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特開2024-134505オレフィン重合用触媒、オレフィン重合体の製造方法および遷移金属化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134505
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒、オレフィン重合体の製造方法および遷移金属化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20240926BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240926BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20240926BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
C07F7/00 A CSP
C07F7/00 Z
C07F7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198370
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2023044538
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 航
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 文哉
(72)【発明者】
【氏名】平尾 政紀
(72)【発明者】
【氏名】道上 憲司
【テーマコード(参考)】
4H049
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VN06
4H049VN07
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ08
4H049VQ12
4H049VQ35
4H049VR22
4H049VR24
4H049VR32
4H049VR42
4H049VU14
4H049VW01
4H049VW02
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD07
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
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4J128BC24B
4J128BC25B
4J128BC27B
4J128BC28B
4J128CA08B
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4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA03
4J128FA04
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA15
4J128GA19
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特異な分子量分布のオレフィン重合体を製造し得るオレフィン重合用触媒、オレフィン重合体の製造方法、および遷移金属化合物を提供すること。
【解決手段】】下記一般式(A-1)で表される遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(A-1)で表される遷移金属化合物と、
【化1】
〔式(A-1)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
Mは、周期表第4族の金属原子である。〕
(B)(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)前記遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合用触媒。
【請求項2】
前記R1が、ビフェニル基または置換ビフェニル基から選ばれる置換基である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
前記R4およびR5が、ハロゲン原子である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
前記Mが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選ばれる遷移金属原子である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィンが、炭素数2~30のオレフィンから選ばれるオレフィンである、請求項5に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、または1-ブテンから選ばれるオレフィンである、請求項5に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(A-2)で表される遷移金属化合物。
【化2】
〔式(A-2)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
M’は、チタン、ハフニウムから選ばれる遷移金属原子である。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属錯体化合物を用いる新規のオレフィン重合用触媒、オレフィンの重合方法および新規の遷移金属化合物に関する。詳細には、複数の配位子部位が特定の置換基で連結した構造を有する遷移金属化合物を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン共重合体やプロピレン重合体などのオレフィン重合体を製造するための触媒として、メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物などの共触媒とからなる触媒が知られている。
【0003】
かかる触媒としては、例えば、複数のインデニル骨格、あるいはそれを部分水素添加した骨格を比較的コンパクトな置換基で架橋した構造を有する配位子を含むメタロセン化合物とそれを用いた重合触媒およびオレフィン重合体の製造方法が報告されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この様なメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および有機ホウ素化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを組み合わせた重合触媒は、エチレンや炭素数3~20のα-オレフィンの単独重合体や共重合体を製造することが出来る。また得られた重合体は、比較的分子量分布の狭い重合体である場合が多い傾向を示す。
【0005】
一方、特許文献2には、インデニル骨格の特定の位置で架橋基と結合する構造のメタロセン化合物とそれを用いたオレフィン重合触媒が開示されている。
また、非特許文献1には、様々なジルコニウム錯体化合物を用いた有機合成反応が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許公開公報783022号
【特許文献2】欧州特許公開公報1059300号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dalton Trans. 2021, 50, 15802-25820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒は、分子量分布や立体規則性分布の比較的狭いオレフィン重合体や、組成分布が比較的狭いオレフィン共重合体を与える傾向があるなどのユニークな性質を有するが、市場からはより高度な性能のオレフィン重合体を求められている。
【0009】
例えば、得られる重合体の溶融流動性や剛性などの観点では、分子量分布は広い方が好適な場合がある。上記の様なオレフィン重合用触媒を用いて、多段重合することで広分子量分布オレフィン重合体を得る試みもなされているが、特に高い分子量の重合体成分を含む広分子量分布オレフィン重合体を製造するのは困難な場合がある様である(Mz/Mwがその指標となることがある。)。
【0010】
上記の観点から本発明は、従来にない特徴を有するオレフィン重合用触媒となり得る遷移金属化合物やそれを含むオレフィン重合用触媒、オレフィン重合体の製造方法を提供することを課題として検討したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記の課題に鑑み検討した結果、特定の構造を有する配位子を有するメタロセン化合物が、従来のメタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒では考えられないような分子量分布を有するオレフィン重合体を製造できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0012】
[1](A)下記一般式(A-1)で表される遷移金属化合物と、
【0013】
【化1】
【0014】
〔式(A-1)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
Mは、周期表第4族の金属原子である。〕
(B)(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)前記遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合用触媒。
【0015】
[2] 前記R1が、ビフェニル基または置換ビフェニル基から選ばれる置換基である、[1]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0016】
[3] 前記R4およびR5が、ハロゲン原子である、[1]または[2]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0017】
[4] 前記Mが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選ばれる遷移金属原子である、[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【0018】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する、オレフィン重合体の製造方法。
【0019】
[6] 前記オレフィンが、炭素数2~30のオレフィンから選ばれるオレフィンである、[5]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0020】
[7] 前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、または1-ブテンから選ばれるオレフィンである、[5]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0021】
[8] 下記一般式(A-2)で表される遷移金属化合物。
【0022】
【化2】
【0023】
〔式(A-2)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
M’は、チタン、ハフニウムから選ばれる遷移金属原子である。〕
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所定の遷移金属化合物を、エチレンや炭素数3以上のオレフィンの重合や共重合に触媒として用いると、特に分子量分布が、高分子量側にも広がりを有する(Mz/Mw値が高い)傾向を有するオレフィン重合体を製造することが出来る。また、そのオレフィン重合体はGPC測定では、二峰性の分子量分布を示すことがある。この様なオレフィン重合体は、溶融流動性や、樹脂やエラストマーとしての各種物性でユニークな性質を示す可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、(A)特定の遷移金属化合物と、(B)周期表の第13族元素を含む様な特定の化合物とを含むことを特徴とする。以下、先ず上記の各成分について説明する。
【0026】
〔遷移金属化合物(A)〕
本発明のオレフィン重合触媒に用いる遷移金属化合物(A)は、以下の一般式(A-1)で表され、以下の要件を満たすことで特定される。
【0027】
【化3】
【0028】
