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特開2024-134543光硬化型粘着剤、粘着剤および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134543
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】光硬化型粘着剤、粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240926BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240926BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240926BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043351
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023044713
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】野依 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
(72)【発明者】
【氏名】久野 和樹
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA18
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF022
4J040FA131
4J040FA132
4J040FA161
4J040HA136
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA03
4J040KA13
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】無機粒子が良好に分散した粘着剤であって該無機粒子による高屈折率化を効率よく発現する粘着剤を形成することのできる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】提供される粘着剤組成物は、光照射により硬化して粘着剤を形成する光硬化型粘着剤組成物であって、上記粘着剤においてポリマーを構成するモノマー成分と、上記モノマー成分に分散している無機粒子とを含む。上記無機粒子の平均粒子径は100nm以下である。上記光硬化型粘着剤組成物は、溶媒の含有量が10重量%未満である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射により硬化して粘着剤を形成する光硬化型粘着剤組成物であって、
前記粘着剤においてポリマーを構成するモノマー成分と、
前記モノマー成分に分散している無機粒子と、
を含み、
前記無機粒子の平均粒子径は100nm以下であり、
溶媒の含有量が10重量%未満である、光硬化型粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに光重合開始剤を含む、請求項1に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記無機粒子は金属酸化物粒子を含む、請求項1または2に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記モノマー成分は芳香環含有モノマーを含む、請求項1または2に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記モノマー成分の重合転化率が30重量%未満である、請求項1または2に記載の光硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
ポリマーと無機粒子とを含む粘着剤であって、
前記粘着剤は、前記ポリマーを構成するモノマー成分と前記無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物の光硬化物であり、
前記無機粒子の平均粒子径は100nm以下であり、
前記粘着剤は、前記無機粒子が偏析している表面を有する、粘着剤。
【請求項7】
前記表面における屈折率が1.600以上である、請求項6に記載の粘着剤。
【請求項8】
請求項6または7に記載の粘着剤を含む粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層は、前記表面における前記無機粒子の濃度Cと、前記粘着剤層の厚み中央における前記無機粒子の濃度Cとの関係が下記式:
1.05≦(C/C);
を満たす、請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
光学用途に用いられる、請求項8に記載の粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型粘着剤、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、家電製品から自動車、各種機械、電気機器、電子機器等の様々な産業分野において、接合や固定、保護等の目的で広く利用されている。粘着剤の用途の一例として、液晶表示装置や有機EL表示装置等のような表示装置において、偏光フィルム、位相差フィルム、カバーウィンドウ部材、その他種々の光透過性部材と、他の部材とを接合する用途が挙げられる。粘着剤に関する技術文献として、特許文献1,2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14376号公報
【特許文献2】特開2021-134322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤が貼り付けられる材料のなかには、例えば光学部材など、屈折率が高い材料があり、そのような高屈折率材料の接合に一般的な粘着剤を用いると、両者の屈折率差に起因して界面で反射が生じることが知られている。上記高屈折材料の接合等に用いる粘着剤として、屈折率の高い粘着剤を用いることにより、上記界面反射を防止または抑制することができる。粘着剤の屈折率を高めるために、高屈折率の無機粒子を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤を形成することが検討されている。例えば特許文献1には、所定量の芳香環含有アクリル系モノマーおよび所定量の水酸基含有モノマーを含む共重合成分の共重合体であって重量平均分子量が所定以下のアクリル系重合体に対して、体積平均粒子径が所定範囲にある無機粒子(特に好ましくは金属酸化物粒子)を所定量含有し、さらに特定のシランカップリング剤および可塑剤を含む光学部材用粘着剤組成物が記載されている(請求項1、段落0049)。なお、アクリル系粘着剤の屈折率は通常1.47程度である。
【0005】
一方、特許文献2は、粘着性アクリル系ポリマーに金属酸化物粒子を分散させると凝集が発生しやすく、金属酸化物粒子を安定に分散させることが難しいことを指摘し(段落0004)、かかる課題を解決するために、粘着性アクリル系ポリマーと金属酸化物粒子とを含む粘着剤組成物に低分子量の非芳香族系ポリマーをさらに含有させ、この非芳香族系ポリマーを分散剤として機能させることで金属酸化物粒子を安定して分散させることを提案している(請求項1、段落0007)。しかし、特許文献2に記載の技術は、金属酸化物粒子100重量部に対して上記非芳香族系ポリマーを10~300重量部と比較的多量に用いることを前提とし(段落0022)、実施例では金属酸化物粒子100重量部に対して60重量部もの非芳香族系ポリマーを使用している(段落0065~0066)。このように多量の非芳香族系ポリマーを粘着剤組成物に含有させると、金属酸化物粒子による高屈折率化の効果が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、無機粒子が良好に分散した粘着剤であって該無機粒子により効率よく高屈折率化された粘着剤を形成することのできる粘着剤組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、無機粒子によって効率よく高屈折率化された粘着剤を提供することである。関連するさらに他の目的は、上記粘着剤を含む粘着剤層を有する粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書により、光照射により硬化して粘着剤を形成する光硬化型粘着剤組成物が提供される。上記光硬化型粘着剤組成物は、上記粘着剤においてポリマーを構成するモノマー成分と、上記モノマー成分に分散している無機粒子とを含む。上記無機粒子の平均粒子径は、好ましくは凡そ100nm以下である。上記光硬化型粘着剤組成物(以下、「粘着剤組成物」と略記することがある。)は、溶媒の含有量が凡そ10重量%未満である。このように溶媒の含有量が制限された粘着剤組成物を光硬化させることにより、該粘着剤組成物中に分散していた無機粒子の凝集が抑制され、該無機粒子が良好に分散した粘着剤を得ることができる。また、上記粘着剤組成物を光硬化させることにより、上記無機粒子が高屈折率化に効果的に寄与する粘着剤が形成され得る。
【0008】
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物のいくつかの態様において、該粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含む。光重合開始剤を含有させることにより、粘着剤組成物を容易に光硬化させることができる。
【0009】
いくつかの態様において、粘着剤の高屈折率化の観点から、上記無機粒子は金属酸化物粒子を含むことが好ましい。ここに開示される技術(ここに開示される粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよびそれらの製造方法を包含する。特記しない限り、以下同じ。)は、無機粒子として金属酸化物粒子を用いる態様で好ましく実施することができる。
【0010】
いくつかの態様において、粘着剤の高屈折率化の観点から、上記モノマー成分は芳香環含有モノマーを含むことが好ましい。ここに開示される技術は、モノマー成分が芳香環含有モノマーを含む態様で好ましく実施することができる。
【0011】
いくつかの態様において、上記モノマー成分の重合転化率は30重量%未満であることが好ましい。かかる重合転化率の粘着剤組成物を光硬化させることにより、上記無機粒子が高屈折率化に効果的に寄与する粘着剤が形成され得る。
【0012】
また、この明細書によると、ポリマーと無機粒子とを含む粘着剤が提供される。上記粘着剤は、上記ポリマーを構成するモノマー成分と上記無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物の光硬化物である。上記無機粒子の平均粒子径は100nm以下である。上記粘着剤は、上記無機粒子が偏析している表面を有する。上記偏析により、上記粘着剤に含まれる無機粒子による高屈折率化の効果を効率よく発揮させることができる。例えば、上記表面における屈折率が1.600以上である粘着剤が好適に実現され得る。
【0013】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。)を含む粘着剤層を有する粘着シートが提供される。いくつかの態様において、上記粘着剤層は、上記表面における上記無機粒子の濃度Cと、上記粘着剤層の厚み中央における上記無機粒子の濃度Cとの関係が次式:1.05≦(C/C);を満たすことが好ましい。このような粘着剤層は、上記表面における高屈折率化と、粘着剤層のバルク特性としての柔軟性とをバランスよく両立したものとなり得る。
【0014】
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物は、例えば、光学用途に用いられる粘着剤を形成するための粘着剤組成物として好適である。また、ここに開示される粘着剤および粘着シートは、光学用途に好ましく用いられ得る。
【0015】
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図2】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図3】(A)~(D)は、実施例1に係る粘着剤層の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
図4】(A)~(D)は、比較例1に係る粘着剤層の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
図5】粘着剤層の表面における無機粒子濃度Cの測定範囲と、粘着剤層の厚み中央における無機粒子濃度Cの測定範囲とを、模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
この明細書により開示される粘着剤(この明細書により開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。)は、粘着剤の分野において用いられ得るゴム状ポリマー、例えばアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー(例えば天然ゴム、合成ゴム、これらの混合物等)、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。以下、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤をアクリル系粘着剤ということがあり、アクリル系粘着剤の形成に用いられる粘着剤組成物をアクリル系粘着剤組成物ということがある。他の種類の粘着剤および粘着剤組成物についても同様である。
【0019】
この明細書において、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域(例えば25℃)においてゴム弾性を示すポリマーをいう。上記ベースポリマーは、典型的には、該粘着剤を形づくる構造ポリマーである。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、重量基準で最も多く含まれる成分を指し、典型的には50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0020】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該ポリマーを構成するモノマー成分のうち50重量%超(好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)がアクリル系モノマーであるアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0021】
この明細書において「アクリル系モノマー」とは、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいうアクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。他の類似用語も同様である。
【0022】
<粘着剤組成物>
この明細書により、光照射により硬化してポリマーおよび無機粒子を含む粘着剤を形成する光硬化型粘着剤組成物が提供される。この光硬化型粘着剤組成物は、該粘着剤組成物から形成される粘着剤においてポリマーを構成するモノマー成分を含む。
【0023】
