斜情報によって表される。また、芝目(順芽、逆芽、芽なし)の情報は、ユーザが操作部204を操作して入力しても良いし、予めデータベースとして記憶装置205に登録しておいてもよい。
【0047】
そしてCPU201は、3次元局面を碁盤目状に区切り(複数のグリッドに分割し)、その交点における高さおよび芝目、現在のボールの位置と初速(ヒッティングの強さ)を考慮し、次に向かう交点(完全に交点に乗らない場合は、最も近い交点を通過位置とする)を求める。この処理を順次行えば、ボールが向かう交点の集合をボールの軌跡として求めることができる。
【0048】
仮想位置K1について、方向1~4のそれぞれに対して求めた軌跡を
図8に示す。この時、カップの位置C付近の通過速度が、例えば毎秒10cm以下となる軌跡をパッティングラインとして採用し、それ以上の軌跡については、カップを飛び越えるために、パッティングラインとして採用しない。ただし、ピンが立っている場合は、例えば毎秒20cmまでをカップインとするため、カップの位置C付近の通過速度が、例えば毎秒20cmまでの軌跡はパッティングラインとして採用し、それ以外の軌跡についてはパッティングラインとして採用しない。一方で、強さと方向により、解となる軌跡が複数存在することもあり得る。その場合は、それらの軌跡をパッティングラインとして採用する。
【0049】
以上説明した処理をそれぞれの仮想位置について行うことで、それぞれの仮想位置からのパッティングラインを求めることができる。仮想位置K1~K3のそれぞれについて求めたパッティングラインおよび強さの一例を
図9に示す。
【0050】
さらに、複数のパッティングラインと強さの一例を
図10に示す。強めにヒットすれば、ストレートでもカップインの可能性があることを示している。特に、カップから50-60cmであれば、強めにストレートで打つことにより傾斜や芽に関係なくカップインする可能性が大きい。これはラインを消して打つという打ち方である。
【0051】
なお、パッティングラインを求めるための方法は上記の方法に限らず、たとえば、特許第2735149号公報等の周知技術を用いても構わない。グリーンに乗ったボールからパターが行われるが、ボールが転がる軌跡は
図11に示す如くグリーンのアンジュレーションに大きく左右される。ボールからカップまでの軌跡が、水平(0)、弱い傾斜(1)、少しの傾斜(2)、強い傾斜(3)、極めて強い傾斜(4)など色々なアンジュレーションがある。このアンジュレーション、芝目(順目、逆目)、グリーンの湿り具合、ボールを打ち出す(ヒットする)強さなどによりパッテンイングラインは変化する。このような複雑な要素を計算し、パッテンイングラインを予測し、示す技術は既に実用化されている。本実施形態では、どのような要素を考慮してパッティングラインを求めるのかについては、特定の方法に限らない。
【0052】
ステップS406では、CPU201は、それぞれの仮想位置について求めたパッティングラインを記憶装置205に保存する。記憶装置205には、ホールごとにパッティングラインのテーブルが登録される。ホールごとのパッティングラインのテーブルの構成例を
図12に示す。
【0053】
第1ホール用のテーブル1201には、第1ホールにおけるグリーン上の仮想位置P11,P12,…のそれぞれのパッティングラインPL11,Pl12,…が登録されている。
【0054】
第18ホール用のテーブル1202には、第18ホールにおけるグリーン上の仮想位置P181,P182,…のそれぞれのパッティングラインPL181,Pl182,…が登録されている。
【0055】
テーブルに登録されるパッティングラインのデータ形式については特定のデータ形式に限らない。たとえば、自由曲線のデータであっても良いし、上記の軌跡を表すデータであっても良い。
【0056】
なお、カップの位置は固定ではなく、プレー日に応じて異なりうる。よってサーバ100は、
図4のフローチャートに従った処理をプレー前に行って、その日のカップの位置を考慮したパッティングラインを求めておく。
【0057】
このようにして、サーバ100には、第1ホール~第18ホールのそれぞれのホールについて求めたパッティングラインを、ゴルフプレーヤによるプレーの前に予め登録しておくことができる。
【0058】
図4に戻って、次に、ステップS407では、CPU201は、端末160からテーブルのダウンロード要求を受信したか否かを判断する。この判断の結果、ダウンロード要求を受信した場合には、処理はステップS408に進み、ダウンロード要求を受信していない場合には、
図4のフローチャートに従った処理は終了する。
【0059】
ステップS408では、CPU201は、第1ホール~第18ホールのそれぞれのテーブルを一括して、端末160に対して送信する。
【0060】
