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特開2024-134537活性炭及びその製造方法、並びに装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134537
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】活性炭及びその製造方法、並びに装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/318 20170101AFI20240926BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240926BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240926BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C01B32/318
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041006
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023044762
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】千代 健文
(72)【発明者】
【氏名】宮路 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】馬場 悠平
【テーマコード(参考)】
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4G066AA05B
4G066AC01D
4G066AC02D
4G066AC07A
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA35
4G066CA10
4G066CA31
4G066CA56
4G066DA01
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA11
4G066FA18
4G066FA21
4G066FA27
4G066FA28
4G066FA37
4G066FA38
4G146AA06
4G146AB01
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC08B
4G146AC09B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD31
4G146BA32
4G146BB04
4G146BB05
4G146BC03
4G146BC23
4G146BC33B
4G146BC37B
4G146BD02
4G146BD06
4G146DA02
4G146DA05
(57)【要約】
【課題】圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れる活性炭及びその製造方法、並びに装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の活性炭は、下記(1)~(3)の要件を満たす。(1)圧壊強度が、5.0N以上である。(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、前記活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(3)の要件を満たす、活性炭。
(1)圧壊強度が、5.0N以上である。
(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。
(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、前記活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【請求項2】
下記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす、請求項1に記載の活性炭。
(4)硫黄原子の含有率が、0.01質量%以上5.0質量%以下である。
(5)-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積が、500m/g以上1300m/g以下である。
(6)空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が、5.0質量%以下である。
【請求項3】
前記(4)~(6)の要件を全て満たす、請求項2に記載の活性炭。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の活性炭を備える、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置を用いて、不純物、汚染物質、残留塩素、揮発性有機化合物(VOC)、及び着色成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む組成物から前記物質を除去する工程を含む、除去方法。
【請求項6】
下記(1)~(3)の要件を満たす活性炭を得る工程を有する、活性炭の製造方法。
(1)圧壊強度が、5.0N以上である。
(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。
(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、前記活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【請求項7】
粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、
前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、
前記成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、
前記酸処理工程で得られた酸処理された成型物を熱処理する工程と、を含む、請求項6に記載の活性炭の製造方法。
【請求項8】
粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、
前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、
前記成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、
前記酸処理工程で得られた酸処理された成型物を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で得られた乾燥物を熱処理する工程と、を含む、請求項6に記載の活性炭の製造方法。
【請求項9】
粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、
前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、
前記成型工程で得られた成型物を賦活処理する工程と、を含む、請求項6に記載の活性炭の製造方法。
【請求項10】
粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、
前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、
前記成型工程で得られた成型物を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で得られた乾燥物を賦活処理する工程と、を含む、請求項6に記載の活性炭の製造方法。
【請求項11】
前記活性炭が下記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす、請求項6~10のいずれか一項に記載の活性炭の製造方法。
(4)硫黄原子の含有率が、0.01質量%以上5.0質量%以下である。
(5)-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積が、500m/g以上1300m/g以下である。
(6)空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が、5.0質量%以下である。
【請求項12】
前記活性炭が前記(1)~(6)の全ての要件を満たす、請求項11に記載の活性炭の製造方法。
【請求項13】
前記増粘多糖類が、アルギン酸及びその塩、並びにカルボキシメチルセルロース及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7又は8に記載の活性炭の製造方法。
【請求項14】
前記増粘多糖類の配合量が、前記水100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である、請求項7又は8に記載の活性炭の製造方法。
【請求項15】
前記増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムを含む、請求項7又は8に記載の活性炭の製造方法。
【請求項16】
前記水溶性高分子が、リグニンスルホン酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の活性炭の製造方法。
【請求項17】
前記水溶性高分子の配合量が、前記粉末活性炭又は前記粉末炭素100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、請求項7~10のいずれか一項に記載の活性炭の製造方法。
【請求項18】
前記水溶性高分子が、リグニンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭及びその製造方法、並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、その比表面積に由来する、高い吸着容量を持つ吸着材である。原料及び炭化・賦活の製造条件によって多様な径の細孔を付与できることから、吸着される物質も多様である。そのため、従来、活性炭は、工業・民生分野において、不純物の吸着による精製や脱色、臭い成分の吸着による脱臭など、多岐に使用されている。近年は各種分野の技術の伸長に伴い、活性炭に対する要求性能も先鋭化している。更に、昨今の低環境負荷化の潮流もあり、環境中への有害物質放出を抑制する観点からも、より高機能な活性炭が求められている。そのため、様々な原料と炭化、賦活条件にて高機能な活性炭の検討が多くなされている。
【0003】