ここで、本明細書において「ポリマーを構成するモノマー成分」とは、あらかじめ形成された重合物(オリゴマーであり得る。)の形態で粘着剤組成物に含まれるか、未重合のモノマーの形態で粘着剤組成物に含まれるかを問わず、該粘着剤組成物から形成される粘着剤においてポリマー(オリゴマーであり得る。)の繰返し単位を構成するモノマーを意味する。すなわち、粘着剤においてポリマーを構成するモノマー成分は、重合物、未重合物、部分重合物のいずれの形態で粘着剤組成物に含まれていてもよい。ここに開示される光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の少なくとも一部を未重合の形態で含む。
【0024】
上記粘着剤組成物の種類は特に限定されない。いくつかの態様では、粘着剤組成物の光硬化性や硬化物(粘着剤)の光学特性等の観点から、アクリル系粘着剤組成物が好ましい。以下、アクリル系粘着剤組成物およびアクリル系粘着剤について主に説明するが、ここに開示される粘着剤組成物および粘着剤をアクリル系のものに限定する意図ではない。
【0025】
(モノマー(A1))
ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの態様において、上記粘着剤組成物は、モノマー成分として芳香環含有モノマー(A1)を含む。モノマー成分として芳香環含有モノマー(A1)を含み、さらに無機粒子を含む光硬化型粘着剤組成物は、該粘着剤組成物から形成される粘着剤の高屈折率化に適している。
【0026】
モノマー(A1)としては、1分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを含む化合物が用いられる。モノマー(A1)としては、かかる化合物の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記エチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましく、柔軟性や粘着性の観点からアクリロイル基がより好ましい。粘着剤の柔軟性低下を抑制する観点から、モノマー(A1)としては、1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1である化合物(すなわち、単官能モノマー)が好ましく用いられる。
【0028】
モノマー(A1)として用いられる化合物1分子に含まれる芳香環の数は、1でもよく、2以上でもよい。上記芳香環の数の上限は特に制限されず、例えば16以下であり得る。いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製容易性や粘着剤の透明性等の観点から、上記芳香環の数は、例えば12以下であってよく、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下でもよく、4以下でもよく、3以下でもよく、2以下でもよい。
【0029】
モノマー(A1)として用いられる化合物の有する芳香環は、ベンゼン環(ビフェニル構造やフルオレン構造の一部を構成するベンゼン環であり得る。);ナフタレン環、インデン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環の縮合環;等の炭素環であってもよく、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環;等の複素環(ヘテロ環)であってもよい。上記複素環において環構成原子として含まれるヘテロ原子は、例えば窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される1または2以上であり得る。いくつかの態様において、上記複素環を構成するヘテロ原子は、窒素および硫黄の一方または両方であり得る。モノマー(A1)は、例えばジナフトチオフェン構造のように、1または2以上の炭素環と1または2以上の複素環とが縮合した構造を有していてもよい。
【0030】
上記芳香環(好ましくは炭素環)は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等が例示されるが、これらに限定されない。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの態様において、上記芳香環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば臭素原子)からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。なお、モノマー(A1)の有する芳香環がその環構成原子上に置換基を有するとは、該芳香環が、エチレン性不飽和基を有する置換基以外の置換基を有することをいう。
【0031】
芳香環とエチレン性不飽和基とは、直接結合していてもよく、リンキング基を介して結合していてもよい。上記リンキング基は、例えば、アルキレン基、オキシアルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基、フェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、これらの基において1または2以上の水素原子が水酸基で置換された構造の基(例えば、ヒドロキシアルキレン基)、オキシ基(-O-基)、チオオキシ基(-S-基)、等から選択される1または2以上の構造を含む基であり得る。いくつかの態様において、芳香環とエチレン性不飽和基とが、直接結合しているか、またはアルキレン基、オキシアルキレン基およびポリ(オキシアルキレン)基からなる群から選択されるリンキング基を介して結合している構造の芳香環含有モノマーを好ましく採用し得る。上記アルキレン基および上記オキシアルキレン基における炭素原子数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるオキシアルキレン単位の繰り返し数は、例えば1~8であってよく、粘着剤組成物の調製容易性や光硬化性等の観点から1~6であってもよく、1~4であってもよく、1~3(例えば2~3)であってもよく、1~2であってもよく、2であってもよく、1であってもよい。
【0032】
モノマー(A1)として好ましく採用し得る化合物の例として、芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物が挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。1種または2種以上の芳香環含有(メタ)アクリレートと、1種または2種以上の芳香環含有ビニル化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0033】
いくつかの好ましい態様において、モノマー(A1)として、1分子中に2以上の芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーが用いられる。1分子内に2以上の芳香環を有するモノマー(芳香環複数含有モノマー)を含むモノマー成分によると、粘着剤の光学特性に関して高い高屈折率化効果が得られやすい。
芳香環複数含有モノマーの例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマー、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有するモノマー、縮合芳香環構造を有するモノマー、フルオレン構造を有するモノマー、ジナフトチオフェン構造を有するモノマー、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマー、等が挙げられる。なかでも、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマー(例えば、後述のフェノキシベンジル(メタ)アクリレート)が好ましく用いられる。芳香環複数含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記リンキング基は、例えばオキシ基(-O-)、チオオキシ基(-S-)、オキシアルキレン基(例えば-O-(CH-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、チオオキシアルキレン基(例えば-S-(CH-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、直鎖アルキレン基(すなわち-(CH-基、ここでnは1~6、好ましくは1~3)、上記オキシアルキレン基、上記チオオキシアルキレン基および上記直鎖アルキレン基におけるアルキレン基が部分ハロゲン化または完全ハロゲン化された基、等であり得る。粘着剤の柔軟性等の観点から、上記リンキング基の好適例として、オキシ基、チオオキシ基、オキシアルキレン基および直鎖アルキレン基が挙げられる。2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマーの具体例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート(例えば、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート)、チオフェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーの例としては、ビフェニル構造含有(メタ)アクリレート、トリフェニル構造含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ビフェニル等であり得る。具体例としては、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
上記縮合芳香環構造を有するモノマーの例としては、ナフタレン環含有(メタ)アクリレート、アントラセン環含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ナフタレン、ビニル基含有アントラセン等が挙げられる。具体例としては、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート(別名:1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
上記フルオレン構造を有するモノマーの具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、フルオレン構造を有するモノマーは、2つのベンゼン環が直接化学結合した構造部分を含むため、上記2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0038】
上記ジナフトチオフェン構造を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有ジナフトチオフェン、ビニル基含有ジナフトチオフェン、(メタ)アリル基含有ジナフトチオフェン、等が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位にCHCH(R)C(O)OCH-が結合した構造の化合物。ここで、Rは水素原子またはメチル基である。)、(メタ)アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位に、CHCH(R)C(O)OCH(CH)-またはCHCH(R)C(O)OCHCH-が結合した構造の化合物。ここで、Rは水素原子またはメチル基である。)、ビニルジナフトチオフェン(例えば、ナフトチオフェン環の5位または6位にビニル基が結合した構造の化合物)、(メタ)アリルオキシジナフトチオフェン、等が挙げられる。なお、ジナフトチオフェン構造を有するモノマーは、ナフタレン構造を含むことにより、またチオフェン環と2つのナフタレン構造とが縮合した構造を有することによっても、上記縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0039】
上記ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有ジベンゾチオフェン、ビニル基含有ジベンゾチオフェン、等が挙げられる。なお、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーは、チオフェン環と2つのベンゼン環とが縮合した構造を有することから、上記縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。
なお、ジナフトチオフェン構造およびジベンゾチオフェン構造は、いずれも、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造には該当しない。
【0040】
いくつかの好ましい態様において、モノマー(A1)として、1分子中に1つの芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーが用いられる。1分子中に1つの芳香環を有するモノマー(芳香環単数含有モノマー)は、例えば、粘着剤組成物の塗工性(例えば粘度)の調整、粘着剤の柔軟性の向上や粘着特性の調整、透明性の向上等に役立ち得る。芳香環単数含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、1分子中に1つの芳香環を有するモノマーは、相溶性や屈折率等の観点から、芳香環複数含有モノマーと組み合わせて用いることができる。
【0041】
芳香環単数含有モノマーの例としては、べンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等の、炭素芳香環含有(メタ)アクリレート;2-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニルアクリレート等の、臭素置換芳香環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブチルスチレン等の、炭素芳香環含有ビニル化合物;N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の、複素芳香環上にビニル置換基を有する化合物;等が挙げられる。
【0042】
モノマー(A1)として、上述のような各種芳香環含有モノマーにおけるエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させた構造のモノマーを使用してもよい。このようにエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させたモノマーは、元のモノマーのエトキシ化物として把握され得る。上記オキシエチレン鎖におけるオキシエチレン単位(-CHCHO-)の繰返し数は、例えば1~8であってよく、粘着剤組成物の調製容易性や光硬化性等の観点から1~6であってもよく、1~4であってもよく、1~3または1~2であってもよく、1であってもよい。エトキシ化された芳香環含有モノマーの具体例としては、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化クレゾール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
