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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134461
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】木質材料製の壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
E04B2/56 605M
E04B2/56 604F
E04B2/56 621A
E04B2/56 621J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044777
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】秋竹 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】岸本 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】舩津 昌史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紀子
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002EA01
2E002EA02
2E002FB07
2E002GA02
(57)【要約】
【課題】壁の構成部材として、定形であって、取り扱いが容易なように軽量化が可能な木質材料を用い、木質材料同士を、高い施工効率でかつ高い接合強度で接合することが可能な木質材料製の壁構造を提供する。
【解決手段】柱2と梁3とで区画される開口部分4の内方に構築される壁構造であって、同一寸法の木質材料製の正八角形ブロック5を複数個用い、これら正八角形ブロックは、開口部分の内方で、斜辺w同士が向かい合う配列で、かつ、柱に面する正八角形ブロックの縦辺yが当該柱と向かい合い、梁に面する正八角形ブロックの横辺xが当該梁と向かい合うように、柱の上下方向及び梁の左右方向に配設され、4つの正八角形ブロックで取り囲まれた正方形状の開口Sが形成され、開口の内方に、4つの正八角形ブロック同士を互いに連結する正方形枠状の連結金物8が設けられて、壁1が構築される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とで区画される開口部分の内方に構築される壁構造であって、
互いに平行関係でかつ等長の上下一対の2つの横辺と、互いに平行関係でかつ等長の左右一対の2つの縦辺と、互いに平行関係でかつ等長で該縦辺と該横辺とを結ぶ、一対2組の4つの斜辺とを有する、同一寸法の木質材料製の八角形ブロックを複数個用い、
これら八角形ブロックは、上記開口部分の内方で、上記斜辺同士が向かい合う配列で、かつ、上記柱に面する該八角形ブロックの上記縦辺が当該柱と向かい合い、上記梁に面する該八角形ブロックの上記横辺が当該梁と向かい合うように、該柱の上下方向及び該梁の左右方向に配設され、
上下に隣接する2つの上記八角形ブロックの互いに向かい合う一対の上記横辺と、当該八角形ブロックに左右から隣接する2つの上記八角形ブロックの互いに向かい合う一対の上記縦辺とで区画されて、4つの該八角形ブロックで取り囲まれた長方形状の開口が形成され、
該開口の内方に、4つの上記八角形ブロック同士を互いに連結する長方形枠状の連結金物が設けられて、壁が構築されることを特徴とする木質材料製の壁構造。
【請求項2】
前記八角形ブロックは、前記柱に面する該八角形ブロックの前記縦辺が当該柱に接合され、前記梁に面する該八角形ブロックの前記横辺が当該梁に接合されることを特徴とする請求項1に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項3】
前記柱や前記梁とこれらに向かい合う前記八角形ブロックとの間の間隙には、当該間隙を封止する納まり代で形成された封止材が配設され、上記八角形ブロックが上記封止材に接合され、該封止材が上記柱や上記梁に接合されることを特徴とする請求項1に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項4】
前記八角形ブロックは、八角形状の板片を前記柱及び前記梁の幅方向に重ね合わせて一体化した積層材であることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項5】
前記連結金物は、4つの各辺が、4つの前記八角形ブロックの一対の前記縦辺及び一対の前記横辺それぞれと等長で形成され、前記開口に、これら八角形ブロックの縦辺及び横辺と当接させて設けられることを特徴とする請求項1に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項6】
前記連結金物の前記各辺は、前記八角形ブロックに、接着によって接合されることを特徴とする請求項5に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項7】
前記連結金物の前記各辺は、該連結金物に形成された貫通孔に挿通されて前記八角形ブロックにねじ込まれるボルトによって、該八角形ブロックに接合されることを特徴とする請求項5に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項8】
前記八角形ブロックには、外周ねじ条及び内周ねじ条を有する棒状の埋め込み部材が、該外周ねじ条を介してねじ込まれ、前記連結金物の前記各辺は、該連結金物に形成された貫通孔に挿通されて上記埋め込み部材の上記内周ねじ条に螺合されるボルトによって、上記八角形ブロックに接合されることを特徴とする請求項5に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項9】