また、既存の粉末活性炭を原料とし、バインダーで成型固化することで目的の機能を付与した粒状の活性炭及び活性炭成型物も多く検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、熱可塑性樹脂と活性炭などの吸着材とを混合し、この混合物を射出成型することで成型物を得る技術が提案されている。
【0005】
特許文献2では、熱可塑性樹脂と活性炭などの吸着材粒子とを結合及び/又は接着することで吸着性成型物を得る技術が提案されている。
【0006】
特許文献3では、繊維状の活性炭粒子と多糖とを混合し、任意の形状に成型した後、加熱して多糖の熱不可逆ゲルを形成させることにより活性炭成型物を得る技術が提案されている。
【0007】
特許文献4では、粉末活性炭を繊維質バインダーと混合して成型してなる特定の活性炭成型物をハウジングに充填したカートリッジを備える浄水器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-237854号公報
【特許文献2】特表2012-508645号公報
【特許文献3】特開2007-269555号公報
【特許文献4】特開2017-136589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1乃至4のいずれにおいても、成型物が炭素以外にバインダー成分を含有するため、バインダー成分の耐熱性や耐薬品性に問題が生じる条件では使用することが難しい。例えば、特許文献1及び2に記載のバインダーは、有機溶剤中で劣化する。また、特許文献1乃至4に記載のいずれのバインダーも、例えば、200℃以上の高温条件下における常時使用では分解する。このことからも、特許文献1乃至4に記載の成型物は使用が難しい。
【0010】
更に、特許文献1乃至4のいずれにおいても、条件如何では時間経過と共に成型物の膨潤や溶解が発生し強度が低下する懸念がある。そのため、例えば、成型物を浄水器に適用する場合、エレメント成型時及び使用時において粒子が圧壊する問題がある。また、成型物をガス除去や触媒担体に適用する場合、使用中に粉末が飛散する問題がある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れる活性炭及びその製造方法、並びに装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねてきた結果、原料として、粉末活性炭と増粘多糖類と水溶性高分子と水とを用いて、それらの原料を混錬及び成型し、得られた成型物に対して酸処理及び熱処理を行うことで得られる活性炭が、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
また、本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねてきた結果、原料として、粉末活性炭又は粉末炭素と水溶性高分子と水とを用いて、それらの原料を混錬及び成型し、得られた成型物に対して賦活処理を行うことで得られる活性炭が、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の実施態様を含む。
【0015】
[1]下記(1)~(3)の要件を満たす、活性炭。(1)圧壊強度が、5.0N以上である。(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、前記活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【0016】
[2]下記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす、[1]に記載の活性炭。(4)硫黄原子の含有率が、0.01質量%以上5.0質量%以下である。(5)-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積が、500m/g以上1300m/g以下である。(6)空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が、5.0質量%以下である。
【0017】
[3]前記(4)~(6)の要件を全て満たす、[2]に記載の活性炭。
【0018】
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載の活性炭を備える、装置。
【0019】
[5][4]に記載の装置を用いて、不純物、汚染物質、残留塩素、揮発性有機化合物(VOC)、及び着色成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む組成物から前記物質を除去する工程を含む、除去方法。
【0020】
[6]下記(1)~(3)の要件を満たす活性炭を得る工程を有する、活性炭の製造方法。(1)圧壊強度が、5.0N以上である。(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、前記活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【0021】
[7]粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、前記成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、前記酸処理工程で得られた酸処理された成型物を熱処理する工程と、を含む、[6]に記載の活性炭の製造方法。
【0022】
[8]粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、前記成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、前記酸処理工程で得られた酸処理された成型物を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で得られた乾燥物を熱処理する工程と、を含む、[6]に記載の活性炭の製造方法。
【0023】
[9]粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、前記成型工程で得られた成型物を賦活処理する工程と、を含む、[6]のいずれかに記載の活性炭の製造方法。
【0024】
[10]粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、前記混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、前記成型工程で得られた成型物を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で得られた乾燥物を賦活処理する工程と、を含む、[6]に記載の活性炭の製造方法。
【0025】
[11]前記活性炭が下記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす、[6]~[10]のいずれか1つに記載の活性炭の製造方法。(4)硫黄原子の含有率が、0.01質量%以上5.0質量%以下である。(5)-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積が、500m/g以上1300m/g以下である。(6)空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が、5.0質量%以下である。
【0026】
[12]前記活性炭が前記(1)~(6)の全ての要件を満たす、[11]に記載の活性炭の製造方法。
【0027】
[13]前記増粘多糖類が、アルギン酸及びその塩、並びにカルボキシメチルセルロース及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[7]又は[8]に記載の活性炭の製造方法。
【0028】
[14]前記増粘多糖類の配合量が、前記水100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である、[7]、[8]、又は[13]に記載の活性炭の製造方法。
【0029】
[15]前記増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムを含む、[7]、[8]、[13]、又は[14]に記載の活性炭の製造方法。
【0030】
[16]前記水溶性高分子が、リグニンスルホン酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[7]~[15]のいずれか1つに記載の活性炭の製造方法。
【0031】
[17]前記水溶性高分子の配合量が、前記粉末活性炭又は前記粉末炭素100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、[7]~[16]のいずれか1つに記載の活性炭の製造方法。
【0032】
[18]前記水溶性高分子が、リグニンスルホン酸ナトリウムを含む、[7]~[17]のいずれかに記載の活性炭の製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れる活性炭及びその製造方法、並びに装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0035】
[活性炭]
本実施形態の活性炭は、下記(1)~(3)の要件を満たす。
(1)圧壊強度が、5N以上である。
(2)30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。
(3)熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃までの質量減少率(以下、単に「500℃までの質量減少率」とも称する)、及び熱質量示差熱分析装置を用いて測定される、不活性ガス雰囲気下、500℃以上800℃以下における質量減少率(以下、単に「500℃以上800℃以下における質量減少率」とも称する)が、活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。
【0036】
活性炭が、このような特定の要件を備えることにより、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に優れる。このような活性炭は、酸、アルカリ、及び有機溶剤のいずれに晒されても圧壊強度を維持できる傾向にある。そのため、活性炭を、カラム、カートリッジ、吸着塔、フィルター、及びシート(以下、単に「カラム等」とも称する)に充填して使用する場合において、例えば、高温かつ低pHなどの過酷な条件においても、吸着材としての機能を維持できる傾向にある。
【0037】