モノマー(A1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上、25重量%以上または40重量%以上であり得る。いくつかの態様において、モノマー(A1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、より高屈折率を示す粘着剤を実現しやすくする観点から、例えば50重量%以上または50重量%超であってよく、60重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上または98重量%以上でもよい。モノマー(A1)の実質的に100重量%が芳香環複数含有モノマーであってもよい。すなわち、モノマー(A1)として1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーのみを使用してもよい。また、いくつかの態様において、例えば屈折率と他の特性とのバランスを考慮して、モノマー(A1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、85重量%以下であってもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー(A1)における芳香環複数含有モノマーの含有量が5重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環複数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0044】
モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量(すなわち、粘着剤組成物に含まれるモノマー成分全体のうち芳香環複数含有モノマーの占める量。以下同様。)は、特に制限されず、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、25重量%以上でもよい。いくつかの態様において、より高屈折率を示す粘着剤を実現しやすくする観点から、上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、例えば35重量%超であってもよく、50重量%超であることが有利であり、60重量%超であることが好ましく、70重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上(例えば90重量%超)でもよく、95重量%以上でもよく、98重量%以上または99重量%以上でもよく、100重量%であってもよい。また、いくつかの態様において、例えば屈折率と他の特性とのバランスを考慮して、上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってよく、98重量%以下であってもよく、96重量%以下でもよく、93重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、25重量%以下、15重量%以下または5重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量が3重量%未満である態様でも実施し得る。
【0045】
モノマー(A1)における芳香環単数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上、10重量%以上または15重量%以上であってよく、25重量%以上であってもよく、50重量%以上であってもよく、70重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよい。モノマー(A1)の実質的に100重量%が芳香環単数含有モノマーであってもよい。すなわち、モノマー(A1)として1種または2種以上の芳香環単数含有モノマーのみを使用してもよい。また、いくつかの態様において、モノマー(A1)における芳香環単数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー(A1)における芳香環単数含有モノマーの含有量が5重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環単数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0046】
モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば3重量%以上、10重量%以上または25重量%以上であってよく、35重量%超であってもよく、50重量%超であってもよく、60重量%以上、70重量%超、75重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または98重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。また、上記モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、90重量%以下であってもよく、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下または70重量%以下であってもよく、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、25重量%以下、15重量%以下または5重量%以下であってもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量が3重量%未満である態様でも実施し得る。
【0047】
いくつかの好ましい態様において、モノマー(A1)の少なくとも一部として、高屈折率モノマーを好ましく採用し得る。ここで「高屈折率モノマー」とは、その屈折率が、例えば凡そ1.510以上、好ましくは凡そ1.530以上、より好ましくは凡そ1.550以上であるモノマーのことを指す。高屈折率モノマーの屈折率の上限は特に制限されず、例えば3.000以下であり、2.500以下でもよく、2.000以下でもよく、1.900以下でもよく、1.800以下でもよく、1.700以下でもよい。高屈折率モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
モノマーの屈折率は、アッベ屈折計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定される。アッベ屈折計としては、ATAGO社製の型式「DR-M4」またはその相当品を用いることができる。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0049】
上記高屈折率モノマーとしては、ここに開示される芳香環含有モノマー(A1)の概念に包含される化合物(例えば、上記で例示した化合物および化合物群)のなかから、該当する屈折率を有するものを適宜採用することができる。具体例としては、m-フェノキシベンジルアクリレート(屈折率:1.566、ホモポリマーのTg:-35℃)、1-ナフチルメチルアクリレート(屈折率:1.595、ホモポリマーのTg:31℃)、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート(オキシエチレン単位の繰返し数:1、屈折率:1.578)、ベンジルアクリレート(屈折率(nD20):1.519、ホモポリマーのTg:6℃)、フェノキシエチルアクリレート(屈折率(nD20):1.517、ホモポリマーのTg:2℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(屈折率:1.510、ホモポリマーのTg:-35℃)、6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTA、屈折率:1.75)、6-メタアクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTMA、屈折率:1.726)、5-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(5EDNTA、屈折率:1.786)、6-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(6EDNTA、屈折率:1.722)、6-ビニルジナフトチオフェン(6VDNT、屈折率:1.802)、5-ビニルジナフトチオフェン(略号:5VDNT、屈折率:1.793)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
モノマー(A1)における高屈折率モノマー(すなわち、屈折率が凡そ1.510以上、好ましくは凡そ1.530以上、より好ましくは凡そ1.550以上である芳香環含有モノマー)の含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの態様において、より高い屈折率を得やすくする観点から、モノマー(A1)における高屈折率モノマーの含有量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上であってもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(A1)の実質的に100重量%が高屈折率モノマーであってもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立する観点から、モノマー(A1)における高屈折率モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。他のいくつかの態様において、粘着特性および/または光学特性を考慮して、モノマー(A1)における高屈折率モノマーの含有量は、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー(A1)における高屈折率モノマーの含有量が5重量%未満である態様でも実施し得る。高屈折率モノマーを使用しなくてもよい。
【0051】
モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、35重量%超でもよい。いくつかの態様において、より高い屈折率を得やすくする観点から、モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、例えば50重量%超であってもよく、70重量%超であってもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、100重量%であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、例えば高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立する観点から、100重量%未満であってよく、98重量%以下であってよく、98重量%以下、96重量%以下、93重量%以下または90重量%以下であってもよく、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下または70重量%以下であってもよく、50重量%以下、25重量%以下、15重量%以下または5重量%以下であってもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量が3重量%未満である態様でも実施し得る。
【0052】
いくつかの態様において、モノマー(A1)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが10℃以下である芳香環含有モノマー(以下、「モノマーL」と表記することがある。)を採用することができる。モノマー(A1)の一部または全部としてモノマーLを採用することは、高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立する観点から好ましい。モノマーLのTgは、例えば5℃以下であってもよく、0℃以下でもよく、-10℃以下でもよく、-20℃以下、-25℃以下または-30℃以下でもよい。モノマーLのTgの下限は特に制限されない。屈折率向上効果とのバランスを考慮して、いくつかの態様において、モノマーLのTgは、例えば-70℃以上であってよく、-55℃以上でもよく、-45℃以上でもよい。他のいくつかの態様において、モノマーLのTgは、例えば-30℃以上であってよく、-10℃以上でもよく、0℃以上でもよく、3℃以上でもよい。モノマーLは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
モノマーLとしては、ここに開示される芳香環含有モノマー(A1)の概念に包含される化合物(例えば、上記で例示した化合物および化合物群)のなかから、該当するTgを有するものを適宜採用することができる。モノマーLとして使用し得る芳香環含有モノマーの好適例として、m-フェノキシベンジルアクリレート(ホモポリマーのTg:-35℃)、ベンジルアクリレート(ホモポリマーのTg:6℃)、フェノキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:2℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(ホモポリマーのTg:-35℃)等が挙げられる。
【0054】
モノマー(A1)におけるモノマーLの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、40重量%以上でもよく、50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(A1)の実質的に100重量%がモノマーLであってもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立する観点から、モノマー(A1)におけるモノマーLの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、50重量%以下、25重量%以下、10重量%以下または5重量%以下でもよい。
【0055】
モノマー成分におけるモノマーLの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、35重量%超でもよく、50重量%超でもよく、70重量%超でもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、100重量%であってもよい。上記モノマー成分におけるモノマーLの含有量は、高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立する観点から、100重量%未満であってよく、98重量%以下であってもよく、96重量%以下でもよく、93重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、65重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、10重量%以下または5重量%以下でもよい。
【0056】
いくつかの態様において、芳香環含有モノマー(A1)として、モノマーL(すなわち、ホモポリマーのTgが10℃以下である芳香環含有モノマー)と、Tgが10℃よりも高いモノマーHとを組み合わせて用いてもよい。モノマーHのTgは、例えば10℃超であってよく、15℃超であってもよく、20℃超であってもよい。モノマーLとモノマーHとを組み合わせて用いることにより、モノマー成分における芳香環含有モノマー(A1)の含有量の多い粘着剤において、該粘着剤の高屈折率化と、被着体への密着に適した柔軟性とを、より高レベルで両立させることができる。モノマーLとモノマーHとの使用量比は、かかる効果が好適に発現するように設定することができ、特に限定されない。
【0057】
いくつかの態様において、芳香環含有モノマー(A1)は、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造(例えばビフェニル構造)を含まない化合物から好ましく選択され得る。例えば、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を含む化合物の含有量が5重量%未満(より好ましくは3重量%未満であり、0重量%でもよい。)である組成のモノマー成分が好ましい。このように2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を含む化合物の使用量を制限することは、高屈折率と柔軟性とをよりバランスよく両立させた粘着剤を実現する観点から有利となり得る。
