IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
  • 特開-新規な変性ポリアミド系重合体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134531
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】新規な変性ポリアミド系重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20240926BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C08G69/26
C08F8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036161
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2023044661
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰央
【テーマコード(参考)】
4J001
4J100
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001EA17
4J001EB08
4J001EC15
4J001EC81
4J001EC82
4J001FA03
4J001FB03
4J001FC06
4J001GA12
4J001JB22
4J001JB23
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL08R
4J100BA05R
4J100BA15H
4J100BA29H
4J100BC43H
4J100CA31
4J100HA11
4J100HA15
4J100HC27
4J100HC43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な変性ポリアミド系重合体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体であるマクロモノマーと、ジアミンと、ジカルボン酸と、を含むモノマー群を重合してなる変性ポリアミド系重合体。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合してなる、変性ポリアミド系重合体:
【化1】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
およびRは、それぞれ独立に、2価または3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項3】
の炭素数は、1~6個であり、
の炭素数は、0~2個であり、
およびRは、いずれも水素である、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項4】
上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【化2】
【請求項5】
上記マクロモノマーは、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項6】
上記マクロモノマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項7】
上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項8】
上記モノマー群は、アミノカルボン酸をさらに含む、請求項1に記載の変性ポリアミド系重合体。
【請求項9】
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合する工程を有する、変性ポリアミド系重合体の製造方法:
【化3】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項10】
およびRは、それぞれ独立に、2価または3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
の炭素数は、1~6個であり、
の炭素数は、0~2個であり、
およびRは、いずれも水素である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、請求項9に記載の製造方法。
【化4】
【請求項13】
上記マクロモノマーは、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
上記マクロモノマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項16】
上記モノマー群は、アミノカルボン酸をさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか1項に記載の変性ポリアミド系重合体を含む、成形体。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載の変性ポリアミド系重合体を含む、樹脂改質剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な変性ポリアミド系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系重合体は、強度、耐熱性、耐薬品性等に優れるため、様々な用途に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリアミド系重合体を利用したチューブが開示されており、特許文献2にはポリアミド系重合体を利用したフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/175290号
【特許文献2】特開2019-104939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のポリアミド系重合体には、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善する余地があった。
【0006】
上記のような状況にあって、本発明の一態様は、新規な変性ポリアミド系重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る変性ポリアミド系重合体(以下、「本変性ポリアミド系重合体」と称する場合がある)は、
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合してなる重合体である:
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、新規な変性ポリアミド系重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る変性ポリアミド系重合体の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0013】
〔1.変性ポリアミド系重合体〕
本発明の一実施形態に係る変性ポリアミド系重合体(以下、「本変性ポリアミド系重合体」と称する場合がある)は、
下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合してなる重合体である:
【0014】
【化2】
【0015】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
本変性ポリアミド系重合体は、上記の構成を有するために、例えば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善することができる。
【0017】
本変性ポリアミド系重合体は、上記マクロモノマーと、ジアミンと、ジカルボン酸とを含むモノマー群を原料とする重合体であると言え、構成単位として、上記マクロモノマーに由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位と、を含む重合体であるとも言える。以下、本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群および当該モノマー群に含まれる各モノマー成分について詳細に説明する。
【0018】
<マクロモノマー>
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群の一成分であるマクロモノマーは、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である。
【0019】
(末端構造)
上記マクロモノマーは、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する。ここで、「末端構造を1つ以上有する」とは、上記マクロモノマーが、主鎖であるビニル系重合体の少なくとも1つの末端に上記一般式(1)で表される末端構造を有することを意味する。上記マクロモノマーが有する上記一般式(1)で表される末端構造の数は1つ以上である限り特に限定されず、例えば、主鎖であるビニル系重合体が線状(直鎖状)重合体である場合、上記線状重合体の一方の末端のみが上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよい。また、主鎖であるビニル系重合体が、3つ以上の末端を有する分枝状重合体である場合、上記分枝状重合体の1つの末端のみが上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、2つ以上の一部の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよく、全ての末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有していてもよい。
【0020】
上記マクロモノマーとしては、上記一般式(1)で表される末端構造を有するビニル系重合体の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、本変性ポリアミド系重合体は、マクロモノマー成分として、一方の末端のみに上記一般式(1)で表される末端構造を有する線状重合体と、両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する線状重合体と、の両方の重合体を含むものであってもよい。
【0021】
上記マクロモノマーにおける、上記一般式(1)で表される末端構造のより具体的な態様について以下に詳説する。
【0022】
上記一般式(1)中、Rは、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-である。中でも、Rは、-O(CO)-または-NH-であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)中、Rは炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0024】
における炭素数は、1~8個であり、1~6個であることが好ましい。
【0025】
