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特開2024-134507半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134507
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240926BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200016
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2023044018
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小池 聡
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083GA10
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA32
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR06
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH13
(57)【要約】
【課題】電気的特性の向上を図ることができる半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、第1積層体と第1分離部と第2積層体と第3積層体とビットラインを持つ。第1積層体は、複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層される。第1分離部は、第1積層体と第1方向と交差する第2方向で隣り合う。第2積層体は第1分離部と第2方向で隣り合う。第2積層体は、複数の第2絶縁膜と複数の第2導電膜とが第1方向に交互に積層される。第3積層体は、第2方向において、第2積層体と隣り合う。第3積層体は、複数の第2絶縁膜と複数の第3絶縁膜が前記第1方向に交互に積層される。複数の第2導電膜のうちの少なくとも1層以上の第3導電膜は、第1部分と第2部分を持つ。第2部分は、第1方向で第1部分の下に位置し、第2方向で第1部分より第3積層体の内部により突出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層された第1積層体と、
前記第1積層体と前記第1方向と交差する第2方向で隣り合い、前記第1方向と、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向とに延びる絶縁体を含む第1分離部と、
前記第1分離部と前記第2方向で隣り合い、複数の第2絶縁膜と複数の第2導電膜とが前記第1方向に交互に積層された第2積層体と、
前記第2方向において、前記第2積層体と隣り合い、前記複数の第2絶縁膜と複数の第3絶縁膜とが前記第1方向に交互に積層された第3積層体と、
前記第1積層体の前記第1方向の一方側である上側に設けられるビットラインと、
を備え、
前記第1積層体は、第1半導体層を含み、かつ前記第1方向に延びる第1柱状部を有し、
前記複数の第2導電膜のうちの少なくとも1層以上の第3導電膜が、
第1部分と、
前記第1方向で前記第1部分の下に位置し、前記第2方向で前記第1部分より前記第3積層体の内部により突出する第2部分と、を有する、
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記複数の第3絶縁膜のうち、少なくとも1層以上の前記第3絶縁膜は、上部領域と、前記第1方向において前記上部領域より下側に位置する下部領域とを有し、
前記下部領域は、前記上部領域よりも大きい、第1薬液に対するエッチングレートを有する、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1柱状部は前記第1方向に延びるメモリホール内に設けられ、
前記メモリホールの側壁には、前記複数の第1導電膜側に向かって窪んだ複数のリセスが形成され、
前記複数のリセスの深さは、前記第1方向において、異なる、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記複数の第2導電膜のうちの少なくとも2層以上の第3導電膜が、それぞれ、
前記第1部分と、
前記第2部分と、を有し、
前記第2部分のそれぞれの前記第2方向での突出長さは異なる、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1薬液は、リン酸である、
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記下部領域の密度は、前記上部領域の密度と異なる、
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記複数の第3絶縁膜のうち、少なくとも1層以上の前記第3絶縁膜において、前記下部領域の酸素含有率は、前記上部領域の酸素含有率よりも小さい、
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
第1柱状部は、上部柱状部と前記上部柱状部の下方に位置する下部柱状部を有し、
前記上部柱状部と前記下部柱状部はいずれも、前記第1方向において、下方に向かって径が小さくなる縮径部をそれぞれ有し、
前記縮径部と前記第3導電膜は、前記第2方向において重なる位置にある、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
第1柱状部は、上部柱状部と前記上部柱状部の下方に位置する下部柱状部を有し、
前記上部柱状部と前記下部柱状部はいずれも、前記第1方向において径が小さくなる縮径部をそれぞれ有し、
前記縮径部と前記第3導電膜は、前記第2方向において重なる位置にある、
請求項5に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第2積層体内において、第2半導体層を含み、前記第1方向に延びる第2柱状部を有する、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
第1絶縁膜と第2絶縁膜とを第1方向に積層して第1積層体を形成し、
炭素およびフッ素を含むガスを用いて前記第1積層体をドライエッチングすることで、前記第1方向に沿うメモリホールを前記第1積層体に形成し、
前記メモリホールの側壁の一部に、第1薬液で、前記第1絶縁膜に対して、前記第1方向に交差する第2方向に後退する溝を形成し、
前記第1積層体の上方にビットラインを形成する、半導体記憶装置の製造方法であって、
前記第1積層体は、前記第1絶縁膜の堆積と、前記第2絶縁膜の堆積とを繰り返すことで形成し、
前記第2絶縁膜は、下部領域の堆積の後に、前記下部領域より前記第1薬液に対するエッチングレートが小さい上部領域を堆積することで形成する、
半導体記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記下部領域の密度は、前記上部領域の密度と異なる、
請求項11に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項13】
前記下部領域の酸素含有率は、前記上部領域の酸素含有率よりも小さい、
請求項11に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項14】
前記溝を形成した後、
前記メモリホール内に、上部柱状部と前記上部柱状部の下方に位置する下部柱状部を有し、第1半導体層を含む第1柱状部を形成する柱状部形成工程を備え、
前記上部柱状部と前記下部柱状部はいずれも、前記第1方向において、下方に向かって径が小さくなる縮径部をそれぞれ有する、
請求項11に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2絶縁膜の膜厚は1nm以上である、
