(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013454
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】コンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115544
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】早津 隆広
(72)【発明者】
【氏名】山田 勉
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸二
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155DA08
2D155LA12
2D155LA14
(57)【要約】
【課題】多数の打設口におけるコンクリートの打設を一括制御して省力化・省人化施工を達成可能な、コンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート配管切替装置1は、本体部10と、導入管20と、打設管30と、通過管40と、移動ユニット60と、封止ユニット70と、を少なくとも備える。コンクリート打設システムAは、複数のコンクリート配管切替装置1を備え、一のコンクリート配管切替装置1の通過管40を、他のコンクリート配管切替装置1の導入管20に接続している。コンクリート打設方法は、上方のコンクリート配管切替装置1を通過モードM2に、下方のコンクリート配管切替装置1を接続モードMcかつ打設モードM1に設定してコンクリートを打設する第1工程と、上方のコンクリート配管切替装置1を接続モードMcかつ打設モードM1に、下方のコンクリート配管切替装置1を遮断モードMsに設定してコンクリートを打設する第2工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半筒状の型枠体と、前記型枠体を連通する打設口と、を備えるトンネル覆工用型枠における、コンクリート配管切替装置であって、
本体部と、
導入管と、
前記本体部と連結する、打設管と、
前記本体部と連結する、通過管と、
前記型枠体に対して前記本体部を移動させることで、前記導入管の先端を前記打設管の基端に接続し前記打設管の先端を前記打設口に接続した接続モードと、前記導入管の先端を前記通過管の基端に接続した遮断モードと、に切替可能な、移動ユニットと、
前記通過管と連結する封止ユニットであって、前記遮断モードにおいて、前記打設口を内側から封止可能な、封止ユニットと、を備え、
前記接続モードにおいて、前記導入管、前記打設管、及び前記打設口を介して、前記型枠体の外側にコンクリートを吐出可能に構成したことを特徴とする、
コンクリート配管切替装置。
【請求項2】
略半筒状の型枠体と、前記型枠体を連通する打設口と、を備えるトンネル覆工用型枠における、コンクリート配管切替装置であって、
本体部と、
導入管と、
前記本体部と連結する、打設管と、
前記本体部と連結する、通過管と、
前記本体部に対して前記導入管を移動させることで、前記導入管の先端を前記打設管の基端と接続した打設モードと、前記導入管の先端を前記通過管の基端と接続した通過モードと、に切替可能な、切替ユニットと、
前記型枠体に対して前記本体部を移動させることで、前記打設管の先端を前記打設口に接続した接続モードと、前記打設管の先端を前記打設口に接続しない遮断モードと、に切替可能な、移動ユニットと、
前記遮断モードにおいて、前記打設口を内側から封止可能な、封止ユニットと、を備え、
前記打設モードかつ前記接続モードにおいて、前記導入管、前記打設管、及び前記打設口を介して、前記型枠体の外側にコンクリートを吐出可能に構成したことを特徴とする、
コンクリート配管切替装置。
【請求項3】
前記封止ユニットが、前記打設口を封止可能な形状の封止蓋と、前記封止蓋を前記打設口に向かって進退可能な封止手段と、を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート配管切替装置。
【請求項4】
前記切替ユニットが、一端を前記本体部に連結し、他端を前記導入管に連結した、オイルシリンダ、エアシリンダ、又は電動シリンダであることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリート配管切替装置。
