(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134428
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】異常検知システム、異常検知方法、及び異常検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240926BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240926BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044728
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 崇士
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝明
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA09
5L049AA09
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】業務データの異常を自動で検知して、早期発見・対処を行うことが可能な異常検知システム、異常検知方法、及び異常検知プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施の形態に係る異常検知システムは、指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知手段と、異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段を備えている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備えた異常検知システムであって、
前記制御部は、
1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、
指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知手段と、
異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段を備えたことを特徴とする異常検知システム。
【請求項2】
前記案件データは、工事データを含み、前記特定条件は、工種、工期、又は公民区分を含み、前記経過率は、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率を含み、前記案件進捗率は、現時点で発生している発生原価/(原価着地予算+現時点で発生している発生原価)で算出される累計進捗率を含み、
前記工事データは、工事、組織、1又は複数の特定条件、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率を含むことを特徴とする請求項1に記載の異常検知システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、異常として検知した工事、検知方法、異常と判断した累計進捗率を含むメッセージを表示することを特徴とする請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、工期進捗率別に、母集団別の過去の工事又は過去の全工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、会計年月別に、過去の工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示することを特徴とする請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、指定した決算期内で、組織別の売上実績及びその売上予測の推移を示す表を表示することを特徴とする請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、
異常が発生した工事を管轄する組織の工事別の売上実績及びその売上予測の推移を示す表を表示することを特徴とする請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項8】
制御部を備えた情報処理装置が実行する異常検知方法であって、
前記制御部は、
1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、
前記制御部において実行される、
指定される特定条件別に、過去の業務データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知工程と、
異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、
を含むことを特徴とする異常検知方法。
【請求項9】
制御部を備えた情報処理装置に実行させるための異常検知プログラムであって、
前記制御部は、
1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、
前記制御部において、
指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知工程と、
異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、
を実行させるための異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知システム、異常検知方法、及び異常検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、工事業界は工事に関するデータに対して、異常が発生するケースが多い業界である。膨大なデータの中から異常を確認する必要があるので、人の手で確認できる範囲を超えてきている。従来、業務データの異常を検知するシステムとして、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、案件(業務)データの異常を自動で検知して、早期発見・対処を行うことに関して何等記載されていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みて、案件データの異常を自動で検知して、早期発見・対処を行うことが可能な異常検知システム、異常検知方法、及び異常検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御部を備えた異常検知システムであって、前記制御部は、1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知手段と、異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記案件データは、工事データを含み、前記特定条件は、工種、工期、又は公民区分を含み、前記経過率は、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率を含み、前記案件進捗率は、現時点で発生している発生原価/(原価着地予算+現時点で発生している発生原価)で算出される累計進捗率を含み、前記工事データは、工事、組織、1又は複数の特定条件、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率を含むことにしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、異常として検知した工事、検知方法、異常と判断した累計進捗率を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、工期進捗率別に、母集団別の過去の工事又は過去の全工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、会計年月別に、過去の工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示することにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、指定した決算期内で、組織別の売上実績及びその売上予測の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記表示制御手段は、前記工事データに基づいて、前記分析用画面の所定のエリアに、異常が発生した工事を管轄する組織の工事別の売上実績及び売上予測の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御部を備えた情報処理装置が実行する異常検知方法であって、前記制御部は、1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、前記制御部において実行される、指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、業務データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知工程と、異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、制御部を備えた情報処理装置に実行させるための異常検知プログラムであって、前記制御部は、1又は複数の特定条件、経過率、案件進捗率を含む案件データにアクセス可能に構成されており、前記制御部において、指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知工程と、異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御工程と、を実行させるための異常検知プログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、案件データの異常を自動で検知して、早期発見・対処を行うことが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、不正系のイメージの例を示す図である。
【
図2】
図2は、好成績系のイメージの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の適用可能範囲(利用可能業界)を説明するための図である。
【
図4】
図4は、課題(1)に対する施策・効果を説明するための図である。
【
図5】
図5は、課題(2)に対する施策・効果を説明するための図である。
【
図6】
図6は、課題(3)に対する施策・効果を説明するための図である。
【
図7】
図7は、課題(4)に対する施策・効果を説明するための図である。
【
図8】
図8は、分析初期画面の表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、分析用画面の表示例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態の異常検知システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態の異常検知システムの制御部の全体の処理の概略を説明するためのフローを示す図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図16】
図16は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図17】
図17は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図18A】
図18Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図18B】
図18Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図19A】
図19Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図19B】
図19Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図20A】
図20Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図20B】
図20Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図21】
図21は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図22A】
図22Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図22B】
図22Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図23A】
図23Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図23B】
図23Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図24A】
図24Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図24B】
図24Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図25A】
図25Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図25B】
図25Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図26A】
図26Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図26B】
図26Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図27A】
図27Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図27B】
図27Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図28A】
図28Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図28B】
図28Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図29A】
図29Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図29B】
図29Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図30】
図30は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図31】
図31は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図32】
図32は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図33A】
図33Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図33B】
図33Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図34】
図34は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図35】
図35は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図36】
図36は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図37】
図37は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図38】
図38は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図39】
