(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134478
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】傾斜状態表示装置および施工支援システム
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20240926BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E02F3/40 B
E02F9/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044799
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】519395994
【氏名又は名称】アスカホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】井戸 真司
(72)【発明者】
【氏名】小谷 博志
【テーマコード(参考)】
2D012
【Fターム(参考)】
2D012GB00
(57)【要約】
【課題】建設機械のアタッチメントに取り付けた状態で、アタッチメントに対する突出量を少なくするとともに、アタッチメントの傾斜状態を表示させる設定を容易に行うことができる傾斜状態表示装置を提供する。
【解決手段】初期設定姿勢PA1における基準位置を表示する振れ止めドラム30と、振れ止めドラム30に対して回動可能であるとともに、基準位置に対するアタッチメント350の傾斜状態を表示する振り子ドラム40と、を備え、振れ止めドラム30および振り子ドラム40は、それぞれ有底の円筒状部材で構成されており、振り子ドラム40は、振り子ドラム40の回動にともなって移動する移動部48を有し、振れ止めドラム30は、移動部48に当接することにより、振り子ドラム40の回動範囲を所定範囲内に規制する規制部38を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のアタッチメントに取り付けられ、アタッチメントの任意の初期設定姿勢に対する、アタッチメントの傾斜状態を表示する傾斜状態表示装置であって、
アタッチメントに取り付けられる支持部と、
前記支持部に支持されるとともに、前記初期設定姿勢における基準位置を表示する振れ止めドラムと、
前記振れ止めドラムに対して回動可能であるとともに、前記基準位置に対するアタッチメントの傾斜状態を表示する振り子ドラムと、
を備え、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムは、それぞれ一端に底部を有し、他端に開放部を有する有底の円筒状部材で構成されているとともに、相互に開放部を対向させて配置されており、
前記振り子ドラムは、前記振れ止めドラムに向けて突出するように設けられるとともに、前記振り子ドラムの回動にともなって移動する移動部を有し、
前記振れ止めドラムは、前記移動部に当接することにより、前記振り子ドラムの回動範囲を所定範囲内に規制する規制部を有する、
傾斜状態表示装置。
【請求項2】
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを同軸上で回動可能に支持する軸部を有し、
前記振り子ドラムは、前記軸部よりも下方に錘部が設けられ、前記軸部よりも上方に前記移動部が設けられている、
請求項1に記載の傾斜状態表示装置。
【請求項3】
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを構成する前記円筒状部材の側面部と略同径の側面部を有するダミードラムをさらに備え、
前記ダミードラムは、前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムと略同軸上であって、かつ、前記支持部の一部を覆うように前記支持部に対して着脱可能であり、
前記振れ止めドラムは、前記初期設定姿勢における基準位置を識別するための基準識別部を有し、
前記振り子ドラムは、前記基準位置に対するアタッチメントの傾斜状態を識別するための回動位置識別部を有し、
前記ダミードラムは、前記初期設定姿勢における基準位置を識別するための第2基準識別部を有し、
前記基準識別部、前記回動位置識別部、および前記第2基準識別部は、略同一のデザイン、マーク及びロゴから選択される少なくとも1つの視覚的特徴を有する、
請求項1に記載の傾斜状態表示装置。
【請求項4】
前記支持部は、
第1端部から第2端部に向けて軸方向に延びる第1支持部と、
前記第1支持部の前記第1端部と前記第2端部の間に取り付けられるとともに、前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを支持する第2支持部と、を有し、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムは、前記第2支持部に支持されており、
前記第1支持部は、アタッチメントの下端部から延びる仮想の鉛直線と、前記第1支持部の軸方向とが一致するように、アタッチメントの上部に取り付けられ、
さらに、測量装置から出射される光波を再帰反射させる反射部が、前記第1支持部の前記第2端部に取り付けられる、
請求項1に記載の傾斜状態表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の傾斜状態表示装置と、
光波を出射させ、前記傾斜状態表示装置に設けられた反射部で反射した光波を受光することにより測量を行う測量装置と、
前記測量装置から送信される測量結果に基づいて、建設機械のアタッチメントの下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する携帯情報端末と、を備えた、
施工支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のアタッチメントに取り付けられ、アタッチメントの任意の初期設定姿勢に対する、アタッチメントの傾斜状態を表示する傾斜状態表示装置、および施工支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、建設機械のショベル角度を初期設定角度に是正操作するためのショベル角度指示器をすでに提案している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のショベル角度指示器は、基準位置を表示可能とした基準部と、基準部に対して回動するように設けられ、回動位置を表示可能とした回動部と、基準部の基準位置に対する回動部の回動を規制する振止部とから構成され、回動部の回動位置と基準部の基準位置とがオペレータから目視できるように建設機械のバケットに取り付けられる。オペレータは、回動部の回動位置と基準部の基準位置とを一致させるように建設機械(バケット)を操作することで、法面勾配等を所定の角度に均すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のショベル角度指示器は、3本の金属製ドラムで構成された基準部、回動部および振止部を有している。これらの両側には金属製の枠フレームも設けられている。このため、特許文献1のショベル角度指示器は、ショベル角度指示器をバケットに取り付けた状態では左右方向の寸法が大きくなり、取り付ける位置によってはバケットの外側または内側に突出する突出量が大きくなっていた。