【0058】
モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有量は、特に制限されず、所望の特性または構造を有する粘着剤が得られるように設定することができる。いくつかの態様において、上記モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有量は、例えば30重量%以上であってよく、高屈折率化の観点から50重量%以上であってもよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上または70重量%超でもよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または98重量%以上でもよく、100重量%であってもよい。また、上記モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有量は、100重量%未満であってもよく、特性のバランスを考慮して98重量%以下であってもよく、96重量%以下でもよく、93重量%以下でもよく、90重量%以下または90重量%未満でもよく、85重量%未満でもよく、80重量%未満でもよく、70重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、10重量%以下または5重量%以下でもよい。
【0059】
(モノマー(A2))
粘着剤組成物に含まれるモノマー成分は、上記モノマー(A1)に加えて、モノマー(A2)をさらに含んでいてもよい。上記モノマー(A2)は、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)およびカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)の少なくとも一方に該当するモノマーである。上記水酸基含有モノマーは、1分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを有する化合物である。上記カルボキシ基含有モノマーは、1分子内に少なくとも1つのカルボキシ基と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを含む化合物である。モノマー(A2)は、粘着剤の凝集力の調節、接着力等の粘着特性の改善、任意に用いられ得る架橋剤やシランカップリング剤との反応性の付与等に役立ち得る。モノマー(A2)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。モノマー(A2)は、芳香環を含有してもよく、芳香環を含有しなくてもよい。いくつかの態様において、モノマー(A2)としては、芳香環を含有しないモノマーが好ましく用いられる。なお、モノマー(A2)は、前述のモノマー(A1)とは異なるモノマーとして定義され、例えば、前述のモノマー(A1)は、水酸基およびカルボキシ基を有しないモノマーとして定義され得る。
【0060】
モノマー(A2)の有するエチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましく、柔軟性向上や粘着性の観点からアクリロイル基がより好ましい。粘着剤の柔軟性の観点から、モノマー(A2)としては、1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1である化合物(すなわち、単官能モノマー)が好ましく用いられる。
【0061】
水酸基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましく使用し得る水酸基含有モノマーの例として、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(Tg:-40℃)およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(Tg:-15℃)が挙げられる。室温域における柔軟性向上の観点から、よりTgの低いアクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。モノマー(A2)を使用するいくつかの好ましい態様において、モノマー(A2)の50重量%以上(例えば50重量%超、70重量%超または85重量%超)がアクリル酸4-ヒドロキシブチルであり得る。水酸基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
モノマー(A2)として水酸基含有モノマーを使用するいくつかの態様において、上記水酸基含有モノマーは、メタクリロイル基を有しない化合物から選択される1種または2種以上であり得る。メタクリロイル基を有しない水酸基含有モノマーの好適例として、上述した各種のアクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。例えば、モノマー(A2)として使用する水酸基含有モノマーのうち50重量%超、70重量%超または85重量%超がアクリル酸ヒドロキシアルキルであることが好ましい。アクリル酸ヒドロキシアルキルの使用により、架橋点の提供や適度な凝集力の付与に役立つヒドロキシ基をポリマーに導入することができ、かつ対応するメタクリル酸ヒドロキシアルキルのみを使用する場合に比べて室温域における柔軟性や粘着性の良い粘着剤が得られやすい。
【0063】
カルボキシ基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル等のアクリル系モノマーのほか、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましく使用し得るカルボキシ基含有モノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0064】
また、いくつかの態様において、粘着剤の柔軟性向上の観点から、カルボキシ基含有モノマーとして、例えば下記式(1)で表わされる化合物を使用し得る。
CH2=CR1-COO-R2-OCO-R3-COOH (1)
ここで、上記式(1)中のR1は水素またはメチル基である。R2およびR3は、2価の連結基(具体的には、炭素原子数1~20(例えば2~10、好ましくは2~5)の有機基)であり、互いに同じであってもよく異なっていてもよい。上記式(1)におけるR2およびR3は、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基であり得る。例えば、上記R2およびR3は、炭素原子数2~5のアルキレンであり得る。上記式(1)で表わされるカルボキシ基含有モノマーの具体例としては、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。水酸基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーとを併用してもよい。
【0065】
モノマー成分におけるモノマー(A2)の含有量は、特に制限されず、目的に応じて設定し得る。いくつかの態様において、上記モノマー(A2)の含有量は、例えば0.01重量%以上、0.1重量%以上または0.5重量%以上であってよく、より高い使用効果を得る観点から、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上または15重量%以上としてもよい。モノマー成分におけるモノマー(A2)の含有量の上限は、モノマー(A1)の含有量との合計が100重量%を超えないように設定される。いくつかの態様において、上記モノマー(A2)の含有量は、例えば30重量%以下であってよく、モノマー(A1)の含有量を相対的に多くして高屈折率化を容易とする観点から、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%未満、10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、3重量%未満または1重量%未満であってもよい。モノマー(A2)を使用しなくてもよい。
【0066】
(モノマーA3)
粘着剤組成物に含まれるモノマー成分は、上記モノマー(A1)に加えて、アルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(A3)」ともいう。)をさらに含有していてもよい。モノマー(A3)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
モノマー(A3)としては、炭素原子数1~20の(すなわち、C1-20の)直鎖または分岐鎖状のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。C1-20アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
モノマー(A3)を使用するいくつかの態様において、モノマー(A3)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが-20℃以下(より好ましくは-40℃以下、例えば-50℃以下)であるアルキル(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。このような低Tgのアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の柔軟性向上に役立ち得る。また、接着力等の粘着特性の改善にも役立ち得る。上記アルキル(メタ)アクリレートのTgの下限は特に制限されず、例えば-85℃以上であってよく、-75℃以上でもよく、-65℃以上でもよく、-60℃以上でもよい。このような低Tgアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、アクリル酸イソノニル(iNA)等が挙げられる。他のいくつかの態様において、モノマー(A3)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが-20℃超(例えば-10℃以上)であるアルキル(メタ)アクリレートを採用し得る。上記アルキル(メタ)アクリレートのTgの上限は、例えば10℃以下であり、5℃以下であってもよく、0℃以下でもよい。この範囲のTgを有するアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の柔軟性の調整に役立ち得る。特に限定するものではないが、上記Tgを有するアルキル(メタ)アクリレートは、上記低Tgアルキル(メタ)アクリレートと併用することが好ましい。上記Tgを有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ラウリルアクリレート(LA)が挙げられる。
【0069】
モノマー(A3)を使用するいくつかの態様において、モノマー(A3)として、C4-8アルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なかでも、C4-8アルキルアクリレートの使用がより好ましい。C4-8アルキルアクリレートの具体例としては、BA、2EHA等が挙げられる。C4-8アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C4-8アルキル(メタ)アクリレートの使用により、粘着剤の柔軟性向上を実現しやすい傾向がある。モノマー(A3)としてC4-8アルキル(メタ)アクリレートを使用する態様において、モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうち(すなわち、モノマー(A3)全体のうち)C4-8アルキル(メタ)アクリレートの割合は、30重量%以上であることが適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。
【0070】
モノマー成分におけるC4-8アルキルアクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよく、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上または25重量%以上(例えば30重量%以上)でもよい。モノマー成分におけるC4-8アルキル(メタ)アクリレートの含有量の上限は、例えば50重量%未満であり、35重量%未満であってもよく、25重量%未満、20重量%未満、17重量%未満、12重量%未満、7重量%未満、3重量%未満または1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、C4-8アルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0071】
モノマー(A3)を使用するいくつかの態様において、モノマー(A3)として、C1-6アルキル(メタ)アクリレートが用いられ得る。C1-6アルキル(メタ)アクリレートの使用により、各温度域の貯蔵弾性率を調節することができる。例えば、高温域の貯蔵弾性率を相対的に高く設定したり、低温域と高温域の貯蔵弾性率差が大きくなることを抑制したりすることができる。また、C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、モノマー(A1)との共重合性にも優れる傾向がある。C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C1-6アルキル(メタ)アクリレートとしては、C1-6アルキルアクリレートが好ましく、C2-6アルキルアクリレートがより好ましく、C4-6アルキルアクリレートがさらに好ましい。他のいくつかの態様では、C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくはC1-4アルキル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはC2-4アルキル(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはC2-4アルキルアクリレートである。C1-6アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、BAが挙げられる。
【0072】
モノマー成分におけるC1-6アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよく、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上または25重量%以上(例えば30重量%以上)でもよい。モノマー成分におけるC1-6アルキル(メタ)アクリレートの含有量の上限は、例えば50重量%未満であり、35重量%未満であってもよく、25重量%未満、20重量%未満、17重量%未満、12重量%未満、7重量%未満、3重量%未満または1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、C1-6アルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0073】
モノマー(A3)を使用する他のいくつかの態様において、モノマー(A3)として、C7-12アルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。C7-12アルキル(メタ)アクリレートの使用により、貯蔵弾性率を好ましく低減することができる。C7-12アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C7-12アルキル(メタ)アクリレートとしては、C7-10アルキルアクリレートが好ましく、C7-9アルキルアクリレートがより好ましく、Cアルキルアクリレートがさらに好ましい。C7-12アルキル(メタ)アクリレートの例としては、2EHA、iNA、LAが挙げられ、好適例として2EHAが挙げられる。
