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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134479
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】介護用補助具およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/05 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
A61G7/05
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044801
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】521374822
【氏名又は名称】有限会社ハンド
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕子
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA30
4C040GG03
(57)【要約】
【課題】 腰関節や股関節に障害を有する被介護者が、苦痛なく開脚できるような介護用補助具を提供し、併せてその使用方法を提供する。
【解決手段】 介護用補助具100は、被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する下肢の当接を許容するする底部10と、底部から適宜間隔を有して設けられ上側の下肢を支持する支持部20とを備える。使用法は、被介護者を予め側臥位姿勢としておき、底部を被介護者の下側に位置する一方の下肢よりも下側に挿入して、介護用補助具を暫定的に固定し、被介護者の上側に位置する他方の下肢を支持部に当接させ、底部と支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、この状態を維持しつつおむつを交換する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臥位姿勢の被介護者に対するオムツ交換時に被介護者の下肢を開脚させるための介護用補助具であって、
被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する下肢の当接を許容するする底部と、この底部から適宜間隔を有して設けられ上側の下肢を支持する支持部とを備えることを特徴する介護用補助具。
【請求項2】
前記底部は、板状に構成され、下側の下肢の当接によって暫定的に固定できる面積を有するものであり、前記支持部は、板状に構成され、上側の下肢の当接を許容し、当接する下肢を支持する状態で維持できる面積を有するものであり、前記底部の表面と前記支持部の表面との間隔は、少なくとも180mm以上に離間して構成されている請求項1に記載の介護用補助具。
【請求項3】
前記底部および前記支持部は、連続部によって連続されて一体的に構成されている請求項2に記載の介護用補助具。
【請求項4】
前記底部および前記支持部は、前記連続部の中央を境界に対称な形状に構成されている請求項3に記載の介護用補助具。
【請求項5】
前記底部、前記支持部および前記連続部によって、断面形状略コ字状または略H字状に形成されている請求項4に記載の介護用補助具。
【請求項6】
前記底部および前記支持部のうちの少なくとも下肢の当接を許容する領域には、摩擦係数の大きい材料によって構成され、または摩擦係数の大きい材料が装着されて構成されている請求項5に記載の介護用補助具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の介護用補助具の使用方法であって、
被介護者を予め側臥位姿勢としておき、前記底部を被介護者の下側に位置する一方の下肢よりも下側に挿入し、または該底部に該下側の下肢を当接するように人為的に該下肢を移動させて、前記介護用補助具を暫定的に固定し、
被介護者の上側に位置する他方の下肢を支持部に当接するように人為的に該下肢を移動させることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、
開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする介護用補助具の使用方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の介護用補助具の使用方法であって、
被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位変更する際に下側に位置する側の下肢に対し、前記介護用補助具の前記支持部を二つの下肢の中間に配置するとともに前記底部を該下肢の外側に配置し、
