(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013443
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/66 20060101AFI20240125BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20240125BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240125BHJP
C10M 169/02 20060101ALI20240125BHJP
C10M 115/08 20060101ALN20240125BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20240125BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240125BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C19/38
F16C33/58
C10M169/02
C10M115/08
C10N50:10
C10N30:00 Z
C10N40:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115529
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 知樹
【テーマコード(参考)】
3J701
4H104
【Fターム(参考)】
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA53
3J701BA57
3J701BA69
3J701CA40
3J701EA63
3J701EA70
3J701FA38
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB31
3J701XE03
3J701XE33
3J701XE34
4H104BE13B
4H104EA02A
4H104LA20
4H104PA01
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】車両走行の全回転領域にわたって低トルク化を実現することができる車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】内周に複列の外側軌道面2c・2dを有する外方部材(外輪2)と、外周に複列の外側軌道面2c・2dと対向する複列の内側軌道面3d・4aを有する内方部材(ハブ輪3・内輪4)と、外側軌道面2c・2dと内側軌道面3d・4aとの間に転動自在に収容された複数の円錐ころ51とを備え、内側軌道面3d・4aには、円錐ころ51の大径側端面51aが摺接する大鍔部3e・4bが一体的に形成された車輪用軸受装置1であって、大鍔部3e・4bは、算術平均粗さが0.08μmRa以下であり、円錐ころ51の周囲に充填されるグリースの基油は、40℃における動粘度が40~80mm
2/sである、とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動自在に収容された複数の円錐ころとを備え、
前記内側軌道面には、前記円錐ころの大径側端面が摺接する大鍔部が一体的に形成された車輪用軸受装置であって、
前記大鍔部は、算術平均粗さが0.08μmRa以下であり、前記円錐ころの周囲に充填されるグリースの基油は、40℃における動粘度が40~80mm2/sである、ことを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記グリースの基油が合成炭化水素油である、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記グリースの増ちょう剤が脂環式脂肪族ジウレアである、ことを特徴する請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記グリースのちょう度が200~300である、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記内方部材は、インナー側端部において縮径された小径段部を有するハブ輪、及び前記ハブ輪の小径段部に圧入された内輪からなり、前記ハブ輪の外周に前記内側軌道面が直接形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、複数の転動体を介してハブ輪を含む内方部材が外方部材に回転自在に支持されている。車輪用軸受装置は、転動体が円錐ころからなる複列円錐ころ軸受や、転動体がボールからなる複列アンギュラ玉軸受がある。
【0003】
ところで、車輪用軸受装置は、車両の燃費及び航続距離を向上させるため低トルク化が求められている。しかし、複列円錐ころ軸受は、複列アンギュラ玉軸受と比べて、軌道面が線接触であるとともに、鍔部では円錐ころが摺接するため、回転トルクが高くなる。
【0004】