【0006】
また、特許文献1のショベル角度指示器によってバケットの傾斜状態を表示させるためには、ショベル角度指示器をバケットに取り付けた後、基準部、回動部および振止部の位置をそれぞれ調整する必要があり、ショベル角度指示器の設定に手数を要していた。
【0007】
さらに、特許文献1のショベル角度指示器は、重量が重いため、ショベル角度指示器をバケットに着脱する際などの操作性にも改善の余地があった。
【0008】
また、ショベル角度指示器の回動部は、バケットの傾斜角度に関わらず鉛直方向に対して常に同じ姿勢を保って安定することが好ましい。このため特許文献1のショベル角度指示器では、回動部の重心位置を回動中心に対してできるだけ下方に偏心させるように回動部の下部に錘と規制ピンが取り付けられている。このように、回動部の重心位置を回動中心に対してできるだけ下方に偏心させることで、回動部の姿勢を安定させやすくなると考えられてきた。
【0009】
しかしながら、施工中はバケットの操作による揺れや、地面からバケットに伝わる振動などがあるため、回動部は常時静止しているのではなく頻繁に揺れが生じている。また、回動部の回動中心から重心位置までの距離を大きくすると、回動部に揺れが生じた場合には、回動部の揺れの周期が短くなる傾向がある。このため、オペレータは短い周期で頻繁に揺れる回動部を見ながらショベルを操作する必要があり、ショベルの操作を長時間行う際には疲労を感じる場合があった。
【0010】
また近年は、建設現場にICT(Information and Communication Technology(情報通信技術))を導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みが進められている(i-Construction)。このため、ICT技術を搭載したICT建機の開発や普及も進められている。その一方で、ICTを活用したマシンガイダンスシステムやマシンコントロールシステムは、初期導入コストが高額になるという課題もある。そのため、既存の測量装置と連携できる比較的簡易なICT施工支援システムが求められていた。
【0011】
本発明の第1の目的は、建設機械のアタッチメントに取り付けた状態で、アタッチメントに対する突出量を少なくするとともに、アタッチメントの傾斜状態を表示させる設定を容易に行うことができ、さらに軽量化によりアタッチメントに着脱する際などの操作性を向上させた傾斜状態表示装置を提供することであり、
本発明の第2の目的は、傾斜状態表示装置の揺れを見ながら建設機械を操作することによる疲労感を抑制できる傾斜状態表示装置を提供することであり、
本発明の第3の目的は、比較的簡易なICT施工を支援することができる傾斜状態表示装置および施工支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の傾斜状態表示装置は、建設機械のアタッチメントに取り付けられ、アタッチメントの任意の初期設定姿勢に対する、アタッチメントの傾斜状態を表示する傾斜状態表示装置であって、
アタッチメントに取り付けられる支持部と、
前記支持部に支持されるとともに、前記初期設定姿勢における基準位置を表示する振れ止めドラムと、
前記振れ止めドラムに対して回動可能であるとともに、前記基準位置に対するアタッチメントの傾斜状態を表示する振り子ドラムと、
を備え、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムは、それぞれ一端に底部を有し、他端に開放部を有する有底の円筒状部材で構成されているとともに、相互に開放部を対向させて配置されており、
前記振り子ドラムは、前記振れ止めドラムに向けて突出するように設けられるとともに、前記振り子ドラムの回動にともなって移動する移動部を有し、
前記振れ止めドラムは、前記移動部に当接することにより、前記振り子ドラムの回動範囲を所定範囲内に規制する規制部を有する。
【0013】
本発明の施工支援システムは、
本発明の傾斜状態表示装置と、
光波を出射させ、前記傾斜状態表示装置に設けられた反射部で反射した光波を受光することにより測量を行う測量装置と、
前記測量装置から送信される測量結果に基づいて、建設機械のアタッチメントの下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する携帯情報端末と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の傾斜状態表示装置によれば、建設機械のアタッチメントに取り付けた状態で、アタッチメントに対する突出量を少なくするとともに、アタッチメントの傾斜状態を表示させる設定を容易に行うことができ、さらに軽量化によりアタッチメントに着脱する際などの操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の施工支援システムによれば、傾斜状態表示装置を用いたシステムによって比較的簡易なICT施工を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る傾斜状態表示装置の正面図である。
【
図3】
図3は、傾斜状態表示装置のダミードラムを取り付ける状態を示す正面図である。
【
図4】
図4は、傾斜状態表示装置のダミードラムを取り付ける状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、ダミードラムを取り付けた傾斜状態表示装置の正面図である。
【
図7】
図7は、傾斜状態表示装置の内部構造を示す一部断面図である。
【
図8】
図8は、振れ止めドラムに対する振り子ドラムの回動範囲を示す側面図である。
【
図9】
図9は、傾斜状態表示装置をアタッチメント(法面バケット)に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図10】