被介護者の下肢と前記介護用補助具との状態を維持しつつ被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位を変更することにより、前記底部と前記支持部との間に位置する下肢が該底部の表面に当接することによって該底部を暫定的に固定するとともに、他方の下肢を前記支持部の上面に当接させる状態とすることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、
開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする介護用補助具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者のおむつを交換する際に、被介護者の下肢を上昇させるために使用する介護用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢または事故や病気が原因で自ら洗面所で排泄行為が行えず、他者の介護を受けなければならない被介護者は、おむつを使用することとなるが、介護者は、1日に数回のおむつ交換を行わなければならない。おむつを交換するためには、下肢を高く持ち上げなければならず、被介護者が小児等であれば問題ではないが、成人の場合には、その行為が容易ではなく、おむつ交換そのものが介護者にとって負担となる行為であった。
【0003】
そこで、被介護者(特に成人)のおむつ交換に際して、下肢を持ち上げて負担を軽減するためのベッドまたは補助装置が開発されてきた(特許文献1および2参照)。特許文献1に開示される発明は、高さ調整可能なベッドが使用されることを前提とし、揺動可能な脚保持部によって構成されたものであり、脚保持部の揺動により、被介護者の膝裏部を保持しつつベッドの下降に伴って被介護者の膝の位置を上方かつ頭部方向へ誘導するものであった。また、特許文献2に開示される発明は、ベッドの側部に回転中心を有する支持アームを回転可能に設け、この支持アームの先端にフットバーによって膝の位置を移動するように構成したものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-192271号公報
【特許文献2】特開2006-000232号公報
【特許文献3】実用新案登録第3132423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1および2に開示される発明は、いずれも被介護者の膝裏部に当接する部材を支持するアームを、回転または揺動させることにより膝裏部の位置を移動させるものであるが、特許文献1の発明は、ベッドが昇降可能でなければならず、特許文献2の発明は、ベッドに回転駆動させる駆動部を備えることが必要となっていた。ところが、被介護者が使用するベッドが、必ずしも当該機能を有しているとは限らず、汎用性に欠けるものとならざるを得なかった。
【0006】
そこで、被介護者の膝部分をロープ等で吊り上げる構成の保護装置が開発されるに至っている(特許文献3参照)。この発明は、被介護者の膝裏部が当接するように配置された円筒状の保持部の両端にロープを係止させ、梁を支点として上記ロープを上方に牽引するものであり、複数の動滑車によりロープの牽引に要する操作力を軽減するものであった。ベッドそのものを変更する必要はなく、介護者の人力によってロープを牽引し得る点では優れているものであった。
【0007】
ところが、そもそも保持部を被介護者の膝裏部に当接させるためには、少なからず被介護者の下肢の一部(膝部分)を持ち上げなければならず、そのような事前の準備においても容易ではなかった。また、牽引ロープを人力で巻き取る行為を要するが、膝の位置が頭部方向へ移動するため梁を含むフレーム全体を移動させながら行わなければならず、決して簡単に操作できるものではなかった。
【0008】
そこで、本願の発明者は、簡単に操作でき、準備段階から難しい操作を要せず、被介護者の下肢を持ち上げることのできる介護用補助具を開発し、その介護補助具を使用する方法を提案した(特願2022-199838)。
【0009】
上記構成の介護用補助具およびその使用方法は、腰関節や股関節などが適度に屈曲可能な場合に極めて有効であるものであるが、腰関節や股関節に障害がある場合には、被介護者に対して苦痛を与えることが懸念されるものであった。
【0010】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、腰関節や股関節に障害を有する被介護者が、苦痛なく開脚できるような介護用補助具を提供し、併せてその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、介護用補助具に係る本発明は、臥位姿勢の被介護者に対するオムツ交換時に被介護者の下肢を開脚させるための介護用補助具であって、被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する下肢の当接を許容する底部と、この底部から適宜間隔を有して設けられ上側の下肢を支持する支持部とを備えることを特徴する。
