(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134465
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044781
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】吉村 藤子
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】城井 光雄
(72)【発明者】
【氏名】今泉 和俊
(72)【発明者】
【氏名】新田 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】澤村 賢
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】多賀 大珠
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040AB06
2D040BB01
2D040FA17
(57)【要約】
【課題】情報や状況がリアルタイムに変化する中で、情報や状況を、見やすく可視化し、監視者や作業者に的確に把握させることが可能な地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法を提供する。
【解決手段】通信端末8は、地盤改良体4の造成位置A、造成高さ及び地盤改良体の外径寸法を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部及び地盤改良体の施工済み造成高さを含む施工情報を記憶する施工情報記憶部から情報を受信する受信部と、地盤改良体の外径寸法をシリンダ径で表し、施工済み造成高さをシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデル12を格納したモデル記憶部と、モデル記憶部からシリンダ造成モデルを読み出すと共に、施工済み造成高さに応じて、リアルタイムに、シリンダ造成モデルを生成するモデル生成部と、造成位置に対応付けて、シリンダ造成モデルをディスプレイに画像表示する表示処理部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良機械による地盤改良体を造成する地盤改良工事の施工状況を、通信端末のディスプレイに画像表示する地盤改良工事の可視化システムであって、
上記通信端末は、
上記地盤改良体の造成位置、該地盤改良体の造成始端位置から造成終端位置までの造成高さ及び該地盤改良体の外径寸法を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部及び地盤改良工事の進行に従って変化する上記地盤改良体の造成始端位置からの施工済み造成高さを含む、上記地盤改良機械から入力される施工情報を記憶する施工情報記憶部から情報を受信する受信部と、
該受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記地盤改良体の上記外径寸法を、シリンダ径で表し、上記施工済み造成高さを、上記造成始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデルを格納したモデル記憶部と、
該モデル記憶部から上記シリンダ造成モデルを読み出すと共に、上記受信部で受信した上記施工情報記憶部からの上記施工済み造成高さに応じて、リアルタイムに、上記地盤改良体の当該外径寸法及び当該施工済み造成高さの該シリンダ造成モデルを生成するモデル生成部と、
上記受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記造成位置に対応付けて、上記モデル生成部で生成された上記シリンダ造成モデルを上記ディスプレイに画像表示する表示処理部とを含むことを特徴とする地盤改良工事の可視化システム。
【請求項2】
前記通信端末は、撮影手段を備え、
前記表示処理部は、前記造成位置に対応付けて、前記シリンダ造成モデルを、上記撮影手段で撮影された該造成位置の画像に重ね合わせて、前記ディスプレイに画像表示することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工事の可視化システム。
【請求項3】
前記施工情報記憶部には、前記地盤改良体の造成に先立って前記造成位置に予め形成される削孔の削孔始端位置からの施工済み深度及び削孔径を含む施工情報が記憶され、
前記モデル記憶部には、前記受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記削孔径を、シリンダ径で表し、上記施工済み深度を、上記削孔始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデルが格納され、
上記モデル生成部は、上記モデル記憶部から上記スケルトンシリンダ削孔モデルを読み出すと共に、上記受信部で受信した上記施工情報記憶部からの上記施工済み深度に応じて、上記削孔径及び当該施工済み深度の該スケルトンシリンダ削孔モデルを生成し、該スケルトンシリンダ削孔モデルを前記シリンダ造成モデルに重ねて表示する施工管理モデルをリアルタイムに生成し、
前記表示処理部は、上記モデル生成部で生成された上記施工管理モデルを、上記造成位置に対応付けて、上記ディスプレイに画像表示することを特徴とする請求項1または2に記載の地盤改良工事の可視化システム。
【請求項4】
地盤改良機械による地盤改良体を造成する地盤改良工事の施工状況を、通信端末のディスプレイに画像表示する地盤改良工事の可視化方法であって、
上記地盤改良体の造成位置、該地盤改良体の造成始端位置から造成終端位置までの造成高さ及び該地盤改良体の外径寸法を含む設計情報を上記通信端末に入力し、
地盤改良工事の進行に従って変化する上記地盤改良体の上記造成始端位置からの施工済み造成高さを含む、上記地盤改良機械から入力される施工情報を上記通信端末に入力して、該通信端末により、該地盤改良体の上記外径寸法を、シリンダ径で表し、該施工済み造成高さを、該造成始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデルをリアルタイムに生成させ、
