(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134443
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】光硬化性液状ポリオレフィンおよび組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20240926BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240926BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08F299/00
C09J4/02
C09K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044751
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】立松 涼
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠人
【テーマコード(参考)】
4H017
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB07
4H017AC07
4H017AD02
4J040FA031
4J040JB01
4J040LA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA031
4J127BA041
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD031
4J127BE021
4J127BE02X
4J127BE031
4J127BE03X
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE391
4J127BE39X
4J127BG161
4J127BG16Y
4J127CA01
4J127EA12
4J127FA14
4J127FA15
4J127FA17
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い光硬化性を有し、且つ、光硬化後の外観や力学特性の経時変化が少ない成形体を形成可能な光硬化性液状ポリオレフィンおよび光硬化性原料を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明は、下記の要件(a1)~(a6)を満たし、且つ、1分子あたりの平均として1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に関する。
(a1)エチレンから導かれる構成単位の含有量が、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量の合計を100モル%としたときに、15~85mol%の範囲にある;
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)が、400~40,000である;
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)を基準とする炭素数1,000個あたりの内部オレフィン含有量が平均として2個以下である;
(a4)150℃における回転粘度が10~8,000mPa・sの範囲にある;
(a5)ハーゼン色相が100以下である;
(a6)流動点が0℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(a1)~(a6)を満たし、且つ、1分子あたりの平均として1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
(a1)エチレンから導かれる構成単位の含有量が、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量の合計を100モル%としたときに、15~85mol%の範囲にある;
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)が、400~40,000の範囲である;
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)を基準とする炭素数1,000個あたりの内部オレフィン含有量が平均として2個以下である;
(a4)150℃における回転粘度が10~8,000mPa・sの範囲である;
(a5)ハーゼン色相が300以下である;
(a6)流動点が0℃以下である。
【請求項2】
α-オレフィンがプロピレンである請求項1に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
【請求項3】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位を含む請求項1に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
【請求項4】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)を不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(X)によってグラフト変性する工程(S1)と、
前記工程(S1)に続いて、メタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(Y)によってグラフト変性する工程(S2)と
を含むエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【請求項5】
前記化合物(X)が無水マレイン酸である請求項4に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(Y)がメタクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルからなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項4又は請求項5に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【請求項7】
(メタ)アクリルモノマーと請求項1に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能アクリルモノマーと請求項1に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の組成物を光硬化させた成形体。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の組成物を含む成形体用原料。
【請求項11】
請求項7または請求項8に記載の組成物を含む接着剤。
【請求項12】
請求項7または請求項8に記載の組成物を含む封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性液状ポリオレフィンおよびその組成物、より詳しくは、(メタ)アクリロイル基を含有する光硬化性を示す変性エチレン・α-オレフィン共重合体およびその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光の照射により発生するラジカルやカチオンを起点として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基など重合性を有するオリゴマー、モノマー間の反応により架橋構造が形成する光硬化性樹脂は、省エネルギーと環境負荷低減の観点から注目をあびている。光として紫外線を利用する紫外線硬化性樹脂は、室温、且つ短時間で硬化が可能なため基材へのダメージが少なく省エネルギーな取り扱いが可能である。また、樹脂は分子量が低いオリゴマーが主成分のため、シンナーによる減粘が不要のため、環境負荷を低減可能である。また3Dプリンターのように塗工と同時に紫外線照射することで、紫外線硬化性樹脂による立体像形成も可能である。そのため、紫外線硬化性樹脂の塗料、インキ、コーティング材料、粘接着剤、製版材料、レジスト、封止材などの用途展開が検討されている。このような光硬化性樹脂を、ポリオレフィン等の低極性基材に適用することも検討されている。
【0003】
光硬化性樹脂をポリオレフィンに適用しようとする場合、光硬化性樹脂は、多くの場合光硬化性液状ポリオレフィンの形で用いられることになる。一方、光硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基など、光の照射によりラジカルおよび/またはカチオンを生成可能な官能基を有することが必須である。このため、光硬化性樹脂は、ポリオレフィン等の低極性基材への利用が難しいとされてきた。そのような状況においても、光硬化性樹脂をポリオレフィン等の低極性基材に適用しようとする試みが種々なされており、それに関するいくつかの報告が挙げられている。
【0004】
特許文献1および特許文献2では、特定の(メタ)アクリロイル基を有する共役ジエン系ポリマーとしてポリイソプレンが提案されている。光硬化前後の体積変化が小さく、且つ光硬化後の高い力学特性が特徴であるが、光硬化物の経時変化は言及されていない。また、特許文献3では、(メタ)アクリル酸エステルを導入した特定の分子構造を有するポリブタジエンの製造方法が提案されている。光硬化前後の粘度変化を測定することにより優れた光硬化性が提案されているものの、光硬化物の品質は言及されていない。さらに、特許文献4では、(メタ)アクリル酸エステルを導入した特定の分子構造を有する水素添加されたポリブタジエンが提案されている。水素添加することで光硬化直後および耐熱試験後の黄変が従来の変性ポリブタジエンに比べて改善されていることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-192745号公報
【特許文献2】特開2003-192750号公報
【特許文献3】特許第5265116号公報
【特許文献4】特許第6059356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のいずれの光硬化性液状ポリオレフィンにおいても、分子内に不飽和結合、特に、イソプレンまたはブタジエンに由来する内部オレフィンに基づく不飽和結合、を有する可能性があるため、光硬化物の品質の経時安定性に課題があった。
【0007】
本発明は、高い光硬化性を有し、且つ、光照射後の外観や力学特性の経時変化が少ない成形体を形成可能な光硬化性液状ポリオレフィンおよび光硬化性原料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、光硬化性液状ポリオレフィンとして、特定の要件を満たす変性エチレン・α-オレフィン共重合体を採用することにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下を提供する。
[1] 下記の要件(a1)~(a6)を満たし、且つ、1分子あたりの平均として1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
(a1)エチレンから導かれる構成単位の含有量が、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量の合計を100モル%としたときに、15~85mol%の範囲にある;
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)が、400~40,000の範囲である;
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)を基準とする炭素数1,000個あたりの内部オレフィン含有量が平均として2個以下である;
(a4)150℃における回転粘度が10~8,000mPa・sの範囲である;
(a5)ハーゼン色相が300以下である;
(a6)流動点が0℃以下である。
【0010】
[2] α-オレフィンがプロピレンである[1]に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
【0011】
[3] メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位を含む[1]に記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)。
【0012】
[4] エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)を不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(X)によってグラフト変性する工程(S1)と、
前記工程(S1)に続いて、メタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(Y)によってグラフト変性する工程(S2)と
を含むエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【0013】
[5] 前記化合物(X)が無水マレイン酸である[4]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【0014】
[6] 前記化合物(Y)がメタクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルからなる群より選ばれる1種以上の化合物である[4]または[5]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法。
【0015】
[7] アクリルモノマーと[1]~[3]のいずれかに記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物。
【0016】
[8] (メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能アクリルモノマーと[1]~[4]のいずれかに記載の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物。
【0017】
[9] [7]または[8]に記載の組成物を光硬化させた成形体。
【0018】
[10] [7]または[8]に記載の組成物を含む成形体用原料。
【0019】