図10は、傾斜状態表示装置をアタッチメント(法面バケット)に取り付けた状態を示す正面図である。
【
図11】
図11は、傾斜状態表示装置を用いて作業を行う状態を示す側面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態2に係る傾斜状態表示装置の支持部に反射部を取り付ける状態を示す正面図である。
【
図13】
図13は、反射部を取り付けた傾斜状態表示装置をアタッチメント(バケット)に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態2に係る傾斜状態表示装置を用いた施工支援システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態にかかる傾斜状態表示装置は、
建設機械のアタッチメントに取り付けられ、アタッチメントの任意の初期設定姿勢に対する、アタッチメントの傾斜状態を表示する傾斜状態表示装置であって、
アタッチメントに取り付けられる支持部と、
前記支持部に支持されるとともに、前記初期設定姿勢における基準位置を表示する振れ止めドラムと、
前記振れ止めドラムに対して回動可能であるとともに、前記基準位置に対するアタッチメントの傾斜状態を表示する振り子ドラムと、
を備え、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムは、それぞれ一端に底部を有し、他端に開放部を有する有底の円筒状部材で構成されているとともに、相互に開放部を対向させて配置されており、
前記振り子ドラムは、前記振れ止めドラムに向けて突出するように設けられるとともに、前記振り子ドラムの回動にともなって移動する移動部を有し、
前記振れ止めドラムは、前記移動部に当接することにより、前記振り子ドラムの回動範囲を所定範囲内に規制する規制部を有する(第1の構成)。
【0018】
上記構成によれば、振れ止めドラムおよび振り子ドラムは、それぞれ一端に底部を有し、他端に開放部を有する有底の円筒状部材で構成されているとともに、相互に開放部を対向させて配置されており、
振り子ドラムは、振れ止めドラムに向けて突出するように設けられるとともに、振り子ドラムの回動にともなって移動する移動部を有し、
振れ止めドラムは、移動部に当接することにより、振り子ドラムの回動範囲を所定範囲内に規制する規制部を有している。
このため、振れ止めドラムおよび振り子ドラムの2本の円筒状部材で構成された傾斜状態表示装置により、従来の3本の円筒によって構成されたショベル角度指示器と同様の機能を発揮することができる。
これにより、建設機械のアタッチメントに取り付けた状態で、アタッチメントに対する突出量を少なくすることができるとともに、アタッチメントの傾斜状態を表示させる設定を容易に行うことができる。
また、傾斜状態表示装置を軽量化することができるため、アタッチメントに着脱する際などの操作性を向上させることができる。
【0019】
上記第1の構成において、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを同軸上で回動可能に支持する軸部を有し、
前記振り子ドラムは、前記軸部よりも下方に錘部が設けられ、前記軸部よりも上方に前記移動部が設けられてもよい(第2の構成)。
【0020】
上記構成によれば、振り子ドラムは、軸部よりも下方に錘部が設けられ、軸部よりも上方に移動部が設けられている。
このため、軸部の下方に錘部と移動部の両方を設けた場合と比較して、振り子ドラムの回動中心である軸部から重心位置までの距離を小さくすることができる。これにより、振り子ドラムに揺れが生じた場合には、振り子ドラムの揺れの振幅が大きくなる傾向はあるものの、振り子ドラムの揺れの周期を長くすることができる。
このため建設機械のオペレータは、従来よりも長い周期で揺れる振り子ドラムを見ながら建設機械(アタッチメント)を操作することとなり、短い周期で揺れる振り子ドラムを見ながら建設機械(アタッチメント)の操作を行う場合よりも疲労感を抑制することができる。
また、振り子ドラムが長い周期で揺れている場合、オペレータは揺れの中心を見極めやすくなる。このため、振り子ドラムが停止していなくても、振れ止めドラムに対する振り子ドラムの回動状態を把握しやすくなり、アタッチメントの傾斜状態を容易に把握することができる。
【0021】
上記第1または第2の構成において、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを構成する前記円筒状部材の側面部と略同径の側面部を有するダミードラムをさらに備え、
前記ダミードラムは、前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムと略同軸上であって、かつ、前記支持部の一部を覆うように前記支持部に対して着脱可能であり、
前記振れ止めドラムは、前記初期設定姿勢における基準位置を識別するための基準識別部を有し、
前記振り子ドラムは、前記基準位置に対するアタッチメントの傾斜状態を識別するための回動位置識別部を有し、
前記ダミードラムは、前記初期設定姿勢における基準位置を識別するための第2基準識別部を有し、
前記基準識別部、前記回動位置識別部、および前記第2基準識別部は、略同一のデザイン、マーク及びロゴから選択される少なくとも1つの視覚的特徴を有してもよい(第3の構成)。
【0022】
上記構成によれば、ダミードラムは、振れ止めドラムおよび振り子ドラムと略同軸上であって、かつ、支持部の一部を覆うように支持部に対して着脱可能に取り付けられる。
このため、建設機械のアタッチメントに取り付けた状態で、アタッチメントに対する突出量を少なくしながら、ダミードラムを取り付けることができる。
また、基準識別部、回動位置識別部、および第2基準識別部は、略同一のデザイン、マーク及びロゴから選択される少なくとも1つの視覚的特徴を有している。
オペレータは、略同一の視覚的特徴を有する基準識別部、回動位置識別部、および第2基準識別部の位置が揃うように建設機械(アタッチメント)を操作することにより、アタッチメントを所定の初期設定姿勢にすることができる。
略同一の基準識別部、回動位置識別部、および第2基準識別部の位置を揃えることにより、オペレータは視覚的な安定感が得られるとともに、建設機械の操作に対する達成感を得ることができる。
これにより、オペレータは、建設機械の操作による疲労を感じにくくなり建設機械の操作に集中することができる。
【0023】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記支持部は、
第1端部から第2端部に向けて軸方向に延びる第1支持部と、