【請求項5】
前記移動ユニットが、一端を前記型枠体に連結し、他端を前記本体部に連結した、オイルシリンダ、エアシリンダ、又は電動シリンダであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート配管切替装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の複数のコンクリート配管切替装置を備えるコンクリート打設システムであって、
一の前記コンクリート配管切替装置における前記通過管の先端を、他の前記コンクリート配管切替装置における前記導入管の基端に接続したことを特徴とする、
コンクリート打設システム。
【請求項7】
一のコンクリート配管切替装置における通過管の先端を、他のコンクリート配管切替装置における導入管の基端に接続した、請求項1に記載の複数のコンクリート配管切替装置を用いる、コンクリート打設方法であって、
上方に位置する前記コンクリート配管切替装置を前記遮断モードに設定し、下方に位置する前記コンクリート配管切替装置を前記接続モードに設定し、前記下方に位置するコンクリート配管切替装置の前記打設管を介して前記型枠体の外側にコンクリートを打設する、第1工程と、
前記上方に位置するコンクリート配管切替装置を前記接続モードに設定し、前記下方に位置するコンクリート配管切替装置を前記遮断モードに設定し、前記上方に位置するコンクリート配管切替装置の前記打設管を介して前記型枠体の外側にコンクリートを打設する、第2工程と、を備えることを特徴とする、
コンクリート打設方法。
【請求項8】
一のコンクリート配管切替装置における通過管の先端を、他のコンクリート配管切替装置における導入管の基端に接続した、請求項2に記載の複数のコンクリート配管切替装置を用いる、コンクリート打設方法であって、
上方に位置する前記コンクリート配管切替装置を前記通過モードに設定し、下方に位置する前記コンクリート配管切替装置を前記接続モードかつ前記打設モードに設定し、前記下方に位置するコンクリート配管切替装置の前記打設管を介して前記型枠体の外側にコンクリートを打設する、第1工程と、
前記上方に位置するコンクリート配管切替装置を前記接続モードかつ前記打設モードに設定し、前記下方に位置するコンクリート配管切替装置を前記遮断モードに設定し、前記上方に位置するコンクリート配管切替装置の前記打設管を介して前記型枠体の外側にコンクリートを打設する、第2工程と、を備えることを特徴とする、
コンクリート打設方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記下方に位置するコンクリート配管切替装置を前記通過モードに設定し、前記上方に位置するコンクリート配管切替装置の前記通過管、並びに前記下方に位置するコンクリート配管切替装置の前記導入管及び前記通過管、の管内を洗浄水で洗浄することを特徴とする、請求項8に記載のコンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法に関し、特に多数の打設口におけるコンクリートの打設を一括制御して省力化・省人化施工を達成可能な、コンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、トンネル内空に移動式のトンネル覆工用型枠を配置し、吹付コンクリート面又は防水シート面と型枠体のスキンプレート面の間に画設した打設空間内にコンクリートを打設することで、覆工コンクリートを成型する。
コンクリートの打設作業は、型枠体に設けた複数の打設窓を通じて行う。詳細には、複数の打設窓の内最も低い位置の複数の打設窓を開放し、打設窓から打設空間内にコンクリート圧送管を突き出してコンクリートを打設する。コンクリートの液面が打設窓付近まで上がってきたら、作業中の打設窓を封鎖してその上段の打設窓を開放し、コンクリート圧送管を上段の打設窓へ移動して打設を続ける。これらの作業を繰り返し、最後に天端の打設窓からコンクリートを吹き上げて打設を完了する(人力施工)。
この他、特許文献1には、1次切替装置、1次分配管、2次切替装置、2次分配管、及び制御装置を備え、制御装置によって1次切替装置及び2次切替装置を切り替えることで、複数の打設窓における打設位置を管理して、少ない作業員で施工可能な覆工コンクリート打設システムが開示されている(機械化施工)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の人力施工には以下の問題点がある。