【0012】
上記構成によれば、底部に一方の下肢を当接させることにより底部を固定し、一体的な補助具全体を固定でき、他方の下肢を支持部に乗せた状態を維持させることができる。これにより、側臥位姿勢の被介護者は、下側の下肢から上側の下肢を離間させた姿勢となることから、被介護者に対して腰関節や股関節に対して無理な屈曲を強いることなく、側臥位姿勢において開脚させることができる。この側臥位姿勢が維持されることにより、両方の下肢の間隙を利用しておむつ交換を容易にすることができる。
【0013】
上記構成の発明において、前記底部は、板状に構成され、下側の下肢の当接によって暫定的に固定できる面積を有するものであり、前記支持部は、板状に構成され、上側の下肢の当接を許容し、当接する下肢を支持する状態で維持できる面積を有するものであり、前記底部の表面と前記支持部の表面との間隔は、少なくとも180mm以上に離間して構成されるものとすることができる。
【0014】
上記構成によれば、十分な面積を有する板状に構成された底部および支持部により、下側の下肢は底部を固定し、上側の下肢は支持部に当接した状態を容易に維持させることができる。そして、両者が少なくとも180mm以上に離間していることにより、被介護者の開脚可能な程度に応じて、大腿部、膝部近傍、下腿部などのいずれかを選択することにより、適宜開脚状態を醸成し得ることとなる。なお、要介護者となり得る60歳以上の平均的な大腿部の大きさ(周囲)は、500mm以下(概ね480mm~490mm)であり、直径が約160mmであることから、大腿部において約20mm以上の間隙を形成させることができればおむつ交換における最低限度の隙間を得ることができる。
【0015】
なお、上記に示した180mm以上間隔は、上限を設けていないが、極端に大きい大腿部の被介護者にあっては、その大きさによって変更し得ることを意味するものであり、上限はせいぜい200mm~230mmの範囲が妥当である。また、これらの間隔として、底部の「表面」と支持部の「表面」との間隔と表示しているのは、下肢が当接する面(上面部)を「表面」と称するものである。
【0016】
上記構成の発明において、前記底部および前記支持部は、連続部によって連続されて一体的に構成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、底部および支持部は、連続部とともに一体的に構成されることから、両者が分離することなく、単一の介護用補助具として使用に供することができる。
【0018】
さらに、上記構成の発明における前記底部および前記支持部は、前記連続部の中央を境界に対称な形状に構成することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、底部および支持部を反転させて使用することが可能となるから、概念的には、底部と支持部を区別しつつも、使用時において、被介護者の下側の下肢が当接する側が底部であり、上側の下肢が当接する側が支持部として機能するものとなる。これにより、介護者において、底部と支持部との区別を確認することなく、使用することができるものとなる。
【0020】
上記構成の発明において、前記底部、前記支持部および前記連続部によって、断面形状略コ字状または略H字状に形成することができる。
【0021】
上記構成によれば、連続部を被介護者の正面側に位置する状態で使用する場合、背後には連続部が存在しない状態となり、おむつ交換時における連続部の存在を考慮する必要がなくなるものとなる。
【0022】
上記構成の発明において、前記底部および前記支持部のうちの少なくとも下肢の当接を許容する領域には、摩擦係数の大きい材料によって構成され、または摩擦係数の大きい材料が装着されて構成されていることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、被介護者の下肢による底部の固定に際しても、安定的な固定を可能とし、支持部に当接された下肢の支持状態についても、安定的な支持を継続させることが容易となる。なお、摩擦係数が大きい材料としては、おむつ交換時は素肌が接触することとなるため、人体との間における摩擦抵抗が大きくなるものが好ましく、例えば、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム製品のほか、シリコーン樹脂等を使用できる。これらを使用する場合の強度を維持させるため、当該領域に上記材料を積層させる(フィルム状の材料を貼着する)などの方法とすることがあり得る。ただし、これに限定されず、底部および支持部をプラスチック等により構成し、表面の摩擦抵抗を増大させる加工を施したものであってもよい。
【0024】