前記第1支持部の前記第1端部と前記第2端部の間に取り付けられるとともに、前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムを支持する第2支持部と、を有し、
前記振れ止めドラムおよび前記振り子ドラムは、前記第2支持部に支持されており、
前記第1支持部は、アタッチメントの下端部から延びる仮想の鉛直線と、前記第1支持部の軸方向とが一致するように、アタッチメントの上部に取り付けられ、
さらに、測量装置から出射される光波を再帰反射させる反射部が、前記第1支持部の前記第2端部に取り付けられてもよい(第4の構成)。
【0024】
上記構成によれば、振れ止めドラムおよび振り子ドラムは、第1支持部および第2支持部を介してアタッチメントに取り付けられ、第1支持部の上部には、測量装置から出射される光波を再帰反射させる反射部が取り付けられる。
このため、振れ止めドラムおよび振り子ドラムによってアタッチメントの傾斜状態を把握する機能だけでなく、アタッチメントの下端部の位置を測量装置と反射部により遠隔で計測することができる。
これにより、比較的簡易なICT施工を支援することができる。
【0025】
本発明の一実施形態にかかる施工支援システムは、
第1から第4のいずれかの構成の傾斜状態表示装置と、
光波を出射させ、前記傾斜状態表示装置に設けられた反射部で反射した光波を受光することにより測量を行う測量装置と、
前記測量装置から送信される測量結果に基づいて、建設機械のアタッチメントの下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する携帯情報端末と、を備える(第5の構成)。
【0026】
上記構成によれば、アタッチメントの下端部の位置を測量装置と反射部により遠隔で計測し、携帯情報端末は、建設機械のアタッチメントの下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する。
これにより、傾斜状態表示装置を用いたシステムによって比較的簡易なICT施工を支援することができる。
【0027】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る傾斜状態表示装置100および施工支援システム200について詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0028】
以下の図では、矢印Fは傾斜状態表示装置100の前方向を示し、矢印Bは後方向を示す。矢印Uは上方向を示し、矢印Dは下方向を示す。矢印Rは右方向を示し、矢印Lは左方向を示す。
【0029】
傾斜状態表示装置100(
図1参照)は、建設機械300のアタッチメント350に取り付けられ、アタッチメント350の任意の初期設定姿勢PA1に対する、アタッチメント350の傾斜状態を表示する(
図9、
図11参照)。
【0030】
建設機械300として、バックホウ、油圧ショベル、パワーショベルなどと呼ばれる掘削用機械を例示することができるが、これに限定されない。
【0031】
建設機械300のアタッチメント350は、建設機械300の使用目的に応じて多様なものから選択される。アタッチメント350として例えば掘削用バケット360、法面バケット370などがある(
図9、
図13参照)。掘削用バケット360は、例えば土砂の掘削に用いられる。法面バケット370は、底面が平坦であり、土木工事において法面(平らな斜面)を作るために用いられる。傾斜状態表示装置100を取り付けるアタッチメント350は、掘削用バケット360および法面バケット370に限定されず他の種類のバケットでもよく、建設機械300の使用目的に応じてバケット以外であってもよい。
【0032】
[全体構成]
まず傾斜状態表示装置100の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る傾斜状態表示装置100の正面図である。
図2は、傾斜状態表示装置100の平面図である。
図1および
図2に示すように、傾斜状態表示装置100は、支持部10、振れ止めドラム30、および振り子ドラム40を有している。また、傾斜状態表示装置100は、着脱可能なダミードラム50を有している(
図3、
図4および
図5参照)。
【0033】
支持部10は、振れ止めドラム30および振り子ドラム40を支持するとともに、傾斜状態表示装置100を建設機械300のアタッチメント350に取り付ける機能を有する。支持部10は、第1支持部11および第2支持部12を有している。
【0034】
第1支持部11は、ポール状の部材で構成されている。第1支持部11は、傾斜状態表示装置100をアタッチメント350の上部に立設する場合に使用される(
図13参照)。
【0035】
第2支持部12は、クランプ状であり、保持部121、取付ボルト122、および連結体123を有している。保持部121は、平面視で略U字形状を有しており、内側の間隙に第1支持部11またはアタッチメント350の一部を挿入する。その状態で、取付ボルト122を締め付けることにより、第2支持部12は第1支持部11またはアタッチメント350を挟持することができる。連結体123は、一端が保持部121の側面に取り付けられており、他端には軸部61を介して振れ止めドラム30、および振り子ドラム40が取り付けられている。
【0036】
第2支持部12は、第1支持部11を挟持することにより、第1支持部11を介して傾斜状態表示装置100を建設機械300のアタッチメント350に取り付けることができる(
図12、
図13参照)。また、第1支持部11を用いずに第2支持部12でアタッチメント350を直接挟持することにより、傾斜状態表示装置100をアタッチメント350に直接取り付けることもできる(
図9、
図10参照)。
【0037】
振れ止めドラム30は、軸部61を介して支持部10に支持されている。振れ止めドラム30は、アタッチメント350の初期設定姿勢PA1(
図9参照)における基準位置を表示する。振れ止めドラム30は、一端に底部31を有し、他端に開放部32を有する有底の円筒状部材で構成されている(
図6参照)。底部31から開放部32に向けて円筒状の側面部33が延びている。
【0038】
振れ止めドラム30の側面部33には、初期設定姿勢PA1における基準位置を識別するための基準識別部35が設けられている。振れ止めドラム30は、アタッチメント350の傾斜状態が変化しても自由に回動しないように支持部10に支持されているが、建設機械300のオペレータから基準識別部35が視認できるように、アタッチメント350の初期設定姿勢PA1に合わせて手動によって軸部61回りに回動させることが可能である。
【0039】