<1>コンクリートを打設空間内に均等に行きわたらせるため、作業員がコンクリート圧送管を抱えて、型枠体内をトンネル軸方向に移動しながら打設する必要がある。また、打設の進行に従って、作業員がコンクリート圧送管を上方に運搬する必要がある。このため、作業員の肉体的負担が非常に大きい。
<2>打設窓は鋼製の扉によって開閉するが、扉の重量は30~40kg以上あるため、開閉には大きな力が必要である。コンクリートの打設時には、このような重い扉を、打設の進行に合わせて順次開閉しなければならないため、作業員の肉体的負担が非常に大きい。
<3>複数の打設窓からコンクリートを同時に打設するため、多数の作業員が必要である。このため、狭隘な型枠体内での作業が錯綜すると共に、人件費が嵩む。
【0005】
従来技術の機械化施工には以下の問題点がある。
<1>分配管の管路が多数に分岐しており、制御や操作が難しいため、操作ミスが生じやすい。また、部材が多く構造が複雑であるため、製造コストが高く、保守管理に手間とコストがかかる。
<2>コンクリートの打設後、残コンクリートが硬化する前に分配管内を洗浄する必要があるところ、本システムは分配管の数が多いため、残コンクリートの洗浄に多大な作業負担がかかる。また、分配管の総長が長いため、洗浄に伴い多量の廃水が発生する。洗浄後の廃水は坑内にそのまま排出することができず、骨材の分級等の処理を必要とするため、この作業負担が大きい。
<3>分配管の数が多く管路の総長が長いため、型枠体内の限られたスペースを広く占有する。これによって、他の設備を配置する空間を減らすと共に、作業員による作業性を低下させる。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための、コンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンクリート配管切替装置は、本体部と、導入管と、本体部と連結する、打設管と、本体部と連結する、通過管と、型枠体に対して本体部を移動させることで、導入管の先端を打設管の基端に接続し打設管の先端を打設口に接続した接続モードと、導入管の先端を通過管の基端に接続した遮断モードと、に切替可能な、移動ユニットと、通過管と連結する封止ユニットであって、遮断モードにおいて、打設口を内側から封止可能な、封止ユニットと、を備え、接続モードにおいて、導入管、打設管、及び打設口を介して、型枠体の外側にコンクリートを吐出可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明のコンクリート配管切替装置は、本体部と、導入管と、本体部と連結する、打設管と、本体部と連結する、通過管と、本体部に対して導入管を移動させることで、導入管の先端を打設管の基端と接続した打設モードと、導入管の先端を通過管の基端と接続した通過モードと、に切替可能な、切替ユニットと、型枠体に対して本体部を移動させることで、打設管の先端を打設口に接続した接続モードと、打設管の先端を打設口に接続しない遮断モードと、に切替可能な、移動ユニットと、遮断モードにおいて、打設口を内側から封止可能な、封止ユニットと、を備え、打設モードかつ接続モードにおいて、導入管、打設管、及び打設口を介して、型枠体の外側にコンクリートを吐出可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明のコンクリート配管切替装置は、封止ユニットが、打設口を封止可能な形状の封止蓋と、封止蓋を打設口に向かって進退可能な封止手段と、を有していてもよい。
【0010】
本発明のコンクリート配管切替装置は、切替ユニットが、一端を本体部に連結し、他端を導入管に連結した、オイルシリンダ、エアシリンダ、又は電動シリンダであってもよい。
【0011】
本発明のコンクリート配管切替装置は、移動ユニットが、一端を型枠体に連結し、他端を本体部に連結した、オイルシリンダ、エアシリンダ、又は電動シリンダであってもよい。
【0012】
本発明のコンクリート打設システムは、一のコンクリート配管切替装置における通過管の先端を、他のコンクリート配管切替装置における導入管の基端に接続したことを特徴とする。
【0013】