【0074】
モノマー成分におけるC7-12アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよく、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上または25重量%以上(例えば30重量%以上)でもよい。モノマー成分におけるC7-12アルキル(メタ)アクリレートの含有量の上限は、例えば50重量%未満であり、35重量%未満であってもよく、25重量%未満、20重量%未満、17重量%未満、12重量%未満、7重量%未満、3重量%未満または1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、C7-12アルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0075】
モノマー(A3)を使用するいくつかの態様において、柔軟性向上の観点から、上記モノマー(A3)の少なくとも一部はアルキルアクリレートであることが好ましい。アルキルアクリレートの使用は、接着力等の粘着特性の点でも有利である。例えば、モノマー(A3)のうち50重量%以上がアルキルアクリレートであることが好ましく、モノマー(A3)におけるアルキルアクリレートの割合は、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、モノマー(A3)の実質的に100重量%がアルキルアクリレートであってもよい。モノマー(A3)として1種または2種以上のアルキルアクリレートのみを使用し、アルキルメタクリレートを使用しない態様であってもよい。
【0076】
モノマー成分がアルキル(メタ)アクリレートを含む態様において、モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、その使用効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよい。モノマー成分におけるモノマー(A3)の含有量の上限は、他のモノマー成分の含有量との合計が100重量%を超えないように設定される。一般にアルキル(メタ)アクリレートの屈折率は比較的低いため、高屈折率化のためには、モノマー成分におけるモノマー(A3)の含有量を制限し、モノマー(A1)の含有量を相対的に多くすることが有利である。かかる観点から、モノマー成分におけるモノマー(A3)の含有量は、例えば50重量%未満であってよく、35重量%未満であってもよく、24重量%以下であってもよく、23重量%未満、20重量%未満、17重量%未満、12重量%未満、7重量%未満、3重量%未満または1重量%未満であってもよい。モノマー(A3)を実質的に使用しなくてもよい。
【0077】
(その他モノマー)
ここに開示される粘着剤組成物におけるモノマー成分は、必要に応じて、上記モノマー(A1)、(A2)、(A3)以外のモノマー(以下、「その他モノマー」という。)を含んでいてもよい。上記その他モノマーは、例えば、粘着剤の柔軟性改善、粘着性能の調整、粘着剤層内における相溶性の改善等の目的で使用することができる。上記その他モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
上記その他モノマーの一例として、オキシエチレン基含有モノマーが挙げられる。オキシエチレン基含有モノマーにおけるオキシエチレン基の繰返し数は、1でもよく、2以上であってもよい。すなわち、オキシエチレン基含有モノマーは、-(CO)-基を含むモノマーとして把握され得る。オキシエチレン基の繰返し数(n)は、例えば1~8であってよく、1~6であってもよく、1~4であってもよく、1~3(例えば2~3)であってもよく、1~2であってもよく、2であってもよく、1であってもよい。オキシエチレン基含有モノマーの具体例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。いくつかの態様における好適例として、メトキシエチルアクリレート(MEA)、エトキシエトキシエチルアクリレート(別名:エチルカルビトールアクリレート、ホモポリマーのTg:-67℃)等が挙げられる。
【0079】
モノマー成分におけるオキシエチレン基含有モノマーの含有量は、特に制限されず、所望の使用効果が得られるように設定し得る。いくつかの態様において、モノマー成分におけるオキシエチレン基含有モノマーの含有量は、例えば0.1重量%以上、0.5重量%以上または1重量%以上とすることができ、より高い使用効果を得る観点から、5重量%以上、10重量%以上または15重量%以上としてもよい。モノマー成分におけるオキシエチレン基含有モノマーの含有量の含有量の上限は、他のモノマー成分の含有量との合計が100重量%を超えないように設定される。いくつかの態様において、モノマー成分におけるオキシエチレン基含有モノマーの含有量は、例えば35重量%以下であってよく、モノマー(A1)の含有量を相対的に多くして高屈折率化を容易とする観点から、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%未満、10重量%未満、7重量%未満、5重量%未満、3重量%未満または1重量%未満であってもよい。オキシエチレン基含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0080】
上記その他モノマーとして、水酸基およびカルボキシ基以外の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)を使用してもよい。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るその他モノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー等が挙げられる。また、ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入することができ、あるいは被着体との密着力の向上や粘着剤内における相溶性の改善に寄与し得るモノマーとして、アミド基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等)、アミノ基含有モノマー(例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、窒素原子含有環を有するモノマー(例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。なお、窒素原子含有環を有するモノマーのなかには、例えばN-ビニル-2-ピロリドンのように、アミド基含有モノマーにも該当するものがある。上記窒素原子含有環を有するモノマーとアミノ基含有モノマーとの関係についても同様である。
【0081】
必要に応じて使用し得るその他モノマーのさらに他の例として、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル等の塩素含有モノマー;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。
【0082】
上記その他モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されず、モノマー成分の合計量が100重量%を超えない範囲で適宜設定し得る。モノマー(A1)の使用による屈折率向上効果を発揮しやすくする観点から、モノマー成分における上記その他モノマーの含有量は、例えば凡そ35重量%以下とすることができ、凡そ25重量%以下(例えば0~25重量%)としてもよく、凡そ20重量%以下(例えば0~20重量%)でもよく、凡そ10重量%以下(例えば0~10重量%)でもよく、凡そ5重量%以下(例えば凡そ1重量%以下)でもよい。上記その他のモノマーを使用しなくてもよい。
【0083】
いくつかの態様において、モノマー成分は、メタクリロイル基含有モノマーの使用量が所定以下に抑えられた組成であり得る。モノマー成分におけるメタクリロイル基含有モノマーの使用量は、例えば5重量%未満であってよく、3重量%未満でもよく、1重量%未満でもよく、0.5重量%未満でもよい。このようにメタクリロイル基含有モノマーの使用量を制限することは、柔軟性や粘着性と高屈折率とをバランスよく両立させた粘着剤を実現する観点から有利となり得る。モノマー成分は、メタクリロイル基含有モノマーを含まない組成(例えば、アクリロイル基含有モノマーのみからなる組成)であってもよい。
【0084】
(モノマー成分としてモノマー(A1)の含有を必須としない粘着剤組成物)
ここに開示される粘着剤組成物は、上記モノマー成分としてモノマー(A1)を含むか否かを問わない態様でも好ましく実施することができる。いくつかの態様において、モノマー成分は、少なくともアルキル(メタ)アクリレートを含み、かつモノマー(A1)の含有を必須としない(すなわち、モノマー(A1)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい)組成であり得る。アルキル(メタ)アクリレートは、その種類や使用量の選択により、粘着剤の柔軟性と凝集力とのバランスの調整に役立ち得る。また、粘着剤内における添加剤の相溶性や、接着力等の粘着特性の改善にも役立ち得る。アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、C1-20アルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。アルキル(メタ)アクリレートとして用いられ得るC1-20アルキル(メタ)アクリレート、C4-8アルキル(メタ)アクリレート、C1-6アルキル(メタ)アクリレート、C7-12アルキル(メタ)アクリレート等の具体例および好適例としては、上述したモノマー(A3)と同様のものが挙げられる。ホモポリマーのTgが所定以下である低Tgアルキル(メタ)アクリレートの使用とその具体例、ホモポリマーのTgが所定以上または所定より高いアルキル(メタ)アクリレートの使用とその具体例、かかるアルキル(メタ)アクリレートと低Tgアルキル(メタ)アクリレートとを併用し得ること等についても、上述したモノマー(A3)と同様である。いくつかの態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一部はC4-9アルキル(メタ)アクリレートであり得る。かかる態様におけるC4-9アルキル(メタ)アクリレートの例示には、上記C4-8アルキル(メタ)アクリレートに加えて、n-ノニル(メタ)アクリレートおよびイソノニル(メタ)アクリレート(例えば、イソノニルアクリレート)が含まれる。
【0086】
モノマー(A1)の含有を必須としないモノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば30重量%以上であってよく、40重量%以上でもよく、50重量%以上(例えば50重量%超)でもよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、97重量%以上でもよい。モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、100重量%であってもよく、粘着剤の凝集力や熱特性(例えば耐熱特性)の観点から、99.8重量%以下(例えば99.5重量%以下)であることが適当であり、99重量%以下でもよく、98重量%以下でもよく、95重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。
【0087】
いくつかの態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートとして、少なくともC4-9アルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なかでも、C4-9アルキルアクリレートの使用がより好ましい。C4-9アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C4-9アルキル(メタ)アクリレートの使用により、粘着剤の柔軟性向上を実現しやすく、また、良好な粘着特性(接着力等)が得られやすい傾向がある。
モノマー成分におけるC4-9アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば5重量%以上であってよく、より高い使用効果を得る観点から10重量%以上であることが適当であり、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上または85重量%以上であってもよい。モノマー成分におけるC4-9アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、100重量%であってもよく、粘着剤の凝集力や熱特性の観点から、99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下または75重量%以下であってもよい。
また、モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-9アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば30重量%以上であってよく、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよく、実質的に100重量%であってもよい。
いくつかの態様では、モノマー成分中に含まれるC4-9アルキルアクリレートが少なくともC7-9アルキルアクリレート(例えば2EHA)を含むことが好ましい。C4-9アルキルアクリレートのうちC7-9アルキルアクリレートの割合は、例えば30重量%以上であってよく、50重量%超でもよく、70重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、100重量%でもよい。
【0088】
モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有を必須としない態様において、上記モノマー成分は、アルキル(メタ)アクリレートとともに、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、上述したモノマー(A2)および/または(A1)に該当するモノマーならびに上記その他モノマーとして例示したモノマーからなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0089】
いくつかの態様において、モノマー成分は、上記モノマー(A2)に該当するモノマーを含み得る。モノマー(A2)に該当するモノマーの具体例や好適例、使用量等は、モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有が必須である態様についての説明と同様であり得る。少なくとも水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。水酸基含有モノマーの好適例として、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)が挙げられる。モノマー成分における水酸基含有モノマーの使用量は、例えば0.01重量%以上であってよく、より高い使用効果を得る観点から、0.1重量%以上であることが適当であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であってもよく、1.5重量%以上であってもよく、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上または10重量%以上であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分における水酸基含有モノマーの使用量は、粘着剤の低温特性(例えば、低温下における柔軟性)等を考慮して、例えば30重量%以下であってよく、25重量%以下であってもよく、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、4重量%以下または2重量%以下でもよい。水酸基含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0090】