振り子ドラム40は、振れ止めドラム30に対して回動可能であり、アタッチメント350の初期設定姿勢PA1に対するアタッチメント350の傾斜状態を表示する。振り子ドラム40は、一端に底部41を有し、他端に開放部42を有する有底の円筒状部材で構成されている(
図6参照)。底部41から開放部42に向けて円筒状の側面部43が延びている。振り子ドラム40の側面部43の外径は、振れ止めドラム30の側面部33の外径と略同径に設定されている。振れ止めドラム30と振り子ドラム40は、相互に開放部32および開放部42を対向させて配置されている。
【0040】
振り子ドラム40の側面部43には、初期設定姿勢PA1に対するアタッチメント350の傾斜状態を識別するための回動位置識別部45が設けられている。振り子ドラム40は、振り子のように軸部61に対して回動可能であり、アタッチメント350の傾斜状態が変化しても鉛直方向に対して同じ姿勢を保つように構成されている。このため、建設機械300のオペレータは、建設機械300(アタッチメント350)の操作を行いながら、振れ止めドラム30の基準識別部35と振り子ドラム40の回動位置識別部45の位置関係から、アタッチメント350が事前に設定された初期設定姿勢PA1になっているかどうかを認識することができる。
【0041】
図3は、傾斜状態表示装置100のダミードラム50を取り付ける状態を示す正面図である。
図4は、傾斜状態表示装置100のダミードラム50を取り付ける状態を示す側面図である。
図5は、ダミードラム50を取り付けた傾斜状態表示装置100の正面図である。
図1および
図2に示す傾斜状態表示装置100は、ダミードラム50が取り付けられていない状態であるが、
図3、
図4および
図5に示すように、傾斜状態表示装置100はダミードラム50を着脱することができる。
【0042】
図3に示すように、ダミードラム50は、一端に第1底部51、他端に第2底部52が設けられており、第1底部51と第2底部52との間には、略円筒状の側面部53が設けられている。ダミードラム50の側面部53の外径は、振れ止めドラム30および振り子ドラム40を構成する円筒状部材の側面部33および側面部43と略同径に設定されている。
【0043】
図4に示すように、ダミードラム50の第1底部51および第2底部52は、一部が切り掛かれて平坦に形成された切欠部54、55を有している。切欠部54には、側面部53は形成されていない。このため、ダミードラム50は切欠部54、55によって開口部56が形成されている。また、第1底部51および第2底部52には、それぞれ略U字型の溝部57、58が形成されている。溝部57、58は、それぞれ第1底部51および第2底部52の中心位置に到達するように形成されている。
【0044】
図3に戻って、ダミードラム50は、振れ止めドラム30および振り子ドラム40と略同軸上であって、かつ、支持部10の一部を覆うように支持部10に対して着脱可能に取り付けられる。具体的には、第1底部51は、溝部57で軸部61を跨ぐようにして、連結体123と振れ止めドラム30との間の間隙に挿入される。また、第2底部52は、溝部58で軸部61を跨ぐようにして取り付けられる。
ダミードラム50の側面部53には、初期設定姿勢PA1における基準位置を識別するための第2基準識別部59が設けられている。
【0045】
図5に示すように、ダミードラム50が取り付けられると、略同径の円筒状部材で構成された振れ止めドラム30、振り子ドラム40、およびダミードラム50が軸部61上において、略同軸に配置される。また、本実施形態では、基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59は、略同一のデザイン、マーク及びロゴから選択される少なくとも1つの視覚的特徴を有している。デザイン、マーク及びロゴは限定されるものではないが、例えば、基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59を横に揃えることで建設機械300のオペレータが達成感を得られるものを選択することが好ましい。本実施形態では、基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59として遊技機を連想するような図柄が選択されている。なお、ダミードラム50は軸部61回りに回動させることができないため、第2基準識別部59を着脱可能なシール等で形成し、第2基準識別部59を着脱させて位置を調節し、基準識別部35の横に並べるようにしてもよい。
【0046】
図6は、傾斜状態表示装置100の分解図である。
図7は、傾斜状態表示装置100の内部構造を示す一部断面図である。
図6および
図7では、ダミードラム50の図示は省略している。
【0047】
図6に示すように、振れ止めドラム30には、底部31の内面側に支持板36、軸受部37、および規制部38が設けられている。
【0048】
支持板36は、底部31の内面側にリベット等の固着手段によって取り付けられている。軸受部37は、底部31の中心位置において底部31と直交するように、底部31および支持板36を貫通して取り付けられている。軸受部37の内部には、軸部61を挿通させる貫通穴371が形成されている。底部31から外側に突出した部分には、ネジ溝372が形成されている。
【0049】
規制部38は、底部31の内面側において支持板36に対して直交するように立設されている。規制部38は、2本設けられており、振り子ドラム40に設けられる移動部48の回動範囲を所定範囲内に規制する(
図8参照)。
【0050】
振り子ドラム40には、底部41の内面側に支持板46、軸受部47、移動部48、および錘部49が設けられている。
【0051】
支持板46は、底部41の内面側にリベット等の固着手段によって取り付けられている。軸受部47は、底部41の中心位置において底部41と直交するように、底部41および支持板46を貫通して取り付けられている。軸受部47の内部には、軸部61を挿通させる貫通穴471が形成されている。
【0052】
移動部48は、底部31の内面側において支持板36に対して直交するように設けられている。移動部48は、1本設けられており、振り子ドラム40の回動にともなって円弧状の軌跡で移動する。移動部48の回動範囲は、振れ止めドラム30に設けられる2本の規制部38に当接することにより、所定の回動範囲に制限されている(
図8参照)。
【0053】
錘部49は、軸部61に対する振り子ドラム40の重心位置を調整するために設けられている。具体的には、振り子ドラム40が振り子のように軸部61に対して回動し、アタッチメント350の傾斜状態が変化しても鉛直方向に対して同じ姿勢を保つようにするために、振り子ドラム40の重心位置は、軸部61よりも下方となるように設定されている。