が有し得るヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)等が挙げられる。
【0026】
は線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよく、環状構造であってもよい。また、Rが環状構造である場合、Rはヘテロ環構造を有していてもよい。
【0027】
より具体的に、Rは、2価または3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールとは、通常は1価であるアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから水素原子は1個除いた基を表す。すなわち、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、他の分子との結合箇所を2箇所有するものである。なお、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンとも称する。
【0029】
また、本明細書において、3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールとは、通常は1価であるアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから水素原子を2個除いた基を表す。すなわち、3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、他の分子との結合箇所を3箇所有するものである。
【0030】
上記一般式(1)中、Rは、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0031】
における炭素数は、0~8個であり、0~6個であることが好ましく、0~4個であることがより好ましく、0~2個であることがさらに好ましい。なお、Rの炭素数が0であるとは、Rが単結合であるか、ヘテロ原子のみからなることを意味する。
【0032】
が有し得るヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)等が挙げられる。
【0033】
は線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよく、環状構造であってもよい。また、Rが環状構造である場合、Rはヘテロ環構造を有していてもよい。
【0034】
より具体的に、Rは、2価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。
【0035】
上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基である。これらの中でも、反応性の高い末端構造となることから、RおよびRは水素であることが好ましい。したがって、RまたはRの少なくとも1つは水素であることが好ましく、RおよびRは、いずれも水素であることがより好ましい。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、上記一般式(1)中、Rの炭素数は、1~6個であり、Rの炭素数は、0~2個であり、RおよびRは、いずれも水素である。
【0037】
上記一般式(1)中、nは1または2である。換言すると、上記一般式(1)で表される末端構造は、下記一般式(1’)で表される構造を、(i)nが1である場合は1つ有し、(ii)nが2である場合は2つ有する。
-R-N(R)R (1’)
すなわち、nが2である場合、上記一般式(1)で表される末端構造は、R、RおよびRで表される構造を2つずつ有する。
【0038】
nが2である場合に、上記一般式(1)で表される末端構造中に2つずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。換言すると、nが2である場合に、上記一般式(1)で表される末端構造中に2つずつ存在する上記一般式(1’)で表される構造は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
上記一般式(1)で表される末端構造の具体例としては、以下の式(i)~(iii)で表される構造が挙げられる。上記マクロモノマーは、末端構造として以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有することが好ましい。
【0040】
【化3】
【0041】
(主鎖)
上記マクロモノマーは、ビニル系単量体に由来する構成単位から構成される主鎖構造を有する。
【0042】
上記マクロモノマーの主鎖を構成する構成単位の由来となるビニル系単量体としては、ビニル基を有する限り特に限定されない。当該ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸系単量体、スチレン系単量体、マレイミド系単量体、塩素含有ビニル系単量体、フッ素含有ビニル系単量体、ケイ素含有ビニル系単量体、ニトリル基含有ビニル系単量体、アミド基含有ビニル系単量体、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類などが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどが挙げられる。
【0044】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびスチレンスルホン酸の塩などが挙げられる。
【0045】
マレイミド系単量体としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
【0046】
塩素含有ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルなどが好適に挙げられる。
【0047】
フッ素含有ビニル系単量体としては、例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0048】
ケイ素含有ビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
ニトリル基含有ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0050】
アミド基含有ビニル系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
【0051】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどが挙げられる。
【0052】
アルケン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどが挙げられる。
【0053】
共役ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0054】
上記マクロモノマーの主鎖を構成する構成単位の由来となるビニル系単量体としては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステルおよびアリルアルコールなども好適に挙げられる。
【0055】
上記マクロモノマーの主鎖は、上述したビニル系単量体のうち1種のビニル系単量体に由来する構成単位のみを含む単独重合体であってもよく、2種以上の任意のビニル系単量体に由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0056】
特に、重合体末端の変性が比較的容易であることから、上記マクロモノマーの主鎖は、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構成単位、スチレン系単量体に由来する構成単位またはイソブチレンに由来する構成単位のうち1つ以上を主成分とすることが好ましい。すなわち、上記マクロモノマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレンまたはポリイソブチレンを主成分とすることが好ましい。上記マクロモノマーの主鎖は、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体およびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とする共重合体であってもよい。
【0057】
本明細書において、ビニル系重合体の
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリ(メタ)アクリレートを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。上記マクロモノマーの主鎖がポリ(メタ)アクリレートを主成分とする場合、上記マクロモノマーの主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0058】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリスチレンを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、スチレン系単量体に由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖がポリスチレンを主成分とする場合、本末端変性ビニル系重合体の主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中スチレン系単量体に由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0059】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖がポリイソブチレンを主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、イソブチレンに由来する構成単位を50モル%以上含むことを意図する。上記マクロモノマーの主鎖がポリイソブチレンを主成分とする場合、上記マクロモノマーの主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中イソブチレンに由来する構成単位を60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0060】
本明細書において、ビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリレート、スチレンおよびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とするとは、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体またはイソブチレンに由来する構成単位を、合計で50モル%以上含むことを意図する。本末端変性ビニル系重合体の主鎖が(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体およびイソブチレンからなる群より選択される2種類以上に由来する構成単位を主成分とする場合、上記マクロモノマーの主鎖は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体またはイソブチレンに由来する構成単位を、合計で、60モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましく、90モル%以上含むことがよりさらに好ましく、100モル%であってもよい。