活性炭は、原料として、粉末活性炭と増粘多糖類と水溶性高分子と水とを用いて、それらの原料を混錬及び成型し、得られた成型物を酸処理及び熱処理を行うことで得られる。また、活性炭は、原料として、粉末活性炭又は粉末炭素と水溶性高分子と水とを用いて、それらの原料を混錬及び成型し、得られた成型物を、賦活処理を行うことで得られる。このような活性炭は、例えば、従来、粉末形態でしか使用できなかった木質系の活性炭粉末を含め、原料として任意の粉末活性炭又は粉末炭素を用いることが可能となり、炭素の熱的あるいは化学的安定性に基づいて、様々な目的に安定に使用することができる。
【0038】
活性炭は、圧壊強度が5N以上である。そのため、活性炭を、例えば、ガス、水、油、及び有機溶剤に浸透させても、崩壊し難い傾向にある。例えば、粉末状や、強度及び耐久性に劣る活性炭は、圧壊強度が5N未満である傾向にあり、そのような活性炭を、カラム等に充填すると、崩壊に伴い通気又は通液抵抗が高くなる。そのため、活性炭の充填量が制限されるおそれがある。一方、本実施形態の活性炭は、圧壊強度が5N以上であることで、カラム等に高い充填量で充填することが可能となる。そのため、本実施形態の活性炭を用いることで、高い吸着性能を有するカラム等を得ることができ、例えば、排ガス、廃液、及び排水中に含まれる汚染物質等の除去や、処理を容易に行うことができる。なお、圧壊強度の上限は、特に限定されないが、例えば、100N以下である。本実施形態において、圧壊強度は、例えば、木屋式硬度計などの公知の硬度計を用いて測定される。具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0039】
本発明による目的をより有効かつ確実に達成する観点から、活性炭の圧壊強度は、10N以上50N以下であることが好ましく、15N以上48N以下であることがより好ましく、20N以上47N以下であることが更に好ましい。
【0040】
活性炭は、30nm以下の径を有する全細孔容積が、0.3mL/g以上1.2mL/g以下である。全細孔容積が0.3mL/g以上であると、活性炭の製造過程において、原料の水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化をより好適に抑制でき、細孔へのガス吸着をより好適に制御できる傾向にある。全細孔容積が1.2mL/g以下であると、活性炭の製造過程において、原料の水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化をより十分に行うことができ、そのうえ、活性炭中に含まれる粉末活性炭粒子もより十分な強度を維持できる傾向にある。そのため、全細孔容積が上記範囲にあると、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる。本実施形態において、全細孔容積は、窒素吸着法を用いて測定される。具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0041】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にあることから、全細孔容積は、0.4mL/g以上1.1mL/g以下であることが好ましく、0.5mL/g以上0.9mL/g以下であることがより好ましい。
【0042】
活性炭は、500℃までの質量減少率、500℃以上800℃以下における質量減少率が、活性炭を不活性ガス雰囲気下、115℃で3時間保持した際の乾燥質量に対して、それぞれ5.0質量%以下、及び1.0質量%以上25質量%以下である。そのため、活性炭は、例えば、500℃までの使用条件に耐え得る傾向にある。例えば、従来の有機バインダーを含む活性炭成型物は、500℃までの質量減少率が5.0質量%を超えることや、500℃以上800℃以下における質量減少率が1.0質量%以上25質量%以下の範囲にない傾向にある。そのような活性炭をカラム等に充填すると、使用温度が、例えば、200℃に達した場合、活性炭は崩壊するおそれがある。一方、本実施形態の活性炭は、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率が、それぞれ特定の範囲にあることで、カラム等に充填しても、使用温度が、例えば、500℃程度まで活性炭は安定し、耐える傾向にある。そのため、本実施形態の活性炭は、例えば、高温での廃油処理や、触媒用途に用いることができる。
【0043】
500℃までの質量減少率の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上である。本実施形態において、500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率は、熱質量示差熱分析装置を用いて測定及び算出される。具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。なお、不活性ガスとしては、窒素を用いることが好ましい。
【0044】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、500℃までの質量減少率は、0.1質量%以上4.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上4.3質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、500℃以上800℃以下における質量減少率は、3.0質量%以上24質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。500℃以上800℃以下における質量減少率の下限は、5.0質量%以上であることがより好ましい。
【0046】
活性炭は、下記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たすことが好ましい。
(4)硫黄原子の含有率が、0.01質量%以上5.0質量%以下である。
(5)-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積が、500m/g以上1300m/g以下である。
(6)空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が、5.0質量%以下である。
【0047】
そのような活性炭は、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる傾向にある。圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にあることから、活性炭は、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を満たすことが好ましく、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも2つの要件を満たすことがより好ましく、上記(1)~(6)の要件の全てを満たすことがより好ましい。
【0048】
活性炭において、硫黄原子の含有率は、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。硫黄原子の含有率が上記範囲にあると、活性炭の製造過程において、原料の水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化をより十分に行うことができ、水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化をより好適に抑制できる傾向にある。そのため、水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化反応がより過不足なく進行することから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。本実施形態において、硫黄原子の含有率は、例えば、原子吸光光度計、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)、イオンクロマトグラフ(IC)、及びエネルギー分散型X線分析(EDX)等の公知の分析装置を用いて測定及び算出される。具体的な測定及び算出方法は、実施例を参照すればよい。
【0049】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にあることから、硫黄原子の含有率は、0.05質量%以上4.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
活性炭において、-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積は、500m/g以上1300m/g以下であることが好ましい。比表面積が上記範囲にあると、活性炭の製造過程において、原料の水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化をより十分に行うことができ、水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化をより好適に抑制できる傾向にある。そのため、水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化反応がより過不足なく進行することから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。本実施形態において、比表面積は、-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる。具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0051】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にあることから、活性炭の比表面積は、550m/g以上1250m/g以下であることが好ましく、600m/g以上1200m/g以下であることがより好ましい。活性炭の比表面積は、550m/g以上1000m/g以下であってもよく、600m/g以上800m/g以下であってもよい。
【0052】
