(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134512
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】粘着シート、電子部品の製造方法、及び、粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240926BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20240926BHJP
C09J 109/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J109/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215910
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023044328
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】野田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA17
4J004AB01
4J004DA04
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J040CA081
4J040DM011
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、耐熱性に優れ、かつ、セパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることを抑制できる粘着シートを提供する。また、該粘着シートを用いた電子部品の製造方法、及び、該粘着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有し、前記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含み、前記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であり、かつ、ゲル分率が30質量%以上であり、前記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有し、前記離型剤層は、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを含有し、前記離型剤層中において、前記シリコーン樹脂100質量部に対する前記ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有し、
前記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含み、
前記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であり、かつ、ゲル分率が30質量%以上であり、
前記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有し、
前記離型剤層は、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを含有し、
前記離型剤層中において、前記シリコーン樹脂100質量部に対する前記ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有し、
前記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含み、
前記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であり、かつ、ゲル分率が30質量%以上であり、
前記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有し、
前記離型剤層は、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを含有し、
前記離型剤層中において、前記シリコーン樹脂100質量部に対する前記ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下であり、
前記セパレータは、前記粘着層に対する180°剥離力が1.0N/25mm以下である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層は、ガラスに対する90°剥離力が5.0N/25mm以上である請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ゴム系エラストマーは、スチレン系エラストマー、及び、水添スチレン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ゴム系エラストマーは、水添スチレン系エラストマーを含む請求項4記載の粘着シート。
【請求項6】
前記水添スチレン系エラストマーは、芳香族アルケニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体である請求項5記載の粘着シート。
【請求項7】
前記芳香族アルケニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体は、下記式(1)で表されるラジアル型ブロック共重合体の水素添加体である請求項6記載の粘着シート。
【化1】
式(1)中、Aは、芳香族アルケニル重合体ブロックであり、Bは、共役ジエン重合体ブロックであり、Cは、カップリング剤に由来するセグメントであり、nは、3以上の整数である。
【請求項8】
前記粘着剤は、更に、架橋助剤を含有し、前記ベース樹脂100質量部に対する前記架橋助剤の含有量が15質量部以下である請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項9】
前記架橋助剤は、(メタ)アクリル系モノマーを含む請求項8記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤は、更に、粘着付与樹脂を含有し、前記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合を有さない粘着付与樹脂を含む請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項11】
前記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合を有さない粘着付与樹脂のみからなる請求項10記載の粘着シート。
【請求項12】
前記ベース樹脂100質量部に対する前記粘着付与樹脂の含有量が20質量部以上80質量部以下である請求項10記載の粘着シート。
【請求項13】
前記セパレータ用基材以外の基材を有さないノンサポートタイプである請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項14】
周波数1GHz以上の電磁波を発信又は受信する装置の製造に用いられる請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項15】
導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体の内部の部材間を、前記セパレータを剥離した請求項1又は2記載の粘着シートを介して貼り合わせる工程、又は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と他の部材とを、前記セパレータを剥離した請求項1又は2記載の粘着シートを介して貼り合わせる工程を有する電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記粘着剤を含む層と、該粘着剤を含む層の少なくとも一方の面に前記セパレータとを有する積層体に、該セパレータ側から該粘着剤を含む層の方向にエネルギー線を照射する工程を有する請求項1又は2記載の粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。また、本発明は、該粘着シートを用いた電子部品の製造方法、及び、該粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは多様な分野で広く用いられており、例えば、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistants、PDA)等の携帯電子機器の組み立てのために、或いは、車載用パネル等の車載用電子機器部品を車両本体に固定するために用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-242541号公報
【特許文献2】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の分野ではより大容量のデータをより高速に送受信することが求められ、いわゆる第5世代移動通信システム(5G)の実用化も進められており、これに伴い、伝送信号が高周波数化している。しかしながら、高周波数化により、伝送信号の減衰量(「伝送損失」という)が大きくなるという問題が生じている。
電子機器に用いられる粘着シートとしても、このような伝送損失を抑えることができる粘粘着シートが求められている。例えば、小型アンテナ基地局、車載用アンテナ等においては、近年、フィルム化が進みつつあり、このようなアンテナフィルムの内部の部材間の貼り合わせや、アンテナフィルムと他の部材との貼り合わせ等に用いられる粘着シートとして、伝送損失を抑えることができ、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できる粘着シートが求められている。
【0005】
伝送損失は周波数に比例して大きくなるため、伝送信号が高周波数化すると、伝送損失が大きくなることは避けられない問題である。伝送損失は、周波数に加えて、導通部分の周辺に存在する絶縁性部分の誘電率及び誘電正接に影響されるため、高周波数帯(例えば、1~80GHz付近)での伝送損失を抑えるためには、例えば、高周波数帯において、誘電正接が小さく低誘電特性に優れた粘着シートを用いることで、伝送損失を抑えることが期待される。
【0006】
一方、例えば、小型アンテナ基地局、車載用アンテナ等のアンテナは、屋外で使用されることが多いため、アンテナフィルムの内部の部材間の貼り合わせや、アンテナフィルムと他の部材との貼り合わせ等に用いられる粘着シートは、高温(120℃程度)に晒されることになる。被着体(他の部材)に貼り合わせた状態の粘着シートを高温に晒した場合、被着体からアウトガスが発生したり、被着体との密着が不充分で被着体と粘着シートとの間に入り込んだ微小気泡が高温で大きくなったりすることで、被着体と粘着シートとの界面に発泡が生じることがあり、その結果、粘着力が低下するという問題がある。また、被着体と粘着シートとの界面に発泡が生じると、高周波数帯での誘電特性が変化し、信号の伝送に悪影響を及ぼすこともある。
【0007】
粘着シートが有する粘着層を構成するベース樹脂の架橋を行う方法として電子線(EB)等のエネルギー線照射がある。エネルギー線照射はベース樹脂に極性基を導入することなく、架橋を進行することが可能となるため、粘着シートの低誘電特性や耐熱性を向上させることができる。しかしながら、エネルギー線照射によるベース樹脂の架橋を行った粘着シートを用いた場合、セパレータが剥離し難くなり、セパレータを剥離した際に外観や粘着性等の機能が損なわれることがあった。一方、セパレータを剥離してからエネルギー線照射によるベース樹脂の架橋を行うと、エネルギー線照射により発生するベース樹脂由来のラジカルが大気中の酸素と会合することにより、低誘電特性が悪化することがあった。
【0008】
