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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013442
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240125BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240125BHJP
   F16C 33/48 20060101ALI20240125BHJP
   F16C 33/56 20060101ALI20240125BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/38
F16C33/48
F16C33/56
F16C33/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115528
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 有人
(72)【発明者】
【氏名】服部 直志
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA50
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA57
3J701CA40
3J701EA01
3J701EA63
3J701EA74
3J701FA32
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】車体重量の大きい車両に使用されて、グリース内の摩耗粉を効率的に捕集する。
【解決手段】内周に複列の外側転走面2a・2bを有する外輪2と、外周に複列の内側転走面4a・4bを有する内輪4A・4Bと、内輪4A・4Bと外輪2のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころ5A・5Bと、を備えた車輪用軸受装置1であって、内輪4A・4Bは、内側転走面4a、4bと当該内側転走面4a・4bの一方側の鍔面4e・4f・4c・4dとの間に設けられたぬすみ部13、14,15.16を有し、ぬすみ部13、14,15.16には、グリース潤滑によって発生する摩耗粉を捕集する凹部20が設けられており、凹部20に、摩耗粉を吸着するための磁石21が設けられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面を有する外方部材と、
外周に複列の内側転走面を有する内方部材と、
この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころと、を備えた車輪用軸受装置であって、
前記いずれかの転走面のインナー側もしくはアウター側の隅部にぬすみ部を設け、
前記ぬすみ部には、グリース潤滑によって発生する摩耗粉を捕集する凹部が設けられており、
前記凹部に、前記摩耗粉を吸着するための磁力発生部が設けられる、車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記磁力発生部は、前記凹部の壁面に埋設された磁性体である、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記磁力発生部は、前記凹部の壁面を磁化することにより形成される、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
内周に複列の外側転走面を有する外方部材と、
外周に複列の内側転走面を有する内方部材と、
この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころと、を備えた車輪用軸受装置であって、
前記いずれかの転走面において、インナー側もしくはアウター側の鍔面と連続する面であって、軸方向と平行な面に、グリース潤滑によって発生する摩耗粉を吸着するための磁力発生部が設けられる、車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記磁力発生部は、前記鍔部外径面に埋設された磁性体である、請求項4に記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記磁力発生部は、前記鍔部外径面を磁化することにより形成される、請求項4に記載の車輪用軸受装置。
追加請求項
【請求項7】
前記磁力発生部を固定輪側に設けたことを特徴とする請求項1または4の車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記複列の円すいころを保持する保持器を備え、
前記保持器は、磁化可能な金属で構成されており、
前記保持器の一部を磁化することにより、摩耗粉を吸着するための磁力発生部が設けられる、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。この車輪用軸受装置は、車体取付フランジを有している外方部材と、ハブ輪に一つの内輪が嵌合されている内方部材と、外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に介装される複数の転動体と、で構成された第3世代構造が主流となっている。例えば、ピックアップトラック又は大型のSUV(Sports Utility Vehicle)など比較的車体重量の大きい車両の軸受には、その負荷荷重に耐えうるように転動体が円すいころである円すいころ軸受が使用される。
【0003】
比較的車体重量の大きい車両に車輪用軸受装置を使用する場合、通常の乗用車用軸受と比較して、過酷な環境下での使用に耐え、長距離走行することが可能なように長寿命化が求められている。例えば車輪用軸受装置内部の摩耗により摩耗粉が発生することがあるが、当該摩耗粉が軸受内周面と接触することにより、内周面が傷つき車輪用軸受装置の寿命が短くなることがある。
【0004】
当該摩耗粉を除去する機構として、油潤滑の場合には、潤滑油の循環経路にフィルタを設けて摩耗粉を捕集する構成が公知となっている(例えば特許文献1参照)。また、フィルタに隣接して磁石を設けて、磁力によって摩耗粉を捕集する構成が公知となっている。
【0005】
しかし、グリース潤滑の場合には通常油潤滑のようにグリースを循環させることはできないため、フィルタによって摩耗粉を捕集する構成は採用されることはなかった。また、鉄道車両用軸受としてはフレッティング摩耗で発生した摩耗粉を捕集する閉塞空間のポケット部を設けることが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2628526号公報
【特許文献2】特許第5687537号公報