前記埋め込み部材の長さは、八角形ブロックに引張力を伝達する前記ボルトの長さよりも長いことを特徴とする請求項8に記載の木質材料製の壁構造。
【請求項10】
前記連結金物は、いずれかの辺が、前記開口を区画する前記封止材と当接させて設けられることを特徴とする請求項3に記載の木質材料製の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の構成部材として、定形であって、取り扱いが容易なように軽量化が可能な木質材料を用い、木質材料同士を、高い施工効率でかつ高い接合強度で接合することが可能な木質材料製の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止や森林資源の活用、林業再生の必要が注目され、ESG投資やSDGsの観点からも、木質材料の積極的な活用が求められている。
【0003】
木質材料は、繰り返し再利用できる素材であり、持続可能な資源活用としても、優れている。
【0004】
木質材料を利用した建設技術として、特許文献1や特許文献2が知られている。
【0005】
特許文献1の「木質構造部材、木質構造部材の接合構造及びその施工方法」は、燃え代設計による木造準耐火構造のロングスパン建築が可能で、ローコストかつ短納期で、現地での組み立て容易性も高い木質構造部材、木質構造部材の接合方法及び木質構造部材の接合構造の施工方法を提供することを課題とし、木質構造部材の木質部材は、中央に配置された内側木質板材と、この内側木質板材を両面から挟む一対の外側木質板材と、を積層して形成される。木質部材の外周には、所定の燃え代層を設けて、この燃え代層よりも内側を荷重支持部とし、木質構造部材全体を準耐火構造にしている。
【0006】
特許文献2の「耐震壁」は、木質系の材料を用いて耐震性能の優れた耐震壁を提供することを課題とし、耐震壁は、柱梁架構の構面内に設けられる。耐震壁は、長さ方向を繊維方向とする木質板が複数並んで配置されて形成された木質壁部と、木質壁部の周囲と柱梁架構との隙間をモルタル材で閉塞して形成された閉塞部と、を備える。木質板の角度は、柱梁架構の対角線の角度である。地震などにより柱梁架構に水平方向の外荷重が加わると、柱梁架構の構面内には、対角線方向に引張力あるいは圧縮力が作用する。木質板は繊維方向のヤング率および強度が高いため、この引張力あるいは圧縮力に対して十分に抵抗するから、優れた耐震性能を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-14154号公報
【特許文献2】特開2021-147816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の壁では、構面内に配列される複数の木質板について、個々の柱梁架構固有の対角線方向に向けて、柱寸法や梁寸法に合わせて、各木質板を異なる寸法で成形する必要があり、木質板の製作に手間を要するという課題があった。
【0009】
また、柱梁架構の対角の隅角同士の間に亘る木質板になると、相当に大型化し、木質板が軽量であるという利点を十分に活かせず、施工性が良くないという課題もあった。
【0010】
さらに、木質板同士を接合するにあたって、高い接合強度を確保でき、また、構成が簡単であって手間なく接合することができて、施工効率の向上を図ることができる接合構造の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、壁の構成部材として、定形であって、取り扱いが容易なように軽量化が可能な木質材料を用い、木質材料同士を、高い施工効率でかつ高い接合強度で接合することが可能な木質材料製の壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる木質材料製の壁構造は、柱と梁とで区画される開口部分の内方に構築される壁構造であって、互いに平行関係でかつ等長の上下一対の2つの横辺と、互いに平行関係でかつ等長の左右一対の2つの縦辺と、互いに平行関係でかつ等長で該縦辺と該横辺とを結ぶ、一対2組の4つの斜辺とを有する、同一寸法の木質材料製の八角形ブロックを複数個用い、これら八角形ブロックは、上記開口部分の内方で、上記斜辺同士が向かい合う配列で、かつ、上記柱に面する該八角形ブロックの上記縦辺が当該柱と向かい合い、上記梁に面する該八角形ブロックの上記横辺が当該梁と向かい合うように、該柱の上下方向及び該梁の左右方向に配設され、上下に隣接する2つの上記八角形ブロックの互いに向かい合う一対の上記横辺と、当該八角形ブロックに左右から隣接する2つの上記八角形ブロックの互いに向かい合う一対の上記縦辺とで区画されて、4つの該八角形ブロックで取り囲まれた長方形状の開口が形成され、該開口の内方に、4つの上記八角形ブロック同士を互いに連結する長方形枠状の連結金物が設けられて、壁が構築されることを特徴とする。
【0013】
前記八角形ブロックは、前記柱に面する該八角形ブロックの前記縦辺が当該柱に接合され、前記梁に面する該八角形ブロックの前記横辺が当該梁に接合されることを特徴とする。
【0014】
前記柱や前記梁とこれらに向かい合う前記八角形ブロックとの間の間隙には、当該間隙を封止する納まり代で形成された封止材が配設され、上記八角形ブロックが上記封止材に接合され、該封止材が上記柱や上記梁に接合されることを特徴とする。
【0015】
前記八角形ブロックは、八角形状の板片を前記柱及び前記梁の幅方向に重ね合わせて一体化した積層材であることを特徴とする。
【0016】
前記連結金物は、4つの各辺が、4つの前記八角形ブロックの一対の前記縦辺及び一対の前記横辺それぞれと等長で形成され、前記開口に、これら八角形ブロックの縦辺及び横辺と当接させて設けられることを特徴とする。
【0017】
前記連結金物の前記各辺は、前記八角形ブロックに、接着によって接合されることを特徴とする。
