(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134453
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ロボットコントローラーおよび放電方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/06 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B25J13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044768
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】一柳 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 淳平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY12
3C707HS27
3C707JS05
3C707KS37
3C707MT13
(57)【要約】
【課題】消費電力の削減を図ることのできるロボットコントローラーおよび放電方法を提供すること。
【解決手段】ロボットが備えるモーターに電源を供給する電源回路を有するロボットコントローラーであって、コンデンサと、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電抵抗と、前記放電抵抗に流れる電流を断続する第1スイッチ素子と、前記電源回路の一次側の電圧を検出する第1電圧検出部と、前記第1電圧検出部の検出結果に基づいて前記第1スイッチ素子の断続を制御する第1制御部と、を有する。そして、前記第1制御部は、前記第1電圧検出部が検出した電圧が第1閾値以下となった場合に、前記第1スイッチ素子を導通状態とし、前記放電抵抗に電流を流す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが備えるモーターに電源を供給する電源回路を有するロボットコントローラーであって、
コンデンサと、
前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電抵抗と、
前記放電抵抗に流れる電流を断続する第1スイッチ素子と、
前記電源回路の一次側の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記第1電圧検出部の検出結果に基づいて前記第1スイッチ素子の断続を制御する第1制御部と、を有することを特徴とするロボットコントローラー。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記第1電圧検出部が検出した電圧が第1閾値以下となった場合に、前記第1スイッチ素子を導通状態とし、前記放電抵抗に電流を流す請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項3】
前記放電抵抗より抵抗値が小さい回生抵抗と、
前記回生抵抗に流れる電流を断続する第2スイッチ素子と、
前記電源回路の二次側の電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記第2スイッチ素子を制御する第2制御部と、を有し、
前記第2制御部は、前記第2電圧検出部が検出した電圧が第2閾値以上となった場合に、前記第2スイッチ素子を導通状態とし、前記回生抵抗に電流を流す請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項4】
前記放電抵抗より抵抗値が小さい回生抵抗と、
前記回生抵抗に流れる電流を断続する第2スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子を制御する第2制御部と、を有し、
前記ロボットの非常停止信号の入力があった場合に、前記第1スイッチ素子および前記第2スイッチ素子を導通状態とし、前記放電抵抗および前記回生抵抗に電流を流す請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項5】
前記電源回路に並列に接続されている複数の前記放電抵抗を有する請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項6】
前記放電抵抗および前記第1スイッチ素子と直列に接続されている発光素子を有する請求項1に記載のロボットコントローラー。
【請求項7】
コンデンサと、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電抵抗と、前記放電抵抗に流れる電流を断続する第1スイッチ素子と、を有し、ロボットが備えるモーターに電源を供給する電源回路を有するロボットコントローラーの放電方法であって、
前記電源回路の一次側の電圧を検出する一次側電圧検出ステップと、