【特許文献3】特許第4076708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3においては、鉄道車両用軸受であるため、摩耗粉の流動性があることから、閉塞空間のポケット部へ摩耗粉が移動する可能性が高いが、自動車に車輪用軸受装置を使用する場合、摩耗粉が移動し難いため捕集のための空間を設けても摩耗粉の捕集を行い難い場合があった。
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、車体重量の大きい車両に使用されて、グリース内の摩耗粉を効率的に捕集することができる車輪用軸受装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、内周に複列の外側転走面を有する外方部材と、
外周に複列の内側転走面を有する内方部材と、
この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の円すいころと、を備えた車輪用軸受装置であって、
前記いずれかの転走面のインナー側もしくはアウター側の隅部にぬすみ部を設け、
前記ぬすみ部には、摩耗粉を捕集する凹部が設けられており、
前記凹部に、摩耗粉を吸着するための磁力発生部が設けられるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ぬすみ部には、摩耗粉を捕集する凹部が設けられており、凹部に、摩耗粉を吸着するための磁力発生部が設けられることにより、磁力によってグリース内の摩耗粉を凹部の内部に効率的に捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車輪用軸受装置の第一実施形態における全体構成を示す断面図。
図2】第一実施形態におけるハブ輪を示す断面図。
図3】研削加工を施す際のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図4】第一実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図5】第一実施形態におけるぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図6】第二実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図7】第二実施形態におけるぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図8】第三実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図9】第三実施形態におけるぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図10】第四実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図11】第四実施形態におけるぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図12】第五実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図13】第五実施形態における外輪側のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図14】第六実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図15】第六実施形態における外輪側のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図16】第七実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図17】第七実施形態における外輪側のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図18】第八実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図19】第八実施形態における外輪側のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
図20】第九実施形態における内輪および外輪を示す断面図。
図21】第九実施形態における外輪側のぬすみ部とその周辺を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図1から図3を用いて、車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。なお、以下の説明において、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
【0013】
図1に示されるように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持する。車輪用軸受装置1は、外輪2、ハブ輪3、一対の内輪4A・4B、複列の円すいころ5A・5B、インナー側シール部材6およびアウター側シール部材7を具備する。
【0014】
図1に示されるように、外方部材である外輪2は、ハブ輪3と内輪4A・4Bとを支持する。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが設けられている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材7を嵌合可能なアウター側開口部2bが設けられている。外輪2の内周面には、軸方向の外側に向かうに従って拡径するテーパ状に形成されているインナー側の外側転走面2cとアウター側の外側転走面2dとが周方向に互いに平行になるように設けられている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に設けられている。
【0015】
内方部材は、ハブ輪3と内輪4A・4Bとによって構成されている。ハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持する。ハブ輪3は、略円筒状に形成され、例えば、S53C等の中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが設けられている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に設けられている。車輪取り付けフランジ3bには、ハブ輪3と車輪又はブレーキ装置とを締結するためのハブボルト3cが圧入されている。
【0016】
内輪4A・4Bは、ハブ輪3の小径段部3aに圧入されている。インナー側には内輪4Aが配置され、アウター側には内輪4Bが配置され、内輪4Aのアウター側端面と内輪4Bのインナー側端面とが突き合せた状態で圧入されている。内輪4A・4Bの外周面には、内側転走面4a・4bが設けられている。
