(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134432
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】シャント抵抗器、シャント抵抗器の監視装置及びシャント抵抗器の監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20240926BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01R19/165 J
G01R15/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044735
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 隼
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮輔
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB05
2G025AC01
2G035AA15
2G035AC01
2G035AD00
2G035AD10
2G035AD28
2G035AD45
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】シャント抵抗体の導電性接合部の異常を監視可能な技術を提供する。
【解決手段】シャント抵抗器100は、板状の抵抗体130と、抵抗体の板面に沿う第1方向で抵抗体の両側に接続された第1,第2電極110,120と、これらに重ねて配置され、各電極側に設けられた一対の電圧検出点を有する基板140とを備える。抵抗体と各電極との間、及び、各電極と基板との間が、第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部111,121,114,124により接合されている。一対の電圧検出点として、第1検出点116h,126hと、第1検出点よりも各電極の第2方向の端部側に位置する第2検出点117h,127hが設けられている。一対の電圧検出点での検出電圧により抵抗体における各電極間の両端電圧を計測する監視装置20は、第1,第2検出点の検出電圧に基づき導電性接合部の接合異常を判定する故障判定部21を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合されているシャント抵抗器(100,200,300,400)に適用され、
前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測するシャント抵抗器の監視装置(20)であって、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点と、が設けられており、
前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定部(21)を備えるシャント抵抗器の監視装置。
【請求項2】
前記シャント抵抗器において、前記第2方向の端部には前記第1電極と前記第2電極との間に前記抵抗体が存在していない、又は、前記抵抗体が局所的に薄肉となっている縮小部(231)が設けられており、
前記基板には、前記縮小部の付近に前記第2検出点が設けられている請求項1に記載のシャント抵抗器の監視装置。
【請求項3】
前記シャント抵抗器には、前記第2方向の両端のうち一端側にのみ前記縮小部が設けられており、
前記基板には、前記第2方向の両端のうちの前記縮小部の側の端部付近にのみ前記第2検出点が設けられている請求項2に記載のシャント抵抗器の監視装置。
【請求項4】
前記第2検出点は、前記一対の電圧検出点のうち一方の電圧検出点が、前記第1電極側において前記第2方向の第1端部付近の検出点であり、他方の電圧検出点が、前記第2方向において前記第1端部とは逆側の第2端部付近の検出点である請求項1に記載のシャント抵抗器の監視装置。
【請求項5】
前記基板には、前記第2方向において前記第1検出点の両側に、それぞれ前記第2検出点が設けられている請求項1に記載のシャント抵抗器の監視装置。
【請求項6】
前記第1検出点の検出電圧と、前記第2検出点の検出電圧とが略同一となるように、前記第1検出点の検出電圧及び前記第2検出点の検出電圧の少なくとも一方を補正する補正部(22)をさらに備える請求項1~3のいずれかに記載のシャント抵抗器の監視装置。
【請求項7】
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合され、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点と、が設けられているシャント抵抗器(100,200,300,400)の監視プログラムであって、
コンピュータに、
前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測する検出ステップと、
前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定ステップと、を実行させる、シャント抵抗器の監視プログラム。
【請求項8】
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合され、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点と、が設けられているシャント抵抗器(100,200,300,400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シャント抵抗器、シャント抵抗器の監視装置及びシャント抵抗器の監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のシャント抵抗器は、抵抗体と、抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極と、その上面に積層された基板とを備える。基板には、第1電極の上方に位置する第1通孔と、第2電極の上方に位置する第2通孔が設けられている。第1通孔および第2通孔には、はんだが充填されており、はんだを介して、基板と、第1電極および第2電極とが接合されている。第1通孔および第2通孔に充填されたはんだを電圧検出端子として、抵抗体の両端電圧を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャント抵抗器を流れる電流による発熱等の熱履歴により、はんだ等の導電性接合部において接合異常が発生することがある。