他方、前記各構成の介護用補助具の使用方法に係る発明は、上記に示したいずれかの介護用補助具の使用方法であって、被介護者を予め側臥位姿勢としておき、前記底部を被介護者の下側に位置する一方の下肢よりも下側に挿入し、または該底部に該下側の下肢を当接するように人為的に該下肢を移動させて、前記介護用補助具を暫定的に固定し、被介護者の上側に位置する他方の下肢を支持部に当接するように人為的に該下肢を移動させることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、側臥位姿勢となった被介護者に対し、順次下側の下肢により底部を固定し、上側の下肢を支持部に乗せることにより、容易に被介護者の下肢を開脚させた状態とすることができる。おむつは、開脚によって形成される隙間を利用し、専ら背後から行うことができ、当該隙間を利用すれば、交換時の股間の清拭等も可能となる。
【0026】
前記各構成の介護用補助具の使用方法に係る他の発明は、上記に示したいずれかの介護用補助具の使用方法であって、被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位変更する際に下側に位置する側の下肢に対し、前記介護用補助具の前記支持部を二つの下肢の中間に配置するとともに前記底部を該下肢の外側に配置し、被介護者の下肢と前記介護用補助具との状態を維持しつつ被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位を変更することにより、前記底部と前記支持部との間に位置する下肢が該底部の表面に当接することによって該底部を暫定的に固定するとともに、他方の下肢を前記支持部の上面に当接させる状態とすることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、股関節等の可動域が極めて狭い被介護者に対して、予め開脚できる範囲内で、仰臥位姿勢において介護用補助具を準備することができ、側臥位姿勢においては上側の下肢を支持部に当接させる動作を不要にすることができる。このような使用方法による場合であっても、下肢の開脚状態は、底部と支持部とで形成される間隙によって決定することとなり、所定の間隔を得ることができるため、おむつ交換作業を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、比較的狭間隔に配置される底部と支持部とで開脚状態を維持することができることから、腰関節や股関節に障害を有する被介護者が、苦痛なく開脚できるような介護用補助具を提供し得る。また、おむつ交換は被介護者の側臥位姿勢において行うものであるから、被介護者が苦痛となることはなく、また、介護者(介護従事者等)においても、被介護者が側臥位姿勢を維持するため、被介護者の姿勢に注意を払う必要なくおむつ交換を行えることから、介護者(介護従事者)の負担も軽減し得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】介護用補助具に係る実施形態を示す説明図である。
図2】介護用補助具に係る実施形態の詳細を示す説明図である。
図3】介護用補助具に係る実施形態の使用態様を示す説明図である。
図4】使用方法に係る第1の実施形態を示す説明図である。
図5】使用方法に係る第1の実施形態を示す説明図である。
図6】使用方法に係る第2の実施形態を示す説明図である。
図7】介護用補助具に係る実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、介護用補助具の実施形態を説明した後に、当該実施形態を使用した介護用補助具の使用方法について説明する。
【0031】
<介護用補助具の実施形態>
図1は、介護用補助具の実施形態を示す。この図に示されるように、本実施形態の介護用補助具100は、板状に形成された底部10と、同様に板状に形成された支持部20とを備える構成となっており、両者を連続部30で連続させることにより、一体的な断面略コ字状の形態を有している。基本的に、連続部30の中央から上下対称となるように構成されており、上下を反転させても同じ形状となるものとしている。従って、下位となる側の板状部材が底部10となり、上位となる側の板状部材が支持部20となるものである。
【0032】
上記構成の介護用補助具100は、底部10と支持部20を上下に配置される状態で使用ものであり、双方10,20ともに、被介護者の下肢の一部を当接させることができる程度に適度な面積を有するものとなっている。底部10および支持部20の当接面は、上述のように両者を上下に配置するとき、上向きとなる側の表面である。
【0033】