【0018】
前記連結金物の前記各辺は、該連結金物に形成された貫通孔に挿通されて前記八角形ブロックにねじ込まれるボルトによって、該八角形ブロックに接合されることを特徴とする。
【0019】
前記八角形ブロックには、外周ねじ条及び内周ねじ条を有する棒状の埋め込み部材が、該外周ねじ条を介してねじ込まれ、前記連結金物の前記各辺は、該連結金物に形成された貫通孔に挿通されて上記埋め込み部材の上記内周ねじ条に螺合されるボルトによって、上記八角形ブロックに接合されることを特徴とする。
【0020】
前記埋め込み部材の長さは、八角形ブロックに引張力を伝達する前記ボルトの長さよりも長いことを特徴とする。
【0021】
前記連結金物は、いずれかの辺が、前記開口を区画する前記封止材と当接させて設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる木質材料製の壁構造にあっては、壁の構成部材として、定形であって、取り扱いが容易なように軽量化できる木質材料を用い、木質材料同士を、高い施工効率でかつ高い接合強度で接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る木質材料製の壁構造の好適な一実施形態を示す正面図である。
図2図1に示した壁構造に適用される八角形ブロックと封止ブロックの説明図である。
図3図1の壁構造に代えて、八角形ブロックの納まり代を調整する封止ブロックを適用した壁構造を示す正面図である。
図4図3に示した壁構造に適用される封止ブロックの説明図である。
図5】本発明に係る木質材料製の壁構造に適用可能な八角形ブロックの厚さ方向(柱・梁の幅方向)の構成を説明する説明図である。
図6図1または図3に示した壁構造に適用される連結金物の斜視図である。
図7図6に示した連結金物の八角形ブロック等への取り付け例の説明図である。
図8図7に示した取り付け例で連結金物を八角形ブロック等へ取り付けた状態の説明図である。
図9図1中、A-A線矢視断面図である。
図10図1及び図3に示した壁構造における応力伝達状態を説明する説明図である。
図11図1または図3に示した壁構造を、単一の開口部分に2つ並立して構築した様子の説明図である。
図12図2(a)に示した八角形ブロックの変形例の説明図である。
図13図12に示した変形例に係る八角形ブロックの厚さ方向(柱・梁の幅方向)の構成の説明図である。
図14】本発明にかかる木質材料製の壁構造に適用可能な、他の八角形ブロックの形態を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる木質材料製の壁構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、柱2と梁3で構成される柱・梁架構には、左右一対の柱2と上下一対の梁3で区画して、長方形状の開口部分4が形成される。
【0026】
この開口部分4の内方に、木質材料製の壁1が構築され、当該壁1が、柱2及び梁3と接合されることで、壁構造とされる。
【0027】
本実施形態では、壁1は、図1及び図2に示すように、開口部分4に並べられ、積み上げられる複数個の同一寸法の木質材料製の八角形ブロック5と、これら八角形ブロック5と柱2や梁3との間に生ずる隙間を封止する木質材料製の封止ブロック6,7とから構成される。
【0028】
図2は、八角形ブロック5及び封止ブロック6,7を示していて、図2(a)は、八角形ブロック5の正面図、図2(b)及び(c)は、封止ブロック6,7の正面図である。
【0029】
八角形ブロック5は、厚さが一定であって、その外形輪郭は、互いに平行関係でかつ等長の上下一対の2つの横辺xと、互いに平行関係でかつ等長の左右一対の2つの縦辺yと、互いに平行関係でかつ等長で縦辺yと横辺xとを結ぶ、一対2組の4つの斜辺wとを有する。
【0030】
図示例では、八角形ブロック5は、8つの辺x,y,wの長さがすべて等しい正八角形の場合が示されている。
【0031】
八角形ブロック5は、正八角形以外であっても良く、例えば、縦辺yと横辺xの長さを異ならせても良い。
【0032】
以下の説明では、正八角形の八角形ブロック5について説明するが、正八角形でない八角形ブロック5の場合であっても、同様に理解することができる。
【0033】
開口部分4の内方への八角形ブロック5の配列について説明すると、八角形ブロック5は、開口部分4の柱方向(柱2の軸方向に沿う上下方向)及び梁方向(梁3の軸方向に沿う左右方向)に縦横に配設される。
【0034】
この際、隣接する八角形ブロック5同士は必ず、斜辺w同士が向かい合って互いに当接されるように配列される。
【0035】
隣接する八角形ブロック5同士は、互いに当接される斜辺w同士が接着剤などで接合される。
【0036】
このように八角形ブロック5は、斜辺wが他の八角形ブロック5との接合部とされる。
【0037】
図1に示したように、いずれか1つの八角形ブロック5を例にとると、4つの斜辺wそれぞれに、その周りの4つの八角形ブロック5それぞれのいずれか1つの斜辺wが向かい合うように配列される。
【0038】
これにより、八角形ブロック5の右側及び左側それぞれに、横辺xの長さ寸法の間隔を隔てて、八角形ブロック5が2つずつ配列される。
【0039】
同様に、八角形ブロック5の上側及び下側それぞれに、縦辺yの長さ寸法の間隔を隔てて、八角形ブロック5が2つずつ配列される。
【0040】
そして、互いに間隔を隔てる八角形ブロック5相互の関係では、横辺x同士や縦辺y同士が向かい合う位置関係となる。
【0041】
これにより、いずれか1つの八角形ブロック5の周りには、他の4つの八角形ブロック5によって、これら八角形ブロック5の縦辺yや横辺xで取り囲まれる開口Sが形成される。
【0042】
開口Sから周りの八角形ブロック5を見ると、当該開口Sは、その周りに配列される4つの八角形ブロック5の縦辺y及び横辺xで取り囲んで正方形状に形成される。