図39は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図40】
図40は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図41】
図41は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図42A】
図42Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図42B】
図42Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図43】
図43は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図44】
図44は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図45】
図45は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図46A】
図46Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図46B】
図46Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図47A】
図47Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図47B】
図47Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図48A】
図48Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図48B】
図48Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図49A】
図49Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図49B】
図49Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図50】
図50は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図51】
図51は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図52】
図52は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図53A】
図53Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図53B】
図53Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図54】
図54は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図55】
図55は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図56】
図56は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図57】
図57は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図58A】
図58Aは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図58B】
図58Bは、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図59】
図59は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図60】
図60は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図61】
図61は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図62】
図62は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図63】
図63は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図64】
図64は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図65】
図65は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図66】
図66は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図67】
図67は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図68】
図68は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図69】
図69は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図70】
図70は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図71】
図71は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図72】
図72は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図73】
図73は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図74】
図74は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【
図75】
図75は、本実施の形態における異常検知システムの制御部の処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施の形態となる異常検知システムを、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
[1.概要]
本発明の概要を、(1-1.背景・前提)、(1-2.課題に対する施策・効果)、(1-3.分析画面)の順に説明する。
【0019】
(1-1.背景・前提)
図1~
図3を参照して、背景・前提を説明する。従来より、工事業界では工事に関するデータに対して、異常が発生するケースが多い業界である。膨大なデータの中から異常を確認する必要があるので、人の手で確認できる範囲を超えてきており、人の手以外の手段で早期発見・対処できる仕組みが求められている。
【0020】
本実施の形態では、データ異常の早期発見・対処への対策、人の手によらない対策として異常パターンをシナリオ化して、定期的に自動で検知するシステムを構築する。
【0021】
具体的には、本実施の形態では、業務システムにおけるトランザクションデータ内で、不正により登録された業務データを自動で検知して通知する。その際、過去の工事実績より、自社が管理する工事の近似的な出来高を算出し、未完成工事の実績と比較して大きな乖離を示す工事を異常として検知する。また、近似的な工事の出来高の曲線と異常検知された工事の出来高曲線を確認可能な画面を出力する。加えて、工事異常は組織の数字に影響するため、組織や工事毎の期別の実績を確認可能な画面を出力する。
【0022】
本実施の形態によれば、膨大な工事に関連する情報の中から定期的に不正を検知でき、未完成工事が将来たどる出来高の推移予測値や、これから発生しうる工事の作業負荷の度合いを確認できる。また、期別の組織毎の着地予想や、工事の月別の出来高推移の傾向を細かく分析できる。
【0023】
ここでは、一例として、工事別の進捗を管理する「進行基準売上」を実施している建設業界の企業を対象として利用することを想定する。
【0024】
建設業界における工事の売上計上基準について以下の2種の計上方法が存在する。
(1)進行基準売上は、想定している原価金額の着地予想に対する、工事仕掛中に計上した原価積上金額の率に合わせて売上を計上する方法である。
(2)完成工事売上は、工事が完成した段階で売上を計上する方法である。
【0025】
データ異常のパターンとしては下記のようなものが考えられる。
・不正系は、工事原価付け替え、原価未計上、売上計上延長等が考えられる。
・好成績系は、前倒し工事等が考えられる。
【0026】
いずれのパターンも当てはまる特徴として、「工事進捗率への影響」という点に着目する。過去の工事の進捗率推移の近似線=「自社が工事する際に基本的にとおる進捗率推移」という情報として、参考値として利用する過去の工事の進捗率推移の近似線と現在の工事とのずれが大きいものは、進捗率が過去の傾向と異なっているという見方ができるため、異常という捉え方が可能である。
【0027】
図1は、不正系のイメージの例を示す図である。
図1は、出来高曲線のグラフを示しており、横軸は、工期進捗率(%)、縦軸は、累積進捗率(%)を示しており、過去の工事の進捗率推移の近似曲線と、工事の出来高がプロットされている。同図では、近似曲線と比較して進捗率が異常に低迷しており、不正系に該当する可能性がある。
【0028】
図2は、好成績系のイメージの例を示す図である。
図2は、出来高曲線のグラフを示しており、横軸は、工期進捗率(%)、縦軸は、累積進捗率(%)を示しており、過去の工事の進捗率推移の近似曲線と、工事の出来高がプロットされている。同図では、近似曲線と比較して、工事進捗率が異常に増加しており、好成績系に該当する可能性がある。
【0029】
ここで、工期進捗率、出来高、工事進捗率(累計進捗率)を説明する。
・工期進捗率は、工事の工期に対する現会計年月時点の月単位で見た進捗率を指す。例えば、12か月工期・1月工事開始・12月工事完成の工事があると想定した場合、現在5月とすると、工期進捗率=5/12≒42%(%の少数以下は四捨五入計算)となる。
・出来高は、一般的には工事の売上額を指す進行基準売上の場合、工事の売上額=累計進捗率に合わせた工事売上額となる。
・工事進捗率(累計進捗率)は、工事毎の実際の進捗率を指す。進捗率は基本、原価の現時点の積み上げとこの先着地予想(工事完成までに発生する想定の原価金額)の合計に対する現時点の原価の積み上げ度合を指すことが多い。例えば、原価着地予算:1000円、現時点の発生原価:500円とした場合、累計進捗率=500/(500+1000)≒33%となる。
【0030】
以降はグラフ説明がメインになるため、時系列説明がわかりやすいように累計進捗率という文言を使用して説明する。
【0031】
図3は、本発明の適用可能範囲(利用可能業界)を説明するための図である。本明細書では、建設業向けの実施例を一例として説明を行う。本発明は、建築業界だけではなく、
プロジェクト(案件)管理を行っている他の企業・業界全般に対して適用可能である。
図3に、建築業界以外の他業界(ソフトウェア開発、広告・メディア業等)への展開を視野に入れた場合の本明細書上の用語別概念のつながりを示す。
【0032】
「案件(業務)」には、プロジェクトが含まれ、プロジェクトにはさらに、工事、開発タスク、制作コンテンツ等が含まれる。「特定条件」には、プロジェクト種別/期間が含まれ、プロジェクト種別/期間には、工種/工期/公民区分、システム種別/開発期間,コンテンツ媒体/制作期間等が含まれる。「案件進捗」には、プロジェクト進捗が含まれ、プロジェクト進捗には、出来高、完了工数,完成高等が含まれる。
【0033】
このように、本発明の異常検知システムは、建設業界に限られるものではなく、例えば、プロジェクト(案件)管理している他の業界にも適用可能である。
【0034】
(1-2.課題に対する施策・効果)
課題(1)~(4)に対する施策・効果を
図4~
図7を参照して説明する。
【0035】
(課題(1))
図4は、課題(1)に対する施策・効果を説明するための図である。
図4を参照して、課題(1)に対する施策・効果を説明する。
【0036】
工期・工種といった特定単位で出来高が切り替わる場合にその単位別に出来高の状況と異常の分析を行うことは、不可能に等しい。特定条件下の出来高を求める場合は、以下の課題がある。
・特定の条件を定めて膨大なデータより集計する必要があるため、計算コストがかかる計算ミス・データ参照ミスのリスクがある。
・事前に「出来高の特徴が異なるとわかっている特定条件」が判明しているケースは少なく、複数単位に分けて集計確認してみて特徴を捉える必要がある。よって、作業コストをかけたわりに得られる効果が低いケースが発生する。
【0037】
これに対する施策として、自動実行による特定条件単位の出来高を算出し、特定条件の指定を変更するのみで、指定した条件が「出来高の特徴が異なるとわかっている特定条件」となるか確認を可能とする。
【0038】
これにより、自社が持つ工事の出来高について、どの単位で出来高の特徴が異なっているのか分析が容易になったり、早期に似た出来高となる工事に絞って確認できるようになる為、より正確な出来高の異常を捉えられるようになったりする。
【0039】
(課題(2))
図5は、課題(2)に対する施策・効果を説明するための図である。
図5を参照して、課題(2)に対する施策・効果を説明する。
【0040】
過去全ての工事に関する工期中の出来高の推移傾向を定期的にチェックすることは現実的ではなく、不可能に等しい。全件工事の出来高実績を参照しようとした場合、以下のような課題がある。
・膨大なデータより出来高に関する情報を抜粋する必要があり、作業コストがかかりミスが発生する。
・出来高推移の算出には、専門スキルが必要となるため、データ構造の理解に加えて、時系列の出来高の算出が必要となる。
【0041】
よって、傾向把握には、定期的な確認が必要なため、その都度上記2点のリスクが発生する。
【0042】
これに対する施策として、システムによる定期的な過去の全工事の出来高をチェックし、過去の全工事の出来高の推移を可視化できるようにシステム側で計算を実施する。さらに、分析用の画面に出来高の推移を可視化するグラフを用意した。
【0043】
これにより、過去の工事がどのような推移を辿っているか、1つのグラフ確認で把握可能。作業コスト・ミスのリスクを削減して、出来高の推移の可視化を行う専門的なスキルも不要となる。
【0044】
(課題(3))
図6は、課題(3)に対する施策・効果を説明するための図である。
図6を参照して、課題(3)に対する施策・効果を説明する。
【0045】
仕掛中の工事の出来高推移と過去の全工事の出来高推移の傾向比較を行うためには、過去全工事の工期中の出来高の近似値を確認する必要がある。全件工事の出来高の傾向より近似値を求めようとした場合は以下の課題がある。
【0046】
・膨大なデータより出来高に関する情報を抜粋する必要があり、作業コストがかかりミスが発生する。
・出来高推移の算出には、専門スキルが必要となるため、データ構造の理解に加えて、時系列の出来高の算出が必要となる。
・出来高の近似値を算出するには、専門スキルが必要となるため、データ傾向の特徴を加味してデータの近似値を算出する計算が必要となる。
【0047】
これに対する施策として、システムのアルゴリズムを利用して過去の全工事より出来高の推移の近似値を算出して、分析用の画面に近似値を可視化する。
【0048】
これにより、過去の工事の出来高推移傾向を直感的に把握できるため、過去の全工事の特徴を加味した、自社の工事の出来高推移の近似的な傾向が確認可能となり、作業コスト・ミスのリスクを削減して、データの近似値を求める専門的なスキルも不要となる。
【0049】
(課題(4))
図7は、課題(4)に対する施策・効果を説明するための図である。
図7を参照して、課題(4)に対する施策・効果を説明する。
【0050】
仕掛中の工事の出来高が過去の工事と比較して異常となっていることに気づくためには、一つ一つの出来高推移各点(各月や進捗率10%間隔点等)と過去全工事の近似値を比較確認する必要があるため、現実的ではなく不可能に等しい。一つ一つの出来高推移各点(各月や進捗率10%間隔点等)と過去全工事の近似値を比較確認しようとした場合は以下のような課題がある。
【0051】