【0017】
二列の転動体であるインナー側の円すいころ5Aとアウター側の円すいころ5Bとは、ハブ輪3および内輪4A・4Bを回転自在に支持するものである。複数のインナー側の円すいころ5Aとアウター側の円すいころ5Bとは、保持器9・9によって環状に保持されている。
【0018】
保持器9は、複数の円すいころ5A、5Bを所定の間隔で収容保持する複数のポケットを有する容器であり、金属によって形成されている。保持器9は、軸方向に離れた大径リング部9a及び小径リング部9bと、大径リング部9aと小径リング部9bとの間に所定の間隔で設けられた円すいころ5A・5Bを収容保持する複数のポケットを区画する柱部9cとを備えている。
【0019】
インナー側の円すいころ5Aは、内輪4Aの内側転走面4aと、外輪2のインナー側の外側転走面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側の円すいころ5Bは、内輪4Bの内側転走面4bと、外輪2のアウター側の外側転走面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側の円すいころ5Aとアウター側の円すいころ5Bとは、外輪2に対して内輪4A・4Bおよび内輪4A・4Bと相対回転不能に固定されたハブ輪3を回転自在に支持している。すなわち、外輪2は、固定輪であり、内輪4A・4B及びハブ輪3で構成された駆動輪は固定輪に対して回転自在に支持されるように構成されている。
【0020】
図1に示されるように、アウター側シール部材7は、外輪2とハブ輪3と内輪4A・4Bとによって形成された環状空間のうちアウター側開口端を塞いでいる。
【0021】
図1に示されるように、インナー側シール部材6は、外輪2とハブ輪3と内輪4A・4Bとによって形成された環状空間のうちインナー側開口端を塞いでいる。
【0022】
次に、図2から図4を用いて、車輪用軸受装置1における内輪4Bのぬすみ部13・14および内輪4Aのぬすみ部15・16について詳細に説明する。
【0023】
図2および図3に示されるように、内輪4Bには、アウター側の円すいころ5Bとの干渉を回避するため、円すいころ5Bの大端面5b1(図4参照)を受けて案内する鍔面4cが設けられている。鍔面4cは、内側転走面4bに対して略垂直方向に形成される平坦な面である。鍔面4cは、内側転走面4bのアウター側の隅部において連続するように形成されている。内輪4Bには、この鍔面4cとアウター側の内側転走面4bとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部13が形成されている。ぬすみ部13は、断面視において略円弧状に窪んでいる。
【0024】
ぬすみ部13は、断面視略円弧状の第1円弧面13aと、この第1円弧面13aにつながる断面視略円弧状の第2円弧面13bとを有している。第1円弧面13aは、鍔面4dの径方向内側の端部につながっている。第2円弧面13bは、内側転走面4bのアウター側端部につながっている。なお、第1円弧面13aは、略円弧形状になっており、この略円弧形状の曲率半径を「曲率半径Rx」と定義する。また、第2円弧面13bは、略円弧形状になっており、この略円弧形状の曲率半径を「曲率半径Ry」と定義する。すなわち、ぬすみ部13は、二つのR面が連続する2段の曲率半径Rxの第1円弧面13aと曲率半径Ryの第2円弧面13bとを有している。この2段の曲率半径Rx、Ryからなる第1円弧面13a、第2円弧面13bにおいて、第2円弧面13bの開始位置(第2円弧面13bのアウター側端部)は、図3中の符号Pで示す位置となる。第2円弧面13bは、研削加工の際に、砥石17の径方向内側の端部に有するテーパ状の砥石外径面が干渉(接触)しないように設けられた研削逃げである。
【0025】
また、図4に示されるように、内輪4Bには、インナー側の円すいころ5Bとの干渉を回避するため、円すいころ5Bの小端面5b2を受けて案内する鍔面4dが設けられている。鍔面4dは、内側転走面4bに対して略垂直方向に形成される平坦な面である。鍔面4dは、内側転走面4bのインナー側の隅部において連続するように形成されている。内輪4Bには、この鍔面4dとインナー側の内側転走面4bとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部14が形成されている。ぬすみ部14は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部14の形状は、ぬすみ部13の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0026】
また、図4に示されるように、内輪4Aには、インナー側の円すいころ5Aとの干渉を回避するため、円すいころ5Aの大端面5a1を受けて案内する鍔面4eが設けられている。鍔面4eは、内側転走面4aに対して略垂直方向に形成される平坦な面である。鍔面4eは、内側転走面4aのインナー側の隅部において連続するように形成されている。内輪4Aには、この鍔面4eとインナー側の内側転走面4aとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部15が形成されている。ぬすみ部15は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部15の形状は、ぬすみ部13の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0027】
また、図4に示されるように、内輪4Aには、アウター側の円すいころ5Aとの干渉を回避するため、円すいころ5Aの小端面5a2を受けて案内する鍔面4fが設けられている。鍔面4fは、内側転走面4aに対して略垂直方向に形成される平坦な面である。鍔面4fは、内側転走面4aのアウター側の隅部において連続するように形成されている。内輪4Aには、この鍔面4fとアウター側の内側転走面4aとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部16が形成されている。ぬすみ部16は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部16の形状は、ぬすみ部13の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0028】
次に、内輪4A・4Bにおける摩耗粉を捕集するための構成について説明する。
【0029】
[第一の実施形態]