特許文献1のように、基板と、第1電極および第2電極との間の導電が、はんだを介するものである場合、はんだの接合異常により導電面積が減少し、抵抗体の両端電圧における検出精度が低下する。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、シャント抵抗体の導電性接合部の異常を監視可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状の抵抗体と、前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極及び第2電極と、前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点を有する基板と、を備え、前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部により接合されているシャント抵抗器に適用され、前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測するシャント抵抗器の監視装置を提供する。前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点と、が設けられている。前記監視装置は、前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定部を備える。
【0007】
本発明によれば、シャント抵抗器の抵抗体と各電極との間は導電性接合部により接合されており、その導電性接合部を介して、第1電極、抵抗体、第2電極の順に、もしくはその逆の順に、概ね第1方向に沿って電流が流れる。各電極と抵抗体との間を流れる電流は、各電極の第2方向の中央側ほど電流密度が低く、端部側ほど電流密度が高い。また、シャント抵抗器の各電極と基板との間が導電性接合部により接合されており、基板に設けられた第1検出点と第1電極との間においては導電性接合部を介して電流が流れ、基板に設けられた第2検出点と第2電極との間においては導電性接合部を介して電流が流れる。本発明に係るシャント抵抗器では、基板において、第2検出点は、第2方向において第1検出点よりも各電極の端部側に位置する。すなわち、第2検出点は、第1検出点よりも、各電極と抵抗体との間を流れる電流の電流密度が高い端部側に位置する。このため、導電性接合部の接合異常が無い場合には、第1検出点における検出電圧と、第2検出点における検出電圧とは相違する。導電性接合部に接合異常が生じると、第1検出点における検出電圧と、第2検出点における検出電圧との差が変化する。本発明に係る監視装置は、第1検出点及び第2検出点の検出電圧に基づいて、導電性接合部の接合異常を判定する故障判定部を備えることにより、例えば、第1検出点における検出電圧と、第2検出点における検出電圧との差を監視して、導電性接合部の異常を判定することができる。
【0008】
本発明は、また、導電性接合部の接合異常を好適に判断可能なシャント抵抗器を提供することもできる。このシャント抵抗器は、板状の抵抗体と、前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極及び第2電極と、前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点を有する基板と、を備える。前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部により接合されている。前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点と、が設けられている。
【0009】
本発明は、また、上記のシャント抵抗器の監視プログラムとして提供することもできる。この監視プログラムは、コンピュータに、前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測する検出ステップと、前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定ステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るシャント抵抗器およびシャント抵抗器の監視装置を含む電源システム。
【
図2】第1実施形態に係るシャント抵抗器の分解図。
【
図3】第1実施形態に係るシャント抵抗器の上面図。
【
図6】第1実施形態に係るシャント抵抗器の各電極と抵抗体との間を流れる電流の電流密度分布図。
【
図7】第1検出点および第2検出点における電圧の検出値を示す図。
【
図8】第1実施形態に係るシャント抵抗器の監視処理を示すフローチャート。
【
図9】変形例に係るシャント抵抗器の監視方法を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態に係るシャント抵抗器の上面図。
【
図11】第2実施形態に係るシャント抵抗器の抵抗体および各電極を示す上面図。
【
図13】第3実施形態に係るシャント抵抗器の上面図。
【
図14】第4実施形態に係るシャント抵抗器の上面図。
【
図15】第4実施形態に係るシャント抵抗器の監視処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1に、実施形態に係る抵抗器13の監視装置20を含む電源システム10を示す。電源システム10は、蓄電池11と、抵抗器13と、検出回路15と、監視装置20と、第1リレーRL1と、第2リレーRL2とを備える。
図1に示すように、蓄電池11の高電位側に抵抗器13が接続され、抵抗器13の高電位側に第1リレーRL1が接続され、蓄電池11の低電位側には第2リレーRL2が接続されているが、接続順序はこれに限定されない。例えば、蓄電池11は、第1リレーRL1と抵抗器13との間に接続されていてもよい。電源システム10は、負荷30に接続されている。電源システム10は、車両に搭載されており、負荷30は、車載の各種電気負荷を表す。
【0012】
検出回路15は、抵抗器13に並列接続された第1ADコンバータADC1と、第2ADコンバータADC2とを備える。第1リレーRL1および第2リレーRL2が閉状態のとき、抵抗器13は通電状態となる。監視装置20は、検出回路15から、抵抗器13の両端電圧を取得する。監視装置20は、第1ADコンバータADC1から電圧の検出値として第1電圧V1を取得し、第2ADコンバータADC2から電圧の検出値として第2電圧V2を取得する。抵抗器13はシャント抵抗器であり、監視装置20は、抵抗器13の両端電圧を検出することにより、蓄電池11に流れる電流を検出する。