【0054】
ここで、錘部49は、軸受部47(軸部61)よりも下方に設けられており、軸受部47(軸部61)よりも上方に移動部48が設けられている。このため、軸受部47(軸部61)の下方に錘部49と移動部48の両方を設けた場合と比較して、振り子ドラム40の回動中心である軸部61から重心位置までの距離を小さくすることができる。これにより、振り子ドラム40に揺れが生じた場合には、振り子ドラム40の揺れの振幅が大きくなる傾向はあるものの、振り子ドラム40の揺れの周期を長くすることができる。
【0055】
軸部61は、振れ止めドラム30および振り子ドラム40を同一軸上で回動可能に支持する。軸部61は、振れ止めドラム30の軸受部37、および振り子ドラム40の軸受部47に挿通可能な外径と長さを有している。本実施形態では、軸部61としてボルトを用いている。
【0056】
図6および
図7に示すように、振れ止めドラム30と振り子ドラム40は、相互に開放部32および開放部42を対向させて配置されている。このとき、振り子ドラム40の移動部48が、振れ止めドラム30の2本の規制部38の間に位置するようにする(
図8参照)。
【0057】
振れ止めドラム30の軸受部37および振り子ドラム40の軸受部47に軸部61を挿通させた状態で、軸部61の先端にナット63、63を螺合させる。ナット63、63は、ダブルナットとして軸部61の先端に固定する。軸部61とナット63、63の締結は、振れ止めドラム30に対して振り子ドラム40が自由に回動できるようにするため、振れ止めドラム30の軸受部37と振り子ドラム40の軸受部47との間に適度な緩みを持たせた状態とする。
【0058】
振れ止めドラム30および振り子ドラム40は、第2支持部12に取り付けられる。振れ止めドラム30から外側に突出した軸受部37のネジ溝372部分、および軸部61の先端に螺合されたナット63、63は、第2支持部12の連結体123に設けられる取付穴124にワッシャ65を介して挿通される。挿通させたネジ溝372には、ワッシャ66、スプリングワッシャ67を介してナット68を螺合させる。ナット68の締め付けは、振れ止めドラム30の位置をアタッチメント350の初期設定姿勢PA1に合わせて手動で回動させることができるように、適度な緩みを持たせるものとする。
【0059】
図8は、振れ止めドラム30に対する振り子ドラム40の回動範囲を示す側面図である。
図8に示すように、振れ止めドラム30および振り子ドラム40は、振り子ドラム40の移動部48が、振れ止めドラム30の2本の規制部38の間に位置するように配置されている。移動部48は、振り子ドラム40の回動にともなって円弧状の軌跡で移動する。移動部48の回動範囲は、振れ止めドラム30に設けられる2本の規制部38に当接することにより、所定の回動範囲に制限されている。これにより、振れ止めドラム30に対する振り子ドラム40の回動範囲は、所定の角度α1の範囲に制限されている。
【0060】
[傾斜状態表示装置の使用]
次に、傾斜状態表示装置100を使用する場合の手順について説明する。
図9は、傾斜状態表示装置100をアタッチメント350(法面バケット370)に取り付けた状態を示す側面図である。
図10は、傾斜状態表示装置100をアタッチメント350(法面バケット370)に取り付けた状態を示す正面図である。
図11は、傾斜状態表示装置100を用いて作業を行う状態を示す側面図である。
【0061】
まず、アタッチメント350が取り付けられる建設機械300の概略構成を説明する。
図11に示される建設機械300は、パワーショベルであり、下部走行体310、上部旋回体320、作業アーム330、および運転室340を備えている。
【0062】
下部走行体310は、無限軌道装置312を有している。無限軌道装置312は、駆動輪で履帯を循環させて走行するための装置である。
【0063】
上部旋回体320は、下部走行体310に対して旋回自在に支持されている。上部旋回体320は、油圧アクチュエータを備えた旋回装置により下部走行体310に対して旋回駆動される。
【0064】
作業アーム330は、上部旋回体320から延びて屈曲動作および伸長動作を行う多関節アームである。先端には、アタッチメント350が取り付けられている。作業アーム330は、油圧制御で動作し、アタッチメント350の方向や位置を変更させる。作業アーム330は、ブーム331、およびアーム333を有している。
【0065】
ブーム331は、上部旋回体320の前側において起伏可能に支持されている。ブーム331は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ341によって起伏可能である。
【0066】
アーム333は、ブーム331の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。アーム333は、油圧アクチュエータであるアームシリンダ343によって揺動可能である。
【0067】
アタッチメント350は、アーム333の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。またアタッチメント350には、リンク部材338が連結されている。リンク部材338には、バケットシリンダ345の先端が連結されている。
【0068】
ブーム331、アーム333、およびアタッチメント350は、それぞれブームシリンダ341、アームシリンダ343、およびバケットシリンダ345によって起伏が可能である。これにより、バケットシリンダ345の傾斜状態を変化させるように操作することが可能である。また、ブーム331、アーム333、およびアタッチメント350の水平方向の旋回は、旋回装置により上部旋回体320を下部走行体310に対して旋回させることによって行われる。
【0069】
運転室340は、上部旋回体320に設けられている。オペレータOP1は、運転室340に搭乗して、運転室340内の操作機器を操作することで、下部走行体310の走行操作、上部旋回体320の旋回操作、作業アーム330の駆動操作、およびアタッチメント350の操作などを行う。
【0070】
本実施形態では、アタッチメント350として法面バケット370が取り付けられている。法面バケット370は、底面373が平坦であり、土木工事において法面(平らな斜面)を作るために用いられる。
【0071】
図9および
図10では、傾斜状態表示装置100が法面バケット370に取り付けられている。第2支持部12でアタッチメント350を挟持することにより、傾斜状態表示装置100をアタッチメント350に取り付けることができる。傾斜状態表示装置100の取り付け位置は、法面バケット370の左側部371または右側部372など、運転室340に搭乗したオペレータOP1から傾斜状態表示装置100を視認できる位置とする。