[11] [7]または[8]に記載の組成物を含む接着剤。
【0020】
[12] [7]または[8]に記載の組成物を含む封止材。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、十分に高い光硬化性を有しながら、光照射後の外観や力学特性の経時変化が少ない光硬化性液状ポリオレフィンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、例えば「M~N」(MおよびNは、M<Nを満たす数値とする。)と表記した場合、特に断りがなければ「M以上、N以下」を意味する。
【0023】
本明細書において、ある重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「Mから導かれる構成単位」なる表現が用いられることがあるが、これは「Mに対応する構成単位」、すなわち、Mの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位をいう。
【0024】
本明細書において、ある重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「M構成単位含有率」なる表現が用いられることがあるが、ある重合体が変性重合体である場合、これは変性前の重合体中におけるオレフィンMのモル含有率をいう。
【0025】
本明細書において、「(メタ)アクリル」なる語は、アクリル、メタクリル、アクリルとメタクリルの両方を包括する概念として用いられ、「(メタ)アクリロイル基」なる語は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を包括する概念として用いられる。
【0026】
[変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)]
本発明にかかる変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)〔以下、「共重合体(A)」と略称する場合がある。〕は、下記の要件(a1)~(a6)を満たし、且つ、1分子あたりの平均として1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有している。
【0027】
〈(メタ)アクリロイル基〉
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が含有する(メタ)アクリロイル基は、光の照射によりラジカルおよび/またはカチオンを生成可能な官能基として機能する。この(メタ)アクリロイル基を有することにより、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、光硬化性ポリオレフィンとして機能することができるのである。ここで、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、光の照射による硬化が十分に行われるよう、1分子あたりの平均として1個以上、好ましくは1~30個、より好ましくは2~10個の(メタ)アクリロイル基を含有している。
【0028】
ここで、本発明の典型的な態様の1つにおいて、前記(メタ)アクリロイル基は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)において、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位の一部として含まれている。言い換えると、本発明の典型的な態様の1つにおいて、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位を含んでいる。
【0029】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位は、通常、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを構成するアルコール部分に1以上の結合手を有しており、例えば、
-(RAL-O)x-C(=O)-CH(-RAC)=CH2 ・・・[E1]
または
-O-(RAL-O)x-C(=O)-CH(-RAC)=CH2 ・・・[E2]
で表される構造を有している。ここで、前記RACは水素原子またはメチル基であり、前記RALは2価以上の炭化水素基であり、xは1以上の整数、例えば1または2、である。ここで、前記RALは、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の
-(RAL’-O)y-C(=O)-CH(-RAC’)=CH2 ・・・[Ea1]
または
-O-(RAL’-O)y-C(=O)-CH(-RAC’)=CH2 ・・・[Ea2]
で表される基を有していてもよい。ここで、前記RAC’は水素原子またはメチル基であり、前記RAL’は2価以上の炭化水素基であり、yは0または1以上の整数、例えば0または1、である。前記RAL’は、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の上記式[Ea1]または上記式[Ea2]で表される基を有していてもよい。
【0030】
また、前記RACと前記RAC’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。前記RALと前記RAL’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。前記RALが2以上ある場合、これらのRALは、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。同様に前記RAL’が2以上ある場合、これらのRAL’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよく、前記RAC’が2以上ある場合も、これらのRAC’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0031】
本発明の例示的且つ好適な態様において、前記RALはアルカンジイル基、特に好ましくはエタン-1,2-ジイル基、であり、xは1である。
【0032】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)において、前記メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位は、主鎖を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体部分と直接結合していてもよく、あるいは、他の構成単位を介して間接的に結合していてもよい。例えば、主鎖を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体部分と他の構成単位とが直接結合し、当該他の構成単位と前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」とが直接結合していてもよい。本発明の例示的な態様において、前記他の構成単位は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位である。この「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」は、多くの場合、対応する不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体が有するエチレン性二重結合に対応する部位にある結合手と、カルボニル基を構成する炭素原子上にある結合手とを有している。
【0033】
前記他の構成単位が、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位である場合、前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」は、多くの場合、前記式[E2]で表される構造を有している。
【0034】
例えば、前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」と、「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」とを有する変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、後述するように、エチレン・α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物をグラフト重合し、次いで、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物をさらに反応させることにより得ることができる。このような態様の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、主鎖を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体部分と「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」とが直接結合するとともに、「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」と前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」とが直接結合すると推測している。ここで、前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」は、多くの場合、「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」に含まれるカルボ基と結合すると考えられる。本発明の好適な態様の1つにおいて、このような変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が有する前記「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」は、前記式[E2]で表される構造を有している。この態様の変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の一例として、「不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物に対応する構成単位」として無水マレイン酸に対応する構成単位を有するものが挙げられ、そのような変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、例えば、
-CH(-C(=O)-OH)-CH2-C(=O)-O-(RAL-O)x-C(=O)-CH(-RAC)=CH2 ・・・[E2-1a]
または、
-CH(-CH2-C(=O)-OH)-C(=O)-O-(RAL-O)x-C(=O)-CH(-RAC)=CH2 ・・・[E2-1b]
(前記RAC、前記RALおよび前記xは、上記式[E2]中のRAC、RALおよびxとそれぞれ同じである。)で表される構造を有している。
【0035】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、1H NMRを用いて、(メタ)アクリロイル基のビニル水素と変性エチレン・α-オレフィン共重合体の全水素との比を算出することにより確認することが可能である。
【0036】
〈要件(a1)〉
エチレンから導かれる構成単位の含有量〔「エチレン含有量」と略称する場合がある。〕が、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量の合計を100モル%としたときに、15~85モル%である。
【0037】
要件(a1)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、エチレンから導かれる構成単位およびα-オレフィンから導かれる構成単位を含むことを規定するとともに、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量との合計に対する、エチレンから導かれる構成単位の含有量の割合を規定する。
【0038】
ここで、「エチレンから導かれる構成単位」とは、エチレンに対応する構成単位、すなわち、-CH2-CH2-で表される構成単位をいう。同様に、「α-オレフィンから導かれる構成単位」とは、α-オレフィンに対応する構成単位、すなわち、-CH2-CRR’-(RおよびR’はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基)で表される構成単位をいう。
【0039】
前記エチレン含有量は15~85モル%であり、好ましくは20~80モル%であり、より好ましくは30~70モル%であり、さらに好ましくは40~60モル%である。エチレン含有量が多すぎる、または少なすぎると結晶性が高くなるため、結晶化によって濁りが発生する場合や、濁りによって光硬化性が悪化する場合がある。
【0040】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のエチレン含有量は、13C-NMR法で測定することができ、例えば後述する方法および「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店発行P163~170)に記載の方法に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0041】
本発明にかかる変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するα-オレフィンとしては、エチレン以外の炭素数3以上のα-オレフィンが挙げられ、典型例として、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
これらのα-オレフィンのうち、効果的に結晶性を低下させ、液状の共重合体を得ることができ、前記所望の効果を奏する組成物、成形体を容易に得ることができる等の点から、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。
前記エチレン含有量は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を製造する際のエチレンの仕込み量を加減することにより調整することができる。
【0043】