【0013】
図2~5は、
図1に示す抵抗器13として用いられるシャント抵抗器100を示す。
図2は、シャント抵抗器100の分解斜視図であり、
図3は、シャント抵抗器100の上面図であり、
図4および
図5は、シャント抵抗器100の断面図である。
【0014】
シャント抵抗器100は、板状の第1電極110および第2電極120と、板状の抵抗体130と、基板140とを備えている。
【0015】
抵抗体130の材料としては、例えば、ニッケルクロム系合金、銅ニッケル系合金、銅マンガン系合金、銅-マンガン-ニッケル系合金等を例示できるが、これに限定されない。第1電極110および第2電極120は、例えば銅等を材料とするバスバーを例示できるが、これに限定されない。第1電極110および第2電極120には、それぞれ、第1貫通孔113、第2貫通孔123が設けられている。基板140は、プリント基板であり、ガラス等にエポキシ樹脂等を含浸させたリジット基板であってもよいし、ポリイミド樹脂等を材料とするフレキシブル基板であってもよい。基板140の上面(z軸の正方向側の面)および下面(z軸の負方向側の面)に配線パターンが設けられている。
【0016】
第1電極110および第2電極120は、抵抗体130の板面に沿う第1方向(
図2に示すx軸方向)において抵抗体130の両側にそれぞれ接続されている。第1電極110のx軸の正方向の面は、抵抗体130のx軸の負方向の面に接合され、第2電極120のx軸の負方向の面は、抵抗体130のx軸の正方向の面に接合されている。第1方向に直交する第2方向(
図2に示すy軸方向)において、第1電極110、第2電極120、および、抵抗体130の長さは略同一である。第1電極110、第2電極120、および、抵抗体130は、
図2に示すxy平面に略平行な平板状である。第1電極110、第2電極120は、第1方向および第2方向に直交する第3方向(
図2に示すz軸方向)の厚みは略同一である。抵抗体130の第3方向の厚みは、第1電極110および第2電極120の厚みよりも薄い。
【0017】
第1電極110、第2電極120、および、抵抗体130は、y軸の正方向および負方向に位置合わせされるとともに、z軸の負方向に位置合わせされて、溶接により接合されている。第1電極110と抵抗体130とは、第1溶接部111を介して互いに接合されており、第2電極120と抵抗体130とは、第2溶接部121を介して互いに接合されている。第1溶接部111および第2溶接部121は、導電性接合部に相当する。第1電極110と抵抗体130とは、第1溶接部111を介して互いに接合されるとともに電気的に接続されている。第2電極120と抵抗体130とは、第2溶接部121を介して互いに接合されるとともに電気的に接続されている。
【0018】
基板140の上面には、一対の第1上面配線116,126および一対の第2上面配線117,127が設けられている。基板140の下面には、第1接合配線115,第2接合配線125が設けられている。
【0019】
基板140の上面および下面に、一対の第1検出点116h,126hおよび一対の第2検出点117h,127hが設けられている。第1検出点116h,126hおよび第2検出点117h,127hは、基板140を上下方向に貫通するビアホールの周縁および内側面に設けられた配線によって形成されている。
【0020】
基板140の上面において、第1検出点116h,126hは、第1上面配線116,126にそれぞれ接続されており、第2検出点117h,127hは、第2上面配線117,127にそれぞれ接続されている。第1上面配線116,126は、検出回路15の第1ADコンバータADC1に接続され、第2上面配線117,127は、検出回路15の第2ADコンバータADC2に接続される。
【0021】
基板140の下面において、第1検出点116hおよび第2検出点117hは、それぞれ第1下面配線116aおよび第2下面配線117aを介して第1接合配線115に接続されており、第1検出点126hおよび第2検出点127hは、それぞれ第1下面配線126aおよび第2下面配線127aを介して第2接合配線125に接続されている。
【0022】
第1検出点116hおよび第2検出点117hは、第1電極110側に設けられており、第1検出点126hおよび第2検出点127hは、第2電極120側に設けられている。第1検出点116h,126hは、第1電極110および第2電極120のy軸方向の略中央に位置している。第2検出点117h,127hは、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部側に位置している。第2検出点117h,127hは、第1検出点116h,126hよりも第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の端部側に位置している。第1上面配線116,126は、基板140のy軸の負方向の端部からy軸の正方向に沿って延び、それぞれ、第1検出点116h,126hに向かって屈曲した形状を有している。第2上面配線117,127は、第1上面配線116,126の間において基板140のy軸の負方向の端部からy軸の正方向に沿って延び、それぞれ、第2検出点117h,127hに向かって屈曲した形状を有している。
【0023】
基板140は、第1はんだ部114を介して第1電極110に接合されるとともに、第2はんだ部124を介して第2電極120に接合されている。第1はんだ部114は、第1電極110の上面の第1はんだ位置112に設けられ、第1はんだ部114の上面に基板140の第1接合配線115が位置するように、はんだ接合されている。第2はんだ部124は、第2電極120の上面の第2はんだ位置122に設けられ、第2はんだ部124の上面に基板140の第2接合配線125が位置するように、はんだ接合されている。抵抗体130のz方向の厚みは、第1電極110および第2電極120の厚みよりも薄く、z軸の負方向の面が揃うように位置合わせされるため、
図5に示すように、抵抗体130の上面と基板140との距離は、第1電極110および第2電極120の上面と基板140との距離よりも広くなる。一対の第1検出点116h,126hおよび一対の第2検出点117h,127hは、抵抗体130の上方となる位置に設けられている。
【0024】