請求項11に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、基板の表面と交差する第1方向に積層された複数の配線層と、これら複数の配線層を貫通して第1方向に延びるメモリ構造と、を備える半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-38949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、電気的特性の向上を図ることができる半導体記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、第1積層体と、第1分離部と、第2積層体と、第3積層体と、ビットラインを持つ。第1積層体は、複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層される。第1分離部は、第1積層体と第1方向と交差する第2方向で隣り合う。第1分離部は、第1方向と、第1方向および第2方向と交差する第3方向とに延びる。第2積層体は、第1分離部と第2方向で隣り合う。第2積層体は、複数の第2絶縁膜と複数の第2導電膜とが第1方向に交互に積層される。第3積層体は、第2方向において、第2積層体と隣り合う。第3積層体は、複数の第2絶縁膜と複数の第3絶縁膜とが前記第1方向に交互に積層される。ビットラインは、第1積層体の第1方向の一方側である上側に設けられる。第1積層体は、第1半導体層を含む。第1積層体は、第1方向に延びる第1柱状部を含む。複数の第2導電膜のうちの少なくとも1層以上の第3導電膜は、第1部分と第2部分とを持つ。第2部分は、第1方向で第1部分の下に位置し、第2方向で第1部分より第3積層体の内部により突出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の半導体記憶装置およびメモリコントローラを示すブロック図。
図2】実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの一部の等価回路を示す図。
図3】実施形態の半導体記憶装置の一部を示す平面図。
図4】実施形態の半導体記憶装置の一部を示す断面図。
図5】実施形態の半導体記憶装置の、セルアレイ領域と端部領域の境界近傍における第1柱状部と第2柱状部の拡大断面図。
図6】実施形態の半導体記憶装置の、第1柱状部の近傍を示す断面図。
図7図5に示す領域Xの拡大図。
図8】実施形態の半導体記憶装置の導電膜の近傍を拡大した断面図。
図9図5に示す領域Yの拡大図。
図10】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図11】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図12】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図13】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図14】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図15】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
図16】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本出願において「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。本出願において「平行」、「直交」、または「同一」とは、それぞれ「略平行」、「略直交」、または「略同一」である場合も含む。本出願において「A方向に延びている」とは、例えば、後述するX方向、Y方向、及びZ方向の各寸法のうち最小の寸法よりもA方向の寸法が大きいことを意味する。ここでいう「A方向」は任意の方向である。
【0008】
また先に、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、および-Z方向について定義する。+X方向、-X方向、+Y方向、および-Y方向は、後述する基板30の表面(図4参照)に沿う方向である。+X方向は、後述する分離部81(図3参照)の延びる方向のうちの一方向である。-X方向は、+X方向とは反対方向である。+X方向と-X方向とを区別しない場合は、単に「X方向」と称する。+Y方向および-Y方向は、X方向とは交差する(例えば直交する)方向である。+Y方向は、後述するビットラインBL(図4参照)が延びた方向のうちの一方向である。-Y方向は、+Y方向とは反対方向である。+Y方向と-Y方向とを区別しない場合は、単に「Y方向」と称する。+Z方向および-Z方向は、X方向およびY方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、基板30(図4参照)の厚さ方向である。+Z方向は、基板30から後述するビットラインBLに向かう方向である。-Z方向は、+Z方向とは反対方向である。+Z方向と-Z方向とを区別しない場合は、単に「Z方向」と称する。Z方向は半導体記憶装置1の形成に使用される基板30の表面に対する鉛直方向に対応している。本明細書では、「+Z方向」を「上」、「-Z方向」を「下」と称する場合がある。ただしこれら表現は、便宜上のものであり、重力方向を規定するものではない。+Z方向は、「第1方向」の一例である。+Y方向は、「第2方向」の一例である。+X方向は、「第3方向」の一例である。
【0009】
以下で参照される図面のうち、平面図及び断面図のそれぞれでは、図を見易くするために、配線、コンタクト、層間絶縁膜等の一部の構成要素の図示が適宜省略されている。
【0010】
(実施形態)
<1.半導体記憶装置の構成>
図1は、半導体記憶装置1およびメモリコントローラ2を示すブロック図である。半導体記憶装置1は、不揮発性の半導体記憶装置であり、例えばNAND型フラッシュメモリである。半導体記憶装置1は、メモリコントローラ2によって、制御される。半導体記憶装置1とメモリコントローラ2との間の通信は、例えば、NANDインターフェイス規格に準拠している。半導体記憶装置1は、例えば、メモリセルアレイ10、ロウデコーダ11、センスアンプ12、及びシーケンサ13を備える。
【0011】
メモリセルアレイ10は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含む。各ブロックBLKは、不揮発性のメモリセルトランジスタMT(図2参照)の集合である。メモリセルアレイ10には、複数のビットライン及び複数のワードラインが設けられている。各メモリセルトランジスタMTは、1本のビットラインと1本のワードラインとに関連付けられている。
【0012】
ロウデコーダ11は、外部のメモリコントローラ2から受信したアドレス情報ADDに基づいて、1つのブロックBLKを選択する。ロウデコーダ11は、複数のワードラインのそれぞれに、所望の電圧を印可することで、メモリセルアレイ10に対するデータの書き込み動作及び読み出し動作を制御する。
【0013】
センスアンプ12は、メモリコントローラ2から受信した書き込みデータDATに応じて、各ビットラインに所望の電圧を印加する。センスアンプ12は、ビットラインの電圧に基づいてメモリセルトランジスタMTに記憶されたデータを判定し、判定した読み出しデータDATをメモリコントローラ2に送信する。
【0014】
シーケンサ13は、メモリコントローラ2から受信したコマンドCMDに基づいて、半導体記憶装置1全体の動作を制御する。
【0015】
半導体記憶装置1及びメモリコントローラ2は、これらの組み合わせにより1つのメモリシステムを構成してもよい。メモリシステムは、例えばメモリカードや、SSD(Solid State Drive)等が挙げられる。
【0016】
次に、メモリセルアレイ10の構成について説明する。
図2は、メモリセルアレイ10の一部の等価回路を示す図である。図2は、メモリセルアレイ10に含まれた一つのブロックBLKを抽出して示している。ブロックBLKは、複数(例えば4つ)のストリングSTR0~STR3を含む。
【0017】
