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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134448
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液状樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240926BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240926BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240926BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K3/01
C08G59/40
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044763
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】張 純奈
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002AA022
4J002CD001
4J002CD002
4J002DA076
4J002DA077
4J002FD206
4J002FD207
4J002GJ01
4J002GQ02
4J036AA05
4J036DC41
4J036FA02
4J036JA06
(57)【要約】
【課題】低粘度、低チキソ性かつ低抵抗の液状樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】以下の(A)成分~(D)成分:(A)25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂及び固形状エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂、(B)比表面積が0.30m/g以上の導電粉体、(C)比表面積が0.25m/g以下の導電粉体、並びに(D)潜在性硬化剤を含み、25℃での粘度が20Pa・s未満である、液状樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分~(D)成分:
(A)25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂及び固形状エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂、
(B)比表面積が0.30m/g以上の導電粉体、
(C)比表面積が0.25m/g以下の導電粉体、並びに
(D)潜在性硬化剤
を含み、25℃での粘度が20Pa・s未満である、液状樹脂組成物。
【請求項2】
25℃でのチキソトロピックインデックス(TI)値が1.0以上3.5未満である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
25℃での粘度が1Pa・s以上20Pa・s未満である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して1質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、(a)ビスフェノール型構造単位および(b)炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位および/またはエーテル酸素原子数3以上のポリアルキレンエーテル構造単位を有する柔軟性エポキシ樹脂である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が、比表面積が0.30m/g以上0.60m/g以下の導電粉体である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分のタップ密度が5.2g/cc以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項8】
(B)成分のタップ密度が3.0g/cc以上5.2g/cc以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項9】
(C)成分が、比表面積が0.05m/g以上0.25m/g以下の導電粉体である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項10】
(C)成分のタップ密度が5.7g/cc以上である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項11】
(C)成分のタップ密度が5.7g/cc以上9.0g/cc以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項12】
(B)成分と(C)成分との合計の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して60質量%以上である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項13】
(B)成分と(C)成分との合計の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して60質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項14】
液状樹脂組成物中の(B)成分と(C)成分との質量比が1:9~9:1である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項15】
(B)成分および(C)成分が銀粉である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項16】
(D)成分が、3級アミノ基含有変性ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミンおよびイミダゾール含有変性ポリアミンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項17】
(A’)25℃での粘度が50mPa・s以上15Pa・s未満のエポキシ樹脂をさらに含む、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項18】
(A’)成分の含有量が、液状樹脂組成物中に含まれる(A)成分と(A’)成分の合計100質量%に対して50質量%以上95質量%以下である、請求項17に記載の液状樹脂組成物。
【請求項19】