本発明は、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、耐熱性に優れ、かつ、セパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることを抑制できる粘着シートを提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着シートを用いた電子部品の製造方法、及び、該粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示1は、ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有し、上記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含み、上記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であり、かつ、ゲル分率が30質量%以上であり、上記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有し、上記離型剤層は、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを含有し、上記離型剤層中において、上記シリコーン樹脂100質量部に対する上記ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である粘着シートである。
本開示2は、ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有し、上記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含み、上記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であり、かつ、ゲル分率が30質量%以上であり、上記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有し、上記離型剤層は、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを含有し、上記離型剤層中において、上記シリコーン樹脂100質量部に対する上記ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下であり、上記セパレータは、上記粘着層に対する180°剥離力が1.0N/25mm以下である粘着シートである。
本開示3は、上記粘着層は、ガラスに対する90°剥離力が5.0N/25mm以上である本開示1又は2の粘着シートである。
本開示4は、上記ゴム系エラストマーは、スチレン系エラストマー、及び、水添スチレン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む本開示1、2又は3の粘着シートである。
本開示5は、上記ゴム系エラストマーは、水添スチレン系エラストマーを含む本開示4の粘着シートである。
本開示6は、上記水添スチレン系エラストマーは、芳香族アルケニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体である本開示5の粘着シートである。
本開示7は、上記芳香族アルケニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体は、下記式(1)で表されるラジアル型ブロック共重合体の水素添加体である本開示6の粘着シートである。
本開示8は、上記粘着剤は、更に、架橋助剤を含有し、上記ベース樹脂100質量部に対する上記架橋助剤の含有量が15質量部以下である本開示1、2、3、4、5、6又は7の粘着シートである。
本開示9は、上記架橋助剤は、(メタ)アクリル系モノマーを含む本開示8の粘着シートである。
本開示10は、上記粘着剤は、更に、粘着付与樹脂を含有し、上記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合を有さない粘着付与樹脂を含む本開示1、2、3、4、5、6、7、8又は9の粘着シートである。
本開示11は、上記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合を有さない粘着付与樹脂のみからなる本開示10の粘着シートである。
本開示12は、上記ベース樹脂100質量部に対する上記粘着付与樹脂の含有量が20質量部以上80質量部以下である本開示10又は11の粘着シートである。
本開示13は、上記セパレータ用基材以外の基材を有さないノンサポートタイプである本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の粘着シートである。
本開示14は、周波数1GHz以上の電磁波を発信又は受信する装置の製造に用いられる本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の粘着シートである。
本開示15は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体の内部の部材間を、上記セパレータを剥離した本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の粘着シートを介して貼り合わせる工程、又は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と他の部材とを、上記セパレータを剥離した本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の粘着シートを介して貼り合わせる工程を有する電子部品の製造方法である。
本開示16は、上記粘着剤を含む層と、該粘着剤を含む層の少なくとも一方の面に上記セパレータとを有する積層体に、該セパレータ側から該粘着剤を含む層の方向にエネルギー線を照射する工程を有する本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の粘着シートの製造方法である。
【0010】
【0011】
式(1)中、Aは、芳香族アルケニル重合体ブロックであり、Bは、共役ジエン重合体ブロックであり、Cは、カップリング剤に由来するセグメントであり、nは、3以上の整数である。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、ベース樹脂としてゴム系エラストマーを含む粘着剤を用いてなる粘着層と、該粘着層の少なくとも一方の面にセパレータとを有する粘着シートについて、該粘着層の誘電正接及びゲル分率を調整し、かつ、該セパレータを、シリコーン樹脂とラジカル抑制剤とを特定の含有割合で含有する離型剤層を有するものとすることを検討した。その結果、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、耐熱性に優れ、かつ、セパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることを抑制できる粘着シートを得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の粘着シートは、ベース樹脂を含む粘着剤を用いてなる粘着層を有する。
上記粘着層は、周波数10GHzでの誘電正接の上限が0.003である。上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が0.003以下であることにより、本発明の粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できるものとなる。上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接の好ましい上限は0.002、より好ましい上限は0.001である。上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接の下限は特に限定されず、低いほど好ましい。
なお、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接は、JIS C2565に準拠し、例えば、23℃、50%RHの環境下で、誘電率測定装置(エーイーティー社製、「ADMS01Nc」等)を用いてTMモード共振器の測定モードにて測定することができる。
【0014】
上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接を上記範囲に調整する方法としては、例えば、後述するベース樹脂について、組成や含有量を調整する方法、分子分極率を小さくする方法(例えば、フッ素原子、炭化水素基等を導入する方法)、分子体積を大きくする方法(例えば、脂環族構造を導入する方法)等が挙げられる。また、上記粘着層について、低誘電正接を示す物質を混ぜ込む方法(例えば、空洞セル、フッ素フィラー、シリカフィラー、ガラス繊維等の充填剤を配合する方法)も挙げられる。更に、上記粘着層が含有する分子の運動性を下げる方法(例えば、結晶性ポリマーを配合する方法)、上記粘着層が含有するポリマーの平均分子量を上げる方法、上記粘着層が含有するポリマーの吸水率又は含水率を下げる方法(例えば、フッ素原子又は置換基を導入する方法、炭化水素基を導入する方法)等も挙げられる。
【0015】
上記粘着層は、ゲル分率の下限が30質量%である。上記粘着層のゲル分率が30質量%以上であることにより、本発明の粘着シートは、高温環境下でも被着体との界面に発泡が生じにくく、耐熱性が向上する。上記粘着層のゲル分率の好ましい下限は35質量%、より好ましい下限は40質量%である。
また、高温環境下で被着体との界面に発泡が生じることを抑制しつつ、粘着力により優れるものとする観点から、上記粘着層のゲル分率の好ましい上限は70質量%である。
なお、上記粘着層のゲル分率は、例えば、次のようにして測定することができる。
即ち、粘着シートのセパレータを剥離して粘着層(質量:W0(g))を採取した後、採取した粘着層をトルエン50mL中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ、質量:W1(g))を用いて、トルエンを吸収し膨潤した粘着層を濾過する。分離後の粘着層を110℃の条件下で1時間乾燥させた後、金属メッシュを含む粘着層の質量W2(g)を測定する。そして、得られたW0、W1、及び、W2から、下記式(I)を用いてゲル分率を算出することができる。
ゲル分率(質量%)=100×(W2-W1)/W0 (I)
【0016】
上記粘着層のゲル分率を上記範囲内に調整する方法としては、例えば、後述するベース樹脂や粘着付与樹脂等を架橋することにより上記粘着層を形成するものとした上で、該ベース樹脂や該粘着付与樹脂等の種類や量を調整する方法や、架橋条件を調整する方法等が挙げられる。上記架橋条件を調整する方法としては、例えば、架橋反応を引き起こす架橋反応開始剤や、架橋を促進する架橋助剤等の種類及び量を調整する方法、架橋を促進するエネルギー線であるUV光の照射強度及び照射時間を調整する方法、電子線照射の照射強度、照射時間、及び、加速電圧を調整する方法、並びに、架橋阻害剤の種類及び量を調整する方法等が挙げられる。
上記架橋の方法としては、例えば、後述するベース樹脂や粘着付与樹脂等をUV光や電子線等のエネルギー線照射により架橋させる方法、該ベース樹脂や該粘着付与樹脂等に架橋性官能基を導入して電子線照射によりグラフトさせた後、熱により架橋させる方法等が挙げられる。特に、上記UV光や電子線等のエネルギー線照射による架橋させる方法を用いると、ベース樹脂や粘着付与樹脂に極性基を導入することなく、架橋を進行することが可能となるため、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲を満たしながら上記粘着層のゲル分率を上記範囲内に調整やすくなって、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなり、かつ、耐熱性により優れるものとなる。なかでも、粘着シートの生産速度が速くなる観点から、電子線照射により架橋させる方法がより好ましい。
【0017】