活性炭は、空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が5.0質量%以下であることが好ましい。強熱残分が上記範囲にあると、活性炭を、例えば、ガス、水、油、及び有機溶剤に浸透させても、溶出物の発生が極めて少ない傾向にある。例えば、従来の石炭活性炭は、空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が5.0質量%を超える傾向にあり、そのような石炭活性炭をカラム等に充填すると、ガスや溶媒の種類によっては溶出物を生じ、製品汚染などの弊害が発生しうる傾向にある。一方、本実施形態の活性炭は、空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分が5.0質量%以下であることで、カラム等に充填しても溶出物を生じ難く、製品汚染などの発生し難いカラム等を得ることができる傾向にある。そのため、本実施形態の活性炭を用いることで、例えば、浄水器や食用油の精製などを安全に行うことができる傾向にある。強熱残分の下限は、特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上である。本実施形態において、強熱残分は、空気中、850℃において、活性炭を公知の方法により灰化することで測定される。具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0053】
圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、強熱残分は、0.01質量%以上4.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
活性炭の形状は、用途によっても異なり、特に限定されない。そのような形状としては、例えば、円柱、楕円柱、楕円錐台、並びに三角柱、四角柱、五角柱、及び六角柱などの多角柱などの棒状、ペレット状、基板状(シート状)、及びブロック状等が挙げられる。例えば、カラム等に用いる場合には、その形状は、円柱形状であることが好ましい。本明細書において、「円柱形状」とは、幾何学的に厳密な円柱である必要はなく、円柱における中心軸に対して垂直な平面での断面形状(以下、単に「断面形状」という。)が、卵形、直円形、及び楕円形である柱体形状を包含し、円柱が多少湾曲したり、円柱の表面が多少凹凸を有していたりするものも包含する。なお、本明細書において、直円形又は楕円形としては、例えば、その形状の長軸と短軸との比(長軸/短軸)が3以下のものを意味する。断面形状としては、カラム等に活性炭をより高密度で充填することが可能となることから、円形、及び楕円形が好ましい。
【0055】
活性炭が円柱形状である場合には、その断面形状の直径の長さは、用途によっても異なるが、例えば、カラム等に用いる場合には、通常、1.0mm以上10.0mm以下程度である。なお、本明細書において、「直径」とは、断面形状が、円形の場合、その円形の直径を意味する。一方、断面形状が、卵形、長円形又は楕円形の場合、「直径」とは、それらの形状において、最も長い方向(即ち、長軸方向)を意味する。なお、本明細書において、「円形」とは、真円に加えて、卵形、直円形、及び楕円形も包含する。
【0056】
活性炭が円柱形状である場合には、その円柱における長手方向の長さは、用途によっても異なるが、例えば、カラム等に用いる場合には、通常、1.0mm以上20.0mm以下程度である。
【0057】
活性炭の形状がペレット状である場合、その平面視形状は、例えば、カラム等に適用可能な形状とすることができる。そのような形状としては、例えば、平面視で、円状、楕円状、矩形状、棒状、及び歪曲状等が挙げられる。活性炭の形状がペレット状である場合、その厚さも特に限定されず、カラム等に適用される公知の吸着材を参考にすることができる。厚さとしては、カラム等に適用できるような厚さであることが好ましく、通常100μm以上10000μm以下である。
【0058】
活性炭の形状が円柱ペレット状である場合、ペレットの直径が2.0mm以上10mm以下であり、アスペクト比が1:1~1:10であることが好ましい。このようなペレットは、カラム等における吸着材として好適である。本明細書において、アスペクト比は、1個の活性炭の直径と高さとの比、すなわち、活性炭の直径:活性炭の高さを意味する。アスペクト比は、活性炭を無作為に30個採取し、これらの活性炭のアスペクト比の平均値を意味する。
【0059】
活性炭は、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を熱処理する工程と、を経て得られることが好ましい。また、活性炭は、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた乾燥物を熱処理する工程と、を経て得られることも好ましい。更に、活性炭は、粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を賦活処理する工程と、を経て得られることも好ましい。そのような特定の工程によれば、上記(1)~(3)の要件を満たす活性炭をより好ましく得ることができる。また、そのような特定の工程によれば、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を満たす活性炭をより好ましく得ることができ、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも2つの要件を満たす活性炭を更に好ましく得ることができ、上記(1)~(6)の要件の全てを満たす活性炭を特に好ましく得ることができる。そのため、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭をより好ましく得ることができる。
【0060】
〔混錬工程〕
活性炭は、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程を経て得られることが好ましい。また、活性炭は、粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程を経て得られることも好ましい。
【0061】
混錬工程は、公知の方法を採用できる。そのような方法としては、例えば、ブレンダー、パドルミキサー、ニーダーミキサー、スクリューミキサー、ヘンシェルミキサー、及び円錐形ミキサーなどを用いて、各成分を混錬する方法が挙げられる。混錬工程における温度は通常常温であり、手で握れる状態となるまで混錬すればよい。
【0062】
混錬温度は、例えば、5℃以上50℃以下とすることができる。混練時間は、例えば、5分間以上60分間以下とすることができる。
【0063】
(粉末活性炭)
活性炭の原料として使用される粉末活性炭は、特に限定されず、種々のものを使用できる。粉末活性炭としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻などの果実殻、パーム核、梅、及び桃等の種子、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜、石炭(泥炭、亜炭、褐炭、及び瀝青炭など)、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、及びコールタールなどの植物系原料又は化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びポリアミド樹脂などの各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、及びポリクロロプレンなどの合成ゴム;その他合成木材;合成パルプなどを原料とする粉末活性炭などが挙げられる。これらの粉末活性炭の原料は、単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、これらの中でも、木粉、及びヤシ殻を原料とする粉末活性炭が好ましい。
【0064】
粉末活性炭には、必要に応じて、添加剤等を含んでもよい。また、添加剤等は、必要に応じて、活性炭に加えてもよい。このような添加剤等としては、水、コールタール、無水タール、硬質ピッチ、コールタール系ピッチ、及び石油系ピッチが挙げられる。添加剤等は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。添加剤等は、それぞれ、原料又は活性炭100質量部に対して、通常1質量部以上50質量部以下で配合される。原料又は活性炭と、添加剤と、を混合するに際しては、必要に応じて、予め原料又は活性炭の酸素量を、原料又は活性炭100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下の範囲で調節してもよい。酸素量は、例えば、150℃以上300℃以下の加熱下で、原料又は活性炭と、酸素と、を混合することで調節できる。
【0065】
粉末活性炭は、必要に応じて炭化又は不融化した後、賦活処理した活性炭であってもよい。炭化方法、不融化方法、及び賦活方法は、特に限定されず、慣用の方法が利用できる。賦活方法としては、例えば、賦活ガス中において、炭素原料又はその炭化物若しくは不融化物を500℃以上1000℃以下程度で熱処理するガス賦活法、並びに炭素原料又はその炭化物若しくは不融化物を賦活剤と混合し、300℃以上800℃以下程度で熱処理する化学的賦活法などが挙げられる。賦活ガスとしては、例えば、水蒸気及び二酸化炭素が挙げられる。賦活剤としては、例えば、リン又は硫黄酸、塩化亜鉛、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。賦活処理して得られる活性炭は、そのまま使用してもよい。また、賦活処理して得られる活性炭は、酸や水による洗浄、熱処理、及び乾燥を行い、活性炭の付着成分、及び表面官能基などを除去して使用してもよい。
【0066】
粉末活性炭の平均粒子径(D50)は、通常0.1μm以上1000μm以下程度である。圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、粉末活性炭の平均粒子径(D50)は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。粉末活性炭の平均粒子径(D50)が上記範囲にあると、粒子表面積が好適となり、水溶性高分子の配合量を好適に調整できる傾向にある。そのため、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にある。本明細書において、平均粒子径(D50)は、レーザー回折光散乱法粒度分布測定装置を用いて、体積基準のメジアン径として測定される。また、平均粒子径(D50)が所望の範囲にある粉末活性炭又は粉末炭素は、例えば、篩や分級などにより得ることができる。
【0067】
これらの粉末活性炭は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。また、熱処理後の炭素が80質量%を下回らない限り、粉末活性炭以外の成分を、活性炭としての要求仕様に応じて適宜混合してもよい。
【0068】
粉末活性炭は、水などの溶媒に分散させたスラリーの状態で用いてもよい。例えば、溶媒として水を用いる場合、スラリー中の粉末活性炭の含有量は、水100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。活性炭の原料としてスラリーを用いると、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0069】