前記一次側電圧検出ステップの検出結果に基づいて前記第1スイッチ素子の断続を制御する第1スイッチ素子制御ステップと、を含むことを特徴とする放電方法。
【請求項8】
前記第1スイッチ素子制御ステップでは、前記一次側電圧検出ステップで検出した電圧が第1閾値以下となった場合に前記第1スイッチ素子を導通状態とし、前記放電抵抗に電流を流す請求項7に記載の放電方法。
【請求項9】
前記ロボットコントローラーは、前記放電抵抗より抵抗値が小さい回生抵抗と、前記回生抵抗に流れる電流を断続する第2スイッチ素子と、を有し、
前記電源回路の二次側の電圧を検出する二次側電圧検出ステップと、
前記二次側電圧検出ステップの検出結果に基づいて前記第2スイッチ素子の断続を制御する第2スイッチ素子制御ステップと、を含む請求項7に記載の放電方法。
【請求項10】
前記ロボットコントローラーは、前記放電抵抗より抵抗値が小さい回生抵抗と、前記回生抵抗に流れる電流を断続する第2スイッチ素子と、を有し、
前記ロボットの非常停止信号の入力の有無を判断する信号入力判定ステップと、前記信号入力判定ステップの判定結果に基づいて前記第2スイッチ素子の断続を制御する第2スイッチ素子制御ステップと、を含む請求項7に記載の放電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットコントローラーおよび放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットコントローラーは、平滑コンデンサと、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を緩慢に放電するブリーダ抵抗と、ロボットの非常停止スイッチが押された場合に平滑コンデンサに蓄えられた電荷を急峻に放電する回生用抵抗と、回生用抵抗に流れる電流を断続するスイッチ素子と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなロボットコントローラーでは、ロボットの通常稼働時においてもブリーダ抵抗による放電が行われるため、その分、消費電力が増大するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットコントローラーは、ロボットが備えるモーターに電源を供給する電源回路を有するロボットコントローラーであって、
コンデンサと、
前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電抵抗と、
前記放電抵抗に流れる電流を断続する第1スイッチ素子と、
前記電源回路の一次側の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記第1電圧検出部の検出結果に基づいて前記第1スイッチ素子の断続を制御する第1制御部と、を有する。
【0006】
本発明の放電方法は、コンデンサと、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電抵抗と、前記放電抵抗に流れる電流を断続する第1スイッチ素子と、を有し、ロボットが備えるモーターに電源を供給する電源回路を有するロボットコントローラーの放電方法であって、
前記電源回路の一次側の電圧を検出する一次側電圧検出ステップと、
前記一次側電圧検出ステップの検出結果に基づいて、前記第1スイッチ素子の断続を制御する第1スイッチ素子制御ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るロボットコントローラーの回路図である。
【
図2】第2実施形態に係る放電方法を示すフローチャートである。
【
図3】第3実施形態に係るロボットコントローラーの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットコントローラーおよび放電方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るロボットコントローラーの回路図である。
【0010】
図1に示すロボットコントローラー1は、駆動軸ごとにモーターMを備えるロボット9の制御に用いられる。このようなロボットコントローラー1は、外部電源、例えば、単相200/230V、50/60Hzの商用交流電源に接続して使用される。以下の説明では外部電源は、交流電源であるものとする。
【0011】
ロボットコントローラー1は、外部電源から受電する受電端子11を備えており、受電端子11で受電した交流電力は、入力リレー12を介して電源回路2の一次側に供給される。入力リレー12は、機械的接点を備えており、外部電源からの交流電力を電源回路2に供給または遮断する。入力リレー12の制御は、図示しない制御部によって行われる。または、後述する第1制御部32、第2制御部34等によって制御されてもよい。
【0012】
