(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134437
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】携帯用切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/14 20060101AFI20240926BHJP
B27B 9/02 20060101ALI20240926BHJP
B27G 19/02 20060101ALI20240926BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B23D45/14 A
B27B9/02
B27G19/02 Z
B23D45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044742
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 翔
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040CC03
3C040LL05
(57)【要約】
【課題】傾動操作中におけるガタツキを抑制し、切断機本体をベースに対して滑らかに傾動させ、アンギュラプレートの高さを抑制して視認性を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】携帯用切断機は、ベース部と、本体部と、本体部を第1軸線周りにベース部に対して傾動可能に、ベース部に支持する傾動支持部と、リンクアームと、ベース部の前端部に設けられた溝部と、固定部とを備える。リンクアームは、本体部に直接的又は間接的に連結された第1端部と第2端部とを備え、本体部の第1軸線周りの傾動に連動して本体部に対して回転するように構成されている。固定部は、リンクアームの第2端部に連結される。固定部は、第2端部を溝部に対して固定する固定状態と、固定状態が解除された解除状態とに切替可能であり、解除状態においてリンクアームの回転に連動して溝部に沿って摺動するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用切断機であって、
ワークに当接させるための下面を有するベース部と、
前記ベース部の上側に設けられ、刃具に回転駆動力を提供するように構成された電動モータを備える切断機本体を含む本体部と、
前記本体部を前記ベース部に対して前記ベース部の長手方向である前後方向に平行な第1軸線周りに傾動可能に前記ベース部に支持する傾動支持部と、
前記本体部に直接的又は間接的に連結された第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを備え、前記本体部の前記第1軸線周りの傾動に連動して前記本体部に対して回転するように構成されたリンクアームと、
前記ベース部の前端部に設けられた溝部と、
前記リンクアームの前記第2端部に連結された固定部であって、前記第2端部を前記溝部に対して固定する固定状態と、前記固定状態が解除された解除状態とに切替可能であり、前記解除状態において前記リンクアームの回転に連動して前記溝部に沿って摺動するように構成された固定部と、を備える、
携帯用切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用切断機であって、
前記第1軸線と平行な第2軸線を中心軸とし、前記本体部と前記リンクアームの前記第1端部とを連結する連結シャフトを備え、
前記リンクアームの前記第1端部は前記連結シャフト周りに回転可能に設けられ、
前記リンクアームは、前記本体部の前記第1軸線周りの回転に連動して、前記第2軸線周りを回転するように構成されている、携帯用切断機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の携帯用切断機であって、
前記溝部は、前記ベース部の前記前端部に設けられ、前記前後方向に交差する左右方向に沿って延在する、携帯用切断機。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯用切断機あって、
前記ベース部の前記左右方向のうち、前記刃具が装着される側を第1の側、その反対側を第2の側としたとき、
前記溝部は、前記左右方向における前記第1の側の第3端部と、前記第2の側の第4端部とを備え、
前記携帯用切断機は、更に、前記第4端部に設けられ、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に当接して前記本体部の前記第1軸線周りの第1方向の回転を規制するように構成された第1ストッパを備える、携帯用切断機。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯用切断機であって、
前記ベース部に固定され、前記ベース部の前記前端部で前記左右方向に沿って延在し、前記溝部を規定するように構成されたアンギュラプレートを備え、
前記第1ストッパは、前記アンギュラプレートにおける前記溝部の前記第4端部に対応する位置に設けられたネジである、携帯用切断機。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯用切断機であって、
前記アンギュラプレートは、前記左右方向における前記第2の側に設けられた側壁と、前記側壁を前記左右方向に貫通する孔とを有し、
前記ネジは、前記ネジの先端部が前記溝部内に突出するように、前記孔に配置されている、携帯用切断機。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記ベース部の前記左右方向のうち、前記刃具が装着される側を第1の側、その反対側を第2の側としたとき、
前記溝部は、前記左右方向における前記第1の側の第3端部と、前記第2の側の第4端部とを備え、
前記携帯用切断機は、更に、前記第3端部に設けられ、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に当接して前記本体部の前記第1軸線周りの第2方向の回転を規制するように構成された第2ストッパを備える、携帯用切断機。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯用切断機であって、
前記第2ストッパは、前記溝部における位置を、前記第3端部と前記固定部との間で変位可能に前記溝部に設けられる、携帯用切断機。
【請求項9】
請求項3から請求項8までのいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記固定部を前記溝部に対して係止可能な係止機構を更に備え、
前記係止機構は、
前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部と、前記溝部との一方に設けられた凹部と、