【0061】
上記マクロモノマーの主鎖は、上記のビニル系単量体に由来する構成単位に加えて、ビニル系単量体以外の単量体(その他の単量体)に由来する構成単位を含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリルおよびアクリルアミド等が挙げられる。
【0062】
上記マクロモノマーの主鎖におけるその他の単量体に由来する構成単位の含有量は、当該主鎖に含まれる全構成単位100モル%中、50モル%未満であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがよりさらに好ましく、0モル%であってもよい。
【0063】
上記マクロモノマーの主鎖の構造は特に限定されず、線状構造であってもよく、分枝状構造であってもよい。すなわち、上記マクロモノマーの主鎖は線状重合体であってもよく、分枝状重合体であってもよい。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態において、上記マクロモノマーの主鎖は線状重合体であることが好ましく、上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有することが好ましい。
【0065】
上記マクロモノマーの主鎖であるビニル系重合体の重合法は、特に限定されず、例えば、特開2005-232419公報、特開2006-291073公報、特開2016-88944公報に記載の重合法が挙げられる。
【0066】
なお、上記マクロモノマーの主鎖であるビニル系重合体は、当該ビニル系重合体内(特に末端部に)に、ビニル系単量体以外の物質(例えば、重合触媒等)に由来する構造を有する場合がある。例えば、後述するメルカプタン類を使用した重合方法によりビニル系重合体を重合した場合、得られるビニル系重合体は、その末端に、当該メルカプタン類に由来するS基を含む構造を有する場合がある。このような末端にS基を有するビニル系重合体を主鎖とする場合、上記マクロモノマーは、上記一般式(1)で表される末端構造と、ビニル系単量体からなる主鎖構造との間に、上記メルカプタン類に由来するS基を含む構造さらに有する場合がある。
【0067】
上記マクロモノマーとしては、その末端に上記一般式(1)で表される末端構造を有していればよく、上記のように、上記一般式(1)で表される末端構造と、ビニル系単量体からなる主鎖構造との間に、重合触媒等のビニル系単量体以外の物質に由来する構造(例えば、S基を含む構造)をさらに有していてもよい。このような態様もまた、本発明の一実施形態に含まれる。
【0068】
(重量平均分子量)
上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography;SEC)で測定したときに、重量平均分子量が550以上であることが好ましく、1,200以上であることがより好ましく、2,400以上であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量は、1,100,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有するマクロモノマーを提供できる。
【0069】
(数平均分子量)
上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィーで測定したときに、数平均分子量が500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。また、数平均分子量は、600,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有するマクロモノマーを提供できる。
【0070】
(分子量分布(Mw/Mn))
上記マクロモノマーは、分子量分布、すなわち、サイズ排除クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることがよりさらに好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。当該構成によると、ビニル系重合体に導入される上記一般式(1)で表される末端構造の数を容易に制御でき、所望の数の一般式(1)で表される末端構造を有するマクロモノマーを提供できる。分子量分布の下限値は、理論上、1である。
【0071】
本明細書におけるビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、SECで測定し、ポリスチレン換算値で算出された値とする。ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の具体的な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0072】
(マクロモノマーの製造方法)
上記マクロモノマーの製造方法としては、マクロモノマー、すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を提供できる限り特に限定されないが、以下の方法(1)または方法(2)の製造方法を、好適な製造方法として挙げることができる:
方法(1):ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する方法。
【0073】
【化4】
【0074】
式(2a)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH、-N(CH)Hもしくは-N(CHCH)H、または、これらの塩であり;
は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2a)において2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0075】
方法(2):ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、得られた反応物を還元する工程と、を有する方法。
【0076】
【化5】
【0077】
式(2b)中、
Xは、-OH、-COOH、-NH、-N(CH)Hもしくは-N(CHCH)H、または、これらの塩であり;
は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(1)および式(2b)において2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0078】
上記式(2a)および(2b)において、Xにおける塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩あるいは、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。
【0079】
これらのマクロモノマーの製造方法によれば、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有するマクロモノマーを提供することができる。したがって、これらのマクロモノマーの製造方法は、上記マクロモノマーの製造方法として好適に利用することができる。
【0080】
以下、方法(1)および方法(2)を例に挙げて、上記マクロモノマーの具体的な製造方法について詳細に説明するが、上記マクロモノマーの製造方法は、これらの方法には限定されない。
【0081】
(方法(1))
方法(1)によるマクロモノマーの製造方法(「第一のマクロモノマーの製造方法」と称する場合がある)は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程を有する。
【0082】
(第1の反応工程)
第一のマクロモノマーの製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる工程(「第1の反応工程」と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2a)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2a)で表される化合物に由来する末端構造、すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有するマクロモノマーを得ることができる。
【0083】
第1の反応工程において、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2a)で表される化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、溶媒中に末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、上記一般式(2a)で表される化合物とを溶解させ、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2a)で表される化合物を加熱(および必要に応じて攪拌する)方法が挙げられる。
【0084】
第1の反応工程において、上記の反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、上記反応は求核置換反応であるため、極性溶媒が好ましい。第1の反応工程において使用し得る極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0085】
第1の反応工程において、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2a)で表される化合物を加熱する温度(加熱温度)は限定されないが、例えば、30℃~120℃であり、50℃~100℃であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。
【0086】
第1の反応工程における加熱時間は特に限定されないが、反応に供したビニル系重合体が有する全てのハロゲン基が、上記一般式(2a)で表される化合物と反応(置換)するまで加熱を継続することが好ましい。具体的な加熱時間としては、例えば、30分間~6時間であり得る。
【0087】
上記のように、第一のマクロモノマーの製造方法の製造方法により得られるマクロモノマーが有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2a)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち、得られるマクロモノマーが有する一般式(1)で表される末端構造においては、RはXにおいてビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、Hまたは塩を構成する金属元素等)が結合に置換された構造となり、R、R、R、RおよびRは、同じ構造となる。したがって、第一のマクロモノマーの製造方法において使用する一般式(2a)で表される化合物におけるR、R、RおよびRのより詳細な態様については、上記(末端構造)項の記載を適宜援用する。
