(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134511
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ピポット接合構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/00 20060101AFI20240926BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20240926BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20240926BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F16B5/00 E
F16B21/04 H
B60T7/06 D
F16B5/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215058
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】202310270011.0
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小池 明彦
【テーマコード(参考)】
3D124
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
3D124AA34
3D124BB01
3D124CC08
3D124CC59
3D124DD06
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001HA08
3J001HA10
3J001JD02
3J001KA19
3J001KB01
3J037AA01
3J037AA06
3J037BB02
3J037BB04
3J037BB06
3J037CA06
(57)【要約】
【課題】簡易な構造かつ組み立て作業が容易であって、作動初点から作動開始までの間のガタを低減することができるピポット接合構造を提供する。
【解決手段】ピポット接合構造は、固定部材10に設けられた第1ピン孔12と、固定保持部材20に設けられた第2ピン孔25と、第1ピン孔12及び第2ピン孔25に挿通するピン本体部31を有するピン30と、を有し、ピン30は、ピン本体部31の軸中心からピン本体部の軸方向と直交する第1方向に延びる突出部32を有し、固定保持部材20は、第2ピン孔25が設けられる平面部21aと、平面部21aからピン本体部31の軸方向に沿って立ち上がる壁部24と、を有し、壁部24は、ピン本体部31の軸方向及び第1方向と直交する第2方向に延びて一端が開口する第1スリット26を有し、突出部32は、ピン本体部31の軸中心を回転中心として、第1スリット26側に回転させ、第1スリット26に挿入する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、前記固定部材に対し回転軸で軸支される固定保持部材とを連結するピポット接合構造であって、
前記固定部材に設けられた第1ピン孔と、
前記固定保持部材に設けられ、前記第1ピン孔に対応する位置に設けられた第2ピン孔と、
前記第1ピン孔及び前記第2ピン孔に挿通する前記回転軸であるピン本体部を有するピンと、
を有し、
前記ピンは、前記ピン本体部の一端に設けられ、前記ピン本体部の軸中心から前記ピン本体部の軸方向と直交する第1方向に延びる突出部を有し、
前記固定保持部材は、前記第2ピン孔が設けられる平面部と、前記平面部から前記ピン本体部の軸方向に沿って立ち上がる壁部と、を有し、
前記壁部は、前記ピン本体部の軸方向及び前記第1方向と直交する第2方向に延びて一端が開口する第1スリットを有し、
前記突出部は、前記ピン本体部の軸中心を回転中心として、前記第1スリット側に回転させ、前記第1スリットに挿入すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のピポット接合構造において、
前記ピンに取り付けられるスプリングを有し、
前記第1スリットは、前記スプリングの一方の端部と前記突出部とが挿入され、
前記第1スリットにおいて、前記開口における前記ピン本体部の軸方向のスリット幅が、前記第1スリットにおける前記開口よりも前記第1スリットの底部側における前記ピン本体部の軸方向のスリット幅よりも狭いこと、
特徴とするピポット接合構造。
【請求項3】
請求項1に記載のピポット接合構造において、
前記第1スリットの前記開口の前記ピン本体部の軸方向の一方は、前記ピン本体部の軸方向の他方に向かって勾配する第1ガイド部を有すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項4】