【0043】
八角形ブロック5のうち、柱2や梁3に面する八角形ブロック5は、それらの縦辺yや横辺xが柱面2aや梁面3aに向かい合って接するように配設される。
【0044】
そのため、八角形ブロック5の斜辺wは、柱面2aや梁面3aに当接し得ず、八角形ブロック5の斜辺wと柱面2aや梁面3aとの間には、隙間が生じる。
【0045】
封止ブロック6,7は、当該斜辺wと柱面2aや梁面3aとの間に、当該隙間を封止するために配設される。
【0046】
封止ブロック6,7は、柱2や梁3とこれらに向かい合う八角形ブロック5との間の隙間を埋めて封止する納まり代で形成される。
【0047】
八角形ブロック5は、斜辺wがこれら封止ブロック6,7に接着剤などで接合され、そして封止ブロック6,7が柱2や梁3に接着剤などで接合されて、壁1が構築される。
【0048】
封止ブロック6,7は、八角形ブロック5の厚さと同じ厚さであって、2種類のものが用いられる。
【0049】
等脚台形状ブロック6は、縦方向や横方向で、対をなす八角形ブロック5の斜辺wの間と柱面2aや梁面3aとの間の隙間に配設される。
【0050】
直角二等辺三角形状ブロック7は、開口部分4の隅角部と八角形ブロック5の斜辺wとの間の直角二等辺三角形状の隙間に配設される。
【0051】
等脚台形状ブロック6は、それらの斜辺が2つの八角形ブロック5の斜辺wと向かい合い、底辺が柱面2aや梁面3aと向かい合う配置で設けられ、これにより、頂辺は、八角形ブロック5の縦辺yや横辺xと組み合わされて、開口Sを形成する。
【0052】
直角二等辺三角形状のブロック7は、等しい長さの2辺がそれぞれ八角形ブロック5の斜辺wと向かい合い、頂角部分が隅角部に突き合わされて配置される。
【0053】
柱2に面する八角形ブロック5については、当該柱2と向かい合う縦辺yが柱面2aに接着剤などで接着される。
【0054】
梁3に面する八角形ブロック5についても、当該梁3と向かい合う横辺xが梁面3aに接着剤などで接着される。
【0055】
以上のようにして開口部分4の内方に八角形ブロック5及び封止ブロック6,7を配列し接合することで、壁構造が構築される。
【0056】
図1は、八角形ブロック5の縦辺yや横辺xを、開口部分4の柱面2aや梁面3aに当てることにより、八角形ブロック5を柱2や梁3に直接接着できる場合であったが、開口部分4と八角形ブロック5の寸法関係によっては、図3に示すように、柱2や梁3とこれらに向かい合う八角形ブロック5の縦辺yや横辺xとの間に間隙が生じて、この間隙のために、八角形ブロック5を直接柱面2aや梁面3aに当てることができない場合がある。
【0057】
このような場合には、図4に示すように、間隙を封止する納まり代で形成された封止ブロック9,10が用いられ、八角形ブロック5は、これら封止ブロック9,10を介して、柱面2aや梁面3aに対し接着される。
【0058】
すなわち、柱2や梁3とこれらに向かい合う八角形ブロック5の縦辺yや横辺x、斜辺wとの間に、間隙を封止する封止ブロック9,10が配設される。
【0059】
そして、縦辺yや横辺x、斜辺wを封止ブロック9,10に接合し、封止ブロック9,10を柱2や梁3に接合することで、壁1が構築される。
【0060】
封止ブロック9,10は、八角形ブロック5の厚さと同じ厚さであって、図4に示すように、2種類のものが用いられる。
【0061】
第1の封止ブロック10は、開口部分4の隅角部4aを除いて、柱2の上下方向と梁3の左右方向とに並べて設けられる。
【0062】
第1の封止ブロック10は、上下にまたは左右に隣接する一対の八角形ブロック5と接合される第1の面10aと、柱2または梁3と接合される第2の面10bと、隣接する他の第1の封止ブロック10もしくは第2の封止ブロック9と接合される一対の端面10cとを有する。
【0063】
第1の面10aは、隣接する一対の八角形ブロック5の各斜辺wに当接される山形部分と、当該山形部分の両側で、これら八角形ブロック5の縦辺yもしくは横辺xに、それらの半分の長さにわたって当接される平坦部分とを有するように形成される。第2の面10bは、柱2または梁3に当接されるように、平坦に形成される。
【0064】
第2の封止ブロック9は、開口部分4の隅角部4aに設けられる。第2の封止ブロック9は、隅角部4aに面する1つの八角形ブロック5と接合される第1の面9aと、隅角部4aで柱2及び梁3と接合される第2の面9bと、隣接する第1の間隙封止ブロック10の端面10cと接合される一対の端面9cとを有する。
【0065】
第1の面9aは、八角形ブロック5の斜辺wに当接される傾斜部分と、当該傾斜部分の両側で、八角形ブロック5の縦辺y及び横辺xに、それらの半分の長さに亘って当接される平坦部分とを有するように形成される。
【0066】
第2の面9bは、柱2及び梁3双方に隅角部4aで当接されるように、L字状に形成される。
【0067】
これら封止ブロック9,10の各面9a~9c,10a~10cは、八角形ブロック5や柱2、梁3対して、そしてブロック9,10同士で互いに、接着剤などで接着される接合部とされる。
【0068】
間隙を封止する納まり代で形成された封止ブロック9,10を用いることで、八角形ブロック5を直接柱面2aや梁面3aに当てることができない場合であっても、開口部分4の内方に八角形ブロック5による壁1を構築することができる。
【0069】
接着剤としては、木質材料に浸潤するエポキシ樹脂などを用いることが好ましい。木質材料は、接着した面から浸潤した接着剤によって強度が増強される。
【0070】
八角形ブロック5は、接着剤が塗布される斜辺wの強度が増強されることから、正八角形状であるよりも、斜辺wの長さが縦辺y及び/または横辺xよりも長い八角形状であることが好ましい。
【0071】