第一の実施形態においては、図4および図5に示されるように、ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に摩耗粉を捕集する凹部20が設けられている。ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に設けられた凹部20は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部13に設けられた凹部20について説明する。凹部20は、ぬすみ部13の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部13の表面と連通している。
【0030】
凹部20の底面には、磁力発生部である磁石21が埋設されている。磁石21は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引し凹部20内部に捕集する部材である。磁石21は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石21の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0031】
[第二の実施形態]
第二の実施形態においては、図6および図7に示されるように、ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に摩耗粉を捕集する凹部20が設けられている。ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に設けられた凹部20は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部13に設けられた凹部20について説明する。凹部20は、ぬすみ部13の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部13の表面と連通している。
【0032】
凹部20の壁面の一部は磁力発生部を形成するように磁化されている。本実施形態においては、図7の薄墨部分で示されるように、凹部20の壁面のうち、ぬすみ部13を形成する壁面から最も離れた位置の壁面を含んで磁化されている。磁化された底面の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0033】
[第三の実施形態]
第三の実施形態においては、図8および図9に示されるように、内輪4A・4Bの鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fと連続する面であって、軸方向と平行な面の一部に磁性体が形成されている。鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fと連続する面であって、軸方向と平行な面には、磁力発生部である磁石22が埋設されている。鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fと連続する面であって、軸方向と平行な面に設けられた磁石22は全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面4cと連続する面であって、軸方向と平行な面に設けられた磁石22について説明する。
【0034】
磁石22は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引して凹部20に捕集する部材である。磁石22は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石22の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0035】
[第四の実施形態]
第四の実施形態においては、図10および図11に示されるように、鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fと連続する面であって、軸方向と平行な面の一部を磁化することにより磁性体が形成されている。磁化された鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fと連続する面であって、軸方向と平行な面は全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面4cと連続する面であって、軸方向と平行な面について説明する。
【0036】
本実施形態においては、図11の薄墨部分で示されるように、鍔面4cのうち、ぬすみ部13との連結部を含んで磁化されている。磁化された鍔面4cの磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0037】
[第五の実施形態]
第五の実施形態においては、図12および図13に示されるように、保持器9の一部を磁化することにより磁性体が形成されている。
【0038】
本実施形態においては、図13の薄墨部分で示されるように、保持器9のうち、大径リング部9aの端部及び小径リング部9bの端部が磁化されている。磁化された保持器9の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0039】
また第五の実施形態においては、第四の実施形態と同様、鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fの一部を磁化することにより磁性体が形成されている。磁化された鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fは全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面4cについて説明する。
【0040】
本実施形態においては、図11の薄墨部分で示されるように、鍔面4cのうち、ぬすみ部13との連結部を含んで磁化されている。磁化された鍔面4cの磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0041】
[第六の実施形態]
第六の実施形態において、図14および図15に示されるように、固定輪である外輪2には、アウター側の円すいころ5Bとの干渉を回避するため、円すいころ5Bの大端面5b1(図1参照)を受けて案内する鍔面2fが設けられている。鍔面2fは、外側転走面2dに対して傾斜をつけた方向に形成される平坦な面である。外輪2には、この鍔面2fとアウター側の外側転走面2dとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部23が形成されている。ぬすみ部23は、断面視において略円弧状に窪んでいる。
【0042】
また、固定輪である外輪2には、アウター側の円すいころ5Bとの干渉を回避するため、円すいころ5Bの小端面5b2を受けて案内する鍔面2gが設けられている。鍔面2gは、外側転走面2dに対して傾斜をつけた方向に形成される平坦な面である。外輪2には、この鍔面2gとアウター側の外側転走面2dとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部24が形成されている。ぬすみ部24は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部24の形状は、ぬすみ部23の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0043】
