(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134481
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047888
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2023043906
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG14
2C057AG44
2C057AG84
2C057AG99
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】静電気による駆動回路の破損を防止する。
【解決手段】液体噴射ヘッドは、ヘッドチップと、駆動回路を有し、ヘッドチップと電気的に接続された配線基板と、ヘッドチップが固定された固定板と、駆動回路と対向する内壁面を有し、金属で構成され、かつ、固定板との間でヘッドチップを保持するホルダーと、内壁面と駆動回路との間に配置されることで、内壁面と駆動回路とを導通させない分離部材と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルを有する第1ヘッドチップと、
第1駆動回路を有し、前記第1ヘッドチップと電気的に接続された第1配線基板と、
前記第1ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための第1露出開口部を有し、前記第1ヘッドチップが固定された固定板と、
前記第1駆動回路と対向する第1内壁面を有し、金属で構成され、かつ、前記固定板との間で前記第1ヘッドチップを保持するホルダーと、
前記第1内壁面と前記第1駆動回路との間に配置されることで、前記第1内壁面と前記第1駆動回路とを導通させない分離部材と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記分離部材は、絶縁体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記分離部材は、シート状またはフィルム状である、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記分離部材は、前記第1駆動回路と前記第1内壁面との間に挟持される、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記ホルダーに積層され、樹脂で構成された流路部材を備え、
前記ホルダーは、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有さず、
前記流路部材は、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記分離部材は、形状保持特性を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記分離部材は、形状保持特性を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記絶縁体は、樹脂で構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記分離部材は、前記分離部材と前記第1内壁面との間に隙間を形成するように、前記第1内壁面が向く方向に前記第1駆動回路を付勢する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記ホルダーに積層され、樹脂で構成された流路部材を備え、
前記ホルダーは、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有さず、
前記流路部材は、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有し、
前記分離部材は、導体であり、かつ、前記流路部材に支持される、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記分離部材は、絶縁体である、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
液体を噴射する複数のノズルを有し、前記固定板と前記ホルダーとの間で保持された第2ヘッドチップと、
第2駆動回路を有し、前記第2ヘッドチップと電気的に接続された第2配線基板と、を備え、
前記固定板は、前記第2ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための第2露出開口部を有し、
前記ホルダーは、前記第2駆動回路と対向する第2内壁面を有し、
前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとは隣り合い、
前記第1駆動回路は、前記第1配線基板の面のうち前記第1ヘッドチップから前記第2ヘッドチップへ向かう方向を向く面に配置され、
前記第2駆動回路は、前記第2配線基板の面のうち前記第2ヘッドチップから前記第1ヘッドチップへ向かう方向を向く面に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
前記分離部材は、
ベース部と、
前記ベース部の一端で屈曲することで前記第1内壁面と前記第1駆動回路との間に配置された第1部分と、
前記ベース部の他端で屈曲することで前記第2内壁面と前記第2駆動回路との間に配置された第2部分と、を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記固定板は、金属で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための液体貯留部と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式のプリンターに代表される液体噴射装置は、一般に、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する。例えば、特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、複数のヘッドチップと、当該複数のヘッドチップを保持するホルダーと、当該複数のヘッドチップをホルダーとの間で挟む固定板と、を有する。ヘッドチップには、配線基板としてフレキシブル基板が引き出されており、当該フレキシブル基板には、ヘッドチップの駆動素子を駆動するための駆動回路が設けられる。また、ホルダーおよび固定板のそれぞれは、金属で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液体噴射ヘッドでは、組立誤差により駆動回路とホルダーとが接触してしまう場合がある。この場合、ホルダーに静電気が生じると、その静電気がホルダーから駆動回路へ流れてしまい、この結果、駆動回路が故障する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のノズルを有する第1ヘッドチップと、第1駆動回路を有し、前記第1ヘッドチップと電気的に接続された第1配線基板と、前記第1ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための第1露出開口部を有し、前記第1ヘッドチップが固定された固定板と、前記第1駆動回路と対向する第1内壁面を有し、金属で構成され、かつ、前記固定板との間で前記第1ヘッドチップを保持するホルダーと、前記第1内壁面と前記第1駆動回路との間に配置されることで、前記第1内壁面と前記第1駆動回路とを導通させない分離部材と、を備える。
【0006】
本開示の好適な態様に係る液体噴射装置は、前述の態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための液体貯留部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る液体噴射装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態の液体噴射ヘッドを有する液体噴射モジュールの斜視図である。
【
図3】
図2に示す液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【
図4】液体噴射ヘッドのヘッドチップの分解斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの平面図である。
【
図9】第1実施形態に係る液体噴射ヘッドの一部を示す拡大断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸が適宜に用いられる。X軸に沿う一方向がX1方向と称され、X1方向と反対の方向がX2方向と称される。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向と称される。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向と称される。