このように、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位とα-オレフィンから導かれる構成単位と(メタ)アクリロイル基とを含む。本発明の典型的な態様の1つにおいて、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位とα-オレフィンから導かれる構成単位とからなる主鎖と、当該主鎖に結合した(メタ)アクリロイル基とを含んでいる。ただ、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位およびα-オレフィンから導かれる構成単位に加えて、他のモノマーから導かれる構成単位として環状オレフィンから導かれる構成単位をさらに有していてもよい。ここで、「環状オレフィンから導かれる構成単位」とは、環状オレフィンに対応する構成単位、すなわち、-CRR’-CR’’R’’’-(R,R’,R’’およびR’’’はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり、少なくとも、RおよびR’のうちの1以上と,R’’およびR’’’のうちの1以上とが互いに結合して環を形成している。)で表される構成単位をいう。
【0044】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの炭素数3~30、好ましくは3~20の環状オレフィン類を例示することができる。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が環状オレフィンから導かれる構成単位を含む場合、環状オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、エチレンから導かれる構成単位の含有量とα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量との合計100質量部に対して、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下の量とすることができる。
【0045】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーである前記エチレンおよびα-オレフィンは、例えば、化石燃料由来のモノマーもしくはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。言い換えると、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は化石燃料由来のモノマーのみから構成されてもよいし、バイオマス由来のモノマーのみから構成されてもよいし、化石燃料由来のモノマーおよびバイオマス由来のモノマーを併用してもよい。
【0046】
化石燃料とは、石油、石炭、天然ガス、シェールガス又はそれらの組合せである。バイオマスとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣である。
【0047】
〈要件(a2)〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)が400~40,000の範囲である。
【0048】
要件(a2)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子量が一定の範囲内にあることを規定する。本明細書において、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた値である。
【0049】
良好な光硬化性を確保する観点から、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のMnは、400~40,000であり、好ましくは600~20,000であり、より好ましくは800~12,000、さらに好ましくは1,000~8,000である。
【0050】
前記数平均分子量(Mw)が大きすぎると、粘度増加するため、ハンドリング性が悪化する場合や、運動性が低下するため、光硬化性が悪化する場合がある。また数平均分子量(Mn)が小さすぎると、(メタ)アクリロイル基を含有しない未変性の共重合体が存在する場合があるため、光硬化性が悪化する場合がある。
前記数平均分子量(Mn)は、エチレン・α-オレフィン共重合体を重合する時のエチレン供給量と水素供給量の比率を調整することにより、適宜調整することができる。
【0051】
〈要件(a3)〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算により得られた数平均分子量(Mn)を基準とする炭素数1,000個あたりの内部オレフィン含有量が平均として2個以下である。
【0052】
要件(a3)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子中に含まれる内部オレフィン含有量が一定以下であることを規定する。
ここで、本明細書において「内部オレフィン」とは、オレフィンのうち、分子鎖の末端以外の部分に二重結合を有するものをいい、通常、
RA-CH=CH-RB、
RA-CRC=CH-RB、または、
RA-CRC=CRD-RB
(RA,RB,RCおよびRDは、それぞれ独立に炭素数1以上のアルキル基であり、これらのうちの2以上は互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有している。
【0053】
一方、「末端オレフィン」とは、オレフィンのうち、分子鎖の末端部分に二重結合を有するものをいい、通常、
CH2=CH-RE、または、
CH2=CRF-RE
(REおよびRFは、それぞれ独立に炭素数1以上のアルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有している。
【0054】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)における「内部オレフィン含有量」とは、実質的には、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に含まれる二重結合のうち、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する分子鎖の末端以外の部分に存在しうる二重結合の含有量、すなわち、
CA-CH=CH-CB、
CA-CCC=CH-CB、または、
CA-CCC=CCD-CB
(CA,CB,CCおよびCDは、二重結合を形成する炭素原子に隣接する炭素原子である。)で表される構造の含有量を指す。この「内部オレフィン含有量」は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に含まれる二重結合の総含有量から、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する分子鎖の末端部分に存在しうる二重結合の含有量(すなわち、
CH2=CH-CE、または、
CH2=CCF-CE
(CEおよびCFは、二重結合を形成する炭素原子に隣接する炭素原子である。)で表される構造の含有量)を差し引いたものと見ることもできる。本発明者らは、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子中に含まれる内部オレフィン含有量が一定以下であると、すなわち、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)において、分子鎖の末端以外の部分に存在しうる二重結合の数が少ないと、当該変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に光照射を行うことによって得られる成形体は、外観や力学特性の経時変化が少ないと考えている。このような変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、例えば、後述する下記「変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法」に記載の方法により得ることができる。
【0055】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の内部オレフィン含有量は平均として2個以下であり、好ましくは1個以下であり、より好ましくは0.5個以下であり、さらに好ましくは0.2個以下である。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の内部オレフィン含有量が多すぎると、内部オレフィンが光や熱によって空気中の酸素と反応する場合があるため、外観が黄変したり、分解反応によって力学特性が低下したりする場合がある。
【0056】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の内部オレフィン含有量は、1H-NMR法で測定することができ、具体的には下記実施例に記載の方法により求めることができる。ここで、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に含まれうる内部オレフィンとして、RR’C=CR’’R’’’(R、R’、R’’、R’’’はアルキル基)で表される構造を有するオレフィンも理論上は想定でき、そのようなオレフィンの存在を確認するには13C-NMR法で測定する必要があるとも考えられる。ただ、本発明者は、そのような構造を有する内部オレフィンが出現する可能性は極めて低いという知見を得ている。したがって、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の内部オレフィン含有量を求めるにあたり、多くの場合、13C-NMR法での測定を併用する必要はないと考えている。
【0057】
〈要件(a4)〉
150℃における回転粘度は10~8,000mPa・sの範囲である。
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の150℃における回転粘度は10~8,000mPa・sであり、好ましくは100~5,000であり、より好ましくは200~3,000であり、さらに好ましくは500~2,000である。
【0058】
回転粘度が大きすぎると、粘度増加するため、ハンドリング性が悪化する場合や、運動性が低下するため、光硬化性が悪化する場合がある。また回転粘度が小さすぎると、(メタ)アクリロイル基を含有しない未変性の共重合体が存在する場合があるため、光硬化性が悪化する場合がある。
【0059】
前記回転粘度は、ASTM D2983に準拠し、ブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
前記回転粘度は、エチレン・α-オレフィン共重合体を重合する時のエチレン供給量と水素供給量の比率を調整することにより調整することができる。
【0060】
〈要件(a5)〉
ハーゼン色相が300以下である。
ハーゼン色相は、ハーゼン単位色数(Hazen unit)またはAPHA色(APHA colour)として知られており、試料の黄色度を評価するパラメータである。すなわち、要件(a5)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の黄色度が一定以下であることを規定する。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のハーゼン色相が300以下であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは50以下である。ハーゼン色相が大きすぎると、光硬化後の色相が一層悪くなる場合がある。
【0061】
前記ハーゼン色相は、JIS K0071-1に準拠して測定することができる。
前記ハーゼン色相は、エチレン・α-オレフィン共重合体を重合する時のエチレン供給量に対して水素供給量を増やすこと、重合後に触媒残渣を除去すること、重合後の後処理を低温で行うこと等により、小さくすることができる。
【0062】
〈要件(a6)〉
流動点が0℃以下である。
要件(a6)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が液状ポリオレフィンの形態を有することを規定する。
【0063】
ASTM D97に記載の方法に従い測定した変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の流動点は、0℃以下、好ましくは-10℃以下である。
流動点が高すぎると、ハンドリング性が悪化する場合や、樹脂組成物の柔軟性が悪化する場合がある。
【0064】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は0℃以上の温度領域で示差走査熱量計(DSC)によって融点(Tm)が検出されない。0℃以上の温度領域で融点が検出されないことは、流動点が0℃以下であることを意味するため、結果としてハンドリング性悪化を抑制できる場合がある。
【0065】
前記流動点は、オレフィン重合触媒におけるエチレンとα-オレフィンの交互重合性(すなわち、エチレンとα-オレフィンとの混合物を重合させたときに、エチレンとα-オレフィンとがランダムに共重合しやすい傾向にあるのか、それとも、エチレンはエチレン同士で重合しα-オレフィンはα-オレフィン同士で重合しやすい傾向にあるのかということに関する性質)によって影響される傾向にある。前記流動点は、オレフィン重合触媒として、エチレンとα-オレフィンとの適度な交互重合性を有する触媒を選択することにより、調整することができる。
【0066】
[変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法]
本発明にかかる変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、上記要件(a1)~(a6)を満たし、且つ、1分子あたりの平均として1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有している。そのような変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法は、本発明の課題を解決することができ、かつ、本発明の技術的効果が害されない限り特に限定されない。ただ、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、例えば、