第1はんだ部114および第2はんだ部124は、導電性接合部に相当する。第1電極110と基板140とは、第1はんだ部114を介して互いに接合されている。第1電極110と基板140の第1接合配線115とは、第1はんだ部114を介して電気的に接続されている。第2電極120と基板140とは、第2はんだ部124を介して互いに接合されている。第2電極120と基板140の第2接合配線125とは、第2はんだ部124を介して互いに電気的に接続されている。
【0025】
シャント抵抗器100は、例えば、以下の手順で製造できる。まず、第1電極110、第2電極120、および、抵抗体130を準備し、互いに溶接する。次に、第1はんだ部114を第1はんだ位置112に形成し、第2はんだ部124を第2はんだ位置122に形成する。次に、配線パターンが形成された基板140を準備し、第1はんだ部114の上面に第1接合配線115が位置し、第2はんだ部124の上面に第2接合配線125が位置するように、基板140の位置合わせをしてはんだ接合する。これによって、シャント抵抗器100を製造できる。
【0026】
第1ADコンバータADC1は、第1上面配線116および第1上面配線126に接続され、抵抗体130における第1電極110と第2電極120との両端電圧を第1電圧V1として検出する。第1上面配線116から第1上面配線126までの電流経路(第1電流経路)は、第1上面配線116、第1検出点116h(より具体的には第1検出点116hの上面側から下面側)、第1下面配線116a、第1接合配線115,第1はんだ部114,第1電極110、第1溶接部111,抵抗体130、第2溶接部121、第2電極120、第2はんだ部124,第2接合配線125,第1下面配線126a、第1検出点126h(より具体的には第1検出点126hの下面側から上面側)、第1上面配線126の順序である。第1検出点116h,126hは、第1電極110および第2電極120のy軸方向の略中央に位置しているため、第1電流経路は、抵抗体130のy軸方向の略中央位置を通る経路となる。
【0027】
第2ADコンバータADC2は、第2上面配線117および第2上面配線127に接続され、抵抗体130における第1電極110と第2電極120との両端電圧を第2電圧V2として検出する。第2上面配線117から第2上面配線127までの電流経路(第2電流経路)は、第2上面配線117、第2検出点117h(より具体的には第2検出点117hの上面側から下面側)、第2下面配線117a、第1接合配線115,第1はんだ部114,第1電極110、第1溶接部111,抵抗体130、第2溶接部121、第2電極120、第2はんだ部124,第2接合配線125,第2下面配線127a、第2検出点127h(より具体的には第2検出点127hの下面側から上面側)、第2上面配線127の順序である。第2検出点117h,127hは、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部側に位置しているため、第2電流経路は、抵抗体130のy軸方向の正方向の端部側を通る経路となる。
【0028】
監視装置20は、故障判定部21と、補正部22と、制御部23とを備える。監視装置20は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータ(マイコン)を主体に構成されている。例えば、CPUがROMにインストールされている電力変換プログラムを実行することで制御装置40が備えるスイッチング制御部41および切替部42等の機能を実現する。マイコンによって提供される機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウエアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウエアのみ、ハードウエアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供されるものであってもよい。例えば、マイコンがハードウエアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコンは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する電池制御処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0029】
故障判定部21は、第1検出点116h,126h及び第2検出点117h,127hの検出電圧に基づいて、導電性接合部である第1溶接部111、第2溶接部121、第1はんだ部114、第2はんだ部124の接合異常を判定する。
【0030】
図6は、シャント抵抗器100において、第1,第2電極110,120と抵抗体130との間を流れる通電電流の電流密度分布を示す図である。縦軸は、電流密度Jを示し、横軸は、第1,第2電極110,120におけるy軸方向の位置を示す。
図6のwは、第1,第2電極110,120のy軸方向の長さであり、y=0は第1,第2電極110,120の中央位置を示し、y=―w/2は第1,第2電極110,120のy軸の負方向の端部位置を示し、y=w/2は第1,第2電極110,120のy軸の正方向の端部位置を示す。
図6に示すように、シャント抵抗器100を流れる正の電流の電流密度は、第1,第2電極110,120の中央ほど低く、端部に向かうほど高くなる下に凸の曲線状の分布となる。
【0031】
図6に示すように、第1検出点116h,126hは、第1電極110および第2電極120のy軸方向の略中央であるy=y1に位置しており、この位置での電流密度はJ1である。第2検出点117h,127hは、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部側であるy=y2に位置しており、この位置での電流密度はJ2である。J1はJ2よりも低いため、第1,第2電極110,120と抵抗体130との間を流れる通電電流が同じであっても、第1ADコンバータADC1が検出する第1電圧V1は、第2ADコンバータADC2が検出する第2電圧V2よりも低くなる。
【0032】
図7は、第1,第2電極110,120と抵抗体130との間を流れる通電電流を横軸とし、第1、第2ADコンバータADC1、ADC2が検出する電圧の検出値を縦軸として示す図である。第1,第2電極110,120と抵抗体130との間を流れる通電電流が同じであっても、第1ADコンバータADC1が検出する第1電圧V1の絶対値は、第2ADコンバータADC2が検出する第2電圧V2の絶対値よりも小さくなる。
【0033】
各導電性接合部に接合異常がない場合には、