請求項2に記載のピポット接合構造において、
前記第1スリットの底部は、少なくとも前記底部の前記ピンの軸方向の一方が勾配形状である第2ガイド部を有すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項5】
請求項1に記載のピポット接合構造において、
前記ピンは、前記ピン本体部の軸方向に沿って延在する第2スリットを有し、
前記第2スリットに沿って配置されるスプリングを有し、
前記スプリングは、前記ピンの突出部側の一端から先端部を超えて前記第2スリットに沿って巻回する第1巻回部を有すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項6】
請求項1に記載のピポット接合構造において、
前記ピンに取り付けられるスプリングを有し、
前記スプリングは、前記固定保持部材の前記平面部と前記ピンの前記突出部との間で前記ピン本体部の外周に巻回されて前記ピンを前記ピン本体部の軸方向において前記固定部材と反対側に付勢する第2巻回部を有すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項7】
請求項3に記載のピポット接合構造において、
前記ピンに取り付けられるスプリングを有し、
前記スプリングは、前記固定部材の前記第1ピン孔において前記第1方向とは反対に湾曲して前記固定部材に当接可能な第1湾曲部と、
前記固定保持部材の前記第2ピン孔において前記第1湾曲部と同じ方向に湾曲して前記固定保持部材に当接可能な第2湾曲部と、
を有すること、
を特徴とするピポット接合構造。
【請求項8】
請求項1に記載のピポット接合構造において、
前記ピポット接合構造は、
車両のブレーキペダルと、ブレーキアクチュエーターと、を連結する接合構造であること、
を特徴とするピポット接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピポット接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキペダル等のペダル装置においては、従来からクレビスピンによるジョイント構造(ピポット接合構造)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、ブレーキペダルとブレーキアクチュエーターとの連結部のような、クレビスジョイントにおいて、寸法公差及び、組付け作業性の確保のために、ペダルとピンとの結合部、及び、ピンとクレビスとの結合部の2つの結合部それぞれについてクリアランスを設ける必要があった。よって、従来のクレビスピンを用いたピポット接合構造では、作動初点から入力開始のまでの間にガタ(ロスストローク)が発生し、異音(打音)の発生、作動効率の悪化、作動フィーリングの悪化等が生じるおそれがあった。また、ピンの抜け防止の為に、ピン先端に別の抜け止め用割ピン等を挿入するという工程が必要であり、小さい部品を小さい孔に入れる等の難しい両手作業が必要であり、組み立て作業者へ負担となっていた。
【0005】
本開示の課題は、簡易な構造かつ組み立て作業が容易であって、作動初点から作動開始までの間のガタを低減することができるピポット接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の開示は、固定部材(10)と、前記固定部材(10)に対し回転軸で軸支される固定保持部材(20)とを連結するピポット接合構造(1)であって、前記固定部材(10)に設けられた第1ピン孔(12)と、前記固定保持部材(20)に設けられ、前記第1ピン孔(12)に対応する位置に設けられた第2ピン孔(25)と、前記第1ピン孔(12)及び前記第2ピン孔(25)に挿通する前記回転軸であるピン本体部(31)を有するピン(30)と、を有し、前記ピン(30)は、前記ピン本体部(31)の一端に設けられ、前記ピン本体部(31)の軸中心から前記ピン本体部(31)の軸方向と直交する第1方向に延びる突出部(32)を有し、前記固定保持部材(20)は、前記第2ピン孔(25)が設けられる平面部(21a)と、前記平面部(21a)から前記ピン本体部(31)の軸方向に沿って立ち上がる壁部(24)と、を有し、前記壁部(24)は、前記ピン本体部(31)の軸方向及び前記第1方向と直交する第2方向に延びて一端が開口する第1スリット(26)を有し、前記突出部(32)は、前記ピン本体部(31)の軸中心を回転中心として、前記第1スリット(26)側に回転させ、前記第1スリット(26)に挿入すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0008】