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)を不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(X)によってグラフト変性する工程(S1)と、
前記工程(S1)に続いて、メタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(Y)によってグラフト変性する工程(S2)と
を含む工程により得ることができる。ここで、前記工程(S1)により、エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)が化合物(X)によってグラフト変性されてなる変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)が得られる。そして、前記工程(S2)は、通常、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)を化合物(Y)によってグラフト変性する工程として行われる。
【0067】
〈化合物(X)〉
前記化合物(X)は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上である。すなわち、前記化合物(X)は、不飽和カルボン酸であってもよく、あるいは、不飽和カルボン酸誘導体であってもよく、あるいは、不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸誘導体との組み合わせであってもよい。
【0068】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0069】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸無水物が挙げられる。
不飽和カルボン酸およびその誘導体の中では、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体がより好ましく、特に、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)を製造する反応においてホモポリマー等の副生物が生じにくい等の点から、マレイン酸および無水マレイン酸が特に好ましい。
【0070】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)が不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体を用いて製造される場合、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)中における不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体の含有量は、1~20質量%であり、好ましくは2~15質量%であり、より好ましくは3~10質量%である。
【0071】
前記不飽和カルボン酸およびその誘導体の中には、マレイン酸および無水マレイン酸などバイオマス由来原料からの生産が可能であるものが存在する。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)を構成するモノマーである不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(X)は、例えば、化石燃料由来のモノマーもしくはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。言い換えると、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は化石燃料由来のモノマーのみから構成されてもよいし、バイオマス由来のモノマーのみから構成されてもよいし、化石燃料由来のモノマーおよびバイオマス由来のモノマーを併用してもよい。
【0072】
マレイン酸および無水マレイン酸を用いた場合、変性エチレン・プロピレン共重合体(A’’)中におけるマレイン酸および無水マレイン酸の酸価(JIS K5902に準拠して測定)は、10~220mgKOH/gであり、好ましくは20~160mgKOH/gであり、より好ましくは30~110mgKOH/gである。
【0073】
〈化合物(Y)〉
前記化合物(Y)は、メタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上である。すなわち、前記化合物(Y)は、メタクリル酸誘導体であってもよく、アクリル酸誘導体であってもよく、あるいは、これらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。メタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体の好適な例としては、アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルおよびアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルが挙げられる。
【0074】
前記アルコール性ヒドロキシ基は、前記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)が有する不飽和カルボン酸部分または不飽和カルボン酸誘導体部分と結合することにより、当該不飽和カルボン酸部分または不飽和カルボン酸誘導体部分との間にエステル結合を形成することができる。これにより、アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルに対応する構成単位またはアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルに対応する構成単位は、不飽和カルボン酸部分または不飽和カルボン酸誘導体部分を介して、十分な強さを持ってエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)に対応する部分に固定される。
【0075】
アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルおよびアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルとして、例えば、
HO-(RAL-O)x-C(=O)-CH(-RAC)=CH2 ・・・[E2’]
で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、前記RACは水素原子またはメチル基であり、前記RALは2価の炭化水素基であり、前記HO-はアルコール性ヒドロキシ基であり、xは1以上の整数、例えば1または2、である。ここで、前記RALは、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の
-(RAL’-O)x-C(=O)-CH(-RAC’)=CH2 ・・・[Ea1]
または
-O-(RAL’-O)y-C(=O)-CH(-RAC’)=CH2 ・・・[Ea2]
で表される基を有していてもよい。ここで、前記RAC’は水素原子またはメチル基であり、前記RAL’は2価以上の炭化水素基であり、yは0または1以上の整数、例えば0または1、である。前記RAL’は、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の上記式[Ea1]または上記式[Ea2]で表される基を有していてもよい。
【0076】
また、前記RACと前記RAC’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。前記RALと前記RAL’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。前記RALが2以上ある場合、これらのRALは、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。同様に前記RAL’が2以上ある場合、これらのRAL’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよく、前記RAC’が2以上ある場合も、これらのRAC’は、同じであってもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0077】
アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルおよびアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルの例として、2以上のヒドロキシ基を有するポリオールと、当該ポリオールが有するヒドロキシ基の数よりも少ない分子数のメタクリル酸若しくはアクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0078】
前記ポリオールとして、例えば、
HO-(RAL-O)x-H ・・・[OL1]
で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、前記RALは2価の炭化水素基であり、前記HO-はアルコール性ヒドロキシ基であり、xは1以上の整数、例えば1または2、である。ここで、前記RALは、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の
-(RAL’-O)x-H ・・・[OLa1]
または
-O-(RAL’-O)y-H ・・・[OLa2]
で表される基を有していてもよい。ここで、前記RAL’は2価以上の炭化水素基であり、yは0または1以上の整数、例えば0または1、である。前記RAL’は、1以上のアルコール性ヒドロキシ基を有していてもよく、1以上のアリールオキシ基を有していてもよく、1以上の上記式[OLa1]または上記式[OLa2]で表される基を有していてもよい。
【0079】
前記ポリオールの好適な例として、上記式[OL1]で表される構造を有するポリオールのうちxが1のものが挙げられ、その典型例としてアルカンポリオールが挙げられる。アルカンポリオールの具体例として、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのアルカンジオール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのアルカントリオール、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどのアルカンテトラオール等が挙げられる。これらのアルカンポリオールの中では、エチレングリコールが特に好ましい。
【0080】
また、前記ポリオールは、上記式[OL1]で表される構造を有するポリオールのうちxが2のものであっても良い。そのようなポリオールの例として、ジエチレングリコールなどのジ(ヒドロキシアルキル)エーテル、ジグリセリン、ジトリメチロールメタン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどのジ(ポリヒドロキシアルキル)エーテルが挙げられる。
【0081】
また、前記ポリオールは、上記で例示したもののほか、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールであってもよい。
ここで、前記アルカンポリオール、ジ(ヒドロキシアルキル)エーテル、ジ(ポリヒドロキシアルキル)エーテルおよび前記ポリアルキレングリコールは、芳香族環を有していてもよい。
【0082】
このようなアルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルおよびアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルの具体例として、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなど芳香族環を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。この中でも、価格、入手の容易さなどの観点から、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)における、アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステル若しくはアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルの量(厳密には、アルコール性ヒドロキシ基を有するメタクリル酸エステルに対応する構成単位またはアルコール性ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルに対応する構成単位の量)は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)1分子あたりの平均として1個以上であり、好ましくは1.5個以上であり、より好ましくは2個以上である。
【0083】
メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルの中には、メタクリル酸メチルなどバイオマス由来原料からの生産の試みがなされているものが存在する。変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーであるメタクリル酸の誘導体およびアクリル酸の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物(Y)は、例えば、化石燃料由来のモノマーもしくはバイオマス由来のモノマーであってもよく、これらのモノマーを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。言い換えると、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は化石燃料由来のモノマーのみから構成されてもよいし、バイオマス由来のモノマーのみから構成されてもよいし、化石燃料由来のモノマーおよびバイオマス由来のモノマーを併用してもよい。
【0084】
〈エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の製造方法〉