電源回路2は、一次側に供給された交流電力を整流する全波整流回路21と、全波整流回路21の出力側に設けられたコンデンサである平滑コンデンサ22と、を備え、平滑化した直流電力を一次側から出力する。平滑コンデンサ22の一端は、電源回路2の二次側に延びる(+)側の導線(以下、単に(+)導線L1とも言う。)に接続されており、他端は、電源回路2の二次側から延びる(-)側の導線(以下、単に(-)導線L2とも言う。)に接続されている。なお、電源回路2の一次側は、全波整流回路21よりも外部電源側を言い、電源回路2の二次側は、全波整流回路21よりも後述するサーボドライバー7側を言う。
【0013】
また、電源回路2は、抵抗43と、発光素子であるLED6と、を有する。なお、抵抗43の抵抗値は、特に限定されないが、図示の例では100kΩである。抵抗43の一端は、電源回路2の(+)導線L1に接続され、他端は、LED6のアノードに接続されている。また、LED6のカソードは、電源回路2の(-)導線L2に接続されている。そのため、交流電力が電源回路2に供給されることによりLED6が点灯し、交流電力が遮断されることによりLED6が消灯する。LED6は、例えば、ロボットコントローラー1の筐体に設けられており、LED6の消灯/点灯がユーザーから目視できるようになっている。これにより、ロボットコントローラー1の電源のON/OFF状態を容易に確認することができる。
【0014】
ロボットコントローラー1は、さらに、電源回路2の二次側から出力される直流電力が供給されるサーボドライバー7を有する。サーボドライバー7は、モーターMごとに設けられており、対応するモーターMをサーボ制御する。モーターMは、例えば、同期モーター、誘導モーター等で構成されており、減速するときには起電力を発生する。減速時にモーターMにおいて発生する起電力による回生電流は、サーボドライバー7から電源回路2側に出力される。平滑コンデンサ22は、回生電流を平滑化する機能も有する。
【0015】
また、ロボットコントローラー1は、平滑コンデンサ22に溜められた電荷を放電して電源回路2の二次側の電圧を低下させる放電抵抗41および回生抵抗42を有する。放電抵抗41および回生抵抗42は、並列に設けられている。
【0016】
放電抵抗41は、並列に接続された2つの放電抵抗411、412を有する。これに対して、回生抵抗42は、1つの回生抵抗421を有する。放電抵抗411、412の抵抗値は、回生抵抗421の抵抗値よりも大きい。図示の例では、放電抵抗411、412の抵抗値が100kΩであり、回生抵抗421の抵抗値が60Ωである。そのため、放電抵抗41で放電する場合、電源回路2の二次側の電圧が緩慢に低下し、回生抵抗42で放電する場合、電源回路2の二次側の電圧が急峻に低下する。つまり、回生抵抗42で放電した場合、放電抵抗41で放電する場合と比べて短い時間で電源回路2の二次側の電圧が0Vとなる。なお、放電抵抗41および回生抵抗42の抵抗値は、電源回路2の二次側の電圧が所定時間内に所定値以下となるように設定される。前記所定時間および前記所定値は、例えば、ロボット9の安全規格に沿って決定される。
【0017】
特に、本実施形態のように、放電抵抗41を並列に接続された放電抵抗411、412で構成することにより、放電抵抗41の容量を大きくすることができる。また、抵抗43と同じ抵抗を用いて任意の抵抗値を有する放電抵抗41を構成することができるため、ロボットコントローラー1の製造コストを削減することもできる。ただし、放電抵抗41の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0018】
また、ロボットコントローラー1は、放電抵抗41に流れる電流を断続する第1スイッチ素子51を有する。第1スイッチ素子51は、FET(電界効果トランジスタ)、特にMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。放電抵抗411、412の一端は、電源回路2の(+)導線L1に接続され、他端は、第1スイッチ素子51のドレインに接続されている。また、第1スイッチ素子51のソースは、電源回路2の(-)導線L2に接続されている。
【0019】
また、ロボットコントローラー1は、電源回路2の一次側に設けられた第1電圧検出部としてのAC電圧検出部31および第1制御部32を有する。AC電圧検出部31は、電源回路2の一次側に供給された交流電力を直流電力に変換し、さらに電圧値を第1制御部32が許容できる電圧まで降下させる。そして、第1制御部32がAC電圧検出部31を監視することで、電源回路2の一次側への電力供給の有無を検出する。具体的には、AC電圧検出部31は電源回路2の一次側に供給された電圧を5Vの電圧に変換し、第1制御部32はAC電圧検出部31からの5Vの出力有無を確認する。
【0020】
また、第1制御部32は、第1スイッチ素子51のゲートに接続され、AC電圧検出部31の検出結果に基づいて第1スイッチ素子51の断続(導通/遮断)を制御する。第1制御部32は、例えば、コンパレーターを用いた回路により構成される。なお、第1制御部32は、CPU(中央処理ユニット)、マイクロプロセッサ等により構成されてもいい。第1スイッチ素子51を導通状態とすると、放電抵抗41に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧が緩慢に低下する。電源回路2の二次側の電圧が0Vとなると、つまり、(+)側の電荷が無くなると、第1スイッチ素子51が自動的に遮断状態となる。第1スイッチ素子51を導通状態とする例として、サーボドライバー7によりサーボ制御が行われていない場合と、電源回路2の一次側に交流電流の入力がない場合などが挙げられる。