そこで、これらの底部10および支持部20に下肢の一部を当接させるために、図2(a)に示すように、これらの表面は、縦(奥行き)Dが140mm~150mm、幅Wが200mm程度に設けられている。また、各部の肉厚(厚み)Tが20mmとしている。従って、縦140mmとするとき、底部10の上面の奥行きは120mmとなる。一般的に介護を要する者(要介護者)となり得る年齢は60歳以上であり、その平均的な大腿部の大きさ(周囲)は、500mm以下(概ね480mm~490mm)であることから、大腿部における直径が約160mmである。膝近傍の場合を大腿部の約1/2とすれば、80mmとなることから、奥行きが120mmもあれば、膝周辺は確実に当接可能となる。また、大腿部であっても中央部(下肢の重量が作用する部分)の位置を表面内とすることができる。当然ながら支持部20の表面においても同様に下肢を当接させることができるものとなる。
【0034】
また、底部10の上面から支持部20の上面までの高さHは180mm以上に構成することとしている。上述のように要介護者となり得る60歳以上の大腿部の直径は約160mmであるから、被介護者が側臥位姿勢において、下側の下肢を底部10の上面に当接し、上側の下肢を支持部20の上面に当接するとき、両下肢の間には、20mmの間隙を生じさせることができる。そして、膝近傍の場合には、(180mm-80mm=)100mmの間隔を生じさせることができる。また、上記高さHを190mmや200mmとすれば、それに応じた間隔を得ることができる。ただし、250mm以上の高さHとする場合には、股関節に故障のある被介護者においては開脚し辛くなるため、概ね180mm~250mmの範囲とするのが妥当である。
【0035】
なお、各上面には十分な面積を有することとしているのは、適宜な長さの幅Wを有することで、当接可能な面積を大きくし、底部10の固定の状態、および、支持部20によって支持される状態を安定させるためである。そこで、上記のような縦(奥行き)Dの寸法とし、幅Wを200mmとするとき、底部10の上面の面積は、240cm~260cmとなり、支持部20の上面の面積は、280cm~300cmとなる。
【0036】
このような構成とすることにより、被介護者の下肢を少なからず開脚させることができ、おむつ交換時には、開脚された隙間を利用し、身体の前後に跨がって取り付けられているおむつ材料を背後から前面側を抜き取り、また新しいおむつ材料を背後から前面に押し込むことで、前後に跨がるおむつ材料を装着することができる。
【0037】
<変形例>
図2(b)は、上記実施形態の変形例である。この変形例は、底部10の両面11,12および支持部20の両面21,22に、それぞれ合成ゴムによるシートを貼着したものである。合成ゴムシートは、比較的柔軟なものを使用し、摩擦係数の大きいものを使用する。これにより、下肢が当接したときに、下肢が上面(表面)11,21から滑落することを防止するのである。底部10の下面12および支持部20の下面22は、使用時に下肢が当接する面ではないが、上下を反転させて使用する場合は、当該面12,22がそれぞれ下肢と当接する面となるためであり、また、底部10の下面12は、寝具等との摺動を防止させる効果をも生じさせるものとなる。
【0038】
<使用態様>
介護用補助具の実施形態および変形例は上記のとおりであるから、図3に示すように、寝具Bにおいて側臥位姿勢となっている被介護者HM(図3(a)参照)に対し、下肢La、Lbの間に介護用補助具100を挿入することにより、下肢La,Lbの間に適宜な間隙を形成することができる(図3(b)参照)。このときに生じる双方の下肢La,Lbの隙間を利用して、おむつ交換を行うことができるものとなる。
【0039】
上記姿勢の被介護者HMの上側の下肢Laは、介護用補助具100の支持部20によって支持され、その姿勢が継続されることとなるから、介護者(介護従事者)は、被介護者HMの下肢Laを支える必要がなく、交換すべきおむつの取り外しに集中することができる。また、股間付近にも適度な空間が形成されることから、おむつ交換時における股間周辺の清拭も無理なく行うことができる。従って、介護者等および被介護者の双方が、ともに無理なくおむつ交換に協力し得ることとなる。
【0040】
<使用方法の実施形態>
図4および図5は、介護用補助具100の使用方法に係る実施形態を示すものである。本実施形態の使用方法は、予め被介護者を側臥位姿勢としておく場合(図4(a)参照)を示している。また、おむつOD,NDの交換は背後から行うことを前提としている。
【0041】
そこで、まず、側臥位姿勢の被介護者の下肢La,Lbのうち、下側に位置する下肢Lbの下側(寝具Bとの間)に底部10を挿入する(図4(b)参照)。挿入は介護者(介護従事者)によって行われるが、上肢を自由に動かせる被介護者であれば、人為的に下肢Lbを移動させ、または、その移動を被介護者自身が行ってもよい。この下側の下肢Lbと寝具Bとの間に底部10を挿入させることにより、底部10の表面には当該下側の下肢Lbが当接した状態となり、当該下肢Lbの重量によって介護用補助具100を固定することができる。このとき、固定のために、特別被介護者の協力は不要である。また、被介護者の他方の下肢Laはそのまま(側臥位状態)に維持され、下肢La,Lbは開脚させていない。
【0042】