本発明におけるエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の製造方法は特に限定されないが、特公平2-1163号公報、特公平2-7998号公報に記載されているようなバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒による方法が挙げられる。また、高い重合活性で共重合体を製造する方法として特開昭61-221207号、特公平7-121969号公報、特許第2796376号公報に記載されているようなジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなる触媒系を用いる方法等を用いてもよく、得られる共重合体の塩素含有量、およびα-オレフィンの2,1-挿入が低減できるため、より好ましい。バナジウム系触媒による方法では、メタロセン系触媒を用いる方法に対し、助触媒に塩素化合物をより多く使用するため、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)中に微量の塩素が残存する可能性がある。
【0085】
また、α-オレフィンの2,1-挿入低減は、共重合体分子内のエチレン連鎖をより低減することが可能になり、エチレンの分子内結晶性を抑制できることから、エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)は良流動性を有する非晶性の共重合体となる。この特性により、良好な加工性を有する組成物を得ることができる。α-オレフィンの2,1-挿入量は特開平7-145212号公報に記載された方法に従って13C-NMR測定の解析によって求められ、好ましくは1%未満、さらに好ましくは0~0.5%、より好ましくは0~0.1%である。15.0~17.5ppmの範囲にピークが観察されないものが特に好ましい。
【0086】
特に以下のような方法を用いることにより、分子量制御、分子量分布、非晶性などの点において良好な性能バランスを有するエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)が得られる。
【0087】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)は、下記「架橋メタロセン化合物(P)」で後述する架橋メタロセン化合物(P)、ならびに、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(Q)を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3~20のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0088】
≪架橋メタロセン化合物(P)≫
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の製造に用いることのできる架橋メタロセン化合物(P)は、下記式[I]で表される構造を有している。
【0089】
【化1】
上記式[I]中のY、M、R
1~R
14、Q、nおよびjを以下に説明する。
【0090】
(Y、M、R1~R14、Q、nおよびj)
Yは、第14族原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子が挙げられ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくは炭素原子である。
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
【0091】
R1~R12は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1からR12のうちの互いに隣接した2以上の置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0092】
ここで、炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の環状飽和炭化水素基、炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基等が例示される。
【0093】
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0094】
炭素数3~20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5~11である。
【0095】
炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2~4である。
【0096】
炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3~19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6~10である。
【0097】
炭素数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、メチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0098】
炭素数6~20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4’-ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6~12である。
【0099】
ケイ素含有基としては、炭素数1~20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1~10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6~18が好ましい。
【0100】
窒素含有基としては、アミノ基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構成単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構成単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構成単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N-モルフォリニル基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基、およびニトロ基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0101】
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構成単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構成単位が炭素数1~20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0102】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0103】
Qは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から、同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
ハロゲン原子および炭素数1~20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1~20の炭化水素基である場合は、該炭化水素基の炭素数は1~7であることが好ましい。
【0104】
アニオン配位子としては、メトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
【0105】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
【0106】
jは1~4の整数であり、好ましくは2である。
nは1~4の整数であり、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
R13およびR14は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R13およびR14は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
【0107】
炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の詳細については、上述の通りである。
アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
【0108】
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
【0109】
置換アリール基としては、前述した炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1~20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。
【0110】
中でも、R13およびR14のいずれか一方または両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)が好ましく、両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)がより好ましい。
【0111】
特に、R13およびR14の両方が独立してアリール基である架橋メタロセン化合物(P)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合に対する重合活性が高く、この架橋メタロセン化合物(P)を用いることで分子末端への水素導入により重合が選択的に停止するため、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の不飽和結合が少なくなる。このため、より簡便な水素添加操作を行うだけで、または水素添加操作を行わなくても、飽和度が高く耐熱性に優れたエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を得ることができ、コストの面でも優れる。また、該化合物(P)から得られるエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)は、ランダム共重合性が高いため、制御された分子量分布を有する。
【0112】
上記式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)において、nは1であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(以下「架橋メタロセン化合物(P-1)」ともいう。)は、下記一般式[II]で表わされる。
【0113】
【化2】
式[II]において、Y、M、R
1~R
14、Qおよびjの定義などは、上述の通りである。
【0114】
架橋メタロセン化合物(P-1)は、上記式[I]におけるnが2~4の整数である化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物(P-1)を用いることでエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0115】
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(P)、上記一般式[II]で表される架橋メタロセン化合物(P-1)において、Mはジルコニウム原子であることがさらに好ましい。Mがジルコニウム原子である上記架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する場合、Mがチタン原子またはハフニウム原子である場合に比べ重合活性が高く、エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の製造コストが低減されるという利点が得られる。
【0116】
このような架橋メタロセン化合物(P)としては、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-2-メチル-4-t-ブチルシクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン{η5-(2-メチル-4-i-プロピルシクロペンタジエニル)}(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペ
ンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、 ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0117】
架橋メタロセン化合物(P)としては、さらに、前記化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子やチタン原子に置き換えた化合物、クロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物などが例示される。尚、例示した架橋メタロセン化合物(P)の構成部分であるη5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは4,4,7,7-テトラメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基、η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-(5a,5b,11a,12,12a-η5)-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンゾ[b,H]フルオレニル基をそれぞれ表わす。
前記架橋メタロセン化合物(P)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0118】
≪化合物(Q)≫
本発明にかかる化合物(Q)は、有機金属化合物(Q-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