粘度50mPa・s未満の樹脂および/または有機溶剤を含むかまたは含まず、それらの合計の含有量が液状樹脂組成物(揮発成分を含む)100質量%に対して0質量%以上3質量%以下である、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度、低チキソ性かつ低抵抗の液状樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品やプリント配線板の製造等において、部材間等の電気的接続を行うため、また配線や電極形成のために、導電性接着剤(導電性ペーストともいう)が用いられる場合がある。例えば、特許文献1は、導電性接着剤として有用な、エポキシ樹脂、銀粒子等を含む液状樹脂組成物を開示している。
また導電性接着剤が携帯用電子機器に使用される場合には、その硬化物に落下衝撃耐性などの機能性を求められることがある。落下衝撃耐性のためには硬化物に柔軟性を付与することが考えられる。硬化物に柔軟性を持たせるためには、柔軟骨格を持つエポキシ樹脂を使用することが考えられるが、柔軟骨格を持つ樹脂は一般的に高分子量で、導電性接着剤の粘度やチキソ性を上昇させる傾向にある。また同様に、導電性接着剤に高信頼性、高耐熱性が求められる場合には、剛直な骨格を持つエポキシ樹脂を使用することが考えられるが、このようなエポキシ樹脂も導電性接着剤の粘度やチキソ性を上昇させる傾向にある。
しかしながら、導電性接着剤の粘度やチキソ性が高いと、塗布性が低下する場合がある。塗布性が低下すると、例えば塗布時にノズルを介して導電性接着剤を吐出させる際に、微細な電気的接続等の形成に不利となる場合がある。また導電性接着剤を被着体の隙間に染み込ませて使用する場合にも、導電性接着剤の粘度やチキソ性が高いと、隙間への染み込み性が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-42696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性接着剤の粘度やチキソ性を低下させる方法としては、比表面積が小さい銀粒子を用いることが考えられるが、この場合、比抵抗値が増大し導電性が低下する。一方、比表面積が大きい銀粒子を用いると、比抵抗値は下がるが、粘度およびチキソ性が上昇するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、目的は、導電性接着剤として有用な、低粘度、低チキソ性かつ低抵抗の(粘度、チキソトロピックインデックス値および比抵抗値のバランスの取れた)液状樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高粘度または固体のエポキシ樹脂を含む液状樹脂組成物において、比表面積が大きい導電粉体と比表面積が小さい導電粉体とを併用することにより、低粘度、低チキソ性かつ低抵抗の液状樹脂組成物となり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1]以下の(A)成分~(D)成分:
(A)25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂及び固形状エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂、
(B)比表面積が0.30m/g以上の導電粉体、
(C)比表面積が0.25m/g以下の導電粉体、並びに
(D)潜在性硬化剤
を含み、25℃での粘度が20Pa・s未満である、液状樹脂組成物。
[2]25℃でのチキソトロピックインデックス(TI)値が1.0以上3.5未満である、[1]に記載の液状樹脂組成物。
[3]25℃での粘度が1Pa・s以上20Pa・s未満である、[1]または[2]に記載の液状樹脂組成物。
[4](A)成分の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して1質量%以上10質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[5](A)成分が、(a)ビスフェノール型構造単位および(b)炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位および/またはエーテル酸素原子数3以上のポリアルキレンエーテル構造単位を有する柔軟性エポキシ樹脂である、[1]~[4]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[6](B)成分が、比表面積が0.30m/g以上0.60m/g以下の導電粉体である、[1]~[5]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[7](B)成分のタップ密度が5.2g/cc以下である、[1]~[6]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[8](B)成分のタップ密度が3.0g/cc以上5.2g/cc以下である、[1]~[7]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[9](C)成分が、比表面積が0.05m/g以上0.25m/g以下の導電粉体である、[1]~[8]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[10](C)成分のタップ密度が5.7g/cc以上である、[1]~[9]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[11](C)成分のタップ密度が5.7g/cc以上9.0g/cc以下である、[1]~[10]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[12](B)成分と(C)成分との合計の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して60質量%以上である、[1]~[11]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[13](B)成分と(C)成分との合計の含有量が液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して60質量%以上80質量%以下である、[1]~[12]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[14]液状樹脂組成物中の(B)成分と(C)成分との質量比が1:9~9:1である、[1]~[13]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[15](B)成分および(C)成分が銀粉である、[1]~[14]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[16](D)成分が、3級アミノ基含有変性ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミンおよびイミダゾール含有変性ポリアミンからなる群から選択される1種以上である、[1]~[15]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[17](A’)25℃での粘度が50mPa・s以上15Pa・s未満のエポキシ樹脂をさらに含む、[1]~[16]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