いくつかの態様において、モノマー成分は、窒素原子含有環を有するモノマーを含み得る。窒素原子含有環を有するモノマーは、粘着剤の凝集力の調製や、上記モノマー成分から形成されるポリマーと他の成分との粘着剤内における相溶性向上に役立ち得る。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、N-ビニル環状アミドや、(メタ)アクリロイル基を有する環状アミド等が好ましく用いられ得る。窒素原子含有環を有するモノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
N-ビニル環状アミドの具体例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。特に好ましい例として、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタムが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの具体例としては、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。好適例として、N-アクリロイルモルホリン(ACMO)が挙げられる。
【0092】
モノマー成分における窒素原子含有環を有するモノマーの使用量は、例えば0.1重量%以上であってよく、より高い使用効果を得る観点から、1重量%以上であることが適当であり、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上または12重量%以上であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分における窒素原子含有環を有するモノマーの使用量は、粘着剤の低温特性(例えば、低温下における柔軟性)等を考慮して、例えば30重量%以下であってよく、25重量%以下であってもよく、22重量%以下、17重量%以下、13重量%以下、10重量%以下または5重量%以下でもよい。窒素原子含有環を有するモノマーを使用しなくてもよい。
【0093】
いくつかの態様において、共重合性モノマーとして、窒素原子含有環を有するモノマーと水酸基含有モノマーとを併用することができる。この場合、窒素原子含有環を有するモノマーと水酸基含有モノマーとの合計量は、例えば、モノマー成分の0.1重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上であり、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上(例えば9重量%以上)、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上または25重量%以上としてもよい。また、いくつかの態様において、窒素原子含有環を有するモノマーと水酸基含有モノマーとの合計量は、粘着剤の低温特性(例えば、低温下における柔軟性)等を考慮して、例えば、モノマー成分の50重量%以下または50重量%未満であってよく、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下または15重量%以下(例えば12重量%以下)であってもよい。
【0094】
モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有を必須としない態様において、モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有量は特に限定されず、他のモノマーの含有量との合計が100重量%を超えないように設定することができる。モノマー(A1)の使用による効果を得やすくする観点から、いくつかの態様において、上記モノマー成分におけるモノマー(A1)の含有量は、1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上であり得る。また、粘着剤の柔軟性向上の観点から、いくつかの態様において、上記モノマー(A1)の含有量は、例えば70重量%未満であってよく、50重量%未満であってもよく、30重量%未満であってもよく、20重量%以下であってもよく、10重量%以下であってもよく、5重量%以下でもよく、3重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。モノマー成分がモノマー(A1)を実質的に含有しなくてもよい。
【0095】
(多官能性モノマー)
ここに開示される粘着剤組成物におけるモノマー成分には、該モノマー成分がモノマー(A1)の含有を必須とする態様および必須としない態様のいずれにおいても、任意成分として多官能性モノマーを含ませることができる。多官能性モノマーは、粘着剤において共重合性架橋剤として機能することにより、該粘着剤の凝集力、柔軟性、熱特性等の調節に役立ち得る。多官能モノマーの例としては、1分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する各種の多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能ビニル系モノマー、アリル(メタ)アクリレートやビニル(メタ)アクリレートのように(メタ)アクリロイル基と他のエチレン性不飽和基とを組み合わせて有する多官能性モノマー、等が挙げられる。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、多官能(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。
【0096】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。
【0097】
多官能モノマーを使用する態様における使用量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。モノマー成分における多官能モノマーの含有量は、例えば0.001重量%以上とすることができ、より高い使用効果を得やすくする観点から、0.005重量%以上としてもよく、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上または1重量%以上としてもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分における多官能モノマーの含有量は、粘着剤の柔軟性等の観点から、例えば10重量%以下とすることができ、5重量%以下または5重量%未満としてもよく、3重量%以下としてもよく、1重量%以下としてもよく、1重量%未満(例えば0.9重量%以下)、0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下(例えば0.1重量%未満)、0.09重量%以下、0.08重量%以下または0.07重量%以下としてもよい。なお、多官能性モノマーは、粘着剤組成物の塗工性の観点から、典型的には未重合の形態で粘着剤組成物に含まれる。
【0098】
(カルボキシ基含有モノマーの使用量)
ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの態様では、粘着剤の着色または変色(例えば黄変)を抑制する観点から、モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの使用量が制限されている。モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの使用量は、例えば1重量%未満であってよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよく、0.05重量%未満でもよい。このようにカルボキシ基含有モノマーの使用量が制限されていることは、ここに開示される粘着剤に接触または近接して配置され得る金属材料(例えば、被着体上に存在し得る金属配線や金属膜等)の腐食を抑制する観点からも有利である。ここに開示される技術は、上記モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含有しない態様で実施され得る。
同様の理由から、いくつかの態様において、モノマー成分は、酸性官能基(カルボキシ基の他、スルホン酸基、リン酸基等を包含する。)を有するモノマーの使用量が制限されていてもよい。かかる態様のモノマー成分における酸性官能基含有モノマーの使用量の上限値としては、上述したカルボキシ基含有モノマーの使用量の上限値を適用することができる。ここに開示される技術は、上記モノマー成分が酸性基含有モノマーを含有しない態様で実施され得る。
【0099】
(ガラス転移温度(計算Tg))
ここに開示される粘着剤組成物に含まれるモノマー成分は、該モノマー成分の組成に基づくガラス転移温度が凡そ15℃以下となる組成を有することが好ましい。ここで、モノマー成分の組成に基づくガラス転移温度とは、特記しない場合、上記モノマー成分の組成に基づいて(ただし、多官能性モノマーを含む組成のモノマー成分においては、該モノマー成分のうち単官能モノマーのみの組成に基づいて)、Foxの式により求められるガラス転移温度をいう(以下、「計算Tg」ということもある。)。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年)等の公知資料に記載の値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。メーカー等からホモポリマーのガラス転移温度の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。公知資料にホモポリマーのTgが記載されていない場合は、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0100】
いくつかの態様において、上記計算Tgは、10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。上記Tgは、-10℃以下であってもよく、-20℃以下でもよく、-25℃以下でもよく、-30℃以下でもよく、-35℃以下でもよく、-35℃未満(例えば-36℃以下)でもよい。上記Tgが低いことは、粘着剤の柔軟性向上等の観点から有利となり得る。また、上記Tgは、例えば-60℃以上であってよく、粘着剤の高屈折率化を容易とする観点から、-50℃以上であってもよく、-45℃超でもよく、-40℃超でもよく、-30℃超、-20℃超、-10℃超または-5℃以上でもよい。
【0101】
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物は、該粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分におけるモノマー成分の含有量が25重量%以上(例えば、25重量%以上99重量%以下)であることが適当である。ここで、光硬化型粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分とは、該粘着剤組成物を光硬化させて得られる粘着剤を形成する成分をいう。例えば、上記粘着剤においてポリマーを構成し、上記粘着剤組成物中においては未重合物または部分重合物の形態で含まれるモノマー成分は、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分に該当する。一方、粘着剤の形成過程で(典型的には光照射前に)除去されるべき成分であって、任意成分として粘着剤組成物に含まれ得る溶媒は、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分に該当しない。
【0102】
いくつかの態様において、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分におけるモノマー成分の含有量は、粘着剤の透明性や粘着特性の観点から、30重量%以上であることが好ましく、35重量%以上であることがより好ましく、40重量%以上でもよく、45重量%以上でもよく、47重量%以上でもよく、50重量%以上でもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分におけるモノマー成分の含有量は、例えば98重量%以下、95重量%以下または90重量%以下であってよく、無機粒子による屈折率向上効果を得やすくする観点から85重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよく、55重量%以下でもよく、50重量%以下でもよい。なお、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分におけるモノマー成分の含有量は、通常、該粘着剤組成物から形成される粘着剤におけるポリマーの含有量に概ね対応する。したがって、上述した粘着剤形成成分におけるモノマー成分の含有量は、粘着剤におけるポリマーの含有量と読み替えることができる。
【0103】
(無機粒子)
ここに開示される粘着剤組成物は、上述のようなモノマー成分に加えて、無機粒子を含む。モノマー成分と無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物を光硬化させることにより、上記モノマー成分に由来するポリマーと上記無機粒子とを含む粘着剤が形成される。上記粘着剤組成物において、無機粒子はモノマー成分に分散していることが好ましい。
【0104】
無機粒子の種類は、特に限定されず、金属化合物粒子(例えば金属酸化物粒子)および金属粒子のなかから、所望の目的(例えば屈折率の向上)に貢献し得る1種または2種以上を選定して用いることができる。金属化合物粒子を構成する材料の好適例としては、チタニア(酸化チタン、TiO)、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO)、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、チタン酸バリウム、酸化ニオブ(Nb等)等の金属酸化物が挙げられる。このような金属酸化物粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジルコニア粒子やチタニア粒子が好ましく、ジルコニア粒子が特に好ましい。金属酸化物以外の金属化合物粒子の構成材料としては、例えば水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物および水和金属化合物が挙げられる。また、金属粒子としては、例えば鉄系や亜鉛系、タングステン系、白金系の金属材料により構成された金属粒子が挙げられる。ここに開示される粘着剤組成物の調製に用いられる無機粒子(例えば金属酸化物粒子)は、特段の表面処理が施されていないものであってもよく、表面処理(例えば、疎水化処理)が施されたものであってもよい。なお、この明細書における無機粒子は、カーボンブラック粒子を含まず、カーボンブラック粒子とは異なる粒子として定義され得る。
【0105】