有機金属化合物(Q-1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物(Q-1a)、(Q-1b)、(Q-1c)が用いられる。
【0119】
(Q-1a)一般式 RamAl(ORb)nHpXq で表される有機アルミニウム化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、一般式(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、一般式Ra2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを例示することができる。また、上記一般式RamAl(ORb)nHpXqで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
【0120】
(Q-1b)一般式 M2AlRa4 で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
このような化合物として、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを例示することができる。
【0121】
(Q-1c)一般式 RaRbM3 で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[III]で表わされる化合物および下記一般式[IV]で表わされる化合物を挙げることができる。
【0122】
【化3】
式[III]および[IV]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0123】
特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンであってnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0124】
本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
【0125】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)としては、下記一般式[V]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
【0126】
【化4】
式[V]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0127】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)の一例であるメチルアルミノキサンは、容易に入手可能であり、かつ高い重合活性を有するので、オレフィン重合における活性剤として一般的に使用されている。しかしながら、メチルアルミノキサンは、飽和炭化水素に溶解させ難いため、環境的に望ましくないトルエンまたはベンゼンのような芳香族炭化水素の溶液として使用されてきた。このため、近年、飽和炭化水素に溶解させたアルミノキサンとして、式4で表されるメチルアルミノキサンの可撓性体(flexible body)が開発され、使用されている。式[V]で表されるこの修飾メチルアルミノキサンは、例えば、米国特許第4960878号明細書、米国特許第5041584号明細書に示されるように、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され、例えば、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムを用いて調製される。Rxがイソブチル基であるアルミノキサンは、飽和炭化水素溶液の形でMMAO、TMAOの商品名で市販されている(Tosoh Finechem Corporation、Tosoh Research&Technology Review、Vol 47、55(2003)を参照)。
【0128】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)として、下記一般式[VI]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0129】
【化5】
式[VI]中、Rcは炭素数1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。
【0130】
架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(Q-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0131】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物は、下記一般式[VII]で表されるホウ素化合物である。
【0132】
【化6】
式[VII]中、R
e+としては、H
+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R
f~R
iは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基からなる群より選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0133】
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0134】
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0135】
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0136】
Re+としては、上記具体例のうち、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0137】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、カルベニウムカチオンを含む化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス{3,5-ジ-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0138】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、トリアルキル置換アンモニウムカチオンを含む化合物として、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどを例示することができる。
【0139】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンを含む化合物として、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
【0140】
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、ジアルキルアンモニウムカチオンを含む化合物として、ジ-n-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0141】
その他、特開2004-51676号公報によって例示されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(Q-3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0142】
前記触媒系の構成例としては、例えば、以下の[1]~[4]が挙げられる。
[1]架橋メタロセン化合物(P)および化合物(Q-2)を含む
[2]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-2)を含む
[3]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)および化合物(Q-3)を含む
[4]架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-2)および化合物(Q-3)を含む
架橋メタロセン化合物(P)、化合物(Q-1)~(Q-3)は、任意の順序で反応系に導入すればよい。
【0143】
≪担体(R)≫
本発明では、オレフィン重合触媒の構成成分として、必要に応じて担体(R)を用いてもよい。
【0144】
本発明で用いてもよい担体(R)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0145】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.5~300μm、好ましくは1.0~200μmであって、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にある。このような担体は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成してから使用される。
【0146】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いてもよい。
【0147】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
【0148】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。ゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解重縮合して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0149】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
担体(R)としての有機化合物としては、粒径が0.5~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0150】
重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
架橋メタロセン化合物(P)(以下「成分(P)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常10-9~10-1モル、好ましくは10-8~10-2モルになるような量で用いられる。
【0151】
有機金属化合物(Q-1)(以下「成分(b-1)」ともいう。)は、成分(Q-1)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-1)/M]が、通常0.01~50,000、好ましくは0.05~10,000となるような量で用いられる。
【0152】
有機アルミニウムオキシ化合物(Q-2)(以下「成分(Q-2)」ともいう。)は、成分(Q-2)中のアルミニウム原子と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-2)/M]が、通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いられる。
【0153】
イオン性化合物(Q-3)(以下「成分(Q-3)」ともいう。)は、成分(Q-3)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(Q-3)/M]が、通常1~10,000、好ましくは1~5,000となるような量で用いられる。
【0154】
重合温度は、通常-50℃~300℃であり、好ましくは30~250℃、より好ましくは100℃~250℃、さらに好ましくは130℃~200℃である。前記範囲の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となる。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧(MPa-G)、好ましくは常圧~8MPa-Gである。
【0155】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
得られる共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(Q)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成する共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。
【0156】
液相重合法において用いられる重合溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃~200℃の飽和炭化水素である。重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられ、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。重合対象であるα-オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。尚、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も重合溶媒として使用することができるが、環境への負荷軽減の視点および人体健康への影響の最少化の視点からは、これらの使用は好ましくない。
【0157】
オレフィン重合体の100℃における動粘度は重合体の分子量に依存する。すなわち高分子量であれば高粘度となり、低分子量であれば低粘度となるため、上述の分子量調整により100℃における動粘度を調整する。また、減圧蒸留のような従来公知の方法により得られた重合体の低分子量成分を除去することで、得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。さらに得られた重合体について、従来公知の方法により水素添加(以下水添ともいう。)を行ってもよい。水添により得られた重合体の2重結合が低減されれば、酸化安定性および耐熱性が向上する。
【0158】
得られたエチレン・α-オレフィン共重合体(A’)は、1種単独で用いてもよく、また、互いに異なる分子量のものや互いに異なるモノマー組成のものを2種類以上組み合わせてもよい。
【0159】