【0010】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.液体噴射装置
図1は、実施形態に係る液体噴射装置100の構成例を示す概略図である。液体噴射装置100は、インクを液滴として媒体Mに噴射するインクジェット方式の印刷装置である。インクは、「液体」の一例である。本実施形態の液体噴射装置100は、インクを噴射する複数のノズルNが媒体Mの幅方向での全範囲にわたり分布する、いわゆるライン方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0012】
図1に示すように、液体噴射装置100は、液体貯留部60と制御ユニット20と搬送機構30と液体噴射モジュール40と循環機構50とを有する。
【0013】
液体貯留部60は、インクを貯留する容器である。液体貯留部60の具体的な態様としては、例えば、液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体貯留部60に貯留されるインクの種類は任意である。
【0014】
図示しないが、本実施形態の液体貯留部60は、第1液体容器と第2液体容器とを含む。第1液体容器には、第1インクが貯留される。第2液体容器には、第1インクと異なる種類の第2インクが貯留される。第1インクおよび第2インクは、例えば、互いに異なる色のインクである。なお、第1インクと第2インクとが同じ種類のインクであってもよい。
【0015】
制御ユニット20は、液体噴射装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御ユニット20は、液体噴射モジュール40におけるインクの吐出動作を制御する制御信号SIと、液体噴射モジュール40を駆動するための駆動信号Comと、を出力する。制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と、半導体メモリー等の記憶回路とを含む。当該記憶回路には、各種プログラムおよび各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
【0016】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体Mを方向DMに搬送する。本実施形態の方向DMは、Y2方向である。
図1に示す例では、搬送機構30は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構30は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体Mを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラムまたは無端ベルトを用いる構成でもよい。
【0017】
液体噴射モジュール40は、制御ユニット20による制御のもとで、液体貯留部60から循環機構50を介して供給されるインクを複数のノズルNのそれぞれからZ2方向に媒体Mに噴射する。液体噴射モジュール40は、X軸の方向における媒体Mの全範囲にわたり複数のノズルNが分布するように配置される複数の液体噴射ヘッド10を有し、X軸に沿う方向に延びる長尺なラインヘッドである。複数の液体噴射ヘッド10からのインクの噴射が搬送機構30による媒体Mの搬送に並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。なお、液体噴射モジュール40は、X軸の延びる方向における媒体Mの全範囲にわたり複数のノズルNが分布するように配置される単体の液体噴射ヘッド10のみで構成されることにより、X軸に沿う方向に延びる長尺なラインヘッドであってもよい。
【0018】
図1に示す例では、液体貯留部60が循環機構50を介して液体噴射モジュール40に接続される。循環機構50は、液体噴射モジュール40にインクを供給するとともに、液体噴射モジュール40から排出されるインクを液体噴射モジュール40への再供給のために回収する機構である。循環機構50は、例えば、インクを貯留するサブタンクと、サブタンクから液体噴射モジュール40にインクを供給するための供給流路と、液体噴射モジュールからインクをサブタンクに回収するための回収流路と、インクを移送するためのポンプと、を有する。これらは、前述の第1インクおよび第2インクのそれぞれについて設けられる。以上の循環機構50の動作により、インクの粘度上昇を抑えたり、インク内の気泡の滞留を低減したりすることができる。
【0019】
以上のように、液体噴射装置100は、液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10へ液体を供給するための液体貯留部60と、を備える。このような液体噴射装置100は、後述するように液体噴射ヘッド10の駆動回路17の故障が防止されるので、信頼性に優れる。
【0020】
1-2.液体噴射モジュール
図2は、実施形態の液体噴射ヘッド10を有する液体噴射モジュール40の斜視図である。
図2に示すように、液体噴射モジュール40は、支持体41と複数の液体噴射ヘッド10とを有する。
【0021】
支持体41は、複数の液体噴射ヘッド10を支持する部材である。
図2に示す例では、支持体41は、金属等で構成される板状部材であり、複数の液体噴射ヘッド10を取り付けるための取付孔41aが設けられる。取付孔41aには、複数の液体噴射ヘッド10がX軸に沿う方向に並ぶ状態で挿入されており、各液体噴射ヘッド10は、支持体41に対してネジ止め等により固定される。
図2では、2個の液体噴射ヘッド10が代表的に図示される。なお、液体噴射モジュール40における液体噴射ヘッド10の数は、任意である。また、支持体41の形状等も、
図2に示す例に限定されず、任意である。
【0022】
1-3.液体噴射ヘッド
図3は、
図2に示す液体噴射ヘッド10の分解斜視図である。
図3に示すように、液体噴射ヘッド10は、流路部材11と回路基板12とホルダー13とヘッドチップ14-1~14-6と固定板15と配線基板16-1~16-6と駆動回路17-1~17-6と分離部材18-1~18-3とを有する。
【0023】
ヘッドチップ14-1は、「第1ヘッドチップ」の一例であり、ヘッドチップ14-2は、「第2ヘッドチップ」の一例である。配線基板16-1は、「第1配線基板」の一例であり、配線基板16-2は、「第2配線基板」の一例である。駆動回路17-1は、「第1駆動回路」の一例であり、駆動回路17-2は、「第2駆動回路」の一例である。以下では、ヘッドチップ14-1~14-6を区別せずにヘッドチップ14という場合があり、配線基板16-1~16-6を区別せずに配線基板16という場合があり、駆動回路17-1~17-6を区別せずに駆動回路17という場合あり、分離部材18-1~18-3を区別せずに分離部材18という場合がある。
【0024】
回路基板12、流路部材11、ホルダー13、複数のヘッドチップ14-1~14-6、固定板15の順に、これらは、Z2方向に向かって積層されており、互いに接着剤またはネジ留め等により接合される。ここで、各ヘッドチップ14には、配線基板16が引き出されており、配線基板16は、ホルダー13の後述の配線孔13aと流路部材11の後述の配線孔11aとを通じて回路基板12に接続される。各配線基板16には、駆動回路17が設けられる。分離部材18は、流路部材11と回路基板12との間からホルダー13の後述の配線孔13aと流路部材11の後述の配線孔11aとに挿入されており、駆動回路17とホルダー13との導通を阻止する。以下、
図3に基づいて、液体噴射ヘッド10の各部を順次簡単に説明する。
【0025】
流路部材11は、循環機構50と複数のヘッドチップ14との間でインクを流すための流路が内部に設けられる構造体である。流路部材11には、
図3に示すように、複数の配線孔11aと接続管11b-1~11b-4とが設けられる。また、
図3では図示を省略するが、流路部材11には、第1インクを複数のヘッドチップ14に供給するための供給流路と、第2インクを複数のヘッドチップ14に供給するための供給流路と、複数のヘッドチップ14から第1インクを排出するための排出流路と、複数のヘッドチップ14から第2インクを排出するための排出流路とが設けられる。なお、以下では、接続管11b-1~11b-4を区別せずに接続管11bという場合がある。
【0026】
流路部材11は、層11c1、11c2を有し、この順で、これらは、Z2方向に積層される。これらの層に適宜に溝または孔等が設けられることにより、前述の供給流路および排出流路等の流路が構成される。層11c1、11c2は、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により形成される。層11c1および層11c2は、例えば、接着剤により互いに接合される。なお、流路部材11を構成する層の厚さおよび数等の態様は、