いくつかの態様において、上記無機粒子としては、例えば1.60以上、好ましくは1.70以上、より好ましくは1.80以上(例えば2.00以上)の屈折率を有する材料から構成された粒子の1種または2種以上が用いられ得る。無機粒子を構成する材料の屈折率の上限は、特に限定されず、粘着剤との相溶性を考慮した取扱い性等の観点から、例えば3.00以下であってよく、2.80以下であってもよく、2.50以下または2.20以下であってもよい。ここで、無機粒子を構成する材料の屈折率とは、当該材料の単層膜(屈折率測定が可能な膜厚とする。)につき、市販の分光エリプソメーターを用いて23℃の条件で測定される屈折率である。測定される波長領域は、粘着剤層の表面の屈折率と同様である。分光エリプソメーターとしては、例えば製品名「EC-400」(JA.Woolam社製)またはその相当品が用いられる。
【0106】
上記無機粒子(例えば金属酸化物粒子)としては、粘着剤の光学特性(例えば透明性)や粘着特性の観点から、平均粒子径が凡そ100nm以下のものが好ましく用いられる。いくつかの態様において、ここに開示される粘着剤組成物の調製に用いられる無機粒子の平均粒子径は、凡そ70nm以下であることが適当であり、凡そ50nm以下(例えば凡そ30nm以下)であることが好ましく、凡そ20nm以下であってもよく、凡そ15nm以下であってもよく、凡そ10nm以下、凡そ7nm以下、凡そ5nm以下または凡そ4nm以下であってもよい。また、いくつかの態様において、上記無機粒子の平均粒子径は、凡そ1nm以上であることが適当であり、凡そ1.5nm以上であってもよく、凡そ2nm以上または凡そ2.5nm以上であってもよい。なお、上記平均粒子径は、動的光散乱法により測定される粒度分布におけるメジアン径(D50)である。
【0107】
無機粒子の使用量は、特に限定されず、所望の使用効果が得られるように設定し得る。ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する無機粒子の含有量は、例えば1重量部以上、3重量部以上または5重量部以上とすることができ、より高い使用効果(例えば、屈折率向上効果)を得やすくする観点から、10重量部以上、20重量部以上、35重量部以上または50重量部以上としてもよく、60重量部以上、70重量部以上または80重量部以上としてもよく、90重量部以上または100重量部以上としてもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する無機粒子の含有量は、例えば200重量部以下であってよく、粘着剤の透明性や粘着特性の観点から170重量部以下であってもよく、150重量部以下でもよく、130重量部以下でもよく、120重量部以下、110重量部以下、100重量部以下、または90重量部以下であってもよい。
【0108】
いくつかの態様において、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分における無機粒子の含有量は、例えば1重量%以上であってよく、無機粒子による屈折率向上効果を得やすくする観点から、3重量%以上であることが適当であり、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上、25重量%以上または30重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、40重量%以上でもよく、45重量%以上でもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分における無機粒子の含有量は、例えば80重量%以下であってよく、粘着剤の透明性や粘着特性の観点から、75重量%以下であることが適当であり、70重量%以下であることが好ましく、65重量%以下でもよく、60重量%以下でもよく、55重量%以下でもよく、50重量%以下でもよい。なお、粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分における無機粒子の含有量は、通常、該粘着剤組成物から形成される粘着剤における無機粒子の含有量に概ね対応する。したがって、上述した粘着剤形成成分における無機粒子の含有量は、粘着剤における無機粒子の含有量と読み替えることができる。
【0109】
(分散剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、任意成分として分散剤を含む組成であり得る。分散剤としては、1分子内に親水部と疎水部とを有する化合物を用いることができる。このような構造を有する化合物は、例えば親水部が無機粒子への親和性を示す一方、疎水部がモノマー成分に対して親和性を示すことによって、無機粒子のモノマー成分への分散性の向上や、粘着剤の透明性向上等に貢献し得る。分散剤は、エチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0110】
上記親水部は、無機粒子に対して吸着性または反応性を示す官能基Fを有することが好ましい。いくつかの態様において、上記親水部は、官能基Fとして、アルカリ性基および酸性基のいずれを有していてもよく、両方を有していてもよい。官能基Fは、無機粒子の種類、サイズ、表面状態などに応じて、適宜選択することができる。官能基Fとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基の他、窒素原子含有基、硫黄原子含有基、リン原子含有基、ケイ素原子含有基などを用いることができる。ここに開示される分散剤が1分子中に有する官能基Fの数は、1でもよく、2以上(例えば2~5程度)でもよい。1分子中に2以上の官能基Fを有する分散剤において、それらの官能基Fの種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0111】
上記親水部は、鎖状構造部を有していてもよく、鎖状構造部と環状構造部との複合構造であってもよい。ここに開示される分散剤は、例えば、官能基Fと疎水部とが上記鎖状構造部を介して連結された構造;上記鎖状構造部の一端側が疎水部に連結され、該鎖状構造部の側鎖に官能基Fを有する構造;上記鎖状構造部の一端側が疎水部に連結され、該鎖状構造部の他端側に官能基Fを有しない構造(例えば、鎖状構造部の他端側が開放された構造);等の構造を含み得る。これらの構造を組み合わせて含む分散剤であってもよい。
【0112】
分散剤は、公知の界面活性剤から選択することもできる。例えば、アニオン性界面活性剤(例えば、カルボン酸型、リン酸エステル型、硫酸エステル型、スルホン酸型等)、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等から選択される1種または2種以上を用いることができる。なかでもアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0113】
分散剤の使用量は特に制限されず、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で適切に設定し得る。いくつかの態様において、無機粒子100重量部に対する分散剤の使用量は、例えば0.1重量部以上であってよく、より高い効果を得やすくする観点から、0.5重量部以上であってもよく、1.0重量部以上であってもよい。また、いくつかの態様において、無機粒子100重量部に対する分散剤の使用量は、例えば30重量部未満とすることができ、20重量部未満としてとしてもよい。分散剤の使用量は、分散剤の種類や、無機粒子の種類などに応じて適宜選択できる。
【0114】
いくつかの態様において、ここに開示される粘着剤組成物に含まれる粘着剤形成成分における分散剤の含有量(粘着剤における分散剤の含有量と読み替えることができる。以下同じ。)は、例えば0.1重量%以上であってよく、より高い効果を得やすくする観点から1.0重量%以上であってもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤形成成分における分散剤の含有量は、例えば20重量%未満であってよい。
【0115】
(光重合開始剤)
ここに開示される粘着剤組成物には、硬化促進等の目的で、光重合開始剤を含有させることができる。活性エネルギー線として紫外線(UV)等の光を利用する場合は、粘着剤組成物に光重合開始剤を配合することが特に好ましい。光重合開始剤としては、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0116】
ケタール系光重合開始剤の具体例には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(例えば、商品名「Omnirad 651」、IGM Resins B.V.社製)等が含まれる。
アセトフェノン系光重合開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(例えば商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン等が含まれる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の具体例には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。α-ケトール系光重合開始剤の具体例には、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤の具体例には、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光重合開始剤の具体例には、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光重合開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。チオキサントン系光重合開始剤の具体例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0117】
粘着剤組成物における光重合開始剤の含有量は、特に限定されず、所望の光硬化性が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、光重合開始剤の含有量(2種以上の光重合開始剤を含む態様では、それらの合計含有量)は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.005重量部以上とすることができ、0.01重量部以上とすることが好ましく、0.05重量部以上としてもよく、0.10重量部以上としてもよく、0.15重量部以上としてもよく、0.20重量部以上としてもよい。光重合開始剤の含有量の増大により、粘着剤層の光硬化性が向上する傾向にある。また、モノマー成分100重量部に対する光重合開始剤の含有量は、凡そ10重量部以下とすることが適当であり、7重量部以下とすることが好ましく、5重量部以下としてもよく、3重量部以下、2重量部以下または1重量部以下としてもよい。光重合開始剤の含有量が多すぎないことは、粘着剤組成物の保存安定性や取扱い性等の観点から有利となり得る。
【0118】
(可塑剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて可塑剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。可塑剤を含む態様において、該可塑剤は、例えば以下に挙げるものから、目的に応じて適切なものを選択して用いることができる。光硬化により得られる粘着剤において可塑化効果を発揮しやすくする観点から、エチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有しない可塑剤が好ましい。典型的には、30℃(例えば25℃または20℃)において液状(液体)の化合物が可塑剤として用いられ得る。
【0119】
ここに開示される技術において用いられ得る可塑剤としては、二重結合含有環(好ましくは芳香環、例えば置換基を有するまたは有しないベンゼン環)を有する有機化合物が例示される。上記化合物の例には、二重結合含有環を2以上有する有機化合物、すなわち1分子中に2以上の二重結合含有環を有する化合物が含まれる。そのような化合物は、例えば、1分子中に1または2以上の二重結合含有環を有するエチレングリコール系化合物、1分子中に1または2以上の二重結合含有環を有するシリコーン系化合物、2以上の非縮合二重結合含有環(例えばベンゼン環)がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物であり得る。可塑剤が有する二重結合含有環の数は、1でもよく、屈折率向上の観点から2以上でもよく、3以上または4以上でもよい。また、可塑剤が有する二重結合含有環の数は、可塑化効果の観点から、好ましくは8以下であり、7以下でもよく、6以下でもよく、5以下でもよく、4以下でもよく、3以下でもよい。
【0120】
1分子中に2以上の二重結合含有環を有するエチレングリコール系化合物の例としては、2以上の非縮合二重結合含有環が、オキシエチレン単位(すなわち-(CO)-単位)を介して結合した構造を有する化合物が挙げられる。上記エチレングリコール系化合物が有するオキシエチレン単位の数は、例えば1以上であり、2以上、3以上または4以上(例えば5以上)でもよい。また、上記オキシエチレン単位の数の上限は、例えば10以下であり、8以下または6以下でもよい。上記エチレングリコール系化合物は、例えば、2以上の非縮合二重結合含有環(好ましくは芳香環)が、繰返し数2~10程度または3~6程度のオキシエチレン単位とエステル結合によって連結した構造を有する化合物であり得る。可塑化効果の観点から好ましい例として、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエートが挙げられる。低揮発性の観点から好ましい例として、トリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエートが挙げられる。
【0121】
1分子中に1または2以上の二重結合含有環を有するシリコーン系化合物は、例えば、シロキサン鎖に1または2以上の二重結合含有環(例えば、置換または無置換のフェニル基、ベンジル基等)が結合した構造の化合物であり得る。上記シロキサン鎖は、鎖状であっても環状であってもよい。いくつかの態様において、より高い可塑化効果を得る観点から、上記シロキサン鎖は鎖状(典型的には直鎖状)であることが好ましい。シロキサン鎖に含まれるSi原子数は、例えば2~10であってよく、2~8であってもよく、2~6でもよく、2~5(例えば3~5)または2~4(例えば3~4)でもよい。上記シロキサン鎖に結合した二重結合含有環の数は、該シロキサン鎖のSi原子数をnとして、典型的には2n+2以下であり、可塑化効果を高める観点から2n+1以下であることが適当であり、2n以下であることが好ましく、2n-1以下であってもよく、2n-2以下であってもよい。いくつかの態様において、上記二重結合含有環の数が2以上であるシリコーン系化合物を好ましく採用し得る。上記シリコーン系化合物の具体例として、1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン、1,3,3,5-テトラメチル-1,1,5,5-テトラフェニルトリシロキサン等が挙げられる。
【0122】
上記2以上の非縮合二重結合含有環がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物において、上記リンキング基は、例えばオキシ基(-O-)、チオオキシ基(-S-)、オキシアルキレン基(例えば-O-(CH-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、直鎖アルキレン基(すなわち-(CH-基、ここでnは1~6、好ましくは1~3)等であり得る。上記化合物の具体例としては、フェノキシベンジルアルコール、オキシビス[(アルコキシアルキル)ベンゼン](例えば、4,4′-オキシビス[(メトキシメチル)ベンゼン])等が挙げられる。