次に、パッティングラインをゴルフプレーヤに提供するために端末160が行う処理について、
図13のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
ステップS1301では、CPU301は、サーバ100に対して送信したダウンロード要求に応じて該サーバ100から送信された第1ホール~第18ホールのそれぞれのホールのテーブルを受信する。
【0062】
ステップS1302では、CPU301は、GPS受信機307が検出した現在位置に基づいて、ゴルフプレーヤがこれからプレーを行うホール(端末160が現在位置するホール)を特定する。たとえばCPU301は、GPS受信機307が検出した現在位置(緯度経度)が属しているホールを、ゴルフプレーヤがこれからプレーを行うホールとして特定する。
【0063】
ステップS1303では、CPU301は、ステップS1301で受信した第1ホール~第18ホールのテーブルのうち、ステップS1302で特定したホールに対応するテーブルを、以降の処理で参照する参照テーブルとして特定する。
【0064】
ステップS1304では、CPU301は、ステップS1303で特定した参照テーブルに含まれているそれぞれの仮想位置を表す画面を操作部304(タッチパネル画面)に表示させる。例えばCPU301は
図14に示す如く、グリーンを俯瞰した画像上にピンを表すアイコン1401を配置すると共に、該画像において仮想位置に対応する位置に該仮想位置を表すアイコン1402を表示させる。
【0065】
ゴルフプレーヤは、この画面を見て、自身の現在のボールの位置に最も近い仮想位置に対応するアイコンをタッチする。
【0066】
なお、タッチされたアイコンの履歴を作成し、アイコンを表示する際に該履歴も表示しても良い。たとえば、履歴として、最近タッチされた日時、タッチされた回数、などを表示しても良い。履歴をどのように表示するのかについては特定の表示方法に限らない。また、アイコンをタッチする代わりに、GPS受信機307が検出した現在位置に最も近い位置に対応するアイコンがCPU301によって選択されても良い。
【0067】
ステップS1305では、CPU301は、仮想位置を表すアイコンのうちいずれかがタッチされたか否かを判断する。この判断の結果、仮想位置を表すアイコンのうちいずれかがタッチされた場合には、処理はステップS1306に進み、いずれのアイコンもタッチされていない場合には、処理はステップS1305で待機する。
【0068】
ステップS1306では、CPU301は、パッティングラインに関する情報(パッティングライン情報)の出力方法の選択指示を受け付ける。たとえば、CPU301は、パッティングラインに関する情報の出力方法として複数の出力方法の一覧を操作部304(タッチパネル画面)に表示させ、ゴルフプレーヤは、該一覧から1つを選択(タッチ)することで、所望の出力方法を選択することができる。
【0069】
ステップS1307では、CPU301は、タッチされたアイコンに対応する仮想位置と対応付けて参照テーブル(ステップS1303で特定された参照テーブル)に登録されているパッティングラインを取得し、該取得したパッティングラインに関する情報を、ステップS1306で取得した選択指示に応じて選択された出力方法で出力する。パッティングラインに関する情報の出力方法は特定の方法に限らない。
【0070】
たとえば、CPU301は、パッティングラインを操作部304(タッチパネル画面)に表示させても良い。例えばCPU301は
図15に示す如く、タッチされたアイコン1501と、該アイコン1501に対応するパッティングライン1502と、を表示させる。
【0071】
またたとえば、音声出力が可能な端末160は、パッティングラインに関する情報を音声でゴルフプレーヤに通知しても良い。パッティングラインに関する情報として出力する音声内容には、たとえば、「ラインは、最初はフックし、その後スライスするスネークラインです。芝目は、あまり強くないです。」、「ほぼストレートで、アップヒルのため、強めにヒットすることが必要です。」、「ストレートですが、強い下りのため、ソフトにヒットすることが必要です」、などがある。スネークラインの一例を
図19に示す。
【0072】
また、端末160は、パッティングラインに関する情報を印刷装置に印刷させるための印刷データを生成し、該印刷データを印刷装置に対して送信して該印刷装置に印刷データに基づく印刷処理を行わせても良い。この場合、パッティングラインが紙などの印刷媒体に印刷され、ゴルフプレーヤは印刷媒体に印刷されたパッティングラインを参照することができる。
【0073】
なお、パッティングラインに関する情報の通知方法を2つ以上組み合わせても構わない。
【0074】