図3に示す例に限定されず、任意である。
【0027】
複数の配線孔11aのそれぞれは、配線基板16を通すための孔であり、流路部材11をZ軸に沿う方向に貫通する。
図3に示す例では、配線孔11aがヘッドチップ14ごとに設けられており、各配線孔11aが配線基板16だけでなく分離部材18を通すために用いられる。接続管11b-1~11b-4のそれぞれは、層11c1からZ1方向に突出する。接続管11b-1は、流路部材11に第1インクを導入するための流路を構成する管体である。また、接続管11b-2は、流路部材11に第2インクを導入するための流路を構成する管体である。一方、接続管11b-3は、流路部材11から第1インクを排出するための流路を構成する管体である。また、接続管11b-4は、流路部材11から第2インクを排出するための流路を構成する管体である。
【0028】
回路基板12は、制御ユニット20と配線基板16とを電気的に接続するための実装部品である。回路基板12は、例えば、リジット配線基板である。回路基板12のZ1方向を向く面には、コネクター12cが設置される。コネクター12cは、制御ユニット20と電気的に接続するための接続部品である。また、回路基板12には、複数の配線孔12aおよび複数の孔12bが設けられる。各配線孔12aは、配線基板16を通すための孔である。回路基板12のZ1方向を向く面には、配線孔12aを通じた配線基板16に接続される図示しない端子が設けられる。
図3に示す例では、配線孔12aがヘッドチップ14ごとに設けられる。各孔12bは、前述の接続管11bを通すための孔である。孔12bを通じた接続管11bは、回路基板12よりもZ1方向に突出する。
【0029】
ホルダー13は、複数のヘッドチップ14を収容および支持する構造体である。ホルダー13は、ステンレス鋼、インバー、42アロイ等の金属で構成される。ホルダー13が金属で構成されることにより、ホルダー13の剛性が高くなるとともに線膨張や膨潤がしにくくなり、変形しにくくなる。そのため、ホルダー13の変形による複数のヘッドチップ14のアライメントずれの発生を低減できる。ホルダー13は、Z軸に垂直な方向に拡がる板状をなす。ホルダー13には、複数の配線孔13aと凹部13bとが設けられる。各配線孔13aは、配線基板16を通すための孔である。
図3に示す例では、配線孔13aがヘッドチップ14ごとに設けられており、各配線孔13aが配線基板16だけでなく分離部材18を通すために用いられるとともに流路部材11と各ヘッドチップ14との接続を許容する。凹部13bは、ホルダー13のZ2方向を向く面に設けられ、複数のヘッドチップ14を収容する。このように、ホルダー13は、金属で構成され、かつ、固定板15との間でヘッドチップ14-1~14-6を保持する。また、ホルダー13は、Y1方向及びY2方向の突出するフランジ部13dを有する。図示はしないが、支持体41に設けられた位置決めピンがフランジ部13dに設けられた位置決め孔に挿入若しくは圧入されることで、液体噴射ヘッド10と支持体41とが位置決めされていてもよく、位置決め精度を向上する為にもホルダー13は金属で構成されていることが好ましい。更に、樹脂でホルダー13を構成する場合に比べて、ホルダー13を金属で構成することにより、寸法精度が向上する。
【0030】
各ヘッドチップ14は、インクを噴射する。具体的には、
図3では図示を省略するが、各ヘッドチップ14は、第1インクを噴射する複数のノズルNと、第2インクを噴射する複数のノズルNと、を有する。これらのノズルNは、各ヘッドチップ14のZ2方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。ヘッドチップ14の構成については、後述する。なお、ノズル面FNに垂直な方向にみた平面視を単に「平面視」ともいう。
【0031】
固定板15は、複数のヘッドチップ14が固定される板部材である。固定板15は、ホルダー13との間に複数のヘッドチップ14を挟む状態で配置され、ホルダー13に対して接着剤により固定される。固定板15は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で構成されることが好ましい。固定板15を金属で構成することにより、固定板15を薄くすることができるため、ヘッドチップ14のノズル面FNと媒体Mとの距離を短くすることができ、ノズルNから媒体Mに噴射されたインクの着弾精度を向上することができる。また、固定板15を金属で構成することにより、固定板15の、ノズル面FNが向く方向と同じZ2方向を向く面に撥液膜を形成しやすく、耐インク性も向上できる。更に、固定板15を金属で構成することにより、固定板15の平面度・平坦度を向上できるため、複数のヘッドチップ14を固定板15のZ1方向を向く面に並べる際のアライメント精度を向上できる。なお、固定板15を構成する材料は、金属に限定されず、例えば、樹脂等であってもよい。
【0032】
固定板15には、ヘッドチップ14-1~14-6の後述の複数のノズルNを露出させるための露出開口部15a-1~15a-6が設けられる。露出開口部15a-1~15a-6は、ヘッドチップ14-1~14-6に一対一で対応する。露出開口部15a-1は、「第1露出開口部」の一例であり、露出開口部15a-2は、「第2露出開口部」の一例である。このように、固定板15は、ヘッドチップ14-1~14-6の後述の当該複数のノズルNを露出するための露出開口部15a-1~15a-6を有しており、固定板15には、ヘッドチップ14-1~14-6が固定される。
【0033】
配線基板16は、後述する圧電素子14fと電気的に接続される配線を含む可撓性基板であり、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)やCOF(Chip On Film)等である。配線基板16の一方の面には、駆動回路17が設けられる。このように、配線基板16は、駆動回路17を有し、ヘッドチップ14と電気的に接続される。すなわち、配線基板16-1は、駆動回路17-1を有し、ヘッドチップ14-1に電気的に接続される。配線基板16-2は、駆動回路17-2を有し、ヘッドチップ14-2に電気的に接続される。同様に、配線基板16-3~16-6は、駆動回路17-3~17-6を有し、ヘッドチップ14-3~14-6に電気的に接続される。
【0034】
駆動回路17は、後述の複数のノズルNに対応する複数の圧電素子14fごとに対応した複数のスイッチング素子を含み、駆動信号Comを各圧電素子14fに供給するか否かを選択する回路である。
【0035】
分離部材18は、駆動回路17とホルダー13との間に配置されることにより、駆動回路17とホルダー13との導通を阻止するための部材である。
図3に示す例では、分離部材18がシート状またはフィルム状の部材を折り曲げた構造体である。なお、分離部材18の詳細については、後に7から
図9に基づいて説明する。
【0036】
1-4.ヘッドチップ
図4は、液体噴射ヘッド10のヘッドチップ14の分解斜視図である。
図5は、
図4中のVI-VI線断面図である。以下では、説明の便宜上、Z軸に交差し、かつ、互いに交差するV軸およびW軸が適宜に用いられる。V軸に沿う一方向がV1方向と称され、V1方向と反対の方向がV2方向と称される。同様に、W軸に沿って互いに反対の方向がW1方向およびW2方向と称される。ここで、V軸は、後述のノズル列Ln1、Ln2の延びる方向DNに平行な軸であり、Y軸に対して傾斜する方向に延びる。W軸は、X軸に対して傾斜する方向に延びる。なお、V軸およびW軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0037】
図4および
図5に示すように、ヘッドチップ14は、V軸に沿う方向に配列される複数のノズルNを有する。
【0038】
ヘッドチップ14の有する複数のノズルNは、W軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶノズル列Ln1とノズル列Ln2とに区分される。ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれは、V軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0039】
ヘッドチップ14は、W軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、ノズル列Ln1の複数のノズルNとノズル列Ln2の複数のノズルNとのV軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。
図4および
図5では、ノズル列Ln1の複数のノズルNとノズル列Ln2の複数のノズルNとのV軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0040】
図4および