前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部と、前記溝部との他方に設けられて前記凹部に係止可能な凸部とを備え、
前記係止機構は、前記固定部が前記リンクアームの回転に連動して前記溝部に沿って摺動するのに対応して、前記凹部と前記凸部とが係止するように構成されている、携帯用切断機。
【請求項10】
請求項9に記載の携帯用切断機であって、
前記ベース部に固定され、前記ベース部の前記前端部で前記左右方向に沿って延在し、前記溝部を規定するように構成されたアンギュラプレートと、
前記アンギュラプレートに設けられて前記左右方向に延在するベベルプレートを備え、
前記凹部と前記凸部との一方は、前記ベベルプレートに形成されている、携帯用切断機。
【請求項11】
請求項10に記載の携帯用切断機であって、
前記ベベルプレートには、前記本体部の傾斜角度を示す目盛りが設けられている、携帯用切断機。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の携帯用切断機であって、
前記凹部と前記凸部との他方は、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に設けられた指示プレートであって、前記固定部が前記溝部内を前記左右方向に摺動するのに応じて前記ベベルプレート上を前記左右方向に移動する指示プレートに設けられている、携帯用切断機。
【請求項13】
請求項3から請求項12までのいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記ベース部は、
前記下面を有する基板と、前記ベース部の前記前端部において前記基板から上側に突出し、前記左右方向に延在するアンギュラプレートを備え、
前記アンギュラプレートの上壁は、前記基板に沿って前記左右方向に延在しており、
前記溝部は、前記アンギュラプレートを前記前後方向に貫通し、前記左右方向に延在する貫通孔である、携帯用切断機。
【請求項14】
請求項13に記載の携帯用切断機であって、
前記傾動支持部は、前記第1軸線を中心軸とする傾動シャフトを更に備え、
前記本体部は、前記切断機本体と、前記前後方向において前記切断機本体と前記傾動支持部との間に配置され前記切断機本体と一体に前記第1軸線周りに傾動可能なブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記切断機本体と連結された第1部分と、前記傾動シャフト周りに配置された第2部分と、ブラケットアームとを有し、
前記携帯用切断機は、前記ブラケットアームと前記リンクアームの前記第1端部とを連結する連結シャフトを更に備え、
前記切断機本体の前記ベース部に対する傾斜角度が大きくなる方向に、前記切断機本体が前記第1軸線周りに傾動されるとき、
(i)前記リンクアームの前記第1端部は、前記ブラケットの前記第1軸線周りの回転に連動して前記連結シャフト周りに回転し、
(ii)前記リンクアームの前記第2端部は、前記アンギュラプレートの前記溝部に沿って前記固定部とともに、前記左右方向における前記刃具が装着される第1の側に移動し、
(iii)前記リンクアームの少なくとも一部と前記ブラケットアームの少なくとも一部は、前記連結シャフトを中心に折りたたまれるように前記左右方向に重なり合う、携帯用切断機。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記本体部は、前記前後方向における後方に設けられユーザが把持するための把持部を備え、
前記ベース部は、前記溝部よりも前側に設けられたトップガイドを備える、携帯用切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに当接させるための当接面を有する略矩形のベースと、刃具が装着される切断機本体とを有し、ベースに対して切断機本体を傾動させることで、ワークに対して刃具を傾斜させた切断(傾斜切り)を行うことが可能な携帯用切断機が知られている。このような携帯用切断機の一種として、特許文献1には、切断機本体に連結されたブラケットと、ベースに固定されたアンギュラプレートと、固定レバーとを備えるマルノコが記載されている。アンギュラプレートは円弧形状に形成されており、固定レバーの軸は、アンギュラプレートの円弧状の溝に挿通されてブラケットに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-192782号公報
【特許文献2】特開2018-176310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のマルノコでは、固定レバーによってアンギュラプレートに対するブラケットの移動が規制されることで、切断機本体のベースに対する傾斜角度が固定される。しかし、上記特許文献の構造によらず、切断機本体をベースに対して傾動可能、かつ、ベースに対する傾斜角度を固定可能な技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、携帯用切断機が提供される。前記携帯用切断機は、ベース部と、本体部と、傾動支持部と、リンクアームと、溝部と、固定部とを備える。前記ベース部は、ワークに当接させるための下面を有する。前記本体部は、前記ベース部の上側に設けられる。前記ベース部は、刃具に回転駆動力を提供するように構成された電動モータを備える切断機本体を含む。前記傾動支持部は、前記本体部を、前記ベース部の長手方向である前後方向に平行な第1軸線周りに、前記ベース部に対して傾動可能に、前記ベース部に支持するように構成されている。前記リンクアームは、第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを備える。前記第1端部は、前記本体部に直接的又は間接的に連結されている。前記リンクアームは、前記本体部の前記第1軸線周りの傾動に連動して前記本体部に対して回転するように構成されている。前記溝部は、前記ベース部の前端部に設けられている。前記固定部は、前記リンクアームの前記第2端部に連結されている。前記固定部は、前記第2端部を前記溝部に対して固定する固定状態と、前記固定状態が解除された解除状態とに切替可能に構成されている。前記固定部は、前記解除状態において前記リンクアームの回転に連動して前記溝部に沿って摺動するように構成されている。
【0006】
この態様によれば、本体部の第1軸線周りの傾動に連動して本体部に対して回転するように構成されたリンクアームが、溝部を摺動可能な固定部によって溝部に固定されることで、本体部のベース部に対する傾斜角度を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】マルノコを示す斜視図であり、本体部の傾斜角度は0°である。
【
図3】マルノコの前面図であり、本体部の傾斜角度は0°である。