次に、八角形ブロック5自体の構成について詳述する。木質材料製の八角形ブロック5は、木質材料が備える繊維fを活かすようにして形成される。
【0072】
具体的には、八角形ブロック5は例えば、図1及び図2(a)に示すように、横辺xが、木質材料の繊維fの向きと平行に形成され、縦辺yが、木質材料の繊維fの向きと直角に交差させて形成される。
【0073】
あるいは、八角形ブロック5は、縦辺yが、木質材料の繊維fの向きと平行に形成され、横辺xが、木質材料の繊維fの向きと直角に交差させて形成される。
【0074】
要するに、木質材料の繊維fの向きと平行に沿う横辺xもしくは縦辺yが得られるように八角形ブロック5を形成し、そのように形成した八角形ブロック5を、そのままの向きで用いる、もしくは、90°回した向きで用いると言うことである。
【0075】
横辺xもしくは縦辺yが繊維fの向きと平行であるとは、木質材料が備える一方向に向けて揃っている繊維fの向きと横辺xもしくは縦辺yとが実質的に、おおよそ平行であればよいという意味である。
【0076】
従ってまた、縦辺yもしくは横辺xが繊維fの向きと交差するとは、木質材料が備える一方向に向けて揃っている繊維fの向きと縦辺yもしくは横辺xとが実質的に、おおよそ交差する方向に向いていればよいという意味である。
【0077】
封止ブロック6,7,9,10についても、それらが当接される各八角形ブロック5個々における木質材料の繊維fの向きに合わせて、それらの繊維の向きを揃えることが好ましい。
【0078】
このように構成される各八角形ブロック5自体は、図2(a)に示すように、木質材料の繊維fの向きと平行な方向が、引張力、そして殊に圧縮力Cに対し、強軸方向SAとなる。
【0079】
また、各八角形ブロック5自体は、木質材料の繊維fの向きと交差する方向が、圧縮力、そして殊に引張力Tに対し、弱軸方向WAとなる。
【0080】
八角形ブロック5は、図5に示すように、各種の態様で形成される。図5(a)は、原材料である円柱状等の丸太を、繊維方向に切断したひき板で形成した場合の側面図である。
【0081】
図5(b)は、ひき板を八角形板片5aとして用い、この八角形板片5aを重ね合わせて一体化した積層材の場合の側面図である。
【0082】
この場合、すべての八角形板片5aが、木質材料の繊維fの向きが実質的に、おおよそ同じになるように揃えられて、柱2及び梁3の幅方向に重ね合わされる。
【0083】
図4(c)は、原材料である円柱状等の丸太から、かつら剥きの要領で薄板を作成し、この薄板から切り出した八角形板片5aを複数枚重ね合わせて一体化した積層材の場合の側面図である。
【0084】
この場合も、すべての八角形板片5aが、木質材料の繊維fの向きが実質的に、おおよそ同じになるように揃えられて、柱2及び梁3の幅方向に重ね合わされる。
【0085】
開口部分4の内方に上述のように配列される複数個の八角形ブロック5は、すべての八角形ブロック5における木質材料の繊維fの向きがすべて実質的に、おおよそ同方向となるように、等長の縦辺y同士及び横辺x同士が向かい合う配列で縦横方向(柱方向及び梁方向)に配設され、接着される。
【0086】
図1は、木質材料の繊維fの向きが横辺xと平行である場合であって、従って、壁1には、左右方向に向きが揃えられた繊維fが現れる。
【0087】
図3は、木質材料の繊維fの向きが縦辺yと平行である場合であって、従って、壁1には、上下方向に向きが揃えられた繊維fが現れる。
【0088】
木質材料の繊維fを左右方向もしくは上下方向の一方向に揃える配列で八角形ブロック5等を設けることにより、壁1の表裏面にデザイン的効果を創出することができる。
【0089】
本実施形態にかかる木質材料製の壁構造では、図1または図3に示すように、開口Sの内方に連結金物8が設けられ、この連結金物8により、開口Sを取り囲む4つの八角形ブロック5の2つの縦辺yと2つの横辺xの相互が互いに連結される。
【0090】
また、開口Sを取り囲む八角形ブロック5と封止ブロック6,7,9,10の相互も、連結金物8によって互いに連結される。
【0091】
連結金物8は、図6に示すように、4つの辺8aを有する長方形枠状、本実施形態では正方形枠状に形成される。
【0092】
すなわち、連結金物8は、4つの各辺8aが正八角形状の八角形ブロック5の縦辺y及び横辺xや開口Sに面する封止ブロック6,7,9,10の各辺それぞれと等長に形成される。
【0093】
連結金物8の各辺8aは、八角形ブロック5及び封止ブロック6,7,9,10の各辺それぞれに当接され、これにより連結金物8は、開口Sに設けられる。連結金物8の各辺8aには、少なくとも1つの貫通孔8bが形成される。
【0094】
図7及び図8に示すように、連結金物8は、八角形ブロック5や封止ブロック6,7,9,10に埋め込んで設けられる棒状の埋め込み部材11と、埋め込み部材11に螺合されるボルト12によって、八角形ブロック5等に接合される。
【0095】
埋め込み部材11は、中実円柱の金属製棒状体で形成され、外周面には、八角形ブロック5等にねじ込むために、全長に亘って外周ねじ条11aが形成される。
【0096】
埋め込み部材11の長さ方向の一端部には、当該埋め込み部材11の長さ方向に所定の長さで有底の孔部が形成され、この孔部には、全長に亘って、ボルト12が螺合される内周ねじ条11bが形成される。
【0097】
連結金物8を八角形ブロック5等に取り付ける際には、まず、八角形ブロック5等の例えば縦辺yや横辺xからその内方へ向けて、埋め込み部材11を外周ねじ条11aによりねじ込んで、当該八角形ブロック5等の内部に埋め込み部材11を埋め込む。
【0098】
これにより、八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xには、埋め込み部材11の内周ねじ条11bが現れる。
【0099】