図7に示すように、ある通電電流に対して、第1電圧V1と第2電圧V2とは所定の電圧差だけ相違する値となる。しかしながら、シャント抵抗器100を流れる電流による発熱等の熱履歴により、各導電性接合部に接合異常が発生することがある。接合異常は、同じ通電電流に対して電流密度の低い位置よりも、電流密度の高い位置で発生し易い。すなわち、電流密度が低い第1電極110および第2電極120のy軸方向の中央側よりも、電流密度が高い第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の両端部側において、各導電性接合部に接合異常が発生し易くなる。第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の両端部側で発生した接合異常は、徐々に中央側に広がる。
【0034】
第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部側において、各導電性接合部のうちのいずれかに接合異常が発生し、この接合異常が徐々に中央側に進行すると、抵抗体130において、第2検出点117h,127hを含む第2電流経路が、第1検出点116h,126hを含む第1電流経路に近づく。その結果、第2電圧V2の値が第1電圧V1に徐々に近づき、その差が小さくなる。
【0035】
このため、故障判定部21は、第1電圧V1と第2電圧V2との差に変化があった場合に、シャント抵抗器100の各導電性接合部のうちのいずれかに接合異常が発生したと判定するように構成される。例えば、故障判定部21は、第1電圧V1と第2電圧V2との差の絶対値であるabs(V1-V2)が所定の閾値電圧差Vth以下となった場合(abs(V1-V2)≦Vthとなった場合)に、接合異常があると判定するように構成される。閾値電圧差Vthは、例えば、シャント抵抗器100の各導電性接合部に接合異常が無い場合の第1電圧V1と第2電圧V2との差の絶対値であるVrを測定または算出し、0≦Vth≦Vrとなるように設定することができる。Vrの値は、シャント抵抗器100の設計値に基づいて理論的に算出してもよいし、初期状態のシャント抵抗器100を用いて測定した第1電圧V1および第2電圧V2を用いて算出してもよい。
【0036】
補正部22は、第1電圧V1と、第2電圧V2とが略同一となるように、第1電圧V1及び第2電圧V2の少なくともいずれか一方を補正する。補正部22は、例えば、第2電圧V2と第1電圧V1との差や比を用いて、第1電圧V1と、第2電圧V2とが、略同一となるように補正することができる。補正部22は、第1電圧V1を補正してもよいが、第2電圧V2は、各導電性接合部に接合異常が発生した場合に変化する値であるのに対して、第1電圧V1は、各導電性接合部に接合異常が発生した場合にも変化しにくい値であるため、第2電圧V2を補正することがより好ましい。
【0037】
補正部22は、故障判定部21により接合異常があったと判定された場合に、第1電圧V1と、第2電圧V2とが、略同一となるように補正するように構成されていてもよい。補正後の状態で第1電圧V1と第2電圧V2とを比較することにより、例えば、第1、第2ADコンバータADC1、ADC2の故障を判定することができる。故障判定部21は、第1、第2ADコンバータADC1、ADC2の故障についても判定可能に構成されていてもよい。
【0038】
または、補正部22により、第1電圧V1と、第2電圧V2とが、略同一となるように補正した後で、故障判定部21が、補正後の状態で第1電圧V1と第2電圧V2とを比較して、接合異常があると判定するように構成されていてもよい。例えば、第2電圧V2を補正値V2aに補正した場合、故障判定部21は、第1電圧V1と補正値V2aとの差の絶対値であるabs(V1-V2a)が所定の閾値電圧差Vtha以上となった場合(abs(V1-V2a)≧Vthaとなった場合)に、接合異常があると判定するように構成されてもよい。
【0039】
制御部23は、検出回路15から取得した第1電圧V1と第2電圧V2との少なくともいずれか一方に基づいて、第1リレーRL1および第2リレーRL2の開閉制御を実行する。制御部23は、故障判定部21により接合異常があったと判定された場合に、シャント抵抗器100を流れる通電電流を、遮断する制御を実行する。例えば、故障判定部21によりシャント抵抗器100において接合異常等の故障があったと判定された場合に、第1リレーRL1および第2リレーRL2を開状態に制御することにより、シャント抵抗器100を流れる通電電流を遮断することができる。なお、電源システム10が、シャント抵抗器100を流れる通電電流を制限可能な構成を備える場合には、制御部23は、故障判定部21により接合異常があったと判定された場合に、シャント抵抗器100を流れる通電電流を、制限するか遮断するかを判断し、いずれかの制御を実行するように構成されていてもよい。
【0040】
図8は、監視装置20が実行するシャント抵抗器100の監視処理のフローチャートである。
図8のフローチャートに示す処理は、監視装置20を構成するCPUがROMにインストールされている監視プログラムを実行することにより実現され、蓄電池11の充放電時に、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0041】
ステップS101では、第1電圧V1および第2電圧V2を取得し、ステップS102に進む。ステップS102では、第1電圧V1と第2電圧V2との差の絶対値であるabs(V1-V2)が所定の閾値電圧差Vth以下となった場合(abs(V1-V2)≦Vthとなった場合)に、接合異常があると判定し、ステップS103に進む。abs(V1-V2)>Vthとなった場合には、接合異常が無いと判定し、ステップS105に進む。
【0042】
ステップS103では、シャント抵抗器100に故障ありと判定して、ステップS104に進み、通電電流を制限または遮断する。これにより、監視装置20は、第1リレーRL1および第2リレーRL2を開状態に制御し、処理を終了する。
【0043】
ステップS105では、シャント抵抗器100に故障なしと判定して、ステップS106に進み、第2電圧V2を補正して、処理を終了する。
【0044】