〔式(A-1)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
Mは、周期表の4族金属原子である。〕
【0029】
(R1
前記R1は、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロへプチル基などの、好ましくは4~10員環の環状構造を有する基が、共有結合や炭化水素基、酸素原子(-O-:先の-は共有結合を示す)や窒素原子含有基等で連結した構造である。具体的には、環状構造が直接連結した構造を有する基としては、ビフェニル基、置換ビフェニル基、ビシクロヘキシル基、置換ビシクロヘキシル基、ビシクロペンチル基、置換ビシクロペンチル基、ビシクロブチル基、置換ビシクロブチル基、ビシクロヘプチル基、置換ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロオクチル基などを挙げることが出来る。また、ビスフェニルメチレン基の様な炭化水素基等を介して環状構造が結合する構造を有する基も例示できる。
【0030】
これらの中でも、比較的剛直な構造が好ましい場合が多く、そのような構造を有する基としては、ビフェニル基、置換ビフェニル基が好ましい。前記置換ビフェニル基の置換基としては、後述するR2、R2'、R3、R3'置換基と同様の置換基を挙げることが出来る。
【0031】
(R2、R2'、R3、R3'
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基である。
【0032】
2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であることが好ましい。R2、R2'、R3、およびR3'は、それぞれ複数存在する場合を含む基であり、それらは互いに結合して環構造を形成することもできる。
【0033】
前記炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の環状飽和炭化水素基、炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基が例示される。
【0034】
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など;分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1~6である。
【0035】
炭素数3~20の環状飽和炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など;これらの環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~17の炭化水素基で置き換えられた基である、3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは5~11である。
【0036】
炭素数2~20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など;アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~4である。
【0037】
炭素数3~20の環状不飽和炭化水素基としては、シクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など;これらの環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1~15の炭化水素基で置き換えられた基である、3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など;直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3~19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~10である。
【0038】
ケイ素含有基としては、前述した炭素数1~20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基;ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1~10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6~18が好ましい。
【0039】
窒素含有基としては、アミノ基、ニトロ基、N-モルフォリニル基や、前述した炭素数1~20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構造単位が、炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構造単位が、炭素数1~20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基である、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
【0040】
酸素含有基としては、水酸基や、前述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構造単位が、炭素数1~20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
【0041】
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。好ましくは塩素または臭素である。
【0042】
ハロゲン含有基としては、前述した炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
【0043】
本発明においては、R2、R2'、R3、R3'置換基は、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基であることが好ましく、より好ましく炭化水素基、酸素含有炭化水素基である。前記置換基中に含まれる好ましい炭素数は、1~10であり、さらに好ましくは、1~6である。
【0044】
(R4およびR5
前記R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基であり、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基である。
前記ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基および窒素含有基の具体例としては、それぞれ、R2、R2'、R3、R3'置換基にて例示した原子および置換基の具体例と同様のものが例示される。
【0045】
ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられるが、好ましくは塩素または臭素、さらに好ましくは塩素である。
炭素数1~20の炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~4の炭化水素基であり、より好ましくは、メチル基またはエチル基から選ばれる炭化水素基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0046】
(M)
Mは、周期表第4族元素の原子であり、具体的には、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムを挙げることができる。これらの原子は、アニオン(配位)重合性が高いとされる元素である。これらの中でも、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
遷移金属化合物(A)製造の観点では、R1置換基が比較的大きな基であることを考慮すると、ジルコニウムよりも大きなハフニウムが好ましい場合がある。ただし、オレフィン重合用触媒としての求められる性能に応じて、前記Mの種類は適宜決定される。
【0047】
以下に、遷移金属化合物(A)の具体例を示すが、本発明に用いられる遷移金属化合物(A)はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
【化8】
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
【化12】
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
本発明に用いる遷移金属化合物(A)は、後述する様に、オレフィンの重合において、分子量分布の広いオレフィン重合体を得ることができる。特に、高分子量側に分布の広がりを有することを示唆するMz/Mw値が、比較的大きな値となるオレフィン重合体を製造するうえで有利である。また、このようなオレフィン重合体は、GPC測定で得られるチャートが二峰性を示すことが多いと言うユニークな特徴を有する。
【0063】
〔化合物(B)〕
遷移金属化合物(A)を用いてオレフィンの重合を行う際に、遷移金属化合物(A)と組み合わせて、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を用いることができる。以下、これら各成分について説明する。
【0064】
((B-1)有機金属化合物)
本発明で用いられる有機金属化合物(B-1)として、具体的には下記一般式(B-1a)~(B-1c)で表される周期表第1、2、12、13族の少なくとも1種の元素を含む化合物が挙げられる:
【0065】
a pAl(ОRbqrs …(B-1a)
(一般式(B-1a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0066】
3AlRc 4 …(B-1b)
(一般式(B-1b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素数が1~15
、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される周期表第1族のアルカリ金属とアルミニウムとの錯アルキル化物;
【0067】
de4 …(B-1c)
(一般式(B-1c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期表第2族のアルカリ土類金属または第12族の金属とのジアルキル化合物。
【0068】
前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(B-1a-1)~(B-1a-4)で表される化合物を例示できる:
【0069】
a pAl(ОRb3-p …(B-1a-1)
(式(B-1a-1)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0070】
a pAlY3-p …(B-1a-2)
(式(B-1a-2)中、Raは炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0071】
a pAlH3-p …(B-1a-3)
(式(B-1a-3)中、Raは炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物;
【0072】
a pAl(ОRbqs …(B-1a-4)
(式(B-1a-4)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0073】
一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i-C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a 2.5Al(ОRb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0074】
また、(B-1a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として、たとえば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0075】
前記一般式(B-1b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
【0076】
前記一般式(B-1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0077】