各ストリングSTR0~STR3は、複数のNANDストリングスNSの集合体である。各NANDストリングスNSの一端は、ビットラインBL0~BLm(mは1以上の整数)のいずれかに接続されている。NANDストリングスNSの他端は、ソースラインSLに接続されている。各NANDストリングスNSは、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTn(nは1以上の整数)、第1選択トランジスタS1、及び第2選択トランジスタS2を含む。
【0018】
複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnは、電気的に互いに直列に接続されている。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲート及びメモリ積層膜を含み、データを不揮発に記憶する。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲートに印加された電圧に応じて、メモリ積層膜の状態を変化させる。例えば、メモリ積層膜に含まれる電荷蓄積膜に電荷を蓄積する。メモリセルトランジスタMTの制御ゲートは、対応するワードラインWL0~WLnのいずれかに接続されている。メモリセルトランジスタMTは、ワードラインWLを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。
【0019】
各NANDストリングスNSにおける第1選択トランジスタS1は、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnと、いずれかのビットラインBL0~BLmとの間に接続されている。第1選択トランジスタS1のドレインは、いずれかのビットラインBL0~BLmに接続されている。第1選択トランジスタS1のソースは、メモリセルトランジスタMTnに接続されている。各NANDストリングスNSにおける第1選択トランジスタS1の制御ゲートは、いずれかの選択ゲートラインSGD0~SGD3に接続されている。
第1選択トランジスタS1は、選択ゲートラインSGDを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。第1選択トランジスタS1は、所定の電圧が選択ゲートラインSGD0~SGD3のうち当該第1選択トランジスタS1に対応する選択ゲートラインSGDに印可された場合に、NANDストリングスNSとビットラインBLとを接続する。
【0020】
各NANDストリングスNSにおける第2選択トランジスタS2は、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnと、ソースラインSLとの間に接続されている。第2選択トランジスタS2のドレインは、メモリセルトランジスタMT0に接続されている。第2選択トランジスタS2のソースは、ソースラインSLに接続されている。第2選択トランジスタS2の制御ゲートは、選択ゲートラインSGSに接続されている。第2選択トランジスタS2は、選択ゲートラインSGSを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。第2選択トランジスタS2は、所定の電圧が選択ゲートラインSGSに印可された場合に、NANDストリングスNSとソースラインSLとを接続する。
【0021】
なお、メモリセルアレイ10は、上記で説明した以外のその他の回路構成であってもよい。例えば、各ブロックBLKが含む各ストリングSTRの個数、各NANDストリングスNSが含むメモリセルトランジスタMT、ならびに選択トランジスタSTD及びSTSの個数は、変更されてもよい。また、NANDストリングスNSが1つ以上のダミートランジスタを含んでいてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態の半導体記憶装置1の一部を示す平面図である。
本実施形態の半導体記憶装置1は、図3に示すように、メモリセルアレイ10と、例えば、メモリセルアレイ10のX方向の両端部に設けられた階段部分Sとを含む。各スリットSTは、一方の階段部分Sから、メモリセルアレイ10を経て、他方の階段部分Sまで設けられている。メモリセルアレイ10は、セルアレイ領域を有する。セルアレイ領域には、NANDストリングスNSが集積される。
【0023】
<1.1 メモリセルアレイ>
次に、半導体記憶装置1のメモリセルアレイ10の構造の一例について説明する。図4は、図3におけるA-A’面に沿った断面図である。
【0024】
半導体記憶装置1のメモリセルアレイ10は、図4に示すように、基板30、回路層PE、セルアレイ領域CA、及び端部領域EAを有する。
【0025】
基板30は、例えば、シリコン基板である。基板30の表面領域には、複数の素子分離領域30Aがある。素子分離領域30Aは、例えば、シリコン酸化物を含む。Y方向に隣り合う素子分離領域30Aの間には、トランジスタTrのソース領域及びドレイン領域がある。
【0026】
回路層PEは、基板30上にある。回路層PEは、半導体記憶装置1のロウデコーダ11、センスアンプ12、及びシーケンサ13を含む。回路層PEは、例えば、複数のトランジスタTrと複数の配線層D0,D1と複数のビアC1,C2を含む。複数のトランジスタTr、複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2は、絶縁層E1内にある。絶縁層E1は、例えば、シリコン酸化物を含む。ビアC1は、トランジスタTrのソース領域又はドレイン領域と配線層D0とを接続する。ビアC2は、トランジスタTrのゲート領域と配線層D1とを接続する。ビアC1,C2及び配線層D0,D1は、例えば、タングステンを含む。
【0027】
(セルアレイ領域CA)
セルアレイ領域CAは、複数の絶縁膜24と複数の導電膜25とがZ方向に交互に積層された第1積層体20Aと、半導体ボディ61を含む複数の第1柱状部CL1と、を有する。本実施形態において、絶縁膜24は「第1絶縁膜」の一例であり、導電膜25は「第1導電膜」および後述する「第2導電膜」の一例である。半導体ボディ61は「第1半導体層」および「第2半導体層」の一例である。
【0028】
第1積層体20Aは、Z方向に沿って、基板30側から順に、導電膜21、絶縁膜22、複数の導電膜25、および複数の絶縁膜24を有する。導電膜21および複数の導電膜25は、それぞれX方向及びY方向に広がる。絶縁膜22および複数の絶縁膜24は、それぞれX方向及びY方向に広がる。複数の絶縁膜24と複数の導電膜25は、Z方向に1層ずつ交互に積層されている。
【0029】
絶縁膜22は、導電膜21と導電膜25との間にある。絶縁膜24は、Z方向に隣り合う導電膜25の間にある。絶縁膜24は、Z方向で隣り合う2つの導電膜25の間を絶縁する。絶縁膜24の層数は、導電膜25の層数によって決まる。絶縁膜24の膜厚は、例えば、20nm以下である。絶縁膜22と複数の絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化物を含む。
【0030】
複数の導電膜25は、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの導電膜25は、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。導電膜25は、例えば、タングステン、または不純物がドープされたポリシリコンである。導電膜25の層数は、任意である。
【0031】
複数の導電膜25は、Z方向に積層された複数の導電膜25Aと、Z方向で基板30と複数の導電膜25Aとの間に位置した導電膜25Bと、Z方向で複数の導電膜25Aに対して基板30とは反対側に位置した導電膜25Cとを含む。
【0032】
複数の導電膜25のうち、第1積層体20Aの下から少なくとも1層である導電膜25Bは、ソース側の選択ゲートライン(ソース側選択ゲートライン)SGSとして機能してよい。ソース側選択ゲートラインSGSとして機能する導電膜25Bは、単層でも複数層でもよい。すなわち、ソース側選択ゲートラインSGSは、1層の導電膜25によって構成されてもよいし、複数の導電膜25によって構成されてもよい。また、ソース側選択ゲートラインSGSが複数層で構成される場合、複数の導電膜25Bのそれぞれが、互いに異なる導電体によって構成されてもよい。