次に、八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xに現れている内周ねじ条11bに貫通孔8bを合わせるようにして、当該八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xに連結金物8のいずれかの辺8aをあてがって当接させた状態で、ワッシャ13を介して、貫通孔8bに挿通したボルト12を、埋め込み部材11の内周ねじ条11bに螺合する。これにより、八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xに、連結金物8が接合される。
【0100】
実際の施工では、例えば開口Sが形成されるように八角形ブロック5や封止ブロック6,7,9,10を配置し、開口Sの内方に連結金物8を設けた上で、連結金物8の各辺8aに対し、ボルト12の埋め込み部材11への螺合作業を行うようにすれば良い。
【0101】
埋め込み部材11の長さは、ボルト12の長さよりも長く形成される。ボルト12は、埋め込み部材11に引張力を伝達し、埋め込み部材11は、ボルト12から引張力(引抜力)を受けつつ、八角形ブロック5等に対する連結金物8の定着力を負担する。
【0102】
従って、連結金物8を高い接合強度で八角形ブロック5等と接合するには、言い換えれば、八角形ブロック5同士、八角形ブロック5と封止ブロック6,7,9,10同士を強固に連結するには、引き抜きに対する抵抗作用を奏する埋め込み部材11の長さを、ボルト12の長さよりも十分に長く形成することが望ましい。
【0103】
上述の説明は、埋め込み部材11を用いる場合であるが、連結金物8と八角形ブロック5等とをボルト12によって、必要な接合強度で接合できる場合には、埋め込み部材11を用いることなく、連結金物8の貫通孔8bに挿通されるボルト12を、八角形ブロック5等に直接ねじ込むことで、当該連結金物8の各辺8aを八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xに接合するようにしても良い。
【0104】
さらに、連結金物8の各辺8aと八角形ブロック5等の縦辺yや横辺xとを接着剤による接着によって、必要な接合強度で接合できる場合には、埋め込み部材11やボルト12を用いることなく、接着剤のみによって連結金物8を八角形ブロック5等に接合するようにしても良い。
【0105】
他方、連結金物8と八角形ブロック5等との接合に、上記のように埋め込み部材11とボルト12を用いる場合、ボルト12のみを用いる場合のいずれであっても、接着剤による接合を併用しても良いことはもちろんである。
【0106】
図1、そして図9にも示すように、八角形ブロック5が上下の梁3,3間に積み上げられかつ左右の柱2,2間に並べられた開口部分4の内方では、地震などの左右水平方向の外力は、柱2・梁3から開口部分4内方の壁1に作用する。
【0107】
その際の応力伝達状態については、例えば右方向へ作用する当該外力RFは、柱2や梁3から、封止ブロック6,7,9,10を介して、各八角形ブロック5の斜辺wに対し直角をなす、右斜め下向きのせん断力qとして作用する。
【0108】
各八角形ブロック5それぞれの斜辺wに入力されたせん断力qは、各八角形ブロック5を通じ、連結金物8が設けられた開口Sを介して、縦辺y同士の接合による右方向へ向かう水平分力hfの累積及び横辺x同士の接合による下方へ向かう垂直分力vfの累積として伝達される。
【0109】
これら水平分力hf及び垂直分力vfにより、壁1全体で見ると、せん断力qの作用方向に沿う圧縮ストラットCFが生じる(図中、右下がりの圧縮ストラット;正八角形の場合45°)。
【0110】
図10に示すように、左方向へ作用する外力LFの場合も、同様の圧縮ストラットCFが逆向きに生じる(左下がりの圧縮ストラット;正八角形の場合45°)。
【0111】
八角形ブロック5の横辺xが木質材料の繊維fの向きと平行である場合(図2(a)参照)には、水平分力hfが伝達される横辺xに沿う方向が強軸方向SAであり、垂直分力vfが伝達される縦辺yに沿う方向が弱軸方向WAとなる壁1が構築される。
【0112】
従って、このような壁1を備えた柱・梁架構は、垂直分力vfに対してよりも、水平分力hfに対して、余裕のある構造が得られる。
【0113】
八角形ブロック5の縦辺yが木質材料の繊維fの向きと平行である場合には、図示しないけれども、垂直分力vfが伝達される縦辺yに沿う方向が強軸方向であり、水平分力hfが伝達される横辺xに沿う方向が弱軸方向となる壁1が構築される。
【0114】
このような壁1を備えた柱・梁架構は、水平分力hfに対してよりも、垂直分力vfに対して、余裕のある構造が得られる。
【0115】
壁1の構造強度として、上述したように、水平分力hfもしくは垂直分力vfのいずれかに対して余裕のある構造で満足できる場合には、開口部分4には、木質材料の繊維fの向きが横辺xに平行もしくは縦辺yに平行な単一の壁1を備えればよい。
【0116】
他方、壁1の強度が不足する場合には、壁1は、図11に示すように、開口部分4の内方に、柱2及び梁3の幅方向へ少なくとも2つ重ねて、並立させて構築される。
【0117】
図11(a)は、壁構造の側断面図、図11(b)は、図11(a)の壁構造を左方から見た一方の壁1の要部拡大正面図、図11(c)は、図11(a)の壁構造を右方から見た他方の壁1の要部拡大正面図である。
【0118】
隣り合うこれら壁1同士は、一方の壁1の木質材料の繊維fの向きが横辺xと平行とされ、他方の壁1の木質材料の繊維fの向きが縦辺yと平行とされる。
【0119】
すなわち、一方の壁1(の八角形ブロック5)の強軸方向SAが他方の壁1(の八角形ブロック5)の弱軸方向WAとされ、一方の壁1(の八角形ブロック5)の弱軸方向WAが他方の壁1(の八角形ブロック5)の強軸方向SAとなるように、これら壁1が並立される。
【0120】