上記通信端末の上記ディスプレイに、上記造成位置に対応付けて、上記シリンダ造成モデルを画像表示させることを特徴とする地盤改良工事の可視化方法。
【請求項5】
前記通信端末は、撮影手段を備え、
上記通信端末により、前記造成位置に対応付けて、上記撮影手段で撮影された該造成位置の画像に重ね合わせて、前記シリンダ造成モデルを前記ディスプレイに画像表示させることを特徴とする請求項4に記載の地盤改良工事の可視化方法。
【請求項6】
前記通信端末に、前記地盤改良体の造成に先立って前記造成位置に予め形成される削孔の削孔始端位置からの施工済み深度及び削孔径を含む設計情報を入力し、
上記通信端末により、上記削孔径を、シリンダ径で表し、上記施工済み深度を、上記削孔始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデルを生成させると共に、該スケルトンシリンダ削孔モデルを前記シリンダ造成モデルに重ねて表示する施工管理モデルをリアルタイムに生成させ、
上記通信端末の上記ディスプレイに、上記造成位置に対応付けて、上記施工管理モデルを画像表示させることを特徴とする請求項4または5に記載の地盤改良工事の可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報や状況がリアルタイムに変化する中で、情報や状況を、見やすく可視化し、監視者や作業者に的確に把握させることが可能な地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築工事の施工状況を可視化する技術として、特許文献1~4が知られている。
【0003】
特許文献1の「土木建築工事における施工管理装置」は、土木建築工事において、作業員の負担を軽減するとともに、正確かつ適切な情報に基づいて迅速に施工管理を行うことを課題とし、施工対象となる施工面の設計形状データを記憶した設計形状データ記憶手段と、施工過程において形成した施工面の現形状データを取得する現形状データ取得手段と、設計形状データ及び現形状データとの比較に基づいて、設計形状データと現形状データとの一致度からなる施工状態管理情報を作成する施工状態管理情報作成手段と、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、施工過程における施工面と関連付くようにして、施工状態管理情報を表示させる表示制御手段とを備えるようにしている。
特許文献2の「トンネル切羽面の変位監視装置」は、トンネルの掘削工事において、作業者や監視員の感覚に頼らずに、正確かつ適切な情報に基づいて迅速に切羽面の変位を報知することを課題とし、形成した切羽面の初期形状データを取得する初期形状データ取得手段と、取得した切羽面の初期形状データを記憶する初期形状データ記憶手段と、切羽面の現形状データを取得する現形状データ取得手段と、記憶した切羽面の初期形状データと、取得した現形状データとの比較に基づいて、初期形状データと現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を作成する切羽面変位情報作成手段と、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、切羽面と関連付くようにして、切羽面変位情報を表示させる表示制御手段とを備えるようにしている。
【0004】
特許文献3の「トンネル切羽監視方法」は、トンネル切羽を常に監視してトンネル切羽の状況をリアルタイムで把握でき、トンネル切羽の肌落ちや崩落・崩壊による労働災害を抑制するトンネル切羽監視方法を提供することを課題とし、レーザー距離計等を用いた切羽挙動把握手段により、リアルタイムな計測データの変化に基づくトンネル切羽の押し出し量を監視しつつ、予め設定した前記計測データの変化にかかる管理基準値を超えたとき、グリーンレーザー等の高速レーザー照射ユニットにより前記トンネル切羽における前記管理基準値を超えた計測点周辺のマーキングを行うと同時に、ウェアラブル端末にトンネル切羽のリアルタイムな変化状況を可視化させて、常にトンネル切羽の肌落ちや崩落・崩壊を予見するための監視を行うようにしている。
【0005】
特許文献4の「地盤施工機における制御方法および地盤施工機」は、地盤中に地盤改良体を造成するための地盤施工機における制御方法であって、ロッドを前記地盤改良体の下端位置まで下降させる手順と、前記ロッドを前記地盤改良体の下端位置から、順次上昇させて所定間隔毎の目標位置に停止させる手順と、前記ロッドの目標位置での停止時に、停止指令から実際に前記ロッドが停止するまでの移動距離を前回制動距離として記憶する手順と、前記ロッドの次の目標位置での停止時に、次の目標位置から前記前回制動距離だけ手前の位置で停止指令を出力する手順とを備え、その際、地盤施工機の機外からの操作やモニターのための端末は、タブレット端末等の携帯端末、スマートグラスと呼ばれる人体装着型コンピュータ、AR(拡張現実)モニターなどが利用できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-104933号公報
【特許文献2】特開2018-104934号公報
【特許文献3】特開2019-199708号公報
【特許文献4】特開2020-084502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術は、施工状態管理情報や、切羽面変位情報、切羽の変化状況などを、ウェアラブル端末等に可視化して表示するようにしている。
【0008】
これら背景技術では、各種情報や変化の状況を可視化するといっても、監視者や作業者にとって、見やすいものであるか否かという意味では、不十分なものであった。
【0009】