上記のように介護用補助具100が固定されると、介護者(介護従事者)は介護用補助具100から手を離することができるため、介護者(介護従事者)は、他方の下肢(上側の下肢)Laを支えつつ、上方に持ち上げ(図4(c)参照)、その後、介護用補助具100の支持部20の表面に当接させる(図4(d)参照)。介護者(介護従事者)は両手を自由に使用できるため、片方の下肢Laを両手で持ち上げる(人為的に移動する)ことができ、介護者(介護従事者)の負担は軽減する。他方、被介護者(特に股関節の可動に支障がある者)においても、大きく開脚されることがないため、負担が軽減されることとなる。そして、この状態により、被介護者の下肢La,Lbの僅かな開脚状態が安定した状態となる。
【0043】
上記状態を維持しつつ、装着済みの古いおむつODを外すのであるが、一般的なおむつの場合には、腰回りに固定しているテープ部分の貼着を解除すれば、背後(臀部)側と前面側とに跨がった状態となることから、まずは腰回りの固定用テープを解除し、背後(臀部)側から、開脚した隙間を使用して引き抜き、古いおむつODを取り除くのである(図5(a)および(b)参照)。
【0044】
新しいおむつNDを装着する場合は、上記の逆の手順により、当該おむつNDの前半分を背後(臀部)の側から開脚した隙間を利用して挿入し(図5(c)参照)、その後装着状態を整えて、腰回りの固定テープを貼着すれば、新しいおむつNDの装着を完了できる(図5(d)参照)。
【0045】
このような介護用補助具100の使用方法によれば、介護者(介護従事者)および被介護者の双方において負担が軽減される。特に、介護者(介護従事者)は、おむつの交換作業に集中でき、被介護者は、無理な姿勢をとることなく、僅かな開脚によっておむつ交換を受けることができる。
【0046】
<使用方法の第2の実施形態>
図6は、介護用補助具100の使用方法に係る第2の実施形態を示す図である。本実施形態は、仰臥位姿勢の被介護者HMに対して予め介護用補助具100を適宜位置に装着したうえで、被介護者HMを側臥位姿勢とする方法である。
【0047】
すなわち、予め被介護者HMを側臥位姿勢とするのではなく、仰臥位姿勢の状態において、後に側臥位姿勢になった際に介護用補助具100を使用する予定の位置に、連続部30を上向きとして、一方(後に下側となる側)の下肢(図は左の下肢)Lbの両側に底部および支持部を配置した状態で準備する(図6(a)参照)。そして、この状態を維持しつつ、被介護者HMを側臥位姿勢となるように半身だけ寝返るように(図は左向きとなるように)介助することにより、一方(図は左側の下肢)Lbが下側となり、他方(図は右側の下肢)Laが上側となる(図6(b)参照)。
【0048】
このとき、図6(b)に示されているように、介護用補助具100の底部10および支持部20は、下側(左側)の下肢Lbの両側に配置されていたことから、側臥位姿勢となることにより、底部10は、当該下肢Lbの下側に、支持部20は、当該下肢Lbの上側に位置し、さらに、支持部20を両下肢La,Lbで挟むようにしておけば、上側の下肢Laは、必然的に支持部20の表面に当接した状態となる。
【0049】
これで、被介護者HMの下肢La,Lbは適度に開脚した状態となるから、その後は、前述(図5)と同様に、古いおむつODと外し、新しいおむつNDを装着することが可能となる。
【0050】
このような使用方法は、被介護者HMが側臥位姿勢の状態において介護用補助具100の挿入が難しい場合に実施することができる。例えば下肢La,Lbの重量が大きく、側臥位姿勢で下側の下肢と寝具Bとの間に底部10を挿入し辛い場合や、側臥位姿勢となった後に、上側の下肢Laを支持部20まで持ち上げる(余裕をもって開脚できる)ことが難しい場合などにおいても、介護用補助具100を使用することができるのである。
【0051】
<その他の変形例>
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではなく、各要素を適宜変更し、または他の要素を追加するものであってもよい。
【0052】
すなわち、介護用補助具100の実施形態を上述のように、断面略コ字状としたものを例示したが、本発明は、底部10と支持部20とが適宜な長さで離間して構成されればよいことから、例えば、図7(a)に示すように、断面略H字状とする介護用補助具200としてもよい。この場合、底部10となるべき部分は、連続部30の両側に2箇所10a,10bが形成されることとなるが、いずれか一方を使用すればよい。また、このような構成の場合には、支持部20の表面の面積を大きく構成できることから、支持部20によって支持される上側の脚部が一層安定させることができる。
【0053】
また、図7(b)に示すように、連続部30の中央から上下対称としない介護用補助具300としてもよい。この変形例は、底部10は平板状としつつ、支持部20の表面を曲面状としたものである。支持部20の曲面は断面形状を概略弧状とし、中央を低く両側端縁を高くするものであり、下側の下肢よりも下方に挿入する底部10は平板状として挿入を容易とし、支持部20は、上側の下肢を支持する際に安定させることができる。