また、固定輪である外輪2には、インナー側の円すいころ5Aとの干渉を回避するため、円すいころ5Aの大端面5a1(図1参照)を受けて案内する鍔面2hが設けられている。鍔面2hは、外側転走面2cに対して傾斜をつけた方向に形成される平坦な面である。外輪2には、この鍔面2hとインナー側の外側転走面2cとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部25が形成されている。ぬすみ部25は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部25の形状は、ぬすみ部23の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0044】
また、インナー側の円すいころ5Aとの干渉を回避するため、円すいころ5Aの小端面5a2(図1参照)を受けて案内する鍔面2iが設けられている。鍔面2iは、外側転走面2cに対して傾斜をつけた方向に形成される平坦な面である。外輪2には、この鍔面2iとインナー側の外側転走面2cとが交わる部分である隅部に周方向に沿って凹湾曲状のぬすみ部26が形成されている。ぬすみ部26は、断面視において略円弧状に窪んでいる。なお、ぬすみ部26の形状は、ぬすみ部23の形状と略同じであるから説明を省略する。
【0045】
ぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26に摩耗粉を捕集する凹部30が設けられている。ぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26に設けられた凹部30は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部23に設けられた凹部30について説明する。凹部30は、ぬすみ部23の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部23の表面と連通している。
【0046】
凹部30の底面には、磁力発生部である磁石31が埋設されている。磁石31は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引し凹部30内部に捕集する部材である。磁石31は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石31の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部30の内部に効率的に捕集することができる。
【0047】
このように固定輪である外輪2のぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26の凹部30に磁石31が埋設されることにより、凹部30に磁力発生部が配置される。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を誘引し、捕集した摩耗紛を保持することができる。さらに、固定輪である外輪2には遠心力が働かないため、回転により捕集した摩耗紛を取りこぼすことなく保持した状態に保つことができる。
【0048】
また第六の実施形態においては、第一の実施形態と同様に、図4および図5に示されるように、ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に摩耗粉を捕集する凹部20が設けられている。ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に設けられた凹部20は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部13に設けられた凹部20について説明する。凹部20は、ぬすみ部13の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部13の表面と連通している。
【0049】
凹部20の底面には、磁力発生部である磁石21が埋設されている。磁石21は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引し凹部20内部に捕集する部材である。磁石21は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石21の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0050】
[第七の実施形態]
第七の実施形態においては、図16および図17に示されるように、ぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26に摩耗粉を捕集する凹部30が設けられている。ぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26に設けられた凹部30は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部23に設けられた凹部30について説明する。凹部30は、ぬすみ部23の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部23の表面と連通している。
【0051】
凹部30の壁面の一部は磁力発生部を形成するように磁化されている。本実施形態においては、凹部30の壁面のうち、ぬすみ部23を形成する壁面から最も離れた位置の壁面を含んで磁化されている。磁化された底面の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部30の内部に効率的に捕集することができる。
【0052】
このように固定輪である外輪2のぬすみ部23、ぬすみ部24、ぬすみ部25、ぬすみ部26の凹部30の壁面の一部を磁化することにより、凹部30に磁力発生部が配置される。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を誘引し、捕集した摩耗紛を保持することができる。さらに、固定輪である外輪2には遠心力が働かないため、回転により捕集した摩耗紛を取りこぼすことなく保持した状態に保つことができる。
【0053】
また、第七の実施形態においては、第二の実施形態同様、図6および図7に示されるように、ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に摩耗粉を捕集する凹部20が設けられている。ぬすみ部13、ぬすみ部14、ぬすみ部15、ぬすみ部16に設けられた凹部20は全て同様の構成であるため、ここでは、ぬすみ部13に設けられた凹部20について説明する。凹部20は、ぬすみ部13の壁面を一部切削して設けられており、ぬすみ部13の表面と連通している。