・出来高推移各点(各月や進捗率10%間隔点等)時点での出来高で集計するといったパターン別のデータ集計が必要となり、膨大なデータからパターン別集計の作業が必要になるため、作業コスト発生・ミスのリスクに加えて、パターン集計に関する知識が求められる。さらに、仕掛中の全工事で比較した結果より、異常に近似値からはなれているものを異常として判断する必要があるため、この作業を人の手で行うことは不可能に等しい。
【0052】
これに対する施策として、「仕掛中の工事の出来高推移」と「過去の全工事より出来高の推移の近似値」を並べて可視化する。また、1つの画面内で進捗率単位・月単位での比較確認を可能とする。また、近似値との離れ具合から異常と判断できる閾値をシステム内で計算して可視化する。さらに、仕掛中の工事が異常な進捗率推移となっていないか一目でわかるように可視化する。
【0053】
これにより、効果各進捗率地点での過去傾向との乖離をすぐに把握できる。作業コスト・ミスのリスクを削減して、人の手による集計作業が不要となり、データが異常かどうか一目で確認・把握が可能となる。
【0054】
(1-3.分析画面)
図8及び
図9を参照して、本実施の形態の異常検知システムの分析画面について説明する。分析画面では、「工事別の工期進捗率・累計進捗率」、「工事全体の工期進捗率別累計進捗率の近似値」、「組織・工事別の売上金額予測値(近似値)・実績」を出力する。異常検知した情報は、異常と一目でわかるように色や文字サイズを変えて強調表現を行う。確認できる異常検知データは、仕掛中の工事の工期進捗率別の累計進捗率が対象となっており、過去の累計進捗率の傾向と大きく乖離している工事を検知する。
【0055】
分析画面は、
図8に示すような分析初期画面と、
図9に示すような分析用画面とで構成される。分析画面は、
図8から
図9の順番で画面が切り替わる。
【0056】
図8の分析初期画面では、異常を検知した結果メッセージ表示を一覧で表示して、異常を検知した結果メッセージを概要レベルで出力する。
【0057】
エリアA1は、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアであり、異常として検知されたタイミング・工事・検知された月の累計進捗率と過去工事の進捗率の近似値との差を表示する。概要ベースで出力するため、詳細な検知方法についてはメッセージを選択して画面を切り替える必要がある。異常として検知された情報が多数存在した場合は、複数縦並びで表示される。
【0058】
図9の分析用画面では、異常を検知した結果メッセージの分析に必要なグラフを表示
する。
図8の分析初期画面でメッセージを選択したタイミングで切り替わる。分析に必要なグラフを表示して、メッセージは詳細な検知に関わる情報を出力する。
図9の分析用画面は、エリアA1~エリアA6の複数の表示エリアを備えている。
【0059】
エリアA1は、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアである。「異常を検知する際に使用した検知方法」や「異常を検知したデータのキーとなる情報」を表示する。異常として検知された情報が複数ある場合は、エリアA1に不図示のスクロールバーが表示され、表示されていないメッセージ数分についても、スクロール操作により異なるメッセージの切替表示を行う。表示されたメッセージをクリックすると、エリアA2~5のグラフにおいて、クリックした異常検知情報に関連する部分を強調する。
【0060】
エリアA2は、「過去の工事の累計進捗率実績およびその近似曲線」と「異常検知された工事に紐づく累計進捗率実績」を出力するグラフを表示するエリアである。「工期進捗率別の累計進捗率の発生推移」を確認できるグラフを出力する。過去の全工事の工期進捗率別の累計進捗率をプロットで確認できる。過去の全工事の各工期進捗率での累計進捗率より求められる近似値を通る近似曲線を確認できる(自社の工事全般の進捗率推移傾向と考えられる)。異常検知された工事が近似曲線より異常に離れて推移している様子を確認できる。
【0061】
エリアA3は、「過去の工事の累計進捗率実績の近似曲線」と「異常検知された工事に紐づく累計進捗率実績」を月単位で出力するグラフを表示するエリアである。「会計年月別の累計進捗率の発生推移」を確認できるグラフを出力する。各月で近似曲線との乖離を確認して、どの月で異常な傾向が出始めているか等の分析が可能となる。
【0062】
エリアA4は、組織別の月別の工事実績と予測実績を出力する表を表示するエリアである。「組織別の現時点の工事実績と予測実績」を確認できる表に出力される予測値としては、過去の工事実績から算出した近似値を使用して表示する。「近似的に見てこれぐらいに着地する」という予想を利用して、現状との乖離を確認する。進捗が悪ければ組織単位で実績が悪い傾向が可視化されることを想定する。
【0063】
エリアA5は、工事別の月別の工事実績と予測実績を出力する表を表示するエリアである。「工事別の現時点の工事実績と期末までに発生すると思われる予測実績」を確認できる表を出力する。予測値としては、過去の工事実績から算出した近似値を使用して表示する「近似的に見てこれぐらいに着地する」という予想を利用して、現状との乖離を確認する。進捗が悪ければ工事単位で実績が悪い傾向が可視化されることを想定する。なお、エリアA4での確認時に組織単位で実績が悪い場合、ここでは複数工事の実績が悪い状況が可視化される可能性がある。
【0064】
エリアA6は、エリアA2~A5に出力するグラフや表について、基準日、決算期、事業所、部門、データ参照単位等の抽出条件を指定するための抽出条件指定エリアである。
エリアA2~A5のグラフ・表に出力されたデータについて、条件で抽出したデータを確認したい場合に使用する部分である。確認する決算期を抽出して分析する場合は、指定決算期内の会計年月範囲で実績が発生している工事に限定してグラフ・表を出力する。組織レベルで出力データを抽出して分析する場合は、事業所や部門を指定してグラフ・表を出力する。
【0065】
[2.構成]
図10は、本実施の形態に係る異常検知システム100の構成の一例を示すブロック図である。
図10において、異常検知システム100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。異常検知システム100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0066】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、異常検知システム100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、異常検知システム100とサーバ200等とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。
【0067】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、および、マイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。
【0068】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、および、ファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等を用いることができる。
【0069】
記憶部106は、業務データベース106a、異常検知実行用データテーブル106b、異常判定結果データテーブル106c、異常判定定義マスタ106d等を備えている。
【0070】
業務データベース106aは、業務データ(「案件データ」ともいう)や決算期マスタ等を格納するためのデータベースである。業務データの一例として工事データを説明する。業務データは、これ以外にも、開発タスクデータ、製作コンテンツデータ等がある。
【0071】
工事データは、工事名、工種(特定条件)、組織(事業所、部門)、工事開始月、工事終了月、工期(特定条件)、工事完了区分(完了or未完了)、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率等を含んでいてもよい(
図12(A)等参照)。
【0072】
決算期マスタは、決算期、会計年月、表示順を関連付けて登録したテーブル等で構成することができる(
図23A(D)参照)。
【0073】
異常検知実行用データテーブル106bは、自動検知実行スケジュールデータや業務データ(例えば、工事データ)の取得範囲条件データ、異常判定結果登録対象期間データ等を格納するためのテーブルである。
【0074】
自動検知実行スケジュールデータは、検知ID、スケジュールID、実行条件、実行時間を含んでいてもよい(
図13参照)。検知ID及びスケジュールIDは、データ参照時のkey情報となる。検知部102bは、自動検知実行スケジュールデータに従って、工事データの異常検知の自動実行を行う。
【0075】
業務データ(例えば、工事データ)の取得範囲条件データは、検知ID、スケジュールID、条件、条件値を含んでいてもよい(
図14(C)参照)。検知ID及びスケジュールIDは、データ参照時のkey情報となる。検知部102bは、特定条件(例えば、工種)毎に、工事データの母集団を分け、母集団別に異常検知の自動実行を行う。
【0076】
異常判定結果登録対象期間データは、検知ID、期間判定項目、取得基準を含んでいてもよい(
図13参照)。検知IDは、データ参照時のkey情報となる。検知部102bは、取得基準に合致する期間判定項目(例えば、会計年月)の工事データを異常判定対象に設定して異常判定を行う。
【0077】
異常判定結果データテーブル106cは、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、異常判定結果付属情報データ等の異常検知実行の判定結果を格納するためのテーブルである。検知部102bは、工事データの異常を検知した場合に、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、異常判定結果付属情報データを異常判定結果データテーブル106cに格納する。
【0078】
異常判定結果データは、検知ID、JOBID、判定グループCD、メッセージID、会計年月、事業所、部門、工事、工種、異常判定結果(異常の場合:True、異常でない場合:False)、工期進捗率、累計進捗率、予測進捗率(累計進捗率の予測値)等を含んでいてもよい(
図19A(A)参照)。「判定グループCD」は、判定グループ(母集団)のKeyである。検知ID、JOBID、及び判定グループCDは、データ参照時のkey情報となる。判定の結果、異常でないと判断された結果については、判定結果メッセージデータのレコードは作成されない。
【0079】
異常判定結果メッセージデータは、検知ID、JOBID、判定グループCD、メッセージID、異常度、定義名、概要、検知対象を含んでいてもよい(
図19A(B)参照)。検知ID、JOBID、及び判定グループCDは、データ参照時のkey情報となる。
【0080】
異常判定結果メッセージ詳細データは、検知ID、JOBID、判定グループCD、メッセージID、検知手法、判定方法、下限値、上限値等を含んでいてもよい(
図19B(C)等参照)。検知ID、JOBID、及び判定グループCDは、データ参照時のkey情報となる。
【0081】
異常判定結果付属情報データは、検知ID、JOBID、判定グループCD、行番号、工期進捗率、予測進捗率、下限値、上限値等を含んでいてもよい(
図19B(D)参照)。検知ID、JOBID、及び判定グループCDは、データ参照時のkey情報となる。
【0082】
異常判定定義マスタ106dは、異常判定定義ID、異常判定定義名、取得定義、使用アルゴリズム(例えば、近似曲線)、パラメータ設定{X軸項目(例えば、工期進捗率),Y軸項目(例えば、累計進捗率),X軸スケール統一項目,Y軸スケール統一項目,近似関数候補名(例えば、多項式関数,ロジスティック関数,バスモデル関数),滑らか度,有意水準)}を関連付けて登録したテーブル等で構成することができる。オペレータは、異常判定定義マスタ106dのデータを設定可能となっている。検知部102bは、近似曲線、累計進捗率の予測値、上限値・下限値を算出する際に異常判定定義マスタ106dを参照する。
【0083】
制御部102は、異常検知システム100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0084】
制御部102は、記憶部106に格納されている、業務データベース106a、異常検知実行用データテーブル106b、異常判定結果データテーブル106c、異常判定定義マスタ106d等にアクセス可能に構成されている。なお、業務データベース106a、異常検知実行用データテーブル106b、異常判定結果データテーブル106c、異常判定定義マスタ106dは、他の場所(例えば、サーバ200)に設けられていてもよく、制御部102がアクセス可能な構成であればよい。
【0085】
制御部102は、機能概念的に、記憶制御部102aと、検知部102bと、表示制御部102cと、を備えている。
【0086】
記憶制御部102aは、例えば、ネットワーク300を介して接続される不図示の業務システムから日々の業務データを取得して業務データベース106aに格納してもよく、また、モニタ114に表示される不図示の入力画面でのオペレータの操作等に応じて、日々の業務データを入力して、業務データベース106aに格納してもよい。
【0087】
また、記憶制御部102aは、例えば、モニタ114に表示される不図示のデータ設定画面でのオペレータの操作等に応じて、自動検知実行スケジュールデータ、工事データの取得範囲条件データ、異常判定結果登録対象期間データを設定して、異常検知実行用データテーブル106bに格納する。
【0088】
検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ、業務データの取得範囲条件データ、及び異常判定結果登録対象期間データに従って、異常検知を実行し、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、指定される特定条件別に、過去の業務データの母集団を分け、母集団毎に、業務データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して案件進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値(「上限閾値」ともいう)・下限値(「下限閾値」ともいう)を算出し、検知対象の業務データと上限値・下限値を比較して異常を検知する。検知部102bは、異常を検知した場合には、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、異常判定結果付属情報データを異常判定結果データテーブル106cに格納する。
【0089】
表示制御部102cは、モニタ114への分析画面(分析初期画面、分析用画面)の表示制御を行う。表示制御部102cは、業務データベース106aに格納されている業務データに基づいて、検知部102bで異常を検知した業務データについて、分析用データ(例えば、
図4のグラフ1~2,表3~4等)を分析用画面に表示する。
【0090】
業務データは、工事データを含み、特定条件は、工種、工期、又は公民区分を含み、経過率は、工事経過月/予定工期で算出される工期進捗率を含み、案件進捗率は、現時点で発生している発生原価/(原価着地予算+現時点で発生している発生原価)で算出される累計進捗率を含み、工事データは、工事、組織(事業所、部門)、1又は複数の特定条件、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率を含むことにしてもよい。
【0091】
表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA1)に、異常として検知した工事、検知方法、異常と判断した累計進捗率を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0092】
表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA2)に、工期進捗率別に、母集団別の過去の工事又は過去の全工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示してもよい。