本発明のコンクリート打設方法は、上方に位置するコンクリート配管切替装置を遮断モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置を接続モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置の打設管を介して型枠体の外側にコンクリートを打設する、第1工程と、
上方に位置するコンクリート配管切替装置を接続モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置を遮断モードに設定し、上方に位置するコンクリート配管切替装置の打設管を介して型枠体の外側にコンクリートを打設する、第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のコンクリート打設方法は、上方に位置するコンクリート配管切替装置を通過モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置を接続モードかつ打設モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置の打設管を介して型枠体の外側にコンクリートを打設する、第1工程と、上方に位置するコンクリート配管切替装置を接続モードかつ打設モードに設定し、下方に位置するコンクリート配管切替装置を遮断モードに設定し、上方に位置するコンクリート配管切替装置の打設管を介して型枠体の外側にコンクリートを打設する、第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明のコンクリート打設方法は、第2工程において、下方に位置するコンクリート配管切替装置を通過モードに設定し、上方に位置するコンクリート配管切替装置の通過管、並びに下方に位置するコンクリート配管切替装置の導入管及び通過管、の管内を洗浄水で洗浄してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法は、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>多数の打設口におけるコンクリートの打設を、自動的又は半自動的に一括制御して、省力化・省人化施工を達成することができる。
<2>作業員によるコンクリート圧送管の搬送や、打設窓の開閉作業が不要であるため、作業員の肉体的負担が少ない。
<3>僅かな作業員で施工することができるため、人件費を低減できる。
<4>型枠体の周方向に連続した配管系統からなるシンプルな構造であるため、製造コストが比較的安価で、保守管理も容易である。
<5>コンクリートを打設しながら、並行して同一系統の配管を洗浄できるため、残コンクリートの処理を適時に行うことができる。
<6>配管系統が単純で配管の総長が比較的短いため、残コンクリートの洗浄が容易で、廃水の量も比較的少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明のコンクリート配管切替装置、コンクリート打設システム、及びコンクリート打設方法について詳細に説明する。
【実施例0019】
[コンクリート配管切替装置]
<1>全体の構成(
図1)
本発明のコンクリート配管切替装置1は、トンネル覆工用型枠Xにおいて、コンクリートの流路を切り替えるための装置である。
コンクリート配管切替装置1は、本体部10と、導入管20と、本体部10と連結する打設管30と、本体部10と連結する通過管40と、導入管20を打設モードM1と通過モードM2に切替可能な切替ユニット50と、打設管30を接続モードMcと遮断モードMsに切替可能な移動ユニット60と、を少なくとも備える。本例では更に、封止ユニット70を備える。
なお、本説明における「上」「下」等の用語は、型枠体X2の側面に設置したコンクリート配管切替装置1における各方位(すなわち
図1における各方位)を意味するが、例えば型枠体X2の天端付近において、コンクリート配管切替装置1を傾けて設置した場合には、水平方向に傾いた方向となる。
【0020】
<1.1>コンクリート打設システム(
図2)
コンクリート打設システムAは、覆工コンクリートを打設するためのシステムである。
コンクリート打設システムAは、複数のコンクリート配管切替装置1を連結管A1で連結してなる。ここで、連結管A1は、各コンクリート配管切替装置1の導入管20と通過管40を含む。