上記のとおり、本実施形態に係るシャント抵抗器100によれば、基板140において、第2検出点117h,127hは、第2方向において第1検出点116h,126hよりも各電極の端部側に位置する。すなわち、第2検出点117h,127hは、第1検出点116h,126hよりも、第1、第2電極110,120と抵抗体130との間を流れる電流の電流密度が高い端部側に位置する。このため、シャント抵抗器100において導電性接合部の接合異常が無い場合には、監視装置20が取得する第1検出点116h,126hにおける検出電圧である第1電圧V1と、第2検出点117h,127hにおける検出電圧である第2電圧V2とは相違する。シャント抵抗器100において導電性接合部に接合異常が生じると、第1電圧V1と、第2電圧V2との差は小さくなる。監視装置20は、ステップS102,S103,S105に示す故障判定ステップを実行し、第1電圧V1と、第2電圧V2との差の絶対値であるabs(V1-V2)に基づいて、abs(V1-V2)≦Vthとなった場合に、シャント抵抗器100において導電性接合部の接合異常があると判定する。故障判定ステップによれば、シャント抵抗器100のシャント抵抗体の導電性接合部の異常を監視することが可能となる。また、故障判定ステップにより、シャント抵抗器100について故障なしと判定された場合には、ステップS106に示す補正ステップを実行し、第2電圧V2を、第1電圧V1に略同一な補正値V2aに補正する。図示していないが、第1電圧V1と補正値V2aとを比較することにより、例えば、第1、第2ADコンバータADC1、ADC2の故障についても判定することが可能となる。
【0045】
(変形例)
監視装置20は、シャント抵抗器100の監視処理として、
図9に示すフローチャートを実行するように構成されていてもよい。
図9のフローチャートに示す処理は、監視装置20を構成するCPUがROMにインストールされている監視プログラムを実行することにより実現され、蓄電池11の充放電時に、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0046】
ステップS201では、第1電圧V1および第2電圧V2を取得し、ステップS102に進む。ステップS202では、ステップS201で取得した第2電圧V2を補正値V2aに補正し、ステップS203に進む。ステップS203では、abs(V1-V2a)≦Vthaであるか否かを判定する。abs(V1-V2a)≦Vthaであるに、接合異常があると判定し、ステップS204に進む。abs(V1-V2a)>Vthaとなった場合には、接合異常が無いと判定し、ステップS205に進む。
【0047】
ステップS204では、シャント抵抗器100に故障ありと判定して、ステップS205に進み、通電電流を制限または遮断する。これにより、監視装置20は、第1リレーRL1および第2リレーRL2を開状態に制御し、処理を終了する。ステップS206では、シャント抵抗器100に故障なしと判定して、処理を終了する。
【0048】
(第2実施形態)
図10に、第2実施形態に係るシャント抵抗器200を示す。シャント抵抗器200は、第1実施形態と同様に、
図1に示す抵抗器13として用いられる。シャント抵抗器200は、抵抗体230の形態において、
図2等に示すシャント抵抗器100と相違している。シャント抵抗器200において、シャント抵抗器100と同様の構成については、同じ参照番号を用いている。
【0049】
図11は、シャント抵抗器200から基板140および第1、第2はんだ部114,124を取り除いた状態を示している。抵抗体230の両側に第1、第2電極110、120が溶接により接続されている。
図12は、
図11に示す抵抗体230の断面図である。
図10,11に示すように、抵抗体230のy軸方向の長さは、第1、第2電極110、120のy軸方向の長さよりも短い。抵抗体230と、第1、第2電極110、120とは、y軸の負方向側の端部が揃うように接続されており、y軸の正方向側の端部側において、第1、第2電極110、120の間に抵抗体230が存在しない非存在部250が設けられている。また、
図12に示すように、抵抗体230は、y軸の正方向の端部において、局所的に薄肉となっている。この薄肉となっている部分のx軸に垂直な断面積は、薄肉となっていない部分のx軸に垂直な断面積よりも縮小されているため、縮小部231と称する。
【0050】
抵抗体230は、y軸の正方向の端部側において、y軸方向の長さが縮小されるとともに、z軸方向の長さ(厚み)が縮小されることにより、y軸の負方向の端部側と比較して、x軸に垂直な断面積が縮小された縮小部231を備えている。x軸方向は、第1,第2電極110,120と抵抗体230との間を流れる通電電流の方向であるため、x軸に垂直な断面積が縮小されることにより、抵抗体230では、y軸の正方向の端部側に設けられた縮小部231における電流密度は、y軸の負方向の端部側における電流密度よりも高くなる。このため、シャント抵抗器200が備える各導電性接合部の接合異常は、より電流密度の高い縮小部231側から発生し易い。シャント抵抗器200では、抵抗体230において縮小部231が設けられているy軸の正方向の端部側の上面に位置する基板140上に第2検出点117h,127hが設けられている一方で、縮小部が設けられていないy軸の負方向の端部側の上面に位置する基板140上には、第2検出点は設けられていない。シャント抵抗器200が備える各導電性接合部の接合異常が最も発生し易い縮小部231の上面側にのみ第2検出点117h,127hを設けることにより、電圧検出点の設置数を抑制することと、シャント抵抗器200が備える各導電性接合部の接合異常を確実に検出可能とすることとを両立できる。
【0051】
(第3実施形態)
図13に、第3実施形態に係るシャント抵抗器300を示す。シャント抵抗器300は、第1実施形態と同様に、
図1に示す抵抗器13として用いられる。シャント抵抗器300は、基板340に設けられた配線パターンの形態において、
図2等に示すシャント抵抗器100と相違している。シャント抵抗器300において、シャント抵抗器100と同様の構成については、同じ参照番号を用いている。
【0052】
基板340の上面および下面に、一対の第1検出点316h,326hおよび一対の第2検出点317h,327hが設けられている。第1検出点316h,326hおよび第2検出点317h,327hは、基板340を上下方向に貫通するビアホールの周縁および内側面に設けられた配線によって形成されている。
【0053】
第1検出点316h,326hは、シャント抵抗器100における第1検出点116h,126hと同じ位置に設けられている。第2検出点327hは、シャント抵抗器100における第2検出点127hと同じ位置に設けられている一方で、第2検出点317hは、シャント抵抗器100における第2検出点117hとは異なり、第1検出点316hよりもy軸の負方向側に設けられている。第1上面配線316,326は、それぞれ、第1検出点316h,326hに接続されており、第2上面配線117,127は、それぞれ、第2検出点317h,327hに接続されている。
【0054】