車輪用軸受装置は、低トルク化を図るため軸受内部仕様とグリースの最適化が行われている。例えば、特許文献1には、円錐ころ軸受用グリース組成物が記載されている。円錐ころ軸受用グリース組成物は、金属基の価数が2価である金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、粘度指数が110以上であって流動点が-35℃以下である合成油を基油全体の40%以上含む基油、増ちょう剤、及び酸化防止剤を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1における円錐ころ軸受用グリース組成物は、成分全体の40℃における動粘度が20~300mm2/sであるため、グリース組成の範囲が広く、低トルク化を図るには不十分であった。また、攪拌抵抗の低減手法や軸受内部構造への言及がないため、効果が限定的であった。また、一般的に、低トルク化のためには、グリースの低粘度化が必要である。しかし、円錐ころが摺接する鍔部では油膜形成能力が低下し、低速回転領域における回転トルクが高くなるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明においては、車両走行の全回転領域にわたって低トルク化を実現することができる車輪用軸受装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動自在に収容された複数の円錐ころとを備え、
前記内側軌道面には、前記円錐ころの大径側端面が摺接する大鍔部が一体的に形成された車輪用軸受装置であって、
前記大鍔部は、算術平均粗さが0.08μmRa以下であり、前記円錐ころの周囲に充填されるグリースの基油は、40℃における動粘度が40~80mm2/sである、としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
即ち、第一の発明によれば、車両走行の全回転領域にわたって低トルク化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】アウター側の円錐ころと保持器の構成を示す拡大断面図。
【
図3】インナー側の円錐ころと保持器の構成を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、
図1及び
図2を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
【0013】
図1に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列であるインナー側及びアウター側の転動体列5、シール部材であるインナー側シール部材6、シール部材であるアウター側シール部材7を具備する。ここで、本明細書において、インナー側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、車輪用軸受装置1の回転軸Aと平行な方向を「軸方向」、車輪用軸受装置1の回転軸Aに直交する方向を「径方向」、車輪用軸受装置1の回転軸Aを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と表す。また、径方向における回転軸A側を「内径側」と規定し、径方向における内径側との反対側を「外径側」と表す。
【0014】
外輪2は、インナー側及びアウター側の転動体列5を介してハブ輪3と内輪4を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材7が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。外輪2とハブ輪3及び内輪4の間の内部空間には、グリースが充填されている。
【0015】
外輪2の内径面には、インナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが設けられている。外輪2の外径面には、懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
【0016】
ハブ輪3は、車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、円柱状に形成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外径面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3cが挿通されている。また、ハブ輪3は、アウター側の内側軌道面3dが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が嵌合されている。
【0017】
図2に示すように、ハブ輪3において、内側軌道面3dにおける大径側の端部には、外径側に突出する大鍔部3eが一体的に形成されている。また、内側軌道面3dにおける小径側の端部には、外径側に突出し、且つ大鍔部3eに比べて内径側に位置する小鍔部3fが一体的に形成されている。内側軌道面3dと大鍔部3eとの隅部には、大ぬすみ部3gが形成されている。また、内側軌道面3dと小鍔部3fとの隅部には、小ぬすみ部3hが形成されている。ここで、内側軌道面3dにおける大径側とは、内側軌道面3dの拡径側を意味する。また、内側軌道面3dにおける小径側とは、内側軌道面3dの縮径側を意味する。