【0093】
表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA3)に、会計年月別に、過去の工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示してもよい。
【0094】
表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA4)に、指定した決算期内で、組織別の工事の売上実績(工事実績)及びその売上予測(工事予測)の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0095】
表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA5)に、異常が発生した工事を管轄する組織の工事別の売上実績及びその売上予測の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0096】
[3.具体例]
図10~
図74を参照して、本実施の形態における異常検知システム100の制御部102の処理の具体例を、[3-1.全体の処理]、[3-2.サンプルデータ]、[3-3.近似曲線、予測値、上限値・下限値の算出方法]、[3-4.過去の案件の加工方法の選択肢]の順に説明する。
【0097】
[3-1.全体の処理]
図11は、本実施の形態における異常検知システムの制御部102の全体の処理の概略を説明するためのフローを示す図である。
【0098】
図11を参照して、本実施の形態における異常検知システム100の制御部102の全体の処理の概略を説明する。
図11において、検知部102bは、異常検知処理を実行する(ステップS1)。具体的には、異常検知処理では、検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ、業務データの取得範囲条件データ、異常判定結果登録対象期間データに従って、工事データの異常検知を実行し、業務データベース106aに格納されている工事データに基づいて、指定される特定条件別に、過去の工事データの母集団を分け、母集団毎に、工事データの工期進捗率と累計進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に工期進捗率を代入して累計進捗率の予測値を算出し、近似曲線と累計進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の工事データと上限値・下限値を比較して異常を検知する。そして、検知部102bは、異常を検知した場合には、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、異常判定結果付属情報データを異常判定結果データテーブル106cに格納する。
【0099】
表示制御部102cは、分析用画面表示処理を実行する(ステップS2)。具体的には、分析用画面表示処理では、表示制御部102cは、モニタ114への分析画面(分析初期画面、分析用画面)の表示制御を行う。表示制御部102cは、業務データベース106aに格納されている工事データに基づいて、検知部102bで異常を検知した工事について、分析用データ(例えば、
図9のメッセージ、グラフ1~2,表3~4等)を分析用画面に表示する。
【0100】
また、表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA1)に、異常として検知した工事、検知方法、異常と判断した累計進捗率を含むメッセージを表示することにしてもよい。
【0101】
また、表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA2)に、工期進捗率別に、母集団別の過去の工事又は過去の全工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示してもよい。
【0102】
また、表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA3)に、会計年月別に、過去の工事の累計進捗率の実績及びその近似曲線と、異常検知された工事に紐づく累計進捗率の実績の推移を示すグラフを表示してもよい。
【0103】
また、表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA4)に、指定した決算期内で、組織別の工事の売上実績及びその売上予測の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0104】
また、表示制御部102cは、工事データに基づいて、分析用画面の所定のエリア(例えば、
図9のエリアA5)に、異常が発生した工事を管轄する組織の工事別の売上実績及び売上予測の推移を示す表を表示することにしてもよい。
【0105】
[3-2.サンプルデータ]
図12~
図51は、本実施の形態における異常検知システム100の制御部102の処理の具体例を説明するためのサンプルデータを示す図である。
図12~
図51を参照して、本実施の形態における異常検知システム100の制御部102の処理の具体例を説明する。
【0106】
(S1:異常検知処理)
図12~
図19を参照して、異常検知処理の具体例を説明する。検知部102bは、異常検知実行用データテーブル106bに格納されている自動検知実行スケジュールデータ、業務データの取得範囲条件データ、異常判定結果登録対象期間データに従って、工事データの異常検知を実行し、業務データベース106aに格納されている工事データに基づいて、指定される特定条件別に、過去の工事データの母集団を分け、母集団毎に、工事データの工期進捗率と累計進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に工期進捗率を代入して累計進捗率の予測値を算出し、近似曲線と累計進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の工事データと上限値・下限値を比較して異常を検知する。
【0107】
(用語説明)
・工期進捗率とは、工事の工期に対する現会計年月時点の月単位で見た進捗率を指す。例えば、12か月工期・1月工事開始・12月工事完成の工事があると想定した場合、現在5月とすると、工期進捗率=5/12≒42%(%の少数以下は四捨五入計算)となる。
・累計進捗率とは、工事毎の実際の進捗率を指す。進捗率は基本、原価の現時点の積み上げとこの先着地予想(工事完成までに発生する想定の原価金額)の合計に対する現時点の原価の積み上げ度合を指すことが多い。例えば、原価着地予算:1000円、現時点の発生原価:500円とした場合、累計進捗率=500/(500+1000)≒33%となる。
・予測進捗率とは、検知部102bの異常検知処理により、過去の工事の実績から近似位置にある進捗率の予測値である。
【0108】
工事データの工期進捗率及び累計進捗率から近似曲線、予測値、上限値・下限値を算出する方法は、(3-3.近似曲線、予測値、上限値・下限値の算出方法)で詳細に説明し、ここでは、概略のみを説明する。
【0109】
1.業務データベース106a内の工事データより、管理している全工事が辿る想定の工事進捗率の予測値を算出、異常な進捗となっている工事を検知する処理。
【0110】
図12は、工事データを説明するための図である。工事データは、実施する工事の情報(組織・工期・着手時期・完成時期・予定工数・受注金額・累計進捗率等)を保持するためのものであり、
図12(A)に示すように、工事名、事業所、部門、工事開始月、工事終了月、工期、工事完了区分、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率等の項目を備えている。
【0111】
建設業における進行基準売上を採用している企業について業務データ上ですでに、工期進捗率・累計進捗率を管理しているケースが多い。そのため、本明細書ではすでに業務データ上に工期進捗率・累計進捗率が存在する状態より説明を行う。建設業における完成工事売上を採用している企業や他業界のプロジェクト管理している企業では進捗率を管理していないケースもあるため、その場合は、別途算出が必要となる。
【0112】
「工期進捗率」は下記の式で計算される。
「工期進捗率」=(工事開始からの経過月数÷工事にかかる総月数×100
=(「工事開始月」から「会計年月」までの月数+1÷「工期」の月数)×100
【0113】
上記の工事A・B・Cがどの「会計年月」で実施されたかをまとめると
図12(B)の表の通りになる色付きセル内の数字は「工期進捗率」を表す。
【0114】
(1).事前設定
(1-1).記憶制御部102aは、予め異常検知に必要な情報を異常検知実行用データテーブル106bに保存しておく(事前に提供するデータ)。具体的には、自動検知実行スケジュールデータと、異常判定結果登録対象期間データを異常検知実行用データテーブル106bに設定しておく。
【0115】
図13(A)は、自動検知実行スケジュールデータのデータ例を示す図である。自動検知実行スケジュールデータは、検知ID、スケジュールID、実行条件、実行時間の項目を備えている。同図に示す例では、検知ID「AB001」、スケジュールID「SH001」、実行条件「毎月の5営業日」、実行時間「23:00」となっている。この例では、毎月の5営業日目の「23:00」に自動検知を実行する。5営業日目としているのは、前月の月次締め処理が確定したタイミングを想定している。
【0116】
図13(B)は、異常判定結果登録対象期間データのデータ例を示している。異常判定結果登録対象期間データは、検知ID、期間判定項目、取得基準の項目を備えている。同図に示す例では、検知ID「AB001」、期間判定項目「会計年月」、取得基準の項目「起動日の所属する月の前月」となっている。この例では、取得基準を「起動日の所属する月の前月」としており、例えば、2022/10/5に起動した場合に、2022/9のデータを対象として異常判定を行う。内部の細かな設定項目について、本出願とは直接関係ないため省略する。
【0117】
(2).検知部102bは、異常検知を自動実行する。
(2-1).まず、異常を検知するタイミング情報を取得する。具体的には、(1-1)で異常検知実行用データテーブル106bに設定されている自動検知実行スケジュールデータ及び異常判定結果登録対象期間データを取得する。
【0118】
(2-2).自動実行したタイミングが、異常を検知するタイミングであるか判定する。
図14(A)は、自動実行タイミング判定処理を説明するための図である。同図に示す例では、起動タイミングが「2022/11/07」の5営業日目で、自動検知実行スケジュールデータが「毎月の5営業日目」であるので、実行判定結果は、「実行する」となる。
【0119】
実行判定結果により、後続処理を行うか否か処理が分岐する。実行判定結果「実行する」の場合は、(2-3)以降の処理を実行する。実行判定結果「実行しない」の場合は、処理を終了する。
【0120】
営業日の判断方法は、業務データベース106aに存在するカレンダーマスタ(不図示)を参照して休日/営業日を判断する。カレンダーマスタは販売の営業カレンダーベースで、常に最新化されている。
【0121】
(2-3).異常を検知するデータの範囲条件を取得する。
具体的には、例えば、
図14(B)に示す自動検知実行スケジュールデータの検知ID「AB001」及びスケジュールID「SH001」をパラメータ(キー)として、
図14(C)に示すような、異常検知実行用データテーブル106bに設定されている工事データの取得範囲条件データを取得する。工事データの取得範囲条件データは、検知ID、スケジュールID、条件、条件値の項目を備えている。同図に示す例では、検知ID「AB001」、スケジュールID「SH001」、条件「データ参照単位」、条件値「工種」となっている。
【0122】
「条件値」の設定について、利用企業に応じて汎用的に設定が可能となっている。工種のような工事の特徴によって、進捗率の推移の形が異なるケースは多い。似たように進捗率の推移を示す工事の特徴としては、工期・工種・公民区分(公共工事or民間工事)等がある。ここでは、一例として、工種について設定したパターンを説明する。なお、上記特徴はいずれも工種同様に工事データが持つ情報として想定している。条件値を空で設定することも可能である。空の場合、全工事を1つの単位として進捗率の推移を分析可能である。
【0123】
(2-4).業務データベース106a内の工事データを参照して、工事別の工期進捗率別の予測進捗率を計算する。
(2-4-1).業務データベース106a内の工事データを取得する。(2-3)で取得した工事データの取得範囲条件データ内にある値をパラメータに設定してデータ取得を行う。例えば、
図15(A)に示すようなパラメータ(データ参照単位、工種)をキーとして、業務データベース106a内の工事データを参照して、データ参照単位別に母集団を分けて取得する。例えば、
図15(B)、(C)に示すような、母集団A:工種(建築)と母集団B:工種(解体)の工事データを取得する。この母集団単位で近似値を求める。
【0124】
(2-4-2).(2-4-1)で取得した工事データより、母集団毎に、工期進捗率別の累計進捗率(近似値)を算出する。近似値算出時に求めた正常範囲として考えられる上限値・下限値を基に、異常な工事を判定する。「近似値」は、実績と比較した際の本来実績となる参考値として、以降は「予測値」という表現を使用する。
【0125】
図16(A)は、取得した工事データを示しており、
図16(B)は、工事データの各工事をプロットしたものであり、横軸は工期進捗率(%)、縦軸は累計進捗率(%)を示している。
【0126】
工事データ内の「工期進捗率」と「累計進捗率」を用いて、工期進捗率別の累計進捗率の予測値を算出する。予測値を求める方法として、異常判定アルゴリズム:近似曲線を使用する。近似曲線で用いるデータは、工事データの「工事完了区分」が完了のもののみを対象とする。また、予測値を算出する元となった近似曲線の近似式を用いて、月・工事別の予測進捗率を算出する。
【0127】
図17は、近似曲線F(x)、予測値進捗率、上下限値の算出を説明するための図である。
図17(A)に示すように、完成している工事を母集団として、母集団の工期進捗率別累計進捗率の近似曲線F(x)を計算する。また、母集団内のデータの散らばり傾向に着目して標準偏差関数S(x)を計算する。そして、
図17(B)に示すように、近似曲線F(x)と標準偏差関数S(x)に工期進捗率をそれぞれ代入して、未完成工事の予測進捗率・上下限値を算出する。このように、F(x)により予測進捗率を算出し、S(x)により上下限値を算出する。
【0128】
本発明では、この処理によって算出された結果を利用するところからがポイントとなるため、具体的な算出過程については、[3-3.近似曲線、予測値、上限値・下限値の算出方法]で詳細に説明し、ここでは、概略のみを説明する。今回の説明では、進行基準売上の企業を対象=工事データ上にすでに工期進捗率・累計進捗率を持つため、近似曲線のスケール合わせやデータ加工が不要となる。
【0129】
例えば、異常判定定義マスタ106dに設定されている、
図18A(A)に示すような近似曲線パラメータ(X軸項目:工期進捗率、Y軸項目:累計進捗率、近似関数候補[多項式関数,ロジスティック関数,バスモデル関数]等)に基づいて、工種別に予測値・上下限値を算出する。なお、今回はすでにスケール合わせした後の値を用いて説明を行うため、スケール合わせに関する説明は省略する。F(x)算出後、データの散らばりを計算して標準偏差関数S(x)を算出する。F(x)とS(x)に工期進捗率をxとして代入し、F(x)→予測値、S(x)→上下限値をそれぞれ算出する。関数は同一のものを用いて、工種別・工事別にそれぞれ予測値・上下限値を計算する。
【0130】
図18A(B)は、それぞれ算出される母集団別である建築、解体の工期進捗率別の累計進捗率の近似値データの例を示しており、工事、工種、工期進捗率、累計進捗率、予測値(予測進捗率、累計進捗率の予測値)、下限値、上限値の項目を備えている。
【0131】
図18B(C)は、予測値・上下限値を算出後の工事データを示しており、予測値(予測進捗率)、下限値、上限値に加えて、データ参照単位である工種の情報も保持する。
【0132】