【
図5】ベース部の前端部付近におけるマルノコの構造を説明するための図であり、本体部の傾斜角度は0°である。
【
図6】マルノコを示す斜視図であり、本体部の傾斜角度は45°である。
【
図7】マルノコの前面図であり、本体部の傾斜角度は45°である。
【
図8】
図4に対応するマルノコの断面図であり、本体部の傾斜角度は45°である。
【
図9】ベース部の前端部付近におけるマルノコの構造を説明するための図であり、本体部の傾斜角度は45°である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の非限定的な一実施形態において、前記携帯用切断機は、連結シャフトを備えていてもよい。前記連結シャフトは、前記本体部と前記リンクアームの前記第1端部とを連結するように構成されていてもよい。前記連結シャフトの中心軸は、前記第1軸線と平行な第2軸線であってもよい。前記リンクアームの前記第1端部は前記連結シャフト周りに回転可能に設けられていてもよい。前記リンクアームは、前記本体部の前記第1軸線周りの回転に連動して、前記第2軸線周りを回転するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、本体部とリンクアームとは、連結シャフトによって連結され、リンクアームは、本体部の回転軸線(第1軸線)と平行な第2軸線周りに回転可能である。そのため、第1軸線と第2軸線とが交差する構成と比較して、本体部の傾動操作中にリンクアームが本体部に干渉することを抑制できる。したがって、例えば、リンクアームと本体部とを前後方向に近づけるように携帯用切断機を構成できる。
【0009】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記溝部は、前記ベース部の前記前端部に設けられていてもよい。前記溝部は、前記前後方向に交差する左右方向に沿って延在してもよい。
この実施形態によれば、溝部は左右方向に沿って延在するため、例えば、溝部が円弧状の構成と比較して、ベース部の前端部に対するユーザの視認性を向上できる。そのため、携帯用切断機によってワークを容易に加工(切断)できる。例えば、ベース部にトップガイド(墨線ガイド、マーキングラインガイド)が設けられている場合には、ユーザのトップガイドに対する視認性を向上できる。
【0010】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ベース部の前記左右方向のうち、前記刃具が装着される側を第1の側、その反対側を第2の側としたとき、前記溝部は、前記左右方向における前記第1の側の第3端部と、前記第2の側の第4端部とを備えていてもよい。前記携帯用切断機は、更に、第1ストッパを備えていてもよい。前記第1ストッパは、前記第4端部に設けられていてもよい。前記第1ストッパは、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に当接して、前記本体部の前記第1軸線周りの第1方向の回転を規制するように構成されていてもよい。
なお、この実施形態において、第1方向は、ベース部に対する本体部の傾斜角度が小さくなる方向である。
この実施形態によれば、比較的シンプルな構成により、本体部の第1方向の回転を規制できる。また、ユーザは、リンクアームの第2端部又は固定部が第1ストッパに当接するまで本体部を第1方向に回転させたうえで、固定部を溝部に固定することで、本体部のベース部に対する傾斜角度を、比較的小さい角度に固定することができる。
【0011】
なお、上記実施形態において、前記第1ストッパは、前記本体部の傾斜角度を、前記本体部に装着された前記刃具が前記ベース部に対して直交する角度に定めるように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、ユーザは、リンクアームの第2端部又は固定部が第1ストッパに当接するまで本体部を第1方向に回転させ、固定部を溝部に固定することで、ワークに対して刃具が直交する直角切りを行うことができる。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記携帯用切断機は、前記ベース部に固定されたアンギュラプレートを備えていてもよい。前記アンギュラプレートは、前記ベース部の前記前端部で前記左右方向に沿って延在し、前記溝部を規定するように構成されていてもよい。前記第1ストッパは、前記アンギュラプレートにおける前記溝部の前記第4端部に対応する位置に設けられたネジであってもよい。
この実施形態によれば、第1ストッパはネジであるため、ユーザは第1ストッパを容易に微調整できる。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記アンギュラプレートは、前記左右方向における前記第2の側に設けられた側壁と、前記側壁を前記左右方向に貫通する孔とを有していてもよい。前記ネジは、前記ネジの先端部が前記溝部内に突出するように、前記孔に配置されていてもよい。
この実施形態によれば、ユーザは、アンギュラプレートの第2の側から、所定の工具によって、溝部に対するネジの突出量を調整できる。そのため、第1ストッパをより容易に調整できる。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ベース部の前記左右方向のうち、前記刃具が装着される側を第1の側、その反対側を第2の側としたとき、前記溝部は、前記左右方向における前記第1の側の第3端部と、前記第2の側の第4端部とを備えていてもよい。前記携帯用切断機は、更に、前記溝部における前記第3端部に設けられた第2ストッパを備えていてもよい。前記第2ストッパは、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に当接して、前記本体部の前記第1軸線周りの第2方向の回転を規制するように構成されていてもよい。
なお、この実施形態において、第2方向は、ベース部に対する本体部の傾斜角度が大きくなる方向である。第2方向は、上記第1方向とは反対の方向である。
この実施形態によれば、溝部を利用した比較的シンプルな構成により、本体部の第2方向の回転を規制できる。また、ユーザは、リンクアームの第2端部又は固定部が第2ストッパに当接するまで本体部を第2方向に回転させたうえで、固定部を溝部に固定することで、本体部のベース部に対する傾斜角度を、比較的大きい角度に固定することができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第2ストッパは、前記溝部における位置を、前記第3端部と前記固定部との間で変位(変更)可能に前記溝部に設けられていてもよい。