【0054】
凹部20の壁面の一部は磁力発生部を形成するように磁化されている。本実施形態においては、図7の薄墨部分で示されるように、凹部20の壁面のうち、ぬすみ部13を形成する壁面から最も離れた位置の壁面を含んで磁化されている。磁化された底面の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0055】
[第八の実施形態]
また、第八の実施形態においては、図18および図19に示されるように、鍔面2f、鍔面2hの一部に磁性体が形成されている。鍔面2f、鍔面2hには、磁力発生部である磁石32が埋設されている。鍔面2f、鍔面2hに設けられた磁石32は全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面2fに設けられた磁石32について説明する。
【0056】
磁石32は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引してぬすみ部23に捕集する部材である。磁石32は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石32の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部30の内部に効率的に捕集することができる。
【0057】
このように固定輪である外輪2の鍔面2f、鍔面2hに磁石32を埋設することにより、鍔面2f、鍔面2hに磁力発生部が配置される。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を誘引し、捕集した摩耗紛を保持することができる。さらに、固定輪である外輪2には遠心力が働かないため、回転により捕集した摩耗紛を取りこぼすことなく保持した状態に保つことができる。
【0058】
また第八の実施形態においては、第三の実施形態と同様、図8および図9に示されるように、鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fの一部に磁性体が形成されている。鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fには、磁力発生部である磁石22が埋設されている。鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fに設けられた磁石22は全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面4cに設けられた磁石22について説明する。
【0059】
磁石22は、鉄などの磁性を帯びる金属を磁力により誘引して凹部20に捕集する部材である。磁石22は永久磁石で構成されており、例えば、アルニコ磁石またはフェライト磁石で形成されている。例えば、磁石22の磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
【0060】
[第九の実施形態]
また、第九の実施形態においては、図20および図21に示されるように、鍔面2f、鍔面2hの一部を磁化することにより磁性体が形成されている。磁化された鍔面2f、鍔面2hは全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面2fにについて説明する。
【0061】
本実施形態においては、鍔面2fのうち、アウター側の外側転走面2dが交わる部分である隅部の壁面を含んで磁化されている。磁化された鍔面2fの磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部30の内部に効率的に捕集することができる。
【0062】
このように固定輪である外輪2の鍔面2f、鍔面2hの一部を磁化することにより、鍔面2f、鍔面2hに磁力発生部が配置される。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を誘引し、捕集した摩耗紛を保持することができる。さらに、固定輪である外輪2には遠心力が働かないため、回転により捕集した摩耗紛を取りこぼすことなく保持した状態に保つことができる。
【0063】
また、第九の実施形態においては、第四の実施形態と同様、図10および図11に示されるように、鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fの一部を磁化することにより磁性体が形成されている。磁化された鍔面4c、鍔面4d、鍔面4e、鍔面4fは全て同様の構成であるため、ここでは、鍔面4cについて説明する。
【0064】
本実施形態においては、図11の薄墨部分で示されるように、鍔面4cのうち、ぬすみ部13との連結部を含んで磁化されている。磁化された鍔面4cの磁力はグリース潤滑に用いられるグリースに含まれる摩耗粉を誘引することができるのに十分な磁力を有する。これにより、グリースに含まれる摩耗粉を凹部20の内部に効率的に捕集することができる。
比較的車体重量の大きい車両、例えばトラックのような定期的に軸受メンテナンスを行う車両に本構造を適用すれば、メンテナンス時に付着した摩耗粉の除去を行うことで、摩耗粉噛みこみによる、剥離の可能性を更に下げることができる。
【0065】
以上、本実施形態に係る車輪用軸受装置1は、ハブ輪3に一対の内輪4A・4Bが圧入固定された内輪回転の第2世代構造の車輪用軸受装置として説明したがこれに限定されるものではなく、例えば、ハブ輪3の外周に転動体である複列の円すいころ5A・5Bの内側転走面が直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置であってもよい。また、上述の実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2a インナー側開口部
2b アウター側開口部
2c 外側転走面
2d 外側転走面
2e フランジ
2f 鍔面
2g 鍔面
2h 鍔面
2i 鍔面
3 ハブ輪
3a 小径段部
3b フランジ
3c ハブボルト
4A 内輪
4B 内輪
4a 内側転走面
4b 内側転走面
4c 鍔面
4d 鍔面
4e 鍔面
4f 鍔面
5A 円すいころ
5B 円すいころ
5a1 大端面
5a2 小端面
5b1 大端面
5b2 小端面
9 保持器
9a 大径リング部
9b 小径リング部
9c 柱部
13、14、15、16 ぬすみ部
20 凹部
21 磁石
22 磁石
23、24、25、26 ぬすみ部
30 凹部
31 磁石
32 磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21