第2の開示は、第1の開示に記載のピポット接合構造(1)において、前記ピン(30)に取り付けられるスプリング(40)を有し、前記第1スリット(26)は、前記スプリング(40)の一方の端部と前記突出部(32)とが挿入され、前記第1スリット(26)において、前記開口における前記ピン本体部(31)の軸方向のスリット幅(W26A)が、前記第1スリット(26)における前記開口よりも前記第1スリット(26)の底部側における前記ピン本体部(31)の軸方向のスリット幅(W26B)よりも狭いこと、特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0009】
第3の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載のピポット接合構造(1)において、前記第1スリット(26)の前記開口の前記ピン本体部(31)の軸方向の一方は、前記ピン本体部(31)の軸方向の他方に向かって勾配する第1ガイド部(26a)を有すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0010】
第4の開示は、第1の開示から第3の開示までのいずれかに記載のピポット接合構造(1)において、前記第1スリット(26)の底部は、少なくとも前記底部の前記ピン(30)の軸方向の一方が勾配形状である第2ガイド部(26b)を有すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0011】
第5の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかに記載のピポット接合構造(1)において、前記ピン(30)は、前記ピン本体部(31)の軸方向に沿って延在する第2スリット(34)を有し、前記第2スリット(34)に沿って配置されるスプリング(40)を有し、前記スプリング(40)は、前記ピン(30)の突出部(32)側の一端から先端部を超えて前記第2スリット(34)に沿って巻回する第1巻回部(41)を有すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0012】
第6の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載のピポット接合構造(1)において、前記ピン(30)に取り付けられるスプリング(40)を有し、前記スプリング(40)は、前記固定保持部材(20)の前記平面部(21a)と前記ピン(30)の前記突出部(32)との間で前記ピン本体部(31)の外周に巻回されて前記ピン(30)を前記ピン本体部(31)の軸方向において前記固定部材(10)と反対側に付勢する第2巻回部(45)を有すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0013】
第7の開示は、第1の開示から第6の開示までのいずれかに記載のピポット接合構造(1)において、前記ピン(30)に取り付けられるスプリング(40)を有し、前記スプリング(40)は、前記固定部材(10)の前記第1ピン孔(12)において前記第1方向とは反対に湾曲して前記固定部材(10)に当接可能な第1湾曲部(42)と、前記固定保持部材(20)の前記第2ピン孔(25)において前記第1湾曲部(42)と同じ方向に湾曲して前記固定保持部材(20)に当接可能な第2湾曲部(44)と、を有すること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【0014】
第8の開示は、第1の開示から第3の開示までのいずれかに記載のピポット接合構造(1)において、前記ピポット接合構造(1)は、車両のブレーキペダル(10)と、ブレーキアクチュエーター(20)と、を連結する接合構造であること、を特徴とするピポット接合構造(1)である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、簡易な構造かつ組み立て作業が容易であって、作動初点から作動開始までの間のガタを低減することができるピポット接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示によるピポット接合構造1の実施形態を示す図である。
【
図3】固定保持部材20を+Z側から見た図である。
【
図4】ピン30とスプリング40を+Y側から見た図である。
【
図5】組立て状態のピポット接合構造1を
図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。
【
図7】第1作業工程を各方向から示して説明する図である。
【
図9】第2作業工程を各方向から示して説明する図である。
【
図11】第3作業工程を各方向から示して説明する図である。