とりわけ、情報や状況がリアルタイムに変化するという中で、可視化されるこれら情報や状況が、監視者等によって、見誤ることなく的確に把握されるということが重要であり、このため、見やすく可視化する方策の案出が望まれていた。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、情報や状況がリアルタイムに変化する中で、情報や状況を、見やすく可視化し、監視者や作業者に的確に把握させることが可能な地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる地盤改良工事の可視化システムは、地盤改良機械による地盤改良体を造成する地盤改良工事の施工状況を、通信端末のディスプレイに画像表示する地盤改良工事の可視化システムであって、上記通信端末は、上記地盤改良体の造成位置、該地盤改良体の造成始端位置から造成終端位置までの造成高さ及び該地盤改良体の外径寸法を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部及び地盤改良工事の進行に従って変化する上記地盤改良体の造成始端位置からの施工済み造成高さを含む、上記地盤改良機械から入力される施工情報を記憶する施工情報記憶部から情報を受信する受信部と、該受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記地盤改良体の上記外径寸法を、シリンダ径で表し、上記施工済み造成高さを、上記造成始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデルを格納したモデル記憶部と、該モデル記憶部から上記シリンダ造成モデルを読み出すと共に、上記受信部で受信した上記施工情報記憶部からの上記施工済み造成高さに応じて、リアルタイムに、上記地盤改良体の当該外径寸法及び当該施工済み造成高さの該シリンダ造成モデルを生成するモデル生成部と、上記受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記造成位置に対応付けて、上記モデル生成部で生成された上記シリンダ造成モデルを上記ディスプレイに画像表示する表示処理部とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記通信端末は、撮影手段を備え、前記表示処理部は、前記造成位置に対応付けて、前記シリンダ造成モデルを、上記撮影手段で撮影された該造成位置の画像に重ね合わせて、前記ディスプレイに画像表示することを特徴とする。
【0013】
前記施工情報記憶部には、前記地盤改良体の造成に先立って前記造成位置に予め形成される削孔の削孔始端位置からの施工済み深度及び削孔径を含む施工情報が記憶され、前記モデル記憶部には、前記受信部で受信した上記設計情報記憶部からの上記削孔径を、シリンダ径で表し、上記施工済み深度を、上記削孔始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデルが格納され、上記モデル生成部は、上記モデル記憶部から上記スケルトンシリンダ削孔モデルを読み出すと共に、上記受信部で受信した上記施工情報記憶部からの上記施工済み深度に応じて、上記削孔径及び当該施工済み深度の該スケルトンシリンダ削孔モデルを生成し、該スケルトンシリンダ削孔モデルを前記シリンダ造成モデルに重ねて表示する施工管理モデルをリアルタイムに生成し、前記表示処理部は、上記モデル生成部で生成された上記施工管理モデルを、上記造成位置に対応付けて、上記ディスプレイに画像表示することを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる地盤改良工事の可視化方法は、地盤改良機械による地盤改良体を造成する地盤改良工事の施工状況を、通信端末のディスプレイに画像表示する地盤改良工事の可視化方法であって、上記地盤改良体の造成位置、該地盤改良体の造成始端位置から造成終端位置までの造成高さ及び該地盤改良体の外径寸法を含む設計情報を上記通信端末に入力し、地盤改良工事の進行に従って変化する上記地盤改良体の上記造成始端位置からの施工済み造成高さを含む、上記地盤改良機械から入力される施工情報を上記通信端末に入力して、該通信端末により、該地盤改良体の上記外径寸法を、シリンダ径で表し、該施工済み造成高さを、該造成始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデルをリアルタイムに生成させ、上記通信端末の上記ディスプレイに、上記造成位置に対応付けて、上記シリンダ造成モデルを画像表示させることを特徴とする。
【0015】
前記通信端末は、撮影手段を備え、上記通信端末により、前記造成位置に対応付けて、上記撮影手段で撮影された該造成位置の画像に重ね合わせて、前記シリンダ造成モデルを前記ディスプレイに画像表示させることを特徴とする。
【0016】
前記通信端末に、前記地盤改良体の造成に先立って前記造成位置に予め形成される削孔の削孔始端位置からの施工済み深度及び削孔径を含む設計情報を入力し、上記通信端末により、上記削孔径を、シリンダ径で表し、上記施工済み深度を、上記削孔始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデルを生成させると共に、該スケルトンシリンダ削孔モデルを前記シリンダ造成モデルに重ねて表示する施工管理モデルをリアルタイムに生成させ、上記通信端末の上記ディスプレイに、上記造成位置に対応付けて、上記施工管理モデルを画像表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法にあっては、情報や状況がリアルタイムに変化する中で、情報や状況を、見やすく可視化し、監視者や作業者に的確に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法の好適な一実施形態が適用される土木建築工事の実施状況の例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示した土木建築工事の実施状況の例を縦断面で示した説明図である。
【