上記粘着層は、ガラスに対する90°剥離力の好ましい下限が5.0N/25mmである。上記粘着層のガラスに対する90°剥離力が5.0N/25mm以上であることにより、高温環境下でも被着体との界面に発泡がより生じ難くなる。上記粘着層のガラスに対する90°剥離力のより好ましい下限は7.0N/25mm、更に好ましい下限は10N/25mmである。上記粘着層のガラスに対する90°剥離力の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は30N/25mmである。
上記粘着層のガラスに対する90°剥離力は、以下の方法で測定することができる。
即ち、まず、粘着シートを長さ100mm、幅25mmの平面長方形状に裁断した後、セパレータを剥離し、露出した粘着層上にシクロオレフィンフィルム(例えば、日本ゼオン社製、「ZF16-100μm」)を貼り合わせる。粘着シートのもう一方のセパレータを剥離し粘着面を露出させ、ガラス板(例えば、AGC社製、フロート板ガラス「FL3」)上に露出させた粘着面を載せる。なお、ガラス板表面はエタノールで洗浄した後に乾拭きし、目視で傷がないことを確認した上で用いる。シクロオレフィンフィルム上に、300mm/分の速度で2.0kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせ、23℃で24時間静置することにより、試験片を作製する。得られた試験片について、引張試験機(例えば、島津製作所社製、「AG-IS」等)を用いて、23℃、引張速度50mm/minの条件で90°方向に剥離し、粘着力(90°剥離力)を測定する。
なお、粘着シートが片面テープの場合、シクロオレフィンフィルムは用いずに測定を行う。
【0018】
上記粘着層のガラスに対する90°剥離力を上記範囲に調整する方法としては、例えば、後述するベース樹脂や粘着付与樹脂等の種類及び量を調整する方法、プラズマ処理法又はコロナ処理法にて上記粘着層の表面を改質する方法等が挙げられる。また、後述するゴム系エラストマーのスチレン含有量を下げる方法、該ゴム系エラストマー中のジブロック構造の割合を増やす方法、上記粘着層の厚みを厚くする方法、上記粘着層に充填剤を配合して変形抵抗力を上げる方法等も挙げられる。
【0019】
上記粘着剤は、ベース樹脂を含有する。
上記ベース樹脂は、ゴム系エラストマーを含む。
上記ゴム系エラストマーは、スチレン系エラストマー、及び、水添スチレン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、二重結合(不飽和結合)の含有率が低いため、得られる粘着シートが耐熱性により優れ、高温環境下での光学特性の変化がより生じ難いものとなることから、上記ゴム系エラストマーは、上記水添スチレン系エラストマーを含むことが好ましい。また、上記水添スチレン系エラストマーは、アクリル系ポリマー等と比べて、高周波数帯において誘電率及び誘電正接が小さい。そのため、上記粘着剤がベース樹脂として上記水添スチレン系エラストマーを含有することで、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。
なお、上記水添スチレン系エラストマーは、部分水素添加体であってもよいし、完全水素添加体であってもよい。なかでも、後述する共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位の二重結合(不飽和結合)のうち、80%以上が水素添加により飽和結合に変換されている、即ち、水素添加率が80%以上である水添スチレン系エラストマーが好ましい。上記水添スチレン系エラストマーの水素添加率のより好ましい下限は90%、更に好ましい下限は95%、更により好ましい下限は96%である。上記水添スチレン系エラストマーの水素添加率は、重水素化クロロホルムを溶媒として用い、20Hzでの1H-NMRスペクトルを測定することにより算出することができる。
【0020】
上記水添スチレン系エラストマーは、芳香族アルケニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体であることが好ましい。
【0021】
上記芳香族アルケニル重合体ブロックと上記共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体は特に限定されず、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有し、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体の水素添加体であればよい。なお、上記芳香族アルケニル重合体ブロックがハードセグメントであり、上記共役ジエン重合体ブロックがソフトセグメントである。
【0022】
上記Aで表される上記芳香族アルケニル重合体ブロックとは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位を有するブロックを意味する。
上記Aで表される上記芳香族アルケニル重合体ブロックは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位に加えて、エチレン、1,3-ブタジエン(水素添加によりエチレン-ブチレン構造に変換される)等の他の化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0023】
上記芳香族アルケニル化合物としては、例えば、アルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン置換アルキルスチレン、アルコキシスチレン、カルボキシアルキルスチレン、アルキルエーテルスチレン、アルキルシリルスチレン、ビニルベンジルジメトキシホスファイド、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
上記アルキルスチレンとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。
上記ハロゲン化スチレンとしては、例えば、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。
上記ハロゲン置換アルキルスチレンとしては、例えば、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
上記アルコキシスチレンとしては、例えば、メトキシスチレン、エトキシスチレン等が挙げられる。
上記カルボキシアルキルスチレンとしては、例えば、カルボキシメチルスチレン等が挙げられる。
上記アルキルエーテルスチレンとしては、例えば、ビニルベンジルプロピルエーテル等が挙げられる。
上記アルキルシリルスチレンとしては、例えば、トリメチルシリルスチレン等が挙げられる。
これらの芳香族アルケニル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレンが好ましく、工業的に入手しやすいことから、スチレンがより好ましい。
【0024】
上記Bで表される上記共役ジエン重合体ブロックとは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有するブロックを意味する。
上記Bで表される上記共役ジエン重合体ブロックは、上記共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位に加えて、エチレン、2,5-ジヒドロフラン-2,5-ジオン等の他の化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0025】
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。
これらの共役ジエン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、重合反応性が高く、工業的に入手しやすいことから、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0026】
上記芳香族アルケニル重合体ブロックと上記共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体としては、具体的には例えば、式A-B-Aで表される構造を有するブロック共重合体の水素添加体、上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体等が挙げられる。なかでも、上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体が好ましい。上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体を用いることにより、架橋が良好に進むため、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートが耐熱性により優れるものとなる。また、上記粘着剤が上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体を含有することで、上記粘着層の粘着力がより向上するとともに、高温環境下で粘着シートと被着体との界面に生じる発泡がより生じ難くなる。更に、上記粘着層の粘着力が向上することで粘着付与樹脂(特に、後述するような自己重合しやすい粘着付与樹脂(T2))の含有量を少なくすることができる。
【0027】
上記式A-B-Aで表される構造を有するブロック共重合体の水素添加体としては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)ブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、架橋が良好に進み、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなることから、SEBSブロック共重合体が好ましく、分岐SEBSブロック共重合体がより好ましい。上記分岐SEBSブロック共重合体中の分岐の数は、架橋が良好に進む観点から、2以上であることが好ましい。
【0028】
上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体は、カップリング剤に由来するセグメント(C)を中心にして、上記ハードセグメント1つと上記ソフトセグメント1つとが結合したジブロック構造(A-B)が複数放射状に突出した構造を有する、分岐スチレン系ブロック共重合体の水素添加体である。
上記式(1)におけるnは、3以上の整数であればよいが、上記粘着層の粘着力がより向上することから、4以上であることが好ましい。また、上記式(1)におけるnの上限は特に限定されないが、上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体が硬くなりすぎるのを抑制する観点から、通常8以下である。
【0029】
上記Cで表される上記カップリング剤に由来するセグメントの由来となるカップリング剤は、上記ジブロック構造(A-B)を放射状に結合させる多官能性化合物である。
上記カップリング剤としては、例えば、ハロゲン化シランやアルコキシシラン等のシラン化合物、ハロゲン化スズ等のスズ化合物、エポキシシランやエポキシ化大豆油等のエポキシ化合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルエステル、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物、ポリカルボン酸エステル等が挙げられる。具体的には例えば、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、ジエチルアジペート等が挙げられる。
なお、本明細書中において、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0030】