【
図13】第4作業工程を各方向から示して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0018】
(実施形態)
図1は、本開示によるピポット接合構造1の実施形態を示す図である。
図2は、ピポット接合構造1の分解斜視図である。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。また、図中には、説明の便宜のためX、Y、Zの直交座標を設け、以下の説明ではこの座標を用いて各部の向き等の説明を行う。具体的には、ピン30のピン本体部31の軸方向をX軸方向とし、
図1の組立て状態においてピン30の突出部32が延在する方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とした。また、Z軸方向を第1方向、Y軸方向を第2方向とも呼ぶものとする。
【0019】
本実施形態のピポット接合構造1は、固定部材10と、固定保持部材20と、ピン30と、スプリング40とを備えており、例えば、自動車のブレーキペダルとブレーキアクチュエーターとの連結部に用いられる。
【0020】
固定部材10は、後述の固定保持部材20が取り付けられる部材であり、本実施形態では、自動車のブレーキペダルの一部を構成する部品である。固定部材10は、側面部11と、第1ピン孔12と、支持孔13と、を有している。
【0021】
側面部11は、固定保持部材20が挿入可能な平面状に形成されている。側面部11はY軸及びZ軸に平行な平面となっている。
【0022】
第1ピン孔12は、側面部11の表面に直交する方向で貫通して形成されている。第1ピン孔12の中心軸が延在する方向は、X軸に平行である。
【0023】
支持孔13は、固定部材10を不図示の支持部に取り付けるための貫通孔である。固定部材10は、支持孔13の中心を支点として運転者の操作により回動する。
【0024】
固定保持部材20は、ブレーキアクチュエーターの一部を構成する部材であり、固定部材10に取り付けられている。固定保持部材20は、対向腕部21、22と、連結部23と、壁部24と、第2ピン孔25と、第1スリット26とを有している。
【0025】
対向腕部21、22は、それぞれが対向して配置されており、対向腕部21と対向腕部22との間に固定部材10が挟み込まれる。対向腕部21の+X側には後述するピン30のピン本体部31の軸方向(X軸方向)に直交する平面である平面部21aが設けられている。平面部21aには、第2ピン孔25が設けられている。
【0026】
連結部23は、対向腕部21及び対向腕部22のそれぞれの-Z側の端部を接続しており、対向腕部21及び対向腕部22と連結部23とによって、底部となる連結部23が平坦な略U字形状のクレビスを構成している。連結部23には、固定保持部材20を不図示のブレーキアクチュエーターの本体部分に接続するために用いる取付孔27が貫通して設けられている。
【0027】
壁部24は、平面部21aを有する対向腕部21の+Z側の端部から後述するピン本体部31の軸方向(X軸方向)に沿って壁状(板状)に立ち上がっている。壁部24の表面は、X軸及びY軸に平行な面となっている。
【0028】
第2ピン孔25は、固定保持部材20の平面部21aに設けられ、第1ピン孔12に対応する位置に設けられている。第2ピン孔25は、平面部21aから対向腕部21及び対向腕部22を貫通して設けられている。
【0029】
図3は、固定保持部材20を+Z側から見た図である。第1スリット26は、ピン本体部31の軸方向(X軸方向)及び第1方向(X軸方向)と直交する第2方向(Y軸方向)に延びて一端が開口しており、開口と対向する側に底部を有する有底の溝(スリット)である。第1スリット26には、後述するスプリング40の一方の端部と突出部32とが挿入される。第1スリット26は、第1ガイド部26aと、第2ガイド部26bと、オーバーハング部26cとを有している。
【0030】
第1ガイド部26aは、第1スリット26の開口のピン本体部31の軸方向の一方(X軸方向の-X側)に設けられており、ピン本体部31の軸方向の他方(X軸方向の+X側)に向かって勾配する傾斜面である。第1ガイド部26aを設けることにより、突出部32及びスプリング40の端部46の第1スリット26への挿入を容易にでき、組付け性を向上することができる。
【0031】
第2ガイド部26bは、第1スリット26の底部にあって、ピン本体部31の軸方向の一方側(X軸方向の-X側)に設けられた勾配形状である。後述する組み立て作業時に、ピン30を軸方向に挿入後、回転させて第1スリット26に突出部32を入れる最後の工程で、この第2ガイド部26bがあることにより、確実に突出部32を第1スリット26の+X側に押し付けることができる。これによりスプリング40の端部46がオーバーハング部26cと第1スリット26の底部との間に確実に入ることができ、突出部32の抜け防止効果を高めることができる。