またその他にも、有機金属化合物(B-1)としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0078】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを、前記有機金属化合物(B-1)として使用するこ
ともできる。
【0079】
有機金属化合物(B-1)のなかでは、触媒活性の点から有機アルミニウム化合物が好ましい。
上記のような有機金属化合物(B-1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0080】
((B-2)有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0081】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0082】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0083】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0084】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0085】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0086】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0087】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0088】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は、1種単独で、または混合して用いることができる。
【0089】
本発明に係る有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2a)または(B-2b)で表される構造のアルミノキサン、および下記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と下記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
【0090】
【化18】
【0091】
一般式中、Rcは、それぞれ独立に、炭素数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができる。これら例示したもののうちで、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましく、前記一般式(B-2a)、(B-2b)および(B-2c)中、Rcの一部が塩素、臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率が40質量%以下であってもよい。
【0092】
前記一般式(B-2a)および(B-2b)中、rは2~500の整数を示し、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の範囲にある。
【0093】
前記一般式(B-2c)および(B-2d)中、s、tはそれぞれ1以上の整数を示す。
前記一般式(B-2c)で表される繰り返し単位と前記一般式(B-2d)で表される繰り返し単位とを有するアルミノキサンは、ベンゼンの凝固点降下法により測定した分子量が200~2000の範囲内にあることが好ましい。
【0094】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0095】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0096】
【化19】
【0097】
一般式(B-2e)中、R15は炭素数が1~10の炭化水素基を示し、4つのR16は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数が1~10の炭化水素基を示す。
【0098】
前記一般式(B-2e)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0099】
15-B(ОH)2 …(B-2f)
一般式(B-2f)中、R15は前記一般式(B-2e)におけるR15と同じ基を示す。
【0100】
前記一般式(B-2f)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0101】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0102】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0103】
遷移金属化合物(A)に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0104】
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0105】
((B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物)
本発明で用いられる、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0106】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0107】
前記イオン化イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(B-3a)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化20】
【0109】
一般式(B-3a)中、R17はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R18~R21は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0110】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0111】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0112】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0113】
17としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0114】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0115】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0116】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0117】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0118】
さらにイオン化イオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(B-3b)または(B-3c)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0119】
【化21】
式(B-3b)中、Etはエチル基を示す。
【0120】
【化22】
式(B-3c)中、Etはエチル基を示す。
【0121】
イオン化イオン性化合物(化合物(B-3))の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0122】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、たとえば4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0123】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫からなる群から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンからなる群から選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。
また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族のアルカリ金属または2族のアルカリ土類金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0124】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンからなる群から選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0125】
上記のようなイオン化イオン性化合物(遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3))は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0126】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記遷移金属化合物(A)と、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、およびイオン化イオン性化合物(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とともに、必要に応じて下記の担体(C)を含んでもよい。
【0127】
〔(C)担体〕
本発明で用いられる担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。担体(C)に前記遷移金属化合物(A)および化合物(B)を担持させることで、良好なモルフォロジーのポリマーが得られる。
【0128】
前記無機化合物としては、多孔質酸化物、固体状アルミノキサン化合物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0129】
前記多孔質酸化物として、具体的にはSiО2、Al2О3、MgО、ZrО、TiО2、B2О3、CaО、ZnО、BaО、ThО2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用することができ、さらに、例えば天然または合成ゼオライト、SiО2-MgО、SiО2-Al2О3、SiО2-TiО2、SiО2-V2О5、SiО2-Cr2О3、SiО2-TiО2-MgОなどを使用することができる。これらのうち多孔質酸化物としては、SiО2および/またはAl2О3を主成分とするものが好ましい。
【0130】
なお、上記多孔質酸化物は、少量のNa2CО3、K2CО3、CaCО3、MgCО3、Na2SО4、Al2(SО43、BaSО4、KNО3、Mg(NО32、Al(NО33、Na2О、K2О、Li2Оなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0131】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に用いられる多孔質酸化物は、粒径が好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μmであって、比表面積が好ましくは50~1000m2/g、より好ましくは100~700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3~3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して使用される。
【0132】
前記固体状アルミノキサン化合物としては、前記式(B-2a)~(B-2d)で示したアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
【0133】