図3】
図1に示した土木建築工事の実施状況の例を平面視で示した説明図である。
【
図4】本発明に係る地盤改良工事の可視化システムの構成図である。
【
図5】
図4に示した地盤改良工事の可視化システムで生成・表示されるベクトルモデル及び危険度管理モデルの説明図である。
【
図6】
図4に示した地盤改良工事の可視化システムで生成・表示されるスケルトンシリンダ削孔モデル、シリンダ造成モデル及び施工管理モデルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1~
図3には、既設構造物1の近隣で、土木建築工事を行っている様子の一例が示されている。
【0021】
図示例は、隣接する既設構造物1の間の空所領域R(地表Sから地盤の設計深さ(地下2階の床レベルL2)に達する領域)に対して、地盤改良工事(地盤改良体造成工事とも言う。以下同じ)を施工する場合である。
【0022】
各既設構造物1の地下部分には、ボックスカルバート等により、地下道や水路、鉄道線路などの地下空間Uが存在している。
【0023】
図示例の地盤改良工事は、空所領域Rの地表Sに搬入した地盤改良機械2を使用し、地下空間Uで挟まれた空所領域Rの地盤に対し、削孔3を形成し、この削孔3の形成によって発生する原地盤の土とセメント系固化材とを混合することで、地盤中に柱状の地盤改良体4を造成するものである。
【0024】
地盤改良機械2は、地盤改良体4を造成するにあたって実施される削孔工事のための削孔機械を兼ねている。
【0025】
地盤改良工事により既設構造物1に生じ得る様々な挙動を監視作業では、既設構造物1に生じる沈下変位や隆起変位を監視するために、変位計5が用いられる。
【0026】
図示例では、変位計5は、監視員Pが監視を行うことができる地下空間U内に、既設構造物1に対して施工設計上設定した複数の計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)それぞれに配置して、設けられる。
【0027】
各変位計5は、各計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,… )それぞれに生じる変位量と変位方向とを計測するように構成される。
【0028】
本実施形態に係る地盤改良工事の可視化システムは、
図4に示すように、地盤改良工事における施工状況の情報を取得するために地盤改良機械2に備えられる各種センサと、上述した変位計5と、地盤改良工事の設計情報を予め記憶しておく設計情報記憶部6a及び地盤改良機械2の各種センサや変位計5によって得られる地盤改良工事の施工情報がリアルタイムで記憶される施工情報記憶部6bを少なくとも備えるクラウドサーバーなどのサーバー6と、画像を表示するディスプレイ7を有し、Wi-Fi通信などの通信網を介してサーバー6から情報を取得する通信端末8とを含んで構成される。地盤改良工事の可視化方法は、この可視化システムを用いて実行される。
【0029】
サーバー6の設計情報記憶部6aには、変位計5が配置される計測位置(…,Xn-1, Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)、危険度レベル管理値、削孔3の施工位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)、削孔3の施工深度、削孔径、地盤改良体4の造成位置(削孔3の施工位置と同じ)、地盤改良体4の造成高さ(「造成長」とも言う。以下同じ)、地盤改良体4の外径寸法を含む設計情報が予め記憶される。
【0030】
サーバー6の施工情報記憶部6bには、地盤改良機械2の各種センサや変位計5から入力される、変位計5で計測された既存構造物1の変位量と変位方向、地盤改良機械2の回転ロッドの下降量で検知される削孔3の施工済み深度(施工している深度であってもよい。以下同じ)、地盤改良体4の施工済み造成高さがリアルタイムで記憶される。
【0031】
施工済み深度については、施工情報記憶部6bに、「削孔」か、後述する「造成」かのフラグと、地盤改良機械2が備える作業用の回転ロッドの回転数を記憶しておくようにし、これらデータを、後述の受信部8aで受信する通信端末8の演算機能で、初期状態での回転ロッドの回転数から、まず施工開始深度を求めておき、その後、リアルタイムに受信する回転ロッドの回転数の、初期状態での回転数に対する差分によって、施工済み深度を算出するようにしてもよい。これは、後述する造成高さを算出する場合も同様である。
【0032】
通信端末8は、本実施形態では、透過型ウェアラブル端末が用いられる。透過型ウェアラブル端末は周知であって、透過型のグラスにディスプレイ7が組み込まれ、グラスを通して目視される領域に、ディスプレイ7に表示される画像が重ね合わされて、監視者Pに視認されるように構成される。
【0033】
通信端末8は、ディスプレイ7のほか、
図4に示すように、少なくとも、受信部8a、モデル演算部8b、表示処理部8c、表示指示部8dを含んで構成される。
【0034】
受信部8aは、サーバー6から、設計情報記憶部6a及び施工情報記憶部6bから上述した各種情報を受信するように構成される。
【0035】
モデル演算部8bは、モデル記憶部8eと、モデル生成部8fとから構成される。モデル記憶部8eには、
図5及び
図6に示すように、3次元のベクトルモデル9、当該ベクトルモデル9に付与される表示色、3次元のスケルトンシリンダモデル10、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデル11、並びに、3次元のシリンダ造成モデル12が予め記憶されている。
【0036】
モデル生成部8fは、モデル記憶部8eから各種モデルを読み出すと共に、受信部8aで受信した設計情報記憶部6a及び施工情報記憶部6bからの情報に応じて、ベクトルモデル9、色つきベクトルモデル9、危険度管理モデル13、スケルトンシリンダ削孔モデル11、シリンダ造成モデル12、並びに、施工管理モデル14を、いずれも3次元形態で生成する。
【0037】