上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体中における上記Aで表される上記芳香族アルケニル重合体ブロックの含有割合の好ましい下限は5質量%、好ましい上限は30質量%である。上記Aで表される上記芳香族アルケニル重合体ブロックの含有割合がこの範囲内であることにより、上記粘着層の粘着力がより向上する。上記式(1)で表される構造を有するラジアル型ブロック共重合体の水素添加体に占める上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックの含有割合のより好ましい下限は8質量%、より好ましい上限は25質量%であり、更に好ましい下限は9質量%、更に好ましい上限は20質量%である。
【0031】
上記水添スチレン系エラストマーのスチレン含有量の好ましい上限は30質量%である。上記スチレン含有量が30質量%以下であることにより、上記粘着層が適度な粘着力を有するとともに、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。上記スチレン含有量のより好ましい上限は20質量%である。
また、上記粘着層の凝集力を維持する観点から、上記スチレン含有量の好ましい下限は8質量%である。
なお、本明細書中において上記「スチレン含有量」は、重合前の芳香族アルケニル化合物の仕込み質量比(r1)に由来する。即ち、スチレン含有量(R1)(質量%)は、重合前の芳香族アルケニル化合物の仕込み質量比(r1):(重合前の芳香族アルケニル化合物の質量)/(重合前の芳香族アルケニル化合物の質量+重合前の共役ジエン化合物の質量)、を用いて、100×r1(質量%)として算出することができる。
また、重合前の芳香族アルケニル化合物の仕込み質量比が不明な場合には、ブロック共重合体を1H-NMRにより測定して得られる各ブロックのピーク面積比から得た芳香族アルケニル重合体ブロックのモル比(r2)から上記スチレン含有量を予測することができる。即ち、スチレン含有量(R2)(モル%)は、芳香族アルケニル重合体ブロックのモル比(r2):(芳香族アルケニル重合体ブロックのモル比)/(芳香族アルケニル重合体ブロックのモル比+共役ジエン重合体ブロックのモル比)、を用いて、100×r2(モル%)として予測することができる。
上記スチレン含有量(R2)は、上記スチレン含有量(R1)とは異なるが、例えば上記SEBSブロック共重合体の場合、以下の傾向がある。
・スチレン含有量(R1):10質量%の場合、スチレン含有量(R2):4モル%以上7.9モル%以下
・スチレン含有量(R1):15質量%の場合、スチレン含有量(R2):8モル%以上9.9モル%以下
・スチレン含有量(R1):20質量%の場合、スチレン含有量(R2):10モル%以上15モル%以下
・スチレン含有量(R1):30質量%の場合、スチレン含有量(R2):15モル%以上20モル%以下
なお、カタログにスチレン含有量が記載されている市販品を使用する場合は、その値をスチレン含有量とする。
【0032】
上記ゴム系エラストマーの重量平均分子量の好ましい下限は10万である。上記ゴム系エラストマーの重量平均分子量が10万以上であることにより、上記粘着層の粘着力がより向上するとともに、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。上記ゴム系エラストマーの重量平均分子量のより好ましい下限は20万、更に好ましい下限は25万である。
また、上記ゴム系エラストマーの重量平均分子量の好ましい上限は特にないが、上記ゴム系エラストマーの重量平均分子量が大きければ大きいほど、上記粘着層の粘着力を高めることができる一方、上記粘着剤の粘度が上がり加工性が低下するため、粘着シートの生産の観点から実質的な上限は70万である。
なお、本明細書中において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により、ポリスチレン換算分子量として測定される重量平均分子量を意味する。GPC法による重量平均分子量の測定は、例えば、以下の方法により行うことができる。
即ち、まず、ゴム系エラストマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶かした溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過してGPC検液を得る。得られたGPC検液について、GPCシステムとしてWaters社製「ACQUITYTM Advanced Polymer ChromatographyTM System」を使用し、GPCカラムとしてWaters社製「HSPgelTM HR MB-M(6.0mm×150mm)」を使用し、検出器として示差屈折率検出器(Waters社製、「2414」)を使用して、GPC測定を行う。試料注入量は20mg/mL、溶液は10μL、流速は0.5mL/分、カラム温度は40℃とする。解析ソフトとしては装置付属のEmpower3を使用する。標品としてポリスチレン(ピークトップ分子量:2110000、1090000、427000、190000、37900、18100、5970、2420、500)(東ソー社製)を用いる。標品のポリスチレンを測定し、解析ソフトで溶出量をポリスチレン分子量に換算する検量線を作成して解析し、この検量線を用いてGPC溶出容量から重量平均分子量を換算する。
【0033】
上記ベース樹脂100質量部中における上記ゴム系エラストマーの含有量の好ましい下限は80質量部である。上記ゴム系エラストマーの含有量が80質量部以上であることにより、得られる粘着シートが、高温環境下での被着体との界面に発泡がより生じ難くなるとともに、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が範囲をより満たしやすくなり、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。上記ゴム系エラストマーの含有量のより好ましい下限は90質量部である。
また、上記ゴム系エラストマーの含有量の好ましい上限は特になく、100質量部であってもよい。即ち、上記ベース樹脂が上記ゴム系エラストマーのみからなるものであってもよい。
【0034】
上記粘着剤は、更に、架橋助剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤が架橋助剤を含有することにより、上記ベース樹脂の架橋が良好に進み、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートの耐熱性がより向上する。
【0035】
上記架橋助剤としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの架橋助剤はラジカル化しやすいことから、上記粘着層がこれらの架橋助剤を含有することにより、エネルギー線照射による上記ベース樹脂の架橋が良好に進行する。その結果、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなり、本発明の粘着シートの耐熱性がより向上する。なかでも、上記架橋助剤は、上記(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーとして一般的に用いられる(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル系モノマーの官能基数は、2官能、3官能、4官能、5官能、6官能等のいずれであってもよい。
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、効率的に架橋しやすい観点から、メタクリル酸エステルが好ましい。また、上記ゴム系エラストマーとの相溶性が良好であり、より効率的に上記ゴム系エラストマーを架橋しやすいこと、及び、本発明の粘着シートの誘電特性への影響が小さいことが好ましい。そのため、上記メタクリル酸エステルのなかでも、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートがより好ましい。
【0037】
上記架橋助剤の含有量は、上記ベース樹脂100質量部に対して、好ましい上限が15質量部である。上記架橋助剤の含有量が15質量部以下であることにより、上記架橋助剤がブリードアウトせず、上記粘着層の粘着力がより向上する。上記架橋助剤の含有量のより好ましい上限は12質量部、更に好ましい上限は10質量部である。
また、上記架橋助剤の含有量の好ましい下限は2質量部である、上記架橋助剤の含有量が2質量部以上であることにより、上記ゴム系エラストマーの架橋が良好に進み、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートの耐熱性がより向上する。上記架橋助剤の含有量のより好ましい下限は3質量部、更に好ましい下限は4質量部である。
【0038】
上記粘着剤は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。
上記粘着剤が粘着付与樹脂を含有することにより、上記粘着層の粘着力がより向上するとともに、高温環境下で被着体との界面に生じる発泡がより生じ難くなるため、得られる粘着シートの耐熱性がより向上する。
【0039】
上記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合(不飽和結合)を有さない粘着付与樹脂(T1)であってもよいし、炭素-炭素二重結合及び芳香環からなる群より選択される少なくとも1つを有する粘着付与樹脂(T2)であってもよい。なかでも、上記粘着付与樹脂(T1)を含むことが好ましく、上記粘着付与樹脂中における上記粘着付与樹脂(T1)の含有割合が80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、上記粘着付与樹脂は、炭素-炭素二重結合を有さない上記粘着付与樹脂(T1)のみからなることが特に好ましい。
上記粘着付与樹脂(T1)は、高周波数帯において誘電率及び誘電正接がより小さいことから、上記粘着層が上記粘着付与樹脂(T1)を含有することにより、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。また、上記粘着付与樹脂(T1)は、上記粘着付与樹脂(T2)と比べて、自己重合し難い。このため、上記粘着層が上記粘着付与樹脂(T1)を含有することで、上記ベース樹脂の架橋が良好に進むため、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなる。その結果、得られる粘着シートの耐熱性がより向上する。
上記粘着付与樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
上記粘着付与樹脂(T1)のSP値の好ましい上限が9.0である。上記粘着付与樹脂(T1)のSP値が9.0以下であることにより、高周波数帯において誘電率及び誘電正接がより小さくなる。上記粘着付与樹脂(T1)のSP値のより好ましい上限は8.5である。
また、上記粘着付与樹脂(T1)のSP値の好ましい下限は特にないが、一般的な粘着付与樹脂のSP値を考慮すると、実質的な下限は7.5である。
なお、本明細書中において上記「SP値」とは、Hildebrandの正則溶液の理論に基づき定められる、多成分系での各成分の活量を定めるパラメーターであって、下記式(II)によりHoyの定数を用いてSmall法により算出されるSP値を意味する。
SP値(δ)=d*(ΣG)/M (II)
(d:密度(g/mL)、G:Hoyの各官能基の分子引力定数、M:分子量(g/mol))
なお、上記SP値の算出方法については、以下の参考文献に記載されている。
K.L.Hoy,New values of the solubility parameters from vapor pressure data,J.Paint Techn.,Vol.42,No.541,p.76(1970);K.L.Hoy,The Hoy tables of solubility parameters,Union Carbide Corp.,1985;K.L.Hoy,Solubility Parameters as a design parameter for water borne polymers and coatings.Preprints 14th Int.Conf.Athene,1988.;K.L.Hoy,J.Coated Fabrics,19,p.53(1989).