第2検出点317h,327hは、その一方の電圧検出点である第2検出点317hが、第1電極110側においてy軸の正方向の端部である第1端部付近の検出点であり、他方の電圧検出点である第2検出点327hが、第2電極120側において第1端部とは逆側となるy軸の負方向の端部である第2端部付近の検出点である。第1検出点316h,326hがx軸方向に沿って直線状に配置されているのに対し、第2検出点317h,327hは、抵抗体230に対して略対角線状に配置されている。第1端部側および第2端部側にそれぞれ第2検出点317h,327hが設けられているため、シャント抵抗器300が備える各導電性接合部の接合異常が、第1端部側から発生した場合でも、第2端部側から発生した場合でも、第2電圧V2の値が第1電圧V1に徐々に近づき、その差が小さくなって、接合異常の発生を検出できる。シャント抵抗器300によれば、電圧検出点の設置数を抑制することと、シャント抵抗器300が備える各導電性接合部の接合異常を確実に検出可能とすることとを両立できる。
【0055】
(第4実施形態)
図14に、第4実施形態に係るシャント抵抗器400を示す。シャント抵抗器400は、基板440に設けられた配線パターンの形態において、
図2等に示すシャント抵抗器100と相違している。シャント抵抗器400において、シャント抵抗器100と同様の構成については、同じ参照番号を用いている。
【0056】
基板440の上面および下面に、一対の第1検出点416h,426hと、一対の第2検出点417h,427hと、一対の第2検出点418h,428hが設けられている。第1検出点416h,426hと、第2検出点417h,427hと、第2検出点418h,428hは、基板440を上下方向に貫通するビアホールの周縁および内側面に設けられた配線によって形成されている。
【0057】
第1検出点416h,426hは、シャント抵抗器100における第1検出点116h,126hと同じ位置に設けられている。シャント抵抗器100における第1検出点116h,126hと同じ位置に設けられている。第2検出点417h,427hは、シャント抵抗器100における第2検出点117h,127hと同じ位置に設けられている。第2検出点418h,428hは、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の負方向の端部側に位置している。第2検出点418h,428hと、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の負方向の端部との距離は、第2検出点117h,127hと、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部との距離と略同一である。第1上面配線416,426は、それぞれ、第1検出点416h,426hに接続されており、第2上面配線417,427は、それぞれ、第2検出点417h,427hに接続されており、第2上面配線418,428は、それぞれ、第2検出点418h,428hに接続されている。
【0058】
シャント抵抗器400は、第1実施形態と同様に、
図1に示す抵抗器13として用いられる。抵抗器13としてシャント抵抗器400を用いる場合、検出回路15は、第3ADコンバータADC3をさらに備える。第3ADコンバータADC3は、第1上面配線418および第1上面配線428に接続され、シャント抵抗器400の抵抗体130における第1電極110と第2電極120との両端電圧を第3電圧V3として検出する。
【0059】
図15は、監視装置20が実行するシャント抵抗器400の監視処理のフローチャートである。
図15のフローチャートに示す処理は、監視装置20を構成するCPUがROMにインストールされている監視プログラムを実行することにより実現され、蓄電池11の充放電時に、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0060】
ステップS301では、第1電圧V1、第2電圧V2、第3電圧V3を取得し、ステップS302に進む。ステップS302では、所定の閾値電圧差Vth2,Vth3について、abs(V1-V2)≦Vth2またはabs(V1-V3)≦Vth3となった場合に、接合異常があると判定し、ステップS303に進む。abs(V1-V2)>Vth2かつabs(V1-V3)>Vth3である場合には、接合異常が無いと判定し、ステップS305に進む。なお、閾値電圧差Vth2,Vth3は、第1実施形態に係る閾値電圧差Vthと同様の手法により設定できる。
【0061】
ステップS303では、シャント抵抗器400に故障ありと判定して、ステップS404に進み、通電電流を制限または遮断する。これにより、監視装置20は、第1リレーRL1および第2リレーRL2を開状態に制御し、処理を終了する。
【0062】
ステップS305では、シャント抵抗器400に故障なしと判定して、ステップS406に進み、第2電圧V2および第3電圧V3を補正して、処理を終了する。
【0063】
シャント抵抗器400では、第2検出点417h,427hが、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の正方向の端部側に設けられるとともに、第2検出点418h,428hが、第1電極110および第2電極120におけるy軸方向の負方向の端部側に設けられている。このため、シャント抵抗器400が備える各導電性接合部の接合異常が、y軸方向の正方向の端部側から発生した場合には、第2電圧V2の値が第1電圧V1に徐々に近づき、その差が小さくなって、接合異常の発生を検出できる。シャント抵抗器400が備える各導電性接合部の接合異常が、y軸方向の負方向の端部側から発生した場合には、第3電圧V3の値が第1電圧V1に徐々に近づき、その差が小さくなって、接合異常の発生を検出できる。
【0064】
なお、シャント抵抗器400が備える抵抗体についても、第3実施形態に係る縮小部231と同様の備えるように構成されていてもよい。縮小部231は、第1電極110および第2電極120におけるy軸の正方向および負方向の端部側に設けられていても良い。縮小部231を設けて電流密度を高くすることにより、その上面に位置する第2検出点における検出電圧の変化を感度よく検出できる。
【0065】