【0088】
上記一般式(2a)で表される化合物の具体例としては、以下の式(iv)~(vi)で表される構造が挙げられる。一般式(2a)で表される化合物としては、以下の式(iv)~(vi)から選択されるいずれかの化合物が好ましい。
【0089】
【化6】
【0090】
(方法(2))
方法(2)によるマクロモノマーの製造方法(「第二のマクロモノマーの製造方法」と称する場合がある)は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、下記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程と、得られた反応物を還元する工程と、を有する。
【0091】
(第2の反応工程)
第二のマクロモノマーの製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる工程(「第2の反応工程」と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2b)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得る。
【0092】
第2の反応工程において、ビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基と、上記一般式(2b)で表される化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、溶媒中に末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、上記一般式(2b)で表される化合物とを溶解させ、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2b)で表される化合物を加熱(および必要に応じて攪拌する)方法が挙げられる。
【0093】
第2の反応工程において、上記の反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、上記反応は求核置換反応であるため、極性溶媒が好ましい。第2の反応工程において使用し得る極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0094】
第2の反応工程において、当該溶媒中のビニル系重合体および上記一般式(2b)で表される化合物を加熱する温度(加熱温度)は限定されないが、例えば、30℃~120℃であり、50℃~100℃であることが好ましく、70℃~90℃であることがより好ましい。
【0095】
第2の反応工程における加熱時間は特に限定されないが、反応に供したビニル系重合体が有する全てのハロゲン基が、上記一般式(2b)で表される化合物と反応(置換)するまで加熱を継続することが好ましい。具体的な加熱時間としては、例えば、30分間~6時間であり得る。
【0096】
(還元工程)
第二のマクロモノマーの製造方法は、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体、すなわち、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元する工程を有する。当該工程においては、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元することで、すなわち、当該反応物の末端のニトロ基を還元してアミノ基に変換することで、上記一般式(2b)で表される化合物に由来する、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有するマクロモノマーを得る。したがって、第二のマクロモノマーの製造方法において得られるマクロモノマーの末端構造は、上記一般式(1)において、RおよびRがいずれもHである末端構造である。
【0097】
還元工程において、上記第2の反応工程で得られた反応物を還元する方法としては、特に限定されないが、上記第2の反応工程で得られた反応物と、還元剤と、を反応させる方法が挙げられる。
【0098】
還元工程において使用し得る還元剤としては、例えば、塩化アンモニウム、水素、ヒドラジン、水素化アルミニウムリチウムおよび水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0099】
上記のように、第二のマクロモノマーの製造方法により得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2b)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち、得られるマクロモノマーが有する一般式(1)で表される末端構造において、RはXにおいて、ビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、Hまたは塩を構成する金属元素等)が結合に置換された構造となり、RおよびRは同じ構造となる。したがって、第二のマクロモノマーの製造方法において使用する一般式(2b)で表される化合物におけるR、RおよびRのより詳細な態様については、上記(末端構造)項の記載を適宜援用する。
【0100】
上記一般式(2b)で表される化合物の具体例としては、以下の式(vii)で表される構造が挙げられる。副反応が少なく、定量的にビニル系重合体の末端に位置するハロゲン基との反応を進行できることから、一般式(2b)で表される化合物としては、以下の式(vii)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化7】
【0102】
(方法(3))
本発明の一実施形態において、本製造方法の上記方法(1)または方法(2)以外の一態様として、ビニル系重合体の末端に位置する水酸基、またはカルボキシル基等のハロゲン基以外の官能基と、下記一般式(2c)の化合物とを反応させる工程を有する、末端変性ビニル系重合体の製造方法を提供する(方法(3)):
【0103】
【化8】
【0104】
式(2c)中、
X’は、-OH、-NH、-N(CH)H、-N(CHCH)H、-COOH、-COZまたは-Zであり(Zは、ハロゲン原子であり);
は、炭素数が1~8個の3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
は、単結合または炭素数が1~8個の2価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは2であり;
式(2c)において2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
本明細書において、この方法(3)による末端変性ビニル系重合体の製造方法を「第三の製造方法」と称する場合がある。
【0105】
(第3の反応工程)
第三の製造方法は、ビニル系重合体の末端に位置する水酸基、またはカルボキシル基等のハロゲン基以外の官能基と、下記一般式(2c)の化合物とを反応させる工程(第3の反応工程と称する場合がある)を有する。当該工程においては、ビニル系重合体の末端に上記一般式(2c)で表される化合物を反応させることで、ビニル系重合体の末端を変性させ、上記一般式(2c)で表される化合物に由来する末端構造、すなわち、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体を得ることができる。
【0106】
上記のように、第三の製造方法により得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造は、一般式(2c)で表される化合物に由来する構造を有する。すなわち得られる末端変性ビニル系重合体が有する一般式(1)で表される末端構造においては、RはX’においてビニル系重合体との反応により一部の原子(例えば、H、OHまたはZ等)が結合に置換された構造となり、R、R、R、RおよびRは、同じ構造となる。したがって、第三製造方法において使用する一般式(2c)で表される化合物におけるR、R、RおよびRのより詳細な態様については、上記の記載を適宜援用する。
【0107】
(ビニル系重合体調製工程)
第一のマクロモノマーの製造方法および第二のマクロモノマーの製造方法は、ハロゲン基が末端に位置するビニル系重合体を調製する工程(ビニル系重合体調製工程)をさらに有していてもよい。ハロゲン基が末端に位置するビニル系重合体の調製(重合)方法としては、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等の公知の種々の重合法を採用することができる。また、第三の製造方法は、ハロゲン基以外の官能基が末端に位置するビニル系重合体を調製する工程をさらに有していてもよい。ハロゲン基以外の官能基が末端に位置するビニル系重合体の調製(重合)方法としては、特開平1-203412号に記載のような、メルカプトエタノール等の水酸基を有するメルカプタン類、または、メルカプト酢酸等のカルボキシル基を有するメルカプタン類を使用した重合方法などを利用することもできる。
【0108】
以下、リビングラジカル重合法を例に挙げて、ビニル系重合体調製工程の具体的な一態様について詳説する。
【0109】
ビニル系重合体の原料となるビニル系単量体としては、上記(主鎖)項に記載の各ビニル系単量体を適宜使用することができる。
【0110】
リビングラジカル重合としては、(a)ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、(b)有機テルル化合物、コバルトポルフィリン錯体および/またはニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合法、(c)有機ハロゲン化物などを開始剤として使用し、かつ遷移金属錯体を触媒として使用する原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)法、(d)有機ハロゲン化物などを開始剤として使用し、かつ窒素、酸素等を中心原子とする有機分子を触媒として使用する重合(可逆移動触媒重合(RTCP))法などを挙げることができるが、ビニル系重合体の分子量および分子量分布の制御が容易であることから、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0111】
リビングラジカル重合においては、重合条件を制御することにより、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することができる。例えば、重合の開始剤の種類を制御することで、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することができる。具体的に、重合開始点が1箇所ある開始剤を使用した場合、片方の末端にハロゲン基が位置する線状ビニル系重合体を調製することができ、重合開始点が2箇所ある開始剤を使用すると、両方の末端にハロゲン基が位置する線状ビニル系重合体を調製することができる。