ここで、本実施形態の導入例について説明する。ゴルフ場では、例えば、入場者にパッティングライン情報サービスの希望の有無を問合せ、希望者の端末160にホールごとのパッティングライン情報サービスを有料で提供する。つまりサーバ100は、課金した端末160に対してパッティングライン情報サービスの利用を許可し、パッティングライン情報サービスの利用が許可された端末160のみ、
図13のフローチャートに従った処理を行うことができる。
【0075】
[第2の実施形態]
以下では第1の実施形態との差分について説明し、以下で特に触れない限りは第1の実施形態と同様であるものとする。第1の実施形態では、仮想位置からのパッティングラインを求めるための方法として一例を説明したが、仮想位置からのパッティングラインを求めるための方法は特定の方法に限らない。以下に、仮想位置からのパッティングラインを求めるための他の方法について、
図16のフローチャートに従って説明する。
【0076】
ステップS1601では、CPU201は、グリーン上でピン(カップの位置)を中心として3m、5mの同心円を設定する。
【0077】
ステップS1602では、CPU201は、
図17に示す如く、同心円上にボールの仮想位置Ki(i=1,2,…)を指定する。ただし、指定した仮想位置がグリーンからはみ出す場合には、該仮想位置をグリーンのエッジ上(たとえば該仮想位置から最も近いエッジ上の位置)に移動させる。
【0078】
ステップS1603では、CPU201は、仮想位置とカップの位置とを結ぶ直線(Ki直線)を設定する。
【0079】
ステップS1604では、CPU201は、
図18(a)に示す如く、Ki直線上に等間隔に、Ki直線に対して直交する複数の線分(Li1-Li10)を設定する。
【0080】
ステップS1605では、CPU201は、線分Li1-Li10のそれぞれについて相対高度を求める。たとえばCPU201は、上記のグリッドの高度からの内挿により求めても良い。
【0081】
ステップS1606では、CPU201は、右側の方が高度が高ければフックライン、左側の方が高度が高ければスライスライン、周囲の高度差が小さければ(周囲の高度差が閾値以内)ストレートライン、とする。
図18(b)に右側のパッティングラインの一例を示す。
【0082】
ステップS1607では、CPU201は、ステップS1606で決定したラインを仮想位置Kiからのパッティングラインとして登録する。
【0083】
ステップS1608では、CPU201は、全ての仮想位置についてステップS1602~S1607の処理を行ったか否かを判断する。この判断の結果、全ての仮想位置についてステップS1602~S1607の処理を行った場合には、
図16のフローチャートに従った処理は終了し、ステップS1602~S1607の処理を行っていない仮想位置が残っている場合には、処理はステップS1602に進み、ステップS1602~S1607の処理を行っていない仮想位置について以降の処理を行う。
【0084】
図16のフローチャートに従った処理によれば、距離が長くなった場合に、上記のようなスネークラインも導出することができる。
【0085】
なお、第1の実施形態では、パッティングラインとして曲線を示すことを想定していたが、ボールの仮想位置が多くなると各仮想位置に対して複数の曲線となり、互いに重なるため、ストレート、最後にフック、弱いフック、強いフックなどの文章表現とするか、特定の仮想位置を選択したときにパッティングラインを表示するなどしても良い。
【0086】
また、カップの位置Cを中心とする円として半径が異なる複数の円を設定しても良い。その場合、半径がより大きい円にはより多くの仮想位置を設定するようにしても良い。その場合、半径が異なるそれぞれの円上に設定された仮想位置に対応するアイコンが表示されることになる。これは、円の代わりに他の形状の図形(たとえば楕円)を用いた場合であっても同様である。
【0087】
また、端末160は、タッチパネル画面上に表示されたパッティングライン上の位置がゴルフプレーヤによってタッチ(指示)された場合に、該位置周辺を拡大した拡大画面を生成してタッチパネル画面に表示させても良い。拡大画面の表示に係る表示制御について、
図20のフローチャートに従って説明する。
【0088】
ステップS2001では、CPU301は、タッチパネル画面上に表示されたパッティングライン上の位置がゴルフプレーヤによってタッチされたか否かを判断する。
【0089】
この判断の結果、タッチパネル画面上に表示されたパッティングライン上の位置がゴルフプレーヤによってタッチされた場合には、処理はステップS2002に進み、タッチパネル画面上に表示されたパッティングライン上の位置がゴルフプレーヤによってタッチされていない場合には、処理はステップS2001で待機する。
【0090】