図18B(D)に示す、(1-1)で取得した異常判定結果登録対象期間データの「取得基準」に従い、異常判定の実行日が所属する月の前月のデータに異常がないか判定を行う。今回は、実行日:2022/11/07のため、2022/10で異常がないか判定を行う。この例では、
図18B(C)において、4行目のレコードが、累計進捗率「30%」、予測進捗率「65%」、下限値「60%」、上限値「75%」となっており、累計進捗率「30%」が下限値「60%」を下回っているので、異常が検知される。
【0133】
(2-4-3).(2-4-2)で異常と判断した工事を異常判定結果データテーブル106cに保存する。同時に、分析画面に表示するためのメッセージを保存する。
図19A、19B(A)~(D)は、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データ、異常判定結果付属情報データの例を示している。なお、異常判定結果付属情報データには、求めた母集団毎の表示用のデータが保持される。判定の結果、異常でないと判断された結果については、判定結果メッセージのレコードは作成されない。
【0134】
(S2:分析用画面表示処理)
図20~
図51を参照して、分析用画面表示処理を詳細に説明する。表示制御部102cは、業務データベース106aに格納されている工事データに基づいて、検知部102bで異常を検知した工事について、分析用データ(例えば、
図9のメッセージ、グラフ1~2,表3~4等)を分析用画面に表示する。
【0135】
2.1で検知した異常データと異常データと関連のあるデータを分析用初期画面に表示する処理を実行する。
(1).業務データベース106a内の工事データより、異常として自動検知された情報を分析用初期画面に出力する。
(1-1).まず、異常を検知した結果データと結果メッセージを取得する。
具体的には、
図20A(A)に示すように、JOBID「出来高予測アラート」、異常判定結果「True」をパラメータ(キー)として、異常判定結果データテーブル106cから
図20A(B)に示すような異常判定結果データ、
図20B(C)に示す異常判定結果メッセージデータ、及び
図20B(D)に示す異常判定結果メッセージ詳細データを取得する。なお。検知された情報を一覧に表示するため、検知IDは未設定の状態でデータを取得する。これから表示を行う画面では異常判定結果が異常と判定されているデータのみを確認する。よって、異常判定結果データの「異常結果かどうか」の列の値が「True」のデータのみ参照する。
【0136】
(1-2).異常を検知した結果メッセージを画面に表示する。
具体的には、
図20B(C)の異常判定結果メッセージデータの異常度、定義名、概要、検知対象を抽出して、
図21に示すように、分析初期画面のエリアA1に表示する。
【0137】
(1-3).分析初期画面を起動したタイミングの日付を取得して、分析初期画面の抽出条件の基準日にセットする。具体的には、
図21に示すように、基準日「2022/11/1」を分析初期画面の抽出条件の基準日にセットする。
【0138】
(2).分析初期画面で異常を検知した結果メッセージを選択して、分析用画面を起動する。(1)の一覧から選択した異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果メッセージ詳細データを参照して以下の処理を行う。
【0139】
(2-1).メッセージを詳細情報表示に切り替えて、グラフ・表の出力領域を確保する。
1.メッセージを詳細表示に切り替える。具体的には、
図22A(A)に示す異常判定結果メッセージ詳細データについて、検知手法、判定方法、下限値を参照して、
図22A(B)に示すようなメッセージの詳細表示を行う(検知手法や判定理由の追加を行う)。
【0140】
2.分析用画面のグラフ・表の出力領域を確保する。本システムでは、例えば、
図22B(C)に示すように、図表1~4(グラフ2つ・表2つ)の出力を行う。そのため、グラフ2つ・表2つ分の出力領域を確保する。
【0141】
(2-2).抽出条件を設定する。
1.異常判定結果メッセージデータに紐づく異常判定結果データが持つ会計年月に対して抽出条件を設定する。
【0142】
(i)対象データの会計年月から、その会計年月を含む決算期を決算期マスタから取得して、決算期に紐づく期首・期末の会計年月を、分析用画面の抽出条件に設定する。
【0143】
図23A(D)は、決算期マスタのデータ例を示しており、決算期マスタは、決算期、会計年月、表示順の項目を備えている。決算期マスタは、各決算期に含まれる会計年月を管理している。例えば、
図23A(C)に示す異常判定結果データの会計年月が「2022/10」をキーとして、
図23A(D)に示す決算期マスタから「2022/10」を含む決算期「50」を取得し、さらに、決算期「50」に紐づく期首・期末の会計年月「2022/04~2023/03」を取得して、
図23A(A)に示すように、抽出条件に初期値として設定する。
【0144】
(ii)決算期マスタより取得された決算期の期首・期末の会計年月を、抽出条件の設定値として取得して、分析用データ取得範囲条件抽出条件に設定する。さらに、選択した異常の元となる工事も、抽出条件の設定値として取得して設定する。
図23A(B)は、分析用データ取得範囲条件の例を示しており、抽出条件列「会計年月」、FROM条件「2022/04」、TO条件「2023/03」、対象工事「工事A」とする。
【0145】
2.1の情報を初期表示値としてセットした状態の抽出条件を設定する。具体的には、
図23B(A)に示すように、抽出条件初期値を、基準日「2022/11/1」(分析用画面起動タイミング)、期間開始「2022/04」(分析用データ取得範囲条件のFROM条件)、期間終了「2023/03」(分析用データ取得範囲条件のTO条件)、対象工事「工事A」(分析用データの取得対象)を設定する。
【0146】
図23B(B)、(C)に示すように、グラフ表示状態に切り替わるタイミングで、グラフ出力用のデータを抽出するためのフィルタ項目を表示する。項目は固定で出力する。異常判定結果データに判定グループCDと判定グループKeyが設定されている場合、判定グループKeyを選択してデータ抽出できるように抽出項目を追加表示する。この例では、工種「建築」が追加表示されている。
【0147】
(2-3).業務データベース106a内の工事データより、累計進捗率推移_実績データを取得する。抽出条件に初期セットした条件をもとに、累計進捗率推移_実績データを取得して、図表1,2の表示用のデータとして取得する。
【0148】
具体的には、
図24A(A)に示すような、開始期間「2022/04」、期間終了「2023/03」、工事「工事A」、工種「建築」をパラメータ(キー)に基づいて、
図24B(D)に示す工事データを抽出して、
図24B(C)に示す累計進捗率推移_実績データを取得する。累計進捗率推移_実績データは、工事名、事業所、部門、工種、工事完了区分、会計年月、売上金額、工期進捗率、累計進捗率等の項目を備えている。
【0149】
この場合、上記の期間開始~期間終了の期間に、「会計年月」が含まれるレコードが1レコードでも存在する場合、その工事は取得対象となる。例えば、
図24A(B)に示すように、この例では、工事A・Bは取得対象となるが、工事Cは取得対象外となる。
【0150】
(2-4).異常判定結果データテーブル106c内の異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータ、異常判定結果付属情報データより「累計進捗率推移_近似曲線データ」を取得する。
【0151】
図25B(C)は、異常判定結果データの例、
図25B(D)は、異常判定結果メッセージデータの例、
図25B(E)は、異常判定結果付属情報データの例、
図25B(F)は、累計進捗率推移_近似曲線データ(建築)の例を示している。
【0152】
図25A(B)に示すような、開始期間「2022/04」、期間終了「2023/03」、工事「工事A」、工種「建築」をパラメータ(キー)として、
図25B(C)に示す異常判定結果データ、
図25B(D)に示す異常判定結果メッセージデータ、
図25B(E)に示す異常判定結果付属情報データより、
図25B(F)に示す累計進捗率推移_近似曲線データ(建築)を図表1,2の追加表示用のデータとして取得する。
【0153】
累計進捗率推移_近似曲線データ(建築)は、工事名、工期進捗率、予測進捗率、進捗率上限値、進捗率下限閾値の項目を備えている。
【0154】
(2-5).(2-3)にて取得した、累計進捗率推移_実績データ及び異常判定結果データテーブル106c内の異常判定結果データより「組織別売上金額推移データ」を取得する。
【0155】
図26B(D)は、(2-3)で取得した累計進捗率推移_実績データの例、
図26B(E)は、異常判定結果データの例、
図26A(C)は、組織別売上金額推移データの例を示している。
【0156】
図26A(A)に示すような、開始期間「2022/04」、期間終了「2023/03」、工種「建築」をパラメータ(キー)として、
図26B(D)に示す累計進捗率推移_実績データ、
図26B(E)に示す異常判定結果データより、
図26A(C)に示す組織別売上金額推移データを、図表3の表示用のデータとして取得する。グラフ3では、該当の決算期内で発生した工事実績のみを確認し、
図26A(B)に示す枠内の実績のみのデータを取得して表示する。
【0157】
累計進捗率推移_実績データについては、前期実績がある場合、前期分を除いた実績を取得する(当期分としてカウントできる実績だけ取得する)。例えば、工事Aの累積進捗率については、2022/03の1%は前期実績、2022/04は、2%であるが当期は1%2022/05は、4%であるが当期は3%、・・・とする。
【0158】
組織別売上金額推移データは、
図26A(C)に示すように、事業所、部門、会計年月、工種、売上金額(実績)、売上金額(予測)の項目を備えている。「売上金額(実績)」、「売上金額(予測)」は、それぞれ「売上金額」の累計の計上額の実績と予測の値であり、下記の式により算出する。
【0159】
・売上金額(実績)=売上金額×(累積進捗率÷100)
・売上金額(予測)=売上金額×(予測進捗率÷100)
【0160】
期間の範囲すべての会計年月のレコードを作成する(グラフ描画用)。実績・予測のない会計年月については、0円でレコードを作成する。事業所・部門で集計したレコード(1)と、事業所で集計したレコード(2)を取得する。
【0161】
会計年月「2022/04」の例では、部門A:実績「400」、予測「600」、部門B:実績「12,000」、予測「12,400」(今回の説明では、工種抽出条件「建築」より取得対象外になるレコードだが、集計計算のイメージ説明のため、取得されたと仮定して説明を行う)、事業所A(部門A+部門B):実績「12,400」、予測「13,000」となる。
【0162】
(2-6).(2-3)にて取得した「累計進捗率推移_実績データ」及び異常検知結果データテーブル内の異常判定結果データより工事別売上金額推移データを図表4の表示用データとして取得する。
【0163】
図27A(C)は、工事別売上金額推移データのデータ例、
図27B(D)は、(2-3)で取得した累計進捗率推移_実績データのデータ例、
図27B(E)は、異常判定結果データのデータ例を示している。
【0164】
図27A(A)に示すような、開始期間「2022/04」、期間終了「2023/03」、工事「工事A」、工種「建築」をパラメータ(キー)として、
図27B(D)に示す累計進捗率推移_実績データ及び
図27B(E)に示す異常判定結果データより、
図27A(C)に示す工事別売上金額推移データを、図表4の表示用のデータとして取得する。上記の期間に、「会計年月」が含まれるレコードが1レコードでも存在する場合、その工事は取得対象となる。例えば、
図27A(A)に示す表の場合、工事A・Bは取得対象となるが、工事Cは取得対象外となる。
【0165】
ここでは工事番号では抽出を行わない。工事番号により紐づく事業所単位でデータを抽出して取得する。例えば、工事1は東京事業所が管理する工事の場合、東京事業所の実績データを取得する。どこが管理するかについては、「累計進捗率推移_実績データ」に実績があるか否かで判断する。
【0166】
工事別売上金額推移データは、
図27A(C)に示すように、工事名、事業所、部門、会計年月、工種、売上金額(実績)、売上金額(予測)、予測進捗率の項目を備えている。「売上金額(実績)」、「売上金額(予測)」は、それぞれ「売上金額」の累計の計上額の実績と予測の値であり、下記の式により算出する。
【0167】
・売上金額(実績)=売上金額×(累積進捗率÷100)
・売上金額(予測)=売上金額×(予測進捗率÷100)
【0168】
会計年月の「前期末」は、該当の決算期より前のレコードは前期末として集約される。期首の会計年月が2022/04の場合、2022/03以前のレコードが前期末として表示される。会計年月の「翌期以降」は、該当の決算期より後のレコードは翌期以降として集約される。期末の会計年月が2023/03の場合、2023/04以降のレコードが翌期以降として表示される。前期末・翌期以降として集計される対象のデータがない場合もレコードを作成する。この場合、実績と予測は0円でレコードを作成する。
【0169】
(2-7).累計進捗率推移_実績データ、累計進捗率推移_近似曲線データ、組織別売上金額推移データ、工事別売上金額推移データを、それぞれの対応する図表1~4にバインドし、計4つの図表にバインドする。
【0170】
1.図表1に累計進捗率推移_実績データ、累計進捗率推移_近似曲線データをバインドする。
例えば、
図28A(A)に示すバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)と、
図28A(B)に示す凡例毎に用いるデータに従って、
図28A(C)に示す累計進捗率推移_実績データと、
図28A(D)に示す累計進捗率推移_近似曲線データを、
図28B(E)に示すように、図表1にバインドする。
図28A(B)において、過去の工事別実績と異常判定された工事実績について同じプロットとなるように見えるが、後続にあるグラフ着色の処理にて、データ区別できるように色分けを行う。
【0171】
図表1において、タイトルは、予測/実績 出来高曲線比較(工期進捗率)、X軸は、工期進捗率、Y軸は、累計進捗率、凡例は、予測出来高近似曲線、未完成工事出来高線、正常データ閾値、過去の工事別実績、異常判定された工事実績となっている。
【0172】
2.図表2に、累計進捗率推移_実績データ、累計進捗率推移_近似曲線データをバインドする。
例えば、
図29A(A)に示すバインド情報(X軸、Y軸、凡例、タイトル)と、
図29A(B)に示す凡例毎に用いるデータに従って、
図29A(C)に示す累計進捗率推移_実績データと、
図29A(D)に示す累計進捗率推移_近似曲線データを、
図29B(E)に示すように、図表2にバインドする。
【0173】
図表2において、タイトルは、予測/実績 出来高曲線比較(会計年月)、X軸は、会計年月、Y軸は、累計進捗率、凡例は、予測出来高近似曲線、未完成工事出来高線、正常データ閾値、工事Aとなっている。
【0174】
3.図表3に、組織別売上金額推移データをバインドする。
例えば、
図30(A)に示すバインド情報(ヘッダ、表示データ、タイトル)に従って、
図30(B)に示す組織別売上金額推移データを、
図30(C)に示すように、図表3にバインドする。
【0175】
図表3において、タイトルは、組織別の予測と実績(50期:2022/04~2023/03)、行項目は、事業所、部門、列項目は、会計年月、売上金額(予測)、売上金額(実績)となっている。
【0176】
4.図表4に、工事別売上金額推移データをバインドする。
例えば、
図31(A)に示すバインド情報(ヘッダ、表示データ、タイトル)に従って、
図31(B)に示す工事別売上金額推移データを、
図31(C)に示すように、図表4にバインドする。
【0177】
図表4において、タイトルは、工事別の予測と実績(事業所Aが管理する工事・50期:2022/04~2023/03)、行項目は、工事名、列項目は、会計年月、売上金額(予測)、売上金額(実績)、予測進捗率となっている。
【0178】
5.図表1~4を分析用画面に出力する
バインドした図表1~4を、
図32に示すように、分析用画面のエリアA2~A5にそれぞれ出力する。
【0179】
6.メッセージに紐づく「異常判定結果データ」が持つ工事名の情報をもとに、異常対象のデータを強調する。