【0021】
ただし、第1スイッチ素子51の構成は、特に限定されず、例えば、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートトランジスタ、JFET(接合型電界効果トランジスタ)等のスイッチ素子であってもよい。また、本実施形態では、電源回路2の二次側の(+)側の電荷が無くなると第1スイッチ素子51が自動的に遮断状態となるが、これに限定されず、電源回路2の二次側の電圧が所定値以下となったときに、第1制御部32が第1スイッチ素子51を遮断状態にしてもよい。
【0022】
また、ロボットコントローラー1は、回生抵抗42に流れる電流を断続する第2スイッチ素子52を有する。第2スイッチ素子52は、第1スイッチ素子51と同様、FET(電界効果トランジスタ)、特にMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。回生抵抗42の一端は、電源回路2の(+)導線L1に接続され、他端は、第2スイッチ素子52のドレインに接続されている。また、第2スイッチ素子52のソースは、電源回路2の(-)導線L2に接続されている。
【0023】
また、ロボットコントローラー1は、電源回路2の二次側に設けられた第2電圧検出部としてのDC電圧検出部33および第2制御部34を有する。DC電圧検出部33は、電源回路2の二次側に出力される直流電力の電圧を検知する。第2制御部34は、第2スイッチ素子52のゲートに接続され、DC電圧検出部33の検出結果に基づいて第2スイッチ素子52の断続(導通/遮断)を制御する。第2制御部34は、例えば、コンパレーターを用いた回路により構成される。なお、第2制御部34は、CPU(中央処理ユニット)、マイクロプロセッサ等により構成されてもよい。第2スイッチ素子52を導通状態とすると、回生抵抗42に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧が急峻に低下する。電源回路2の二次側の電圧が0Vとなると、つまり、(+)側の電荷が無くなると、第2スイッチ素子52が自動的に遮断状態となる。
【0024】
ただし、第2スイッチ素子52の構成は、特に限定されず、例えば、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートトランジスタ、JFET(接合型電界効果トランジスタ)等のスイッチ素子であってもよい。また、本実施形態では、電源回路2の二次側の(+)側の電荷が無くなると第2スイッチ素子52が自動的に遮断状態となるが、これに限定されず、電源回路2の二次側の電圧が所定値以下となったときに、第2制御部34が第2スイッチ素子52を遮断状態にしてもよい。
【0025】
このようなロボットコントローラー1では、ロボット9の通常稼働中は、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52が共に遮断状態となる。そのため、放電抵抗41および回生抵抗42に電流が流れず、放電が行われない。これにより、通常稼働中の無駄な放電による電力消費が抑制され、ロボット9の消費電力を低減することができる。
【0026】
以上、ロボットコントローラー1およびその放電方法について説明した。このようなロボットコントローラー1は、前述したように、ロボット9が備えるモーターMに電源を供給する電源回路2を有するロボットコントローラー1であって、コンデンサである平滑コンデンサ22と、平滑コンデンサ22に蓄えられた電荷を放電する放電抵抗41と、放電抵抗41に流れる電流を断続する第1スイッチ素子51と、電源回路2の一次側の電圧を検出する第1電圧検出部であるAC電圧検出部31と、AC電圧検出部31の検出結果に基づいて第1スイッチ素子51の断続を制御する第1制御部32と、を有する。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第1スイッチ素子51を遮断状態とすることにより、放電抵抗41での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、必要時には、第1スイッチ素子51を導通状態として放電抵抗41で電力を消費させることにより、電源回路2の放電を行うことができる。
【0027】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る放電方法を示すフローチャートである。
【0028】
本実施形態のロボットコントローラー1は、各場合に応じて放電モードを切り替えること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0029】