粉末活性炭と増粘多糖類との配合比は、質量比で、粉末活性炭:増粘多糖類が30:70~97:3であることが好ましく、50:50~95:5であることがより好ましい。粉末活性炭の配合量が30質量部以上であると、活性炭がより硬化し、脆化するおそれが少なくなる傾向にある。また、粉末活性炭の配合量が97質量部以下であると、活性炭の吸着容量が多くなる傾向にある。配合比が上記範囲にあると、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0070】
(粉末炭素)
活性炭の原料として使用される粉末炭素は、特に限定されず、種々のものを使用できる。粉末炭素としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻などの果実殻、パーム核、梅、及び桃等の種子、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜、石炭(泥炭、亜炭、褐炭、及び瀝青炭など)、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、及びコールタールなどの植物系原料又は化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びポリアミド樹脂などの各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、及びポリクロロプレンなどの合成ゴム;その他合成木材;合成パルプなどを原料とする炭化物を粉砕したものが挙げられる。これらの粉末炭素の原料は、単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、これらの中でも、木粉、石炭、及びヤシ殻を原料とする粉末炭素が好ましい。
【0071】
粉末炭素には、必要に応じて、添加剤等を含んでもよい。また、添加剤等は、必要に応じて、活性炭に加えてもよい。このような添加剤等及びその配合量、並びに原料又は活性炭と添加剤とを混合する際の酸素量の調節については、上記の粉末活性炭で例示する添加剤等及び配合量を参照すればよい。
【0072】
粉末炭素は、必要に応じて炭化又は不融化した粉末炭素であってもよい。炭化方法、及び不融化方法は、特に限定されず、慣用の方法が利用できる。
【0073】
粉末炭素の平均粒子径(D50)は、通常0.1μm以上1000μm以下程度である。圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、粉末炭素の平均粒子径(D50)は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。粉末炭素の平均粒子径(D50)が上記範囲にあると、粒子表面積が好適となり、水溶性高分子の配合量を好適に調整できる傾向にある。そのため、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0074】
これらの粉末炭素は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。また、賦活処理後の炭素が80質量%を下回らない限り、粉末炭素以外の成分を、活性炭としての要求仕様に応じて適宜混合してもよい。
【0075】
(増粘多糖類)
活性炭の原料として使用される増粘多糖類は、特に限定されず、天然由来品及び合成品のいずれも使用することができる。このような増粘多糖類としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、アラビアガム、スクシノグリカン、ガードラン、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、タマリン又は硫黄ドシードガム、プルラン、大豆多糖類、ゼラチン、寒天、及びプロピレングリコール等が挙げられる。これらの増粘多糖類は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩などの塩であってもよい。塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩が好ましい。
【0076】
これらの増粘多糖類は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。また、本実施形態では、増粘多糖類以外の成分を、活性炭としての要求仕様に応じて適宜混合してもよい。
【0077】
これらの中でも、増粘多糖類としては、粉末活性炭の表面と馴染みやすいことから、カルボキシ基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する増粘多糖類が好ましい。このような増粘多糖類としては、例えば、アルギン酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、アラビアガム、及びスクシノグリカンが挙げられる。これらの中でも、増粘多糖類は、アルギン酸及びその塩、並びにカルボキシメチルセルロース及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、アルギン酸塩及びカルボキシメチルセルロース塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが更に好ましく、アルギン酸ナトリウムを含むことが更により好ましい。塩としては、上記の塩を参照してもよい。塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩が好ましい。これらの増粘多糖類は、粉末活性炭の表面と一層馴染みやすく、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れ、優れた耐久性も有する活性炭が得られる傾向にある。
【0078】
増粘多糖類の配合量は、水100質量部に対して、5.0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、7.0質量部以上27質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上25質量部以下であることが更に好ましい。増粘多糖類の配合量が上記範囲にあると、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0079】
(水溶性高分子)
活性炭の原料として使用される水溶性高分子は、天然由来品及び合成品のいずれも使用することができる。天然由来品としては、例えば、でんぷん、メチルセルロース、リグニンスルホン酸及びその塩などの植物由来品や、タンパク質、コラーゲン、リン又は硫黄脂質などの動物由来品が挙げられる。合成品としては、例えば、フェノール樹脂及びアクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩が好ましい。
【0080】
これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。また、本実施形態では、水溶性高分子以外の成分を、活性炭としての要求仕様に応じて適宜混合してもよい。
【0081】
これらの中でも、水溶性高分子としては、熱処理後に残る炭素量が多いほど、より優れた圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性を有すると共に、より優れた耐久性も有する活性炭が得られる傾向にあることから、リグニンスルホン酸及びその塩、並びにフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。それらの中でも、水溶性高分子は、リグニンスルホン酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、リグニンスルホン酸塩を含むことが更に好ましく、リグニンスルホン酸ナトリウムを含むことが更により好ましい。リグニンスルホン酸及びその塩は、熱処理後に残る炭素量がより多いため、更に優れた圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性を有すると共に、より優れた耐久性も有する活性炭が得られる傾向にある。また、リグニンスルホン酸及びその塩は、活性炭の全細孔を閉塞する懸念が少なく、天然由来品であることから環境への負荷も低減できる傾向にある。
【0082】
水溶性高分子の配合量は、粉末活性炭又は粉末炭素100質量部に対して、好ましくは10質量部以上150質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上130質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以上100質量部以下であり、更により好ましく30質量部以上80質量部以下である。水溶性高分子の配合量が上記範囲にあると、粉末活性炭又は粉末炭素をより十分に固化することができることから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れた活性炭が得られる傾向にある。また、熱処理後又は賦活処理後に残る水溶性高分子由来の炭素を好適に制御でき、優れた吸着性能を有する活性炭が得られる傾向にある。
【0083】
(水)
水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。
【0084】
(添加剤)
混錬工程では、添加剤を更に加えてもよい。そのような添加剤としては、例えば、炭酸ナトリウムが挙げられる。混錬工程において、炭酸ナトリウムを加えることで、混錬中の水溶性高分子や増粘多糖類のプロトン化による粘度低下が起こり難くなり、より好適な粘度を有する混錬物が得られる傾向にある。
【0085】
〔成型工程〕
活性炭は、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程を経て得られることが好ましい。
【0086】
成型方法は、特に限定されず、活性炭に要求される品質に応じて、公知の条件を採用できる。例えば、形状が円柱形状及びペレット状の活性炭を得る場合、形状及びサイズなどを適宜設定し、押出成型すればよい。
【0087】
押出成型機としては、特に限定されず、公知の押出成型機を用いることができる。そのような成型機としては、例えば、内部に混練用の羽根やスクリューを備えた多軸押出成型装置が挙げられる。また、ペレット状の活性炭を得る場合、例えば、ディスクペレタイザーなどの押出造粒機を用いてもよい。
【0088】
成型工程後には、成型物を、洗浄及び/又は乾燥してもよい。これらの条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。なお、乾燥処理については、後記の乾燥工程を参照してもよい。