【0018】
図1に示すように、内輪4は、インナー側及びアウター側の転動体列5に予圧を与えるものである。内輪4の外径面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、かしめによりハブ輪3のインナー側端部に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。内輪4は、その内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向するように配置されている。
【0019】
図3に示すように、内輪4において、内側軌道面4aにおける大径側の端部には、外径側に突出する大鍔部4bが一体的に形成されている。また、内側軌道面4aにおける小径側の端部には、外径側に突出し、且つ大鍔部4bに比べて内径側に位置する小鍔部4cが一体的に形成されている。内側軌道面4aと大鍔部4bとの隅部には、大ぬすみ部4dが形成されている。また、内側軌道面4aと小鍔部4cとの隅部には、小ぬすみ部4eが形成されている。ここで、内側軌道面4aにおける大径側とは、内側軌道面4aの拡径側を意味する。また、内側軌道面4aにおける小径側とは、内側軌道面4aの縮径側を意味する。
【0020】
図1に示すように、転動体列5は、転がり軸受構造の転動部分を構成するものである。インナー側の転動体列5は、複数の円錐ころ51と一つの保持器52とで構成されている。同様に、アウター側の転動体列5は、複数の円錐ころ51と一つの保持器52とで構成されている。即ち、車輪用軸受装置1は、転動体列5に円錐ころ51を使用した複列円錐ころ軸受を構成している。
【0021】
円錐ころ51は、それぞれが保持器52によって円形にかつ等間隔にならべられている。そして、インナー側の転動体列5を構成している円錐ころ51は、外輪2の外側軌道面2cと内輪4の内側軌道面4aとの間に転動自在に介装され、アウター側の転動体列5を構成している円錐ころ51は、外輪2の外側軌道面2dとハブ輪3の内側軌道面3dとの間に転動自在に介装されている。円錐ころ51は、周囲にグリースが充填されている。
【0022】
図2に示すように、アウター側の円錐ころ51は、大径側端面51aが大鍔部3eと摺接して、大鍔部3eによって大径側(即ち、大鍔部3e側)への移動が規制される。また、円錐ころ51は、軸方向の小径側に移動した場合に、小径側端面51bが小鍔部3fと摺接し、小鍔部3fによって軸方向の小径側(即ち、小鍔部3f側)への移動が規制される。
【0023】
図3に示すように、インナー側の円錐ころ51は、大径側端面51aが大鍔部4bと摺接して、大鍔部4bによって大径側(即ち、大鍔部4b側)への移動が規制される。また、円錐ころ51は、軸方向の小径側に移動した場合に、小径側端面51bが小鍔部4cと摺接し、小鍔部4cによって軸方向の小径側(即ち、小鍔部4c側)への移動が規制される。
【0024】
保持器52は、大円環部52aと小円環部52bとを複数の柱部52cでつないだテーパ形状の格子体となっている。柱部52cは、互いに隣り合う円錐ころ51と円錐ころ51との間を通り、これらの外周面51cに沿っている。これにより、円錐ころ51は、柱部52cによって周方向両側への移動が制限される。
【0025】
図1に示すように、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、複数のシールリップを接触させるパックシールから構成されている。インナー側シール部材6は、略円筒状のシール板と略円筒状のスリンガとを具備する。
【0026】
アウター側シール部材7は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材7は、シール板と同じ材質の鋼板を略円筒状に形成された芯金に例えばNBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数のシールリップが固着されている。
【0027】
次に、
図2及び
図3を用いて、車輪用軸受装置1の特徴点とその効果について述べる。なお、「低速回転領域」とは、例えば200rpmまでの回転速度の領域を指し、「高速回転領域」とは、例えば200rpmより大きい回転速度の領域を指す。また、鍔部とは、大鍔部3e、小鍔部3f、大鍔部4b、小鍔部4cを指す。
【0028】
大鍔部3eは、円錐ころ51の大径側端面51aと摺接する案内面3jに超仕上げ加工が施されており、案内面3jの算術平均粗さは0.08μmRaである。また、大鍔部4bは、円錐ころ51の大径側端面51aと摺接する案内面4fに超仕上げ加工が施されており、案内面4fの算術平均粗さは0.08μmRaである。大鍔部3e・4bにおいて、超仕上げ加工が施されることにより、グリースが低粘度油である場合でも早期に油膜を形成させることができる。これにより、低速回転領域での低トルク化を図ることができる。
【0029】