【0054】
なお、上記の両変形例200,300においても、下肢との当接する部分には、合成ゴム等の摩擦係数の大きい材料を使用し、またはフィルム状としたものを貼着する構成とすることができる。また、これらの摩擦係数の大きい材料は、下肢の当接領域に限らず、全ての表面に設ける構成としてもよく、連続部30の表面の摩擦抵抗が大きくなることで、介護者(介護従事者)が使用時に滑り止めとなって好適な場合がある。
【符号の説明】
【0055】
10,10a,10b 底部
11,12 底部の両面
20 支持部
21,22 支持部の両面
30 連続部
100,200,300 介護用補助具
B 寝具
HM 被介護者
La 下肢(下側)
Lb 下肢(上側)
OD 古いおむつ
ND 新しいおむつ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臥位姿勢の被介護者に対するオムツ交換時に被介護者の下肢を開脚させるための介護用補助具であって、
被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する下肢のうち、大腿部、膝部近傍および下腿部の中から選択される該下肢の一部の当接を許容する底部と、この底部から適宜間隔を有して設けられ上側の下肢の当接を許容することにより、該上側の下肢を支持する支持部とを備え
前記底部および前記支持部は、それぞれ板状に構成されるとともに、連続部によって連続されて該連続部の中央を境界に対称な断面略コ字状の一体的に構成され、該底部および該支持部を上下に配置させた状態で使用に供されるものであって、上下を反転させることにより同じ状態となり、下位となる側が底部、上位となる側が支持部として機能するものであり、
板状に構成される前記底部のうち下側の下肢の当接を許容する部分、および、板状に構成される前記支持部のうち上側の下肢の当接を許容する部分は、それぞれ該底部および該支持部を上下に配置するとき上向きとなる側の表面であることを特徴する介護用補助具。
【請求項2】
記底部における下側の下肢の当接を許容する表面と前記支持部における上側の下肢の当接を許容する表面との間隔は、少なくとも180mm~250mmの範囲に離間して構成されている請求項1に記載の介護用補助具。
【請求項3】
前記底部における前記下側の下肢の一部の当接を許容する表面の面積が240cm ~260cm であり、前記支持部における前記上側の下肢の当接を許容する表面の面積が280cm ~300cm であり、前記底部の両面および前記支持部の両面のそれぞれに摩擦係数の大きい材料が装着されている請求項2に記載の介護用補助具。
【請求項4】
臥位姿勢の被介護者に対するオムツ交換時に被介護者の下肢を開脚させるための介護用補助具であって、
被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する下肢のうち、大腿部、膝部近傍および下腿部の中から選択される該下肢の一部の当接を許容する底部と、この底部から適宜間隔を有して設けられ、上側の下肢の当接を許容することにより、該上側の下肢を支持する支持部とを備え、
前記底部および前記支持部は、それぞれ板状に構成されるとともに、連続部によって連続されて一体的に構成されるものであり、
前記支持部における前記上側の下肢の当接を許容する表面は、断面形状を概略弧状の曲面とし、連続部に連続する側の端縁およびその反対側の端縁を高く、中央を低くするように形成されるものであり、
板状に構成される前記底部のうち下側の下肢の当接を許容する部分、および、板状に構成される前記支持部のうち上側の下肢の当接を許容する部分は、それぞれ該底部および該支持部を上下に配置するとき上向きとなる側の表面であることを特徴する介護用補助具。
【請求項5】
前記底部における下側の下肢の当接を許容する表面と前記支持部における上側の下肢の当接を許容する表面との間隔は、少なくとも180mm~250mmの範囲に離間して構成されている請求項4に記載の介護用補助具。
【請求項6】
前記底部における前記下側の下肢の一部の当接を許容する部分の面積が240cm ~260cm であり、前記支持部における前記上側の下肢の当接を許容する部分の面積が280cm ~300cm である請求項5に記載の介護用補助具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の介護用補助具の使用方法であって、
被介護者を予め側臥位姿勢としておき、前記底部を被介護者の下側に位置する一方の下肢よりも下側に挿入し、または該底部に該下側の下肢を当接するように人為的に該下肢を移動させて、該下側の下肢の一部の当接を許容する部分に該下肢の一部を当接させることにより、該下肢の下側に位置する該底部に重量を作用させ、該下肢の重量によって該底部を固定することにより、これと一体的に形成される前記介護用補助具を固定し、