これら壁1同士は、柱2及び梁3の幅方向で互いに接着されることなく、縁切りされて、互いに自由に挙動するように構築される。
【0121】
このような壁構造にすれば、単一の開口部分4において、右向きの外力RFに対しても、左向きの外力LFに対しても、等しい抵抗作用を奏する柱・梁架構が得られる。壁1の並立数は、偶数枚であれば、その数は問われない。
【0122】
以上説明した本実施形態にかかる木質材料製の壁構造にあっては、同一寸法の木質材料製の正八角形ブロック5を複数個用い、これら八角形ブロック5は、開口部分4の内方で、斜辺w同士が向かい合う配列で、かつ、柱2に面する八角形ブロック5の縦辺yが当該柱2と向かい合い、梁3に面する八角形ブロック5の横辺xが当該梁3と向かい合うように、柱2の上下方向及び梁3の左右方向に配設され、4つの八角形ブロック5で取り囲まれた正方形状の開口Sが形成されて、開口Sの内方に、4つの八角形ブロック5同士を互いに連結する正方形枠状の連結金物8が設けられ、八角形ブロック5を柱2及び梁3に接合することによって壁1が構築されるようにしていて、木質材料製でありながら、耐震性を奏する高い強度を壁1に付与することができる。
【0123】
柱2や梁3とこれらに向かい合う八角形ブロック5との間に間隙が生じる場合であっても、間隙を封止する納まり代の封止ブロック9,10が配設され、八角形ブロック5が封止ブロック9,10に接合され、封止ブロック9,10が柱2や梁3に接合されるようにしていて、柱2及び梁3に対して、八角形ブロック5による堅固な壁1を構築することができる。
【0124】
少なくとも八角形ブロック5同士を連結する連結金物8は、4つの各辺8aが、4つの八角形ブロック5の縦辺yや横辺xと等長で形成され、開口Sに、これら八角形ブロック5の縦辺y及び横辺xと当接させて設けられることにより、八角形ブロック5同士の強固な連結構造を確保することができる。
【0125】
正方形枠状の連結金物8の取り付け構造は、外周ねじ条11a及び内周ねじ条11bを有する棒状の埋め込み部材11が、外周ねじ条11aを介して八角形ブロック5にねじ込まれ、連結金物8の各辺8aが、当該連結金物8に形成された貫通孔8bに挿通されて埋め込み部材11の内周ねじ条11bに螺合されるボルト12によって、八角形ブロック5に接合されるようにしていて、単なる枠体である連結金物8と埋め込み部材11とボルト12という、構造がきわめて簡単で取り扱いにも手間取らない部品構成であるため、容易に連結金物8を八角形ブロック5等に取り付けでき、これにより、高い施工効率で八角形ブロック5同士等を互いに連結することができる。
【0126】
また、埋め込み部材11にボルト12を螺合する構成であるので、木質材料製の八角形ブロック5等であっても、連結金物8を高い強度で取り付けることができて、この連結金物8により、八角形ブロック5同士等を高い強度で連結することができる。
【0127】
埋め込み部材11の長さは、八角形ブロック5に引張力を伝達するボルト12の長さよりも長いので、ボルト12を介して作用する引き抜きに対し、埋め込み部材11で抵抗することができ、連結金物8の取り付け、従ってまた、八角形ブロック5同士等を強固に連結することができる。
【0128】
連結金物8の取り付け構造は、埋め込み部材11を用いることなく、八角形ブロック5にボルト12をねじ込むだけであっても良く、このようにすればさらに施工効率を向上できる。
【0129】
連結金物8の取り付け構造は、埋め込み部材11もボルト12も用いることなく、接着剤による接着だけであっても良く、これにより、さらに施工効率を向上できる。
【0130】
壁1の構成部材である木質材料製の八角形ブロック5は、柱・梁架構の開口部分4に対し、定形であって、かつ取り扱いが容易なように軽量化できるものであり、施工性に優れると共に、壁1自体の軽量化も図ることができる。
【0131】
木質材料の繊維fの向きがすべて同方向となるように八角形ブロック5を配列して得られる壁1の強軸方向SAに対し、木質材料の繊維fの向きと同じ方向に配列される連結金物8で八角形ブロック5同士を連結するようにしているので、強軸方向SAに引張応力を伝達することができて、壁1の強度を高めることができる。
【0132】
単体として形作られた八角形ブロック5同士の組み合わせによって、八角形ブロック5の強度は高く確保しつつ、採光や通風を確保する開口Sを合理的に壁1に形成することができる。また、この開口Sは、連結金物8によって補強することができる。
【0133】
八角形ブロック5自体、高い強度を発揮すると共に、八角形ブロック5同士及び八角形ブロック5と柱2や梁3との接着などの接合で壁1が構築されるため、騒音や振動、粉塵の発生がなく、居ながらで壁1を構築することができる。従って、既存建物に対する改修工事として施工することができる。
【0134】
壁1を、木質材料のブロック5~7,9,10で構築することにより、仕上げは不要であり、木材の質感を活かした壁1を得ることができる。
【0135】
ブロック5~7,9,10は、原材料である木材が小割にされたもの、すなわち端材でもよいので、木材資源の有効活用に資することができる。
【0136】
木質材料であるブロック5~7,9,10に燃え代を確保したり、耐火被覆を設けてもよいことはもちろんである。
【0137】
ブロック5~7,9,10を接着剤で接着するようにしていて、接着剤が浸潤される接着面の強度が増強されるので、ブロック5~7,9,10は各接着面が補強されていると言え、壁1として、面外方向への座屈や圧壊などの変形を抑制することができる。
【0138】
開口部分4の内方には、柱2及び梁3の幅方向に、壁1が少なくとも2つ重ねて構築され、隣り合うこれら壁1同士は、木質材料の繊維fの向きが異なるので、木質材料の繊維fの向きによって強軸や弱軸がある場合に、必要強度の壁1を、単一の開口部分4に構築することができる。
【0139】