コンクリート打設システムAは、全てのコンクリート配管切替装置1及びその全ての構成要素を、所定のプログラムに従って電子計算機によって制御することによって、後述するコンクリート打設方法の全部又は一部を、自動的又は半自動的に施工することができる。
コンクリート打設システムAは、型枠体X2内において、天端から型枠体X2の両側下方へ型枠体X2の周方向に沿って1列を構成し、これを型枠体X2の長手方向に沿って複数列並列してなる。本例では、1列につき8つのコンクリート配管切替装置1を備え、これを6列並列する。
本例では、上下方向に並列する複数のコンクリート配管切替装置1の内、上方のコンクリート配管切替装置1の通過管40の下端を、下方のコンクリート配管切替装置1の導入管20の上端に接続する。
最上部の連結管A1(導入管20)の基端(上端)は、コンクリート供給装置(不図示)のコンクリート供給管と接続する。
最下部の連結管A1(通過管40)の先端(下端)は、型枠体X2の内部に開放する。
なお、本例ではコンクリートを上方から下方に自然流下させるが、コンクリート配管切替装置1を鉛直面で180度回転させれば下方からの圧入も可能である。よって、コンクリート供給装置1によって、コンクリートを下方から上方へ圧送する吹上式とすることもできる。
【0021】
<1.2>トンネル覆工用型枠(
図2)
トンネル覆工用型枠Xは、トンネル内をトンネル軸方向に移動可能な基台X1と、基台X1上に昇降自在に架設した型枠体X2と、型枠体X2を貫通する複数の打設口X3と、を少なくとも備える。
基台X1は、概ね門形に組んだ複数の鋼材をトンネル延長方向に連結してなる枠状体である。
基台X1の下部には移動用の車輪を備える。
基台X1と型枠体X2の間には、覆工コンクリートの打設時に型枠体X2を展開する展開装置を備える。
複数の打設口X3は、トンネル覆工用型枠Xの周方向に沿って所定の間隔で配置して1列を構成し、この1列をトンネル覆工用型枠Xの長手方向に複数並列する。
型枠体X2の内部には、コンクリート打設システムAを配置し、各コンクリート配管切替装置1の打設管30を、型枠体X2の内側から打設口X3に接続可能とする。
【0022】
<2>本体部
本体部10は、打設管30等を保持する部材である。
本体部10は、型枠体X2の内面に、打設口X3の位置に対して摺動自在に固定する。本例では、本体部10を、移動ユニット60でトンネル覆工用型枠Xの長手方向に摺動自在に固定した構造を採用する。
本例では本体部10が、本体板11と、本体板11の上面に設けた2本のスライドガイド12と、を備える。
本体板11の上には、導入管20を配置する。詳細には、2本のスライドガイド12間に、後述する導入管20のスライド板22を摺動自在に保持する。
本体板11の下には、打設管30と通過管40を並列接続する。
【0023】
<3>導入管
導入管20は、打設管30又は通過管40へコンクリートを導入する管である。
本例では導入管20が、鋼管からなる管本体21と、管本体21の先端に付設したスライド板22と、を備える。
管本体21の基端は、上方のコンクリート配管切替装置1における通過管40の先端と接続する。ここで、管本体21と通過管40とは一体であってもよい。
スライド板22は、管本体21の管内と接続する貫通孔を備える。
スライド板22は、本体部10のスライドガイド12の間に摺動自在に保持する。
スライド板22の摺動によって、管本体21の管路を、打設管30又は通過管40と選択的に接続することができる。
【0024】
<4>打設管
打設管30は、コンクリートを打設口X3へ送る管である。
本例では打設管30として、先端を基端に対して略90度屈曲した鋼管を採用する。
打設管30の基端は、本体板11の下面と接続して、本体板11の貫通孔と連通する。
打設管30の先端は、型枠体X2の打設口X3方向へ突出し、後述する接続モードMcにおいて、打設口X3と接続する。
【0025】
<5>通過管
通過管40は、コンクリートを下方の導入管20に送る管である。
本例では通過管40として、鋼管を採用する。
通過管40の基端は、本体板11の下面と接続して、本体板11の貫通孔と連通する。
通過管40の先端は、型枠体X2の周方向に沿って下方へ延出し、下方のコンクリート配管切替装置1における導入管20の基端と接続する。
【0026】
<6>切替ユニット
切替ユニット50は、導入管20の接続を切り替えるユニットである。