図5に示すように、ヘッドチップ14は、流路基板14aと圧力室基板14bとノズルプレート14cと吸振体14dと振動板14eと複数の圧電素子14fとカバー14gとケース14hとを有する。
【0041】
流路基板14aおよび圧力室基板14bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板14aおよび圧力室基板14bからなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板14eと複数の圧電素子14fとカバー14gとケース14hとが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズルプレート14cと吸振体14dとが設置される。ヘッドチップ14の各要素は、概略的にはV方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ14の各要素を順に説明する。
【0042】
ノズルプレート14cは、ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズルプレート14cのZ2方向を向く面がノズル面FNである。ノズルプレート14cは、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズルプレート14cの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルNの形状は、図示の例に限定されず、任意である。
【0043】
流路基板14aには、ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれについて、第1流路R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。第1流路R1は、ノズルNと連通するとともにノズルNよりも上流の流路であり、Z軸に沿う方向でみた平面視でV軸に沿う方向に延びる長尺状の孔で構成される。供給流路Raおよび連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各供給流路Raは、第1流路R1に連通する。
【0044】
圧力室基板14bは、ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれについて、複数の圧力室Cが設けられた板状部材である。複数の圧力室Cは、V軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、ノズルNごとに形成され、平面視でW軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。
【0045】
流路基板14aおよび圧力室基板14bそれぞれは、前述のノズルプレート14cと同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板14aおよび圧力室基板14bのそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0046】
圧力室Cは、流路基板14aと振動板14eとの間に位置する。ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれについて、複数の圧力室CがV軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cは、連通流路Naおよび供給流路Raのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路Raを介して第1流路R1に連通する。
【0047】
圧力室基板14bのZ1方向を向く面には、振動板14eが配置される。振動板14eは、弾性的に振動可能な板状部材である。図示しないが、振動板14eは、例えば、弾性膜と絶縁膜とを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。当該弾性膜は、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成されており、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。当該絶縁膜は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成されており、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。
【0048】
なお、振動板14eは、前述の弾性膜および絶縁膜の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。また、振動板14eを構成する各層の材料は、前述の材料に限定されず、例えば、シリコンまたは窒化ケイ素等であってもよい。
【0049】
振動板14eのZ1方向を向く面には、ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の圧電素子14fが駆動素子として配置されるとともに、配線基板16の一端が接続される。各圧電素子14fは、配線基板16を通じた駆動信号Comに応じた電位の供給により変形する受動素子であり、圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせる。各圧電素子14fは、平面視でW軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子14fは、複数の圧力室Cに対応するようにV軸に沿う方向に配列される。圧電素子14fは、平面視で圧力室Cに重なる。
【0050】
図示しないが、各圧電素子14fは、第1電極と圧電体と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。当該第1電極は、圧電素子14fごとに互いに離間して配置される個別電極である。当該第1電極には、駆動信号Comに応じた電位が供給される。当該第2電極は、複数の圧電素子14fにわたり連続するようにV軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極である。当該第2電極には、例えば、定電位が供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を合金または積層等の態様で組み合わせて用いることができる。当該圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)等の圧電材料で構成される。以上の圧電素子14fでは、当該第1電極と当該第2電極との間に電圧が印加されることにより、当該圧電体が逆圧電効果により変形する。この変形に連動して振動板14eが振動すると、圧力室C内の圧力が変動することにより、インクがノズルNから噴射される。なお、圧電素子14fに代えて、圧力室C内のインクを発熱させることで発生するバブルによってノズルNからインクを噴射させる発熱素子が駆動素子として用いられてもよい。
【0051】
カバー14gは、振動板14eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子14fを保護するとともに振動板14eの機械的な強度を補強する。ここで、カバー14gと振動板14eとの間の空間Sには、複数の圧電素子14fが収容される。カバー14gは、例えば、樹脂材料で構成される。
【0052】
ケース14hは、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するためのケースである。ケース14hは、例えば、樹脂材料で構成される。ケース14hには、ノズル列Ln1およびノズル列Ln2のそれぞれについて、第2流路R2が設けられる。第2流路R2は、前述の第1流路R1に接続される空間であり、Z軸に沿う方向でみた平面視でV軸に沿う方向に延びる長尺状の孔で構成される。第2流路R2は、ノズルNと連通しており、第1流路R1とともに、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース14hには、リザーバーRごとに2つの開口HLが設けられる。当該2つの開口HLのうち、一方の開口HLは、リザーバーRにインクを供給するための導入口であり、他方の開口HLは、リザーバーRからインクを排出するための排出口である。各リザーバーR内のインクは、各供給流路Raを介して圧力室Cに供給される。なお、各リザーバーRに対する開口HLの位置および数等の態様は、
図4および
図5の例に限定されず、任意である。
【0053】
吸振体14dは、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体14dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体14dのZ1方向を向く面は、流路基板14aに接着剤等により接合される。