この実施形態によれば、第2ストッパの溝部における位置を、使用頻度の高い傾斜角度に対応する位置に調整できる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記携帯用切断機は、更に、前記固定部を前記溝部に対して係止可能な係止機構を備えていてもよい。前記係止機構は、凹部と前記凹部に係止可能な凸部とを備えていてもよい。前記凹部は、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部と、前記溝部と、の一方に設けられてもよい。前記凸部は、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部と、前記溝部と、の他方に設けられてもよい。前記係止機構は、前記固定部が前記リンクアームの回転に連動して前記溝部に沿って摺動するのに対応して、前記凹部と前記凸部とが係止するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、本体部をベース部に対して所定の傾斜角度に係止できる。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記携帯用切断機は、前記ベース部に固定されたアンギュラプレートと、前記アンギュラプレートに設けられて前記左右方向に延在するベベルプレートとを備えていてもよい。前記アンギュラプレートは、前記ベース部の前記前端部で前記左右方向に沿って延在し、前記溝部を規定するように構成されていてもよい。前記凹部と前記凸部との一方は、前記ベベルプレートに形成されていてもよい。
この実施形態によれば、アンギュラプレートに設けられたベベルプレートを利用して、本体部をベース部に対して所定の傾斜角度に係止できる。
【0018】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記ベベルプレートには、前記本体部の傾斜角度を示す目盛りが設けられていてもよい。
この実施形態によれば、アンギュラプレートに設けられたベベルプレートを利用して、本体部をベース部に対して所定の傾斜角度に係止できる。
【0019】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記携帯用切断機は、更に、指示プレートを備えていてもよい。前記指示プレートは、前記リンクアームの前記第2端部又は前記固定部に設けられていてもよい。前記凹部と前記凸部との他方は、前記指示プレートに設けられていてもよい。前記指示プレートは、前記固定部が前記溝部内を前記左右方向に摺動するのに応じて前記ベベルプレート上を前記左右方向に移動するように構成されていてもよい。
この実施形態によれば、アンギュラプレートに設けられたベベルプレートと固定部に設けられた指示プレートとの一方に凸部を設け、他方に凹部を設ける構成により、本体部をベース部に対して所定の傾斜角度に係止できる。
【0020】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記下面を有する基板と、前記ベース部の前記前端部において前記基板から上側に突出するアンギュラプレートを備えていてもよい。前記アンギュラプレートは、前記左右方向に延在するように構成されていてもよい。前記アンギュラプレートの上壁は、前記基板に沿って前記左右方向に延在してもよい。前記溝部は、前記アンギュラプレートを前記前後方向に貫通し、前記左右方向に延在する貫通孔であってもよい。
この実施形態によれば、アンギュラプレートの上下方向高さを抑えることができる。そのため、例えば、溝部が円弧状の構成と比較して、ベース部の前端部に対するユーザの視認性を向上できる。したがって、携帯用切断機によってワークを容易に加工できる。例えば、ベース部にトップガイド(墨線ガイド、マーキングラインガイド)が設けられている場合には、ユーザのトップガイドに対する視認性を向上できる。
【0021】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記傾動支持部は、前記第1軸線を中心軸とする傾動シャフトを更に備えていてもよい。前記本体部は、前記切断機本体と、前記前後方向において前記切断機本体と前記傾動支持部との間に配置されたブラケットを備えていてもよい。前記ブラケットは、前記切断機本体と一体に前記第1軸線周りに傾動可能に構成されていてもよい。前記ブラケットは、前記切断機本体と連結された第1部分と、前記傾動シャフト周りに配置された第2部分と、ブラケットアームとを有していてもよい。前記携帯用切断機は、前記ブラケットアームと前記リンクアームの前記第1端部とを連結する連結シャフトを備えていてもよい。前記切断機本体の前記ベース部に対する傾斜角度が大きくなる方向(第2方向)に、前記切断機本体が前記第1軸線周りに傾動されるとき、(i)前記リンクアームの前記第1端部は、前記ブラケットの前記第1軸線周りの回転に連動して前記連結シャフト周りに回転してもよい。(ii)前記リンクアームの前記第2端部は、前記アンギュラプレートの前記溝部に沿って前記固定部とともに、前記左右方向における前記刃具が装着される第1の側に移動してもよい。(iii)前記リンクアームの少なくとも一部と前記ブラケットアームの少なくとも一部は、前記連結シャフトを中心に折りたたまれるように前記左右方向に重なり合ってもよい。
この実施形態によれば、本体部がベース部に対して傾動されると、リンクアームの少なくとも一部とブラケットアームの少なくとも一部が左右方向に重なり合うので、ベース部の前端部に対するユーザの視認性を向上できる。
【0022】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記本体部は、前記前後方向における後方に設けられユーザが把持するための把持部を備えていてもよい。前記ベース部は、前記溝部よりも前側に設けられたトップガイドを備えていてもよい。
この実施形態によれば、アンギュラプレートの上下方向高さを抑えることができる。そのため、例えば、溝部が円弧状の構成と比較して、トップガイドに対するユーザの視認性を向上できる。
【0023】
以下、
図1から
図11を参照し、本開示の非限定的な一実施形態に係る携帯マルノコ(以下、単に「マルノコ10」と呼ぶ)について説明する。
【0024】
図1から
図3に示すように、マルノコ10は、ワークW(
図3参照)に当接させるための当接面212を有するベース部20と、刃具101が装着される切断機本体31を備える本体部30とを有する。
【0025】
以下では、説明の便宜上、マルノコ10の加工(切断)進行方向に平行な方向を、マルノコ10の前後方向と定義し、ワークWがマルノコ10に対して相対的に移送される先をマルノコ10の後側、その反対側をマルノコ10の前側と定義する。本実施形態では、後側は、ユーザがマルノコ10を手に持ってワークWを加工(切断)するときにユーザがいる側であり、その反対側がマルノコ10の前側である。また、このとき、ベース部20に対してワークWが配置される側をマルノコ10の下側と定義し、その反対側を、マルノコ10の上側と定義する。上側は、本体部30が位置する側である。更に、前後方向及び上下方向に直交する方向をマルノコ10の左右方向と定義する。左右方向において、後側から前側を見たときの右側をマルノコ10の右側と定義し、その反対側をマルノコ10の左側と定義する。