本実施形態においては、成型物を洗浄及び乾燥せずに、そのまま成型物を次の酸処理工程に供してもよい。そのような成型物を用いると、下記の酸処理工程において、成型物中に水素イオンがより効率的に浸透しやすく、原料の増粘多糖類がより硬化しやすくなるため、稠密な活性炭がより得られる傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0089】
〔酸処理工程〕
活性炭は、成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程を経て得られることが好ましい。酸処理方法は、特に限定されず、活性炭に要求される品質に応じて、公知の条件を採用できる。酸処理工程を経ることで、成型物中の増粘多糖類が水素イオンによって硬化することから、下記の熱処理工程において、増粘多糖類の炭素化反応がより過不足なく進行し、稠密な活性炭がより得られる傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭を得ることができる。
【0090】
酸としては、特に限定されず、鉱酸、及び有機酸などいずれの酸を用いてもよい。鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び炭酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、一塩基酸(例えば、酢酸、乳酸、及びグルコン酸など)、二塩基酸(例えば、マレイン酸、及びフマル酸など)、並びに多塩基酸(例えば、酒石酸など)が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いることもでき、要求仕様に応じて、2種以上を任意の比率で混合して使用することもできる。
【0091】
酸としては、鉱酸が好ましく、塩酸がより好ましい。これらの酸は、成型物中に浸透しやすく、増粘多糖類の硬化をより迅速に引き起こすことが可能となることから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0092】
酸は、成型物に対して、1質量倍以上20質量倍以下で用いることが好ましく、5質量倍以上15質量倍以下で用いることがより好ましい。酸の使用量が上記範囲にあることで、酸が成型物中により浸透しやすく、増粘多糖類の硬化を更に迅速に引き起こすことが可能となることから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0093】
酸処理方法としては、特に限定されず、活性炭に要求される品質に応じて、公知の条件を採用できる。そのような方法としては、例えば、成型物を酸に浸漬して酸処理する方法や、成型物に対して酸をスプレーして酸処理する方法が挙げられる。
【0094】
酸処理温度は、通常20℃以上70℃以下程度である。酸処理時間は、酸処理温度にもよるが、十分な酸処理と生産性とを考慮すると、1分間以上20時間以下程度が好ましく、5分間以上18時間以下程度がより好ましい。
【0095】
〔乾燥工程〕
活性炭は、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を乾燥する乾燥工程を経て得られることが好ましい。
【0096】
乾燥方法としては、特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、及び熱風乾燥などの公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥方法としては、加熱及び/又は減圧する方法が好ましい。加熱にて乾燥する方法としては、乾燥ムラがなく、安定して乾燥できる点から、熱風による乾燥方法が好ましい。乾燥条件については、成型物の水分率が、20質量%以下になるまで乾燥することが好ましく、より好ましくは10質量%以下になるまで乾燥することである。
【0097】
加熱方法としては、例えば、静置型の定温乾燥機;静置型の熱風乾燥機;真空乾燥機;回転式のエバポレーター;コニカルドライヤー、ナウタードライヤー等の混合式の乾燥機等による加熱方法が挙げられる。加熱温度は、成型物が硬化し、かつ、融解しない温度であればよく、例えば、40℃以上900℃以下が好ましい。加熱温度は、300℃以下であってもよい。また、加熱方法は、室温(25℃)から上記の加熱温度まで、加熱温度を段階的に昇温させる方法であってもよい。
【0098】
減圧方法としては、例えば、オイルポンプ、オイルレスポンプ、及びアスピレータ等を用いた減圧方法が挙げられる。減圧方法における圧力は、通常0.00001MPa以上0.05MPa以下である。
【0099】
乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常1分間以上20時間以下程度である。
【0100】
〔熱処理工程〕
活性炭は、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を熱処理する工程を経て得られることが好ましい。また、乾燥工程を経る場合、活性炭は、乾燥工程で得られた乾燥物を熱処理する工程を経て得られることが好ましい。
【0101】
熱処理工程を経ることで、水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化反応が十分に進行し、原料の粉末活性炭粒子をより強固に結着させることができ、水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化がより進行し難い。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭を得ることができる。
【0102】
熱処理工程は、増粘多糖類と水溶性高分子とを炭素化させる工程であり、活性炭に要求される品質に応じて、公知の熱処理方法を用いることができる。そのような熱処理方法としては、例えば、ボックス型熱処理炉などの電気炉を用いて行う方法が挙げられる。
【0103】
熱処理温度としては、増粘多糖類と水溶性高分子とが炭素化し、活性炭の全体に占める炭素の割合が、活性炭100質量%に対して、90質量%を越えるように加熱することが好ましい。熱処理温度としては、400℃以上1000℃以下であることがより好ましく、450℃以上950℃以下であることが更に好ましい。熱処理温度が上記範囲にあると、水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化反応がより十分に進行し、原料の粉末活性炭粒子を更に強固に結着させることができ、水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化が更に進行し難い傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0104】
熱処理時間は、10分間以上4時間以下であることが好ましく、30分間以上2時間以下であることがより好ましい。熱処理温度が上記範囲にあると、水溶性高分子及び増粘多糖類の炭素化反応がより十分に進行し、原料の粉末活性炭粒子を更に強固結着させることができ、過度の水溶性高分子及び増粘多糖類のガス化も更に進行し難いと傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0105】
熱処理の雰囲気としては、空気でも窒素でもよいが、例えば、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、窒素気流下が好ましい。
【0106】
〔賦活処理工程〕
活性炭は、成型工程で得られた成型物を賦活処理する工程を経て得られることも好ましい。また、乾燥工程を経て賦活処理する場合、活性炭は、乾燥工程で得られた乾燥物を賦活処理する工程を経て得られることが好ましい。なお、乾燥工程は、上記の乾燥工程を参照すればよい。
【0107】
賦活処理工程を経ることで、活性炭としての性能が向上すると共に水溶性高分子の炭素化反応が十分に進行して原料の粉末炭素粒子をより強固に結着させることができる。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭を得ることができる。
【0108】
賦活処理工程は、粉末活性炭又は粉末炭素に細孔を形成すると共に水溶性高分子を炭素化させる工程であり、活性炭に要求される品質に応じて、公知の賦活処理方法を用いることができる。そのような賦活処理方法としては、例えば、ロータリーキルンや流動炉などを用いる方法が挙げられる。
【0109】
賦活処理温度としては、粉末活性炭又は粉末炭素に細孔が付与され、かつ水溶性高分子が炭素化するように加熱することが好ましい。賦活温度としては、500℃以上1000℃以下であることがより好ましく、770℃以上970℃以下であることが更に好ましい。賦活処理温度が上記範囲にあると、粉末活性炭又は粉末炭素に細孔が形成され、かつ水溶性高分子の炭素化反応がより十分に進行し、原料の粉末活性炭又は粉末炭素粒子を更に強固に結着させることができる傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にある。また、賦活処理は、室温(25℃)から上記の賦活温度まで、賦活温度を段階的に昇温させながら処理を行ってもよい。
【0110】
賦活処理時間は、10分間以上24時間以下であることが好ましく、30分間以上12時間以下であることがより好ましい。賦活処理時間が上記範囲にあると、粉末活性炭又は粉末炭素に細孔が形成され、かつ水溶性高分子の炭素化反応がより十分に進行し、原料の粉末活性炭又は粉末炭素粒子を更に強固に結着させることができる傾向にある。そのことから、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性に更に優れる活性炭が得られる傾向にある。
【0111】
賦活処理の雰囲気としては、水蒸気又は二酸化炭素を含む雰囲気であることが好ましい。例えば、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭が得られる傾向にあることから、水蒸気気流下が好ましい。
【0112】
このようにして得られた活性炭は、そのまま用いてもよいし、カラム等における吸着材として要求される品質に応じて、破砕、粉砕、及び分級による粒子サイズの調節;例えば、水、有機溶剤、酸水溶液、及びアルカリ水溶液を用いた、追加の洗浄による高純度化;追加の熱処理を用いた耐久性付与及び構造調整を実施して、活性炭を得てもよい。
【0113】
[活性炭の製造方法]
本実施形態の活性炭の製造方法としては、例えば、まず、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子とを、それぞれ粉末等の固形のまま所定量配合、及び混合し、その混合物に水を加えて撹拌した後、成型し、乾燥せずに酸処理する方法;粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水とを、それぞれ所定量添加して、混合及び撹拌後、成型し、乾燥せずに酸処理する方法が挙げられる。成型の際、酸処理用の酸を加えて成型してもよいし、成型物を得た後に、乾燥させないまま成型物を酸と接触させてもよい。
その後、増粘多糖類と水溶性高分子とを炭素化するために高温で熱処理することで、活性炭を得ることができる。この熱処理の前に、酸処理をした成型物を乾燥させてもよいし、乾燥させずに直接熱処理を行うこともできる。
【0114】
本実施形態の活性炭の別の製造方法としては、例えば、まず、粉末活性体又は粉末炭素と、水溶性高分子とを、それぞれ粉末等の固形のまま所定量配合、及び混合し、その混合物に水を加えて撹拌した後、成型する方法が挙げられる。その後、粉末活性炭又は粉末炭素に細孔を形成しつつ水溶性高分子を炭素化するために高温で賦活処理することで、活性炭を得ることができる。賦活処理の際、成型物を得た後、その成型物を乾燥させた成型物に対して賦活処理を行ってもよい。
【0115】
活性炭の製造方法は、上記(1)~(3)の要件を満たす活性炭を得る工程を有することが好ましく、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす活性炭を得る工程を有することがより好ましく、上記(1)~(3)の要件と共に、上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも2つの要件を更に満たす活性炭を得る工程を有することが更に好ましく、上記(1)~(6)の要件の全てを満たす活性炭を得る工程を有することがより更に好ましい。活性炭の製造方法は、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を熱処理する工程と、を含むことがより好ましい。また、活性炭の製造方法は、粉末活性炭と、増粘多糖類と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を酸処理する酸処理工程と、酸処理工程で得られた酸処理された成型物を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた乾燥物を熱処理する工程と、を含むことがより好ましい。また、活性炭の製造方法は、粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を賦活処理する賦活処理工程と、を含むことがより好ましい。活性炭の製造方法は、粉末活性炭又は粉末炭素と、水溶性高分子と、水と、を混練する混錬工程と、混錬工程で得られた混練物を成型する成型工程と、成型工程で得られた成型物を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた乾燥物を賦活処理する賦活処理工程と、を含むことが好ましい。そのような特定の工程によれば、上記(1)~(3)の要件を満たす、好ましくは上記(1)~(3)の要件と共に上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの要件を更に満たす、より好ましくは上記(1)~(3)の要件と共に上記(4)~(6)からなる群より選ばれる少なくとも2つの要件を更に満たす、更に好ましくは上記(1)~(6)の要件を全て満たす、活性炭を更に好ましく得ることができる。そのため、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭を更に好ましく得ることができる。
【0116】
活性炭における上記(1)~(6)の要件、及び活性炭の製造方法における各工程の詳細については、乾燥工程も含めて、上述のとおりである。
【0117】
本実施形態の製造方法は、酸処理工程の後に、必要に応じて、公知の方法によって、破砕、粉砕、及び分級による粒子サイズの調節工程、例えば、水、有機溶剤、酸水溶液、及びアルカリ水溶液を用いた、追加の洗浄による高純度化する工程、追加の熱処理を用いた耐久性を付する工程、及び追加の熱処理を用いた構造を調整する工程を含んでもよい。本実施形態の製造方法はそれらの工程を含むことで、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性により優れる活性炭を更により好ましく得ることができる。
【0118】
[用途]
本実施形態の活性炭は、圧壊強度、耐熱性、及び耐薬品性を必要とする様々な用途に好適に用いることができる。そのような用途としては、例えば、浄水器、排水処理、廃油処理、油脂精製、空気清浄機、ガス除去、並びに触媒及びその担体が挙げられる。活性炭は、安定して長期間使用でき、崩壊するおそれが非常に少ない。そのため、活性炭は、例えば、酸、アルカリ、及び有機溶剤に晒されても、また、高温条件下においても、長期間に亘って安定に使用することができる。
【0119】
より具体的には、活性炭は、下記の用途に好適である。
(1)浄水器:家庭用浄水器エレメント;工業用浄水器エレメント。
(2)排水処理:トリクロロエタンのような有機塩素含有廃液及び排水;水族館及び陸上養殖場の循環水処理;有機窒素含量が高い養豚屎尿排水;鉛、六価クロム、ニッケル、水銀、亜鉛、カドミウム、及びセレン等の重金属含有廃液;水溶性タンパク含量が高い乳製品製造工場、水産加工処理場、及び屠殺場からの廃液及び排水;例えば、P(リン)、S(硫黄)、及びN(チッソ)を含有する河川、湖沼、工場の各排水、パルプ工場廃液及び排水、写真現像に伴って排出される廃液、自動車の洗車場からのワックスと洗剤が混在した排水、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリを含む各種窒素化合物、及び各種難分解性物質等の工場や事業所から排出される工業廃水、並びに農業廃水;汚染地下水、廃棄物処分場の浸出液、塩素系有機溶剤を含有する産業排水、及び塩素系揮発性有機化合物(VOC)溶剤を含有する廃液等。
(3)廃油処理:一般家庭、営業用調理場、ビルの排水、及び公共事業体の汚水廃液処理施設からの排出される、植物油(例えば、菜種油、ごま油、大豆油、コーン油、パーム油、Aリーヴ油、及びビーナッツ油)、動物性油(例えば、バター、及びラード)、及び加工油(例えば、マーガリン、及び硫黄)等の油やラード類を含む排水、廃液、並びに廃食品。
(4)油脂精製:植物油、動物性油、及び加工油等の油やラード類。
(5)空気清浄機:家庭用空清フィルター、及び工業用空清フィルター。
(6)ガス吸着:ダイオキシン類などの汚染物質、各種有機溶剤、含ハロゲン有機溶剤、含硫有機溶媒、含硫化合物、及び含窒素化合物。
(7)触媒及びその担体:活性炭を使用する酸化触媒、ニッケルやパラジウムなどの金属微粒子を担持した触媒、酸化銅や酸化亜鉛などの金属酸化物を担持した触媒、及び塩化銅や酢酸亜鉛などの金属塩を担持した触媒。
【0120】
[装置及び除去方法]
本実施形態の装置は、活性炭を備える。また、本実施形態の除去方法は、本実施形態の装置を用いて、除去される物質を含む組成物から、当該物質を除去する工程を含む。
【0121】
活性炭の機能は、これを含む装置によって利用される。装置は、処理装置であることが好ましい。なお、本明細書において、「処理装置」とは、例えば、上記のような、排水、廃液、及び油等の処理対象物である組成物に含まれる除去される物質を、本実施形態の活性炭により除去できる装置や、処理できる装置であれば、特に限定されない。そのような処理装置としては、例えば、活性炭を含む、フィルター、カラム、タンク又は浴、チューブ、カートリッジ、ボンベ、及びシート(以下、単に「活性炭を含むフィルター等」とも称す)を含む装置、並びにろ過装置が挙げられる。
【0122】
除去される物質としては、特に限定されないが、例えば、不純物、汚染物質、残留塩素、揮発性有機化合物(VOC)、及び着色成分からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0123】
ろ過装置としては、例えば、活性炭を含む、カートリッジ式ろ過装置、膜処理装置、及び限外濾過膜装置が挙げられる。
【0124】
処理装置には、活性炭を含むフィルター等と共に、その他の吸着フィルターを備えてもよい。このようなその他の吸着フィルターとしては、例えば、ステンレス製、アルミニウム製、ブロンズ製、銅製、チタン製、及びニッケル製等を使用した金属製フィルター;ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアミド、及びフッ素系樹脂等を使用した樹脂フィルターが挙げられる。
【0125】
また、処理装置は、バッチ式でも、連続式でもよく、活性炭は、どちらの様式にも用いることができる。
【実施例0126】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0127】
〔実施例1〕
原料としての木粉を塩化亜鉛にて賦活し、洗浄及び乾燥した。その後、平均粒子径(D50)が30μmである粉末が得られるように篩別することで、篩下に残った粉末を回収した。回収後の粉末を蒸留水に分散させた後、ろ過することで、平均粒子径(D50)が30μmである粉末活性炭を25質量%含むスラリーの水溶液を得た。このスラリーの水溶液800gと、増粘多糖類としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業製)60gと、水溶性高分子としてリグニンスルホン酸ナトリウム(Borreguard製Borresperse NA(商品名))140gとを、混合機(ユニバース(株)製ヘンシェルミキサー)に投入し、室温にて10分間混練することで混練物を得た。この混練物を、押出造粒機(ユニバース(株)製V-20型(商品名))に投入し、直径の長さが5mm程度、及び長手方向の長さが3mm以上5mm以下程度のペレットの形状に成型することで、成型物であるペレットを得た。得られたペレットを乾燥せず、そのまま10質量倍の5質量%塩酸に12時間、室温(25℃)にて、浸漬することで酸処理した。その後、得られた酸処理されたペレットを定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))にて、140℃で3時間加熱し、乾燥させた。得られた乾燥後のペレットをボックス型熱処理炉(電気炉、(株)ジェイテクトサーモシステム製KBF848N2(商品名))に入れて、窒素気流下にて、室温から500℃まで1時間かけて昇温した後、500℃で1時間熱処理を行い、活性炭1を得た。
【0128】
〔実施例2〕
押出造粒機(ユニバース(株)製V-20型(商品名))の代わりに、ディスクペレタイザー(ダルトン(株)製F-5型(商品名))を用いてペレットの形状に成型した以外は、実施例1と同様にして、活性炭2を得た。
【0129】
〔実施例3〕