【0112】
重合開始点が1箇所ある開始剤としては、2-ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、(1-ブロモエチル)ベンゼン、アリルブロミド、2-ブロモプロピオン酸メチル、クロロ酢酸メチル、2-クロロプロピオン酸メチル、(1-クロロエチル)ベンゼン等が挙げられる。また、重合開始点が2箇所ある開始剤としては、ジエチル2,5-ジブロモアジペート、ジメチル2,5-ジブロモアジペート、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル等が挙げられる。
【0113】
ビニル系重合体調製工程において、得られるビニル系重合体が有するハロゲン基末端の数を制御することで、上記第1の反応工程または第2の反応工程でビニル系重合体と反応する、一般式(2a)で表される化合物または一般式(2b)で表される化合物の数、すなわち、最終的に得られるマクロモノマーにおける、一般式(1)で表される末端構造の数を制御することができる。
【0114】
リビングラジカル重合においては、開始剤に加えて、重合触媒、多座アミン(配位子)、塩基、還元剤、溶媒等を使用してもよい。これらの各成分の種類および量は、当業者が適宜選択可能である。
【0115】
(マクロモノマーの含有量)
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群における、上記マクロモノマーの質量基準での含有量は、モノマー群の全量100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。上記マクロモノマーの含有量が0.1質量%以上であれば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善できるという効果を奏する。また、上記マクロモノマーの含有量は、モノマー群の全量100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。上記マクロモノマーの含有量が50質量%以下であれば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善できるという効果を奏する。
【0116】
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群における、上記マクロモノマーのモル量基準での含有量は、モノマー群の全量100モル%中、0.01モル%以上であることが好ましく、0.02モル%以上であることがより好ましく、0.05モル%以上であることがさらに好ましい。上記マクロモノマーの含有量が0.01モル%以上であれば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善できるという効果を奏する。また、上記マクロモノマーのモル量基準での含有量は、モノマー群の全量100モル%中、10モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましい。上記マクロモノマーの含有量が10モル%以下であれば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性を改善できるという効果を奏する。
【0117】
<ジアミン>
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群の一成分であるジアミンは、1分子内にアミン(アミノ基)を2つ有する化合物である。ジアミンとしては、1分子内にアミン(アミノ基)を2つ有する限り特に限定されないが、芳香族系ジアミン、脂肪族系ジアミン、またはポリエーテルジアミン等を好適に挙げることができる。
【0118】
脂肪族系ジアミンは、分子中に、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素構造を有するジアミンである。脂肪族系ジアミンとしては、より具体的には、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン等を挙げることができる。
【0119】
芳香族系ジアミンは、分子中に芳香環構造を有するジアミンである。芳香族系ジアミンとしては、より具体的には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、p-フェニレンジアミン(PDA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を挙げることができる。
【0120】
ポリエーテルジアミンは、分子中にポリエーテル構造を有するジアミンである。芳香族系ジアミンとしては、より具体的には、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン、1,2-ポリオキシプロピレン、1,3-ポリオキシプロピレンあるいはそれらの共重合物等)のアミノ変性体を挙げることができる。
【0121】
ジアミン成分としては、上記の各種ジアミンのうち1種類を単独で使用してもよく、複数種類を任組み合わせて使用してもよい。
【0122】
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群における、ジアミンの含有量は、モノマー群の全量100モル%中、0モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。また、ジアミンの含有量は、モノマー群の全量100モル%中、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることがさらに好ましい。ジアミンの含有量が70モル%以下であれば、高分子量のポリアミド系重合体を得ることができる。
【0123】
なお、本明細書においては、1分子内にアミン(アミノ基)を2つ有する化合物であっても、上記一般式(1)の構造を有する化合物は、本発明の一実施形態に係るジアミンとは見做さない。
【0124】
<ジカルボン酸>
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群の一成分であるジカルボン酸は、1分子内にカルボン酸(カルボニル基)を2つ有する化合物である。ジカルボン酸としては、1分子内にカルボン酸(カルボニル基)を2つ有する限り特に限定されないが、芳香族系ジカルボン酸または脂肪族系ジカルボン酸を好適に挙げることができる。 脂肪族系ジカルボン酸は、分子中に、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素構造を有するジカルボン酸である。脂肪族系ジカルボン酸としては、より具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等を挙げることができる。
【0125】
芳香族系ジカルボン酸は、分子中に芳香環構造を有するジカルボン酸である。芳香族系ジカルボン酸としては、より具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0126】
ジカルボン酸成分としては、上記の各種ジカルボン酸のうち1種類を単独で使用してもよく、複数種類を任組み合わせて使用してもよい。
【0127】
また、本変性ポリアミド系重合体の原料たるジカルボン酸は、当該ジカルボン酸の分子内に含まれるカルボン酸(カルボニル基)がハロゲン化していてもよい。すなわち、本変性ポリアミド系重合体の原料たるジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸ハライド(例えば、ジカルボン酸クロリド等)を使用することもできる。
【0128】
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群における、ジカルボン酸の含有量は、モノマー群の全量100モル%中、0モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。また、ジアミンの含有量は、モノマー群の全量100モル%中、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることがさらに好ましい。ジカルボン酸の含有量が70モル%以下であれば、高分子量のポリアミド系重合体を得ることができる。
【0129】
<その他のモノマー>
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群は、上記のマクロモノマー、ジアミンおよびジカルボン酸以外のモノマー(その他のモノマー)を含むものであってもよい。すなわち、本変性ポリアミド系重合体は、その他のモノマーに由来する構成単位を含むものであってもよい。係るその他のモノマーとしては、アミノカルボン酸、ラクタム等が挙げられる。中でも、ジアミンとジカルボン酸の組成比を変えずとも分子量を増大することができ、容易に分子量調整が可能であることから、本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群は、アミノカルボン酸を含むことが好ましい。
【0130】
アミノカルボン酸としては、例えば、12-アミノドデカン酸、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、パラアミノメチル安息香酸、4-アミノシクロヘキサンカルボン酸、グリシン、アラニンなどが挙げられる。
【0131】
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ε-アミノラウロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドンなどが挙げられる。
【0132】
その他のモノマーとしては、上記の各種モノマーのうち1種類を単独で使用してもよく、複数種類を任組み合わせて使用してもよい。
【0133】
本変性ポリアミド系重合体の原料たるモノマー群における、その他のモノマーの含有量は、モノマー群の全量100モル%中、0モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましい。その他のモノマーの含有量が0モル%以上であれば、その他のモノマー由来の機能の効果を奏する。また、その他のモノマーの含有量は、モノマー群の全量100モル%中、99モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましい。
【0134】
<添加剤>
本変性ポリアミド系重合体は、所望の目的に応じて種々の添加剤を配合した組成物とすることができる。係る添加剤としては、例えば、リン化合物(例えば、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、または、これらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩)、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑材、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、難燃剤、補強材、無機フィラー、微小繊維、X線不透過剤などが挙げられる。