【0054】
1-5.分離部材
図6は、液体噴射ヘッド10の平面図である。
図7は、
図6中のA-A線断面図である。
図8は、
図6中のB-B線断面図である。
図9は、液体噴射ヘッド10の一部を示す拡大断面図である。なお、
図6は、液体噴射ヘッド10をZ2方向にみた図である。
図7および
図8のそれぞれは、液体噴射ヘッド10のV軸に直交する断面を示す図である。
図9は、流路部材11とヘッドチップ14との接続を説明するための図であり、
図6中のB-B線断面における一部を示す。
【0055】
以下、分離部材18の説明に先立ち、まず、ヘッドチップ14と配線基板16と駆動回路17との配置について説明する。
【0056】
図6に示すように、ヘッドチップ14-1、14-2、14-3、14-4、14-5、14-6は、この順でX2方向に並ぶ。ここで、これらのヘッドチップ14は、ノズル列Ln1、Ln2の延びる方向DNが媒体Mの搬送方向である方向DMに対して傾斜するように、互いに平行に配置される。また、ヘッドチップ14-1およびヘッドチップ14-2は、互いのX軸に沿う方向での位置が揃うように配置される。これにより、ヘッドチップ14-1は、ヘッドチップ14-2に対してY1方向にずれた位置に配置される。同様に、ヘッドチップ14-3およびヘッドチップ14-4は、互いのX軸に沿う方向での位置が揃うように配置される。これにより、ヘッドチップ14-3は、ヘッドチップ14-4に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッドチップ14-3は、ヘッドチップ14-1に対してY1方向に若干ずれた位置に配置される。また、ヘッドチップ14-5およびヘッドチップ14-6は、互いのX軸に沿う方向での位置が揃うように配置される。これにより、ヘッドチップ14-5は、ヘッドチップ14-6に対してY1方向にずれた位置に配置される。ただし、ヘッドチップ14-5は、ヘッドチップ14-3に対してY1方向に若干ずれた位置に配置される。
【0057】
以上のような各ヘッドチップ14に対してZ軸に沿う方向にみて重なるように、流路部材11の配線孔11a、回路基板12の配線孔12aおよびホルダー13の配線孔13aが配置される。配線孔11a、12a、13aのそれぞれは、V軸に沿う方向、すなわち、ヘッドチップ14のノズル列Ln1、Ln2の延びる方向DNに延びる形状をなす。このように、配線孔11a、12a、13aのそれぞれは、ヘッドチップ14ごとに個別に設けられる。なお、Z軸に沿う方向にみた配線孔11a、12a、13aの形状および大きさは、配線基板16を通すことが可能であればよく、
図6に示す例に限定されず、任意である。
【0058】
図7に示すように、各ヘッドチップ14には、配線基板16の一端が接続される。すなわち、ヘッドチップ14-1には、配線基板16-1の一端が接続され、ヘッドチップ14-2には、配線基板16-2の一端が接続され、ヘッドチップ14-3には、配線基板16-3の一端が接続され、ヘッドチップ14-4には、配線基板16-4の一端が接続され、ヘッドチップ14-5には、配線基板16-5の一端が接続され、ヘッドチップ14-6には、配線基板16-6の一端が接続される。
【0059】
各配線基板16は、ヘッドチップ14からホルダー13の配線孔13a、流路部材11の配線孔11a、回路基板12の配線孔12aをこの順に通ることにより回路基板12のZ1方向を向く面上に引き回される。そして、各配線基板16の他端は、回路基板12のZ1方向を向く面に設けられる図示しない端子にはんだや導電性接着剤等の導電性の接合剤により接合される。
【0060】
また、各配線基板16の一方の面には、駆動回路17が設けられる。駆動回路17は、ホルダー13の配線孔13a内に位置しており、配線孔13aの内壁面に対向する。なお、「対向」とは、対象となる2つの部材が他の部材を介さずに互いに接触または離反した状態で向かい合う場合のほか、対象となる2つの部材が分離部材18のようなシート状またはフィルム状の部材を介して向かい合う場合を含む。
【0061】
具体的には、駆動回路17-1は、配線基板16-1のW1方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW2方向を向く内壁面13c-1に対向する。内壁面13c-1は、「第1内壁面」の一例である。このように、内壁面13c-1は、駆動回路17-1が向く方向であるW1方向とは反対方向であるW2方向を向く面である。一方、駆動回路17-2は、配線基板16-2のW2方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW1方向を向く内壁面13c-2に対向する。内壁面13c-2は、「第2内壁面」の一例である。このように、内壁面13c-2は、駆動回路17-2が向く方向であるW2方向とは反対方向であるW1方向を向く面である。
【0062】
同様に、駆動回路17-3は、配線基板16-3のW1方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW2方向を向く内壁面13c-3に対向する。一方、駆動回路17-4は、配線基板16-4のW2方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW1方向を向く内壁面13c-4に対向する。また、駆動回路17-5は、配線基板16-5のW1方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW2方向を向く内壁面13c-5に対向する。一方、駆動回路17-6は、配線基板16-6のW2方向を向く面に設けられており、配線孔13aのW1方向を向く内壁面13c-6に対向する。以下では、内壁面13c-1~13c-6を区別せずに内壁面13cという場合がある。
【0063】
図7に示す例では、内壁面13c-1~13c-6は、互いに異なる配線孔13aの壁面である。
【0064】
このように、ホルダー13は、駆動回路17-1~17-6に対向する内壁面13c-1~13c-6を有する。
【0065】
また、
図8および
図9に示すように、各配線孔13aは、流路部材11の流路Pa1、Pa2とヘッドチップ14の開口HLとの直接的な接続を許容する。流路Pa1は、第1インクのための流路であり、流路Pa2は、第2インクのための流路である。
図8では、ヘッドチップ14-1と流路部材11との接続状態が示される。
図8および
図9に示す例では、流路部材11は、ヘッドチップ14に向かって配線孔13a内に挿入されるようにZ2方向に突出する部分を有しており、当該部分の先端(Z2方向での端)には、流路Pa1、Pa2が開口する。当該部分の先端がヘッドチップ14に接着剤等により液密に接合されることにより、流路Pa1、Pa2が開口HLに連通する。
【0066】
ここで、前述のように、流路部材11は、ホルダー13に積層され、樹脂で構成される。
図8および
図9に示すように、ホルダー13は、ヘッドチップ14-1と連通するとともに液体が流れる流路を有さない。これに対し、流路部材11は、ヘッドチップ14-1と連通するとともに液体が流れる流路Pa1、Pa2を有する。このため、駆動回路17からホルダー13に熱を逃しても、その熱によって流路部材11内の液体が加温されることが低減される。
【0067】
以上のようなホルダー13には、静電気が生じる場合がある。その静電気がホルダー13から駆動回路17へ流れてしまうと、駆動回路17が故障する虞がある。
【0068】
詳細に説明すると、前述の搬送機構30では、搬送ローラー対が紙等の媒体Mを挟持搬送するが、このとき、媒体Mには、搬送ローラーとの接触、摩擦、剥離の一連の動作により正の電荷が帯電する。これにより、媒体Mの表面電位が上昇する。このような帯電は、異材質の2つ物体同士の擦り合わせにより、当該2つの物体に正負の電気を帯びる現象であり、一般に摩擦帯電と呼ばれる。
【0069】
ここで、駆動回路17とホルダー13とが接触していない場合、媒体Mの帯電による電気は、媒体Mから媒体Mに対向する固定板15、ホルダー13、支持体41をこの順に経由した後に不図示のグランドに流れる。一方、駆動回路17とホルダー13とが直接的に接触している場合、媒体Mの帯電による電気は、媒体Mから固定板15、ホルダー13、駆動回路17をこの順で経由した後にグランドに流れる虞がある。
【0070】
駆動回路17を構成する電子部品の絶縁層の耐電圧は、80V~100V程度である。これに対し、前述の摩擦帯電等の静電気の電圧は、1kV~2kV程度である。このため、駆動回路17に静電気が流れると、当該絶縁層が静電気により絶縁破壊されてしまう。
【0071】
なお、前述のノズルプレート14cがシリコンで構成されるので、ノズルプレート14cを介して電気が流れることによる駆動回路17の破壊を防止するため、金属製の固定板15をグランドに接続することが好ましいが、媒体Mの帯電による電気が固定板15を介してホルダー13に伝わりやすくなってしまう。また、固定板15が樹脂等の絶縁体で構成される場合でも、媒体Mからホルダー13の側面近傍のZ2方向での端等に直接静電気が流れる可能性がある。