本実施形態では、第1実施形態に記載した第1スイッチ素子51が導通状態となる場合に加え、ロボット9の通常稼働中に停電、受電端子11の引き抜け等によって外部電源からの交流電力の受電が停止する場合でも第1スイッチ素子51が導通状態となるように制御を行う。
【0030】
このような場合、ロボット分野の安全規則上、ロボット9を安全に停止させつつ、電源回路2の二次側の電圧を下げる必要がある。そこで、ロボットコントローラー1では、外部電源からの交流電力の受電が停止した場合、第1スイッチ素子51を導通状態とする。具体的には、第1制御部32は、AC電圧検出部31が検出した電圧値が予め記憶されている第1閾値TH1以下となった場合に、第1スイッチ素子51を導通状態とする。これにより、放電抵抗41に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧が緩慢に低下する。このように、電圧を緩慢に低下させることにより、ロボット9を安全に停止させるのに必要な電力を確保しつつ、電源回路2の電圧を所定時間内に所定値以下とすることができる。
【0031】
ただし、交流電力の受電が停止した場合の制御方法は、これに限定されない。例えば、第2制御部34が、ロボット9が完全に停止したことを確認したのち第2スイッチ素子52を導通状態としてもよい。これにより、確実にロボット9を停止させることができる。
【0032】
また、ロボット9の通常稼働中に、図示しない非常停止スイッチからの非常停止信号が入力される場合もある。このような場合、直ちにロボット9を停止させつつ、電源回路2の二次側の電圧を下げる必要がある。そこで、ロボットコントローラー1では、非常停止信号が入力された場合、入力リレー12を開状態として外部電源からの交流電力の受電を停止すると共に、第2スイッチ素子52を導通状態とする。具体的には、第2制御部34は、非常停止信号が入力された場合に、第2スイッチ素子52を導通状態とする。さらに、第1制御部32も非常停止信号を受けて第1スイッチ素子51を導通状態とする。これにより、放電抵抗41および回生抵抗42に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧がより急峻に低下する。そのため、より短時間で、電源回路2の二次側の電圧を所定値以下にすることができる。これにより、ロボット9の安全性が増す。さらには、停止してからより短時間でロボット9の修復作業を開始することができるため、ロボット9のメンテナンス性が向上する。なお、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52が導通状態となるのは、非常停止スイッチが押された場合に限らない。例えば、回路のエラー情報が検出された場合などロボット9における異常を検出した場合も同様に第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を導通状態としてもいい。
【0033】
また、モーターMからの回生電流が電源回路2側に流れると、電源回路2の二次側の電圧が上昇する。この電圧が過度に上昇すると、電源回路2に接続する機器や素子に許容される最大入力電源電圧値を超えるおそれや、平滑コンデンサ22自体の耐圧を超えるおそれがある。そのため、ロボット9の通常稼働中に、モーターMからの回生電流によって電源回路2の二次側の電圧が過度に上昇した場合にも、電源回路2の二次側の電圧を下げる必要がある。そこで、ロボットコントローラー1では、電源回路2の二次側の電圧が過度に上昇した場合、入力リレー12を閉状態のまま外部電源からの交流電力の受電を継続すると共に、第2スイッチ素子52を導通状態とする。具体的には、第2制御部34は、DC電圧検出部33が検出した電圧値が予め記憶されている第2閾値TH2以上となった場合に、第2スイッチ素子52を導通状態とする。これにより、回生抵抗42に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の過度に上昇した電圧を急峻に低下させることができる。そのため、より短時間で、電源回路2の二次側の電圧を所定値以下にすることができる。したがって、ロボット9の安全性が増す。さらには、停止してからより短時間でロボット9の修復作業を開始することができるため、ロボット9のメンテナンス性が向上する。
【0034】
なお、前述した放電抵抗41または回生抵抗42での放電によって電源回路2の二次側の電圧が0VとなるとLED6が消灯する。そのため、ユーザーは、LED6の消灯により電源回路2の二次側の電圧が十分に下がったことを知ることができる。これにより、ロボットコントローラー1の安全性がさらに増す。
【0035】
以上のように、ロボットコントローラー1は、状況によって第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を共に遮断状態とするモードと、第1スイッチ素子51だけを導通状態とするモードと、第2スイッチ素子52だけを導通状態とするモードと、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を共に導通状態とするモードと、を選択して実施する。これにより、ロボット9の通常稼働中に生じる種々のアクシデントに適切に対応することのできるロボットコントローラー1となる。