【0135】
添加剤としては、上記の各種添加剤のうち1種類を単独で使用してもよく、複数種類を任組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤の種類および使用量は、所望の目的に応じて当業者が適宜選択可能である。
【0136】
<変性ポリアミド系重合体の構造>
本変性ポリアミド系重合体は、原料たるモノマー群に含まれるマクロモノマーの種類(構造)に応じて、それぞれ異なる構造を有し得る。
【0137】
マクロモノマーとして、一般式(1)においてnが2以上である末端構造を1つ有するマクロモノマー(マクロモノマーA)を使用する場合(場合A)を考える。マクロモノマーAは、片末端にアミノ基を2つ有するマクロモノマーである。場合Aにおいて、マクロモノマーAは、末端のアミノ基を介してジカルボン酸と反応し、マクロモノマーA、ジカルボン酸およびジアミンの共重合体である変性ポリアミド系重合体Aを形成する。得られる変性ポリアミド系重合体Aは、マクロモノマーAおよびジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とがアミド結合を介して結合してなるポリアミド主鎖構造に、マクロモノマーAの主鎖構造がグラフトされた構造を有する。このような変性ポリアミド系重合体Aの構造は、図1に記載の模式図(a)で表される。模式図(a)において、太い帯はポリアミド主鎖構造であり、細い線はマクロモノマーAの主鎖構造であり、丸部はポリアミド主鎖構造と、マクロモノマーAとの結合部位である。
【0138】
マクロモノマーとして、一般式(1)においてnが2以上である末端構造を2つ以上有するマクロモノマー(マクロモノマーB)を使用する場合(場合B)を考える。マクロモノマーBは、2つ以上の末端にアミノ基を2つずつ有するマクロモノマーである。場合Bにおいて、マクロモノマーBは、ぞれぞれの末端部において、当該末端のアミノ基を介してジカルボン酸と反応し、マクロモノマーB、ジカルボン酸およびジアミンの共重合体を形成する。その結果、得られる変性ポリアミド系重合体Bは、マクロモノマーBおよびジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とがアミド結合を介して結合してなる1つまたは2つ以上のポリアミド主鎖構造が、マクロモノマーBの主鎖構造を介して架橋された構造を有する。2つ以上のポリアミド主鎖構造が架橋されている場合、このような変性ポリアミド系重合体Bの構造は、図1に記載の模式図(b-1)で表される。模式図(b-1)において、太い帯はポリアミド主鎖構造であり、細い線はマクロモノマーBの主鎖構造であり、丸部はポリアミド主鎖構造と、マクロモノマーBとの結合部位である。また、1つのポリアミド主鎖構造が架橋(分子内架橋)されている場合、このような変性ポリアミド系重合体Bの構造は、図1に記載の模式図(b-2)で表される。模式図(b-2)において、太い帯はポリアミド主鎖構造であり、細い線はマクロモノマーBの主鎖構造であり、丸部はポリアミド主鎖構造と、マクロモノマーBとの結合部位である。
【0139】
マクロモノマーとして、一般式(1)においてnが1である末端構造を2つ以上有するマクロモノマー(マクロモノマーC)を使用する場合(場合C)を考える。マクロモノマーCは、2つ以上の末端にアミノ基を1つずつ有するマクロモノマーである。場合Cにおいては、マクロモノマーCは、ぞれぞれの末端部において、当該末端のアミノ基を介して、ジカルボン酸およびジアミンの共重合体のカルボン酸末端と反応し、マクロモノマーC、ジカルボン酸およびジアミンの共重合体を形成する。その結果、得られる変性ポリアミド系重合体Cは、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とがアミド結合を介して結合してなる1つまたは2つ以上のポリアミド主鎖構造の末端部が、マクロモノマーCの主鎖構造を介して架橋された構造を有する。変性ポリアミド系重合体Cは、ジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位とからなるポリアミドブロックと、マクロモノマーCの主鎖構造からなるブロックと、からなるブロック共重合体であるとも言える。2つ以上のポリアミド主鎖構造の末端部が架橋されている場合、このような変性ポリアミド系重合体Cの構造は、図1に記載の模式図(c-1)で表される。模式図(c-1)において、太い帯はポリアミド主鎖構造であり、細い線はマクロモノマーCの主鎖構造であり、丸部はポリアミド主鎖構造と、マクロモノマーCとの結合部位である。また、1つのポリアミド主鎖構造の末端部が架橋(分子内架橋)されている場合、このような変性ポリアミド系重合体Cの構造は、図1に記載の模式図(c-2)で表される。模式図(c-2)において、太い帯はポリアミド主鎖構造であり、細い線はマクロモノマーCの主鎖構造であり、丸部はポリアミド主鎖構造と、マクロモノマーCとの結合部位である。
【0140】
〔2.変性ポリアミド系重合体の製造方法〕
本発明の一実施形態において、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、ジアミンと、ジカルボン酸と、を含むモノマー群を重合する工程(重合工程)を有する、変性ポリアミド系重合体の製造方法を提供する。
【0141】
本発明の一実施形態に係る末端変性ビニル系重合体の製造方法(以下、「本製造方法」と称する場合がある)によれば、上記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、ジアミンと、ジカルボン酸と、を構成単位として含む変性ポリアミド系重合体を提供することができる。したがって、本製造方法は、本末端変性ビニル系重合体の製造方法として好適に利用することができる。
【0142】
なお、本製造方法で使用するマクロモノマー、ジアミンおよびジカルボン酸(ならびに、任意で使用し得るその他のモノマーおよび添加剤)の具体的な態様については、上記〔1.変性ポリアミド系重合体〕項の記載を適宜援用する。
【0143】
<重合工程>
本製造方法における重合工程の態様としては、上記マクロモノマーと、ジアミンと、ジカルボン酸と、任意でその他のモノマーと、を含むモノマー群を重合し、当該モノマー群に含まれる各モノマーの共重合体である変性ポリアミド系重合体を得られる限り特に限定されないが、例えば、以下の方法(1)または(2)の重合方法を、好適な一態様として挙げることができる:
方法(1):上記モノマー群に含まれる各モノマーを同時に混合して反応(重合)させ、共重合体を得る方法、
方法(2):上記マクロモノマーと、ジカルボン酸と、モノマー群にその他のモノマーが含まれる場合は、当該その他のモノマーと、を混合して反応(重合)させてプレポリマーを得、当該プレポリマーと、ジアミンと、をさらに混合して反応(重合)させ、共重合体を得る方法。
【0144】
重合工程におけるモノマー群の重合反応は、溶媒中で、あるいは溶媒を用いずに無溶媒の状態で行うことが出来る。精製等が必要なく、簡便な操作で変性ポリアミド系重合体を得られることから、重合工程においては、無溶媒の状態でモノマー群を反応(重合)させることが好ましい。このような無溶媒での反応は、例えば、溶融混練法により行うことができる。重合工程においては、水を溶媒にしてジアミンとジカルボン酸の塩を形成させた上で反応(重合)させることが、ジアミンとジカルボン酸の混合比を調整することが容易であるため、好ましい。
【0145】
重合工程におけるモノマー群の重合反応は、加圧下で行ってもよく、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよいが、反応性を向上する観点から、減圧下で行うことが好ましい。重合反応を減圧下で行う方法としては、例えば、反応系内の空気を窒素置換し、窒素雰囲気下で重合反応を行う方法が挙げられる。揮発性モノマーの組成比を維持する観点からは、モノマー群の重合反応は、加圧下で行うことが好ましい。加圧下で重合反応を行う方法としては、例えば、耐圧容器中で反応系内の空気を窒素に置換し、窒素雰囲気下で重合反応を行う方法が挙げられる。
【0146】
重合工程においては、上記モノマー群にさらに、添加剤を混合してもよい。重合工程において使用し得る添加剤の具体的な態様については、上記〔1.変性ポリアミド系重合体〕項の記載を適宜援用する。添加剤の中でも、リン化合物は、上記モノマー群の反応(重合)の触媒として機能するため、好ましい。
【0147】
重合工程において、モノマー群を反応(重合)させる温度は、特に制限されないが、反応速度の向上と、モノマーの熱分解の抑制とを両立できることから、160~300℃が好ましく、180~250℃がより好ましい。
【0148】
重合工程における、重合反応の反応時間は、特に限定されないが、着色の抑制等の観点から、2~10時間であることが好ましく3~8時間であることがより好ましい。なお、方法(2)のように多段階の重合反応を行う場合、反応時間としては、各重合反応の反応時間の合計を意図する。
【0149】
<成形工程>
本製造方法は、上記重合工程において得られた変性ポリアミド系重合体を成形し、ポリアミド系成形体を得る成形工程をさらに有していてもよい。成形工程における成形方法としては、特に限定されず、公知の成形方法、例えば、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、射出成形などを採用することができる。
【0150】
成形工程にて得られるポリアミド系成形体の形状は特に限定されず、フィルム、シート、繊維などが挙げられる。一実施形態において、本変性ポリアミド系重合体からなるポリアミド系成形体は、例えば、破断ひずみ及び/または面衝撃強度等の物性に優れるため、特にフィルム形状、シート形状の成形体として好適に利用できる。
【0151】
〔3.用途〕
本変性ポリアミド系重合体は、本変性ポリアミド系重合体を主原料とする成形体の原料として、または、その他の樹脂に添加する樹脂改質材として、好適に用いることができる。
【0152】
本変性ポリアミド系重合体を主原料とする成形体は、特に限定されないが、食品包装用フィルム、自動車部材、コンピュータおよび関連機器、光学機器部材、電気・電子機器、情報・通信機器、精密機器、土木・建設用品、医療機器、家庭用品等が挙げられる。すなわち、本変性ポリアミド系重合体は、これらの広範囲な用途に使用することができる。また、本変性ポリアミド系重合体は、耐衝撃強度および低温特性等に優れる重合体とすることができる。このような重合体を原料とする成型体は、食品包装用フィルム、自動車部材、電気・電子機器、医療機器の用途に特に有用である。
【0153】
本変性ポリアミド系重合体を原料とする成形体における、本変性ポリアミド系重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、耐衝撃強度および低温特性等に優れる成形体を提供する観点から、成形体の全量100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。また、成形体中の本変性ポリアミド系重合体の含有率の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0154】