【0026】
本体部30は、傾動軸線C1(
図3参照)周りに、ベース部20に対して傾動可能である。
図1から
図5は、本体部30の傾斜角度が0°におけるマルノコ10及びマルノコ10の一部を示し、
図6から
図9は、本体部30の傾斜角度が45°におけるマルノコ10及びマルノコ10の一部を示している。本体部30の傾斜角度は、刃具101の傾斜角度でもある。傾動軸線C1は、前後方向に延在する。傾斜角度が0°のとき、刃具101の側面は左右方向に直交する。なお、
図3、
図6及び
図7には、本体部30の傾動軸線C1周りの回転方向R1、R2が示されている。方向R1は刃具101の傾斜角度が小さくなる方向であり、方向R2は刃具101の傾斜角度が大きくなる方向である。
【0027】
ベース部20は、略矩形状に形成されている。ベース部20の長手方向は前後方向であり、ベース部20の短手方向は左右方向である。
図1に示すように、ベース部20は、ワークWに当接させるための当接面212(下面212)を有する略平板状の基板21を備える。ワークWを直線的に切断するためにマルノコ10とともに長尺定規が使用される場合には、当接面212が長尺定規に当接するようにベース部20が配置されてもよい。基板21の前端には、切欠き状のトップガイド221が設けられている。トップガイド221は、ワークWの上面に描かれた墨線(マーキングライン)に位置合わせするためのいわゆる墨線ガイド(マーキングラインガイド)である。
【0028】
ベース部20の左右方向の縁部には、上下方向に貫通する開口213が形成されている。本実施形態では、開口213は基板21の右縁付近に設けられている。
【0029】
本体部30は、切断機本体31と、切断機本体31の前部分に接続されたブラケット40とを含む。本体部30は、基本的には、ベース部20に対して上側に配置される。切断機本体31は、更に、バッテリ102を着脱可能に装着するバッテリ装着部39(
図1及び
図2参照)を備える。バッテリ装着部39は、モータ33の後側に設けられている。バッテリ装着部39は、一対のガイドレールと、フック係合部と、端子とを備え、バッテリ102を着脱可能な周知の構成を有する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、切断機本体31は、電動式のDCモータ33を収容するモータハウジング32と、ギヤハウジング34と、ユーザが手で把持するためのハンドル(把持部)36と、固定カバー37とを備える。
図3に示すように、モータ33の回転軸線AX1は、左右方向に延在する。ギヤハウジング34内には、減速ギヤと、左右方向に延在する軸線AX2を有する出力シャフトとが収容されている。モータ33は、減速ギヤ及び出力シャフトを介して、刃具101を軸線AX2回りに回転させる。本実施形態では、出力シャフトは、固定カバー37の内部にまで延在している。出力シャフトの先端部は、刃具101を着脱可能に装着するように構成されたフランジ状の装着部35(
図3参照)として機能する。本実施形態では、刃具101として、チップソーと称される丸鋸刃が用いられている。ハンドル36は切断機本体31の後部に設けられている。ハンドル36には、モータ33の起動及び停止を行うためのトリガが設けられている。
【0031】
図3に示すように、固定カバー37は、刃具101の概ね上半分を覆うように構成されている。固定カバー37には、可動カバー38が接続されている。可動カバー38は、開口213から下側に突出する刃具101の下半分を覆う。可動カバー38は、可動カバー38の前端が例えばワークWに当接された状態でマルノコ10が移動されると、開かれる。
【0032】
図4、
図5、
図8及び
図9に示すように、マルノコ10は、本体部30をベース部20に対して傾動可能に構成された傾動支持部25と、本体部30のベース部20に対する角度を固定可能に構成された角度固定機構18とを備える。
【0033】
図4に示すように、傾動支持部25は、傾動シャフト27と、傾動シャフト保持部26とを含む。
図1に示すように、傾動シャフト保持部26は、ベース部20の前端部22に設けられ、基板21の上面211から上側に突出している。本実施形態では、傾動シャフト保持部26は、固定カバー37の前側(真ん前)に配置されている。また、傾動シャフト保持部26は、基板21と一体に形成されている。
図4に示すように、傾動シャフト保持部26は、前後方向に貫通する孔261を有する。傾動シャフト保持部26の中心軸は、傾動軸線C1と同軸である。
【0034】
傾動シャフト27は、前後方向に延在する。傾動シャフト27の中心軸は、傾動軸線C1と同軸上である。傾動シャフト27の前部分は、傾動シャフト保持部26の孔261に配置されている。傾動シャフト27の後端部271は、後述するブラケット40の第2部分42に挿通されている。傾動シャフト保持部26は、詳細を後述するブラケット40を介して、切断機本体31を傾動シャフト27(傾動軸線C1)周りに傾動(回動、回転)可能に保持している。
【0035】
角度固定機構18は、アンギュラプレート23と、ブラケット40と、リンクアーム50と、連結シャフト60と、固定部70とを含む。以下、角度固定機構18の各部の方向(特に、左右方向)についての説明は、主に、本体部30の傾斜角度が0°の場合を基準としている。
【0036】
図1に示すように、アンギュラプレート23は、ベース部20の前端部22に設けられ、基板21の上面211から上側に突出している。本実施形態では、アンギュラプレート23は、基板21と一体に形成されている。アンギュラプレート23は、左右方向を長手方向とする壁状である。アンギュラプレート23は、左右方向を長手方向とするプレート状(略柱状)に形成されているともいえる。アンギュラプレート23は、傾動シャフト保持部26の左側に設けられて基板21の左縁まで延在する。
図4に示すように、アンギュラプレート23の略矩形状の上面(上壁231)は、基板21に沿って左右方向に延在している。本実施形態では、上面231は上下方向に略直交している。
図2に示すように、アンギュラプレート23の上面231には、本体部30(刃具101)の傾斜角度を示す目盛り98(
図10参照)が付されたベベルプレート95が固定されている。
【0037】
アンギュラプレート23には、溝24が設けられている。溝24は、アンギュラプレート23を前後方向に貫通する。溝24は、左右方向に延在する。アンギュラプレート23は、長溝規定部でもある。詳細は後述するが、角度固定機構18は、溝24(アンギュラプレート23)に対するリンクアーム50(第2端部52)の位置が固定されることで、本体部30の傾斜角度を固定可能に構成されている。アンギュラプレート23の上下方向高さは、溝24を形成可能な高さであればよい。溝24の高さは、後述する摺動シャフト72を挿通可能な程度の高さであればよい。アンギュラプレート23の上面231は、モータ33の回転軸AX1よりも下側に位置する。例えば、ベース部20の下面212からアンギュラプレート23の上面231までの高さは、ベース部20の下面212から固定カバー37の上端までの高さの10~20%である。