【0072】
そこで、このような静電気による駆動回路17の故障を防止するべく、液体噴射ヘッド10は、分離部材18-1、18-2、18-3を備える。
図7に示すように、分離部材18-1は、内壁面13c-1と駆動回路17-1との間に配置されることで、内壁面13c-1と駆動回路17-1とを導通させないとともに、内壁面13c-2と駆動回路17-2との間に配置されることで、内壁面13c-2と駆動回路17-2とを導通させない。分離部材18-2は、内壁面13c-3と駆動回路17-3との間に配置されることで、内壁面13c-3と駆動回路17-3とを導通させないとともに、内壁面13c-4と駆動回路17-4との間に配置されることで、内壁面13c-4と駆動回路17-4とを導通させない。分離部材18-3は、内壁面13c-5と駆動回路17-5との間に配置されることで、内壁面13c-5と駆動回路17-5とを導通させないとともに、内壁面13c-6と駆動回路17-6との間に配置されることで、内壁面13c-6と駆動回路17-6とを導通させない。
【0073】
このような分離部材18-1、18-2、18-3を用いることにより、ホルダー13に静電気が生じても、当該静電気がホルダー13から駆動回路17に流れることが防止される。このため、当該静電気による駆動回路17の故障を防止することができる。
【0074】
以下、分離部材18について詳述する。なお、以下では、分離部材18-1について代表的に説明するが、分離部材18-2、18-3は、対象となる駆動回路17が異なることによる配置が異なること以外は、分離部材18-1と同様に構成される。ただし、分離部材18-1、18-2、18-3が互いに異なる構成であってもよい。例えば、分離部材18-1、18-2、18-3の形状、厚さ、大きさおよび構成材料等が互いに異なってもよい。
【0075】
図7に示すように、分離部材18-1は、ヘッドチップ14-1およびヘッドチップ14-2に共通化して設けられる。ここで、前述のように、ヘッドチップ14-1とヘッドチップ14-2とはW軸に沿う方向で隣り合う。駆動回路17-1は、配線基板16-1の面のうちヘッドチップ14-1からヘッドチップ14-2へ向かう方向であるW1方向を向く面に配置される。一方、駆動回路17-2は、配線基板16-2の面のうちヘッドチップ14-2からヘッドチップ14-1へ向かう方向であるW2方向を向く面に配置される。このように、駆動回路17-1および駆動回路17-2が互いに対向するように配置される。このため、互いに隣り合うヘッドチップ14-1およびヘッドチップ14-2で分離部材18を共通化しやすいという利点がある。
【0076】
具体的に説明すると、分離部材18-1は、ベース部18aと第1部分18b-1と第2部分18b-2とを有する。
【0077】
ベース部18aは、Z軸に沿う方向を厚さ方向するシート状またはフィルム状の分離部材18-1の部分であり、液体噴射ヘッド10の他の構成要素に支持される。本実施形態のベース部18aは、流路部材11と回路基板12との間に配置されており、流路部材11および回路基板12のそれぞれに接着剤またはネジ留め等により固定される。なお、ベース部18aは、流路部材11と回路基板12との間で挟持されているだけでもよく、流路部材11および回路基板12のそれぞれに接着剤またはネジ留め等により固定されていなくてもよい。ここで、ベース部18aのW軸に沿う方向での幅は、隣り合う2つの配線孔11a間の距離よりも大きい。このため、第1部分18b-1と第2部分18b-2とのそれぞれを流路部材11から離れた位置からZ2方向に延ばすことができる。なお、第1部分18b-1と第2部分18b-2の形状または剛性等によっては、ベース部18aのW軸に沿う方向での幅は、隣り合う2つの配線孔11a間の距離と等しくてもよい。
【0078】
第1部分18b-1は、ベース部18aのW2方向での端から略Z2方向に延びる分離部材18-1の部分であり、内壁面13c-1と駆動回路17-1との間に介在する。このように、第1部分18b-1は、ベース部18aの一端で屈曲することで内壁面13c-1と駆動回路17-1との間に配置される。
図7に示す例では、第1部分18b-1の一方の面が内壁面13c-1に接触するとともに、第1部分18b-1の他方の面が駆動回路17-1に接触する。
【0079】
第2部分18b-2は、ベース部18aのW1方向での端から略Z2方向に延びる分離部材18-1の部分であり、内壁面13c-2と駆動回路17-2との間に介在する。このように、第2部分18b-2は、ベース部18aの他端で屈曲することで内壁面13c-2と駆動回路17-2との間に配置される。
図7に示す例では、第2部分18b-2の一方の面が内壁面13c-2に接触するとともに、第2部分18b-2の他方の面が駆動回路17-2に接触する。
【0080】
このように分離部材18-1がベース部18aと第1部分18b-1と第2部分18b-2とを有することにより、V軸に沿って見たときに分離部材18がU字形状となり、互いに隣り合うヘッドチップ14-1およびヘッドチップ14-2で分離部材18-1が共通化されるので、ヘッドチップ14-1およびヘッドチップ14-2で個別の分離部材を用いる態様に比べて、部品点数を削減することができる。
【0081】
本実施形態では、前述のように、第1部分18b-1の一方の面が内壁面13c-1に接触するとともに、第1部分18b-1の他方の面が駆動回路17-1に接触することから、分離部材18は、駆動回路17-1と内壁面13c-1との間でこれらの双方に接触する。同様に、第2部分18b-2の一方の面が内壁面13c-2に接触するとともに、第2部分18b-2の他方の面が駆動回路17-2に接触することから、分離部材18は、駆動回路17-2と内壁面13c-2との間でこれらの双方に接触する。
【0082】
このように、分離部材18-1は、駆動回路17-1と内壁面13c-1との間に挟持される。このため、分離部材18-1による熱伝導により、駆動回路17-1の熱を、分離部材18-1を介してホルダー13に効率的に逃すことができる。同様に、分離部材18-1は、駆動回路17-2と内壁面13c-2との間に挟持される。このため、分離部材18-1による熱伝導により、駆動回路17-2の熱を、分離部材18-2を介してホルダー13に効率的に逃すこともできる。ホルダー13は金属で構成されているため、液体噴射ヘッド10の外部へ放熱しやすい。
【0083】
ここで、分離部材18の厚さを薄くすることにより、駆動回路17の熱を、分離部材18を介してホルダー13に逃す効率を高めることができる。また、分離部材18が駆動回路17および内壁面13cのそれぞれに接触しても、分離部材18が絶縁体であることにより、ホルダー13に生じた静電気がホルダー13から駆動回路17に流れることが好適に防止される。
【0084】
なお、駆動回路17は、前述のように圧電素子14fごとに設けられるスイッチング素子を有するので、スイッチング動作により発熱しやすく、過昇温により誤作動等の不具合を生じる可能性がある。このため、前述のように駆動回路17の熱をホルダーに効率的に逃すことは、駆動回路17の安定動作を確保するうえで有用である。
【0085】
本実施形態では、前述のように、分離部材18がホルダー13に接触することから、分離部材18は、絶縁体である。このため、内壁面13cと駆動回路17との間が分離部材18により電気的に絶縁されるので、ホルダー13に生じた静電気がホルダー13から駆動回路17に流れることが好適に防止される。
【0086】
分離部材18に用いる絶縁体を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、PET、PP、PVC等の樹脂材料、ガラス、絶縁性セラミックス等が挙げられる。また、絶縁体は、パルプ等の繊維で構成される紙であってもよい。ここで、分離部材18に用いる絶縁体を構成する材料は、樹脂であることが好ましい。分離部材18に用いる絶縁体が樹脂で構成されることにより、当該絶縁体が絶縁性セラミックス等で構成される態様に比べて、分離部材18の成形が容易であり、大量生産に向いていることから、低コスト化を図ることができる。
【0087】
分離部材18は、シート状またはフィルム状である。このため、液体噴射ヘッド10における配線基板16の収容スペースが狭くても、分離部材18を容易に配置することができる。ここで、「シート状またはフィルム状」とは、厚さが1mm以下であること、好ましくは、厚さが0.2mm以下であること、より好ましくは、厚さが0.1mm以下であることをいう。すなわち、分離部材18の厚さは、駆動回路17と内壁面13cとの間に介在させることができればよく、特に限定されないが、1mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。
【0088】