【0032】
オーバーハング部26cは、第1スリット26の開口のピン本体部31の軸方向の他方側(X軸方向の+X側)に設けられており、-X側へ突出して形成されている。オーバーハング部26cの第1スリット26側には、第1ガイド部26aと同じ向きに勾配する傾斜面を有している。オーバーハング部26cが設けられていることにより、突出部32の抜けを防止できる。また、オーバーハング部26cに斜面が設けられていることにより、突出部32がオーバーハング部26cの斜面に当接した場合に、スプリング40の付勢力によって突出部32を第1スリット26の底部側(-Y側)へ移動させることができる。
【0033】
また、第1スリット26において、開口におけるピン本体部31の軸方向(X軸方向)のスリット幅W26Aは、第1スリット26における開口よりも第1スリット26の底部側におけるピン本体部31の軸方向(X軸方向)のスリット幅W26Bよりも狭い。この構成により、後述する組み立て作業時に、突出部32が回転しながら第1スリット26に挿入される際に、突出部32がピン保持部の底部に到達して初めて、スプリング40の端部46が第1スリット26と突出部32間の隙間に入ることができる。そのため、スプリング40の端部46が第1スリット26と突出部32間の隙間に入った後は、突出部32が第1スリット26から簡単には出ることができず、突出部32の抜けを防止することができる。
【0034】
また、スリット幅W26Aは、突出部32のピン本体部31の軸方向(X軸方向)の幅W32と、スプリング40の端部46のピン本体部31の軸方向(X軸方向)の幅W46とを足した幅よりも広い。ここで、スプリング40のばね力を適切な値とするために、スプリング40の線径を小さくする必要が生じる場合がある。その場合に、スリット幅W26Aの寸法精度を高くする必要が生じるおそれがある。そのような場合には、第1スリット26に挿入される部分でスプリング40の端部46をピン本体部31の軸方向(X軸方向)で屈曲させる等して、スプリング40の端部46のピン本体部31の軸方向(X軸方向)の幅W46を実質的に広くするとよい。
【0035】
図4は、ピン30とスプリング40を+Y側から見た図である。
図5は、組立て状態のピポット接合構造1を
図1中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。ピン30は、ピン本体部31と、突出部32と、フランジ部33と、第2スリット34とを有しており、固定部材10に対して回転可能な状態で取り付けられる。しかし、突出部32が第1スリット26に挿入され、スプリング40によって付勢力を受けているので、通常はピン30の固定部材10に対する回転は、規制されている。
【0036】
ピン本体部31は、第1ピン孔12及び第2ピン孔25に挿通する回転軸である。ピン本体部31は、第1ピン孔12及び第2ピン孔25に挿通可能な外径の略円筒形状に形成されている。ピン本体部31の先端(-X側の先端)には、第1ピン孔12及び第2ピン孔25への挿入を容易にするための面取りが設けられている。また、ピン本体部31には、後述する第2スリット34が設けられている。
【0037】
突出部32は、ピン本体部31の一端(+X側の端部)にフランジ部33を介して設けられ、ピン本体部31の軸中心からピン本体部の軸方向(X軸方向)と直交する第1方向(+Z方向)に延在している。なお、突出部32の延在する方向がピン本体部の軸方向(X軸方向)と直交する第1方向(+Z方向)であるのは、
図1に示した組立て完了状態においてである。突出部32は、後述する組み立て作業時に、ピン本体部31の軸中心を回転中心として、第1スリット26側に回転され、第1スリット26に挿入する。
【0038】
フランジ部33は、ピン本体部31の一端(+X側の端部)に鍔状に広がって設けられている。フランジ部33と固定部材10の側面
図11との間にスプリング40の第2巻回部45が設けられ、フランジ部33は、第2巻回部45から+X向きの付勢力を受ける。
【0039】
第2スリット34は、ピン本体部31の軸方向に沿って延在している。第2スリット34は、組立て状態において、-Z側と+Z側の双方に向けて開口する位置に設けられており、ピン本体部31の先端(-X側)にも回り込んで連続している。第2スリット34は、スプリング40が巻回可能な幅に形成されている。
【0040】
スプリング40は、ピン30の第2スリット34に沿って配置される。スプリング40は、第1巻回部41と、第2巻回部45と、端部46とを有している。
【0041】