表示処理部8cは、モデル生成部8fで生成されたベクトルモデル9、色つきベクトルモデル9、危険度管理モデル13、スケルトンシリンダ削孔モデル11、シリンダ造成モデル12、並びに、施工管理モデル14を、管理者Pに操作される表示指示部8dの指示に応じて、ディスプレイ7に画像表示する。
【0038】
通信端末8のディスプレイ7に表示される画像は、計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,… )や削孔の施工位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)、地盤改良体の造成位置に対応付けて、当該ディスプレイ7に表示される。
【0039】
表示画像が計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)等に「対応付けて」ディスプレイ7に表示されるとは、監視者Pの位置から見た計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)等に、モデル生成部8fで生成した各種のモデルの画像が視認されるようにする、という意味である。
【0040】
対応付けのためには、監視者Pの位置と設計情報である計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)等の位置的相関をとるようにすれば良く、施工現場に設置された、位置情報を含むマーカーを、監視者Pが撮影するなどして取得した位置情報や、GNSSを用いた位置情報から位置解析を行うようにすれば良い。
【0041】
≪監視作業について≫
既存構造物1の挙動を監視する作業について詳述する。通信端末8は、この監視作業については、受信部8aが、サーバー6にアクセスして、既設構造物1に生じる変位を計測する計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部6a及び変位計5から入力される、変位計5で計測された計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)に生じる変位量及び変位方向を含む施工情報を記憶する施工情報記憶部6bから情報を受信するように構成される。
【0042】
監視作業について、通信端末8のモデル記憶部8eは、
図5に示すように、変位量を、軸部9aの長さの変化で表し、変位方向を、軸部9aの端部の尖頭部9bの向きで表す、3次元のベクトルモデル9を格納している。このベクトルモデル9は、不透明な像として形成され、表示される。
【0043】
通信端末8のモデル生成部8fは、モデル記憶部8eからベクトルモデル9を読み出す。また、モデル生成部8fは、受信部8aで受信した施工情報記憶部6bからの変位量及び変位方向に応じて、ベクトルモデル9をリアルタイムに生成する。
【0044】
すなわち、変位計5で計測された変位量を軸部9aの長さとし、変位方向に尖頭部9bの向きを合わせたベクトルモデル9をリアルタイムに生成するように構成される。
【0045】
図5に示したベクトルモデル9は、いずれも尖頭部9bの向きが上向きであって、変位方向が上方向、すなわち隆起方向であることを示している。
【0046】
変位方向が沈下方向である場合には、変位方向が下方向であって、尖頭部9bの向きが下向きとされる。
【0047】
また、軸部9aの長さが左寄りのベクトルモデル9では短くて、変位量が小さいことを示しており、右側へ向かえば向かうほど、ベクトルモデル9の軸部9aの長さが長くて、変位量が大きいことを示している。
【0048】
表示処理部8cは、表示指示部8dからの指示に応じて、設計情報記憶部6aから受信部8aが受信した計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1, Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,… )に対応付けて、モデル生成部8fで生成されたベクトルモデル9をリアルタイムでディスプレイ7に画像表示するように構成される。
【0049】
これにより、
図1に示すように、監視位置にいる監視者Pは、通信端末8であるウェアラブル端末のディスプレイ7を通じ、グラスを通して目視される計測位置(…, X
n-1,X
n,X
n+1,X
n+2,…,Y
n-1,Y
n,Y
n+1,Y
n+2,…,Z
n-1,Z
n,Z
n+1,Z
n+2, …)と、当該計測位置(…,X
n-1,X
n,X
n+1,X
n+2,…,Y
n-1,Y
n,Y
n+1,Y
n+2,…,Z
n-1,Z
n,Z
n+1,Z
n+2,…)に対応付けて表示されるベクトルモデル9とを同時に視認することができる。
【0050】
これにより、監視者Pは、既存構造物1の沈下や隆起の挙動について、当該挙動が生じている位置と変位量及び変位方向を的確に把握することができる。
【0051】
ベクトルモデル9は、監視者Pが表示指示部8dを操作することにより、見やすいように任意に、拡大したり縮小したりして表示することができる。
【0052】
監視作業では、既存構造物1に生じる沈下変位や隆起変位がリアルタイムに変化する中で、当該変位を、見やすく可視化することができ、監視者Pに的確に把握させることができる。
【0053】
ベクトルモデル9の軸部9aの長さと尖頭部9bの向きによって既存構造物1の挙動を十分に監視者Pに視認させることが可能であるが、少なくとも変位量については、さらに、見て確認しやすくするために、危険度レベル管理値を用いることが好ましい。
【0054】
変位量に関する危険度レベル管理値は、設計段階で複数設定され、設計情報記憶部6aに予め記憶される。
【0055】
これらの危険度管理値は、設計情報として、設計情報記憶部6aから通信端末8の受信部8aに受信される。
【0056】
危険度レベル管理値とは、
図5中、ベクトルモデル9の軸部9aの長さ方向に、変位量がゼロのゼロ基準、変位量が小さい範囲である第1管理値、変位量が比較的大きい範囲である第2管理値、変位量の安全管理上の限界を示す管理限界値として示されているように、変位量の大きさを段階的にレベル分けする値を言う。