【0036】
次に、電源回路2の放電方法について説明する。前述したように、ロボットコントローラー1では、放電の必要があるときに、状況に合わせて放電抵抗41と回生抵抗42とを選択的に使用することにより、電源回路2の二次側の電圧を緩慢に低下させるか、急峻に低下させるかを制御している。
【0037】
図2に示すように、電源回路2の放電方法は、電源回路2の一次側の電圧に基づいて第1スイッチ素子51を制御する第1制御ステップS1と、電源回路2の二次側の電圧に基づいて第2スイッチ素子52を制御する第2制御ステップS2と、非常停止信号の入力有無に基づいて第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を制御する第3制御ステップS3と、を有し、これら各ステップS1、S2、S3がそれぞれ独立して並列に進行する。
【0038】
また、第1制御ステップS1は、電源回路2の一次側の電圧を検出する一次側電圧検出ステップS11と、一次側電圧検出ステップS11の検出結果に基づいて、第1スイッチ素子51の断続を制御する第1スイッチ素子制御ステップS12と、を有する。
【0039】
一次側電圧検出ステップS11では、AC電圧検出部31が電源回路2に入力される交流電力の電圧を検出する。第1スイッチ素子制御ステップS12では、第1制御部32は、AC電圧検出部31が検出した電圧が第1閾値TH1以下であるかを判定する。検出した電圧が第1閾値TH1以下である場合、ロボット9が完全に停止したかを、ロボット9に設けられたモーターMを図示しない制御部が監視することで判定する。ロボット9が完全に停止した場合、第1制御部32は、第1スイッチ素子51を導通状態とする。これにより、放電抵抗41に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧が緩慢に低下する。そのため、ロボット9が安全に停止するのに必要な電力を確保しつつ、電源回路2の二次側の電圧を所定時間内に所定値以下とすることができる。一方、検出した電圧が第1閾値TH1を超える場合およびロボット9が完全に停止していない場合は、一次側電圧検出ステップS11に戻る。なお、電源回路2の二次側の電圧が0Vになると、第1スイッチ素子51が自動的に遮断状態となる。
【0040】
また、第2制御ステップS2は、電源回路4の二次側の電圧を検出する二次側電圧検出ステップS21と、二次側電圧検出ステップS21の検出結果に基づいて、第2スイッチ素子52の断続を制御する第2スイッチ素子制御ステップS22と、を有する。
【0041】
二次側電圧検出ステップS21では、DC電圧検出部33が電源回路2から出力される直流電力の電圧を検出する。第2スイッチ素子制御ステップS22では、第2制御部34は、DC電圧検出部33が検出した電圧が第2閾値TH2以上であるかを判定する。検出した電圧が第2閾値TH2以上である場合、第2制御部34は、第2スイッチ素子52を導通状態とする。これにより、回生抵抗42に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧が急峻に低下する。そのため、より短時間で、電源回路2の二次側の電圧を所定値以下とすることができる。一方、検出した電圧が第2閾値TH2未満の場合は、二次側電圧検出ステップS21に戻る。なお、電源回路2の二次側の電圧が0Vになると、第2スイッチ素子52が自動的に遮断状態となる。
【0042】
また、第3制御ステップS3は、非常停止信号の入力有無を判断する信号入力判定ステップS31と、信号入力判定ステップS31の判定結果に基づいて、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52の断続を制御するスイッチ素子制御ステップS32と、を有する。
【0043】
信号入力判定ステップS31では、第1制御部32および第2制御部34が非常停止信号の入力の有無を判定する。非常停止信号の入力があった場合、入力リレーが開状態となる。そして、スイッチ素子制御ステップS32として、第1制御部32も非常停止信号を受けて、第1スイッチ素子51を導通状態とする。さらに、第2制御部34は、第2スイッチ素子52を導通状態とする。これにより、放電抵抗41および回生抵抗42に電流が流れて放電が生じ、電源回路2の二次側の電圧がより急峻に低下する。そのため、より短時間で、電源回路2の二次側の電圧を所定値以下とすることができる。一方、非常停止信号の入力がない場合は、信号入力判定ステップS31に戻る。なお、電源回路2の二次側の電圧が0Vになると、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52が自動的に遮断状態となる。なお、非常停止信号の入力の有無を判定するのは、第1制御部32および第2制御部34に限らない。図示しない制御部や、その他の構成から判断してもよい。