【0033】
導電膜25のうち、第1積層体20Aの上から少なくとも1層である導電膜25Cは、ドレイン側の選択ゲートライン(ドレイン側選択ゲートライン)SGDとして機能する。ドレイン側選択ゲートラインSGDとして機能する導電膜25Cは、単層でも複数層でもよい。すなわち、ドレイン側選択ゲートラインSGDは、1層の導電膜25Cによって構成されてもよいし、複数の導電膜25Cによって構成されてもよい。また、ドレイン側選択ゲートラインSGDが複数層で構成される場合、導電膜25Cのそれぞれが、互いに異なる導電体によって構成されてもよい。
【0034】
複数の導電膜25のうち、ソース側選択ゲートラインSGSおよびドレイン側選択ゲートラインSGD以外の複数の導電膜25(つまり導電膜25A)は、ワードラインWLとして機能する。ワードラインWLとして機能する複数の導電膜25Aは、例えば、第1柱状部CL1の外周を囲む。
【0035】
導電膜21は、回路層PEの上方に配置される。導電膜21は、半導体層21A,21B,21Cを含む。半導体層21Aは、回路層PE上にある。半導体層21Aは、例えばn型の半導体である。半導体層21Aは、例えば、不純物がドープされたポリシリコンである。半導体層21Bは、半導体層21A上にある。半導体層21Bは、第1柱状部CL1の半導体ボディ61と接する。半導体層21Bは、例えば不純物がドープされたエピタキシャル膜である。半導体層21Bは、例えば、リンを含む。半導体層21Cは、半導体層21B上にある。半導体層21Cは、例えばn型又はノンドープの半導体である。
【0036】
カバー絶縁層50,51は、第1積層体20Aの最上層の導電膜25Cの上方にある。カバー絶縁層50,51は、第1積層体20AとビットラインBLとの間を絶縁する。カバー絶縁層50,51は、例えば、シリコン酸化物を含む。
【0037】
ビットラインBLは、カバー絶縁層51の上方に、例えばY方向に延伸したライン状に形成され、第1柱状部CL1と電気的に接続される。複数のビットラインBLは、図示しない領域において、X方向に配列されている。
【0038】
複数の第1柱状部CL1は、第1積層体20A内に設けられている。複数の第1柱状部CL1は、それぞれZ方向に延びている。複数の第1柱状部CL1は、例えば、複数の導電膜25ならびに半導体層21B,21CをそれぞれZ方向に貫通する。第1柱状部CL1は、下部柱状部LCL1と、下部柱状部LCL1の上方に接して設けられた上部柱状部UCL1とを含む。下部柱状部LCL1は、半導体層21Aに接している。上部柱状部UCL1は、カバー絶縁層50に接している。
【0039】
次に、第1柱状部CL1およびその近傍の構造について詳述する。
図5は、セルアレイ領域CAと端部領域EAの境界近傍における第1柱状部CL1と第2柱状部CL2の拡大断面図である。図6は、第1柱状部CL1の近傍を導電膜25Aに沿って切断した断面図である。図6は、第1柱状部CL1をXY面で切断した断面である。図7は、図5に示す領域Xの拡大図である。
【0040】
複数の第1柱状部CL1のそれぞれは、メモリホールMH内に形成され、内側から順に、絶縁コア60、半導体ボディ61、及びメモリ積層膜62を有する。本実施形態において半導体ボディ61は「第1半導体層」の一例である。
【0041】
メモリホールMHの側壁MHsには、図7に示すように、導電膜25側に向かって窪んだ複数のリセスREが形成されている。この複数のリセスREは、筒状に形成されたメモリホールMHの側壁MHsのうち、導電膜25に対応する位置の側壁MHsに、エッチングによって導電膜25側に向かって凹むように形成された溝である。言い換えれば、導電膜25のメモリホールMH側の端面、絶縁膜24のメモリホールMH側の端面よりも、メモリホールMHから遠い位置にある。
【0042】
リセスREのそれぞれの深さdは、Z方向において異なる。後述するように、第1柱状部CL1は、基板30に近い側の径が小さくなる形状を有する。つまり、メモリホールMHも、基板30に近づく方向に向かうに従って、径が徐々に小さくなる形状を有し、リセスREの深さdもそれに伴い、Z方向においてそれぞれ異なる大きさとなる。
【0043】
これは、導電膜25がリプレースされる前に設けられていた絶縁膜26B(図5、9参照)に由来する。製造時、メモリホールMHの径が小さくなる部位(縮径部Q、図5、7参照)に設けられる絶縁膜26Bは絶縁膜26Aよりも比較的高いエッチングレートの材料で構成されているため、メモリホールMH形成時やリセスRE形成時に、絶縁膜26Aよりも絶縁膜28Bの方がよりエッチングされる。つまり、メモリホールMHの側壁に形成されるリセスREの量(深さ)は、絶縁膜28Bの方が相対的に多くなる。そのため、リセスREの深さdもそれに伴い、Z方向においてそれぞれ異なる大きさとなる。より具体的には、メモリホールMHの径が小さくなる部位、すなわち縮径部Qに対応する領域においては、リセスREの深さdは大きくなる。
【0044】
複数の第1柱状部CL1はそれぞれ、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1を有する。すなわち第1柱状部CL1は、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1との積層構造である。
【0045】
下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1は、いずれも基板30に近い側の径が小さく、基板30から離れる方向(Z方向)に向かうにしたがって、径が徐々に大きくなる柱状に形成されている。第1柱状部CL1は、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1それぞれにおいて、径が徐々に小さくなる縮径部Qが形成されている。なお、図5では、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1それぞれに1つの縮径部Qが形成される形態を示しているが、縮径部Qの個数は特に限定されない。例えば、下部柱状部LCL1に2つ以上の縮径部Qが設けられてもよい。つまり、下部柱状部LCL1が、Z方向に沿って、径が拡径する部分と縮径する部分が交互に設けられる形態であってもよい。
【0046】
なお、以下の説明において、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1の積層構造である第1柱状部CL1に関し、1つの第1柱状部CL1として機能や構造を説明可能な場合は、下部柱状部LCL1と上部柱状部UCL1とを区別した説明を省略し、単に第1柱状部CL1と表記し、説明する。
【0047】
絶縁コア60は、Z方向に延び、柱状である。絶縁コア60は、例えば、シリコン酸化物を含む。絶縁コア60は、Z方向から見てメモリホールMHの中心軸を含む中央部に設けられる。
【0048】
半導体ボディ61は、Z方向に延びる。半導体ボディ61は、例えば環状に形成され、絶縁コア60の外側面(外周面)を被覆する。半導体ボディ61は、例えばシリコンを含む。シリコンは、例えばアモルファスシリコンを結晶化させたポリシリコンである。半導体ボディ61は、第1選択トランジスタS1、複数のメモリセルトランジスタMT及び第2選択トランジスタS2のそれぞれのチャネルとして機能する。ここでいう「チャネル」とは、ソース側とドレイン側との間におけるキャリアの流路である。
【0049】
半導体ボディ61は、導電膜25側に突出した複数の凸部61aを有する。凸部61aは、Z方向で隣り合う絶縁膜24の間において、半導体ボディ61の外側面から導電膜25側に向かって延びている。換言するに、凸部61aは、対応するリセスRE内に設けられている。凸部61aは半導体ボディ61の一部であり、半導体ボディ61と同じ材料からなる。半導体ボディ61の外側面に凸部61aを設ける、つまり、半導体ボディ61の一部を導電膜25側に突出した形状とすることで、当該凸部61a近傍に電界を集中させることができ、隣接するメモリセル間の干渉を抑制できる。