【0038】
ブラケット40は、切断機本体31と傾動シャフト27とを連結するように構成されている。
図1に示すように、ブラケット40は、前後方向において、傾動シャフト保持部26及びアンギュラプレート23の後側、かつ、切断機本体31の前側に位置する。
図4及び
図5に示すように、ブラケット40は、固定カバー37と連結される第1部分41と、傾動シャフト27と連結される第2部分42と、ブラケットアーム44とを備える。
【0039】
第1部分41は、固定カバー37の前側に配置されている。第1部分41は、左右方向に延在する貫通孔を有する。固定カバー37の前端部は当該貫通孔に挿通されたシャフト周りに固定されている。第2部分42は、第1部分41より下側で傾動シャフト保持部26の後側に配置されている。第2部分42は、前後方向に貫通する孔(不図示)を有する。第2部分42には、傾動シャフト27の後端部271が配置されている。
【0040】
ブラケットアーム44は、第2部分42の上側から左側へ向けて延在する板状に形成されている。ブラケットアーム44の長手方向は左右方向であり、ブラケットアーム44の短手方向(幅方向)は上下方向である。ブラケットアーム44は、アンギュラプレート23の右端部付近の上側に位置する。ブラケットアーム44の左端部43には、リンクアーム50が連結されている。
【0041】
リンクアーム50は、ブラケット40とアンギュラプレート23(溝24)とを、固定部70を介して連結するように構成されている。
図4に示すように、リンクアーム50は、ブラケットアーム44の左端部43に連結される第1端部51と、第1端部51とは反対側の第2端部52とを備える。リンクアーム50の第1端部51とブラケットアーム44の左端部43とは、後述する連結シャフト60によって連結されている。
【0042】
リンクアーム50は、第1端部51から前側へ向けて屈曲する屈曲部53と、屈曲部53から左へ向けて延在する延在部54とを有する。屈曲部53は、第1端部51に接続され、アンギュラプレート23の上面231を跨いでアンギュラプレート23の前側にまで至る板状に形成されている。屈曲部53の左右方向に直交する断面形状は、略L字状である。延在部54は、屈曲部53に接続されて、左右方向に延在する板状に形成されている。延在部54の長手方向は左右方向であり、延在部54の短手方向(幅方向)は上下方向である。第2端部52は、延在部54の左端部でもある。
【0043】
図3から
図5に示すように、連結シャフト60は、ブラケットアーム44とリンクアーム50とを、傾動軸線C1に平行な軸線C2周りに回転可能に連結するように構成されている。本実施形態では、ブラケットアーム44の左端部43とリンクアーム50の第1端部51とには、夫々、前後方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられている。連結シャフト60のシャフト本体61は、この孔に挿通されている。軸線C2は、シャフト本体61の中心軸と同軸上である。
【0044】
固定部70は、ユーザによる操作レバー71の手動操作により、固定部70(リンクアーム50の第2端部52)がアンギュラプレート23(溝24)に対して固定された固定状態と、固定状態が解除された解除状態とに切替可能に構成されている。固定部70は、常時には固定状態にある。
【0045】
図4及び
図5に示すように、固定部70は、前後方向に延在する軸線C3を中心軸とする摺動シャフト72と、操作レバー71とを備える。摺動シャフト72は、溝24を前後方向に貫通する。摺動シャフト72は、溝24内を摺動可能な程度の外径を有する。
図5に示すように、摺動シャフト72の後端には、アンギュラプレート23の後面234に当接する当接部721が設けられている。摺動シャフト72の前端部は、溝24から前側に突出しており、当該前端部には、ナット74が螺合されている。摺動シャフト72上であって、ナット74とアンギュラプレート23の前面235との間には、操作レバー71、リンクアーム50の第2端部52、及び、後述するポジションプレート91が、前から後に、この順で配置されている。また、摺動シャフト72におけるポジションプレート91の後には、付勢バネ73(
図4参照)が配置されて、ポジションプレート91を前方に付勢している。
【0046】
図3に示すように、操作レバー71の基部711は、ナット74上に設けられている。固定状態では、ナット74は、アンギュラプレート23をナット74と当接部721との間で前後方向に締め付ける。ナット74を緩める方向に操作レバー71が操作されると、ポジションプレート91及びリンクアーム50の第2端部52は、付勢バネ73の付勢力によって、摺動シャフト72上を前方に移動する。これにより、ナット74と当接部721との間の締め付けが解除された状態(解除状態)となり、摺動シャフト72は、溝24内を移動可能となる。解除状態では、固定部70及びリンクアーム50の第2端部52は、溝24に沿って移動可能である。解除状態では、固定部70及び固定部70に連結されたリンクアーム50の第2端部52は、溝24に沿って移動可能となり、本体部30(切断機本体31)は、傾動軸線C1周りに傾動可能となる。
【0047】
例えば、
図1に示すようにベース部20に対して切断機本体31が傾斜していない状態から、ユーザによって切断機本体31が右側へ傾動されると、ブラケット40は、傾動軸線C1周りの方向R2(
図3参照)へ回転する。具体的には、ブラケットアーム44は、第2部分42(
図4参照)を中心として傾動軸線C1周りの方向R2へ回転する。ブラケットアーム44の左端部43には、連結シャフト60を介してリンクアーム50の第1端部51が連結されているため、リンクアーム50の第1端部51は、
図8及び
図9に示すように、連結シャフト60を介して、ブラケット40によって上方へ持ち上げられる。このとき、固定部70(摺動シャフト72)はリンクアーム50の第2端部52を溝24の前側に保持したまま、溝24に沿って右側へ移動する。そうすると、
図1及び
図5において左右方向に延在していたリンクアーム50の延在部54は、
図7及び
図9に示すように、第2端部52を基点として上側へ持ちあげられるように傾動する。つまり、リンクアーム50は、連結シャフト60の軸線C2周りの方向であって、ブラケット40及び切断機本体31の傾動(回転)方向R2とは反対の第3方向R3(
図7参照)へ回転する。
図3と