本発明で用いられる前記固体状アルミノキサンは、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分やポリエチレン、ポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものを示す。本発明中で用いる「固体状」の意味は、アルミノキサン成分(B-2)が用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、例えば後述のように前記遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを接触させてオレフィン重合用固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエンなどの不活性炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において化合物(B)が固体状態であることを表す。また、例えば後述のように化合物(B)を用いて調製されるオレフィン重合用固体触媒成分を用いて懸濁重合を行う場合にヘキサンやヘプタン、トルエンなどの炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において触媒成分中に含まれる化合物(B)が固体状態であることも必要な要件である。溶媒の代わりに液化モノマー中で重合を行うバルク重合や、モノマーガス中で重合を行う気相重合でも同様である。
【0134】
上記の環境下において化合物(B)が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において化合物(B)の一部が多少溶出したとしても本発明の趣旨を逸脱することはない。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、かさ密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマーかさ密度が好ましい。本発明におけるかさ密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0135】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンは、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対し溶解する割合が、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲を満足する。
【0136】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンのn-ヘキサンに対する溶解割合は、25℃に保持された50mlのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン担体2gを加えた後2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フィルターを用いて溶液部を分離して、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求めた。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する前記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定する。
【0137】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンとしては、公知の固体状アルミノキサンを際限なく用いることができる。公知の製造方法として例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開第2010/55652号などが挙げられる。
【0138】
本発明で用いられる固体状アルミノキサンの平均粒子径は、一般に0.01~50000μm、好ましくは1~1000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。
【0139】
固体状アルミノキサンの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。固体状アルミノキサンの粒径は、ピタゴラス法最大長を粒子像より測定した。即ち、水平方向、垂直方向それぞれに、粒子像を2本の平行線ではさんだ長さを測り、下式をもって計算で求められる。
粒径=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)20.5
【0140】
固体状アルミノキサンの重量平均粒子径は、上記で求めた粒径を用いて下式により求められる。
平均粒径=Σnd4/Σnd3(ここで、n;粒子個数、d;粒径)
【0141】
本発明に好ましく用いられる固体状アルミノキサンは、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
【0142】
前記無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0143】
前記粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、上記イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0144】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0145】
さらに、粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、
イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsО42・H2О、α-Zr(HPО42、α-Zr(KPО42・3H2О、α-Ti(HPО42、α-Ti(HAsО42・H2О、α-Sn(HPО42・H2О、γ-Zr(HPО42、γ-Ti(HPО42、γ-Ti(NH4PО42・H2Оなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0146】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3~5cc/gであることが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~30000Åの範囲について測定される。
【0147】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0148】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0149】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きなかさ高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このようなかさ高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(ОR)4、Zr(ОR)4、PО(ОR)3、B(ОR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13О4(ОH)247+、[Zr4(ОH)142+、[Fe3О(ОCОCH36+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(ОR)4、Al(ОR)3、Ge(ОR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基などを示す)などを加水分解して得た重合物、SiО2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物なども挙げられる。
【0150】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0151】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0152】
前述のように担体(C)は無機または有機の化合物であるが、有機化合物としては、粒径が10~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0153】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、上記化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、必要に応じてさらに下記の特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0154】
〔(D)有機化合物成分〕
本発明において有機化合物成分(D)は、必要に応じて、本発明のオレフィン重合用触媒の重合性能および生成ポリマーの物性(たとえば生成ポリマーの分子量)を向上(分子量であれば、高分子量化)させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0155】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R22-ОHで表されるものが使用され、ここで、R22は炭素数1~50の炭化水素基(フェノール類の場合、炭素数は6~50)または炭素数1~50(フェノール類の場合、炭素数は6~50)のハロゲン化炭化水素基を示す。
【0156】
アルコール類としては、R22がハロゲン化炭化水素基のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素数1~20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0157】
上記カルボン酸としては、通常、R23-CООHで表されるものが使用される。R23は炭素数1~50の炭化水素基または炭素数1~50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に、炭素数1~50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0158】
上記リン化合物としては、P-О-H結合を有するリン酸類、P-ОR、P=О結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
上記スルホン酸塩としては、下記一般式(D-a)で表されるものが挙げられる。
【0159】
【化23】
【0160】
一般式(D-a)中、M5は周期表第1~14族の原子であり、R24は水素、炭素数
1~20の炭化水素基または炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基であり、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~20の炭化水素基または炭素数が1~20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1~7の整数であり、uは1~7の整数であり、また、t-u≧1である。
【0161】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合する工程を含むことによりオレフィン重合体を得る。なお、前述のように、本明細書においてオレフィンとは、重合性二重結合を有するあらゆる化合物を指す。
【0162】
重合における、本発明の触媒を構成する各成分の使用法、重合器への添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
【0163】
(1)遷移金属化合物(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)遷移金属化合物(A)および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0164】
(3)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した触媒成分、化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0165】
(5)遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
(6)遷移金属化合物(A)と化合物(B)とを担体(C)に担持した触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0166】
(7)化合物(B)を担体(C)に担持した触媒成分、遷移金属化合物(A)、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0167】
(8)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