図33A(A)は、グラフ着色パラメータの例、
図33A(B)は、異常判定結果データの例、
図33A(C)は、累計進捗率推移_実績データ(グラフ1,2にバインドしたデータ)の例、
図33A(D)は、累計進捗率推移_近似曲線データの例、
図33B(E)は、分析用画面の表示例を示している。
【0180】
グラフ着色パラメータに従って、グラフ1・2にて、プロット・折れ線・凡例を赤色表現する強調を行う。グラフ着色パラメータには、
図33A(A)に示すように、凡例の異常フラグ(True or False)、参考情報フラグ(True or False)、凡例色、折れ線色が設定されている。参考情報は、異常か否か判定する対象(当ジョブでは工事)が如何に異常か確認するための情報である。
【0181】
凡例の工事名と異常検知された工事名が同一のものに対して凡例の異常フラグがTrueの色を適用する。異常検知された工事以外の凡例に対して凡例の異常フラグがFalseの色を適用する。
【0182】
いずれのグラフも、正常データ閾値のグラフは破線設定とする。グラフ2について、過去の実績データは工事開始の会計年月がバラバラであるため、過去の実績データのプロットを表示していない。
【0183】
分析用画面の初期表示の注目ポイントは以下の通りである。
(1)分析用画面のエリアA1にはメッセージを表示する。
異常検知された対象、検知の手法、異常と判断した基準値を含めた詳細な情報を出力する。確認するユーザ側としては、異常の可能性がある工事が分かっている状態から分析が可能となる。
(2)分析用画面のエリアA2~A5には、グラフ1~2,表3~4を表示する。
グラフ1で、過去の工事を基にした、近似的な工事が辿る累計進捗率推移を確認可能できる。今後行う工事についても、基本的にこの近似的な累計進捗率の推移を辿るものと考えることが可能となる。また、異常検知された工事の累積進捗率が、予測された累計進捗率近似曲線とどの程度乖離しているかを確認できる。異常検知される対象工事は「未完成の工事」より、下記の点が発生しうる工事として捉えられる。
・工期終盤の高負荷作業
・工事の遅延完成
工期進捗率毎の累積進捗率の変化を見て、累積進捗率の増加傾向を確認する。今回の例では、他の工事と比較し、異常検知された工事の累計進捗率が低いことがわかる。
【0184】
グラフ2で、異常検知された工事の累積進捗率の推移を、会計年月毎に確認できる。月別にどのように過去工事より求めた累計進捗率近似曲線と乖離が生まれているか確認できる。乖離の大きい月で行った作業が乖離の原因となっている可能性が高い。今回の例では、会計年月が2022/05以降で近似値からの正常範囲(進捗率下限閾値内)を超える実績となっていることがわかる。
【0185】
表3で、指定した決算期内で発生した組織別の工事の実績を確認できる。異常検知された工事を管理する組織の実績について、予測値と比較して大きく乖離する実績となる可能性がある。また、決算期内でのみ発生した工事の売上実績を確認できるため、当期売上実績の分析に使用可能である。予測値は発生しうる売上予定として参考・利用可能なため、当期中の売上実績の着地予測としての利用が可能である。
図34は、表3上での乖離確認イメージを説明するための図である。同図において、例えば、8月時点の予測と実績の差額:10,000で、11月時点予測と実績の差額:74,800の場合は、11月時点の乖離額が異常に増えていることがわかる。
【0186】
表4で、異常検知された工事を管理している事業所の管理工事別の実績を確認できる。異常検知された工事について、異常となった原因が組織にある場合、別の管理している工事についても、異常が発生している可能性がある。
図35は、表4上での乖離額確認イメージを説明するための図である。同図において、例えば、工事Aが今回異常検知されたとする。工事Eも同様に予測値から大きく乖離した実績となっていることが確認できる。
【0187】
(確認ポイント)
工種事に切り替えて出来高の推移(工期進捗率別の累計進捗率)を分析する例を説明する。
図36は、グラフ1を用いた分析イメージを説明するための図であり、(A)は、工種:建築の場合、(B)は、工種:解体の場合を示している。
【0188】
工種のような工事の特徴によって、進捗率の推移の形が異なるケースは多い。似たような進捗率の推移を示す工事の特徴としては、下記のような種類が考えられる。
【0189】
・工期の条件指定イメージ:1か月単位で分割して予測値算出する。例えば、6か月工期、7か月工期、8か月工期、・・・・24か月工期(2年工期)・・・etc、数か月単位で分割して予測値算出する。例えば、6~12か月工期(6か月スパン)、12~24か月(1年スパン)・・・etc
・工種の条件指定イメージ:本実施例で詳細に説明している。
・公民区分(公共工事or民間工事)の条件指定イメージ:公共工事で予測値算出、民間工事で予測値算出、・・・etc
【0190】
どの特徴に限定して分析すれば異常を捉えられるか、進捗率分析として妥当か事前にわかっている企業は少なく、この特徴を捉える点から分析が必要となるケースが多い。この特徴を捉える分析について、当処理フロー2(3-2)1・2で説明した処理を特徴単位で実行してみることで、自社の特徴がどこに現れるか分析が可能となる。
【0191】
例えば、工期を1か月単位又は数ヶ月単位で分割して予測値算出する場合は、
図37に示すように、工事データの取得範囲条件データに行を追加して、例えば、条件「判定範囲」、条件値「1」を登録しておくことで実行可能である。この列が追加されていた場合、異常検知用のデータ取得時に使用するパラメータに追加で情報を渡して、データ取得を行う。
【0192】
(3).分析用のグラフの表示を切り替えて分析を実施(特定条件を指定しない場合)
(3-1).異常検知時点の予測値算出において、特定条件(工期・工種等)を指定せずに実行企業が持つ全工事を対象とした場合の出来高推移の特徴が現れるケースの分析を行う。異常判定時に使用する[工事データの取得範囲条件データ]の「データ参照単位」を指定せずに、予測値を算出する。基本的には、当処理フローの1:異常検知および2:初回画面表示処理と同様の処理を行う。処理が異なる点を記載する。
【0193】
1.異常検知
1-1.異常を検知するデータの範囲条件を取得する。
設定されている工事データの取得範囲条件データ及び異常判定結果登録対象期間データを取得する。
図38は、工事データの取得範囲条件データの例を示す図である。同図において、条件値が設定されていない。ここでは、条件値を設定しないパターンを説明する(全工事を対象として進捗率の推移を分析する)。
【0194】
1-2.業務データベース106a内の工事データを参照して、工事別の工期進捗率別の予測進捗率を計算する。
1-1で取得した工事データの取得範囲条件データ内にある値をパラメータに設定してデータ取得を行う。
図39(A)に示すようなパラメータ(データ参照単位 未指定)をキーとして、業務データベース106a内の工事データを参照して、
図39(B)に示すような工事データを取得する。
【0195】
1-3.1-2で取得した工事データより、今回データ参照単位が未指定より全工事のデータを母集団として、この母集団を基にした工期進捗率別の累計進捗率(近似値)を算出する。
【0196】
図40(A)は、取得した工事データを示しており、
図40(B)は、工事データの各工事をプロットしたものであり、横軸は工期進捗率(%)、縦軸は累計進捗率(%)を示している。
【0197】
図41は、近似曲線F(x)、予測値進捗率、上下限値の算出を説明するための図である。
図41(A)に示すように、完成している(過去の)工事を母集団として、母集団の工期進捗率別累計進捗率の近似曲線F(x)を計算する。また、母集団内のデータの散らばり傾向に着目して標準偏差関数S(x)を計算する。そして、
図41(B)に示すように、近似曲線F(x)と標準偏差関数S(x)に工期進捗率をそれぞれ代入して、未完成工事の予測進捗率・上下限値を算出する。このように、F(x)により予測進捗率を算出し、S(x)により上下限値を算出する。
【0198】
例えば、
図42A(A)に示すようなパラメータ(X軸項目:工期進捗率、Y軸項目:累計進捗率、近似関数候補[多項式関数,ロジスティック関数,バスモデル関数]等)をキーとして、予測値・上下限値を算出する。
図42A(B)は、算出される工期進捗率別の累計進捗率の近似値データの例を示しており、工期進捗率、予測値(累計進捗率の予測値)、下限値、上限値の項目を備えている。なお、今回はすでにスケール合わせした後の値を用いて説明を行うため、スケール合わせに関する説明は省略する。F(x)算出後、データの散らばりを計算して標準偏差関数S(x)を算出する。F(x)とS(x)に工期進捗率をxとして代入し、F(x)→予測値、S(x)→上下限値をそれぞれ算出する。関数は同一のものを用いて、工種別・工事別にそれぞれ予測値・上下限値を計算する。
【0199】
図42B(D)は、予測値・上下限値を算出後の工事データを示しており、予測値(予測進捗率)、下限値、上限値に加えて、工種の情報も保持する。
【0200】
図42B(C)に示す、2-1で取得した異常判定結果登録対象期間データの「取得基準」に従い、異常判定の実行日が所属する月の前月のデータに異常がないか判定を行う。今回は、実行日:2022/11/07のため、2022/10で異常がないか判定を行う。
【0201】
2-4.グラフ表示用のデータを取得する。
当処理フローの2の処理において、(2-3)~(2-5)のパラメータにある工種は空(未指定)としてデータ取得を行う。データ抽出の条件が追加となること以外に異なる点がないため、ここでは説明を省略する。
【0202】
2-5.グラフ表示用のデータをグラフにバインドして、グラフ着色を行って表示処理を完了する。当処理フローの2の処理と同様処理の為、説明を省略する。
図43は、最終的に描画されるイメージを示す図である。
【0203】
(確認ポイント)
出来高の傾向を捉えられる特定の条件を事前に把握できていない場合に利用されるケースが多いことを想定する。まず全社での出来高の傾向を確認して、参考とならないような結果が確認できた場合に、傾向が現れそうな特徴を指定して再確認しながら、自社の傾向を掴んでいく操作が想定される。企業によっては、全社での出来高の傾向を確認した時点で、工事がたどりうる出来高傾向がつかめるケースも存在する。
【0204】
図44は、全社傾向確認例を説明するための図である。傾き・集中といったプロット上の特徴がなく、自社の傾向が表れていない状態であり、これでは工事の出来高の傾向がつかめない。
【0205】
図45は、特定条件で抽出して確認した例を説明するための図である。
図45(A)に示すように、工事の工期別に発生しうる近似的な累計進捗の値が確認できる。状態右肩上がりの出来高推移と思われる傾向が浮かんでくる。
図45(B)は、実際に当ジョブを利用してみた状態を示す図であり、特定条件を絞らず、全社で確認した場合にこのような傾向がつかめるケースも存在する。
【0206】
(3-2).過去の決算期にて発生していた出来高実績と予測を確認・分析する。
図46A(A)に示すように、抽出条件の決算期の項目を指定して、出力するデータを切り替えて分析する。今期を50(2022/04~2023/03)としたとき、49(2021/04~2022/03)の指定(昨期の指定)に切り換える。
【0207】
図46B(B)は、決算期の切り換え後の分析用画面の表示例を示す図である。決算期の抽出項目が影響するグラフに関して以下のように、指定した値に応じてグラフ表示を切り替える。
・グラフ1:実績が指定期中に発生している工事に限定してグラフに出力
・グラフ2:異常判定された工事が指定期中に実績あればグラフ出力・なければグラフ出力無
・表3:表示する期中の情報・前期/工期の情報を指定決算期に合わせて切り替え
・表4:表示する期中の情報・前期/工期の情報を指定決算期に合わせて切り替え
【0208】
以降、データ取得~画面表示までの処理を記載するが、基本は(2)の処理と同様であるため、異なる処理となる箇所についてのみ説明を行う。
【0209】
1.業務データベース106a内の工事データより、累計進捗率推移_実績データを取得する。抽出条件に初期セットした条件をもとに、累計進捗率推移_実績データを取得して、図表1,2の表示用のデータとして取得する。
【0210】
図47A(A)に示すパラメータでは、工種が設定されていない。開始期間「2021/04」、期間終了「2022/03」、工事「工事A」をパラメータ(キー)に基づいて、
図47B(D)に示す工事データを抽出して、
図47B(C)に示す累計進捗率推移_実績データを取得する。
【0211】
この場合、上記の期間開始~期間終了の期間に、「会計年月」が含まれるレコードが1レコードでも存在する場合、その工事は取得対象となる。例えば、
図47B(B)に示すように、この例では、工事A・B・Cは全て取得対象となる。
【0212】
2.1にて取得した、累計進捗率推移_実績データ及び異常判定結果データテーブル106c内の異常判定結果データより「組織別売上金額推移データ」を取得する。
【0213】
図48B(D)は、(2-3)で取得した累計進捗率推移_実績データの例、
図48B(E)は、異常判定結果データの例、
図48A(C)は、組織別売上金額推移データの例を示している。
【0214】
図48A(A)に示すような、開始期間「2021/04」、期間終了「2022/03」をパラメータ(キー)として、
図48B(D)に示す累計進捗率推移_実績データ、
図48B(E)に示す異常判定結果データより、
図48A(C)に示す組織別売上金額推移データを、図表3の表示用のデータとして取得する。グラフ3では、該当の決算期内で発生した工事実績のみを確認し、
図48A(B)に示す枠内の実績のみのデータを取得して表示する。
【0215】
会計年月「2022/03」の例では、部門A:実績「200」、予測「600」、部門B:実績「9,000」、予測「9,200」、事業所A(部門A+部門B):実績「9,200」、予測「9,800」となる。
【0216】
3.1にて取得した累計進捗率推移_実績データ及び異常判定結果データテーブル106c内の異常判定結果データより工事別売上金額推移データを図表4の表示用データとして取得する。
【0217】
図49A(C)は、工事別売上金額推移データのデータ例、
図49B(D)は、(2-3)で取得した累計進捗率推移_実績データのデータ例、
図49B(E)は、異常判定結果データのデータ例を示している。
【0218】
図49A(A)に示すような、開始期間「2021/04」、期間終了「2022/03」、工事「工事A」をパラメータ(キー)として、
図49B(D)に示す累計進捗率推移_実績データ及び
図49B(E)に示す異常判定結果データより、
図49A(C)に示す工事別売上金額推移データを、図表4の表示用のデータとして取得する。上記の期間に、「会計年月」が含まれるレコードが1レコードでも存在する場合、その工事は取得対象となる。例えば、
図49A(B)の表の場合、工事A・B・Cは取得対象となる。
【0219】
4.(2)の処理と1~3の処理より、取得したデータのグラフを分析用画面に出力する。
図50は、分析用画面の表示例を示す図である。
【0220】
(確認ポイント)
図51は、表3,4に注目した確認ポイントを説明するための図である。
図51(A)は、表3の確認ポイントを説明するための図である。同図において、指定した決算期内で発生した工事の売上実績を確認可能となっている。異常検知された工事が期を跨ぐ場合に、予測値との大きな乖離が発生している期の情報を確認することでリアルな実績での状況を確認可能となる。
【0221】
図51(B)は、表4の確認ポイントを説明するための図である。同図において、指定した決算期時点での工事の進捗を確認可能となっている。異常検知された工事について、いつ時点から予測値との乖離が広がり始めているか期別に分析可能となる。
【0222】
[3-3.近似曲線、予測値、上限値・下限値の算出方法]
図52~
図75を参照して、検知部102bが、近似曲線、予測値、上限値・下限値を算出する場合の算出方法を詳細に説明する。上記処理では、工事データを処理対象としているが、ここでは、月別実績データを処理対象とした場合を一例と説明する。処理対象は異なるが算出方法は同様である。ここでの算出方法の説明は上記の処理にも援用される。