【0041】
上記粘着付与樹脂(T1)としては、例えば、水添C5系石油樹脂、脂環族系飽和炭化水素樹脂、水添C9系石油樹脂、水添C9芳香族樹脂、水添αメチルスチレン樹脂、超淡色ロジンエステル等が挙げられる。なかでも、上記粘着付与樹脂(T1)は、低誘電特性に優れる脂環族系飽和炭化水素樹脂が好ましい。
【0042】
上記粘着付与樹脂(T2)としては、例えば、テルペン、芳香族変性テルペン、芳香族変性水添テルペン、テルペンフェノール、水添テルペンフェノール、ロジンエステル、ロジンフェノール、スチレン共重合体粘着付与樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5脂肪族樹脂、脂環族系石油樹脂、C9芳香族樹脂、純C9モノマー樹脂等が挙げられる。なかでも、上記ゴム系エラストマーと相溶しやすく、上記粘着層の粘着力がより向上する観点からは、テルペン、芳香族変性テルペン、ロジンエステルが好ましく、テルペンがより好ましい。また、低誘電特性に優れる観点からは、脂環族系石油樹脂が好ましい。
【0043】
上記粘着付与樹脂の軟化点の好ましい下限は80℃である。上記粘着付与樹脂の軟化点が80℃以上であることにより、上記粘着層の高温での粘着力がより向上するとともに、高温環境下で被着体との界面に生じる発泡がより生じ難くなる。上記粘着付与樹脂の軟化点のより好ましい下限は90℃、更に好ましい下限は100℃である。
上記粘着付与樹脂の軟化点は、使用される温度を考慮すると140℃以下であることが好ましい。
なお、上記粘着付与樹脂の軟化点はJIS K 2207に準じた方法で測定することができる。
【0044】
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記ベース樹脂100質量部に対して、好ましい下限が20質量部であり、好ましい上限が80質量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が20質量部以上であることにより、上記粘着層の粘着力がより向上する。上記粘着付与樹脂の含有量が80質量部以下であることにより、上記粘着層が上記粘着付与樹脂を含有していても、上記ベース樹脂の架橋が良好に進み、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲を満たしやすくなり、本発明の粘着シートの耐熱性がより向上する。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は30質量部、より好ましい上限は70質量部である。
【0045】
上記粘着剤は、更に、ラジカル抑制剤(以下、「粘着層用ラジカル抑制剤」ともいう)を含有してもよい。
上記粘着層用ラジカル抑制剤は、エネルギー線照射による上記ベース樹脂の架橋を行う際に該ベース樹脂由来のラジカルが大気中の酸素と会合することを抑制する役割を有し、上記粘着剤が上記粘着層用ラジカル抑制剤を含有することにより、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。また、該粘着層とセパレータの離型剤層との間でのラジカルによる反応が抑制され、セパレータが剥離し難くなり、セパレータを剥離した際に外観や粘着性等の機能が損なわれることを抑制できる。
【0046】
上記粘着層用ラジカル抑制剤は、耐熱性、及び、変色が少なく光学特性に優れる観点から、ヒンダードフェノール及びヒンダードアミンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記ヒンダードフェノールとしては、例えば、2-(1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル(メタ)アクリレート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。
上記ヒンダードアミンとしては、例えば、ビス-(1-(オクチルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケートが挙げられる。
【0047】
上記粘着層用ラジカル抑制剤の含有量は、上記ベース樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.1質量部、好ましい上限が10質量部である。上記粘着層用ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、上記ベース樹脂由来のラジカルが大気中の酸素と会合することをより抑制することができるため、得られる粘着シートが、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。上記粘着層用ラジカル抑制剤の含有量が10質量部以下であることにより、上記ベース樹脂の架橋が良好に進み、上記粘着層のゲル分率が適切な範囲をより満たしやすくなり、得られる粘着シートの耐熱性がより向上する。上記粘着層用ラジカル抑制剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は8質量部であり、更に好ましい下限は1.0質量部、更に好ましい上限は5質量部である。
【0048】
上記粘着剤は、更に、軟化剤を含有してもよい。
上記粘着剤が上記軟化剤を含有することにより、得られる粘着シートの粘着力がより向上する。
上記軟化剤としては、例えば、ポリブテン、n-ブテン-イソブチレン共重合体、ポリイソプレン、パラフィン系オイル等が挙げられる。なかでも、上記ゴム系エラストマーとよく相溶することから、ポリブテンが好ましい。
一方で、上記軟化剤を使用すると、得られる粘着シートの高温での粘着力が低下する。従って、使用するベース樹脂の性能、架橋度等に応じて上記軟化剤の含有量を調整する必要があり、単体でも室温で高い粘着力を発揮できる上記ベース樹脂を使用する場合には、上記軟化剤の含有量は少ない方がよく、上記粘着剤は上記軟化剤を含有しなくてもよい。
【0049】
上記粘着剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。
【0050】
上記粘着層の厚みの好ましい下限は1μmであり、好ましい上限は300μmである。上記粘着層の厚みがこの範囲内であることにより、得られる粘着シートが充分な粘着力と取り扱い性とを両立することができる。上記粘着層の厚みのより好ましい下限は2.5μmであり、より好ましい上限は200μmである。
【0051】
本発明の粘着シートは、上記粘着層の少なくとも一方の面にセパレータを有する。
即ち、本発明の粘着シートは、上記粘着層の片面にセパレータを有する粘着シートであってもよいし、上記粘着層の両面にセパレータを有する粘着シートであってもよい。
【0052】
上記セパレータは、セパレータ用基材と離型剤層とを有する。
なお、本発明の粘着シートが両面に上記セパレータを有する場合、一方の面のセパレータのみが上記離型剤層を有していてもよく、両面のセパレータが上記離型剤層を有していてもよい。
【0053】
上記セパレータ用基材としては特に限定されず、従来よりセパレータ用基材として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、グラシン紙、上質紙、コート紙、含侵上、合成紙、クラフト紙等の紙基材が挙げられる。なかでも、セパレータ由来の異物混入を抑制する観点から、ポリエステルが好ましい。
上記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0054】
上記離型剤層は、シリコーン樹脂を含有する。
上記シリコーン樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
上記付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば、分子中にアルケニル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0055】
上記離型剤層は、ラジカル抑制剤(以下、「離型剤層用ラジカル抑制剤」ともいう)を含有する。
上記離型剤層用ラジカル抑制剤は、エネルギー線照射によって上記ベース樹脂の架橋を行う際にセパレータ内に発生するラジカルを捕捉する役割を有し、上記離型剤層が離型剤層用ラジカル抑制剤を含有することにより、該セパレータが剥離し難くなることを抑制することができる。
【0056】
上記離型剤層用ラジカル抑制剤は、シリコーン樹脂の架橋を妨げず、ラジカルの発生を抑制したり、発生したラジカルを捕捉したりするものであれば特に限定されず、例えば、N,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-2-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、スチレン化されたフェノール、スチレン化されたクレゾール、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル(メタ)アクリレート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-シクロヘキシル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール、2,2’-エチリデン-ビス-(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリ-エチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、2,2’-チオ-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2-(1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、4,4’-チオ-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオ-ジエチレン-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-t-ブチル-4-メチル-6-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフテート、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシヒドロ-シナモイルオキシル)エチル]イソシアヌレート、トリス-(4-t-ブチル-2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、エチル-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)リン酸の金属塩(例えばカルシウム塩)、プロピル-3,4,5-トリ-ヒドロキシベンゼンカルボネート、オクチル-3,4,5-トリ-ヒドロキシベンゼンカルボネート、ドデシル-3,4,5-トリ-ヒドロキシベンゼンカルボネート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のフェノール系化合物、フェニルサリシレート、4-t-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、4-t-オクチルフェニルサリシレートや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のサリシレート系化合物、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾール金属塩(例えば、カリウム塩)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のベンゾトリアゾール系化合物、フェニル-4-ピペリジニルカーボネート、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]]、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、コハク酸と4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの共重合体、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-トリデシル-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-トリデシル-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のヒンダートアミン系化合物、[2,2’-チオ-ビス(4-t-オクチルフェノレート)]-2-エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルジブチル-ジチオカルバメート、[2,2’-チオ-ビス(4-t-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル(II)、ニッケル-ビス(オクチルフェニル)サルファイド、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル酸モノエチルエステル-Ni錯体、2,2’-チオ-ビス(4-t-オクチルフェノラート)トリエタノールアミンニッケル(II)や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のNi系化合物、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニル(メタ)アクリレート、ブチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)(メタ)アクリレートや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のシアノ(メタ)アクリレート系化合物、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2-エトキシ-5-t-ブチル-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリドや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のオキザリックアシッドアニリド系化合物、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,12-ドデカン酸-ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、N-サリチロイル-N’-サリチリデンヒドラジンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のサリチル酸誘導体、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸-ビス[2-フェノキシプロピオニルヒドラジド]や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のヒドラジド誘導体、酸アミン系化合物、グアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール金属塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。
なかでも、工業的に入手しやすいことから、2-(1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)が好ましい。
【0057】
上記離型剤層用ラジカル抑制剤の含有量は、上記シリコーン樹脂100質量部に対して、下限が0.1質量部、上限が10質量部である。上記離型剤層用ラジカル抑制剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、上記セパレータ内に発生するラジカルを適度に捕捉することができるため、セパレータが剥離し難くなることを抑制することができる。上記離型剤層用ラジカル抑制剤の含有量が10質量部以下であることにより、セパレータ用基材と離型剤層の界面にラジカル抑制剤が移行し、離型剤層と基材との密着性が低下することを抑制できる。また、離型剤層表面にラジカル抑制剤が存在し、粘着層表面へ移行し、粘着力を低下してしまうことも抑制できる。
上記離型剤層用ラジカル抑制剤の含有量の好ましい下限は0.5質量部、好ましい上限は5質量部であり、より好ましい下限は1質量部、より好ましい上限は3質量部である。
【0058】
上記セパレータは、上記粘着層に対する180°剥離力の好ましい上限が1.0N/25mmである。
上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力が1.0N/25mm以下であることにより、得られる粘着シートがセパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることをより抑制できるものとなる。上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力のより好ましい上限は0.8N/25mm、更に好ましい上限は0.5N/25mmである。
また、上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は0.01N/25mmである。
なお、上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力は、以下の方法で測定することができる。
即ち、まず、粘着シートを長さ100mm、幅25mmの平面長方形状に裁断し、試験片を得る。得られた試験片について、引張試験機(例えば、島津製作所社製、「AG-IS」等)を用いて、23℃、引張速度300mm/minの条件で180°方向にセパレータを剥離し、粘着力(180°剥離力)を測定する。
なお、粘着シートが、基材の両面に粘着層及びセパレータを有する両面粘着シートの場合は、粘着シートを裁断した後、測定しない側のセパレータを剥離し、露出した粘着層上にSUS板を載せて300mm/分の速度で2.0kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせ、23℃で24時間静置したものを試験片とする。
【0059】
上記セパレータの厚みの好ましい上限は188μmである。上記セパレータの厚みが188μm以下であることにより、上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力がより低下し、得られる粘着シートがセパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることをより抑制できるものとなる。上記セパレータの厚みのより好ましい上限は100μm、更に好ましい上限は75μmである。
また、上記セパレータの厚みの好ましい下限は特にないが、実質的な下限は3μmである。
【0060】
本発明の粘着シートは、上記粘着層と、少なくとも一方の面に上記セパレータとを有していれば、上記セパレータ用基材以外の基材を有するサポートタイプであってもよいし、上記セパレータ用基材以外の基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。なかでも、コスト、薄さ、及び、光学特性の観点、並びに、誘電正接をより低く抑える観点から、ノンサポートタイプであることが好ましい。
【0061】
本発明の粘着シートは、ポリイミド基板に対する周波数40GHzでの伝送損失の好ましい下限が-10dBである。上記ポリイミド基板に対する周波数40GHzでの伝送損失が-10dB以上であることにより、本発明の粘着シートは伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。上記ポリイミド基板に対する周波数40GHzでの伝送損失のより好ましい下限は-9dB、更に好ましい下限は-8dBである。
また、本発明の粘着シートのポリイミド基板に対する周波数40GHzでの伝送損失は、0dBに近いほど好ましい。
なお、上記ポリイミド基板に対する周波数40GHzでの伝送損失は、例えば、ベクトルネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー社製、「N523OA」)及び測定用プローブ(ズース・マイクロテック社製、「B90-122391」)を用い、周波数40GHz、インピーダンス値50Ωにて、評価サンプルの伝送損失を測定すること等により、得ることができる。上記評価サンプルは、ポリイミドと銅を積層し、エッチング処理することによりマイクロストリップラインを形成したポリイミド基板を作製し、銅配線の上から粘着シートを貼り合わせることで作製することができる。
【0062】
本発明の粘着シートのヘイズは特に限定されないが、5.0%以下であることが好ましく、1.0%未満であることがより好ましい。また、本発明の粘着シートの色調も特に限定されないが、黄変度b*(b値)が0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。本発明の粘着シートは、高温環境下でも黄変等の光学特性の変化が生じにくいものであり、高温に晒した後でもヘイズ及び黄変度b*(b値)が上記範囲を満たすことが好ましい。
なお、上記ヘイズ及び黄変度b*(b値)は、例えば、分光色測計(コニカミノルタ社製、「CM3700A」等)を用いて測定することができる。
【0063】
上記粘着剤を含む層と、該粘着剤を含む層の少なくとも一方の面に上記セパレータとを有する積層体に、該セパレータ側から該粘着剤を含む層の方向にエネルギー線を照射する工程を有する本発明の粘着シートの製造方法もまた、本発明の1つである。