(9)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)を任意の順序重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0168】
(10)遷移金属化合物(A)、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0169】
(11)化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(12)化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した成分、および遷移金属化合物(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0170】
(13)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(14)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)、有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(15)遷移金属化合物(A)と化合物(B)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)と接触させられる化合物(B)と、有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0171】
(16)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、化合物(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(17)遷移金属化合物(A)を担体(C)に担持した成分、および化合物(B)と有機化合物成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0172】
(18)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
(19)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を予め接触させた触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、遷移金属化合物(A)および有機化合物成分(D)と接触させられる化合物(B)と、単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0173】
(20)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加方法。
(21)遷移金属化合物(A)と化合物(B)と有機化合物成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、および化合物(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、担体(C)に担持された化合物(B)と単独で添加される化合物(B)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0174】
上記の担体(C)に遷移金属化合物(A)が担持された固体触媒成分、担体(C)に遷移金属化合物(A)および化合物(B)が担持された固体触媒成分には、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
【0175】
本発明では、(共)重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、また(共)重合に供するオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0176】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、遷移金属化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは
10-10~10-3モルになるような量で用いられる。
【0177】
有機金属化合物(B-1)は、有機金属化合物(B-1)と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常0.01~100000、好ましくは0.05~50000となるような量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10~500000、好ましくは20~100000となるような量で用いられる。遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)(B-3)は、イオン化イオン性化合物(B-3)と、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1~50、好ましくは1~30、より好ましくは1~20となるような量で用いられる。
【0178】
有機化合物成分(D)は、有機金属化合物(B-1)とのモル比〔(D)/(B-1)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)とのモル比〔(D)/(B-2)〕が、通常0.001~2、好ましくは0.005~1となるような量で用いられる。有機化合物成分(D)は、イオン化イオン性化合物(B-3)とのモル比〔(D)/(B-3)〕が、通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。
【0179】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧~100kg/cm2-G、好ましくは常圧~50kg/cm2-Gの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0180】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物(B)の量により調節することもできる。
【0181】
上記の水素は連鎖移動剤であり、分子量を低くする成分である。これをオレフィン重合反応に併用しても、重合活性への影響が少ない傾向がある。本願の遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、分子量の高い成分を製造し易い性質を示すことから、分子量調節の自由度が高いと言うメリットを有すると言える。
【0182】
このような本発明のオレフィン重合用触媒により重合することができるオレフィンとしては、重合性二重結合を有すれば特に限定されないが、炭素数が2~30、好ましくは2~20、より好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のα-オレフィン、たとえば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;
炭素数が3~30、好ましくは3~20、より好ましくは3~10の環状オレフィン、たとえば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0183】
本発明のオレフィン重合用触媒は、エチレンの単独重合、またはエチレンと炭素数3~20のオレフィン、好ましくは炭素数3~10の直鎖状または分岐状のα-オレフィンとの共重合、プロピレンの単独重合や、プロピレンとエチレンや炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれるオレフィンとの共重合に用いることがより好ましい。α-オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0184】
エチレンと炭素数3~20、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合の場合、α-オレフィン(以下、オレフィンAとも称す)としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。これらのα-オレフィンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。これら中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0185】
α-オレフィンとしてエチレンを用い、かつ上記オレフィンAを用いる場合、エチレンと上記オレフィンAとの使用量比は、エチレン:上記オレフィンA(モル比)で、通常1:10~5000:1、好ましくは1:5~1000:1である。
【0186】
プロピレンと、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選ばれるオレフィン(オレフィンB)との使用量比は、プロピレン:上記オレフィンB(モル比)で、通常1:10~5000:1、好ましくは1:5~1000:1である。オレフィンBの好ましい例としては、プロピレンを除いたオレフィンAと同様である。
【0187】
本発明のオレフィン重合用触媒は、極性基(たとえば、カルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)を有する鎖状の公知の不飽和炭化水素を(共)重合させてもよい。
【0188】
また本発明のオレフィン重合用触媒は、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを(共)重合させてもよい。
【0189】
前記ジエンまたは前記ポリエンとしては、炭素数が4~30、好ましくは4~20であり二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物が挙げられる。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン;
さらに芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;
3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0190】
本発明のオレフィン重合用触媒する上記のオレフィンなどの化合物は、石油などの化石資源由来の化合物だけでなく、植物由来などの所謂バイオ由来の化合物を用いることもできる。
【0191】
本発明に用いる遷移金属化合物(A)は、前記R1のような2以上の独立した環構造を有する置換基を有する配位子を含む構造であり、これを含むオレフィン重合用触媒でオレフィン重合体を製造すると、分子量分布の広い重合体を得ることができる傾向がある。この要因は、現時点では不明であるが、本発明者らは以下の様に考えている。
【0192】
前記式(A-1)で表される遷移金属化合物(A)において、R1が連結する2つのシクロペンタジエニル骨格(あるいはインデニル骨格)は、R1が比較的大きい構造であり、2つのシクロペンタジエニル骨格の特定の位置と結合しているので、その距離は離れ、また比較的多くの立体配座を取り得ることが期待される。
また、遷移金属原子Mに結合する際、Mとの距離も比較的広くなることが予想される。その為、遷移金属原子Mと配位子との距離も従来にメタロセン化合物に比して相対的に遠くなり、緩やかな結合となると想定される。そのため、遷移金属化合物(A)の構造は、比較的変動しやすく、複数の立体配座を取る可能性が高いと考えられる。
【0193】
さらに、立体配座の異なるメタロセン化合物は、オレフィン重合触媒として異なる性能を示すことが予想される。この立体配座の変動に伴い、疑似的に複数種の活性点を有するオレフィン重合触媒が共存する様な態様となるため、分子量分布の広い重合体が製造できると考えることができる。
また、前記Mとシクロペンタジエニル骨格との距離が遠い場合、連鎖移動剤である水素の副生が抑制され、分子量の高いオレフィン重合体が併産されるため、高分子量側に広がりを有する分子量分布となる可能性も考えられる。
【0194】
従来のメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒は、分子量分布が比較的狭いことが特徴とされてきたが、本発明のオレフィン重合用触媒は上記の様な理由で、特異な分子量分布を示すユニークな触媒であると言える。
【0195】
〔オレフィン重合体〕
本発明によれば、上述した特定の構造を有する有用かつ新規な遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、1種または2種以上の炭素数2~30のα-オレフィンから選ばれるオレフィンを重合することで、エチレンの単独重合、またはエチレンと、炭素数3~20のオレフィンから選択される少なくとも1種のオレフィンAとを共重合することや、プロピレンなどのα-オレフィンを重合することで、特異な分子量分布のオレフィン重合体を製造することができる。