本変性ポリアミド系重合体は、本変性ポリアミド系重合体以外の樹脂(その他の樹脂)に添加することで、当該その他の樹脂の諸物性を改質する、樹脂改質材として機能し得る。より具体的に、本変性ポリアミド系重合体を含む樹脂改質材は、衝撃強度改良材、低温衝撃改良材、柔軟性付与材、成形性改良剤、耐傷つき性付与材、摩擦・摩耗性改良剤、軋み音防止材、耐候性付与材、リサイクル性付与剤等の広範囲な用途に使用できる。
【0155】
本変性ポリアミド系重合体を添加することで改質可能なその他の樹脂は、特に限定されないが、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。すなわち、本変性ポリアミド系重合体は、これらの各種の樹脂の樹脂改質材として使用することができる。
【0156】
本変性ポリアミド系重合体を樹脂改質材と使用する場合の、本変性ポリアミド系重合体の使用量(添加量)は、特に限定されないが、例えば、改質対象の樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。また、樹脂改質材としての本変性ポリアミド系重合体の使用量(添加量)の上限は特に限定されず、例えば、改質対象の樹脂100質量部に対して、50質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよい。
【0157】
〔4.まとめ〕
本発明の一実施形態は、以下の構成を含んでいてもよい。
〔1〕下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合してなる、変性ポリアミド系重合体:
【0158】
【化9】
【0159】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
〔2〕RおよびRは、それぞれ独立に、2価または3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、〔1〕に記載の変性ポリアミド系重合体。
〔3〕Rの炭素数は、1~6個であり、
の炭素数は、0~2個であり、
およびRは、いずれも水素である、〔1〕または〔2〕に記載の変性ポリアミド系重合体。
〔4〕上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体。
【0160】
【化10】
【0161】
〔5〕上記マクロモノマーは、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体。
〔6〕上記マクロモノマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体。
〔7〕上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体。
〔8〕上記モノマー群は、アミノカルボン酸をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体。
〔9〕下記一般式(1)で表される末端構造を1つ以上有する、末端変性ビニル系重合体である、マクロモノマーと、
ジアミンと、
ジカルボン酸と、
を含むモノマー群を重合する工程を有する、変性ポリアミド系重合体の製造方法:
【0162】
【化11】
【0163】
式(1)中、
は、-O-、-O(CO)-、-NH-、-N(CH)-または-N(CHCH)-であり;
およびRは、それぞれ独立に、単結合または炭素数が1~8個の2価または3価の基であり、ヘテロ原子を有していてもよく;
およびRは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基であり;
nは、1または2であり;
nが2である場合、2個ずつ存在するR、RおよびRの構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく;
一般式(1)で示す末端構造が2つ以上あるとき、当該末端構造は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
〔10〕RおよびRは、それぞれ独立に、2価または3価のアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕Rの炭素数は、1~6個であり、
の炭素数は、0~2個であり、
およびRは、いずれも水素である、〔9〕または〔10〕に記載の製造方法。
〔12〕上記一般式(1)で表される末端構造は、以下の式(i)~(iii)から選択されるいずれかの構造を有する、〔9〕~〔11〕のいずれか1つに記載の製造方法。
【0164】
【化12】
【0165】
〔13〕上記マクロモノマーは、線状重合体であり、
上記線状重合体の一方または両方の末端が上記一般式(1)で表される末端構造を有する、〔9〕~〔12〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔14〕上記マクロモノマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリイソブチレンを主成分とする、〔9〕~〔13〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔15〕上記マクロモノマーは、サイズ排除クロマトグラフィー法によって測定したときに、ポリスチレン換算数平均分子量が500~600,000であり、かつ、分子量分布が1.8以下である、〔9〕~〔14〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔16〕上記モノマー群は、アミノカルボン酸をさらに含む、〔9〕~〔15〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔17〕〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体を含む、成形体。
〔18〕〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の変性ポリアミド系重合体を含む、樹脂改質剤。
【0166】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0167】
以下、本発明の一実施形態を実施例により具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0168】
[分析方法]
(重合転化率)
マクロモノマーの原料たるビニル系重合体の製造における、単量体の重合体への転化率は、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph,GC(株式会社島津製作所製、GC-2000))を用いて測定した。カラムには、Agilent J&W社製、GCカラムHP-1を用いた。また、トルエンをスタンダードとして測定した。
【0169】
(官能基の定性分析および定量分析)
マクロモノマーの原料たるビニル系重合体およびマクロモノマーにおける官能基の定性分析および定量分析は、H NMR(Bruker 400MHz NMR)を用いて行なった。マクロモノマー30mgを重クロロホルム0.8gに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料とした。
【0170】
(重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn))
マクロモノマーの原料たるビニル系重合体およびマクロモノマーの重量平均分子量および数平均分子量の分析は、SEC(HLC-8420GPC)を用いて行った。カラムにはTOSOH TSKgel SuperHM-Lを用い、スタンダードにはポリスチレンスタンダードサンプルを用いた。溶離液はクロロホルムにトリエチルアミン1.5重量%添加した混合溶媒を用いた。測定対象たるビニル系重合体またはマクロモノマー3mgを混合溶媒3mlに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料とした。
【0171】
(臭素末端分析)
マクロモノマーの原料たるビニル系重合体の末端臭素基をアクリル酸カリウムで置換した後、H NMRにより置換基の根元のH量を計算することで求めた。末端臭素基の置換方法を次に示す。ビニル系重合体に大過剰量のジメチルアセトアミドおよびアクリル酸カリウムを加え、得られた溶液を50℃にて30分間攪拌した。得られた溶液に過剰量の酢酸エチルおよび水を加え、得られた混合物から有機層のみを採取した。その後、有機層を濃縮して、末端臭素基をアクリル酸カリウムで置換したビニル重合体を得た。得られたビニル重合体を重クロロホルムに溶解させて得られた溶解物を分析用の試料として、
NMR測定を行った。その結果、4.8~5.2ppmの範囲にアクリル酸カリウムで置換された置換基の根元のHのシグナルが確認され、その積分値からビニル系重合体の末端臭素量を算出した。
【0172】
(引張試験評価)
JIS K 6251:2017に準拠して引張試験を実施し、ポリアミド系成形体の降伏点応力、破断点ひずみおよび破断点応力を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体をダンベル3号型に切り抜き、23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。引張速度は200mm/分とした。
【0173】
(動的粘弾性(tanδ)評価)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御製、DVA-200)を用いて、引張モード、ひずみ0.05%、温度-70~400℃で測定を行い、振動数10Hz、35℃および-35℃におけるポリアミド系成形体の動的粘弾性(tanδ)を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を8mm×6mmに切り抜き、23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0174】
(面衝撃強度)
東洋精機社製デュポン式衝撃試験機にて、15mm半球状撃芯を用いて荷重300~500gで落錘試験を行い、破壊エネルギー(J)を測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0175】
(1%重量減少温度の測定)
示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス製、STA7200)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下、0~500℃で測定を行った。1%重量減少温度をポリアミド系成形体の1%重量が減少した温度として測定した。測定には0.5mmにプレス成形したシート状の成形体を23℃、50%RHの恒温恒湿室で1晩以上養生することで作製した試験片を使用した。
【0176】
〔実施例1〕
[製造例1]
(製造例1-1)