第1巻回部41は、ピン30の突出部32側の一端からピン30の先端部を超えて第2スリット34に挿入されて、第2スリット34に沿って巻回している。このようにピン30の第2スリット34に第1巻回部41を設けることにより、ピン30に孔加工等の追加の加工を必要とせずに、スプリング40のピン30に対する回転方向位置決めができる。また、ピン30にスプリング40を取り付けた状態でピン本体部31の断面形状(X軸に垂直な断面形状)が略円形となり、第1ピン孔12及び第2ピン孔25の孔形状を、スプリング40を逃げる形状等の複雑な形状にする必要なく、円形の孔にすることができる。よって、孔加工が容易になり、また、ピン30の挿入工程でどの回転位置でピン30を挿入しても問題ないので、挿入工程を容易にすることができる。
【0042】
また、第1巻回部41は、第1湾曲部42と、先端屈曲部43と、第2湾曲部44とを有している。第1湾曲部42は、端部46とは反対側の端部の近傍に設けられた部分であって、第2スリット34の-Z側に設けられ、固定部材10の第1ピン孔12において第1方向(+Z方向)とは反対方向(-Z方向)に凸となって湾曲して固定部材10に当接可能である。
【0043】
先端屈曲部43は、第2スリット34の先端(-X側)に対応する位置に設けられ、第1湾曲部42と第2湾曲部44とを接続している。
【0044】
第2湾曲部44は、第2スリット34の-Z側に設けられ、固定保持部材20の第2ピン孔25において第1湾曲部42と同じ方向に湾曲して固定保持部材20に当接可能である。
【0045】
第1湾曲部42及び第2湾曲部44を設けることにより、第1湾曲部42が-Z方向へ固定部材10を押すと同時に、その逆の方向(+Z方向)へ第2湾曲部44が固定保持部材20を押すことができる。よって、固定部材10とピン30とのガタ、及び、固定保持部材20とピン30とのガタの双方のガタを無くすことができる。
【0046】
第2巻回部45は、固定保持部材20の平面部21aとピン30の突出部32との間でピン本体部31の外周に巻回されている。第2巻回部45は、ピン30をピン本体部31の軸方向(X方向)において固定部材10と反対側(+X側)に付勢する。
【0047】
端部46は、第2巻回部45から略+Z方向へ向けて延在しており組立て状態において第1スリット26に挿入される。
【0048】
次に、本実施形態のピポット接合構造1の組立て作業工程について説明する。
図6は、第1作業工程を説明する斜視図である。
図7は、第1作業工程を各方向から示して説明する図である。
図7(a)は、+X側から見た図であり、
図7(b)は、+Z側から見た図であり、
図7(c)は、
図5と同様な位置で切断した断面図である。先ず、第1作業工程として、
図6及び
図7に示すように、ピン30に対してスプリング40を取り付けて一つのユニットといて構成する。また、第1ピン孔12と第2ピン孔25とが重なるように、固定部材10の所定位置に固定保持部材20を設置する。
【0049】
図8は、第2作業工程を説明する斜視図である。
図9は、第2作業工程を各方向から示して説明する図である。
図9(a)は、+X側から見た図であり、
図9(b)は、+Z側から見た図であり、
図9(c)は、
図5と同様な位置で切断した断面図である。第1作業工程に続く第2作業工程では、ピン30とスプリング40とが組み合わされたユニットを、ピン本体部31が第1ピン孔12及び第2ピン孔25に挿入されるようにして、固定部材10及び固定保持部材20へ組み付ける。このとき、ピン30の突出部32は、+Y側へ向けておく。また、
図9(c)に示すように、スプリング40の第2巻回部45が十分に圧縮されてピン30を-X側へ押し込めなくなる位置まで挿入する。
【0050】
図10は、第3作業工程を説明する斜視図である。
図11は、第3作業工程を各方向から示して説明する図である。
図11(a)は、+X側から見た図であり、
図11(b)は、+Z側から見た図であり、
図11(c)は、
図5と同様な位置で切断した断面図である。第2作業工程に続く第3作業工程では、ピン30を
図11(a)の+X側から見て右回りに90度回転させて、突出部32を第1スリット26へ挿入する。このとき、第1ガイド部26aが設けられているので、突出部32を第1スリット26へ挿入する作業が容易になる。この時点では、スプリング40の端部46は、固定保持部材20の壁部24に当接して回転を規制されており、第1スリット26へ挿入されない。
【0051】
図12は、第4作業工程を説明する斜視図である。
図13は、第4作業工程を各方向から示して説明する図である。
図13(a)は、+X側から見た図であり、
図13(b)は、+Z側から見た図であり、
図13(c)は、