[18](A’)成分の含有量が、液状樹脂組成物中に含まれる(A)成分と(A’)成分の合計100質量%に対して50質量%以上95質量%以下である、[17]に記載の液状樹脂組成物。
[19]粘度50mPa・s未満の樹脂および/または有機溶剤を含むかまたは含まず、それらの合計の含有量が液状樹脂組成物(揮発成分を含む)100質量%に対して0質量%以上3質量%以下である、[1]~[18]のいずれか1に記載の液状樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低粘度、低チキソ性かつ低抵抗の液状樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明の液状樹脂組成物は、必須成分として、以下の(A)成分~(D)成分を含み、その25℃での粘度が20Pa・s未満である:
(A)25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂及び固形状エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂、
(B)比表面積が0.30m/g以上の導電粉体、
(C)比表面積が0.25m/g以下の導電粉体、並びに
(D)潜在性硬化剤。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂及び固形状エポキシ樹脂から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂である。(A)成分を配合することにより、液状樹脂組成物の硬化物に柔軟性(落下衝撃耐性)等の物性を付与することができる。
【0011】
(25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂)
25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂は、25℃での粘度が15Pa・s以上であれば特に限定されず、25℃で下記流動性を有する液状エポキシ樹脂が含まれる。本発明において「液状」とは、以下の測定方法にて測定した粘度が1500Pa・s未満であるものをいう。RE-80型粘度計(東機産業社製)にて測定対象の樹脂(または樹脂組成物)0.2~0.3mlをシリンジにて量り取る。測定の際には、粘度計の測定室を外部循環型恒温槽にて25.0℃に温度管理する。ローターの回転数を20rpmに設定し、120秒後の粘度を計測する。また本発明において固形状エポキシ樹脂とは、半固形のエポキシ樹脂を含む概念であり、上記測定方法にて測定した粘度が1500Pa・s以上のエポキシ樹脂をいう。なお上記測定方法の測定限界以上の粘度を有するもの、および流動性を全く有しない固形状のエポキシ樹脂も、本発明における固形状エポキシ樹脂に含まれる。
【0012】
25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂としては、1分子当り平均して2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びに、これらエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂の25℃での粘度は、好ましくは20Pa・s以上であり、上限は特に限定されず25℃で流動性を有する前記液状エポキシ樹脂であればよいが、低粘度および低チキソ性の観点から、好ましくは2000Pa・s以下であり、より好ましくは1500Pa・s以下である。本発明の1つの実施態様において、25℃での粘度が15Pa・s以上2000Pa・s以下のエポキシ樹脂が好ましく、25℃での粘度が30Pa・s以上1500Pa・s以下のエポキシ樹脂がより好ましい。なお、本発明において「25℃での粘度が15Pa・s以上」とは、E型粘度計を用いて25℃、回転数20rpmで測定した粘度が15Pa・s以上であることを意味する。当該測定方法における測定限界以上(測定不能)の粘度を有する液状エポキシ樹脂の場合も、前記「液状」の定義に該当するエポキシ樹脂であれば、25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂に含まれる。
【0014】
本発明の好適な実施態様において、25℃での粘度が15Pa・s以上の液状エポキシ樹脂は、(a)ビスフェノール型構造単位および(b)炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位および/またはエーテル酸素原子数3以上のポリアルキレンエーテル構造単位を有する柔軟性エポキシ樹脂である。このような柔軟性骨格を持つエポキシ樹脂を使用すると、硬化物の弾性率を容易に低く設定することができ、硬化物の落下衝撃耐性を向上させることができる。
【0015】
上記柔軟性エポキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、(a)及び(b)の構造単位はそれぞれ1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。
【0016】
上記のビスフェノール型構造単位としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS由来の構造単位が挙げられる。具体的には、これらの末端のOH基を除いた単位および以下の一般式(1)で表される単位が挙げられ、また、環が水素添加されていてもよい。更に、これらの環は、炭化水素基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
前記の炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位またはポリアルキレンエーテル構造単位は、ビスフェノール型構造単位とは別に有することが必要である。このうち、炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位としては、-(CH-のxが4以上である構造単位である。xとしては、好ましくは4~20、さらに好ましくは4~10が挙げられる。なお、この水素原子の代わりにヒドロキシル基などの置換基を有していてもよく、更に、この水素原子の少なくとも1つを、炭化水素基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシ基などで置換したものも使用できる。該置換基としての炭化水素やアルコキシル基は炭素原子数4以下が好ましく、アリール基やアリールオキシ基のアリール基は、フェニル基が好ましい。これらの置換基は、構造単位(b)の可撓性を損なわない範囲で有することが可能である。