【0044】
また、前述したように、第1制御部32は、AC電圧検出部31が検出した電圧が第1閾値TH1以下となった場合に、第1スイッチ素子51を導通状態とし、放電抵抗41に電流を流す。このような構成によれば、例えば、停電等の異常が生じた場合に、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0045】
また、前述したように、ロボットコントローラー1は、放電抵抗41より抵抗値が小さい回生抵抗42と、回生抵抗42に流れる電流を断続する第2スイッチ素子52と、電源回路2の二次側の電圧を検出する第2電圧検出部であるDC電圧検出部33と、第2スイッチ素子52を制御する第2制御部34と、を有する。そして、第2制御部34は、DC電圧検出部33が検出した電圧が第2閾値TH2以上となった場合に、第2スイッチ素子52を導通状態とし、回生抵抗42に電流を流す。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第2スイッチ素子52を遮断状態とすることにより、回生抵抗42での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、例えば、ロボットコントローラー1やロボット9の異常が生じた場合(第2閾値TH2以上となった場合)には、第2スイッチ素子52を導通状態として回生抵抗42で電力を消費させることにより、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0046】
また、前述したように、ロボットコントローラー1は、放電抵抗41より抵抗値が小さい回生抵抗42と、回生抵抗42に流れる電流を断続する第2スイッチ素子52と、第2スイッチ素子52を制御する第2制御部34と、を有する。そして、ロボット9の非常停止信号の入力があった場合に、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を導通状態とし、放電抵抗41および回生抵抗42に電流を流す。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第2スイッチ素子52を遮断状態とすることにより、回生抵抗42での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、ロボット9の非常停止信号が入力された場合には、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を導通状態として放電抵抗41および回生抵抗42で電力を消費させる。よって、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0047】
また、前述したように、ロボットコントローラー1は、電源回路2に対して並列に接続されている複数の放電抵抗411、412を有する。これにより、放電抵抗41の容量を大きくすることができる。
【0048】
また、前述したように、放電方法は、コンデンサである平滑コンデンサ22と、平滑コンデンサ22に蓄えられた電荷を放電する放電抵抗41と、放電抵抗41に流れる電流を断続する第1スイッチ素子51と、を有し、ロボット9が備えるモーターMに電源を供給する電源回路2を有するロボットコントローラー1の放電方法であって、電源回路2の一次側の電圧を検出する一次側電圧検出ステップS11と、一次側電圧検出ステップS11の検出結果に基づいて第1スイッチ素子51の断続を制御する第1スイッチ素子制御ステップS12と、を含む。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第1スイッチ素子51を遮断状態とすることにより、放電抵抗41での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、必要時には、第1スイッチ素子51を導通状態として放電抵抗41で電力を消費させることにより、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。
【0049】
また、前述したように、第1スイッチ素子制御ステップS12では、一次側電圧検出ステップS11で検出した電圧が第1閾値TH1以下となった場合に第1スイッチ素子51を導通状態とし、放電抵抗41に電流を流す。このような構成によれば、例えば、停電等の異常が生じた場合に、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0050】