切替ユニット50は、一部が本体部10と接続し、他部が導入管20と接続し、導入管20を本体部10に対して移動可能な構造を備える。
本例では切替ユニット50として、基端を本体部10の本体板11に連結し、先端を導入管20の管本体21に連結した、オイルシリンダを採用する。
ただし切替ユニット50は上記に限らず、例えばエアシリンダや電動シリンダ、手動による切替機構等であってもよい。また、シリンダの基端と先端を逆に連結してもよい。
切替ユニット50によって、本体部10に対して導入管20を移動させることで、導入管20を、打設モードM1と通過モードM2とに切替えることができる。
【0027】
<6.1>打設モード(
図3)
打設モードM1は、コンクリートを打設口X3から打設するためのモードである。
本例では、打設モードM1において、切替ユニット50が短縮し、切替ユニット50の先端が導入管20を引っ張ることで、導入管20のスライド板22が本体部10のスライドガイド12内を摺動し、導入管20の先端が打設管30の基端と接続する。
この他、切替ユニット50が伸長し、切替ユニット50の先端が導入管20を押し出すことで、導入管20の先端が打設管30の基端と接続する構造としてもよい。
【0028】
<6.2>通過モード(
図4)
通過モードM2は、コンクリートを次のコンクリート配管切替装置1へ通過させるためのモードである。
本例では、通過モードM2において、切替ユニット50が伸長し、切替ユニット50の先端が導入管20を押し出すことで、導入管20のスライド板22が本体部10のスライドガイド12内を摺動し、導入管20の先端が通過管40の基端と接続する。
この他、切替ユニット50が短縮し、切替ユニット50の先端が導入管20を引っ張ることで、導入管20の先端が通過管40の基端と接続する構造としてもよい。
【0029】
<7>移動ユニット
移動ユニット60は、本体部10を移動させるユニットである。
移動ユニット60は、一部が型枠体X2と接続し、他部が本体部10と接続し、本体部10を型枠体X2に対して移動可能な構造を備える。
本例では移動ユニット60として、基端を型枠体X2の内面に連結し、先端を本体部10の本体板11に連結した、オイルシリンダを採用する。
ただし移動ユニット60は上記に限らず、例えばエアシリンダや電動シリンダ、手動による切替機構等であってもよい。また、シリンダの基端と先端を逆に連結してもよい。
移動ユニット60によって、型枠体X2に対して本体部10を移動させることで、打設口X3を、接続モードMcと遮断モードMsとに切り替えることができる。
【0030】
<7.1>接続モード(
図4)
接続モードMcは、打設口X3を打設管30の先端に接続したモードである。
本例では、接続モードMcにおいて、移動ユニット60が短縮し、移動ユニット60の先端が本体部10を引っ張ることで、打設管30が本体部10ごと移動し、打設管30の先端が打設口X3と接続する。
この他、移動ユニット60が伸長し、移動ユニット60の先端が本体部10を押し出すことで、打設管30の先端が打設口X3と接続する構造としてもよい。
【0031】
<7.2>遮断モード(
図5)
遮断モードMsは、打設口X3を打設管30から外したモードである。
本例では、遮断モードMsにおいて、移動ユニット60が伸長し、移動ユニット60の先端が本体部10を押し出すことで、打設管30が本体部10ごと移動し、打設管30の先端が打設口X3から離れる。この際、本体部10に付設した封止ユニット70が、打設口X3の内側に配置する。
この他、移動ユニット60が短縮し、移動ユニット60の先端が本体部10を引っ張ることで、打設管30の先端が打設口X3から離れる構造としてもよい。
【0032】
<8>封止ユニット(
図6)
封止ユニット70は、打設口X3を封止するユニットである。
封止ユニット70は、封止蓋71と、封止手段72と、を備える。
封止蓋71は、打設口X3を封止可能な形状を呈する蓋である。本例では封止蓋71として、打設口X3内に嵌合可能な円柱状の部材を採用する。
封止蓋71を打設口X3内に嵌合した状態において、封止蓋71の表面は型枠体X2の表面と面一となる。
封止手段72は、封止蓋71を打設口X3に向かって進退させる手段である。すなわち、封止手段72は、封止蓋71を本体部10側から打設口X3側に向かって伸縮することで、打設口X3を封止蓋71で塞ぎ、封止蓋71を打設口X3から本体部10側に後退させることで、打設口X3を開放する。