【0196】
前記オレフィン重合体の一態様としては、エチレン由来の構成単位を好ましくは50~100モル%、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%の範囲で含むエチレン系重合体が挙げられる。前記エチレン系重合体は、前記オレフィンA由来の構成単位を好ましくは合計0~50モル%、より好ましくは0~30モル%、さらに好ましくは0~10モル%の範囲で含む。ただし、エチレン由来の構成単位の含量と前記オレフィンA由来の構成単位の含量との合計を100モル%とする。前記オレフィンA由来の構成単位が前記範囲にあるエチレン系重合体は、成型加工性に優れる。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の構成単位を含んでいてもよい。これらの含量は、核磁気共鳴分光法や、基準となる物質がある場合には赤外分光法等により測定することができる。
【0197】
これらの重合体の中でも、エチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-オクテン重合体、エチレン・1-ヘキセン重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン重合体、エチレン・プロピレン・4-メチル-1-ペンテン重合体が特に好ましい。上記共重合体は、通常、ランダム共重合体であるが、また、これらの重合体から選択される2種以上を混合または連続的に製造することによって得られる、いわゆるブロック共重合体(インパクトコポリマー)でもよい。
【0198】
前記エチレン系重合体は、上記で述べた構成単位を有する重合体の中でも、実質的に炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位のみからなるα-オレフィン重合体が好ましい。「実質的に」とは、全構成単位に対して、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位の割合が95重量%以上であることを意味する。
【0199】
α-オレフィン重合体の場合、融点を示すような比較的規則性の高いオレフィン重合体を得ることができる。
【0200】
前記の様なオレフィン重合体において、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10,000~5,000,000、より好ましくは10,000~2,000,000、特に好ましくは20,000~1,000,000である。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは4~20、より好ましくは5~10である。また、高分子量側への広がりを有する分子量分布の指標と考えられるMz/Mwの値は、好ましくは3~10、より好ましくは3.5~6である。
【0201】
本発明のオレフィン重合用触媒で得られるオレフィン重合体は、上記の様な分子量分布を有するので、溶融流動性が良く、成形性に優れるので、効率良く射出成形体、押出成形体、ブロー成形体、真球成形体などの各種の成形体を得ることができる。またフィルム成形時のネックインやサージングなども改善され、効率よく高品質なフィルムを得ることができる。また、フィッシュアイも少ないことが期待される。
【0202】
前記オレフィン重合体において、エチレン系重合体の場合、密度は、特に限定されないが、875kg/m3以上975kg/m3以下であることが好ましい。
【0203】
前記オレフィン重合体において、135℃デカリン中における極限粘度[η]は、特に限定されないが、好ましくは0.1~40dl/g、より好ましくは0.5~15dl/g、特に好ましくは1~10dl/gである。
【0204】
前記オレフィン重合体において、ASTM D1238規格に従い、得られるオレフィン重合体の融点などに応じて、190℃、2.16kg荷重、あるいは230℃、2.16kg荷重の条件下にて測定したメルトマスフローレイト(MFR;単位はg/10分)は、特に限定されないが、好ましくは0.001g/10分以上300g/10分以下で、より好ましくは0.001g/10分以上200g/10分以下である。
【0205】
また、ASTM D1238に従い、190℃、あるいは230℃、10kg荷重の条件下で測定したMFR値を前記190℃、2.16kg荷重の条件下にて測定したMFR値で除した値(I10/I2)が5.0以上300未満であることが好ましい。
以上の物性値の測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0206】
本発明に用いる遷移金属化合物(A)の一部は新規化合物であり、その構造は下記式(A-2)によって特定される。
【0207】
【化24】
【0208】
〔式(A-2)において、
1は、2以上の独立した環構造を有する置換基であり、
2、R2'、R3、R3'は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基から選ばれる置換基であり、
4、R5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基から選ばれる置換基であり、
M’は、チタン、ハフニウムから選ばれる遷移金属原子である。〕
【0209】
前記R2、R2'、R3、R3'、R4、およびR5の各置換基に関する具体例および好ましい例は、前記式(A-1)中の同符号と同様である。
【0210】
前記一般式(A-2)で表される遷移金属化合物は、後述の実施例中の合成例の欄に記載した様な、公知のカップリング法などの有機合成技術を用いて対応する配位子を合成し、これをアニオン化した後、対応する遷移金属のハロゲン化物と反応させることで製造することができる。
【0211】
<<遷移金属化合物(A)の製造方法>>
遷移金属化合物(A)の製造方法は、特に制限されず、例えば、後述する実施例の「合成例」等を用いることができる。また、公知の反応を利用して遷移金属化合物(A)を合成してもよい。遷移金属化合物(A)は、公知の合成手法で各部位を合成し、それらを公知の手法で結合させることにより合成してもよい。
一例として遷移金属化合物(A)は、以下に示す方法で合成することができる。
【0212】
【化25】
【0213】
配位子を溶媒に溶解し2等量の強塩基と反応させ、次いで金属塩化物と反応させることで遷移金属化合物(A)を合成することができる。代表的な強塩基としては有機リチウム試薬としてはブチルリチウムやメチルリチウムを挙げることができる。好ましい溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンのような炭化水素溶媒、またはジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテルを挙げることができる。
【0214】
【化26】
【0215】
また、別の方法として配位子と遷移金属アミド錯体(M(NRa 24)を反応させることで、前記R4、R5がジアルキルアミノ基である錯体を合成することができる。Raとしてはメチル基やエチル基である化合物が良く、具体的にはテトラキスジメチルアミドチタニウム、テトラキスジメチルアミドジルコニウム、テトラキスジメチルアミドハフニウムを挙げることができる。得られたアミド錯体はそのまま重合反応に使用しても良いし、必要に応じてクロロ化試薬と反応させることでR4、R5基を塩素原子に変換することができる。クロロ化試薬は一例としてRb nSiCl4-n(nは0~3の値をとる)で記述できるような化合物を挙げることができ、このような化合物としてはSiCl4、Me2SiCl2、Me3SiClをあげることができる。
【0216】
【化27】
【0217】
配位子とアルキル金属錯体を反応させることで遷移金属化合物(A)を合成することもできる。前記Rcとしては特に限定されないが、一例としてメチル基、エチル基、ベンジル基を挙げることができ、前記R4、R5に炭化水素基を有する化合物を合成することができる。
【0218】
【化28】
【0219】
前記R4、R5に炭化水素基を導入する方法としては、前記R4、R5にハロゲン原子を有する遷移金属化合物(A)をGrignard試薬または有機リチウム試薬と反応させることで、前記R4、R5に炭化水素基を導入することが可能である。さらにこのような化合物は、OH基を有する化合物と反応し、酸素含有基や置換アリール基を導入することもできる。
【0220】
この様な化合物は、前述の通り、オレフィン重合触媒に好適に使用することができ、特異な分子量分布の重合体を製造することができる。
【実施例0221】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0222】
[測定方法]
〔遷移金属化合物の構造〕
遷移金属化合物の構造は、1H-NMRスペクトル(400MHz、日本電子(株)製、JNM―ECZ400S/L1型または500MHz、ブルカー・バイオスピン製、AVANCE NEO cryo-500型を用いて決定した。
【0223】
〔重合体の立体規則性〕
重合体の立体規則性(トライアッドアイソタクティシティー(mm))は13C-NMRスペクトル測定から算出した。
【0224】
〔重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)〕
オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。東ソー(株)製「HLC-8321GPC・HT型」ゲル浸透クロマトグラフ(高温サイズ排除クロマトグラフ)により得られる分子量分布曲線から計算したものであり、操作条件は、下記の通りである。
【0225】
<使用装置および条件>
測定装置;ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321GPC・HT型(東ソー(株)製)
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステム Empower3(商標、Waters社製)
カラム;TSKgel GMH6-HT×2 + TSKgel GMH6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー(株)社)
移動相;o-ジクロロベンゼン〔ОDCB〕(富士フィルム和光純薬(株)製、特級試薬)
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/min
注入量;400μL
サンプリング時間間隔;0.5秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正;単分散ポリスチレン(東ソー(株)製)/分子量495から分子量2060万
分子量換算;PS(ポリスチレン)換算/標品換算法
【0226】
〔極限粘度〕
ASTM D4020規格に準じ、135℃デカリン中で測定した。
【0227】
[合成例1]
十分に乾燥した500mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、3方コックと温度計を取り付けた。脱水ジクロロメタン150mL、インデン7.9グラム、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルピリジン12.9グラムを加え氷浴で冷却しながら攪拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物9.8mLをゆっくり滴下し、滴下後、室温まで昇温し終夜攪拌した。ヘキサンを加えしばらく攪拌した後、不溶物を濾別した。ろ液を分液ロートに入れ、0.5mol/Lの塩酸水溶液で有機層を洗浄、有機層と水層を分離した。次いで、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、硫酸マグネシウムを濾別した。有機層をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、14.9グラムの下記式で示される化合物Aを得た。
化合物AのNMRデータ
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ3.49 (d, J = 2.2 Hz, 2 H), 6.38 (t, J
= 2.2 Hz, 1 H), 7.31-7.45 (m, 3 H), 7.48 (d, J = 7.1 Hz, 1 H).