被介護者の上側に位置する他方の下肢を支持部に当接するように人為的に該下肢を移動させることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、
開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする介護用補助具の使用方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の介護用補助具の使用方法であって、
被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位変更する際に下側に位置する側の下肢に対し、前記介護用補助具の前記支持部を二つの下肢の中間に配置するとともに前記底部を該下肢の外側に配置し、
被介護者の下肢と前記介護用補助具との状態を維持しつつ被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位を変更することにより、前記底部と前記支持部との間に位置する下肢が該底部の表面に当接することにより、該下肢の下側に位置する該底部に重量を作用させ、該下肢の重量によって該底部を固定するとともに、他方の下肢を前記支持部の上面に当接させる状態とすることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、
開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする介護用補助具の使用方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臥位姿勢の被介護者に対するオムツ交換時に被介護者の下肢を開脚させるための介護用補助具であって、
被介護者が側臥位姿勢となるとき、下側に位置する一方の下肢のみのうち、大腿部、膝部近傍および下腿部の中から選択される該下肢の一部の当接を許容する底部と、この底部から適宜間隔を有して設けられ、上側の下肢の当接を許容することにより、該上側の下肢を支持する支持部とを備え、
前記底部および前記支持部は、それぞれ板状に構成されるとともに、連続部によって連続されて該連続部の中央を境界に対称な断面略コ字状の一体的に構成され、該底部および該支持部を上下に配置させた状態で使用に供されるものであって、上下を反転させることにより同じ状態となり、下位となる側が底部、上位となる側が支持部として機能するものであり、
板状に構成される前記底部のうち下側の下肢の当接を許容する部分、および、板状に構成される前記支持部のうち上側の下肢の当接を許容する部分は、それぞれ該底部および該支持部を上下に配置するとき上向きとなる側の表面であり、
前記底部および前記支持部の肉厚を20mmとするとき、前記底部における下側の下肢の当接を許容する表面と前記支持部における上側の下肢の当接を許容する表面との間隔を180mm~250mmの範囲に離間させ、両者の間隙を160mm~230mmの範囲として、該底部の表面に当接させる被介護者の一方の大腿部と該支持部の表面に当接させる被介護者の他方の大腿部との間に所定の間隔を生じさせ、かつ、前記底部の奥行を120mm~130mmの範囲として、被介護者の下側の大腿部の重量が作用する部分の位置を該底部の表面内とすることにより、前記底部の表面には被介護者の下側に位置する一方の大腿部のみが当接可能とされていることを特徴する介護用補助具。
【請求項2】
前記底部における前記下側の下肢の一部の当接を許容する表面の面積が240cm~260cmであり、前記支持部における前記上側の下肢の当接を許容する表面の面積が280cm~300cmであり、前記底部の両面および前記支持部の両面のそれぞれに摩擦係数の大きい材料が装着されている請求項1に記載の介護用補助具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の介護用補助具の使用方法であって、
被介護者が仰臥位姿勢となっている状態において、その被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位変更する際に下側に位置することとなる側の下肢に対し、前記連続部を上向きとした状態の前記介護用補助具の前記支持部を二つの下肢の中間に配置するとともに前記底部を該下肢の外側に配置し、
被介護者の下肢と前記介護用補助具との状態を維持しつつ被介護者を仰臥位姿勢から側臥位姿勢に体位を変更することにより、前記底部と前記支持部との間に位置する下肢が該底部の表面に当接することにより、該下肢の下側に位置する該底部に重量を作用させ、該下肢の重量によって該底部を固定するとともに、他方の下肢を前記支持部の上面に当接させる状態とすることにより、前記底部と前記支持部との間隔に応じた範囲で被介護者の下肢を開脚させ、
開脚された状態の被介護者に対し、側臥位姿勢の状態でおむつ交換を行うことを特徴とする介護用補助具の使用方法。