図7とを比較すると明らかなように、リンクアーム50は、全体として右側(刃具101へ近づく側)へ移動し、リンクアーム50の一部は、ブラケットアーム44と左右方向に重なり合う。本実施形態では、前側からマルノコ10を見て、リンクアーム50の第1端部51及び屈曲部53は、ブラケットアーム44の前側で、ブラケットアーム44と左右方向に重なり合う。言い換えると、リンクアーム50とブラケット40とは、連結シャフト60を中心として折りたたまれるように、右側へ移動する。
【0048】
ユーザは、以上のようにして本体部30を傾斜(傾動)させた後、固定部70をアンギュラプレート23(溝24)に対して固定することで、本体部30のベース部20に対する傾斜角度を固定することができる。
【0049】
図4に示すように、マルノコ10は、更に、本体部30における傾動軸線C1周りの方向R1への回転を規制する第1ストッパ81を備える。第1ストッパ81は、溝24の左端部242に設けられている。第1ストッパ81は、固定部70に当接することで固定部70の左方向の移動を規制して、本体部30の方向R1(つまり、傾斜角度が小さくなる方向)への回転を規制する。
【0050】
本実施形態では、第1ストッパ81は、ネジ状に形成されている。第1ストッパ81の大部分は、アンギュラプレート23の左側壁232を貫通する孔233に配置されている。第1ストッパ81は、孔233内に配置されたシャフト部812と、溝24内に突出するシャフト先端部811とを有する。第1ストッパ81は、基本的に、摺動シャフト72がシャフト先端部811に当接すると、本体部30(刃具101)の傾斜角度が0°になるように、アンギュラプレート23に設けられている。第1ストッパ81は、直角ストッパとも呼ばれる。
【0051】
図5及び
図9に示すように、シャフト部812には、所定の工具を挿入可能な孔813が設けられている。シャフト先端部811の溝24に対する突出量は、シャフト部812を回転させることにより、調整可能である。ユーザは、アンギュラプレート23の左側からシャフト部812の孔813に当該工具を挿入してシャフト部812を回転させることで、シャフト先端部811の突出量を調整できる。これにより、第1ストッパ81の規制角度を微調整できる。
【0052】
図4、
図5、
図8及び
図9に示すように、マルノコ10は、更に、本体部30における傾動軸線C1周りの方向R2(つまり、傾斜角度が大きくなる方向)への回転を規制する第2ストッパ82を備える。第2ストッパ82は、溝24における右端部241と摺動シャフト72との間に配置されている。第2ストッパ82は、固定部70に当接することで固定部70の右方向の移動を規制して、本体部30の方向R2への回転を規制する。
【0053】
本実施形態では、第2ストッパ82は、溝24内に摺動可能に設けられた摺動部822と、摺動部822に接続された操作ツマミ821とを備える。操作ツマミ821は、アンギュラプレート23の後側に配置され、ユーザの手動操作により摺動部822の溝24における位置を固定可能に構成されている。摺動部822は、摺動シャフト72に当接することで、摺動シャフト72の右方向への移動を規制する。
【0054】
図5及び
図9に示すように、第2ストッパ82は、更に、摺動部822の摺動にともなってベベルプレート95上を移動するように構成された目盛り指示部823を備える。上述したように、ベベルプレート95には、本体部30の傾斜角度を示す目盛り98が付されている。目盛り指示部823の指し示す角度は、摺動部822と摺動シャフト72とが当接したときの本体部30の傾斜角度に対応する。ユーザは、所望の傾斜角度に目盛り指示部823を合わせて第2ストッパ82を溝24に固定し、本体部を方向R2へ回転させることで、刃具101の最大傾斜角度を所望の角度に調整することができる。
【0055】
本実施形態のマルノコ10は、更に、本体部30をベース部20に対して所定の傾斜角度に係止可能に構成された係止機構90を有する。
図10及び
図11に示すように、係止機構90は、主に、ベベルプレート95及びポジションプレート91を備える。係止機構90は、ポジティブストップ機構とも呼ばれる。
【0056】
ベベルプレート95は、アンギュラプレート23の上面231にネジ止めされている。ベベルプレート95は、アンギュラプレート23の上面231の形状と略等しい矩形状の板部96と、板部96に設けられた目盛り98と、板部96の前端が切りかかれて形成された複数の切欠き(凹部97)とを備える。複数の凹部97は、0°、10°、20°、30°、45°等の比較的多用される傾斜角度に対応して設けられている。
【0057】
図11に示すように、ポジションプレート91は、前後方向に貫通する孔921を有する環状部92と、目盛り指示部93とを備える。環状部92の孔921には、固定部70の摺動シャフト72が挿通される。目盛り指示部93は、環状部92の上端に接続されてベベルプレート95上に配置された板状部(指示プレート)である。目盛り指示部93は、下方に突出する凸部94を備える。凸部94は、ベベルプレート95の凹部97に係止可能に構成されている。ユーザは、ポジションプレート91の凸部94とベベルプレート95の凹部97とが係止する位置で、固定部70をアンギュラプレート23に固定することで、本体部30のベース部20に対する傾斜角度を所望の角度に調整することができる。
【0058】
以上で説明した本実施形態のマルノコ10によれば、本体部30とリンクアーム50とは、連結シャフト60によって連結され、リンクアーム50は、本体部30の傾動軸線C1と平行な軸線C2周りに回転可能である。そのため、傾動軸線C1と軸線C2とが交差する構成と比較して、本体部30の傾動操作中にリンクアーム50が本体部30に干渉することを抑制できる。そのため、例えば、リンクアーム50と本体部30とを前後方向に近づけるようにマルノコ10を構成できる。
【0059】
また、溝24は左右方向に沿って延在するため、例えば、溝24が円弧状の構成と比較して、ベース部20の前端部22に対する視認性を向上できる。そのため、マルノコ10によってワークWを容易に加工できる。また、ユーザのトップガイド221に対する視認性を向上できる。
【0060】
また、溝24は、左右方向に延在するので、溝24を規定するアンギュラプレート23の上下方向高さを抑えることができる。そのため、ベース部20の前端部22に対する視認性をより向上できる。
【0061】
また、アンギュラプレート23の上壁231は、基板21に沿って左右方向に延在し、溝24は、アンギュラプレート23を前後方向に貫通するように形成されているので、アンギュラプレート23の上下方向高さをより抑えることができる。そのため、ベース部20の前端部22に対するユーザの視認性をより向上できる。
【0062】
また、切断機本体31が傾動軸線C1を中心とした方向R2へ回転(傾動)されると、リンクアーム50とブラケット40とは、連結シャフト60を中心として折りたたまれるように、右側へ移動する。そのため、ベース部20の前端部22に対するユーザの視認性をいっそう向上できる。
【0063】
<対応関係>