また、前述したように、ロボットコントローラー1は、放電抵抗41より抵抗値が小さい回生抵抗42と、回生抵抗42に流れる電流を断続する第2スイッチ素子52と、を有する。そして、放電方法は、電源回路2の二次側の電圧を検出する二次側電圧検出ステップS21と、二次側電圧検出ステップS21の検出結果に基づいて第2スイッチ素子52の断続を制御する第2スイッチ素子制御ステップS22と、を含む。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第2スイッチ素子52を遮断状態とすることにより、回生抵抗42での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、例えば、電源回路2の二次側の電圧に異常が生じた場合には、第2スイッチ素子52を導通状態として回生抵抗42で電力を消費させることにより、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0051】
また、前述したように、ロボットコントローラー1は、放電抵抗41より抵抗値が小さい回生抵抗42と、回生抵抗42に流れる電流を断続する第2スイッチ素子52と、を有する。そして、放電方法は、ロボット9の非常停止信号の入力の有無を判断する信号入力判定ステップS31と、信号入力判定ステップS31の判定結果に基づいて第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52の断続を制御するスイッチ素子制御ステップS32と、を含む。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を遮断状態とすることにより、回生抵抗42での電力消費がされない。そのため、ロボット9の消費電力を低減することができる。一方で、ロボット9の非常停止信号が入力された場合には、第1スイッチ素子51および第2スイッチ素子52を導通状態として放電抵抗41および回生抵抗42で電力を消費させることにより、電源回路2の放電を速やかに行うことができる。そのため、ロボット9の安全性およびメンテナンス性が向上する。
【0052】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係るロボットコントローラーの回路図である。
【0053】
本実施形態のロボットコントローラー1は、放電抵抗41周辺の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0054】
図3に示すように、本実施形態のロボットコントローラー1では、放電抵抗41が並列に接続された3つの放電抵抗411、412、413で構成されている。つまり、前述した第1実施形態の抵抗43を放電抵抗413として放電抵抗41に組み込んでいる。また、放電抵抗411、412、413と電源回路2の(-)導線L2との間に、第1スイッチ素子51およびLED6が接続されている。具体的には、放電抵抗411、412、413の一端は、電源回路2の(+)導線L1に接続され、他端は、第1スイッチ素子51のドレインに接続されている。また、第1スイッチ素子51のソースは、LED6のアノードに接続されている。また、LED6のカソードは、電源回路2の(-)導線L2に接続されている。そのため、第1スイッチ素子51が導通状態となることによりLED6が点灯し、遮断状態となることによりLED6が消灯する。つまり、停電等に起因した安全停止時にのみLED6が点灯する。
【0055】
前述の第1実施形態では通常稼働中に抵抗43およびLED6によって電力が消費されていたが、本実施形態では、抵抗43による電力消費がない。そのため、ロボット9の消費電力をさらに低減することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態のロボットコントローラー1は、放電抵抗41および第1スイッチ素子51と直列に接続されている発光素子であるLED6を有する。このような構成によれば、ロボット9の通常稼働中は、LED6が消灯する。そのため、LED6による電力消費がされないため、ロボット9の消費電力をさらに低減することができる。
【0057】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0058】
以上、本発明のロボットコントローラーおよび放電方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、本発明に、他の任意の構成物や任意の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ロボットコントローラー、11…受電端子、12…入力リレー、2…電源回路、21…全波整流回路、22…平滑コンデンサ、31…AC電圧検出部、32…第1制御部、33…DC電圧検出部、34…第2制御部、41…放電抵抗、411…放電抵抗、412…放電抵抗、413…放電抵抗、42…回生抵抗、421…回生抵抗、43…抵抗、51…第1スイッチ素子、52…第2スイッチ素子、6…LED、7…サーボドライバー、9…ロボット、L1…導線、L2…導線、M…モーター、S1…第1制御ステップ、S11…一次側電圧検出ステップ、S12…第1スイッチ素子制御ステップ、S2…第2制御ステップ、S21…二次側電圧検出ステップ、S22…第2スイッチ素子制御ステップ、S3…第3制御ステップ、S31…信号入力判定ステップ、S32…スイッチ素子制御ステップ、TH1…第1閾値、TH2…第2閾値