【0019】
また、ポリアルキレンエーテル構造単位としては、エーテル酸素原子数が3以上、好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、ネオペンチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド等から選ばれる1種または複数のアルキレンオキサイドの重合体由来の構造単位が挙げられる。また、このアルキレンオキサイドの1つ以上の水素原子が例えばヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシ基、炭化水素基などで置換されているものも挙げられる。該置換基としての炭化水素やアルコキシル基は炭素原子数4以下が好ましく、アリール基やアリールオキシ基のアリール基は、フェニル基が好ましい。これらの置換基は、構造単位(b)の可撓性を損なわない範囲で有することが可能である。
【0020】
炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素構造単位は高耐熱性の硬化物を与え、ポリアルキレンエーテル構造単位は、例えば金属基材などへの付着性や接着性を向上させる。これらの構造単位を適宜選定することにより、様々な基材、製造プロセス、要求性能に対応することが可能である。
【0021】
本発明において、構造単位(a)と構造単位(b)のモル比率は10:1~1:5が好ましく、5:1~1:3がより好ましい。この範囲より構造単位(a)が多すぎると、エポキシ硬化物が十分な柔軟性を有さなくなり、硬化物の熱応力を十分に緩和できず、硬化物のクラックや剥がれの原因となる。また、上記範囲より構造単位(a)が少なすぎると、エポキシ硬化物のTgが低すぎ、耐熱性が低下する。
【0022】
柔軟性エポキシ樹脂は、具体的には、以下の構造式(2-i)~(2-iv)に示す何れかの1つ以上の構造を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。また、以下に示す構造式の複数の水酸基が架橋反応し、水酸基の酸素原子が不特定の構造を結節していてもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
構造式(2-i)~(2-iv)中、Ar、Arは同一でも異なっていてもよい、水素添加されていてもよい、置換基を有していてもよいビスフェノール型構造単位(a)であり、Xは炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素基および/またはエーテル酸素原子数1以上のポリアルキレンエーテル構造である。Xが炭素原子数4以上の直鎖状炭化水素基の場合、Xが構造単位(b)であり、Xがエーテル酸素原子数1以上のポリアルキレンエーテル構造の場合は、-O-X-O-が両末端のエーテル酸素が構造単位(b)を構成する。また、nは繰り返し単位の平均値で1~30である。
【0025】
このような柔軟性エポキシ樹脂を得る方法としては、所定のエポキシ樹脂に硬化剤を用いて硬化させる方法が挙げられる。
この所定のエポキシ樹脂としては、上記のように前記の構造単位(a)及び(b)を有するエポキシ樹脂を使用する方法のほか、次の構造単位(a)又は(b)の少なくとも1方の構造単位を有するエポキシ樹脂と、少なくとも他方の構造単位を有するエポキシ樹脂を組み合わせて使用する方法、或いは次の構造単位(a)を有するエポキシ樹脂と該エポキシ樹脂に反応により(b)の構造単位を付与しうる鎖延長剤との組み合わせとする方法も可能である。
【0026】
上記の構造式に示した構造を持つ柔軟性エポキシ樹脂としては、例えば、以下の構造:
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、n=1~5)を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
また柔軟性エポキシ樹脂の市販品としては、「EPICLON EXA-4850-150」、「EPICLON EXA-4816」、「EPICLON EXA-4822」、「HP-A-4860」(以上、DIC(株)、商品名)、「YL7175-500」、「YL7175-1000」(以上、三菱ケミカル(株)、商品名)等が挙げられる。
【0030】
柔軟性エポキシ樹脂の数平均分子量は、柔軟性の観点から、好ましくは400以上であり、より好ましくは600以上である。柔軟性エポキシ樹脂の数平均分子量の上限は、特に限定されないが、作業性と粘度の観点から、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下である。本発明の1つの実施態様において、柔軟性エポキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは400~3000であり、より好ましくは600~2000である。なお、各成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製「LC-9A/RID-6A」を、カラムとして(株)レゾナック製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0031】
柔軟性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、作業性と粘度の観点から、好ましくは200~800g/eqであり、より好ましくは200~600g/eqである、なお、エポキシ当量は、JIS K 7236-1995に基づいて得ることができる。
【0032】
(固形状エポキシ樹脂)
本発明において「固形状エポキシ樹脂」における「固形状」とは、前述の通りである。固形状エポキシ樹脂は、固形状であれば特に限定されないが、1分子当り平均して2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びに、これらエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
固形状エポキシ樹脂の数平均分子量は、柔軟性などの観点から、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。固形状エポキシ樹脂の数平均分子量の上限は、特に限定されないが、作業性と粘度の観点から、好ましくは6000以下であり、より好ましくは5000以下である。本発明の1つの実施態様において、固形状エポキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは200~6000であり、より好ましくは300~5000である。