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素との対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
マルノコ10は、「携帯用切断機」の一例である。
ワークWは、「ワーク」の一例である。
ベース部20は、「ベース部」の一例である。
刃具101は、「刃具」の一例である。
モータ33は、「電動モータ」の一例である。
切断機本体31は、「切断機本体」の一例である。
本体部30は、「本体部」の一例である。
基板21は、「基板」の一例である。
下面212は、「下面」の一例である。
傾動軸線C1は、「第1軸線」の一例である。
傾動支持部25は、「傾動支持部」の一例である。
傾動シャフト27は、「傾動シャフト」の一例である。
リンクアーム50は、「リンクアーム」の一例である。
第1端部51、第2端部52は、夫々、リンクアームの「第1端部」、「第2端部」の一例である。
前端部22は、ベース部の「前端部」の一例である。
溝24は、「溝部」の一例である。
固定部70は、「固定部」の一例である。
軸線C2は、「第2軸線」の一例である。
連結シャフト60は、「連結シャフト」の一例である。
右側、左側は、夫々、「第1の側」、「第2の側」の一例である。
右端部241は、「溝部の第3端部」の一例である。
左端部242は、「溝部の第4端部」の一例である。
第1方向R1は、「第1方向」の一例である。
第1ストッパ81は、「第1ストッパ」、「ネジ」の一例である。
アンギュラプレート23は、「アンギュラプレート」の一例である。
左側壁232は、「アンギュラプレートの『側壁』」の一例である。
孔233は、「側壁を左右方向に貫通する孔」の一例である。
シャフト先端部811は、「ネジの先端部」の一例である。
第2ストッパ82は、「第2ストッパ」の一例である。
第2方向R2は、「第2方向」の一例である。
係止機構90は、「係止機構」の一例である。
凹部97、凸部94は、夫々、「凹部」、「凸部」の一例である。
ベベルプレート95は、「ベベルプレート」の一例である。
目盛り98は、「目盛り」の一例である。
目盛り指示部93は、「指示プレート」の一例である。
上壁231は、「アンギュラプレートの上壁」の一例である。
ブラケット40は、「ブラケット」の一例である
第1部分41、第2部分42、ブラケットアーム44は、夫々、「第1部分」、「第2部分」、「ブラケットアーム」の一例である。
【0064】
<他の実施形態>
上記実施形態において、リンクアーム50は、切断機本体31に直接的に連結されていてもよい。例えば、リンクアーム50の第1端部51は、固定カバー37に別途設けられたシャフトに連結され、リンクアーム50は、固定カバー37の傾動に応じて当該シャフト周りを回転するように構成されていてもよい。
【0065】
上記実施形態において、アンギュラプレート23に設けられた溝24は、左右方向に平行でなくともよい。溝24は、左右方向に沿った略円弧状であってもよい。また、溝24は、固定部70を固定可能な形状であればよく、例えば、下縁が開放されていてもよい。この形態によっても、本体部30のベース部20に対する傾斜角度を固定することができる。
【0066】
上記実施形態において、溝24を規定するアンギュラプレート23は、ベース部20の基板21と一体的に構成されていてもよいし、基板21とは別体として構成され基板21に固定されてもよい。
【0067】
上記実施形態において、ベベルプレート95に設けられた凹部97と、ポジションプレート91に設けられた凸部94とは、入れ替えらえてもよい。例えば、ベベルプレート95の上面に凸部94を設け、ポジションプレート91の目盛り指示部93の下面に凹部97を設けてもよい。この形態によっても、上記実施形態と同様に、本体部30をベース部20に対して所望の角度で係止させることができる。
【0068】
上記実施形態において、リンクアーム50の第2端部52は、溝24内に突出して、溝24内を摺動するように構成されていてもよい。この場合には、第1ストッパ81、第2ストッパ82は、リンクアーム50の第2端部52に当接してリンクアーム50の移動を規制するように構成されていてもよい。
【0069】
上記実施形態において、第1ストッパ81は、基板21の下面212、又は、アンギュラプレート23の上面231から溝24内にシャフト先端部811が突出するように、アンギュラプレート23に対して配置されてもよい。
【0070】
マルノコ10は、外部の交流電源に接続可能な電源コードを備えていてもよく、外部の交流電源を用いて駆動されてもよい。
【0071】
上記実施形態では、傾動支持部25の傾動軸線C1は、傾動シャフト27の中心軸であったが、傾動支持部25の傾動軸線C1は、仮想的な軸線であってもよい。例えば、傾動支持部25は、前後方向に対向して配置された円弧形状の凹状レールと凸状レールを備え、これらが係合することでベース部20に対して本体部30を傾動可能に支持するように構成されていてもよい。この場合には、傾動軸線(第1軸線)は、ベース部20の長手方向に平行に延在し、円弧の中心を通る仮想的な軸線であってもよい。
【0072】
上記の構成は、マルノコ10に限らず、他の携帯用切断機に適用可能である。他の携帯用切断機として、例えば、プランジ式のマルノコ、カッター等が挙げられる。
【0073】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
10:マルノコ、18:角度固定機構、20:ベース部、21:基板、22:前端部、23:アンギュラプレート、24:溝、25:傾動支持部、26:傾動シャフト保持部、27:傾動シャフト、30:本体部、31:切断機本体、32:モータハウジング、33:モータ、34:ギヤハウジング、35:装着部、36:ハンドル、37:固定カバー、38:可動カバー、39:バッテリ装着部、40:ブラケット、41:第1部分、42:第2部分、43:左端部、44:ブラケットアーム、50:リンクアーム、51:第1端部、52:第2端部、53:屈曲部、54:延在部、60:連結シャフト、61:シャフト本体、70:固定部、71:操作レバー、72:摺動シャフト、73:付勢バネ、74:ナット、81:第1ストッパ、82:第2ストッパ、90:係止機構、91:ポジションプレート、92:環状部、93:目盛り指示部、94:凸部、95:ベベルプレート、96:板部、97:凹部、98:目盛り、101:刃具、102:バッテリ、211:上面、212:下面、213:開口、221:トップガイド、231:上面、232:左側壁、233:孔、234:後面、235:前面、241:右端部、242:左端部、261:孔、271:後端部、711:基部、721:当接部、811:シャフト先端部、812:シャフト部、813:孔、821:操作ツマミ、822:摺動部、823:目盛り指示部、921:孔、AX1:回転軸線、AX2:軸線、C1:傾動軸線、C2:軸線、C3:軸線、R1:第1方向、R2:第2方向、R3:第3方向、W:ワーク