図9および
図10では、法面バケット370の左側部371に傾斜状態表示装置100を取り付けている。
図10に示すように、傾斜状態表示装置100にはダミードラム50も取り付けている。
【0072】
続いて、傾斜状態表示装置100の設定について説明する。
図9に示すように、まず、作業アーム330を操作して、法面バケット370の底面373が所望の法面勾配となるように、法面バケット370の傾斜状態を調節する。法面勾配は、盛土や切土などの法面の勾配である。一般に法面勾配は、「1:0.8」など、底辺と高さの比率で表示される。
図9では、法面勾配「1:1.0」に対応させて、水平面(地表GL)に対する底面373の角度θ1が45度になるように法面バケット370の傾斜状態を調節している。この状態を法面バケット370の初期設定姿勢PA1とする。初期設定姿勢PA1は、法面勾配「1:1.0」に限定されず、任意の法面勾配を選択することができる。
【0073】
この状態で、振り子ドラム40が静止してから、振れ止めドラム30を手動で回動させて、振り子ドラム40の回動位置識別部45の高さに、振れ止めドラム30の基準識別部35の高さを合わせるようにする。そして、振り子ドラム40の回動範囲が、振れ止めドラム30に対して上下方向にそれぞれ均等であることを確認する。以上により、傾斜状態表示装置100の設定を完了する。さらに必要に応じて、ダミードラム50の第2基準識別部59の位置を調節して、基準識別部35の高さに合わせるようにする。
【0074】
建設機械300による法面の仕上げ作業においては、法面バケット370の傾斜状態が変化すると、傾斜状態表示装置100は、法面バケット370とともに傾斜する。一方、振り子ドラム40は、振り子のように回動可能であり法面バケット370の傾斜状態が変化しても鉛直方向に対して同じ姿勢を保つ。その結果、運転室340のオペレータOP1には、振り子ドラム40の回動位置識別部45に対して、振れ止めドラム30の基準識別部35およびダミードラム50の第2基準識別部59が上方向または下方向に移動するように見える。
【0075】
例えば、法面バケット370の傾斜角度が浅くなる(
図9において角度θ1が減少)と、振り子ドラム40は鉛直方向のままなので(振り子ドラム40の回動位置識別部45は、運転室340に向けられている)、振れ止めドラム30の基準識別部35およびダミードラム50の第2基準識別部59は、上方向に移動するように見える。反対に、法面バケット370の傾斜角度が深くなると(
図9において角度θ1が増大)、振り子ドラム40は鉛直方向のままなので(振り子ドラム40の回動位置識別部45は、運転室340に向けられている)、振れ止めドラム30の基準識別部35およびダミードラム50の第2基準識別部59は、下方向に移動するように見える。
【0076】
このため、建設機械300のオペレータOP1は、回動位置識別部45に対する基準識別部35およびダミードラム50の位置の変化と移動方向により、法面バケット370の初期設定姿勢PA1に対する法面バケット370の傾斜状態を把握することができる。そして、回動位置識別部45に対する基準識別部35およびダミードラム50の位置を合わせるように建設機械300(法面バケット370)を操作することにより、所望の法面勾配で法面の仕上げ作業を行うことができる。
【0077】
[実施形態1の効果]
以上説明した本実施形態によれば、振れ止めドラム30および振り子ドラム40の2本の円筒状部材で構成された傾斜状態表示装置100により、従来の3本の円筒によって構成されたショベル角度指示器と同様の機能を発揮することができる。
これにより、建設機械300のアタッチメント350に取り付けた状態で、アタッチメント350に対する突出量を少なくすることができるとともに、アタッチメント350の傾斜状態を表示させる設定を容易に行うことができる。
また、傾斜状態表示装置100を軽量化することができるため、アタッチメント350に着脱する際などの操作性を向上させることができる。
【0078】
傾斜状態表示装置100の振り子ドラム40は、軸受部47(軸部61)よりも下方に錘部49が設けられ、軸受部47(軸部61)よりも上方に移動部48が設けられている。
このため、軸部61の下方に錘部49と移動部48の両方を設けた場合と比較して、振り子ドラム40の回動中心である軸部61から重心位置までの距離を小さくすることができる。これにより、振り子ドラム40に揺れが生じた場合には、振り子ドラム40の揺れの振幅が大きくなる傾向はあるものの、振り子ドラム40の揺れの周期を長くすることができる。
このため建設機械300のオペレータOP1は、従来よりも長い周期で揺れる振り子ドラム40を見ながら建設機械300(アタッチメント350)を操作することとなり、短い周期で揺れる振り子ドラムを見ながら建設機械300(アタッチメント350)の操作を行う場合よりも疲労感を抑制することができる。
また、振り子ドラム40が長い周期で揺れている場合、オペレータOP1は揺れの中心を見極めやすくなる。このため、振り子ドラム40が停止していなくても、振れ止めドラム30に対する振り子ドラム40の回動状態を把握しやすくなり、アタッチメント350の傾斜状態を容易に把握することができる。
【0079】
傾斜状態表示装置100のダミードラム50は、振れ止めドラム30および振り子ドラム40と略同軸上であって、かつ、支持部10の一部を覆うように支持部10に対して着脱可能に取り付けられる。
このため、建設機械300のアタッチメント350に取り付けた状態で、アタッチメント350に対する突出量を少なくしながら、ダミードラム50を取り付けることができる。
また、基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59は、略同一のデザイン、マーク及びロゴから選択される少なくとも1つの視覚的特徴を有している。
オペレータOP1は、略同一の視覚的特徴を有する基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59の位置が揃うように建設機械300(アタッチメント350)を操作することにより、アタッチメント350を所定の初期設定姿勢PA1にすることができる。
略同一の基準識別部35、回動位置識別部45、および第2基準識別部59の位置を揃えることにより、オペレータOP1は視覚的な安定感が得られるとともに、建設機械300の操作に対する達成感を得ることができる。
これにより、オペレータOP1は、建設機械300の操作による疲労を感じにくくなり建設機械300の操作に集中することができる。