ステップS2002では、CPU301は、ゴルフプレーヤがタッチした位置周辺を拡大した拡大画面を生成し、該拡大画面をタッチパネル画面に表示させる。
【0091】
[第3の実施形態]
パッティングラインをゴルフプレーヤに提供するために端末160が行う処理について、
図21のフローチャートを用いて説明する。
図21において、
図13に示した処理ステップと同じ処理ステップには同じステップ番号を付しており、該処理ステップに係る説明は省略する。
【0092】
ステップS2104では、CPU301は、ステップS1303で特定した参照テーブルに含まれているそれぞれの仮想位置に対応するパッティングラインを表す画面を操作部304(タッチパネル画面)に表示させる。
【0093】
ステップS2105では、CPU301は、表示したパッティングラインのうちいずれかがタッチされたか否かを判断する。この判断の結果、表示したパッティングラインのうちいずれかがタッチされた場合には、処理はステップS1306に進み、いずれのパッティングラインもタッチされていない場合には、処理はステップS2105で待機する。
【0094】
ステップS2106では、CPU301は、ユーザによりタッチされたパッティングラインに関する情報を、ステップS1307と同様に、ステップS1306で取得した選択指示に応じて選択された出力方法で出力する。
【0095】
[第4の実施形態]
CPU301が、GPS受信機307が検出した現在位置に基づいてゴルフプレーヤがホールAからホールBに移動したことを検知すると、
図22に示す如く、ステップS1304で操作部304(タッチパネル画面)に表示したホールAの画面2201を、ホールBに対応する参照テーブルに含まれているそれぞれの仮想位置を表す画面2202に遷移させる表示制御を行っても良い。なお、第3の実施形態のように、操作部304(タッチパネル画面)に、ホールAのテーブルに含まれているそれぞれのパッティングラインを表す画面を表示させている場合には、CPU301は、ホールBのテーブルに含まれているそれぞれのパッティングラインを表す画面に遷移させる。
【0096】
[第5の実施形態]
本実施形態に係るパッティングライン情報提供システムの構成例を
図24のブロック図に示す。サーバ100は、保持している全ホール(18ホール、27ホール、36ホールなど)のテーブルを、ネットワーク150aを介してゴルフ場のコンピュータ装置170に対して送信する。コンピュータ装置170は、たとえば、
図2に示すハードウェア構成例を有する。コンピュータ装置170(CPU201)は、サーバ100からダウンロードしたテーブルのうち、ゴルフプレーヤの端末160に分配するテーブルを決定し、該決定したテーブルをネットワーク150bを介して該端末160に対して送信する。ネットワーク150a、150bはいずれも上記のネットワーク150と同様のネットワークである。コンピュータ装置170によるテーブルの送信処理について、
図23のフローチャートに従って説明する。
【0097】
ステップS2301では、コンピュータ装置170のCPU201は、サーバ100が保持する全ホールのテーブルを一括でダウンロードする。
【0098】
ステップS2302では、コンピュータ装置170のCPU201は、サーバ100から一括でダウンロードした全ホールのテーブルのうち端末160に分配するテーブルを決定する。
【0099】
端末160に分配するテーブルの決定方法は特定の決定方法に限らない。たとえば、コンピュータ装置170のオペレータはホールの空き状況などを考慮し、ゴルフプレーヤが課金した分の数のホールを、操作部204を操作して指定する。CPU201は、該指定されたホールのテーブルを、端末160に分配するテーブルとして決定する。
【0100】
たとえば、18ホール(1ラウンド)分の課金を行っているゴルフプレーヤには、端末160に分配するテーブルとして、18ホール分のテーブルを決定する。また、27ホール(1.5ラウンド)分の課金を行っているゴルフプレーヤには、端末160に分配するテーブルとして、27ホール分のテーブルを決定する。このようにして、端末160ごとに、分配するテーブルを決定する。
【0101】
ステップS2303では、コンピュータ装置170のCPU201は、ステップS2302で決定したホールのテーブルを、端末160に対して送信する。
【0102】
本実施形態に係るパッティングライン情報提供システムによれば、ゴルフプレーヤは、全ホールのテーブルのうち自身がプレーするホールのテーブルのみ取得するので、メモリの消費量や通信量を低減させることができる。
【0103】
また、上記の各実施形態で説明した処理の一部もしくは全部を適宜組み合わせても良い。
【0104】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。