本例では封止手段72として、基端を本体部10に連結し、先端を打設口X3方向に向け、先端に封止蓋71を付設した、オイルシリンダを採用する。
ただし封止手段72は上記に限らず、例えばエアシリンダや電動シリンダ、手動による封止機構等であってもよい。また、シリンダの基端と先端を逆に連結してもよい。
また封止ユニット70を設けず、例えば打設口X3に蓋を設けて手動で封止する構成としてもよい。
【0033】
<9>コンクリート打設方法
本発明のコンクリート打設システムAを用いて、例えば以下のようにコンクリートを打設することができる。
本例では、1つのコンクリート打設システムAの内、型枠体X2の天端から周方向に沿って並んだ3つのコンクリート配管切替装置1の機能について説明する。なお、説明の便宜上これら3つのコンクリート配管切替装置1を、上から順に上切替装置1a、中切替装置1b、及び下切替装置1cと表記する。
【0034】
<9.1>下切替装置からのコンクリート打設(
図7A)
上切替装置1aを、通過モードM2かつ接続モードMcに設定する。
中切替装置1bを、通過モードM2かつ接続モードMcに設定する。
下切替装置1cを、打設モードM1かつ接続モードMcに設定する。
この状態で、コンクリート供給装置から上切替装置1aの導入管20にコンクリートを圧送する。これによって、コンクリートが、上切替装置1aの通過管40、中切替装置1bの導入管20及び通過管40、並びに下切替装置1cの導入管20及び打設管30を経て、下切替装置1cに対応する打設口X3から、型枠体X2外側の打設空間内に吐出される。
なお、上切替装置1a及び中切替装置1bは、接続モードMcではなく、遮断モードMsであってもよい。
【0035】
<9.2>中切替装置の打設モードへの切り替え(
図7B)
打設空間内に打設しているコンクリートの液面が下切替装置1cの打設口X3の下方に迫ったら、一旦打設を中断し、中切替装置1bを通過モードM2から打設モードM1へ切り替える(
図3)。
詳細には、中切替装置1bの切替ユニット50を操作して、導入管20を打設管30に接続する。
【0036】
<9.3>下切替装置の通過モードへの切り替え(
図7C)
下切替装置1cを打設モードM1から通過モードM2へ切り替える。
詳細には、下切替装置1cの切替ユニット50を操作して、導入管20を通過管40に接続する(
図4)。
これによって、上切替装置1aと中切替装置1bからなる打設用の配管ルートと別に、中切替装置1bの通過管40、並びに下切替装置1cの導入管20及び通過管40からなる、残コンクリート洗浄用の配管ルートが構成される。
よって、中切替装置1bの通過管40内に洗浄水を注入することで、これ以降の工程と並行して、中切替装置1bの通過管40、並びに下切替装置1cの導入管20及び通過管40の管内に付着した残コンクリートを洗浄することが可能となる。洗浄後の廃水は、下切替装置1cの通過管40から回収する。
なお、残コンクリートの洗浄をコンクリートの打設と平行して洗浄する必要がない場合には、下切替装置1cを通過モードM2へ切り替えず、打設モードM1としたまま後続する各工程を行ってもよい。
【0037】
<9.4>下切替装置の本体部の移動(
図7D)
下切替装置1cを接続モードMcから遮断モードMsへ切り替える。
詳細には、下切替装置1cの移動ユニット60を操作して、打設管30を打設口X3から外し、封止ユニット70を打設口X3の内側に配置する(
図5)。
【0038】
<9.5>打設口の封止(
図7E)
打設口X3を封止ユニット70で封止する。
詳細には、下切替装置1cの封止ユニット70を操作し、封止手段72を伸長することによって、封止蓋71を打設口X3内に嵌め込み、封止蓋71の表面を型枠体X2の表面と面一にする(
図6)。
【0039】
<9.6>中切替装置からのコンクリート打設(
図7F)
コンクリート供給装置から上切替装置1aの導入管20にコンクリートを圧送する。これによって、コンクリートが、上切替装置1aの通過管40、中切替装置1bの導入管20及び打設管30を経て、中切替装置1bに対応する打設口X3から、型枠体X2外側の打設空間内に吐出される。
コンクリートは型枠体X2の表面に沿って、下切替装置1cの打設口X3に流れるが、下切替装置1cの打設口X3は封止蓋71に封止されているため、コンクリートが打設口X3内に入り込むことはない。