なお、凸部61aの突起長さなどの詳細は後述する。
【0050】
メモリ積層膜62は、Z方向に延びる。メモリ積層膜62は、半導体ボディ61の外側面(外周面)を被覆する。メモリ積層膜62は、メモリホールMHの内側面(内周面)と半導体ボディ61の外側面(外周面)との間にある。メモリ積層膜62は、例えば、トンネル絶縁膜63、電荷蓄積膜64、及びカバー絶縁膜65を含む。これら複数の膜は、半導体ボディ61側から、トンネル絶縁膜63、電荷蓄積膜64、カバー絶縁膜65の順で設けられる。
【0051】
トンネル絶縁膜63は、半導体ボディ61の外側面を被覆する。すなわち、トンネル絶縁膜63は、電荷蓄積膜64と半導体ボディ61との間に位置する。トンネル絶縁膜63は、例えばシリコン酸化物、又は、シリコン酸化物とシリコン窒化物とを含む。トンネル絶縁膜63は、半導体ボディ61と電荷蓄積膜64との間の電位障壁である。
【0052】
電荷蓄積膜64は、トンネル絶縁膜63の外側面を被覆する。すなわち、電荷蓄積膜64は、それぞれの導電膜25とトンネル絶縁膜63との間に位置する。電荷蓄積膜64は、例えばシリコン窒化物を含む。電荷蓄積膜64と複数の導電膜25のそれぞれとが交差する部分は、それぞれメモリセルトランジスタMTとして機能する。電荷蓄積膜64が複数の導電膜25のそれぞれと交差する部分(電荷蓄積部)内の電荷の有無、又は、蓄積された電荷量によって、メモリセルトランジスタMTはデータを保持する。電荷蓄積膜64は、それぞれの導電膜25と半導体ボディ61との間にあり、周りを絶縁材料で囲まれている。
【0053】
カバー絶縁膜65は、セルアレイ領域CAの場合、例えば、それぞれの絶縁膜24と電荷蓄積膜64との間に位置する。カバー絶縁膜65は、例えばシリコン酸化物を含む。カバー絶縁膜65は、加工時に電荷蓄積膜64をエッチングから保護する。カバー絶縁膜65は、なくてもよいし、導電膜25と電荷蓄積膜64との間に一部残して、ブロック絶縁膜として用いてもよい。
【0054】
また、セルアレイ領域CAにおいては、それぞれの導電膜25と絶縁膜24との間、及び、それぞれの導電膜25とメモリ積層膜62との間には、ブロック絶縁膜71、バリア膜72を有してもよい。ブロック絶縁膜71は、バックトンネリングを抑制する。バックトンネリングは、導電膜25からメモリ積層膜62への電荷が戻る現象である。バリア膜25bは、導電膜25とブロック絶縁膜71との間の密着性を向上させる。ブロック絶縁膜71は、例えばシリコン酸化膜又は金属酸化物膜である。金属酸化物の一例は、アルミニウム酸化物である。バリア膜72は、例えば導電膜25がタングステンの場合、一例として窒化チタンとチタンとの積層構造膜である。
【0055】
図8は、導電膜21の近傍を拡大した断面図である。図8は、導電膜21および第1柱状部CL1をY方向およびZ方向に平行な面(YZ面)で切断した断面である。導電膜21は、上述のように例えば、半導体層21A、半導体層21B、半導体層21Cを含む。導電膜21は、複数の第1柱状部CL1それぞれに接続されている。導電膜21は、例えばX方向およびY方向に沿って広がった板状に形成され、ソースラインSLとして機能する。なお、端部領域EAにおける導電膜21も、図8と同様の構造であってもよい。
【0056】
(端部領域EA)
端部領域EAは、Y方向においてスリットSTを介してセルアレイ領域CAと隣接した、メモリセルアレイ10の端部に位置する領域である。端部領域EAは、第2積層体20Bと、第3積層体20Cと、半導体ボディ61を含む複数の第2柱状部CL2と、を有する。
【0057】
端部領域EAのうち、セルアレイ領域CA側の領域である第2積層体20Bは、スリットSTをY方向で隣り合う。第2積層体20Bは、上述した第1積層体20Aと同様の構造を有していてもよい。すなわち、第2積層体20Bは、Z方向に沿って、基板30側から順に、導電膜21、絶縁膜22、複数の導電膜25、および複数の絶縁膜24を有する。絶縁膜24は「第2絶縁膜」の一例であり、導電膜25は「第2導電膜」の一例である。
【0058】
他方、端部領域EAのうちセルアレイ領域CAとは反対側の領域である第3積層体20Cは、第2積層体20BとスリットSTの反対側で隣り合い、絶縁膜24と絶縁膜26とがZ方向に交互に積層された構造を有する。
【0059】
複数の第2柱状部CL2は、第2積層体20Bおよび第3積層体20C内に設けられている。複数の第2柱状部CL2は、それぞれZ方向に延びている。複数の第2柱状部CL2は、例えば、それぞれ第2積層体20Bおよび第3積層体20CをZ方向に貫通する。第2柱状部CL2の下部は、半導体層21Aに接している。第2柱状部CL2の上部は、カバー絶縁層50に接している。第2柱状部CL2の具体的な構造は第1柱状部CL1と同様であるが、端部領域EAにおける第2柱状部CL2は、メモリの動作には寄与しない、いわゆるダミーピラーである。
【0060】
端部領域EAにおけるカバー絶縁層50、ビットラインBLは、セルアレイ領域CAにおけるカバー絶縁層50、ビットラインBLと同様の構成である。
【0061】
第3積層体20Cは、Z方向に、導電膜21、絶縁膜22、酸素を含む複数の絶縁膜24、窒素を含む複数の絶縁膜26A、窒素を含む複数の絶縁膜26Bを有する。複数の絶縁膜24と複数の絶縁膜26Aは、Z方向において、この順にて繰り返し積層されている。複数の絶縁膜24と複数の絶縁膜26Bは、Z方向において、この順にて繰り返し積層されている。本実施形態において、絶縁膜26A、26Bは「第3絶縁膜」の一例である。端部領域EAにおける導電膜21および絶縁膜22の構成は、セルアレイ領域CAにおけるそれらと同様である。
【0062】
なお、以下では、複数の絶縁膜24と複数の絶縁膜26AとがZ方向に交互に積層された構造を「第1構造体R1」と称し、複数の絶縁膜24と複数の絶縁膜26BとがZ方向に交互に積層された構造を「第2構造体R2」と称して説明する。
【0063】
図9は、図5に示す領域Yの拡大図である。領域Yは、端部領域EAのうち、第2積層体20Bおよび第3積層体20Cの境界近傍を含む領域である。第1構造体R1と第2構造体R2は、Z方向に沿って交互に設けられている。
【0064】
複数の絶縁膜24は、それぞれX方向及びY方向に広がる。複数の絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化物を含む。絶縁膜24は、Z方向に隣り合う絶縁膜26A同士、もしくは絶縁膜26B同士の間にある。第1構造体R1と第2構造体R2との境界においては、絶縁膜24は、絶縁膜26Aと絶縁膜26Bとの間にある。絶縁膜24の層数は、絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bの層数によって決まる。絶縁膜24の膜厚は、例えば、20nm以下である。
【0065】
複数の絶縁膜26Aは、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの絶縁膜26Aは、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。絶縁膜26Aは、例えば、シリコン窒化物を含む。絶縁膜26Aの層数は、任意である。
【0066】
複数の絶縁膜26Bは、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの絶縁膜26Bは、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。絶縁膜26Bは、例えば、シリコン窒化物を含み、さらに、酸素もしくは水素を含む。絶縁膜26Bの層数は、任意である。
【0067】
複数の絶縁膜26Bはそれぞれ、図9に示すように、Z方向(膜厚方向)において、上部領域26BUと下部領域26BLを有する。上部領域26BUは、絶縁膜24の下面24L側に位置し、下部領域26BLは、絶縁膜24の上面24U側に位置する。
【0068】