【0034】
固形状エポキシ樹脂のエポキシ当量は、作業性、粘度及び軟化点の観点から、好ましくは300~10000g/eqであり、より好ましくは400~8000g/eqである。なお、エポキシ当量は、JIS K 7236-1995に基づいて得ることができる。
【0035】
(A)成分の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。(A)成分の含有量の上限は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。本発明の1つの実施態様において、(A)成分の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上35質量%以下である。本発明の別の実施態様において、(A)成分の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0036】
<(B)成分>
(B)成分は、比表面積(以下、「SSA」と略すことがある)が0.30m/g以上の導電粉体である。(B)成分の導電粉体は、比表面積が大きいため、導電粉体同士の接点が多くなり、液状樹脂組成物の比抵抗値を下げることができる。
【0037】
(B)成分の比表面積は、0.30m/g以上であり、好ましくは0.33m/g以上であり、上限は特に限定されないが、最終液状樹脂組成物の粘度を顕著に上げすぎないようにする観点から、好ましくは0.60m/g以下であり、より好ましくは0.55m/g以下である。本発明の1つの実施態様において、比抵抗値、ディスペンス性(本明細書において、ディスペンス性とは液状樹脂組成物をシリンジに充填しディスペンサーで塗布する際の塗布のし易さなどの塗布性能の事を意味する)等の観点から、(B)成分の比表面積は、好ましくは0.30m/g以上0.60m/g以下であり、より好ましくは0.33m/g以上0.55m/g以下である。なお、本発明において「比表面積」は、BET法により測定することができる。
【0038】
(B)成分は、最終液状樹脂組成物の粘度を顕著に上げすぎないようにする観点から、タップ密度が好ましくは5.2g/cc以下であり、より好ましくは4.8g/cc以下であり、好ましくは3.0g/cc以上であり、より好ましくは3.3g/cc以上である。本発明の1つの実施態様において、(B)成分のタップ密度は、好ましくは3.0g/cc以上5.2g/cc以下であり、より好ましくは3.3g/cc以上4.8g/cc以下である。なお、本発明において「タップ密度」は、JIS Z2512に沿って測定することができる。
【0039】
(B)成分の粒子径は、得られる液状樹脂組成物の取り扱い性、ディスペンサーで塗布する際のノズル詰まりの発生等を考慮して、1~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましい。なお、本発明において「粒子径」は、レーザー回折式粒度分布計を用いて相対粒子量が50%(全粒子量に対して50%、全粒子量と粒子径でグラフ化した際に粒子量の中間になる点の粒子径)である粒子径(メジアン径)を粒子径として測定する。
【0040】
<(C)成分>
(C)成分は、比表面積が0.25m/g以下の導電粉体である。(C)成分の導電粉体は、比表面積が小さいため、粘度を顕著に上昇させずに導電性を高めることができる。
【0041】
(C)成分の比表面積は、0.25m/g以下であり、好ましくは0.23m/g以下であり、下限は特に限定されないが、ディスペンサーで塗布する際のノズル詰まりの発生等の観点から、好ましくは、0.05m/g以上であり、より好ましくは、0.08m/g以上である。本発明の1つの実施態様において、比抵抗値、ディスペンス性等の観点から、(C)成分の比表面積は、好ましくは0.05m/g以上0.25m/g以下であり、より好ましくは0.08m/g以上0.23m/g以下である。
【0042】
(C)成分は、粘度の観点から、タップ密度が好ましくは5.7g/cc以上であり、より好ましくは5.9g/cc以上であり、好ましくは9.0g/cc以下であり、より好ましくは8.9g/cc以下である。本発明の1つの実施態様において、(C)成分のタップ密度は、好ましくは5.7g/cc以上9.0g/cc以下であり、より好ましくは5.9g/cc以上8.9g/cc以下である。
【0043】
(C)成分の粒子径は、得られる液状樹脂組成物の取り扱い性、ディスペンサーで塗布する際のノズル詰まりの発生等を考慮して、1~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましい。
【0044】
(B)成分と(C)成分との合計の含有量は、抵抗値と粘度の観点から、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは63質量%以上であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。本発明の1つの実施態様において、(B)成分と(C)成分との合計の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは63質量%以上70質量%以下である。
【0045】
液状樹脂組成物中の(B)成分と(C)成分との質量比は、粘度の観点から、好ましくは1:9~9:1であり、より好ましくは3:7~7:3である。
【0046】
(B)成分および(C)成分の導電粉体は、例えば、銀粉、銅粉、ニッケル粉、表面に銀層を有する銅粉末、表面に銀層を有するシリカ粉末などが挙げられ、導電性、作業性の観点から、好ましくは銀粉である。
【0047】
(B)成分および(C)成分の導電粉体は、その形状が特に限定されるものではなく、球状、フレーク状、針状、樹枝状、棒状など公知のものが使用可能であるが、良好な比抵抗を得るという観点からフレーク状が好ましい。フレーク状とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることからりん片状とも言われるものである。
【0048】
導電粉体は、(B)成分と(C)成分ともに、1種のみを使用してもよく、種類の異なる2種以上の導電粉体を混合して用いてもよい。また同形状の導電粉体を使用してもよく、形状の異なる導電粉体を混合して用いてもよい。
【0049】
<(D)成分>
(D)成分は、潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤は、(A)成分のエポキシ樹脂および以下で説明する任意成分である(A’)成分のエポキシ樹脂を硬化させることができれば特に限定されず、例えば、3級アミノ基含有変性ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミン、イミダゾール含有変性ポリアミンなどの変性ポリアミンが挙げられる。