図75は、本発明の特徴部分である上記[3-1.全体の処理]及び[3-2.サンプルデータ]の説明に用いた項目(当発明の説明で用いる項目名)と、[3-3.近似曲線、予測値、上限値・下限値の算出方法]で説明に用いる項目(近似曲線アルゴリズムの説明に用いる項目名)の対応関係を示す図である。当発明の説明で用いる項目名の「工期進捗率」、「累計進捗率」、「売上金額(実績)」は、近似曲線アルゴリズムの説明に用いる項目名「予定工期経過率」、「実績進捗率」、「実績額」にそれぞれ対応している。
【0223】
図52は、異常判定定義マスタ106dの構成例を示す図である。異常判定定義マスタ106dは、異常判定定義ID、異常判定定義名、データ取得定義、使用アルゴリズム、パラメータ設定を関連づけて登録したものである。
【0224】
同図に示す例では、異常判定定義ID「JD001」、異常判定定義名「案件進捗アラート」、使用アルゴリズム「近似曲線」、パラメータ設定{X軸項目:経過月数,Y軸項目:累計実績額,X軸スケール統一項目:予定工期,Y軸スケール統一項目:実績額,近似関数候補名:[多項式関数,ロジスティック関数,バスモデル関数],滑らか度:12,有意水準:0.1}となっている。
【0225】
(T1:近似曲線算出処理)
図53A~
図55を参照して、近似曲線算出処理の詳細を説明する。近似曲線算出処理では、案件コードによるデータの区別はせずに、過去の案件の月別実績データの案件の全てのデータを元に近似部品を利用して近似曲線を計算する。本処理は、以下の特徴を有している。
【0226】
(1)近似関数の選択肢には「多項式関数・指数関数・対数関数・ロジスティック関数・バスモデル関数」があり、複数選択することができる。
(2)選択された関数の中で一番AIC(赤池情報量基準)という近似の精度を測る指標の最も良いものが、以降の処理フローで使われる近似曲線となる。
【0227】
以降、この最も近似の精度がよいとされた近似関数を「Y=F(X)」とし、この近似関数名を「実績中心近似関数」、この近似関数をグラフに表示した場合の曲線のことを「実績中心近似曲線」と呼ぶ。Xは予定工期進捗率、Yは実績進捗率、Fは実績中心近似関数を表し、FにX:予定工期経過率を渡すことで、Y:実績進捗率の予測値が計算される。
【0228】
上記の「バスモデル関数」は、国土交通省で建設工事の進捗率を推測する際に使われている。また、バスモデル関数と比較するために、多項式関数やロジスティック関数も使われている(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/content/001348995.pdf)。
【0229】
具体的には、以下の処理を行う。
【0230】
(1)異常判定定義マスタ106dに登録されているパラメータ設定のうち、X軸項目、Y軸項目、近似関数候補名ごとの関数の情報を近似部品に渡して最適な係数を求める。
(2)近似部品から返ってくる係数を元に、AICを計算する。
(3)AICの最も小さな近似関数を実績中心近似関数とする。
【0231】
以下それぞれの処理を詳細に説明する。
(1)異常判定定義マスタ106dに登録されているパラメータ設定のうち、X軸項目、Y軸項目、近似関数候補名ごとの関数の情報を近似部品に渡して最適な係数を求める。
【0232】
図53A及び
図53Bにおいて、(A)は、異常判定定義マスタ106dのデータ例を示している。この例では、異常判定定義ID「JD001」、異常判定定義名「案件進捗アラート」、使用アルゴリズム「近似曲線」、パラメータ設定{X軸項目:経過月数,Y軸項目:累計実績額,近似関数候補名:[多項式関数,ロジスティック関数,バスモデル関数],・・・}となっている。近似する関数の選択肢は、異常判定定義マスタ106dに登録されているデータのパラメータ設定の近似関数候補に対応する、近似曲線を引きたいデータのX値・Y値は異常判定定義マスタ106dに登録されているデータのパラメータ設定のX値項目の加工後の値・Y値項目の加工後の値に対応する。
【0233】
(B)は、加工後の過去の案件の月別実績データの例を示している。(C)は、近似関数候補を示しており、多項式関数、ロジスティック関数、バスモデル関数が示されている。多項式関数が選択されている場合は、0次~6次までの多項式関数式が渡される。この例では、近似関数候補に多項式関数・ロジスティック関数・バスモデル関数が選択されているため、近似部品に渡される近似したい関数は上の9個となる。近似関数候補には、指数関数や対数関数を選択してもよい。
【0234】
近似関数候補ごとに以下の処理を行う。例として、近似したい関数がy=a/(1+ebx+c)の場合(ロジスティック関数)を説明する。(D)は、近似部品に渡される情報(1)(近似曲線を引き渡したいデータ)の例を示している。(E)は、近似部品に渡される情報(2)(近似したい関数)の例を示している。(F)は、近似部品から返ってくる情報(係数)の例を示しており、a=100.85、b=-0.069、c=3.68となっている。
【0235】
(2)近似部品から返ってくる係数を元に、AICを計算する。AICの計算については、http://www.radio3.ee.uec.ac.jp/ronbun/TR_YK_048_AIC.pdf参照。
【0236】
図54において、(A)は、AICの計算式を示しており、AIC=(データサイズ)×log(予測値との差の2乗和)/(データサイズ)+2×(係数の個数)となっている。ここで、Yの予測値は、近似関数に近似曲線を引きたいデータのXが代入されて計算される。Yの予測値との差の2乗は、近似曲線を引きたいデータの(Yの値-Yの予測値)の二乗で計算される。データサイズは、データ(X,Y)の組の数である。
【0237】
AICの特徴として、予測値との差の2乗和が小さいほどAICは小さくなり、係数の数が大きいほど、AICは大きくなる。AICの値自体に意味はなく、AICの値の大小を比較することで近似関数の優劣を判断する指標である。AICの計算式の解釈を説明する。AICの計算式の第1項「(データサイズ)×log(予測値との差の2乗和)/(データサイズ)」は、近似曲線を引きたいデータに対する精度の良さ、第2項「2×(係数の個数)」は、係数の数が多いことに対するペナルティを表している。AICをもとに近似関数の優劣を判断することで、近似曲線を引きたいデータに過度にフィットすることなく、データの変化にも強い、バランスのよい近似関数が選択される。AICをもとに近似関数の優劣を判断することによる効果を説明する。時間が経つにつれて過去の案件の実績データが増えたとしても、過度に過去のデータにフィットした近似関数が選択されるわけではないため、次の2つの効果が得られる。(1)異常判定を行うたびに近似関数の種類や次数が頻繁に変化することを防ぐことができる。(2)案件進捗管理の徹底などにより、予定の進捗を大きく外れる案件が激減した場合などでも、近似曲線が管理の徹底の前後でなだらかにシフトする。
【0238】
(B)は、近似曲線を引きたいデータ(X,Y)を示している。(C)は、Yの予測値、Yの予測値との差の2乗和を示している。
【0239】
AICの計算式に、データサイズ、Yの予測値との差の2乗和、係数、係数の個数=3を代入すると、(D)に示すように、AIC=94.18となる。
【0240】
上記処理を近似関数候補全てにおいて処理が終了した場合、
図55(A)に示すようなデータを取得でき、近似関数候補全てのAICを取得できる。同図においては、「・・・」には、実際に数値が入る。
【0241】
(3)AICの最も小さな近似関数を実績中心近似関数とする。
近似関数候補すべてに対してAICを計算した結果、ロジスティック関数のAICが最も小さかったという仮定の下で処理フローの説明をすすめていく。実績中心近似関数をY=F(X)とすると、本説明では、実績中心近似関数を、
図55(B)に示すような、y=100.85/(1+e
-0.069X+3.68)とする。これは、AICが最も小さい関数で、近似したい関数に係数がセットされたものである。以降、この関数をF(X)とするとして扱う。
【0242】
(T2:近似曲線からのデータの散らばりを計算する処理)
図56及び
図57を参照して、実績中心近似曲線からのデータの散らばりを計算する処理の詳細を説明する。実績中心近似曲線からのデータの散らばりを計算する処理では、以下の処理を行う。
【0243】
(1)過去の案件の月別実績データの各予定工期経過率における実績進捗率の予測値を計算する。
(2)予測値と実績進捗率の実際のデータとの差(残差)を計算する。
(3)残差を2乗した値(残差の平方)を計算する。
【0244】
図56を参照して、具体的な計算を説明する。
(1)実績進捗率の予測値を、予測値=F(工期進捗率)で計算する。
(2)実績進捗率と予測値の差である残差を、残差=実績進捗率-予測値で計算する。
(3)残差の2乗を、残差の平方=(残差)
2で計算する。
【0245】
図56(A)は、過去の案件の実績データの予定工期経過率[%]と、実績進捗率[%]を示している。
図56(B)は、新たに追加される列である予測値[%]、残差[%]、残差の平方[%
2]を示している。予測値[%]は、予定工期経過率を実績中心近似関数F(X)に渡すことで計算される。残差を2乗しているため、残差平方は全て0以上の値となっている。残差を2乗することで、過去の実績データが近似曲線からどれだけ離れているかを残差平方の大小で表現できる。
【0246】
図57(A)は、過去の案件データの予測値・近似曲線を示したグラフであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示しており、過去の実績データをプロットすると共に、近似曲線上に予測値をプロットしている。実績進捗率-予測値が残差を示している。
【0247】
図57(B)は、残差を示したグラフであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、残差[%]を示している。
【0248】
図57(C)は、残差の平方を示したグラフであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、残差の平方[%
2]を示している。
【0249】
(T3:データの散らばりの傾向を計算する処理)
図58A~
図60を参照して、データの散らばりの傾向を計算する処理の詳細を説明する。データの散らばりの傾向を計算する処理では、以下の処理を行う。
【0250】
(1)残差の平方に対して近似曲線を引き、この近似関数名を残差平方近似関数と名付けで、この残差平方近似関数をσ2=V(X)とする。残差平方近似関数は(多項式関数)2の形である。残差平方近似関数にX:予定工期経過率を渡すことで、その予定工期経過率における残差平方の予測値が返される。
(2)残差平方近似関数の平方根をとり、この関数名を標準偏差関数とし、この標準偏差関数をσ=S(X)とする。標準偏差関数にX:予定工期経過率を渡すことで、その予定工期経過率における標準偏差(実績進捗率の散らばり度合い)が返される。
【0251】
残差平方近似関数に平方根を取ることで、標準偏差を返す関数を作ることができる。以下、具体的な処理を説明する。
【0252】
(1)残差の平方に対して近似部品を利用して近似曲線を引く(この曲線を残差平方近似曲線と名付ける)。
図58A及び
図58Bにおいて、(A)は、過去の案件の実績データの予定工期経過率[%]、実績進捗率[%]、予測値[%]、残差[%]、残差の平方[%
2]を示している。(B)は、残差平方近似関数の候補を示している。
【0253】
(多項式関数)2の関数を近似したい関数に指定している理由は以下の通りである。
1.案件の進捗率を近似するわけではないため、案件の進捗を表現するとされているバスモデル関数など特殊な関数を指定する必要がないため、出来るだけ単純な関数を指定している。
2.実績進捗率を近似する時、実績進捗率は予定工期経過率が進むに従って増加していくものだが、残差の平方は予定工期経過率が進むにしたがって増加したり減少したりする可能性があるため、残差の平方の増減の変化を捉えるために(多項式関数)2を採用している。
3.(多項式関数)2にすることで後に残差平方近似関数に平方根を取った(多項式関数)を標準偏差関数として利用するため。
【0254】
残差平方近似関数候補ごとに以下の処理を行う。例として近似したい関数をy=(ax
2+bx+c)
2の場合を説明する。
図58A及び
図58Bにおいて、(C)は、近似部品に渡される情報(1)(近似曲線を引きたいデータ)、(D)は、近似部品に渡される情報(2)(近似したい関数)を示している。(E)は、近似部品から返ってくる情報を示しており、係数は、a=-0.0028,b=0.3209,c=2.1336となっている。
【0255】
つぎに、AICを計算する。処理フローの(T1:近似曲線算出処理)と同様の処理を行うため、詳細な説明は省略する。
【0256】
上記処理を残差の平方を近似する関数の候補すべてにおいて処理が終了した場合は、
図59(A)に示すようなデータが取得される。
【0257】
この例では、AICが最も小さい関数で、近似したい関数に係数がセットされたものを、
図59(B)に示すように、残差平方近似関数y=(-0.0028x
2+0.3209x+2.1336)
2とする。以降、この(2次関数)
2の形の関数のAICが最も小さかったという仮定の下で以下の処理のフローの説明を進めていく。残差平方近似関数をσ
2=V(X)とする。この例では、V(X)=(-0.0028X
2+0.3209X+2.1336)
2となる。
【0258】
図59(C)は、残差の平方に対して残差平方近似曲線V(X)を引いたグラフを示しており、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、残差の平方[%
2]を示している。このように、近似曲線を引くことで、案件の開始から初期段階・後期段階は近似曲線からのずれが小さく、中期段階はずれが大きいなど、工期経過率に応じたデータのばらつきを考慮することができる。
【0259】
(2)標準偏差関数を求める。
(1)で求めた残差平方近似関数のXに予定工期経過率を渡したときの出力値は単位が[%2]であるため、平方根を付けて単位が[%]の標準偏差関数に変換する。標準偏差関数S(X)の算出方法は、S(X)=√V(X)とする。本処理フローの例では、V(X)=(-0.0028X2+0.3209X+2.1336)2であるため、S(X)=-0.0028X2+0.3209X+2.1336となる。
【0260】
図60(A)は、過去の案件の実績データの予定工期経過率、実績進捗率、予測値、残差、残差の平方に、残差の絶対値を加えたものを示している。
図60(B)は、標準偏差関数V(X)を標準偏差曲線として表示したグラフを示しており、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、残差の絶対値[%
2]を示している。残差の絶対値は、過去の案件の実績データと実績中心近似曲線とのズレの距離を意味する。なお、実際の計算処理では、過去の案件の実績データと実績中心近似関数による予測値の残差から残差の絶対値を計算することはないが、標準偏差曲線をグラフに表示する際の参考として記載している。
【0261】
(T4:異常判定対象案件の予測値・閾値の計算処理)
図61~
図64を参照して、異常判定対象案件の予測値・閾値の計算処理の詳細を説明する。これまでの処理により、実績進捗率の予測値を求める実績中心近似関数F(X)と標準偏差関数S(X)は準備されている。異常判定対象案件の予測値・閾値の計算処理では、過去の案件データは使用せず、異常判定対象案件の実績データを計算に用いる。異常判定対象案件の予測値・閾値の計算処理では、加工後の異常判定対象案件の実績データに対して、以下の処理を行う。
【0262】
(1)予定工期経過率・実績中心近似関数F(X)を用いて、予測値を求める。
(2)予定工期経過率・標準偏差関数S(X)を用いて標準偏差(近似曲線からのズレの距離の予測値)を計算する。
(3)標準偏差に有意水準を元に算出される一定値を掛けた値の分だけ、予測値の上下に幅を持たせて上側閾値・下側閾値とする。
【0263】
(1)予測値を求める。異常判定対象案件の予定工期経過率における実績進捗率の予測値を計算する。
【0264】
図61(A)は、加工後の異常判定対象案件の実績データの案件コード、会計年月、予定工期経過率、実績進捗率に、予測値の列を追加したものである。予測値は、実績中心近似関数F(X)に、x=予定工期経過率として算出したものである。
【0265】
図61(B)は、