【0057】
モデル記憶部8eには、危険度レベル管理値それぞれに対して、異なる表示色が予め設定される。
【0058】
モデル生成部8fは、受信部8aで受信した設計情報記憶部6aからの危険度レベル管理値及び施工情報記憶部6bからの変位量に応じて、モデル記憶部8eから表示色を読み出す。
【0059】
そして、モデル生成部8fは、変位量に対応する危険度レベル管理値の表示色でベクトルモデル9をリアルタイムに生成する。
【0060】
すなわち、モデル生成部8fは、危険度レベル管理値に対する変位量を判定し、当該危険度レベル管理値に対応する表示色をモデル記憶部8eから読み出して、色つきのベクトルモデル9を生成する。
【0061】
例えば
図5に示すように、第1管理値までの変位量については、「青色(図中、「・」で示す)」表示で、第2管理値までの変位量については、「緑色(図中、「○」で示す)」表示で、管理限界値までの変位量については、「黄色(図中、「△」で示す)」表示で、ベクトルモデル9を生成し、管理限界値を超える変位量については、「赤色(図中、「×」で示す)」表示で、ベクトルモデル9を生成するようになっている。
【0062】
このようにすることで、監視者Pに、ベクトルモデル9の色分けで区別して、既存構造物1に生じている変位量を視認させることができ、当該変位量を、見やすく可視化することができて、監視者Pに的確に把握させることができる。
【0063】
さらに、モデル生成部8fは、変位量が危険度レベル管理値の大きい危険側に移行すると、ベクトルモデル9を、移行した危険度レベル管理値の表示色でディスプレイ7に所定時間表示する指示を表示処理部8cに出力するように構成し、注意喚起することが好ましい。
【0064】
例えば、
図5中、第2管理値を超えて、緑色のベクトルモデル9が黄色のベクトルモデル9に変わったときには、変位量が小さくなって第2管理値未満となっても、モデル生成部8fは、所定時間、黄色のベクトルモデル9をディスプレイ7に表示させる指示を表示処理部8cに出力する。
【0065】
第1管理値を超えて、青色のベクトルモデル9が緑色のベクトルモデル9に変わったときも、管理限界値を超えて、黄色のベクトルモデル9が赤色のベクトルモデル9に変わったときも同様である。
【0066】
これにより、変位量が大きくなる傾向にあることを監視者Pに把握させることができ、監視者Pが、既設構造物1に生じている変位状況について誤認してしまうことを抑制できる。
【0067】
さらに、監視者Pに、危険度レベル管理値を分かりやすく視認させるために、ベクトルモデル9に対して危険度レベル管理値を重ねて表示することが好ましい。
【0068】
この場合、モデル記憶部8eには、
図5に示すように、危険度レベル管理値の管理限界値を上限として、第1管理値及び第2管理値などの複数の危険度レベル管理値を段階的に表す3次元のスケルトンシリンダモデル10が格納される。
【0069】
3次元のスケルトンシリンダモデル10は、図示したように、外形輪郭線で透明なシリンダを表示すると共に、当該シリンダの高さ方向に変位量をとって、変位量がゼロ基準、第1管理値、第2管理値及び管理限界値である位置に、スケルトンシリンダモデル10の周方向に沿って目盛り線10aを段階的に表示することで構成される。
【0070】
そして、モデル生成部8fは、モデル記憶部8eからスケルトンシリンダモデル10を読み出し、当該スケルトンシリンダモデル10に、上記の色つきのベクトルモデル9(表示色が付されない単なるベクトルモデル9であっても良い)を重ねて表示して危険度管理モデル13を生成する。
【0071】
危険度管理モデル13は、スケルトンシリンダモデル10にベクトルモデル9を重ねて表示するもので、例えば、スケルトンシリンダモデル10の透明なシリンダの内部に、不透明なベクトルモデル9を表示することで構成される。
【0072】
この危険度管理モデル13も、受信部8aがリアルタイムで受信する施工情報記憶部6bからの変位量及び変位方向に応じてリアルタイムに生成される。
【0073】
表示処理部8cは、モデル生成部8fで生成された当該危険度管理モデル13を、
図1に示すように、計測位置(…,X
n-1,X
n,X
n+1,X
n+2,…,Y
n-1,Y
n,Y
n+1,Y
n+2,…,Z
n-1,Z
n,Z
n+1,Z
n+2,…)に対応付けて、ディスプレイ7に画像表示するように構成される。
【0074】
これにより、監視者Pは、スケルトンシリンダモデル10に付した目盛り線10aと、表示色が付されいないベクトルモデル9もしくは色つきのベクトル9とを見比べることにより、既存構造物1に生じている変位量を、危険度レベル管理値に対する相関をもって把握することができて、監視業務を、過度の負担なくかつ適正・的確に遂行することができる。
【0075】
上述したベクトルモデル9に代えて、変位計5で計測された変位量の数値を表示するだけでもよい。また、この表示は、管理限界値を超えた場合を対象とし、併せて、アラーム音を発するようにしてもよい。
【0076】
≪削孔工事について≫
図1~
図3に示したように、近隣の既存構造物1に変位が生じる場合がある、空所領域Rでの地盤改良工事における削孔工事の可視化について詳述する。
【0077】
通信端末8は、この削孔工事については、受信部8aが、サーバー6にアクセスして、削孔3の施工位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)、削孔始端位置から削孔終端位置までの施工深度及び削孔径を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部6a及び削孔工事の進行に従って変化する削孔3の削孔始端位置からの施工済み深度を含む、地盤改良機械2から入力される施工情報を記憶する施工情報記憶部6bから情報を受信するように構成される。
【0078】