原料としての木粉を塩化亜鉛にて賦活し、洗浄及び乾燥した。その後、平均粒子径(D50)が40μmとなるように分級して、粉末活性炭を得た。この粉末活性炭500gと、増粘多糖類としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業製)60gと、水溶性高分子としてリグニンスルホン酸ナトリウム(Borreguard製Borresperse NA(商品名))150gと、水600gとを、混合機(ユニバース(株)製ヘンシェルミキサー)に投入し、室温にて10分間混練することで混練物を得た。この混練物を、ディスクペレタイザー(ダルトン(株)製F-5型(商品名))に投入し、直径の長さが5mm程度、及び長手方向の長さが3mm以上5mm以下程度のペレットの形状に成型することで、成型体であるペレットを得た。得られたペレットを乾燥せず、そのまま10質量倍の5質量%塩酸に12時間、室温(25℃)にて、浸漬することで酸処理した。その後、酸処理されたペレットを定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))にて、140℃で3時間加熱し、乾燥させた。得られた乾燥後のペレットをボックス型熱処理炉(電気炉、(株)ジェイテクトサーモシステム製KBF848N2(商品名))に入れて、窒素気流下にて、室温から900℃まで1時間かけて昇温した後、900℃で1時間熱処理を行い、活性炭3を得た。
【0130】
〔実施例4〕
温度600℃及び約2時間にてフィリピン産のヤシ殻の炭化を行い、平均粒径20μm以上80μm以下となるように粉砕して粉末炭素を得た。その後、得られた粉末1000gと、水溶性高分子としてリグニンスルホン酸ナトリウム(Borreguard製Borresperse NA(商品名))260gと、水150gとを、混合機(ユニバース(株)製、高速混合器DH-5(商品名))に投入し、室温にて10分間混錬することで混錬物を得た。その後、得られた混錬物を、孔径3.0mmの押出成型機(不二パウダル(株)製ディスクペレッター(商品名))に投入し、押出成形することで、直径の長さが2.0mm以上3.0mm以下、及び長手方向の長さが5.0mm以上10.0mm以下程度のペレット形状の成型物を得た。得られた成型物をロータリーキルンに収容した。その後、ロータリーキルンから空気を排除しつつ、室温から800℃まで5℃/分で昇温しながら800℃に到達させた後、5分間乾燥させた。続いて、ロータリーキルン内にて、水蒸気気流下で、乾燥物と水蒸気とを接触させつつ、900℃で80分間賦活処理を行い、活性炭4を得た。
【0131】
〔実施例5〕
乾燥処理を室温から800℃まで5℃/分で昇温しながら行う代わりに、室温から800℃まで10℃/分で昇温しながら行った以外は、実施例4と同様にして、活性炭5を得た。
【0132】
〔実施例6〕
混錬工程において、炭酸ナトリウム(和光純薬工業(株))製)23gを更に加えた以外は、実施例5と同様にして、活性炭6を得た。
【0133】
〔比較例1〕
成型して得たペレットを、5質量%塩酸に12時間浸漬せずに乾燥すること以外は、実施例2と同様にして、活性炭7を得た。
【0134】
〔比較例2〕
実施例2と同様にして得られた乾燥後のペレットを活性炭8として得た。即ち、活性炭8は、ボックス型熱処理炉で熱処理しないで得られた活性炭であった。
【0135】
〔比較例3〕
実施例2と同様にして得られた乾燥後のペレットをボックス型熱処理炉(電気炉、(株)ジェイテクトサーモシステム製KBF848N2(商品名))に入れて、窒素気流下にて、室温から200℃まで1時間かけて昇温した後、200℃で1時間熱処理行うことで活性炭9を得た。即ち、活性炭9は、ボックス型熱処理炉における熱処理条件において、500℃を200℃とする以外は、実施例2と同様にして得た。
【0136】
〔比較例4〕
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業製)60gの代わりに、メチルセルロース(和光純薬工業製)60gを用いた以外は、実施例2と同様にして、活性炭10を得た。
【0137】
〔比較例5〕
比較例4と同様にして得られた乾燥後のペレットを活性炭11として得た。即ち、活性炭11は、ボックス型熱処理炉で熱処理しないで得られた活性炭であった。
【0138】
〔比較例6〕
リグニンスルホン酸ナトリウム(Borreguard製Borresperse NA(商品名))140gの代わりに、セルロース粉末(和光純薬工業製)140gを用いた以外は、実施例2と同様にして、活性炭12を得た。
【0139】
〔比較例7〕
リグニンスルホン酸ナトリウム(Borreguard製Borresperse NA(商品名))140gの代わりに、木節粘土(共立マテリアル(株)製)20gを用いた以外は、実施例2と同様にして、活性炭13を得た。
【0140】
〔比較例8〕
比較例7と同様にして得られた乾燥後のペレットをボックス型熱処理炉(電気炉、(株)ジェイテクトサーモシステム製KBF848N2(商品名))に入れて、窒素気流下にて、室温から200℃まで1時間かけて昇温した後、200℃で1時間熱処理行うことで活性炭14を得た。即ち、活性炭14は、ボックス型熱処理炉における熱処理条件において、500℃を200℃とする以外は、比較例7と同様にして得た。
【0141】
〔評価方法〕
(1)圧壊強度
実施例及び比較例で得られた活性炭の圧壊強度(N)を測定した。具体的には、木屋式硬度計((株)藤原製作所製木屋式硬度計043019-A(商品番号))を用いて、円柱形状の活性炭の軸方向に対して垂直方向に力を徐々に加え、活性炭が崩壊した際に加わった力を圧壊強度(N)とした。この圧壊強度の測定を32個の別々の活性炭について行い、それらの圧壊強度の値から平均値を算出し、その値を活性炭の圧壊強度(N)とした。
【0142】
(2)全細孔容積
実施例及び比較例で得られた活性炭の、30nm以下の径を有する全細孔容積(mL/g)は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-miniII(商品名))により測定した。具体的には、吸着ガスに窒素を用いて、-196℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定して吸着等温線を得た。解析には解析ソフト(マイクロトラック・ベル製BELMaster(商標))を用いた。
【0143】
(3)500℃までの質量減少率、及び500℃以上800℃以下における質量減少率
実施例及び比較例で得られた活性炭を用いて、500℃までの質量減少率(質量%)、及び500℃以上800℃以下における質量減少率(質量%)を測定した。具体的には、まず、定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))を用いて、実施例及び比較例で得られた活性炭を、不活性ガスとして窒素雰囲気下、115℃で3時間保持し、乾燥させることで乾燥活性炭を得て、その質量を測定した。その後、熱質量示差熱分析装置(試料観察示差走査熱量計、(株)リガク製Thermo Plus EVO2(商品名))を用いて、乾燥活性炭を、不活性ガスとして窒素雰囲気下、10(℃/分)で、室温から800℃まで昇温させることで、500℃時点での質量、及び800℃における質量をそれぞれ測定した。500℃までの質量減少率は、乾燥活性炭の乾燥質量に対する減少割合、即ち、下記の計算式(1)を用いて算出した。また、500℃以上800℃以下における質量減少率は、乾燥活性炭の乾燥質量に対する減少割合、即ち、下記の計算式(2)を用いて算出した。
500℃までの質量減少率(質量%)=100×{(乾燥活性炭の質量)-(500℃時点での質量)}/(乾燥活性炭の質量)…(1)
500℃以上800℃以下における質量減少率(質量%)=100×{(500℃時点での質量)-(800℃時点での質量))}/(乾燥活性炭の質量)…(2)
【0144】
(4)硫黄原子の含有率
実施例及び比較例で得られた活性炭を用いて、硫黄原子の含有率(質量%)を測定した。具体的には、まず、定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))を用いて、実施例及び比較例で得られた活性炭を、不活性ガスとして窒素雰囲気下、115℃で3時間保持し、乾燥させることで乾燥活性炭を得て、その質量を測定した。その後、空気下、石英管中で乾燥活性炭を950℃で燃焼させ、発生したガスを5.0質量%過酸化水素水に吸収させ、吸収後の過酸化水素水の質量を測定した。その後、イオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、ICS-2100/AS-AP/CMS7.2(商品名))を用いて、吸収後の過酸化水素水中の硫酸イオン濃度を測定した。活性炭中の硫黄原子の含有率(質量%)は、乾燥活性炭の乾燥質量に対する割合、即ち、下記の計算式(3)を用いて算出した。
硫黄原子の含有率(質量%)=100×{(硫酸イオン濃度)×(吸収後の過酸化水素水の質量)×32.0/98.1}/(乾燥活性炭の質量)…(3)
【0145】
(5)比表面積
実施例及び比較例で得られた活性炭を用いて、比表面積(m2/g)を測定した。具体的には、-196℃におけるNの吸着等温線からBET法によって求められる比表面積(m/g)を、下記のようにして求めた。すなわち、まず、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製のBELSORP(登録商標)-mini(商品名))を使用し、実施例及び比較例で得られた活性炭を減圧下(真空度:0.1kPa以下)にて250℃で3時間加熱した後、-196℃における活性炭の窒素吸着等温線を測定した。得られた窒素吸着等温線を使用し、BET解析により、得られた曲線から多点法により相対圧P/P0=0.05以上0.20以下の領域での直線を算出し、この直線から比表面積を算出した。
【0146】
(6)強熱残分
実施例及び比較例で得られた活性炭を用いて、空気中、850℃で灰化させたときの強熱残分(質量%)を測定した。具体的には、あらかじめ秤量した活性炭をるつぼに入れて、空気中、850℃で灰化させた。強熱残分は、活性炭の質量に対する、灰化後の残渣の質量の割合として算出した。
【0147】
(7)耐薬品性
実施例及び比較例で得られた活性炭を用いて、耐薬品性を評価した。具体的には、活性炭を1mol/Lの塩酸、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、及びエタノールのそれぞれの薬品に24時間浸漬させた。その後、定温乾燥機(ヤマト科学(株)製DVS402(商品名))を用いて、浸漬後の活性炭のそれぞれについて、115℃で3時間保持し、乾燥させた。乾燥後の活性炭を用いて、上記の(1)圧壊強度の測定方法と同様にして、それぞれの圧壊強度(N)を測定した。
【0148】
これらの結果を表1に示す。
【0149】
【表1】