八角形ブロック5は、木質材料の繊維fの向きが同じ八角形板片5aを柱2及び梁3の幅方向に重ね合わせて一体化した積層材であるので、この積層材によって、壁1の必要強度に合わせた八角形ブロック5を形成して壁1を構築することができる。
【0140】
図12及び図13には、上記実施形態で説明した八角形板片5aで形成される八角形ブロック5の変形例が示されている。
【0141】
本変形例に係る八角形ブロック5は、図5(b),(c)と同様に、複数枚の八角形板片5aを柱2及び梁3の幅方向に重ね合わせて一体化した積層材で形成される。
【0142】
八角形板片5aとしては、縦辺yが木質材料の繊維fの向きと平行なものと、横辺xが木質材料の繊維fの向きと平行なものが用いられる。
【0143】
八角形ブロック5は、木質材料の繊維fの向きが縦辺yに沿うものと、横辺xに沿うものとを順次交互に重ね合わせることにより、図12に示すように、厚さ方向に繊維fの向きが交差された積層材として形成される。
【0144】
八角形ブロック5は具体的には、図13の各側面図で示すように、各種の態様で形成される。
【0145】
図13(a)は、原材料である円柱状等の丸太を、繊維方向に切断したひき板を八角形板片5aとして用い、この八角形板片5aを、木質材料の繊維fの向きが交差するようにして、柱2及び梁3の幅方向に2枚重ねして一体化した場合の側面図である。
【0146】
図13(b)は、図13(a)に比して厚さの薄い多数枚の八角形板片5aを、繊維fの向きが交差するように、重ね合わせて一体化した場合の側面図である。
【0147】
図13(c)は、原材料である円柱状等の丸太から、かつら剥きの要領で薄板を作成し、この薄板から切り出した八角形板片5aを複数枚重ね合わせて一体化した積層材の場合の側面図である。
【0148】
この場合も、木質材料の繊維fの向きが交差するようにして、柱2及び梁3の幅方向に重ね合わされる。
【0149】
従って、図12に示したこの変形例にかかる八角形ブロック5では、図2(a)に示した強軸方向SAと弱軸方向WAが相殺されるので、当該八角形ブロック5により構築される壁1は、右向きの外力RFに対しても、左向きの外力LFに対しても、等しく抵抗作用を奏することができる。
【0150】
すなわち、本変形例によれば、木質材料の繊維fの向きが交差する積層材で形成した八角形ブロック5であるので、単一の壁1を構築するという簡便な施工で、左右双方向に抵抗する柱・梁架構を構築することができる。
【0151】
この場合、接合する2つの八角形ブロック5の各八角形板片5aは、同一平面に並ぶもの同士の繊維fが全て平行になるように配置されることが望ましい。
【0152】
またこの変形例に係る八角形ブロック5では、繊維fが横辺xと平行な八角形板片5aと繊維fが縦辺yと平行な八角形板片5aの枚数が必ずしも同数である必要はなく、横辺xと縦辺yのいずれか一方が他方よりも強軸となる構成であってもよい。
【0153】
八角形ブロック5は、正八角形状の形態に代えて、縦辺yと横辺xの長さを異ならせた形態としたり、その他の形態としてもよい。図14には、八角形ブロック5の他の変形例が示されている。
【0154】
図14(a)及び(b)に示すように、すべての角の内角が135°である八角形ブロック5であれば、縦辺yを繊維fと平行にすると、横辺xは、繊維fの向きと直角に交差する関係となる。
【0155】
図14(a)は、辺の長さが横辺x>縦辺yである場合、図14(b)は、縦辺y>横辺xである場合である。
【0156】
正八角形ブロック5の斜辺wは、縦辺y及び横辺xに対し、45°の角度(内角が135°)をなす(図2(a)参照)が、図14(c)は、縦辺yに対し60°、横辺xに対し30°をなし、かつ縦辺y<横辺xの場合を示している。
【0157】
図14(d)は、向かい合う一方の組の斜辺wが、一方の縦辺yに対して60°、横辺xに対し30°をなし、向かい合う他方の組の斜辺wが、縦辺yに対して30°、横辺xに対し60°をなすように形成した場合を示している。
【0158】
このように縦辺y及び横辺xに対してなす角度の和が90°である斜辺wを有する八角形ブロック5であれば、上記の45°や30°,60°という角度に限定されることなく、当該八角形ブロック5を適用して上記壁1を構築できることはもちろんである。
【0159】
図14(a)~(d)に例示した形態は、接着箇所となる縦辺y及び横辺xの長さが、斜辺wよりも相当に長いので、接着剤による接着で得られる壁1の高強度化を図ることができる。
【0160】
以上の各種の変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0161】
封止ブロック6,7,9,10は、上記の実施形態では、木質材料としたが、これらブロック6,7,9,10は、八角形ブロック5の木質材料よりも固い材料で形成されていれば良く、例えば、コンクリートやモルタルで形成してもよい。
【0162】
図7及び図8に示した連結金物8の八角形ブロック5への取付構造に代えて、八角形ブロック5を貫通する貫通穴を設けるようにし、この貫通穴にPC鋼棒を挿通し、当該PC鋼棒の両端を、ボルトを介して、連結金物8の辺8aに止着するようにしてもよい。
【0163】
本発明に係る木質材料製の壁構造は、既存の柱・梁架構の耐震補強のために適用してもよく、また、新設の柱・梁架構内の耐震構造としてもよい。
【符号の説明】
【0164】
1 壁
2 柱
3 梁
4 開口部分
5 八角形ブロック
5a 八角形板片
8 連結金物
8a 連結金物の辺
8b 連結金物の貫通孔
9 第1の封止ブロック
10 第2の封止ブロック
11 埋め込み部材
11a 外周ねじ条
11b 内周ねじ条
12 ボルト
S 開口
x 八角形ブロックの横辺
y 八角形ブロックの縦辺
w 八角形ブロックの斜辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14