削孔始端位置は通常、地表S側であり、削孔終端位置は、地盤内奥の深部となり、削孔始端位置から削孔終端位置までの深さが設計上の施工深度(施工長もしくは削孔長とも言う。以下同じ)である。
【0079】
また、施工済み深度は、地盤改良機械2により、削孔スクリューの削孔始端位置からの到達深さによって検知される。
【0080】
削孔工事について、通信端末8のモデル記憶部8eは、
図6(a)及び(b)に示すように、設計情報である削孔径(地盤改良工事にかかる造成の径であってもよい。以下同じ)をシリンダの径(直径)で表し、施工情報である施工済み深度を、削孔始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のスケルトンシリンダ削孔モデル11を格納している。
【0081】
3次元のスケルトンシリンダ削孔モデル11は、縦横の格子11aを付した外形輪郭線で透明なシリンダを表示することで構成される。
【0082】
通信端末8のモデル生成部8fは、モデル記憶部8eからスケルトンシリンダ削孔モデル11を読み出す。
【0083】
また、モデル生成部8fは、受信部8aで受信した施工情報記憶部6bからの施工済み深度に応じて、スケルトンシリンダ削孔モデル11をリアルタイムに生成する。
【0084】
図6(a)及び(b)に示した変化で理解されるように、このスケルトンシリンダ削孔モデル11は、上方位置の削孔始端位置から削孔終端位置となる下方へ向けて、リアルタイムで施工済み深度まで表示される。
【0085】
施工が完了した削孔3は、削孔始端位置から削孔終端位置までの深さである施工深度のスケルトンシリンダ削孔モデル11によって表示される。
【0086】
図示例は、設計上の削孔3の施工深度が、地表Sから地下2階の床レベルL2までの場合を示している。
【0087】
表示処理部8cは、表示指示部8dからの指示に応じて、設計情報記憶部2aから受信部8aが受信した削孔位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)に対応付けて、モデル生成部8fで生成されたスケルトンシリンダ削孔モデル11をリアルタイムでディスプレイ7に画像表示するように構成される。
【0088】
これにより、
図1に示すように、監視位置にいる監視者Pは、通信端末8であるウェアラブル端末のディスプレイ7を通じ、グラスを通して目視される地下空間Uの壁面UW等に、当該壁面UW等よりも内奥の削孔位置(…,A
n-1,A
n,A
n+1,A
n+2,…)に対応付けて、施工中の削孔3もしくは施工が完了した削孔3を、スケルトンシリンダ削孔モデル11によって視認することができる。
【0089】
すなわち、スケルトンシリンダ削孔モデル11によって削孔3をリアルタイムにディスプレイ7に表示させることにより、削孔3の施工状況を可視化することができ、これにより、監視者Pに、削孔3の施工状態を的確に把握させることができる。
【0090】
スケルトンシリンダ削孔モデル11は、実物大で表示されるが、監視者Pが表示指示部8dを操作することにより、見やすいように任意に、実物大に拡大したり、縮小したりして表示できるようにしてもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施形態にあっては、削孔工事について、工事作業の進行に従って削孔状況がリアルタイムに変化する中で、施工済み深度などの施工情報に基づいて生成されるスケルトンシリンダ削孔モデル11を通信端末8のディスプレイ7に表示させることにより、削孔状況を見やすく可視化することができて、監視者Pに的確に把握させることができる。
【0092】
≪地盤改良工事(地盤改良体造成工事)について≫
次に、本実施形態に係る地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法について説明する。
図1~
図3に示したように、近隣の既存構造物1に変位が生じる場合がある、空所領域Rでの地盤改良工事を例にとって詳述する。
【0093】
本実施形態に係る地盤改良工事の可視化システムでは、通信端末8は、受信部8aが、サーバー6にアクセスして、地盤改良体4の造成位置(削孔位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)と同じ)、地盤改良体4の造成始端位置から造成終端位置までの造成高さ及び地盤改良体4の外径寸法を含む設計情報を記憶する設計情報記憶部6a及び地盤改良工事の進行に従って変化する地盤改良体4の造成始端位置からの施工済み造成高さを含む、地盤改良機械2から入力される施工情報を記憶する施工情報記憶部6bから情報を受信するように構成される。
【0094】
地盤改良体4の造成位置は、設計上、削孔3の施工位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)に一致する。造成始端位置は通常、削孔3の削孔終端位置であり、造成終端位置は、造成始端位置よりも地表Sに近接する位置となり、造成始端位置から造成終端位置までの高さが設計上の造成高さである。
【0095】
また、施工済み造成高さは、地盤改良機械2により、原地盤の土とセメント系固化材を撹拌混合する撹拌スクリューの造成始端位置からの到達高さによって検知される。
【0096】
本実施形態に係る地盤改良工事の可視化システムでは、通信端末8のモデル記憶部8eは、
図6(d)及び(e)に示すように、設計情報である地盤改良体4の外径寸法をシリンダの径(直径)で表し、施工情報である施工済み造成高さを、造成始端位置からのシリンダの長さで表す、3次元のシリンダ造成モデル12を格納している。3次元のシリンダ造成モデル12は、不透明なシリンダ体で形成され、表示される。
【0097】
通信端末8のモデル生成部8fは、モデル記憶部8eからシリンダ造成モデル12を読み出す。また、モデル生成部8fは、受信部8aで受信した施工情報記憶部6bからの施工済み造成高さに応じて、シリンダ造成モデル12をリアルタイムに生成する。
【0098】