【0050】
本発明において「潜在性硬化剤」とは、本発明の液状樹脂組成物を通常保存する状態(室温、可視光線下など)ではエポキシ基などの官能基と反応しないが、熱や光によって官能基に対して反応活性を呈し、液状樹脂組成物を硬化させることができるものをいう。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。接着性の観点から、3級アミノ基含有変性ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミンおよびイミダゾール含有変性ポリアミンからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、尿素結合含有変性ポリアミンおよびイミダゾール含有変性ポリアミンを併用することがより好ましい。
【0051】
本明細書において、3級アミノ基含有変性ポリアミンとはイミダゾールを除く脂肪族3級アミンを含有するポリマー構造をしており、活性を有するアミンが、エポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂により安定化構造をなし、潜在性硬化剤として使用可能な化合物である。3級アミノ基含有変性ポリアミンの例としては、(株)ADEKA製EH4380S、EH3616S、EH5001P、EH4357Sが挙げられる。
【0052】
イミダゾール基含有変性ポリアミンとは、イミダゾールを含有するポリマー構造をしており、活性を有するアミンが、エポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂により安定化構造をなし、潜在性硬化剤として使用可能な化合物である。イミダゾール基含有変性ポリアミンの例としては、味の素ファインテクノ(株)製PN-23、PN-H、PN-40、(株)ADEKA製EH4346S、(株)T&K TOKA製FXR-1121、エアープロダクツジャパン(株)製サンマイドLH210が挙げられる。
【0053】
尿素結合含有変性ポリアミンとは、活性を有するアミンが、イソシアネート樹脂により形成される尿素結合により安定化構造をなし、潜在性硬化剤として使用可能な化合物である。尿素結合含有変性ポリアミンの例としては、(株)T&K TOKA製FXR-1020、FXR-1081が挙げられる。
【0054】
(D)成分の含有量は、硬化度と保存安定性の観点から、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。本発明の1つの実施態様において、(D)成分の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
【0055】
本発明の液状樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分~(D)成分以外の成分を含んでいてもよい。
【0056】
(25℃での粘度が50mPa・s以上15Pa・s未満のエポキシ樹脂(以下、「(A’)成分」ともいう))
本発明の液状樹脂組成物は、好ましくは25℃での粘度が50mPa・s以上15Pa・s未満のエポキシ樹脂を含む。(A’)成分を配合することによって、最終液状樹脂組成物の粘度およびチキソ性を下げることができる。本発明において「25℃での粘度が50mPa・s以上」とは、E型粘度計を用いて25℃、回転数20rpmで測定した粘度が50mPa・s以上であることを意味する。
【0057】
(A’)成分のエポキシ樹脂は、25℃での粘度が50mPa・s以上15Pa・s未満であれば特に限定されないが、1分子当り平均して2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びに、これらエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(A’)成分のエポキシ樹脂の粘度は、50mPa・s以上15Pa・s未満であり、好ましくは12Pa・s未満であり、好ましくは100mPa・s以上である。本発明の1つの実施態様において、25℃での粘度が100mPa・s以上12Pa・s未満のエポキシ樹脂がより好ましい。
【0059】
(A’)成分のエポキシ樹脂の数平均分子量は、揮発性の観点から、好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上であり、粘度の観点から、好ましくは1000以下であり、より好ましくは800以下である。本発明の1つの実施態様において、(A’)成分のエポキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは150~1000であり、より好ましくは200~800である。
【0060】
(A’)成分は、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製「ZX-1059」、「ZX-1542」、(株)ADEKA製「EP-4088S」などが挙げられる。
【0061】
(A’)成分の含有量は、作業性と粘度の観点から、液状樹脂組成物中に含まれる(A)成分と(A’)成分の合計100質量%に対して、好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。すなわち、液状樹脂組成物中の(A)成分と(A’)成分との質量比は、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~40:60である。
【0062】
本発明の液状樹脂組成物は、本発明の効果を発揮し得る範囲において25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂および/または有機溶剤を含んでいてもよく、含まなくともよい。本発明において「25℃での粘度が50mPa・s未満」とは、E型粘度計を用いて25℃、回転数50rpmで測定した粘度が50mPa・s未満であることを意味する。このような成分は、(A’)成分と同様に、液状樹脂組成物の粘度とチキソ性を低下させることができる一方、揮発による作業環境への影響や、接着剤を使用する部品の品質への影響が課題となる場合がある。本発明においては、25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂および/または有機溶剤をこのような影響が出ない範囲で使用または使用せずに、導電性接着剤の粘度やチキソ性を低下させることが可能である。25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂および/または有機溶剤を液状樹脂組成物に含む場合、25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂および有機溶剤の合計の含有量は、液状樹脂組成物(揮発成分を含む)100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。すなわち本発明の液状樹脂組成物における、25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂および有機溶剤の合計の含有量は、液状樹脂組成物(揮発成分を含む)100質量%に対して、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、さらに好ましくは0~1質量である。特に、有機溶媒については、液状樹脂組成物(揮発成分を含む)100質量%に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