絶縁膜26Bにおける下部領域26BLは、上部領域26BUよりも大きい、第1薬液に対するエッチングレートを有する。絶縁膜26Bを構成する上部領域26BUおよび下部領域26BLは、どちらも窒化シリコン等の絶縁膜から構成される。しかしながら、リン酸に対するエッチングレートは、上部領域26BUよりも下部領域26BLの方が大きい。そのため、図9に示すように、絶縁膜26BのセルアレイCA側の端部の断面形状は、上部領域26BUから下部領域BLにかけて略傾斜した形状となる。すなわち、絶縁膜26Bの下面の長さは、絶縁膜26Aの長さよりも短い。なお、絶縁膜26において、下部領域26BLから上部領域26BUに向かってエッチングレートが次第に大きくなるレート傾斜を有してもよい。
なお、本実施形態において、リン酸は「第1薬液」の一例である。
【0069】
また、絶縁膜26Bにおいて、下部領域26BLの密度は、上部領域26BUの密度と異なってもよい。例えば、下部領域26BLの密度は、上部領域26BUの密度よりも小さくてもよい。下部領域26BLの密度を上部領域BUよりも小さくすることで、リン酸に対するエッチングレートを大きくすることができる。
【0070】
また、絶縁膜26Bにおいて、下部領域26BLにおける酸素(O)の含有率は、上部領域26BUにおける酸素の含有率と異なってもよい。例えば、下部領域26BLの酸素の含有率は、上部領域26BUの酸素の含有率よりも小さくてもよい。下部領域26BLの酸素含有率を上部領域BUよりも小さくすることで、リン酸に対するエッチングレートを大きくすることができる。
【0071】
なお、上部領域26BU及び下部領域26BLは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)等によって見分けることが可能である。
【0072】
図9に示す例において、導電膜25における絶縁膜26Bのセルアレイ領域CA側の端部は、導電膜25における絶縁膜26AのセルアレイCA側の端部よりも、セルアレイ領域CAから遠い。
【0073】
ここで、第2積層体20Bは、複数の導電膜25のうち、少なくとも1つの導電膜25がY方向で第3積層体20Cの内部に突出した突出部25Tを有する。例えば、図9の場合には、絶縁膜26Bに対応する導電膜25、つまり第2構造体R2における導電膜25が第3積層体20Cの内部に突出している。他方で、絶縁膜26Aに対応する導電膜25、つまり第1構造体R2における導電膜25のセルアレイ領域CAと反対側の端部は、第3積層体20Cには到達しない。
【0074】
突出部25Tに含まれる導電膜25は、第1部分25T1と、第2部分25T2とを有する。第1部分25T1は、例えば導電膜25の上層に、第2部分25T2は導電膜の下層に位置する。なお、第1部分25T1が導電膜25の下層に、第2部分25T2が導電膜の上層に位置してもよい。
【0075】
第2部分25T2は、第1部分25T1より第3積層体20Cの内部により突出する。つまり、絶縁膜26Bの膜厚方向におけるエッチングレートの違いにより、対応する導電膜25のセルアレイ領域CAとは反対側の端部の突出量が膜厚方向において異なる。本実施形態において、セルアレイ領域CAとは反対側の端部の突出量が膜厚方向において異なる個々の導電膜25が、「第3導電膜」の一例である。なお、導電膜25のセルアレイ領域CAとは反対側の端部が、第1部分25T1から第2部分T2に向けて傾斜する形状を有してもよい。
【0076】
また、上部領域26BUと下部領域BLは、膜厚方向において接していてもよいし、離間していてもよい。
【0077】
また、上部領域26BUと下部領域26BLは、いずれも層状であって、互いに積層されていてもよい。つまり、絶縁膜26Bは、積層構造を有し、下部領域26BLの上方に上部領域26BUが設けられた構成であってもよい。
【0078】
なお、以上説明した下部領域26BLを含む第2構造体R2は、図5に示すように、Y方向において、縮径部Qと重なる位置にある。換言するに、第1柱状部CL1および第2柱状部CL2の縮径部QとY方向において重なる位置に、絶縁膜26Bが設けられる。
【0079】
絶縁膜26Bは、ドライエッチングによるメモリホールMH形成時、Z方向で隣り合う絶縁膜24の間で生じる、いわゆる「SiN欠け」の量を抑制する機能を有する。「SiN欠け」に関する説明は後述する。
【0080】
ここで、凸部61a(図7参照)と、端部領域EAにおける第1構造体R1および第2構造体R2との関係について説明する。
図5図7に示すように、複数の凸部61aのうち、突出部25TとY方向で重なる第1凸部61a1の長さs1は、突出部25TとY方向で重ならない第2凸部61a2の長さs2よりも短い。つまり、第1構造体R1とY方向で重なる第1凸部61a1の長さs1の方が、第2構造体R2とY方向で重なる第2凸部61a2の長さs2よりも短い。
【0081】
複数の凸部61aそれぞれの長さ(突起量)は、第1柱状部CL1に形成されている縮径部Qとの相対的な位置関係に応じて異なる。すなわち、複数の凸部61aそれぞれの長さは、Z方向で異なる。具体的には、第1柱状部CL1および第2柱状部CL2において、径が小さくなる縮径部Qに対応する凸部61aの突出量は、縮径部Q以外に対応する凸部61aよりも大きい。これは、絶縁膜26Bにおいて、膜厚方向でエッチングレートを変化させていることに由来する。つまり、絶縁膜26の位置に対応する凸部61aは、メモリホールMH形成時に、絶縁膜26の下部領域26BLが積極的にエッチングされ、その結果、凸部61aの形成領域となる溝がY方向に向かって大きく形成されやすくなるためである。そして、当該溝が大きく形成される(つまり絶縁膜26Bが絶縁膜26Aよりもエッチングされやすい)ということは、SiN欠けの量(つまり、欠けサイズ)を減少することが可能となる。SiN欠けの量が多くなると、閾値電圧のバラつきが大きくなり、電気的特性が不安定化する場合があるが、絶縁膜26Bにおいて膜厚方向でエッチングレートを変動させて、縮径部Qの凸部61аの長さをそれ以外の領域よりも長くすることで、SiN欠けの量を低減でき、電気的特性の安定化を図ることができる。
【0082】
ここで本実施形態の半導体記憶装置1は、図3に示すように、Z方向からの平面視で、複数のスリットSTおよびスリットSHEを有する。複数のスリットSTは、第1積層体20AをY方向に区分する、もしくは第1積層体20Aと第2積層体20BをY方向に区分する溝である。すなわち、スリットSTにより、セルアレイ領域CAと端部領域EAとがY方向に分断されている。複数のスリットSTはいずれも、X方向に延びる。
【0083】
複数のスリットSTはいずれも深いスリットであり、第1積層体20Aおよび第2積層体20Bを貫通し、カバー絶縁層50の上面から導電膜21まで至る。スリットST内は、第1分離部81が配置されている。第1分離部81は、例えば、シリコン酸化物を含む絶縁体である。Y方向に隣り合うスリットST間にある第1積層体20Aは、ブロック(図1の「BLKn」参照)と呼ばれ、例えば、データ消去の最小単位を構成する。なお、第1分離部81内には、導電体(例えば、タングステン、Poly-Siなど)が配置されていてもよい。
【0084】
複数のスリットSHEは浅いスリットであり、カバー絶縁層50の上面から第1積層体20Aの途中、および第2積層体20Bの途中まで設けられている。スリットSHEは、カバー絶縁層50の上面から第3積層体20Cの途中まで設けられてもよい。
【0085】
スリットSHE内は、第2分離部82が配置されている。第2分離部82は、例えば、シリコン酸化物を含む絶縁体である。Y方向に隣り合う隣接する2つのスリットSHEで区切られる領域が、いわゆるストリング(STR)である。
【0086】
尚、半導体記憶装置1のメモリセルアレイの平面レイアウトは、図3に示すレイアウトに限らず、その他のレイアウトであってもよい。例えば、隣り合う1つのストリング内における第1柱状部CL1の個数及び配置は、適宜変更されうる。
【0087】
<1.2 作用>
上述したように、端部領域EAとセルアレイ領域CAは、スリットSTによって分断されている。端部領域EAは上記の通り、メモリセルアレイ10のY方向の端部に位置する。当該端部は、リプレース時にスリットSTから投入されるエッチング液(例えば、リン酸)が到達しない(影響しない)領域である。つまり、端部領域EAに位置する積層体のうち、スリットSTからY方向に一定の距離離れた領域である第3積層体20Cにおいては、犠牲膜である絶縁膜26A,Bが除去されることなく残存する。ただし、この端部領域EAはメモリとして機能しない領域であるため、半導体記憶装置1の機能としては何ら問題ない。