フラスコにメタノール160g、アクリル酸ブチル320g、2-ブロモイソ酪酸エチル55.3g、トリエチルアミン4.3g、臭化第二銅0.16g、およびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン0.16gを添加した。次に、フラスコ内を窒素バブリングした。なお、「窒素バブリング」とは、フラスコまたは溶液などの対象物に窒素を流入して対象物から酸素を除去することを意図する。窒素バブリング後、フラスコ内の混合物を加熱し、45℃まで昇温した。
【0177】
別途、メタノール49g、アスコルビン酸0.25gおよびトリエチルアミン0.29gを混合してメタノール溶液を得た。このメタノール溶液を窒素バブリングした後、上記フラスコ内に5.1ml/hで滴下した。
【0178】
メタノール溶液の滴下開始から0.5時間後、フラスコ内に窒素バブリングしたアクリル酸ブチル480gを1.5時間かけて滴下した。メタノール溶液滴下開始から4時間後、アタクリル酸ブチルの転化率が95%以上に達したことをガスクロマトグラフィーにより確認し、メタノール溶液の滴下を止めた。その後、フラスコ内の反応溶液を100℃かつ真空下で1時間濃縮した。濃縮した反応溶液に、酢酸ブチル800g、キョーワード500(協和化学製)8g、キョーワード700(協和化学製)8g、ラヂオライト900(昭和化学製)8gを添加し、80℃で1時間攪拌した。次に、得られた反応溶液をろ過した。得られたろ液を100℃かつ真空下で2時間濃縮することで、片末端に臭素を有するポリアクリル酸ブチル(重合体1-1)を得た。得られた重合体1-1の数平均分子量は2574であり、分子量分布は1.30であることをSECにより確認した。更に重合体1-1は1分子あたり平均0.86の臭素末端を有していることをH NMRにより確認した。
【0179】
(製造例1-2)
フラスコにメタノール160g、アクリル酸ブチル309g、アクリル酸エチル83g、アクリル酸2-メトキシエチル9g、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル12g、トリエチルアミン4.3g、臭化第二銅0.16g、およびトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン0.16gを添加した。次に、フラスコ内を窒素バブリングした。また、フラスコ内の混合物を加熱し、45℃まで昇温した。
【0180】
別途、メタノール49g、アスコルビン酸0.25gおよびトリエチルアミン0.29gを混合してメタノール溶液を得た。このメタノール溶液を窒素バブリングした後、上記フラスコ内に5.1ml/hで滴下した。
【0181】
メタノール溶液の滴下開始から0.5時間後、フラスコ内に窒素バブリングしたアクリル酸ブチル463g、アクリル酸エチル124g、およびアクリル酸2-メトキシエチル13gの混合液を1.5時間かけて滴下した。メタノール溶液滴下開始から4時間後、アタクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの転化率がそれぞれ95%以上に達したことをガスクロマトグラフィーにより確認し、メタノール溶液の滴下を止めた。その後、フラスコ内の反応溶液を100℃かつ真空下で1時間濃縮した。濃縮された反応溶液に、酢酸ブチル1000g、キョーワード500(協和化学製)10g、キョーワード700(協和化学製)10gおよびラヂオライト900(昭和化学製)10gを添加し、80℃で1時間攪拌した。次に、得られた反応溶液をろ過した。得られたろ液を100℃かつ真空下で2時間濃縮することで、両末端に臭素を有するアクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの共重合体(重合体1-2)を得た。得られた重合体1-2の数平均分子量は35316であり、分子量分布は1.1であることをSECにより確認した。更に重合体1-2は1分子あたり平均1.9個の臭素末端を有していることをH NMRにより確認した。
【0182】
(製造例1-3)
フラスコに重合体1-1を150gと、N,N-ジメチルアセトアミド150gと、を添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながら炭酸カリウム13.5g、ジアミノ安息香酸16.4gを添加した。続いて、フラスコを80℃で4時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール450gと水450gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がジアミノ安息香酸に由来する構造に置換されてなるマクロモノマー(マクロモノマー1-1)を得た。得られたマクロモノマー1-1の数平均分子量は2628であり、分子量分布は1.19であることをSECにより確認した。更にマクロモノマー1-1は臭素末端が完全にジアミノ安息香酸のエステル基に置き換わったことをH NMRにより確認した。
【0183】
(製造例1-4)
フラスコに重合体1-1を10gとN,N-ジメチルアセトアミド10gを添加し、攪拌させて均一にした。更に攪拌させながらトリス(2-アミノエチル)アミン1.90ggを添加した。続いて、フラスコを80℃で1時間、加熱攪拌した。その後、1-ブタノール30gと水30gを加え、室温で撹拌、静置分離をして有機層だけを取る抽出操作を3回行った。得られた有機層を50℃かつ真空下で1時間濃縮することで、重合体1-1の臭素末端がトリス(2-アミノエチル)アミンに由来する構造に置換されてなるマクロモノマー(マクロモノマー1-2)を得た。得られたマクロモノマー1-2の数平均分子量は3445であり、分子量分布は1.31であることをSECにより確認した。更にマクロモノマー1-2は臭素末端が完全に無くなっていることをH NMRにより確認した。
【0184】
(実施例1-1および1-2)
フラスコに、表1に記載のモル分量の、12-アミノドデカン酸およびアジピン酸と、0.09モル%の次亜リン酸ナトリウム一水和物とを添加し、10分間窒素を流してフラスコ内を窒素置換した。次いで、フラスコ内を200℃に加熱しながら、表1に記載のモル分量のマクロモノマー1-1を添加した。なお、重量換算でのマクロモノマー1-1の添加量は、モノマー群の全量100質量%に対して、実施例1-1では4質量%であり、実施例1-2では7質量%であった。更に、フラスコ内に表1に記載のモル分量のイソホロンジアミンを添加し、200℃で2時間加熱攪拌した。その後、230℃で2時間更に加熱攪拌した。更にフラスコ内の混合物の全量に対して0.5質量%となるよう酸化防止剤(Sumilizer GA-80)を添加して210℃、5分間加熱攪拌することで、変性ポリアミド系重合体を得た。得られたポリアミド系重合体を170℃で4時間真空乾燥させた後、250℃、5MPaで0.5mm厚さに圧縮させてポリアミド系成形体を得た。得られた重合体の数平均分子量および分子量分布はSECにより確認した。また、得られた成形体の物性を引張試験、動的粘弾性測定、TG/DTA測定により評価した。結果を表1に示す。
【0185】
(実施例1-3)
マクロモノマー1-1の代わりにマクロモノマー1-2を用いた以外は実施例1-2と同様の操作を行い変性ポリアミド系重合体及びポリアミド系成形体を得、各物性を測定および評価した。結果を表1に示す。
【0186】
(比較例1-1)
マクロモノマー1-1を使用しなかったこと以外は実施例1-1と同様の操作を行い重合体および成形体を得、各物性を測定および評価した。結果を表1に示す。
【0187】
【表1】
【0188】
表1により、マクロモノマー(マクロモノマー1-1~1-2)と、ジアミンと、ジカルボン酸とを共重合させた実施例1-1~1-3の変性ポリアミド系重合体からなる成形体は、マクロモノマーを共重合させていない(未変性の)ポリアミド系重合体からなる比較例1-1の成形体と比して、破断ひずみおよび面衝撃強度が高く、さらに35℃および-35℃での動的粘弾性(tanδ)も高いことが分かる。変性ポリアミド重合体について、未変性のポリアミド系重合体と比して、破断ひずみおよび面衝撃強度に加え、35℃(室温)でのtanδが高いことは、当該変性ポリアミド重合体の柔軟性が向上したことを示す。また、-35℃でのtanδが高いことは、当該変性ポリアミド重合体の低温特性が向上したことを示す。以上より、マクロモノマー(すなわち、本末端変性ビニル系重合体)を共重合させた変性ポリアミド系重合体は、破断ひずみおよび面衝撃強度等の物性が改善し、柔軟性や低温特性が向上し得ることが示唆された。
【0189】
(実施例2-1~2-3)
フラスコに、表2に記載のモル分量の、1,12-ジアミノドデカンおよびアジピン酸と、0.09モル%の次亜リン酸ナトリウム一水和物とを添加し、さらに、フラスコ内の混合物の全量に対して0.5質量%となるよう酸化防止剤(Sumilizer GA-80)を添加した後、10分間窒素を流してフラスコ内を窒素置換した。次いで、フラスコ内を170℃に加熱しながら、表2に記載のモル分量のマクロモノマー1-1を添加した。なお、重量換算でのマクロモノマー1-1の添加量は、モノマー群の全量100質量%に対して、実施例2-1では1質量%であり、実施例2-2では3質量%であり、実施例2-3では8質量%であった。フラスコ内の混合物を揮発分還流下で、200℃で1時間、230℃で1時間、250℃で30分間、270℃で10分間、290℃で50分間、および、300℃で30分間、この順に昇温しながら加熱攪拌した。その後、加熱攪拌後のフラスコ内の混合物を真空条件下で更に300℃で30分間加熱攪拌することで、変性ポリアミド系重合体を得た。得られたポリアミド系重合体を270℃、5MPaで0.5mmの厚さに圧縮させることで、ポリアミド系成形体を得た。得られた重合体の数平均分子量および分子量分布はSECにより確認した。また、得られた成形体の物性を引張試験、動的粘弾性測定、TG/DTA測定により評価した。結果を表2に示す。
【0190】
(比較例2-1)
マクロモノマー1-1を使用しなかったこと以外は実施例2-1と同様の操作を行い重合体および成形体を得、各物性を測定および評価した。結果を表2に示す。
【0191】
【表2】
【0192】
表2により、マクロモノマー(マクロモノマー1-1)と、ジアミンと、ジカルボン酸とを共重合させた実施例2-1~1-3の変性ポリアミド系重合体からなる成形体は、マクロモノマーを共重合させていない(未変性の)ポリアミド系重合体からなる比較例2-1の成形体と比して、破断ひずみが高いことに加え、さらに35℃および-35℃での動的粘弾性(tanδ)も高いことが分かる。変性ポリアミド重合体について、未変性のポリアミド系重合体と比して、破断ひずみに加え、35℃(室温)でのtanδが高いことは、当該変性ポリアミド重合体の柔軟性が向上したことを示す。また、-35℃でのtanδが高いことは、当該変性ポリアミド重合体の低温特性が向上したことを示す。以上の結果からも、マクロモノマー(すなわち、本末端変性ビニル系重合体)を共重合させた変性ポリアミド系重合体は、破断ひずみ等の物性が改善し、柔軟性や低温特性が向上し得ることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミドの物性を改善することができる。
図1