分離部材18は、形状保持特性を有することが好ましい。形状保持性とは、シート状またはフィルム状の部材において、90°折り曲げた後の曲げ戻りが10°未満(好ましくは5°未満)である性質をいう。このように分離部材18が形状保持性を有することにより、駆動回路17と内壁面13cとの間に分離部材18を挿入する際、分離部材18が折れ曲がって挿入し難くなることが低減される。このため、液体噴射ヘッド10の組立時の分離部材18のハンドリング性を向上させることができる。
【0089】
以上のように、分離部材18を用いることにより、駆動回路17の静電気による故障を防止することができる。
【0090】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0091】
図10は、第2実施形態に係る液体噴射ヘッド10Aの断面図である。液体噴射ヘッド10Aは、分離部材18-1~18-3に代えて分離部材18A-1~18A-3を備えること以外は、前述の第1実施形態の液体噴射ヘッド10と同様に構成される。以下では、分離部材18A-1~18A-3を区別せずに分離部材18Aという場合がある。
【0092】
分離部材18Aは、第1実施形態の分離部材18よりも高い剛性を有すること以外は、第1実施形態の分離部材18と同様に構成される。
【0093】
このように、分離部材18A-1は、分離部材18A-1と内壁面13c-1との間に隙間d1を形成するように、内壁面13c-1が向く方向に駆動回路17-1を付勢する。ここで、分離部材18A-1では、第1部分18b-1の一方の面が内壁面13c-1に接触せずに、第1部分18b-1の他方の面が駆動回路17-1に接触することにより、隙間d1が形成される。このため、隙間d1が絶縁体として機能するので、ホルダー13に生じた静電気がホルダー13から駆動回路17-1に流れることが好適に防止される。なお、当該付勢の力は、例えば、分離部材18Aのバネ弾性力である。
【0094】
一方、分離部材18A-1は、分離部材18A-1と内壁面13c-2との間に隙間d2を形成するように、内壁面13c-2が向く方向に駆動回路17-2を付勢する。ここで、分離部材18A-1では、第2部分18b-2の一方の面が内壁面13c-2に接触せずに、第2部分18b-2の他方の面が駆動回路17-2に接触することにより、隙間d2が形成される。このため、隙間d2が絶縁体として機能するので、ホルダー13に生じた静電気がホルダー13から駆動回路17-2に流れることが好適に防止される。このように、分離部材18A-1は、分離部材18A-1と内壁面13c-1、13c-2との間にそれぞれ隙間を形成するように駆動回路17-1、17-2を互いに離れる方向に付勢する。
【0095】
同様に、分離部材18A-2は、分離部材18A-2と内壁面13c-3、13c-4との間にそれぞれ隙間を形成するように駆動回路17-3、17-4を互いに離れる方向に付勢する。また、分離部材18A-3は、分離部材18A-3と内壁面13c-5、13c-6との間にそれぞれ隙間を形成するように駆動回路17-5、17-6を互いに離れる方向に付勢する。
【0096】
本実施形態では、第1実施形態と同様、流路部材11は、ホルダー13に積層され、樹脂で構成される。また、ホルダー13は、ヘッドチップ14-1と連通するとともに液体が流れる流路を有さないのに対し、流路部材11は、ヘッドチップ14と連通するとともに液体が流れる流路Pa1、Pa2を有する。そして、分離部材18Aは、流路部材11に支持される。具体的には、
図10に示すように、流路部材11の回路基板12が載置される面とは異なる面にベース部18aが載置されることで、分離部材18Aは流路部材11に支持される。ここで、分離部材18Aが導体であってもよい。この場合、分離部材18Aを薄くしても、分離部材18Aが樹脂で構成される態様に比べて、分離部材18Aの剛性を高めることができる。このため、前述の隙間d1、d2等の隙間を容易に形成することができる。ここで、樹脂で構成される絶縁性の流路部材11に分離部材18Aが支持されることにより、分離部材18Aが導体であっても、駆動回路17-1が流路部材11を介して他の部材に導通することが防止される。
【0097】
分離部材18Aとして用いる導体を構成する材料としては、例えば、金属および導電性セラミックス等が挙げられる。当該金属としては、特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅またはその合金等が挙げられる。
【0098】
なお、分離部材18Aは、絶縁体であってもよい。分離部材18Aが絶縁体である場合、内壁面13c-1と駆動回路17-1との間が分離部材18Aにより電気的に絶縁されるので、前述の隙間d1による電気的な絶縁も相まって、ホルダー13に生じた静電気がホルダー13から駆動回路17に流れることが好適に防止される。
【0099】
以上の第2実施形態によっても、駆動回路17の静電気による故障を防止することができる。
【0100】
3.変形例
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0101】
3-1.変形例1
前述の各形態では、分離部材18、18Aが2つのヘッドチップ14に共通化される態様が例示されるが、この態様に限定されず、分離部材18、18Aがヘッドチップ14ごとに個別の部材で構成されてもよい。
【0102】
3-2.変形例2
前述の各形態では、分離部材18、18Aのベース部18aが流路部材11と回路基板12との間に配置される態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、ベース部18aが回路基板12のZ1方向を向く面に固定されてもよいし、流路部材11とホルダー13との間に配置されてもよい。また、分離部材18、18Aが絶縁体である場合には、ベース部18aが回路基板12または流路部材11と一体で構成されてもよい。ベース部18aは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。この場合、例えば、第1部分18b-1および第2部分18b-2のそれぞれが液体噴射ヘッド10の他の構成要素に支持される。
【0103】
3-3.変形例3
前述の各形態では、第1部分18b-1および第2部分18b-2のそれぞれがベース部18aからZ2方向に延びる態様が例示されるが、この態様に限定されず、例えば、ベース部18aがヘッドチップ14とホルダー13との間に配置され、かつ、第1部分18b-1および第2部分18b-2のそれぞれがベース部18aからZ1方向に延びてもよい。
【0104】
3-4.変形例4
前述の各形態では、液体噴射ヘッド10、10Aをラインヘッドに用いる態様が例示されるが、この態様に限定されず、液体噴射ヘッド10、10Aは、媒体Mの幅方向に往復移動させるキャリッジシリアル型のヘッドに用いてもよい。この場合、少なくとも1つの液体噴射ヘッド10が媒体Mの幅方向に往復移動させるキャリッジに搭載される。
【0105】
3-5.変形例5
前述の各形態では、循環機構50を用いる態様が例示されるが、この態様に限定されず、循環機構50が省略されてもよい。
【0106】
3-6.変形例6
前述の各形態で例示する液体噴射装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本開示の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【0107】
4.付記
本開示のまとめを以下に付記する。
【0108】
(付記1)本開示の好適例である第1態様の液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のノズルを有する第1ヘッドチップと、第1駆動回路を有し、前記第1ヘッドチップと電気的に接続された第1配線基板と、前記第1ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための第1露出開口部を有し、前記第1ヘッドチップが固定された固定板と、前記第1駆動回路と対向する第1内壁面を有し、金属で構成され、かつ、前記固定板との間で前記第1ヘッドチップを保持するホルダーと、前記第1内壁面と前記第1駆動回路との間に配置されることで、前記第1内壁面と前記第1駆動回路とを導通させない分離部材と、を備える。
【0109】
以上の第1態様では、分離部材が第1内壁面と第1駆動回路との間に配置されることで第1内壁面と第1駆動回路とを導通させないので、ホルダーに静電気が生じても、当該静電気がホルダーから第1駆動回路に流れることが防止される。このため、当該静電気による第1駆動回路の故障を防止することができる。「対向」とは、対象となる2つの部材が他の部材を介さずに互いに接触または離反した状態で向かい合う場合のほか、対象となる2つの部材が分離部材のようなシート状またはフィルム状の部材を介して向かい合う場合を含む。
【0110】
(付記2)第1態様の好適例である第2態様において、前記分離部材は、絶縁体である。以上の第2態様では、第1内壁面と第1駆動回路との間が絶縁されるので、ホルダーに生じた静電気がホルダーから第1駆動回路に流れることが好適に防止される。