上記セパレータ側から上記粘着剤を含む層の方向にエネルギー線を照射する工程を有することにより、エネルギー線照射により発生する上記ベース樹脂由来のラジカルが大気中の酸素と会合することをより抑制することができ、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接が適切な範囲をより満たしやすくなる。その結果、本発明の粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。また、該粘着剤と該セパレータの離型剤層との間でのラジカルによる反応が抑制され、セパレータが剥離し難くなり、セパレータを剥離した際に外観や粘着性等の機能が損なわれることを抑制できる。
【0064】
本発明の粘着シートが上記粘着層の両面に上記セパレータを有する場合は、上記粘着剤を含む層と、該粘着剤を含む層の両面に上記セパレータとを有する積層体に、両面の該セパレータ側から該粘着剤を含む層の方向にエネルギー線を照射してもよい。
特に、上記粘着層が厚い場合、上記ベース樹脂の架橋を進行させ、上記粘着層のゲル分率を上記範囲内に調整するためには、エネルギー線の照射強度を高くする必要がある。そのため、片面の上記セパレータ側からのみエネルギー線を照射する場合には、高い照射強度が必要になるが、両面の上記セパレータ側からエネルギー線を照射する場合には、片面の上記セパレータ側からのみエネルギー線を照射する場合よりも低い照射強度で、上記ベース樹脂の架橋を進行させ、上記粘着層のゲル分率を上記範囲内に調整することができる。その結果、エネルギー線照射により発生するベース樹脂由来のラジカルが大気中の酸素と会合することをより抑えることができ、上記粘着層の周波数10GHzでの誘電正接を上記範囲内に調整しやすくなる。その結果、本発明の粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にもより好適に使用できるものとなる。
なお、上記両面の上記セパレータ側からエネルギー線照射する工程において、それぞれの面における上記セパレータ側から照射するエネルギー線の照射強度、照射時間、及び、加速電圧を調整すること等により、それぞれの面における上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力を調整することができる。
【0065】
本発明の粘着シートの製造方法において、上記エネルギー線の照射強度の好ましい下限は5kGyであり、好ましい上限は300kGyである。上記エネルギー線の照射強度が5kGy以上であることにより、上記ベース樹脂の架橋がより進行し、上記粘着層のゲル分率を上記範囲内により調整しやすくなり、本発明の粘着シートの耐熱性がより向上する。上記エネルギー線の照射強度が300kGy以下であることにより、上記セパレータ内のラジカルの発生をより抑制することができ、該セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力がより小さくなるため、得られる粘着シートがセパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることをより抑制できるものとなる。上記エネルギー線の照射強度のより好ましい下限は10kGy、より好ましい上限は250kGyであり、更に好ましい下限は20kGy、更に好ましい上限は200kGyである。
【0066】
上記粘着剤を含む層と、該粘着剤を含む層の少なくとも一方の面に上記セパレータとを有する積層体は、例えば、上記ベース樹脂、及び、必要に応じて上記粘着付与樹脂等のその他の添加剤を含有する粘着剤溶液を、上記セパレータ上に塗工し、乾燥させて粘着剤を含む層を形成し、該粘着剤を含む層上に基材又は別の上記セパレータを重ね合わせることによって製造することができる。
【0067】
上記粘着剤溶液を上記セパレータに塗工する方法は特に限定されないが、上記セパレータの上記粘着層に対する180°剥離力を上記範囲内に調整しやすくなることから、コンマコーターによる塗工が好ましい。
【0068】
本発明の粘着シートの用途は特に限定されないが、電磁波を発信又は受信する装置の製造に用いられることが好ましい。上記電磁波を発信又は受信する装置は、本発明の粘着シートと導電パターンが形成されたフィルムとを含む積層体を含むものであることが好ましい。
本発明の粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できるものであるため、周波数1GHz以上の電磁波を発信又は受信する装置の製造に用いられることがより好ましい。
上記周波数1GHz以上の電磁波を発信又は受信する装置は特に限定されず、例えば、小型アンテナ基地局、車載用アンテナ等のアンテナ、スマートフォン、タブレット端末、その他携帯電子機器、車載用電子機器、スマートグラス等が挙げられる。
特に、本発明の粘着シートは、上記周波数1GHz以上の電磁波を発信又は受信する装置において、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体(例えば、アンテナフィルム、基板等)の内部の部材間の貼り合わせ、又は、該導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と他の部材との貼り合わせに用いられることが好ましい。導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体の内部の部材間を、上記セパレータを剥離した本発明の粘着シートを介して貼り合わせる工程、又は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と他の部材とを、上記セパレータを剥離した本発明の粘着シートを介して貼り合わせる工程を有する電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0069】
図1に、本発明の粘着シートを用いて、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体の内部の部材間の貼り合わせを行った様子を模式的に示す断面図を示す。
図1においては、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体2において、セパレータを剥離した本発明の粘着シート1により、内部の部材21と22とが貼り合わされている。導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体2は、セパレータを剥離した本発明の粘着シート1、並びに、部材21及び22に加えて、更なる部材(例えば、
図1に示すような部材23及び24)を有していてもよい。
図2に、本発明の粘着シートを用いて、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と、他の部材との貼り合わせを行った様子を模式的に示す断面図を示す。
図2においては、セパレータを剥離した本発明の粘着シート1により、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体2と、他の部材3とが貼り合わされている。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、耐熱性に優れ、かつ、セパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることを抑制できる粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着シートを用いた電子部品の製造方法、及び、該粘着シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明の粘着シートを用いて、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体の内部の部材間の貼り合わせを行った様子を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の粘着シートを用いて、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体と、他の部材との貼り合わせを行った様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0073】
(ラジアル型水添スチレン系エラストマーAの合成)
オートクレーブ中に脱気、脱水されたシクロヘキサン4000g、1,3-ブタジエンモノマー200g、n-ブチルリチウム(n-BuLi)3.0g、及び、テトラヒドロフラン(THF)をモル比でn-BuLi/THF=40の割合で加えた。得られた混合物を40℃にて40分加熱した後、スチレンモノマー100gを加え、40℃にて60分加熱し、重合反応を進行させた(芳香族アルケニル重合体ブロック(A))。次いで、1,3-ブタジエンモノマー700gを加え、40℃にて150分加熱し、重合反応を進行させた(ジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B))。
カップリング剤としてテトラクロロシラン(SiCl4)を0.25モル加えてジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B)のカップリング反応を行い、スチレン含有量が10質量%のスチレン系ブロック共重合体を得た。
得られたスチレン系ブロック共重合体を精製乾燥したシクロヘキサンで希釈し、重合体濃度が5質量%のスチレン系ブロック共重合体溶液を調製した。得られたスチレン系ブロック共重合体溶液を水素添加反応に供した。
【0074】
水素添加反応では、まず、充分に乾燥した容量2Lの撹拌器付オートクレーブにスチレン系ブロック共重合体溶液1000gを仕込み、減圧脱気後水素置換し、撹拌下で90℃に保持した。
次いで、ジ-p-トリルビス(η-シクロペンダジエニル)チタニウムを0.2ミリモル含むシクロヘキサン溶液50mLと、n-ブチルリチウム(n-BuLi)0.108ミリモルを含むシクロヘキサン溶液10mLとを、0℃、2.0kg/cm2の水素圧下で混合し、これをオートクレーブの中のスチレン系ブロック共重合体溶液に加えた。その後、撹拌下において、水素ガス供給圧0.7MPa-Gauge、反応温度80℃の条件で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、ラジアル型水添スチレン系エラストマーA(上記式(1)におけるnが4のラジアル型ブロック共重合体の水素添加体)を得た。
得られたラジアル型水添スチレン系エラストマーAは、1H-NMR分析から、ブタジエン単位の95%以上、スチレン単位の5%未満が水素添加されていることを確認した。また、GPC法により、ポリスチレン換算分子量として測定されたラジアル型水添スチレン系エラストマーAの重量平均分子量は30万であった。
【0075】
(粘着剤溶液の調製)