【0228】
【化29】
【0229】
[合成例2]
十分に乾燥した1000mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、3方コックと温度計を取り付けた。1,2-ジブロモベンゼン25グラム、脱水THF
250mLを加え、ドライアイスアセトン浴で冷却した。内温が-75℃を超えないように注意しながらn-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6mol/L)をゆっくり滴下した。滴下後、徐々に昇温させながら終夜攪拌を実施した。水200mLを添加し、次いでtert-ブチルメチルエーテルを加え有機層を抽出した。有機層と水層を分液ロートで分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、硫酸マグネシウムを濾別した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗生成物16.9グラムを得た。室温で静置すると全体が固化した。固形物をスパチュラで崩した後、15mlのヘキサンで洗浄しろ過した。ヘキサン洗浄の操作を合計3回行った。洗浄後の固形物を減圧下、乾燥させ10.6グラムの下記式で示される化合物Bを得た(収率64%)。
化合物BのNMRデータ
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ7.23-7.29 (m, 4 H), 7.35-7.41 (m, 2 H), 7.65-7.69 (m, 2 H).
【0230】
【化30】
【0231】
[合成例3]
十分に乾燥した300mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、3方コックと温度計を取り付けた。化合物Bを6.2グラム、脱水ジエチルエーテル60
mLを加え、ドライアイスアセトン浴で冷却させながら攪拌した。内温が-75℃を超えな
いように注意しながら、27.5mLのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6mol/L)をゆっくり滴下した。滴下後、冷却したまま2時間攪拌し、その後室温まで昇温し
終夜攪拌を継続した。フラスコをドライアイスアセトン浴で冷却しトリメトキシボラン8.6mLをゆっくり滴下した。滴下後、室温まで昇温し、室温で4時間攪拌した。2mol/Lの塩酸水溶液70mLを加えクエンチした。有機層と水層を分液ロートで分離し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、硫酸マグネシウムを濾別した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し下記式で示される化合物Cを含む粗生成物を得た。得られた化合物はこれ以上精製せずに次工程に使用した。
【0232】
【化31】
【0233】
[合成例4]
十分に乾燥した500mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、3方コックと温度計を取り付けた。化合物Cを3.7グラム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.2グラム、炭酸セシウム9.0グラム、フッ化カリウム二水和物7.8グラム、臭化ナトリウム3.5グラム、化合物Aを9.0グラム、脱水トルエン130mLを加えた後、80℃で3時間加熱攪拌を実施した。室温まで降温した後、水200mLを加え攪拌した。反応液をセライトと通してろ過し、ろ液を分液ロートに加え、有機層と水層を分離した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し他の後、ロータリーエバポレーターで濃縮し8.35グラムの粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3,38グラムの下記式で示される化合物Dを得た(収率58%)。
化合物DのNMRデータ
1H NMR(400 MHz, CDCl3, 300 K, δ in ppm) δ2.74-3.01 (m, 4H), 5.66 (t, J = 2.0 Hz, 2 H), 6.81-6.87 (m, 2 H), 6.94-7.03(m, 4H), 7.11-7.17 (m, 2H), 7.28-7.41 (m, 6 H), 7.45-7.51 (m, 2 H).
【0234】
【化32】
【0235】
[合成例5]
十分に乾燥した1000mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、三方コックと温度計を取り付けた。テトラキスジメチルアミドジルコニウム251.8mg、脱水トルエン450mL、295.5mgの化合物Dを加え終夜加熱還流を実施した。トルエンを留去した後、グローブボックス内にフラスコを持ち込んだ。ヘキサンを加えて攪拌し、不溶物を濾別した。ろ液を濃縮し505mgのアミド錯体を含む粗生成物を得た。
十分に乾燥した100mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、三方コックと温度計を取り付けた。先に合成した粗生成物を脱水トルエン35mLに溶解し、ジクロロジメチルシラン0.58グラムを加えた。60℃で加熱攪拌を実施し終夜加熱攪拌を継続した。フラスコをグローブボックス内に持ち込み、孔径3μmのフィルターを用いて不溶物を濾別した。フィルター上の固形物を脱水トルエン、次いで脱水ヘキサンで洗浄し、減圧下乾燥させ194.5mgの下記式で示される化合物Eを黄色固体として得た(収率46%)。
化合物EのNMRデータ
1H NMR(500 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ6.41 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 6.50 (d, J = 4.0 Hz, 2 H), 7.23-7.29 (m, 2H), 7.32-7.40 (m, 4H), 7.48 (td, J = 1.5, 7.6 Hz,
2H), 7.52 (td, J = 1.5, 7.6 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.5
Hz, 2H), 8.09 (dd, J = 1.5, 7.6 Hz, 2H).
13C NMR(126 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ112.0, 112.6, 118.7, 123.2, 125.2, 126.5, 126.5, 127.3, 127.8, 128.1, 128.2, 128.9, 131.5, 134.8, 139.5
【0236】
【化33】
【0237】
[合成例6]
十分に乾燥した1000mLの3口フラスコに窒素雰囲気下、スターラーチップを入れ、三方コックと温度計を取り付けた。テトラキスジメチルアミドハフニウム334mg、脱水トルエン450mL、303mgの化合物Dを加え12日間加熱還流を実施した。トルエンを留去した後、グローブボックス内にフラスコを持ち込んだ。ヘキサンを加えて攪拌し、不溶物を濾別した。ろ液を濃縮し600mgのアミド錯体を含む粗生成物を得た。少量のヘキサメチルジシロキサンを加え、全体を攪拌した後、静置した。上澄みをデカンテーションによって除去した。固形物に少量のヘキサンを添加し、全体を攪拌した後、静置した。上澄みをデカンテーションによって除去した。再度、固形物に少量のヘキサンを加え、攪拌した後、静置した結果、黄色の沈殿物を得た。沈殿物を孔径3μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、フィルター上の固形物を少量のヘキサンで洗浄した。固形物を、減圧下乾燥させ98mgの下記式で示される化合物Fを得た(収率19%)。
化合物FのNMRデータ
1H NMR(500 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ2.27 (s, 12H), 5.98 (dd, J = 0.6, 3.7
Hz, 2H), 6.33 (d, J = 3.7 Hz, 2H), 6.95-7.00 (m, 2H), 7.09-7.14 (m, 2H), 7.32-7.40 (m, 4H), 7.44-7.49 (m, 2H), 7.52 (dt, J = 0.6, 8.2 Hz, 2H), 7.99 (dd, J = 0.6, 7.9 Hz, 2H), 8.10-8.13 (m, 2H).