本発明にかかる変性共重合体(A)は、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)を変性することで製造できる。具体的には、特開昭61-126120号公報や特許第2593264号公報などに記載される従来公知の種々の方法や、例えば、下記(1)や(2)の方法により、エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)を変性することで製造できる。
(1)共重合体(A’)を押出機、バッチ式反応機などに装入し、そこに、反応させる炭素-炭素不飽和結合を有する化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
(2)共重合体(A’)を溶媒に溶解させて、炭素-炭素不飽和結合を有する化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
【0160】
前記いずれの方法でも、ビニル芳香族化合物などの炭素-炭素不飽和結合を有する化合物、反応性の気体・液体を効率よくグラフトするために、1種または2種以上のラジカル開始剤等の存在下でグラフト共重合を行うことが好ましい。
【0161】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物が挙げられる。
有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられ、該アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0162】
これらの中でも、特に、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0163】
ラジカル開始剤の使用量は、変性前の共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.001~5質量部、好ましくは0.01~4質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0164】
その中でも、空気および/または酸素を用いた酸化反応によって変性する場合、反応を促進するために、前記ラジカル開始剤の他に、金属または金属塩、無機酸、有機酸などからなる群より選ばれる1種または2種以上の存在下で反応させてもよい。
【0165】
金属または金属塩としては、酢酸マンガンや酢酸コバルト、塩化マンガン、酸化ニッケル、銅などが挙げられ、該無機酸としては、塩酸や硝酸などが挙げられ、該有機酸としては、ギ酸や酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸などが挙げられる。
【0166】
前記変性反応における反応温度は、通常20~350℃、好ましくは60~300℃である。また、反応性の気体を用いて変性する場合、反応圧力は、常圧~5MPaが好ましい。
前記方法により製造した変性共重合体をさらに2次変性してもよい。例えば、特表2008-508402号公報などに記載される方法などが挙げられる。
【0167】
[組成物]
上記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、組成物の形としてもよい。すなわち、本発明の組成物は、上記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含み、その例として、上記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、上記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)以外のモノマーとを含む組成物が挙げられる。上記変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)以外のモノマーの好適な例として、(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。前記組成物は、光開始剤をさらに含んでいてもよい。また、前記組成物は、(メタ)アクリルモノマー、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび光開始剤のいずれにも該当しないその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0168】
〔(メタ)アクリルモノマー、および、多官能(メタ)アクリルモノマー〕
本発明の組成物を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の極性基を有しない化合物であるのが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、得られる紫外線硬化性樹脂組成物の硬化後の物性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0169】
なお、上記に例示した(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を分子内に1個のみ有していることから、次述する多官能(メタ)アクリルモノマーとの区別のため単官能(メタ)アクリルモノマーと呼ばれることもある。
【0170】
本発明の組成物を構成する多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能アクリルモノマーが挙げられ、例えば2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス[4-〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート、1,3-ジ(メタ)アクリロリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン等の二官能性(メタ)アクリレートモノマーや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラメタクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラアクリロイルオキシメチル-4-オキシヘプタン等の三官能性以上の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらの中でも、本発明においては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。これらは1種単独で、或いは、2種以上を混合して使用することができる。
【0171】
〔光開始剤〕
本発明の組成物を構成する光開始剤としては、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン[2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン]、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジル、2-クロロチオキサントンなどが用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光開始剤の使用量は、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して0.01~20質量部であることが必要であり、0.5~5質量部であるのがより好ましい。光開始剤の使用量が、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)、(メタ)アクリルモノマーおよび多官能(メタ)アクリルモノマーの合計量100質量部に対して0.01質量部よりも少ない場合には、硬化性が不十分であり、一方20質量部よりも多い場合には、硬化性の顕著な向上効果はなく、経済性を損ねる。
【0172】
〔その他の成分〕
本発明にかかる組成物は、所望の性能等に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、一般のゴム組成物に配合される公知の各種配合剤などのその他の成分を含有してもよい。例えば、変性共重合体(A)以外の軟化剤、老化防止剤、加工助剤、アルコキシシラン化合物、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、分散染料や酸性染料を代表例とする各種染料、無機・有機顔料、界面活性剤、および塗料などの配合剤、また必要に応じて、発泡剤、発泡助剤などの発泡のための化合物、脱泡剤を挙げることができる。
【0173】
[組成物の調製方法]
本発明の組成物は、公知の方法で配合することにより調製することができる。例えば、例えば攪拌翼、またはニーダーを用いての混合などの通常の混合手段を用いて混合することによって調製することができる。
【0174】
[用途]
本発明の組成物は、家庭用品から工業用品に至る広い用途の成形体、接着剤、封止材に使用される。すなわち、本発明の組成物は、成形体用原料、接着剤または封止材として用いることができる。そのような成形体用原料、接着剤、および、封止材は、いずれも、本発明の組成物を含むことになる。ここで、本発明の組成物が成形体用原料として用いられる場合、本発明の組成物を光硬化させて成形体とすることができる。すなわち、本発明の成形体は、本発明の組成物を光硬化させてなるものであり、本発明の組成物の光硬化物を含むといえる。
【0175】
本発明の組成物の主な用途の例には、電気電子部品、自動車用部品、機械機構部品、食品容器、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。その具体例には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、WiFiルーター、ファクシミリ、複写機、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具等の事務・OA機器;洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵等の家電機器;TV、VTR、ビデオカメラ、デジタルカメラ、一眼レフカメラ、携帯オーディオ端末、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレイヤー、スピーカー、液晶ディスプレイ等のAV機器;コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気電子部品および通信機器等が含まれる。
【0176】
また、用途の例には、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、タイヤ、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被服材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、デッキパネル、カバー類、合板、天井板、仕切り板、側壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機および建築用材料;衣類、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活・スポーツ用品等も含まれる。
【0177】
さらに、用途の例には、シャンプーや洗剤、化粧品等のボトル、食用油、醤油等の調味料ボトル、ミネラルウォーターやジュース等の飲料用ボトル、弁当箱、茶碗蒸し用椀等の耐熱食品用容器、皿、箸等の食器類、その他各種食品容器や、包装フィルム、包装袋、歯ブラシや包丁の柄等も含まれる。
【実施例0178】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた原料成分は以下の通りである。
【0179】
[変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)]
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の各種物性の測定方法は以下の通りである。
<100℃における動粘度>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)の100℃における動粘度(100℃動粘度)は、JIS K 2283に記載の方法により、測定、算出した。
【0180】
<エチレン含有量(モル%)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)および変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のエチレンモル含有量は、日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として120℃、観測核として13C(125MHz)、シーケンスとしてシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅として4.7μ/s(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては1万回以上、ケミカルシフトの基準値として27.50ppmを用いて測定した。
【0181】
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のエチレンモル含有量は、前記のようにして測定された13C-NMRスペクトルから、「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macromolecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めた。
【0182】
<数平均分子量(Mn)、Mw/Mn>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)、変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A’’)および変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の分子量(Mn)、Mw/Mnは、下記の高速GPC測定装置により測定した。
高速GPC測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(和光純薬工業社製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ-M 2本を直列連結