【0111】
(付記3)第2態様の好適例である第3態様において、前記分離部材は、シート状またはフィルム状である。以上の第3態様において、第1配線基板の収容スペースが狭くても、分離部材を容易に配置することができる。ここで、「シート状またはフィルム」とは、厚さが1mm以下であること、好ましくは、厚さが0.2mm以下であること、より好ましくは、厚さが0.1mm以下であることをいう。
【0112】
(付記4)第3態様の好適例である第4態様において、前記分離部材は、前記第1駆動回路と前記第1内壁面との間に挟持される。以上の第4態様では、第1駆動回路の熱を、分離部材を介してホルダーに効率的に逃すことができる。ここで、分離部材の厚さを薄くすることにより、第1駆動回路の熱を、分離部材を介してホルダーに逃す効率を高めることができる。また、分離部材が第1駆動回路および第1内壁面のそれぞれに接触しても、分離部材が絶縁体である場合、ホルダーに生じた静電気がホルダーから第1駆動回路に流れることが好適に防止される。
【0113】
(付記5)第4態様の好適例である第5態様において、前記ホルダーに積層され、樹脂で構成された流路部材を備え、前記ホルダーは、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有さず、前記流路部材は、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有する。以上の第5態様では、第1駆動回路からホルダーに熱を逃しても、その熱によって流路部材内の液体が加温されることが低減される。
【0114】
(付記6)第3態様の好適例である第6態様において、前記分離部材は、形状保持特性を有する。以上の第6態様では、第1駆動回路と第1内壁面との間に分離部材を挿入する際、分離部材が折れ曲がって挿入し難くなることが低減される。このため、液体噴射ヘッドの組立時の分離部材のハンドリング性を向上させることができる。ここで、形状保持性とは、シート状またはフィルム状の部材において、90°折り曲げた後の曲げ戻りが10°未満(好ましくは5°未満)である性質をいう。
【0115】
(付記7)第2態様の好適例である第7態様において、前記分離部材は、形状保持特性を有する。以上の第7態様では、第1駆動回路と第1内壁面との間に分離部材を挿入する際、分離部材が折れ曲がって挿入し難くなることが低減される。このため、液体噴射ヘッドの組立時の分離部材のハンドリング性を向上させることができる。
【0116】
(付記8)第2態様の好適例である第8態様において、前記絶縁体は、樹脂で構成される。以上の第8態様では、絶縁体が絶縁性セラミックス等である態様に比べて、分離部材の成形が容易であり、大量生産に向いていることから、低コスト化を図ることができる。
【0117】
(付記9)第1態様の好適例である第9態様において、前記分離部材は、前記分離部材と前記第1内壁面との間に隙間を形成するように、前記第1内壁面が向く方向に前記第1駆動回路を付勢する。以上の第9態様では、当該隙間が絶縁体として機能するので、ホルダーに生じた静電気がホルダーから第1駆動回路に流れることが好適に防止される。
【0118】
(付記10)第9態様の好適例である第10態様において、前記ホルダーに積層され、樹脂で構成された流路部材を備え、前記ホルダーは、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有さず、前記流路部材は、前記第1ヘッドチップと連通するとともに液体が流れる流路を有し、前記分離部材は、導体であり、かつ、前記流路部材に支持される。以上の第10態様では、分離部材を薄くしても、分離部材が樹脂で構成される態様に比べて、分離部材の剛性を高めることができる。このため、当該隙間を容易に形成することができる。ここで、樹脂で構成される絶縁性の流路部材に分離部材が支持されることにより、分離部材が導体であっても、第1駆動回路が流路部材を介して他の部材に導通することが防止される。
【0119】
(付記11)第9態様の好適例である第11態様において、前記分離部材は、絶縁体である。以上の第11態様では、第1内壁面と第1駆動回路との間が絶縁されるので、ホルダーに生じた静電気がホルダーから第1駆動回路に流れることが好適に防止される。
【0120】
(付記12)第1態様の好適例である第12態様において、液体を噴射する複数のノズルを有し、前記固定板と前記ホルダーとの間で保持された第2ヘッドチップと、第2駆動回路を有し、前記第2ヘッドチップと電気的に接続された第2配線基板と、を備え、前記固定板は、前記第2ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための第2露出開口部を有し、前記ホルダーは、前記第2駆動回路と対向する第2内壁面を有し、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとは隣り合い、前記第1駆動回路は、前記第1配線基板の面のうち前記第1ヘッドチップから前記第2ヘッドチップへ向かう方向を向く面に配置され、前記第2駆動回路は、前記第2配線基板の面のうち前記第2ヘッドチップから前記第1ヘッドチップへ向かう方向を向く面に配置される。以上の第12態様では、第1駆動回路および第2駆動回路が互いに対向するように配置されるので、互いに隣り合う第1ヘッドチップおよび第2ヘッドチップで分離部材を共通化しやすいという利点がある。
【0121】
(付記13)第12態様の好適例である第13態様において、前記分離部材は、ベース部と、前記ベース部の一端で屈曲することで前記第1内壁面と前記第1駆動回路との間に配置された第1部分と、前記ベース部の他端で屈曲することで前記第2内壁面と前記第2駆動回路との間に配置された第2部分と、を有する。以上の第13態様では、互いに隣り合う第1ヘッドチップおよび第2ヘッドチップで分離部材が共通化されるので、第1ヘッドチップおよび第2ヘッドチップで個別の分離部材を用いる態様に比べて、部品点数を削減することができる。
【0122】
(付記14)第1態様の好適例である第14態様において、前記固定板は、金属で構成されている。以上の第14態様では、固定板に静電気が生じても、当該静電気がホルダーを介して固定板から第1駆動回路に流れることが防止される。
【0123】
(付記15)本開示の好適例である第14態様の液体噴射装置は、前述の第1態様から第14態様のいずれかの液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドへ液体を供給するための液体貯留部と、を備える。以上の第14態様では、信頼性に優れる液体噴射装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0124】
10…液体噴射ヘッド、10A…液体噴射ヘッド、11…流路部材、11a…配線孔、11b…接続管、11b-1…接続管、11b-2…接続管、11b-3…接続管、11b-4…接続管、11c1…層、11c2…層、12…回路基板、12a…配線孔、12b…孔、12c…コネクター、13…ホルダー、13a…配線孔、13b…凹部、13c…内壁面、13c-1…内壁面(第1内壁面)、13c-2…内壁面(第2内壁面)、13c-3…内壁面、13c-4…内壁面、13c-5…内壁面、13c-6…内壁面、14…ヘッドチップ、14-1…ヘッドチップ(第1ヘッドチップ)、14-2…ヘッドチップ(第2ヘッドチップ)、14-3…ヘッドチップ、14-4…ヘッドチップ、14-5…ヘッドチップ、14-6…ヘッドチップ、14a…流路基板、14b…圧力室基板、14c…ノズルプレート、14d…吸振体、14e…振動板、14f…圧電素子、14g…カバー、14h…ケース、15…固定板、15a-1…露出開口部(第1露出開口部)、15a-2…露出開口部(第2露出開口部)、16…配線基板、16-1…配線基板(第1配線基板)、16-2…配線基板(第2配線基板)、16-3…配線基板、16-4…配線基板、16-5…配線基板、16-6…配線基板、17…駆動回路、17-1…駆動回路(第1駆動回路)、17-2…駆動回路(第2駆動回路)、17-3…駆動回路、17-4…駆動回路、17-5…駆動回路、17-6…駆動回路、18…分離部材、18-1…分離部材、18-2…分離部材、18-3…分離部材、18A…分離部材、18A-1…分離部材、18A-2…分離部材、18A-3…分離部材、18a…ベース部、18b-1…第1部分、18b-2…第2部分、20…制御ユニット、30…搬送機構、40…液体噴射モジュール、41…支持体、41a…取付孔、50…循環機構、60…液体貯留部、100…液体噴射装置、C…圧力室、Com…駆動信号、DM…方向、DN…方向、FN…ノズル面、HL…開口、Ln1…ノズル列、Ln2…ノズル列、M…媒体、N…ノズル、Na…連通流路、Pa1…流路、Pa2…流路、R…リザーバー、R1…第1流路、R2…第2流路、Ra…供給流路、S…空間、SI…制御信号、d1…隙間、d2…隙間。