350質量部のトルエンに表1~3に示す粘着剤組成に従って各材料を加えて撹拌することにより、粘着剤溶液を得た。
【0076】
(セパレータの作製)
表1~3に示す離型剤組成に従って各材料を混合した後、トルエンとヘキサンとの混合溶媒(体積比1:1)を用いてシリコーン樹脂の濃度が0.7質量%となるように希釈し、離型剤溶液を得た。セパレータ用基材として厚さ25μmのPETフィルム(東洋紡社製、「E5100」)上に、得られた離型剤溶液をワイヤーバー#9で塗工した後、130℃で1分間乾燥させることにより、セパレータを得た。
なお、表1~3に記載したKS-847T及びKS-3703は溶剤を含むものであるが、表1~3に記載した離型剤組成におけるシリコーン樹脂の含有量の値は、シリコーン樹脂のみの含有量である。
【0077】
(実施例1~20、比較例1~4、6)
(1)粘着シートの作製
厚み75μmのセパレータ(東洋クロス社製、「SP8001」)の離型剤層上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように粘着剤溶液を塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。その後、粘着剤を含む層のセパレータが積層されていない面上に、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータを、離型剤層が粘着剤を含む層の側となるように積層し、積層体を得た。更に、表1~3に示す電子線照射条件に従い、電子線照射装置(NHVコーポレーション社製、「EBC-200」)を用いて、積層体の上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータ側から粘着剤を含む層の方向に電子線照射を行い、粘着剤中のベース樹脂を架橋させることにより粘着層を形成し、粘着シートを得た。
【0078】
(2)粘着層の周波数10GHzにおける誘電正接の測定
得られた粘着シートから両面のセパレータを剥離し、粘着層を厚みが100μmとなるまで積層した。積層後の粘着層の上下面に厚み50μmのPETフィルムを貼り合せた。得られたPETフィルムと粘着層との積層体を幅3mm、長さ80mmに裁断し、JIS C2565に準拠し、誘電率測定装置(エーイーティー社製、「ADMS01Nc」)を用いてTMモード共振器の測定モードにて誘電正接を測定した。
PETフィルムのみの誘電正接も上記方法で測定し、PETフィルムと粘着層との積層体の測定値、及び、PETフィルムのみの測定値を用いて粘着層単独の誘電正接の値を求めた。結果を表1~3に示した。
【0079】
(3)粘着層のゲル分率の測定
得られた粘着シートから両面のセパレータを剥離して粘着層(質量:W0(g))を採取した後、採取した粘着層をトルエン50mL中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうした。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ、質量:W1(g))を用いて、トルエンを吸収し膨潤した粘着層を濾過した。分離後の粘着層を110℃の条件下で1時間乾燥させた後、金属メッシュを含む粘着層の質量W2(g)を測定した。そして、得られたW0、W1、及び、W2から、上記式(I)を用いてゲル分率を算出した。結果を表1~3に示した。
【0080】
(4)上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータの粘着層に対する180°剥離力の測定
得られた粘着シートを長さ100mm、幅25mmの平面長方形状に裁断した。裁断した粘着シートから、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータでない方のセパレータ(測定しない面側)を剥離した。露出した粘着層上にSUS板を載せて300mm/分の速度で2.0kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせ、23℃で24時間静置し、試験片を得た。得られた試験片について、引張試験機(島津製作所社製、「AG-IS」)を用いて、23℃、引張速度300mm/minの条件で180°方向に上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータを剥離し、粘着力(180°剥離力)を測定した。
また、上記試験片作製操作において、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータが先に剥がれる場合、長さ100mm、幅25mmの平面長方形状に裁断した粘着シートとSUS板を両面テープで貼り合せた後、上記記載の条件にて、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータを剥離させることで測定を行った。結果を表1~3に示した。
【0081】
(5)ガラスに対する90°剥離力の測定
得られた粘着シートを長さ100mm、幅25mmの平面長方形状を有するように裁断した。裁断された粘着シートから、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータでない方のセパレータを剥離し、シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製、「ZF16-100μm」)上に貼り合わせた。次いで、粘着シートの上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータを剥離し、露出した粘着層上にガラス板(AGC社製、フロート板ガラス「FL3」)を載せ、シクロオレフィンフィルム上に300mm/分の速度で2.0kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせた。その後、23℃で24時間静置することにより、試験片を作製した。なお、ガラス板の表面はエタノールで洗浄した後に乾拭きし、目視で傷がないことを確認した上で用いた。
得られた試験サンプルについて、引張試験機(島津製作所社製、「AG-IS」)を用い、23℃、引張速度50mm/分の条件で90°方向に剥離し、粘着力(90°剥離力)を測定した。結果を表1~3に示した。
【0082】
(比較例5)
電子線照射を行う際に、上記「(セパレータの作製)」で得られたセパレータを剥離してから表3に示す電子線照射条件に従って粘着剤に直接電子線照射を行ったこと以外は、実施例1~20、比較例1~4、6における上記「(1)粘着シートの作製」と同様にして、粘着シートを得た。
また、実施例1~20、比較例1~4、6における上記「(2)粘着層の周波数10GHzにおける誘電正接の測定」、上記「(3)粘着層のゲル分率の測定」、「(4)セパレータの粘着層に対する180°剥離力の測定」、及び、「(5)ガラスに対する90°剥離力の測定」と同様の方法で各測定を行った。結果を表3に示した。
【0083】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0084】
(低誘電特性)
ポリイミドと銅を積層し、エッチング処理することによりマイクロストリップラインを形成したポリイミド基板を作製した。得られた粘着シートを作製したポリイミド基板の形状に合わせるよう裁断した。裁断された粘着シートの一方の面のセパレータを剥離し、2.0kgのゴムローラを載せて、300mm/分の速度でゴムローラを一往復させることにより、作製したポリイミド基板の銅配線の上から貼り合わせ、23℃で24時間静置し、評価サンプルを用意した。
23℃、50%RHにおいて、ベクトルネットワークアナライザー及び測定用プローブを用い、周波数40GHz、インピーダンス値50Ωにて、評価サンプルの伝送損失を測定し、ポリイミド基板に対する周波数40GHzにおける伝送損失を得た。ベクトルネットワークアナライザーとしてはN523OA(アジレント・テクノロジー社製)を用い、測定用プローブとしてはB90-122391(ズース・マイクロテック社製)を用いた。
得られたポリイミド基板に対する周波数40GHzにおける伝送損失が-8dB以上であった場合を「◎」、-10dB以上-8dB未満であった場合を「○」、-10dB未満であった場合を「×」として、粘着シートの低誘電特性を評価した。
【0085】
(耐熱性)
得られた粘着シートを60mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された粘着シートの一方の面のセパレータを剥離し、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、「200H-50μm」)上に貼り合わせた。更に、粘着シートのもう一方のセパレータを剥離し、粘着層を露出させ、同様のポリイミドフィルム上に粘着シートの露出した面を載せた。得られた積層体上に2.0kgのゴムローラを載せて、300mm/分の速度でゴムローラを一往復させることにより、ポリイミドフィルムと粘着シートとを貼り合わせ、23℃で24時間静置し、試験片を得た。
得られた試験片について、85℃、85%RHの環境下で1日間熱処理を行った後、25℃まで自然冷却した。その後、試験片における粘着シートとポリイミドフィルムとの界面に垂直な方向から光学顕微鏡を用いて20倍の倍率で観察し、粘着シートとポリイミドフィルムとの界面における気泡面積を算出した。
気泡面積が1%未満であった場合を「◎」、気泡面積が1%以上5%未満であった場合を「○」、気泡面積が5%以上10%未満であった場合を「△」、気泡面積が10%以上であった場合を「×」として、耐熱性を評価した。
【0086】
(セパレータ剥離後の粘着層の外観)
上記「(4)セパレータの粘着層に対する180°剥離力の測定」でセパレータを剥離した粘着シートの粘着層表面を両面それぞれ目視にて観察を行った。
粘着層の表面に荒れが確認されなかった場合を「◎」、粘着層の表面に機能発現に影響しない程度の軽微な荒れが確認された場合を「○」、粘着層の表面の一部に機能発現が難しいほどの荒れが確認された場合を「△」、粘着層の表面全体に機能発現が難しいほどの荒れが確認された場合を「×」として、セパレータ剥離後の粘着層の外観を評価した。
【0087】
【0088】
【0089】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、耐熱性に優れ、かつ、セパレータ剥離後に外観や機能が損なわれることを抑制できる粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着シートを用いた電子部品の製造方法、及び、該粘着シートの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 粘着シート
2 導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体
21、22、23、24 部材(内部の部材)
3 他の部材