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/min
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP-M
【0183】
<内部オレフィン含有量(個/1000C)、末端オレフィン含有量(個/分子)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)および変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の内部オレフィン含有量(個/1000C)および末端オレフィン含有量(個/1000C)は、ブルカー・バイオスピン製AVANCEIII cryo-500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として120℃、観測核として1H(500MHz)、シーケンスとしてシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅として5.0μ/s(45°パルス)、繰り返し時間として35秒、積算回数としては16回、ケミカルシフトの基準値として1.2ppmを用いて測定した。
【0184】
なお末端オレフィン含有量(個/分子)は、末端オレフィン含有量(個/1000C)を高速GPC測定装置により測定した数平均分子量(Mn)から計算される一分子当たりの平均炭素数(個/分子)で除することで算出した。
【0185】
<回転粘度>
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の回転粘度は、ASTM D2983に準拠し、150℃にてブルックフィールド粘度計により測定した。
【0186】
<ハーゼン色相>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)および変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)のハーゼン色相は、JIS K0071-1に準拠して測定した。
【0187】
<流動点>
エチレン・α-オレフィン共重合体(A’)および変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の流動点は、ASTM D97に記載の方法により測定した。
【0188】
<変性モノマー含有量(質量%)>
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の変性モノマー含有量(一次変性種、二次変性種)は、エチレン含有量と同様の方法により測定した。
【0189】
[変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造]
実施例で用いた変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法を以下に示す。
【0190】
[製造例1]変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1)の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘプタン760ml、プロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた共重合体溶液は、0.2mol/Lの塩酸1000mlで3回、次いで蒸留水1000mlで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたエチレン・プロピレン共重合体(A-1’)は80℃の減圧下で10時間乾燥した。得られたエチレン・プロピレン共重合体(A-1’)のエチレン含有量は49.5mol%、Mnは2,900、Mw/Mnは1.7、150℃に於ける回転粘度は30mPa・s、ハーゼン色相は50、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000C、流動点は-30℃、100℃動粘度は150mm2/sであった。
【0191】
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製フラスコにエチレン・プロピレン共重合体(A-1’)100gを仕込み、昇温後120℃にて窒素バブリングを開始して系内を160℃に保温した。その後、2個の滴下ロートに各々予め仕込んでおいた無水マレイン酸14.1g(70℃前後に加温して液状にしておく)およびジ-tert-ブチルパーオキサイド2.8gを5時間かけて供給し、供給完了後1時間かけて反応させた。次に、更に175℃に昇温し、系内脱圧後、真空ポンプにて徐々に窒素を通気しながら1時間減圧して不純物(未反応の無水マレイン酸およびジ-tert-ブチルパーオキサイドの分解物)を除去した。以上の操作により無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1’’)を得た。得られた無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1’’)のMnは3,100、Mw/Mnは2.4、150℃に於ける回転粘度は300mPa・s、無水マレイン酸含有量は10質量%であった。
【0192】
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製フラスコに無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1’’)100g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル8.8gを仕込み、アルミホイルでガラス製フラスコを覆い遮光した。その後、系内を100℃に昇温し、攪拌下、2時間かけてエステル化反応させた。得られた無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとのエステル化物(以下、変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1))のエチレン含有量は49.5mol%、Mnは3,200、Mw/Mnは2.5、150℃に於ける回転粘度は600mPa・s、ハーゼン色相は50、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000C、流動点は-15℃、エステル化したメタクリル酸2-ヒドロキシエチル由来のメタクリロイル基含有量は1分子あたりの平均として2.0個であった。
【0193】
[製造例2]変性エチレン・プロピレン共重合体(A-2)の製造
製造例1で得た無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1’’)100g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7.9gを充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製フラスコに仕込み、アルミホイルでガラス製フラスコを覆い遮光した。その後、系内を100℃に昇温・保持し、攪拌下、2時間かけてエステル化反応させた。得られた無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体とアクリル酸2-ヒドロキシエチルとのエステル化物(以下、変性エチレン・プロピレン共重合体(A-2))のエチレン含有量は49.5mol%、Mnは3,200、Mw/Mnは2.5、150℃に於ける回転粘度は600mPa・s、ハーゼン色相は50、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000C、流動点は-15℃、エステル化したアクリル酸2-ヒドロキシエチル由来のアクリロイル基含有量は1分子あたりの平均として2.0個であった。
【0194】
[製造例3]変性エチレン・プロピレン共重合体(A-3)の製造
製造例1で得た無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(A-1’’)100g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル4.3gを充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製フラスコに仕込み、アルミホイルでガラス製フラスコを覆い遮光した。その後、系内を100℃に昇温し、攪拌下、2時間かけてエステル化反応させた。得られた無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとのエステル化物(以下、変性エチレン・プロピレン共重合体(A-3))のエチレン含有量は49.5mol%、Mnは3,200、Mw/Mnは2.4、150℃に於ける回転粘度は400mPa・s、ハーゼン色相は40、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000C、流動点は-20℃、エステル化したアクリル酸2-ヒドロキシエチル由来のアクリロイル基含有量は1分子あたりの平均として0.8個であった。
【0195】
[製造例4]エチレン・プロピレン共重合体(A-4)の製造
ヘプタン700ml、プロピレン80g、水素0.09MPa、エチレン0.43MPaに変更したことを除き製造例1と同様の方法で得られたエチレン含有量は52.0mol%、Mnは101,000、Mw/Mnは3.0、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000Cを有するエチレン・プロピレン共重合体(A-4’)200gを内容積1.5Lのステンレス製熱分解装置に入れ、系内を充分に窒素置換した。次に、窒素を流入したまま熱分解装置を380℃まで昇温し、攪拌下、2.5時間かけて熱分解させた。得られたエチレン・プロピレン共重合体(A-4)のエチレン含有量は52.0mol%、Mnは3,600、Mw/Mnは2.4、150℃に於ける回転粘度は250mPa・s、ハーゼン色相は400、内部オレフィン含有量は<0.1個/1000C、1分子あたりの平均として含有する末端オレフィンは1.1個/分子、流動点は-25℃であった。
【0196】
比較例では、以下市販品の変性オレフィン系共重合体(A-5)~(A-8)を使用した。
A-5:クラレ社製変性液状ポリイソプレン(商品名クラプレンUC-102M、メタクリロイル基含有量2個/分子、Mn16,000、Mw/Mn1.0、38℃粘度30,000mPas、内部オレフィン含有量は>10個/1000C)
A-6:クラレ社製変性液状ポリイソプレン(商品名クラプレンUC-203M、メタクリロイル基含有量3個/分子、Mn31,000、Mw/Mn1.0、38℃粘度160,000mPas、内部オレフィン含有量は>10個/1000C)
A-7:日本曹達社製変性液状ポリブタジエン(商品名NISSO-PB TE-2000、メタクリロイル基含有量2個/分子、Mn4,800、Mw/Mn1.6、45℃粘度150,000mPas、内部オレフィン含有量は>10個/1000C)
A-8:日本曹達社製変性液状ポリブタジエン(商品名NISSO-PB TEAI-1000、メタクリロイル基含有量2個/分子、Mn3,600、Mw/Mn1.4、45℃粘度300,000mPas、内部オレフィン含有量は>1個/1000C)
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)~(A-3)、エチレン・α-オレフィン共重合体(A-4)、および、変性オレフィン系共重合体(A-5)~(A-8)の物性を表1に示す。
【0197】
【0198】
[実施例1~2および比較例1~6]
変性エチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)~(A-3)、エチレン・α-オレフィン共重合体(A-4)、および、変性オレフィン系共重合体(A-5)~(A-8)のそれぞれにつき、共重合体100gに対して光開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを5g添加し、常温で混合することで樹脂組成物を調製した。
【0199】
得られた樹脂組成物のそれぞれにつき、下記「紫外線硬化性」および「耐熱性」についての評価を行った。結果を表2に示す。
【0200】
<紫外線硬化性>
ティー・エイ・インスツルメント社製のレオメータ(AR2000ex)を用いて、25℃、25mmプレート、ギャップ300μm、回転数25rpm、高圧水銀ランプ40mW/cm2の条件で樹脂組成物を紫外線照射し、照射開始から3秒後と90秒後の粘度を測定した。具体的には、レオメータ(AR2000ex)に25mmプレートを設置し、当該レオメータにおける当該プレートの上部に、当該プレートと対向する態様でジオメトリー(Geometry)を設置した。前記プレート上に樹脂組成物を載せ、当該プレートと前記ジオメトリーとのギャップが300μmとなる態様で、当該プレートと当該ジオメトリーとで当該樹脂組成物を挟んだ。そして、当該ジオメトリーを25rpmで回転させながら、高圧水銀ランプを用いて当該樹脂組成物に40mW/cm2の条件で紫外線を照射し、紫外線の照射を開始してから3秒後および90秒後に粘度の測定を行った。
90秒後の粘度を3秒後の粘度で除した粘度比を計算し、以下の基準で評価した。
〇:≧2(紫外線照射によって十分な硬化を示す)
×:<2(紫外線照射によって十分な硬化を示さない)
【0201】
<耐熱性>
上記にて紫外線硬化性を評価した後の樹脂組成物を150℃に加熱した熱風式エアオーブン中に入れて3時間静置し、その後に回収した樹脂組成物のガードナー色数を測定し、以下の基準で評価した。ここで、ガードナー色数は、JIS K0071-2に準拠する方法により測定し、具体的には、ガードナー色数標準液(番号1~18)と透過色が等しい18本の標準色ガラスを用意し、樹脂組成物の色とこれら18本の標準色ガラスの色とを比較することによって測定した。そして、樹脂組成物の色に最も近い色を有する標準色ガラスの番号を当該樹脂組成物のガードナー色数とし、下記の基準に基づき評価した。ここで、樹脂組成物のガードナー色数が小さいほど、当該樹脂組成物は加熱による黄変の度合いが小さく耐熱性に優れるといえる。
〇:ガードナー色数<2
△:ガードナー色数2~3
×:ガードナー色数≧4
【0202】