グリースの基油は、40℃における動粘度が40~80mm2/sである。グリースは、動粘度が低すぎると油膜切れによるピーリング損傷による不具合が生じ、動粘度が高すぎると低トルク効果が得られないが、上記のように動粘度を設定することにより、動粘度が最適化される。
【0030】
つまり、表1に示すように、動粘度が低いほど軌道面の回転トルクが低下して低トルク化を図ることができる。一方で、動粘度が低くなって油膜厚さが薄くなることで油膜パラメータΛが低下し、軌道面の損傷度が大きくなる。円錐ころ51と軌道面とが金属接触を起こさないためには、一般的にこの油膜パラメータΛは2以上であることが望ましいため、動粘度は40mm2/s以上に設定することが好ましい。逆に、動粘度が高くなりすぎると回転トルクが上がって車両の燃費が悪化するため、動粘度は80mm2/s以下に設定することが好ましい。なお、表1に示す油膜パラメータΛは車両直進時の軸受温度80℃における値である。
【0031】
【0032】
ここで、油膜パラメータΛとは「弾性流体潤滑理論により求まる油膜厚さhところの大端面および内輪の大鍔面の二乗平均粗さの合成粗さσとの比」で定義される。すなわち油膜パラメータΛ=h/σである。また、算術平均粗さRaと二乗平均粗さRqには一般にRq=1.25Raの関係があり、ころの大端面の二乗平均粗さをRq1と、大鍔面の二乗平均粗さをRq2とすると、合成粗さσはこのRqを用いて、σ=√(Rq1^2+Rq2^2)と表すことができる。
【0033】
特に車輪用軸受装置1では、車両の発進、停止時や交差点の旋回時などの低速走行時に回転数が100r/min以下となる頻度が高くなることから、表2に示すように、合成粗さσが大きいと恒常的に鍔部のΛが2以下となり、回転トルクが高くなる。また、従来においては油膜パラメータΛは1以上であれば良いとされていたが、Λが1以上2以下の場合でも金属接触は生じるため、大鍔部で生じる回転トルクは大きくなる。従って、大鍔部においては、油膜パラメータΛは2以上あることが望ましい。
【0034】
【0035】
複列円錐ころ軸受における回転トルクは、主に転がり粘性抵抗と大鍔部3e・4bの滑りトルク、及びグリースの攪拌抵抗によって支配されている。上記のように超仕上げ加工及び動粘度の最適化を行うことにより、低速回転領域で支配的な大鍔部3e・4bの滑りトルクを低減させて、実車で多用される低速走行時の燃費向上を図ることができる。
【0036】
以上のように構成される車輪用軸受装置1によれば、低速回転領域での低トルク化を図ることができるとともに、高速回転領域でも低トルク化を実現するグリースが適用される。従って、車両走行の全回転領域にわたって低トルク化を実現することができる。
【0037】
グリースの基油は、例えば100%の合成炭化水素油からなる。グリースの増ちょう剤は、合成炭化水素油と親和性が高い脂環式脂肪族ジウレアからなる。なお、複列円錐ころ軸受におけるグリースの増ちょう剤として用いられる芳香族ウレアは、付着力が高いことから攪拌抵抗が大きくなりやすい。また、芳香族ウレアは、増ちょう剤の粒子が大きいため、トルクのばらつきが大きくなってしまう。そのため、グリースの増ちょう剤として、芳香族ウレアではなく脂環式脂肪族ジウレアを用いている。
【0038】
以上のように構成される車輪用軸受装置1によれば、合成炭化水素油が低温性や耐摩耗性等に優れており、車輪用軸受装置1の長寿命化を図ることができる。
【0039】
グリースのちょう度(JIS K2220)は、200~300が望ましい。これにより、グリースの攪拌抵抗を低減することができる。この場合、表3に示すように、グリースのちょう度は200を下回ると、軸受内の攪拌抵抗が低下するため、回転トルクは低下するが、内輪鍔部に潤滑油が供給され難くなるため耐焼き付き性が低下する。逆に、ちょう度が高すぎると鍔部への潤滑油供給は問題ないが、拡販抵抗が大きくなりすぎるため、回転トルクが増大してしまう。従って、以上のようなグリースの成分の最適化により、グリースの低粘度化による転がり粘性抵抗の低減と攪拌抵抗の低減を図ることができる。
【0040】
【0041】
本実施形態における車輪用軸受装置1は、インナー側端部において縮径された小径段部3aを有するハブ輪3、及びハブ輪3の小径段部3aに圧入された内輪4からなり、ハブ輪3の外周に内側軌道面3dが直接形成された内輪回転仕様の第3世代構造としている。
【0042】
なお、車輪用軸受装置1は、第3世代構造の車輪用軸受装置1に限定するものではなく、ハブ輪に一対の内輪が圧入固定された第2世代構造や、ハブ輪を備えずに外方部材である外輪と内方部材である内輪とから構成される第1世代構造であっても良い。本発明は、剛性が高い第2世代構造の車輪用軸受装置に適用することで高剛性と低トルク化の両立が可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0044】
1 車輪用軸受装置
2 外輪(外方部材)
2c 外側軌道面
2d 外側軌道面
3 ハブ輪(内方部材)
3a 小径段部
3d 内側軌道面
3e 大鍔部
4 内輪(内方部材)
4a 内側軌道面
4b 大鍔部
5 転動体列
51 円錐ころ
51a 大径側端面