上述したように、施工済み造成高さについても、施工情報記憶部6bに、「削孔」か、後述する「造成」かのフラグと、地盤改良機械2が備える作業用の回転ロッドの回転数を記憶しておくようにし、通信端末8の演算機能により、受信部8aでリアルタイムに受信する回転ロッドの回転数の、初期状態での回転数に対する差分によって、施工済み造成高さを算出してもよい。
【0099】
図6(d)及び(e)に示した変化で理解されるように、このシリンダ造成モデル12は、下方位置の造成始端位置から造成終端位置となる上方へ向けて、リアルタイムで施工済み造成高さまで表示される。
【0100】
施工が完了した地盤改良体4は、造成始端位置から造成終端位置までの高さ(施工済み造成高さ=造成高さ)のシリンダ造成モデル12によって表示される。
【0101】
図示例は、設計上の地盤改良体4の造成高さが、地下2階の床レベルL2から地下1階の床レベルL1までの場合を示している。
【0102】
本実施形態では、モデル生成部8fは、シリンダ造成モデル12を、上述した削孔工事における3次元のスケルトンシリンダ削孔モデル11に重ねて表示することで、施工管理モデル14を生成するように構成される。
【0103】
施工管理モデル14は、スケルトンシリンダ削孔モデル11に、シリンダ造成モデル12を重ねて表示するもので、例えば、スケルトンシリンダ削孔モデル11の透明なシリンダの内部に、不透明なシリンダ造成モデル12を表示することで構成される。
【0104】
本実施形態では、
図6(c)に示したように、削孔工事から地盤改良体4の造成工事に移る際に、地盤改良機械2から施工情報記憶部6bに記憶される地盤改良体4の造成開始の信号が受信部8aに入力されると、モデル生成部8fは、スケルトンシリンダ削孔モデル11の高さを、設計上の造成始端位置(削孔終端位置)からの地盤改良体4の造成高さに切り替えるようになっている。
【0105】
この施工管理モデル14であっても、モデル生成部8fは、受信部8aが受信する施工情報記憶部6bからの施工済み造成高さに応じてリアルタイムに生成する。
【0106】
表示処理部8cは、表示指示部8dからの指示に応じて、設計情報記憶部8aから受信部8aが受信した造成位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)に対応付けて、モデル生成部8fで生成された施工管理モデル14をリアルタイムでディスプレイ7に画像表示するように構成される。
【0107】
もちろん、表示処理部8cは、シンプルに、シリンダ造成モデル12をディスプレイに画像表示するようにしても良い。
【0108】
これにより、
図1に示すように、監視位置にいる監視者Pは、通信端末8であるウェアラブル端末のディスプレイ7を通じ、グラスを通して目視される地下空間Uの壁面UW等に、当該壁面UW等よりも内奥の造成位置(…,A
n-1,A
n,A
n+1,A
n+2,…)に対応付けて、施工中の地盤改良体4もしくは施工が完了した地盤改良体4を、施工管理モデル14あるいはシリンダ造成モデル12によって視認することができる。
【0109】
すなわち、施工管理モデル14あるいはシリンダ造成モデル12によって地盤改良体4をリアルタイムにディスプレイ7に表示させることにより、地盤改良体4の施工状況を可視化することができ、これにより、監視者Pに、地盤改良体4の施工状態を的確に把握させることができる。
【0110】
施工管理モデル14の画像表示によれば、削孔3を表示するスケルトンシリンダ削孔モデル11を対比対象として、地盤改良体4の造成状況を判断することができる。
【0111】
シリンダ造成モデル12の場合であってももちろん、地盤改良体4の造成状況を判断することができる。
【0112】
シリンダ造成モデル12及び施工管理モデル14のいずれも、実物大で表示されるが、監視者Pが表示指示部8dを操作することにより、見やすいように任意に、実物大に拡大したり、縮小したりして表示できるようにしてもよい。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る地盤改良工事の可視化システム及び可視化方法にあっては、工事作業の進行に従って事犯改良体4の造成状況がリアルタイムに変化する中で、施工済み造成高さなどの施工情報に基づいて生成されるシリンダ造成モデル12あるいは施工管理モデル14を通信端末8のディスプレイ7に表示させることにより、地盤改良体4の造成状況を見やすく可視化することができて、監視者Pに的確に把握させることができる。
【0114】
以上の説明では、通信端末8が透過型ウェアラブル端末である場合について説明したが、通信端末8としては、撮影装置を備えたディスプレイ付きのタブレット型などの通信端末8xを用いるようにしても良い。
【0115】
この場合には、撮影装置で計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)や削孔位置(…,An-1,An,An+1,An+2,…)、造成位置の画像を動画などで撮影するようにし、表示処理部8cにより、当該計測位置(…,Xn-1,Xn,Xn+1,Xn+2,…,Yn-1,Yn,Yn+1,Yn+2,…,Zn-1,Zn,Zn+1,Zn+2,…)等に対応付けて、撮影を行っている画像に重ね合わせて、モデル生成部8fで生成される上記のベクトルモデル9、色つきベクトルモデル9、危険度管理モデル13、スケルトンシリンダ削孔モデル11、シリンダ造成モデル12、並びに、施工管理モデル14を、ディスプレイ7に画像表示するように構成すればよい。
【0116】
このようにすれば、撮影装置を備えたディスプレイ付きのタブレット型などの通信端末8xであっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0117】
2 地盤改良機械
3 削孔
4 地盤改良体
6a 設計情報記憶部
6b 施工情報記憶部
7 ディスプレイ
8 通信端末
8a 受信部
8c 表示処理部
8e モデル記憶部
8f モデル生成部
8x タブレット型などの通信端末
11 3次元のスケルトンシリンダ削孔モデル
12 3次元のシリンダ造成モデル
14 施工管理モデル
A 地盤改良体の造成位置