図5と同様な位置で切断した断面図である。第3作業工程に続く第4作業工程では、スプリング40の第2巻回部45の付勢力によってピン30が抜け方向(+X方向)へ移動する。また、第2ガイド部26bへ突出部32が当接することによっても、ピン30が抜け方向(+X方向)へ移動する。そして、ピン30が抜け方向(+X方向)へ移動することによって、スプリング40の端部46についても+X方向へ移動して回転の規制が解除され、自由形状に戻る作用によって、
図13(a)の+X側から見て右回りに回転する。これにより、スプリング40の端部46は、第1スリット26へ挿入される。このとき、第1ガイド部26aが設けられているので、スプリング40の端部46が第1スリット26へ挿入されることを補助する。
【0052】
このように第2巻回部45を設けることにより、突出部32及びスプリング40の端部46が第2巻回部45の付勢力によって第1スリット26内の所定の位置に順次移動させられる。よって、突出部32及びスプリング40の端部46が第1スリット26から抜けることを防止でき、ピン本体部31が固定部材10及び固定保持部材20から抜けることも防止できる。また、スプリング40がピン30を固定保持部材20の第1スリット26内の所定の位置に押し付ける作用も得られ、ピン30及びスプリング40の軸方向精度を高めることができる。上記第4作業工程を行うことにより、ピポット接合構造1の組み立てが完了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のピポット接合構造1によれば、ピポット接合部のガタがなくなり、固定部材10(ペダル)の操作初期から高負荷荷重入力時までの全域でガタによるロスストロークを無くすことができ、効率と操作性を向上することができる。
【0054】
また、従来のクレビスピンを用いた接合構造では、ピンの挿入作業に加えて、ロックピンの取り付け作業が必要であった。これに対して、本実施形態のピポット接合構造1では、ピン30の挿入後にピン30を回転させるだけという片手操作のみで組み立て作業が完了するため、作業効率の向上が図れる。
【0055】
また、本実施形態のピポット接合構造1では、追加のロックピン組付け工程が無いため、ロックピンの組忘れ、誤組付け等のリスクがなく、また、組付け完了時にスプリングのクリック感による認知性も高いため、組付け不良となるリスクも低く、組付け確実性を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態のピポット接合構造1では、組み立て完了後、意図的に分解する他は、部品の変形や破損等が生じない限りピンが脱落する状況は考え難く、脱落リスクが低く確実性の高い接合構造を実現できる。
【0057】
また、本実施形態のピポット接合構造1では、固定保持部材20に対するピン30の位置がスプリング40の作用によって固定され、作動や振動等によりピン30の位置がズレたり摩耗したりすることが無いため、機能の耐久性を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態のピポット接合構造1では、従来のクレビスピンを用いた接合構造に対し、部品点数の増加がなく、また、ピン30に対して孔加工等の高価な切削加工等が不要な形状とすることができ、安価に上記各効果を得られる構成を実現できる。
【0059】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0060】
例えば、実施形態において、ピポット接合構造1は、自動車のブレーキペダルとブレーキアクチュエーターとの連結部に用いられるものである例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、クラッチペダルやアクセルペダル等の他のペダル部分に用いられるピポット接合構造であってもよいし、クレビスを用いるペダルに限らず各種接合部分に適用してもよい。
【0061】
また、例えば、本開示のピポット接合構造1は、産業設備等に用いられる汎用のエアシリンダーや油圧シリンダー等のクレビスジョイント部分に用いてもよいし、油圧ショベル等の建設機械に用いられる油圧シリンダー等のクレビスジョイント部分に用いてもよい。
【0062】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0063】
1 ピポット接合構造
10 固定部材
11 側面部
12 第1ピン孔
13 支持孔
20 固定保持部材
21 対向腕部
21a 平面部
22 対向腕部
23 連結部
24 壁部
25 第2ピン孔
26 第1スリット
26a 第1ガイド部
26b 第2ガイド部
26c オーバーハング部
27 取付孔
30 ピン
31 ピン本体部
32 突出部
33 フランジ部
34 第2スリット
40 スプリング
41 第1巻回部
42 第1湾曲部
43 先端屈曲部
44 第2湾曲部
45 第2巻回部
46 端部