13C NMR(126 MHz, CDCl3, 298 K, δ in ppm) δ47.0, 98.8, 107.5, 117.2, 121.8, 122.8, 123.5, 124.1, 124.2, 126.1, 127.3, 128.2, 129.4, 133.15, 133.20, 139.6.
【0238】
【化34】
【0239】
[合成例7]
下記式で示される化合物Gの合成法は米国特許第5360921号に記載の方法を基に合成した。
【0240】
【化35】
【0241】
[合成例8]
下記式で示される化合物Hは欧州特許公開公報0754698号記載の方法により合成した。
【0242】
【化36】
【0243】
[合成例9]
下記式で示される化合物Iは欧州特許公報1059300号の実施例8記載の方法に準じて合成した。
【0244】
【化37】
【0245】
[実施例1]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン100L/hrで流通させ液相及び気相を飽和させた。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.5mmol、化合物Eを0.5μmol加え重合を開始した。エチレンを100L/hrで連続的に供給し、常圧下、内温50℃で5分間重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む750mLのメタノールに加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、エチレン重合体を2.2グラム得た。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0246】
[実施例2]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン100L/hrで流通させ液相及び気相を飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.2mmol、化合物Eを0.25μmol、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを1.0μmol加え重合を開始した。加え重合を開始した。エチレンを100L/hrで連続的に供給し、常圧下、内温50℃で5分間重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む750mLのメタノールに加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、エチレン重合体を1.6グラム得た。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0247】
[実施例3]
窒素雰囲気下、シュレンク管に化合物Eを2.4mg(4.4μmol)を入れ、トルエン4.4mLとトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.88mL(0.88mmol、1mmol/mL)を加え、室温で10分間以上攪拌を行って遷移金属化合物(化合物E)濃度が0.84μmol/mLの触媒液を調製した。
充分に窒素置換した内容積15mLのSUS製オートクレーブに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.2mL(0.05M)と、重合溶媒としてヘプタン0.54mLとを入れ、600回転/分にて攪拌を行った。得られた溶液を60℃に昇温し、次いでオートクレーブ内をプロピレンで全圧が7barになるまで加圧した。前記オートクレーブに、前記触媒液0.96mL(化合物Eの濃度が0.84μmol/mL、量が0.80μmol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1.6mL(0.005mmol/mL)、次いでヘプタン0.7mLを加えて重合を開始した。60℃で60分間重合した後、少量のイソブチルアルコールを加えて重合を停止した。得られた重合体溶液にメタノールと塩酸1mL(1M)を加え、室温でしばらく攪拌した。析出したポリマーを濾別しアセトンで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥してプロピレン重合体0.0389mgを得た。プロピレン重合体のNMR分析の結果、規則性を表すmmmmは56.8%であり、重量平均分子量(Mw)は43,100、分子量分布の指標であるMw/Mnは6.18であった。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0248】
[比較例1]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン100L/hrで流通させ液相及び気相を飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.2mmol、化合物Gを0.05μmol、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.2μmol加え重合を開始した。加え重合を開始した。プロピレンを100L/hrで連続的に供給し、常圧下、内温50℃で5分間重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む750mLのメタノールに加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、エチレン重合体を0.064グラム得た。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0249】
[比較例2]
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、トルエン250mLを装入し、エチレン100L/hrで流通させ液相及び気相を飽和させた。その後、トリイソブチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.2mmol、化合物Hを5μmol、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを20μmol加え重合を開始した。加え重合を開始した。プロピレンを100L/hrで連続的に供給し、常圧下、内温50℃で5分間重合を行った後、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む750mLのメタノールに加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、エチレン重合体を0.852グラム得た。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
【0250】
【表1】
【0251】
[比較例3]
化合物Eの代わりに化合物Iを用い、各成分量を調整した以外は前記実施例3と同様の方法で、化合物Iの濃度が0.46μmol/mL、且つ、トリイソブチルアルミニウムの濃度が0.91mmol/mLの触媒液を調製した。
また、化合物Eの代わりに化合物Iが0.23μmolとなるように前記触媒液0.5mL(化合物Iの濃度が0.46μmol/mL)を用い、トルエンを0.46mLさらに添加し、重合時間を5分とした以外は、前記実施例3と同様の方法でプロピレンの重合を行い、プロピレン重合体を得た。
得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は5,990であり、分子量分布は1.75であった。
【0252】
化合物Iを含むオレフィン重合用触媒は、一般的な遷移金属錯体化合物を含むオレフィン重合用触媒と同様、分子量分布が比較的狭い重合体を与えた。また、分子量も本発明の遷移金属錯体化合物を含むオレフィン重合用触媒に比して低いことが分かる。
これらの観点から、化合物Iを含むオレフィン重合用触媒は、本発明のオレフィン重合用触媒とは異なる性質を有することが分かる。
また、化合物Iの構造は、本発明に用いられる遷移金属化合物(A)の範囲外であるが、類似の構造をしている。そのため、化合物Iでも前記0193~0194段落に記載したような変異が起こり、複数の立体構造を取りうる可能性があると考えるのが自然であるが、化合物Iはその構造上、その多様な立体構造が、互いに鏡像異性体等の対称構造の関係になり易い傾向があるため、反応速度や連鎖移動速度等の変動が相対的に少なく、分子量分布に影響を及ぼす性能の差が少ないのではないかと考えられる。