【0063】
25℃での粘度が50mPa・s未満の樹脂を使用する場合、反応性希釈剤として機能するものが好ましく、分子内に1~3個のエポキシ基を有するものが好ましく、分子内に1~2個のエポキシ基を有するものがより好ましい。
【0064】
有機溶剤を使用する場合、有機溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
<(B)成分および(C)成分以外の金属粉体>
本発明の液状樹脂組成物は、(B)成分および(C)成分以外の金属粉体、すなわち導電粉体以外の金属粉体(「(E)成分」ともいう)を含んでいてもよい。導電粉体以外の金属粉体としては、好ましくは、錫粉体、亜鉛粉体、アルミニウム粉体が挙げられる。(E)成分の形状は、特に限定されるものではなく、球状、フレーク状、針状など公知のものが使用可能であるが、粘度の観点から球状が好ましい。
【0066】
(E)成分の粒子径は、得られる液状樹脂組成物の取り扱い性、ディスペンサーで塗布する際のノズル詰まりの発生等を考慮して、1~15μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0067】
(E)成分の比表面積は、比抵抗値、ディスペンス性等の観点から、好ましくは0.1~1.5m/gであり、より好ましくは0.1~1.0m/gである。
【0068】
(E)成分の含有量は、高温高湿下での接触抵抗の抑制等の観点から、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。本発明の1つの実施態様において、(E)成分の含有量は、液状樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0069】
本発明の液状樹脂組成物には、その他の添加剤として、コアシェルポリマー、保存安定剤、シランカップリング剤、アエロジル等のチキソ付与剤、ベンゾイミダゾール等の腐食抑制剤等を適宜添加することができる。
【0070】
コアシェルポリマーを配合することによって、得られる液状樹脂組成物の接着性を向上させることができ、また得られる液状樹脂組成物に応力緩和性を付与することができる。コアシェルポリマーとは、コア部とシェル部とを有するポリマーであって、ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体および/またはビニル単量体等から調製されるゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、あるいはこれらの混合物等から調製される比較的柔らかいコア部分に対して、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体および/またはマレイミド誘導体等から調製される比較的硬いシェル層を重合して得られるものである。入手可能なコアシェルポリマーとしては、(株)カネカ製MX120、MX125、MX130、MX135、MX960、MX965、レジナス化成(株)製RKB3040、RKB1133、三菱レイヨン(株)製JF-001、JF-003、ガンツ化成(株)製F351Gなどが挙げられる。コアシェルポリマーは、単独の粉体の状態のもの、エポキシ樹脂に分散されたものなど公知のものを使用することができる。これらは、粉体の状態のもの、分散されたものを単独で用いてもよく、粉体の状態のものと分散されたものとを組み合わせて使用してもよい。コアシェルポリマーは、(A)成分100重量部に対し、好ましくは15~30重量部、より好ましくは17~30重量部を使用することができる。
【0071】
保存安定剤を配合することによって、得られる液状樹脂組成物の可使時間を確保することができる。保存安定剤としては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル、チタン酸エステル化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物及びメルカプト有機酸などを用いることができる。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。保存安定剤は、(A)成分100重量部に対し、好ましくは0.5~1.2重量部、より好ましくは0.7~1重量部を使用することができる。
【0072】
本発明の液状樹脂組成物は、被着体の隙間に染み込ませて接着する用途を考慮して、25℃での粘度が20Pa・s未満であり、好ましくは15Pa・s以下であり、好ましくは1Pa・s以上であり、より好ましくは5Pa・s以上であり、さらに好ましくは7Pa・s以上である。本発明の1つの実施態様において、液状樹脂組成物の25℃での粘度は、好ましくは1Pa・s以上20Pa・s未満であり、より好ましくは5Pa・s以上20Pa・s未満であり、さらに好ましくは7Pa・s以上15Pa・s以下である。なお、本発明において「液状樹脂組成物の25℃での粘度」は、E型粘度計を用いて25℃、回転数10rpmで測定した値である。
【0073】
本発明の液状樹脂組成物は、塗布性を考慮して、25℃でのチキソトロピックインデックス(TI)値が、好ましくは1.0以上3.5未満であり、より好ましくは1.0以上3.0未満である。なお、本発明において「25℃でのチキソトロピックインデックス(TI)値」とは、以下の実施例に記載の方法により測定したものである。
【0074】
本発明の液状樹脂組成物は、前記の成分を、常法に従って混合し、プラネタリーミキサーやロールミル等を用いて均一に分散させてペースト状とすることにより製造することができる。
【0075】
本発明の液状樹脂組成物は、電子部品等の組み立てや基板との接続方法、とりわけ携帯電話等のコンパクトカメラモジュールの組み立てにおける導電性接着剤として好適に用いることができる。
【実施例0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
[一液型樹脂組成物の調製]
表1に示す配合組成で各成分を混合し、実施例1~9及び比較例1~4に係る液状樹脂組成物を調製した。尚、表1中、各成分の配合量は質量部を意味する。