【0080】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る傾斜状態表示装置100Aおよび施工支援システム200について説明する。
【0081】
図12は、本発明の実施形態2に係る傾斜状態表示装置100Aの支持部10に反射部80を取り付ける状態を示す正面図である。
図12に示すように、支持部10は、第1支持部11および第2支持部12を有している。第1支持部11は、傾斜状態表示装置100Aをアタッチメント350の上部に立設するために使用される。第1支持部11は、ポール状の部材で構成されており、第1端部111から第2端部112に向けて軸方向に延びている。第1支持部11の第1端部111と第2端部112の間には、第2支持部12を介して振れ止めドラム30、振り子ドラム40、およびダミードラム50が取り付けられている。
【0082】
第1支持部11の第1端部111および第2端部112には、それぞれスタッドボルト113、114が固定されている。
【0083】
第1端部111のスタッドボルト113は、建設機械300のアタッチメント350に固定された固定部15に螺合させることにより、第1支持部11をアタッチメント350に取り付けることができる。第2端部112のスタッドボルト114には、反射部80を取り付けることができる。反射部80は、測量装置(トータルステーション)250から出射される光波を再帰反射させるプリズム81を備えている(
図14参照)。
【0084】
図13は、反射部80を取り付けた傾斜状態表示装置100Aをアタッチメント350(掘削用バケット360)に取り付けた状態を示す側面図である。
図13に示すように、傾斜状態表示装置100Aは、掘削用バケット360の上部に固定された固定部15を介して取り付けられている。
【0085】
ここで、第1支持部11は、掘削用バケット360の下端部(刃先)361から延びる仮想の鉛直線L1と、第1支持部11の軸方向とが一致するように、掘削用バケット360の上部に取り付けられるようにする。
【0086】
さらに、この状態において、掘削用バケット360の下端部(刃先)361から、反射部80の中心位置までの高さを正確に計測する。
図13では、掘削用バケット360の下端部(刃先)361を地表GLに接触させ、地表GLから反射部80の中心位置までの高さをH1としている。
【0087】
図14は、本発明の実施形態2に係る傾斜状態表示装置100Aを用いた施工支援システム200を示す図である。施工支援システム200は、傾斜状態表示装置100A、測量装置250、および携帯情報端末260を備えている。
【0088】
測量装置250は、公知のトータルステーションである。測量装置250は、光波を出射させ、傾斜状態表示装置100Aに設けられた反射部80で反射した光波を受光することにより測量を行う。
【0089】
具体的には、測量装置250から水平距離、垂直距離および角度を測定するための光波が出射され、反射部80のプリズム81に入射するとともに、プリズム81から光波が平行に再帰反射される。測量装置250は、再帰反射された光波を検出し、反射部80までの水平距離と垂直距離、および角度を測定するとともに、反射部80の位置座標を算出する。測量装置250は、図示しない無線通信ネットワークによって、算出した測量結果を携帯情報端末260に送信する。
【0090】
携帯情報端末260は、測量装置250から送信される測量結果に基づいて、建設機械300のアタッチメント350の下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する。
【0091】
携帯情報端末260の情報処理部では、受信した反射部80の測量結果と、予め入力されている掘削用バケット360の下端部(刃先)361から反射部80の中心位置までの高さH1に基づいて、掘削用バケット360の下端部(刃先)361の位置座標を算出する。掘削用バケット360の下端部(刃先)361の位置座標は、施工中における現在の施工地点GP1の位置座標となる。
【0092】
また、携帯情報端末260には、予め設計図面上の計画高さデータが記憶されている。そして、設計図面上の計画高さデータと、掘削用バケット360の下端部(刃先)361の位置座標(施工地点GP1の位置座標)に基づいて、設計図面上の計画高さと施工中の地面の高さとの差異が算出される。算出された結果は、携帯情報端末260の表示部に表示される。これにより、建設機械300のオペレータOP1は、携帯情報端末260に表示された結果を参照しながら、施工を行うことができる。
【0093】
[実施形態2の効果]
以上説明した本実施形態によれば、振れ止めドラム30および振り子ドラム40は、第1支持部11および第2支持部12を介してアタッチメント350に取り付けられ、第1支持部11の上部には、測量装置250から出射される光波を再帰反射させる反射部80が取り付けられる。
このため、振れ止めドラム30および振り子ドラム40によってアタッチメント350の傾斜状態を把握する機能だけでなく、アタッチメント350の下端部の位置を測量装置250と反射部80により遠隔で計測することができる。
これにより、比較的簡易なICT施工を支援することができる。
【0094】
アタッチメント350の下端部の位置を測量装置250と反射部80により遠隔で計測し、携帯情報端末260は、建設機械300のアタッチメント350の下端部の位置を算出するともに算出結果を表示する。
これにより、傾斜状態表示装置100Aを用いたシステムによって比較的簡易なICT施工を支援することができる。
【0095】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0096】
例えば振れ止めドラム、振り子ドラム、ダミードラムの形状や、支持部の構成は実施形態のものに限定されない。振れ止めドラム、振り子ドラム、およびダミードラムに表示した基準識別部、回動位置識別部、および第2基準識別部も実施形態のものに限定されない。
【0097】
実施形態1および実施形態2では傾斜状態表示装置にダミードラムを取り付けたが、ダミードラムを取り付けずに傾斜状態表示装置を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、建設機械のアタッチメントに取り付けられ、アタッチメントの任意の初期設定姿勢に対する、アタッチメントの傾斜状態を表示する傾斜状態表示装置、および傾斜状態表示装置を用いた施工支援システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
100 傾斜状態表示装置
10 支持部
30 振れ止めドラム
38 規制部
40 振り子ドラム
48 移動部
300 建設機械
350 アタッチメント
PA1 初期設定姿勢