【0088】
本実施形態では、端部領域EAのうち第3積層体20Cにおいて、膜厚方向でエッチングレートの異なる複数の領域(図9に示す例では、上部領域26BUと下部領域26BLの2領域)が形成された絶縁膜26Bが設けられている。これは、メモリホールMH形成時のSiN欠けの量(サイズ)を低減するためである。
【0089】
ここで、「SiN欠け」について説明する。
「SiN欠け」とは、メモリホール形成時、つまりドライエッチング時に使用するガス(CxFy系ガス)由来のフッ化カーボン(CF)が、メモリホール内の側壁に付着および堆積することにより、導電膜と絶縁膜との間の界面に発生する“欠け”のことである。具体的には、シリコン酸化物を含む絶縁膜(例えば、絶縁膜24)とシリコン窒化物を含む絶縁膜(例えば、絶縁膜26A)が交互に積層された積層体にメモリホールMHを形成するが、メモリホールMHの形成は、CxFy系ガスを用いたドライエッチングにより実施される。この時、CxFy系ガス由来のフッ化カーボン(CF)が、メモリホールMH内の側壁に付着し、フッ化カーボン膜(CF膜)として堆積していく。ただし、メモリホールMH内の側壁に露出している絶縁膜24および絶縁膜26A,Bのうち、シリコン窒化物を含む絶縁膜26A,Bの方にフッ化カーボン膜が付着しやすい傾向があるため、絶縁膜26A,Bの側壁のCF膜が大きくなる。つまり、メモリホールMH内の側壁に堆積するCF膜の膜厚に差が生じる。そして、メモリホールの径がZ方向で異なる場合、拡径部よりも縮径部の対応する絶縁膜26Bの側壁の方が、CF膜が付着しやすい。絶縁膜26Bの側壁のCF膜が大きくなると、CF膜のZ方向における上面にエッチングガスが衝突し、それに伴い、CF膜を構成するフッ素が絶縁膜24および絶縁膜26A,B(特に絶縁膜26B)との界面に沿って熱拡散し、結果、絶縁膜26A,B(特に絶縁膜26B)の上側の表面(界面)で、SiN欠けが発生してしまう。このようなSiN欠けが生じた状態で、メモリホールMH内に各柱状部の構成要素(例えば、電荷蓄積膜、カバー絶縁膜など)が形成されると、当該構成要素がSiN欠け内に入り込んでしまい、書き込み電圧のバラつきが生じるなど、電気的特性が劣化してしまう場合がある。
【0090】
そこで、本実施形態では、SiN欠けが顕著となる縮径部Qに対応する位置に、膜厚方向でエッチングレートの異なる特性を有する絶縁膜26Bを設けた上で、ドライエッチングによってメモリホールMHを形成することで、SiN欠けの量(つまりサイズ)を小さくすることができる。なお、本実施形態の半導体記憶装置1の場合、製法の途中段階では、セルアレイ領域CAの形成領域にも絶縁膜26Bは存在する。ただし、セルアレイ領域CAの形成領域に存在していた絶縁膜26Bは、リプレース処理によって導電膜25に置き換わってしまうため、最終形態である半導体記憶装置1のセルアレイ領域CAには絶縁膜26Bは残存しない。しかし、製法の途中段階では、セルアレイ領域CAには絶縁膜26Bは存在しているため、セルアレイ領域CAのSiN欠けのサイズを小さくできる。ここでいう「SiN欠けのサイズ」とは、絶縁膜26Aと絶縁膜24との間および絶縁膜26Bと絶縁膜24との間の各界面における欠けのY方向の最大長さを指す。
【0091】
なお、上記でも説明したが、メモリセルアレイ10の大部分(ただし端部領域EA除く)では、リプレースによって絶縁膜26A及び絶縁膜26Bは導電膜25に置き換わる。そのため、少なくともセルアレイ領域CAでは、絶縁膜26A及び絶縁膜26Bは除去されてしまい残存しない。しかし、端部領域EAの一部の領域(特に、セルアレイ領域CAと反対側の端部である第3積層体20C)はリプレースの影響がほとんどない。このため、リプレースが絶縁膜26bを用いて実施されたかどうかは、端部領域EAにおける第3積層体20Cの構成、つまり第3積層体20Cにて絶縁膜26bが残存しているかどうかで判別できる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態の半導体記憶装置1では、第1柱状部CL1の縮径部Qに対応する位置に、膜厚方向でエッチングレートの異なる複数の領域を有する絶縁膜26Bが設けられている。このため、縮径部Qにおける絶縁膜26Bのリセス量を増大でき、結果メモリホールMH形成時に生じるSiN欠けのサイズを小さくすることができる。その結果、半導体記憶装置1の電気的特性を向上させることができる。
【0093】
<2.半導体装置の製造方法>
次に、本実施形態の半導体記憶装置1の製造方法について説明する。図10図16は、本実施形態の半導体記憶装置1の製造方法を説明するための断面図である。なお、図11は、図10中の領域Zの拡大図である。
【0094】
まず、図10に示すように、基板30内に素子分離領域30Aを形成し、トランジスタTrを回路層PE内に形成する。トランジスタTrは、公知の方法で作製できる。また回路層PE内において、トランジスタTrと電気的に接続される複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2を絶縁層E1内に形成する。複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2は、公知の方法で作製できる。
【0095】
次いで、回路層PEの上に、半導体層21A、中間膜21Ba、第1犠牲膜21Bb、中間膜21Bc、半導体層21C、絶縁膜22を順に積層する。中間膜21Ba及び中間膜21Bcは、例えば、シリコン酸化物を含む。第1犠牲膜21Bbは、例えば、シリコン窒化物である。半導体層21A、半導体層21C、絶縁膜22は、上述のものと同様である。
【0096】
次いで、絶縁膜22上に、絶縁膜24と絶縁膜26(26A,26B)を、交互に積層していき、積層体20を形成する(積層工程)。なお、絶縁膜26Bは、第1柱状部CL1の縮径部Qに対応する領域Qarea図5参照)に対応する位置に形成する。
【0097】
具体的には、図11に示すように、縮径部Qに対応する領域Qareaには、絶縁膜24と絶縁膜26Bを交互に積層し、縮径部Qに対応する領域Qarea以外には、絶縁膜24と絶縁膜26Aを交互に積層する。絶縁膜24は、上述のものであり、例えばシリコン酸化物を含む。絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bはともに、例えばシリコン窒化物を含むが、絶縁膜26Bは、上部領域26BUと下部領域26BLを含み、下部領域26BLは、上部領域26BUよりも大きい、第1薬液(例えばリン酸)に対するエッチングレートを有する。
【0098】
ここで、絶縁膜26Bの成膜方法について説明する。
絶縁膜26Bは、シリコン窒化物を主成分とする膜である。当該シリコン窒化物に酸素が添加されていてもよい。なお、絶縁膜26Bにおける上部領域26BUおよび下部領域26BLは、それぞれのエッチングレートが異なるだけであり、ともにSiNを主成分とする点で共通する。よって、上部領域26BUおよび下部領域26BLは、それぞれを個別に成膜してもよいが、プラズマCDV(Chemical Vapor Deposition)によって連続して成膜することも可能である。例えば、下部領域26BLの成膜途中で成膜条件(例えば、ガスの流量、圧力、電源電力を適宜変更することで上部領域26BUを成膜できる。また、絶縁膜26Bの膜厚方向の密度傾斜についても、上記成膜条件を適宜制御することで調整することができる。
【0099】
次いで、図10に示すように、最上部に位置する絶縁膜26A上に、カバー絶縁層50を成膜して積層体20を形成する。
【0100】
次いで、積層体20にメモリホールMHを形成する(エッチング工程)。メモリホールMHは、積層体20の上面から半導体層21Aの途中まで至る。メモリホールMHは、エッチングにより作製する。例えば、積層体20の上面から半導体層21Aまで異方性エッチングする。
【0101】