具体的には、専用のプラスチック容器に、表1に示される量の高粘度液状エポキシ樹脂(A)成分、液状エポキシ樹脂(A’)成分を量り取った。(A)成分の高粘度液状エポキシ樹脂が高粘ちょう液体で扱いにくい場合は、60℃の恒温槽にて1時間以上加温して使用した。その後、自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(シンキー社製:ARE-310)を用い、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間充分混合した。そこへ潜在性硬化剤(D)成分を添加し、自転・公転ミキサーを用い、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間充分混合した。最後に共立精機社製 自動公転式攪拌脱泡機 HM-200Wで真空下(圧力0に設定)、900rpmで2分間脱泡し、目的の液状樹脂組成物のマスターバッチを得た。
その後、マスターバッチを適量量り取り、それに対応する量の銀粉(B)成分、(C)成分及びその他の金属粉体(E)成分を添加し、自転・公転ミキサーを用い、室温25℃にて2000rpmで約30秒~1分間充分混合した。最後に共立精機社製 自動公転式攪拌脱泡機 HM-200Wで真空下(圧力0に設定)、900rpmで2分間脱泡し、目的の液状樹脂組成物を得た。
【0078】
なお、使用した材料の詳細は以下の通りである。
[高粘度液状エポキシ樹脂;(A)成分]
HP-A-4860:DIC(株)製、エポキシ当量400g/eq、25℃での粘度1400Pa・s、数平均分子量800
EXA-4850-150:DIC(株)製、エポキシ当量450g/eq、25℃での粘度15Pa・s、数平均分子量900
[液状エポキシ樹脂;(A’)成分]
ZX-1059:日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、ビスフェノールA型(BPA型)/ビスフェノールF型(BPF型)エポキシ樹脂、エポキシ当量165g/eq、25℃での粘度2Pa・s、数平均分子量330
EP-4088S:(株)ADEKA製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq、25℃での粘度225mPa・s、数平均分子量460
ZX-1542:日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ当量130g/eq、25℃での粘度60mPa・s、数平均分子量390
[SSA0.30m/g以上銀粉;(B)成分]
SSA0.60m/g銀粉:タップ密度4.4g/cc、粒子径7.0μm
SSA0.31m/g銀粉:タップ密度5.1g/cc、粒子径8.2μm
[SSA0.25m/g以下銀粉;(C)成分]
SSA0.24m/g銀粉:タップ密度5.8g/cc、粒子径8.9μm
SSA0.08m/g銀粉:タップ密度6.0g/cc、粒子径20.1μm
[潜在性硬化剤;(D)成分]
PN-H:味の素ファインテクノ(株)製、商品名「アミキュア」、イミダゾール基含有変性ポリアミン
[その他の金属粉体;(E)成分]
亜鉛粉体:ハクスイテック(株)製、商品名「亜鉛末R末」、粒子径5.2μm、SSA0.25m/g
【0079】
[液状エポキシ樹脂の粘度の測定]
液状エポキシ樹脂の温度を25℃(±2℃)に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-85L」、1°34′×R24ローター)を用いて、測定サンプル1.2ml、回転数20rpm、2分の測定条件にて粘度(Pa・s)を測定した。
[各液状樹脂組成物の粘度及びチキソトロピックインデックス(TI)値の評価]
実施例及び比較例で得られた各液状樹脂組成物の温度を25℃(±2℃)に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-85U」、3°×R9.7ローター)を用いて、測定サンプル0.4ml、回転数1rpm及び10rpm、2分の測定条件にて粘度(Pa・s)を測定した。その後以下のようにして、TI値を算出した。
[TI値]=[1rpm測定時粘度]/[10rpm測定時粘度]
[比抵抗値の評価]
FR-4の基板に幅2mm、厚さ80μm程度で120mmのラインを実施例及び比較例の液状樹脂組成物でバーコートし、熱循環式オーブン(ヤマト科学(株)製DF-610)にて80℃で60分硬化して比抵抗測定用の試験サンプルとした。
デジタルマルチメーター((株)アドバンテスト製R6552)にて試験サンプルを距離100mmにて4端子モードで抵抗値を測定し、比抵抗値(Ω・cm)を算出した。
【0080】
実施例及び比較例の液状樹脂組成物について、10rpm粘度、TI値、比抵抗値を以下の基準で評価した。
【0081】
10rpm粘度
◎:10Pa・s未満
〇:10Pa・s以上15Pa・s未満
△:15Pa・s以上20Pa・s未満
×:20Pa・s以上
【0082】
TI値
◎:2.5未満
〇:2.5以上3.0未満
△:3.0以上3.5未満
×:3.5以上
【0083】
比抵抗値
◎:2.0×10-3Ω・cm未満
〇:2.0×10-3Ω・cm以上5.0×10-3Ω・cm未満
△:5.0×10-3Ω・cm以上1.0×10-2Ω・cm未満
×:1.0×10-2Ω・cm以上
【0084】
(B)成分を単独で充填した場合、粘度とTI値の両方、または、粘度とTI値のどちらかが上昇する傾向にあり、(C)成分を単独で充填した場合は、比抵抗値が顕著に上昇する傾向にある。一方、これら(B)成分と(C)成分とを同質量で添加比率を1:1で併用した場合、粘度、TI値、比抵抗値のバランスがとれた液状樹脂組成物を与えることが分かる(実施例1、2、3、4と比較例1、2、3、4との比較)。
【0085】
液状樹脂組成物中の(B)成分+(C)成分の質量%を増大させることで、顕著な粘度上昇を伴わずに、より比抵抗値を下げられることが分かる(実施例2と実施例5、6との比較)。
【0086】
液状樹脂組成物中の(B)成分+(C)成分の添加比率を変えることでも、顕著な粘度上昇を伴わずに、より比抵抗値を下げられることが分かる(実施例2と実施例7との比較)。
【0087】
【表1】
【0088】
比較例1:SSA0.25m/g以下銀粉なし、比較例2:SSA0.25m/g以下銀粉なし(SSA0.30m/g以上銀粉の種類相違)
比較例3:SSA0.30m/g以上銀粉なし、比較例4:SSA0.30m/g以上銀粉なし(SSA0.25m/g以下銀粉の種類相違)
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の液状樹脂組成物は、低粘度、低チキソ性かつ低抵抗であり(粘度、チキソトロピックインデックス値および比抵抗値のバランスが取れており)、従って、例えば、電子部品等の組み立てや基板との接続方法などの用途として有用である。