上記の各実施形態では、第1,第2はんだ部114,124は、それぞれ、第1,第2電極110,120のy軸方向の一方の端部側から他方の端部側まで一連に延在していたが、複数に分断されていてもよい。はんだ部を複数に分断された構成とする場合には、第1,第2はんだ部114,124のy軸の正方向および負方向の端部には、はんだ部が設けられるように構成することが好ましい。また、第1電極110のy軸方向の略中央に第1貫通孔113を設け、第2電極120のy軸方向の略中央に第2電極120に第2貫通孔123を設けると、第2検出点における電流密度が高くなるため、第2検出点における検出電圧の変化をより感度よく検出できるが、第1貫通孔113および第2貫通孔123は、設けられていなくてもよい。また、故障判定部21により、シャント抵抗器400が備える各導電性接合部について接合異常ありと判定された場合に、制御部23の判断によりシャント抵抗器の通電電流を制限または遮断する場合を例示して説明したが、これに限定されない。故障判定部21により、シャント抵抗器400が備える各導電性接合部について接合異常ありと判定された場合には、ソフトウエアによる判断を介することなく直ちにシャント抵抗器の通電電流を遮断するように構成されていてもよい。
【0066】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0067】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点(116h,126h,117h,127h,316h,326h,317h,327h,416h,426h,417h,427h,418h,428h)を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合されているシャント抵抗器(100,200,300,400)に適用され、
前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測するシャント抵抗器の監視装置(20)であって、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点(116h,126h,316h,326h,416h,426h)と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点(117h,127h,317h,327h,417h,427h,418h,428h)と、が設けられており、
前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定部(21)を備えるシャント抵抗器の監視装置。
[構成2]
前記シャント抵抗器において、前記第2方向の端部には前記第1電極と前記第2電極との間に前記抵抗体が存在していない、又は、前記抵抗体が局所的に薄肉となっている縮小部(231)が設けられており、
前記基板には、前記縮小部の付近に前記第2検出点が設けられている構成1に記載のシャント抵抗器の監視装置。
[構成3]
前記シャント抵抗器には、前記第2方向の両端のうち一端側にのみ前記縮小部が設けられており、
前記基板には、前記第2方向の両端のうちの前記縮小部の側の端部付近にのみ前記第2検出点が設けられている構成2に記載のシャント抵抗器の監視装置。
[構成4]
前記第2検出点は、前記一対の電圧検出点のうち一方の電圧検出点が、前記第1電極側において前記第2方向の第1端部付近の検出点であり、他方の電圧検出点が、前記第2方向において前記第1端部とは逆側の第2端部付近の検出点である構成1に記載のシャント抵抗器の監視装置。
[構成5]
前記基板には、前記第2方向において前記第1検出点の両側に、それぞれ前記第2検出点が設けられている構成1または2に記載のシャント抵抗器の監視装置。
[構成6]
前記第1検出点の検出電圧と、前記第2検出点の検出電圧とが略同一となるように、前記第1検出点の検出電圧及び前記第2検出点の検出電圧の少なくとも一方を補正する補正部(22)をさらに備える構成1~5のいずれかに記載のシャント抵抗器の監視装置。
[構成7]
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点(116h,126h,117h,127h,316h,326h,317h,327h,416h,426h,417h,427h,418h,428h)を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合され、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点(116h,126h,316h,326h,416h,426h)と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点(117h,127h,317h,327h,417h,427h,418h,428h)と、が設けられているシャント抵抗器(100,200,300,400)の監視プログラムであって、
コンピュータに、
前記一対の電圧検出点における検出電圧により、前記抵抗体における前記第1電極側と前記第2電極側との間の両端電圧を計測する検出ステップと、
前記第1検出点及び前記第2検出点の検出電圧に基づいて、前記導電性接合部の接合異常を判定する故障判定ステップと、を実行させる、シャント抵抗器の監視プログラム。
[構成8]
板状の抵抗体(130,230)と、
前記抵抗体の板面に沿う第1方向において前記抵抗体の両側にそれぞれ接続された第1電極(110)及び第2電極(120)と、
前記抵抗体及び前記各電極に重ねて配置され、前記第1電極側及び前記第2電極側にそれぞれ設けられた一対の電圧検出点(116h,126h,117h,127h,316h,326h,317h,327h,416h,426h,417h,427h,418h,428h)を有する基板(140,340,440)と、を備え、
前記抵抗体と前記各電極との間、及び、前記各電極と前記基板との間が、前記第1方向に直交する第2方向に沿って導電性接合部(111,121,114,124)により接合され、
前記基板には、前記一対の電圧検出点として、第1検出点(116h,126h,316h,326h,416h,426h)と、前記第2方向において前記第1検出点よりも前記各電極の端部側に位置する第2検出点(117h,127h,317h,327h,417h,427h,418h,428h)と、が設けられているシャント抵抗器(100,200,300,400)。
【符号の説明】
【0068】
20…監視装置、21…故障判定部、100,200,300,400…シャント抵抗器、110…第1電極、120…第2電極、111,121…第1,第2溶接部、114,124…第1,第2はんだ部、130,230…抵抗体、116h,126h,316h,326h,416h,426h…第1検出点、117h,127h,317h,327h,417h,427h,418h,428h…第2検出点