図12は、メモリホールMH形成時の、絶縁膜24と絶縁膜26Bの拡大断面図である。上述したように、メモリホール形成時(異方性エッチング時)、絶縁膜同士の間の界面にSiN欠けPが発生する。当該SiN欠けは、半導体記憶装置1の電気的特性に影響を及ぼすため、そのサイズは小さいほうがよい。一方、本実施形態の絶縁膜26は、エッチングレートの比較的大きい下部領域26BLを設けるため、メモリホールMH形成時に、下部領域26BUも一部もエッチングされる場合がある(図12参照)。つまり、下部領域26BUが上部領域26BUよりも優先的にエッチングされることで、見掛け上のSiN欠けのサイズを小さくすることができる。
【0102】
異方性エッチングは、例えば炭素元素とフッ素元素とを含むガスGを用いて行われる。ガスGは、例えばCガスを含んでいる。ただし、Cは炭素、Hは水素、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数、yは0以上の整数、zは1以上の整数を表す(x≧1、y≧0、z≧1)。y=0の場合、Cはフルオロカーボンであり、y≠0の場合、Cはハイドロフルオロカーボンである。Cガスは、例えばCガス、Cガス、CHガスなどである。
【0103】
次いで、メモリホールMHの側壁の一部に、絶縁膜26B側にくぼむ溝(リセスRE)を形成する(リセス工程)。
図13は、リセスRE形成時の、絶縁膜24と絶縁膜26Bの拡大断面図である。このリセス工程でも、メモリホールMH形成時と同様に、下部領域26BUが上部領域26BUよりも優先的にエッチングされる。これにより、見掛け上のSiN欠けのサイズを小さくすることができる。
なお、SiN欠けはメモリホールMHの径が小さい領域ほど、そのサイズが大きい。そのため、メモリホールMHの径が小さくなる部位(縮径部Qに相当)に絶縁膜26Bを配置することで、SiN欠けのサイズの低減効果をより発揮させることができる。
【0104】
次いで、図14に示すように、メモリホールMH内にメモリ積層膜62、半導体ボディ61、絶縁コア60を順に形成する。メモリホールMHは、メモリ積層膜62、半導体ボディ61及び絶縁コア60で埋められる。これにより、メモリホールMH内に第1柱状部CL1および第2柱状部CL2が形成される。第1柱状部CL1および第2柱状部CL2に対し、適宜、アニール処理が施されてもよい。
【0105】
次いで、第1柱状部CL1および第2柱状部CL2が形成された積層体20上にカバー絶縁層51を成膜する。その後、積層体20に複数のスリットSTを形成する。スリットSTは、深いスリットであり、積層体20の上面から犠牲膜21Bbの途中まで延びる。スリットSTは、異方性エッチングにより形成する。スリットSTの内壁には、ストッパ膜を形成する。ストッパ膜は、例えばシリコン酸化物である。
【0106】
次いで、スリットSTを介して犠牲膜21Bbを等方性エッチングする。犠牲膜21Bbは、等方性エッチングにより除去される。等方性エッチングは、シリコン酸化物と比較して、シリコン窒化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いて行う。またさらなるエッチングによりメモリ積層膜62の一部も除去される。メモリ積層膜62のうち、犠牲膜21Bbが除去されて露出した部分が除去される。メモリ積層膜62の一部が除去されることで、半導体ボディ61の一部が露出する。メモリ積層膜62のエッチングは、シリコン窒化物と比較して、シリコン酸化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いて行う。メモリ積層膜62のエッチングにおいては、メモリ積層膜62と同時に、中間膜21Ba、21Bcおよびストッパ膜も除去される。半導体層21Aと半導体層21Cとの間には、空間が形成される。
【0107】
次いで、図14に示すように、スリットSTを介して、当該空間内を半導体材料で埋め込み、半導体層21Bを形成する。これにより、露出した半導体ボディ61と半導体層21Bとが接触する。半導体層21Bの材料は、上述のものである。半導体層21Bは、例えば、リンを含む。
【0108】
次いで、図15に示すように、絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bを導電膜25に置換する。まずスリットSTを介して、絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bを除去する。絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bは、等方性エッチングにより除去される。等方性エッチングは、シリコン酸化物及びポリシリコンと比較してシリコン窒化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いる。ただしこの時、端部領域EAの一部は、エッチャントが到達しない(影響しない)ため、犠牲膜である絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bが除去されることなく残存する。つまり、絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bの一部は導電膜25に置換されない。
【0109】
その後、絶縁膜26Aおよび絶縁膜26Bが除去された部分を導電材料で埋め込み、導電膜25を形成する。これにより第1積層体20A、第2積層体20Bおよび第3積層体20Cが形成される。
【0110】
次いで、スリットST内を絶縁体で埋め込むことで第1分離部81を形成する。これにより、セルアレイ領域CAと端部領域EAがY方向に分断される。
【0111】
次に、図16に示すように、複数のスリットSHEを形成する。複数のスリットSHEはいずれも、少なくとも第1積層体20A、第2積層体20Bおよび第3積層体20Cの上面から、導電膜25C(ドレイン側選択ゲートラインSGD)に対応する深さまで至る。複数のスリットSHEは、エッチングにより作製する。例えば、第1積層体20A、第2積層体20Bおよび第3積層体20Cの上面から導電膜25C(ドレイン側選択ゲートラインSGD)に対応する深さまで異方性エッチングする。異方性エッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)である。次いで、複数のスリットSHE内を絶縁体で埋め込むことで第2分離部82を形成する。
【0112】
次いで、第1積層体20A、第2積層体20Bおよび第3積層体20Cの上方にビットラインBLを設ける。
以上の工程により、本実施形態の半導体記憶装置1が作製される。なおここで示した製造工程は一例であり、各工程の間にその他の工程を挿入してもよい。
【0113】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、メモリ膜は、分極の方向によりデータを記憶するFeFET(Ferroelectric FET)メモリに含まれる強誘電体膜であってもよい。強誘電体膜は、例えば、ハフニウム酸化物で形成される。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0115】
1…半導体記憶装置、2…メモリコントローラ、10…メモリセルアレイ、11…ロウデコーダ、12…センスアンプ、13…シーケンサ、20A…第1積層体、20B…第2積層体、21…導電膜、21A,21B,21C…半導体層、22…絶縁膜、25A…第1導電膜(WL)、25B…第2導電膜(SGS)、25C…第3導電膜(SGD)、26A,26B…絶縁膜、30…基板、50,51…カバー絶縁層、60…絶縁コア、61…半導体層、62…メモリ積層膜、63…トンネル絶縁膜、64…電荷蓄積膜、65…カバー絶縁膜、81…第1分離部、82…第2分離部、BL…ビットライン、BLK…ブロック、CL1…第1柱状部、CL2…第2柱状部、MH…メモリホール、WL…ワードライン、MT…メモリセルトランジスタ、PE…回路層、SGS…選択ゲートライン(ソース側)、SGD…選択ゲートライン(ドレイン側)、SL…ソースライン、SL…スリット、SHE…スリット、Tr…トランジスタ。
図1
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