図61(A)の予測値をグラフ化したものであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示している。
【0266】
(2)標準偏差を求める。加工後の異常判定対象案件の予定工期経過率における標準偏差を計算する。
【0267】
図62(A)は、加工後の異常判定対象案件の実績データの案件コード、会計年月、予定工期経過率、実績進捗率、予測値に、標準偏差の列を追加したものである。標準偏差は、標準偏差関数S(X)にx=予定工期経過率として算出したものである。計算された標準偏差は、実績中心近似曲線から標準偏差だけ離れる範囲内に実績データが入る可能性が68%であるということを意味する。
【0268】
図62(B)は、
図62(A)の標準偏差をグラフ化したものであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、標準偏差[%
2]を示している。
【0269】
(3)閾値を求める。
図63(A)は、加工後の異常判定対象案件の月別実績データの案件コード、会計年月、予定工期経過率、実績進捗率、予測値、標準偏差に、上側閾値[%」、下側閾値[%」の列を追加したものである。
【0270】
閾値の計算方法は、
図63(B)に示すように、上側閾値=予測値+Z
α/2×(標準偏差)、下側閾値=予測値-Z
α/2×(標準偏差)で算出する。Z
α/2は、標準正規分布の上側α/2%点の値を意味する。このαには、前提(1)にある異常判定定義マスタ106dに登録されているパラメータ設定(有意水準)の値を使用する。
【0271】
図64(A)は、異常判定定義マスタ106dのデータ例を示す図であり、異常判定定義ID「JD001」には、{有意水準:0.1}のパラメータが設定されている。
【0272】
例えば、有意水準αが0.1の場合は、α/2=0.05(5%)となり、Z
α/2=1.645となる。この時、
図64(B)において、異常判定対象案件B001の予定工期経過率40%のレコードに対して、上側閾値=28.678+1.645×10.415、下側閾値=28.678-1.645×10.415となる。実際の実績進捗率が下側閾値以上かつ上側閾値以下となる確率が90%程度だと解釈できる。逆にこの範囲を超えると異常だと判定される。
【0273】
図64(C)は、
図63(B)の予測値、上側閾値、下側閾値をグラフ化したものであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示している。なお、実績中心近似曲線と上側閾値、下側閾値のグラフを表示しているが、参考程度に表示しているだけである。
【0274】
図64(D)は、有意水準とパーセント点を説明するための図である(https://ai-trend.jp/basic-study/normal-distribution/normal-distribution/)。
【0275】
(T5:異常判定処理)
図65~
図66を参照して、異常判定処理の詳細を説明する。異常判定処理では、以下の処理を行う。
【0276】
(1)異常判定対象案件の月別実績データと前の処理で求めた閾値をもとに異常判定を行う。
(2)判定結果のデータを記憶部206のテーブル(不図示)に格納する。
【0277】
以下、異常判定処理の具体的な処理を説明する。
(1)異常判定対象案件に対して、前の処理で求めた閾値と異常判定対象案件の実績進捗率の大小を比較することで、異常を判定する。
【0278】
図65(A)は、異常判定対象案件の実績データの案件コード、会計年月、予定工期経過率、実績進捗率、予測値、標準偏差、上側閾値、下側閾値を示している。
【0279】
図65(B)は、
図65(A)の異常判定のグラフを示しており、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示しており、実績中心近似曲線、上側閾値、下側閾値、B001,B002がプロットされている。同図において、B001の予定工期経過率「40」、実績進捗率「60」は、上側閾値を超えているため異常と判定される。また、B002の予定工期経過率「57.143」、実績進捗率「20」は、下側上側閾値を下回ったため異常と判定される。例えば、上側閾値を超えた場合は、実績のかさましの不正の可能性が検知される。また、下側閾値を下回る場合は、進捗の遅延の可能性が検知される。
【0280】
(2)判定結果データを判定結果テーブルに格納する。
図66は、判定結果データの例を示す図である。判定結果データは、案件コード、会計年月、予定工期経過率、実績進捗率、予測値、標準偏差、上側閾値、下側閾値、判定結果(FALSEorTRUE)を含んでいてもよい。異常だと判定されたデータは、判定結果を「TRUE」とし、それ以外は、「FALSE」とする。
【0281】
(T6:表示用データの計算処理)
図67~
図69を参照して、表示用データの計算処理を詳細に説明する。ここまでの処理で、過去の案件を元にした実績中心近似関数F(X)と標準偏差関数S(X)は求まっている状態である。表示用データの計算処理では、表示用(近似曲線を画面に表示する用)のデータを作成し、結果付属情報用のテーブルに格納する。
【0282】
表示用データの計算処理では、以下の処理を行う。
(1)表示用のデータを表示する工期進捗率を求める。
(2)表示用のデータの近似曲線上の値、上側閾値・下側閾値の値を求める。
(3)近似曲線アルゴリズムの結果付属情報テーブルに結果を格納する。
【0283】
以下、具体的な処理内容を説明する。
(1)表示用のデータの表示する工期進捗率を求める。
表示するデータの工期進捗率は、過去の案件データの工期進捗率の最小値と最大値を「滑らか度」というパラメータの値で分割したものである。
図67は、過去の案件の実績データのグラフを示しており、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示しており、A001,A002,A003がプロットされている。
【0284】
この予定工期経過率の範囲0~120%を滑らか度12等分割して表示用データの工期進捗率を準備する。滑らか度は前提(1)にある異常判定定義マスタ106dに登録されているパラメータ設定(滑らか度)の値を使用する。
【0285】
図67(B)は、異常判定定義マスタ106dのデータ設定例を示している。同図に示す例では、異常判定定義ID「JD001」に、パラメータ「滑らか度:12」が設定されている。
【0286】
表示用データが画面上に表示される時は、予測値・上側閾値・下側閾値は折れ線グラフで表示される可能性があるため、「滑らか度」と大きい値にするほど、折れ線グラフは曲線に近い滑らかな線となる。
【0287】
0~120%を12等分割することで、
図67(C)に示すような表示用データの工期進捗率を準備する。この例では、各工期進捗率の間隔は0~120%を12等分した10%であり、表示用データの点の数としては13点になる。
【0288】
(2)表示用のデータの近似曲線上の値、上側閾値・下側閾値の値を求める。
過去の案件の実績データに対して処理を行った時に得られたF(X)、S(X)を用いて、表示用データの工期進捗率の時の近似曲線上の値、上側閾値・下側閾値の値を求める。異常判定対象案件の予測値・閾値の計算で行った処理と全く同じであるため、詳しい計算処理の説明は省略する。
【0289】
計算処理後は、
図68(A)に示すような表示用データとなり、予定工期経過率に、予測値、上側閾値、下側閾値の列が追加される。
図68(B)は、
図68(A)の表示用データをグラフ化(折れ線グラフ)したものであり、横軸は、予定工期経過率[%]、縦軸は、実績進捗率[%]を示しており、予測値、上側閾値、下側閾値がプロットされている。グラフ上の白抜きの点の値が計算される。
【0290】
グラフで見るとわかるように、上側閾値、下側閾値と実績中心近似曲線との幅は標準偏差関数を用いて計算されるため、以下の2つの特徴が反映された閾値となっている。
【0291】
1.案件の初期や後期段階では近似曲線からずれる可能性が低い。これにより、近似曲線から少しでもずれた場合の異常性が高いため、閾値の幅は狭い。
2.案件の中期段階では近似曲線からずれる可能性が高い。これにより、正常であっても近似曲線からある程度ずれる可能性があり、多少ずれても異常性が低いため、閾値の幅は広い。
【0292】
(3)近似曲線結果付属情報テーブルに格納する。
以下の表示用のデータを近似曲線アルゴリズムの結果付属情報テーブル(以下、「近似曲線結果付属情報テーブル」と呼ぶ)に格納する。近似曲線結果付属情報テーブルには、異常判定結果を画面上にグラフとして表示する際に補足情報として表示するデータが格納される。異常判定対象案件のデータ自体とは異なり、異常判定対象案件のデータと比較するためのデータが格納される。格納されるデータは過去の案件のデータのみをもとに算出されたデータである。
【0293】
図69(A)は、表示用データのデータ例を示しており、
図69(B)は、表示用データに基づいて近似曲線結果付属情報テーブル106c格納される近似曲線結果付属情報の例を示す図である。近似曲線結果付属情報は、実行履歴ID、行番号、X、Y、上側閾値、下側閾値の項目を備えている。
【0294】
ここで、実行履歴IDは、異常判定の1度の実行につき自動で割り振られるID、行番号は、表示用データを行ごとに0から連番を振ったもの、Xは、表示用データのX軸の値に相当するもの、Yは、表示用データのY軸の値に相当するもの、上側閾値は、表示用データの上側閾値、下側閾値は、表示用データの下側閾値である。
【0295】
以上、判定結果データ(
図66参照)と近似曲線結果付属情報(
図69(B)参照)を用いて、異常を検知した場合には、異常検知のメッセージと異常判定結果のグラフ(例えば、折れ線グラフ)を表示する。
【0296】
(過去の案件の加工方法の選択肢)
図70~
図74を参照して、過去の案件の月別実績データの加工方法の選択肢について説明する。上述したように、異常判定定義マスタ106dでスケール統一項目を設定できるようになっている。
【0297】
図70は、異常判定定義マスタ106dの設定例を示す図である。X軸スケール統一項目に設定される想定の項目は、予定工期OR実施期間、Y軸スケール統一項目に設定される想定の項目は、予算OR実績額である。
図70に示す異常判定定義マスタ106dの設定例は、建設工事業の1例だが、その他業種で利用される想定もある。
【0298】
本異常検知システムのユーザの業界に従って、X軸項目・Y軸項目・X軸スケール統一項目・Y軸スケール統一項目は自由に設定される。
【0299】
図71(A)は、過去の案件の月別実績データの例を示す図である。
図71(B)は、過去の案件の予定・実績データの例を示している。
【0300】
図72を参照して、過去の案件のデータの加工方法を4通り説明する。異常判定定義マスタ106dのパラメータ設定により4つのパターンABCDに分類する。
【0301】
A.X軸スケール統一項目:実施期間、Y軸スケール統一項目:実績額の場合
B.X軸スケール統一項目:予定工期、Y軸スケール統一項目:実績額の場合
C.X軸スケール統一項目:実施期間、Y軸スケール統一項目:予算の場合
D.X軸スケール統一項目:予定工期、Y軸スケール統一項目:予算の場合
【0302】
パターンABCDに以下のようにパターン名を名付ける。パターンAを、「予定工期・予算厳格型」、パターンBを、「予定工期柔軟・予算厳格型」、パターンCを、「予定工期厳格・予算柔軟型」、パターンDを「予定工期・予算柔軟型」とする。
【0303】
「厳格」・「柔軟」とは、案件完了時に予定工期や予算通りに完了したかをそれぞれ、厳格・柔軟にチェックすることを意味する。以下、パターンBの例を説明する。
【0304】
(パターンB.予定工期柔軟・予算厳格型 (X軸スケール統一項目:予定工期、Y軸スケール統一項目:実績額の場合))
図73及び
図74を参照して、パターンBの予定工期柔軟・予算厳格型を説明する。以下では、A003に加工を行った例を説明する。
図73(A)は、A003の月別実績データ、
図73(B)は、A003の予定・実績データの例を示している。A003の月別実績データに対して加工を行い、経過月数/予定工期により予定工期経過率、累計実績額/実績額により実績進捗率を算出すると、
図73(C)のようになる。
【0305】
全ての過去の案件の月別実績データに加工を行うと、
図74(A)に示すようになる。
図74(B)は、
図39(A)の過去の案件の月別実績データをグラフ化した図であり、
図74(C)は、表示用データの計算処理後のグラフを示している。
【0306】
過去の案件のX軸の値の最大値は120%となるため、以降の処理で算出される閾値はX値が120%付近で収束する。このため、異常判定対象案件が多少の遅れで完了しても正常な範囲内だと判定できるようになる。また、過去の案件のY軸の値の最大値は全て100%となるため、以降の処理で算出される閾値はY値が100%付近で収束する。このため、異常判定対象案件が開始前の予算通りに完了することを厳格にチェックできる。
【0307】
以上説明したように、本実施の形態によれば、指定される特定条件別に、過去の案件データの母集団を分け、母集団毎に、案件データの経過率と案件進捗率についての近似曲線を算出し、近似曲線の関数に経過率を代入して進捗率の予測値を算出し、近似曲線と案件進捗率の予測値に基づいて上限値・下限値を算出し、検知対象の案件データと上限値・下限値を比較して異常を検知する検知部102bと、異常を検知した案件データについて、分析用データを分析用画面に表示する表示制御部102cと、を備えているので、案件データの異常を自動で検知して、早期発見・対処を行うことが可能となる。
【0308】
[4.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0309】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0310】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0311】
[5.他の実施形態]
本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0312】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0313】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0314】
また、異常検知システム100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0315】
例えば、異常検知システム100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて異常検知システム100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0316】
また、このコンピュータプログラムは、異常検知システム100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0317】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0318】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0319】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0320】
また、異常検知システム100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、異常検知システム100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0321】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0322】
100 異常検知システム
102 制御部
102a 記憶制御部
102b 検知部
102c 表示制御部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 業務データベース
106b 異常検知実行用データテーブル
106c 異常判定結果データテーブル
106d 異常判定定義マスタ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
300 ネットワーク