【0123】
可塑剤として使用し得る材料の他の例として、液状ロジンエステル等の液状ロジン類、液状カンフェンフェノール等が挙げられる。可塑剤として、公知の可塑剤(例えば、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、アジピン酸系ポリエステル、安息香酸グリコールエステル等の可塑剤)の1種または2種以上を利用してもよい。
【0124】
いくつかの態様において、可塑剤としては、粘着剤の屈折率低下を抑えつつ柔軟性を付与する観点から、屈折率が凡そ1.50以上である高屈折率可塑剤が好ましく用いられ得る。可塑剤の屈折率は、好ましくは凡そ1.51以上、より好ましくは凡そ1.53以上、さらに好ましくは凡そ1.55以上であり、凡そ1.56以上であってもよく、凡そ1.58以上でもよく、凡そ1.60以上でもよく、凡そ1.62以上でもよい。いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製容易性や、粘着剤内における相溶性等の観点から、可塑剤の屈折率は、2.50以下であることが適当であり、2.00以下であることが有利であり、1.90以下でもよく、1.80以下でもよく、1.70以下でもよい。
なお、可塑剤の屈折率は、モノマーの屈折率と同様に、アッベ屈折計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定される。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0125】
可塑剤は、ここに開示される技術による効果が著しく損なわれない範囲で、適当量用いられ得る。モノマー成分100重量部に対する可塑剤の使用量は、例えば0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上、5重量部以上または10重量部以上とすることができ、また、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、30重量部以下または20重量部以下とすることができる。いくつかの態様では、可塑化効果の安定性の観点から、モノマー成分100重量部に対する任意可塑剤の使用量を15重量部未満とすることが適当であり、10重量部未満とすることが好ましく、5重量部未満(例えば3重量部未満または1重量部未満)とすることがより好ましい。
【0126】
(添加剤(HRO))
ここに開示される粘着剤組成物には、所望により用いられる添加剤として、光重合性を有しない高屈折率有機材料を含有させることができる。以下、このような有機材料を「添加剤(HRO)」と表記することがある。ここで、上記「HRO」は、高屈折率(High Refractive index)の有機材料(Organic material)であることを表す。添加剤(HRO)を用いることにより、高屈折率と粘着特性(剥離強度、柔軟性等)とをより好適に両立する粘着剤を実現し得る。添加剤(HRO)として用いられる有機材料は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。なお、本明細書において、添加剤(HRO)は、後述する可塑剤とは異なるものとして定義される。例えば、添加剤(HRO)は、30℃(例えば25℃または20℃)において液状(液体)ではないものであり得る。添加剤(HRO)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
添加剤(HRO)の屈折率は、特に限定されず、例えば1.55超、1.56超または1.57超であり得る。粘着剤の高屈折率化の観点から、いくつかの態様において、添加剤(HRO)の屈折率は、1.58以上であることが有利であり、例えば1.60以上、1.63以上、1.65以上、1.70以上または1.75以上であってもよい。より屈折率の高い添加剤(HRO)によると、より少量の添加剤(HRO)の使用によっても目的の屈折率を達成し得る。添加剤(HRO)の屈折率の上限は特に制限されないが、粘着剤内における相溶性や、高屈折率化と柔軟性とのバランス等の観点から、例えば3.000以下であり、2.500以下であってもよく、2.000以下であってもよく、1.950以下、1.900以下または1.850以下であってもよい。
なお、添加剤(HRO)の屈折率は、モノマーの屈折率と同様に、アッベ屈折計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定される。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0128】
添加剤(HRO)として使用する有機材料の分子量は、特に限定されず、目的に応じて選択し得る。高屈折率化の効果と他の特性とをバランスよく両立する粘着剤を得やすくする観点から、いくつかの態様において、添加剤(HRO)の分子量は、例えば凡そ30000以下であってよく、25000以下または20000以下であってもよく、15000以下であってもよく、10000以下(例えば10000未満)であってもよく、5000未満であってもよく、3000未満(例えば1000未満)、800未満、600未満、500未満または400未満であってもよい。また、添加剤(HRO)の分子量は、例えば130以上であってよく、150以上でもよく、高屈折率化の効果を発揮しやすくする観点から170以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、230以上であってもよく、250以上、270以上、300以上、500以上、1000以上、1500以上、2000以上、3000以上または4000以上であってもよい。
添加剤(HRO)の分子量としては、非重合体または低重合度(例えば2~5量体程度)の重合体については、化学構造に基づいて算出される分子量、もしくはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)を用いた測定値を用いることができる。添加剤(HRO)がより重合度の高い重合体である場合は、適切な条件で行われるGPCに基づく重量平均分子量(Mw)を用いることができる。メーカー等から分子量の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0129】
添加剤(HRO)の選択肢となり得る有機材料の例には、芳香環を有する有機化合物、複素環(芳香環でもよく、非芳香族性の複素環でもよい。)を有する有機化合物、等が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
添加剤(HRO)として用いられる上記芳香環を有する有機化合物(以下、「芳香環含有化合物」ともいう。)の有する芳香環は、モノマー(A1)として用いられる化合物の有する芳香環と同様のものから選択され得る。上記芳香環は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等が例示されるが、これらに限定されない。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、例えば1~10であり、有利には1~6であり、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの態様において、上記芳香環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば臭素原子)からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。
【0131】
添加剤(HRO)として用いられ得る芳香環含有化合物の例としては、例えば:モノマー(A1)として用いられ得る化合物から、エチレン性不飽和基を有する基(環構成原子に結合した置換基であり得る。)または該基のうちエチレン性不飽和基を構成する部分を除き、水素原子またはエチレン性不飽和基を有しない基(例えば、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等)に置き換えた構造の化合物;モノマー(A1)として用いられ得る化合物をモノマー単位として含むオリゴマー;等であって、ここに開示される可塑剤に該当しないもの;等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの態様において、添加剤(HRO)としては、高屈折率化効果が得られやすいことから、1分子中に2以上の芳香環を有する有機化合物(以下、「芳香環複数含有化合物」ともいう。)を好ましく採用し得る。上記芳香環複数含有化合物は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。上記重合体は、芳香環複数含有モノマーをモノマー単位として含むオリゴマー(例えば、2~5量体程度の低重合物、重量平均分子量1500~30000程度のオリゴマー、重量平均分子量4000~16000程度のオリゴマー等)であり得る。上記オリゴマーは、例えば:芳香環複数含有モノマーの単独重合体;1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーの共重合体;1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーと他のモノマーとの共重合体;等であり得る。上記他のモノマーは、芳香環複数含有モノマーに該当しない芳香環含有モノマーでもよく、芳香環を有しないモノマーでもよく、これらの組合せであってもよい。添加剤(HRO)としてオリゴマーを使用する態様において、該オリゴマーは、対応するモノマー成分を公知の方法で重合させることにより得ることができる。
【0133】
芳香環複数含有化合物の非限定的な例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有する化合物、縮合芳香環構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、ジナフトチオフェン構造を有する化合物、ジベンゾチオフェン構造を有する化合物、等が挙げられる。芳香環複数含有化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0134】
添加剤(HRO)の選択肢となり得る、複素環を有する有機化合物(以下、複素環含有有機化合物ともいう。)の例としては、チオエポキシ化合物、トリアジン環を有する化合物、等が挙げられる。チオエポキシ化合物の例としては、特許第3712653号公報に記載のビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドおよびその重合物(屈折率1.74)が挙げられる。トリアジン環を有する化合物の例としては、1分子内にトリアジン環を少なくとも1つ(例えば3~40個、好ましくは5~20個))有する化合物が挙げられる。なお、トリアジン環は芳香族性を有するため、トリアジン環を有する化合物は上記芳香環含有化合物の概念にも包含され、また、トリアジン環を複数有する化合物は上記芳香環複数含有化合物の概念にも包含される。
【0135】
いくつかの態様において、モノマー単位として芳香環含有モノマーを含むオリゴマー(以下、芳香環含有オリゴマーともいう。)を、添加剤(HRO)として用いることができる。かかるオリゴマーの使用により、屈折率を大きく低下させることなく他の特性を調整する効果が発揮され得る。上記他の特性を調整する効果の例としては、剥離強度を向上させる効果、貯蔵弾性率を低下させる効果等が挙げられる。上記芳香環含有モノマーとしては、例えば、上述したモノマー(A1)として用いられ得る化合物の1種または2種以上を用いることができる。したがって、上記芳香環含有オリゴマーは、モノマー(A1)として用いられ得る化合物をモノマー単位として含むオリゴマーとして把握され得る。上記芳香環含有オリゴマーは、例えば:芳香環含有モノマーの単独重合体;1種または2種以上の芳香環含有モノマーの共重合体;1種または2種以上の芳香環含有モノマーと他のモノマーとの共重合体;等であり得る。芳香環含有オリゴマーを構成するモノマー成分のうち芳香環含有モノマーの占める割合は、例えば30重量%以上であってよく、高屈折率化の観点から50重量%以上(例えば50重量%超)であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。
【0136】
高屈折率の粘着剤が得られやすいことから、いくつかの態様において、芳香環複数含有モノマーをモノマー単位として含む芳香環含有オリゴマーを好ましく採用し得る。かかる芳香環含有オリゴマーを構成するモノマー成分のうち芳香環複数含有モノマーの占める割合は、例えば30重量%以上であってよく、高屈折率化の観点から50重量%以上(例えば50重量%超)であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。例えば、上述したいずれかの割合でm-フェノキシベンジルアクリレートを含むモノマー成分の重合物である芳香環含有オリゴマーを好ましく採用し得る。
【0137】
上記芳香環含有オリゴマーは、芳香環複数含有モノマーの1種または2種以上と、芳香環複数含有モノマーに該当しない芳香環含有モノマーの1種または2種以上とをモノマー単位として含むオリゴマーであってもよい。かかるオリゴマーにおいて、芳香環含有モノマー全体のうち芳香環複数含有モノマーの占める割合は、例えば30重量%以上であってよく、高屈折率化の観点から50重量%以上(例えば50重量%超)であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。
【0138】
上記芳香環含有オリゴマーが芳香環含有モノマー(好ましくは、芳香環複数含有モノマーを含む芳香環含有モノマー)と他のモノマーとの共重合体である態様において、上記他のモノマーの非限定的な例としては、水酸基含有モノマー(例えば、モノマー(A2)の説明において例示した各種の水酸基含有モノマー、具体例としてはHEA,4HBA等);カルボキシ基含有モノマー(例えば、モノマー(A2)の説明において例示した各種のカルボキシ基含有モノマー、具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸等);窒素原子を含有するモノマー(例えば、窒素原子含有環を有するモノマー(具体例としてはN-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等);脂肪族(メタ)アクリレート(例えば、モノマー(A3)の説明において例示した各種のアルキル(メタ)アクリレート、具体例としてはBA,2EHA等);上述した各種の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環族(メタ)アクリレート);上述した各種のオキシエチレン基含有モノマー(例えば、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、等が挙げられる。
【0139】
上記芳香環含有オリゴマーの重量平均分子量は、例えば凡そ30000以下であってよく、粘着剤組成物の低粘度化の観点からは25000以下(例えば20000以下)であることが有利であり、15000以下であってもよく、10000以下または10000未満であってもよく、5000未満であってもよい。また、上記芳香環含有オリゴマーの重量平均分子量は、他の特性(例えば、剥離強度)とのバランスをとりやすくする観点から、1000以上であることが適当であり、1500以上であることが好ましく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。
【0140】
添加剤(HRO)として芳香環含有オリゴマーを使用する態様において、上記オリゴマーは、対応するモノマー成分を公知の方法で重合(例えば、ラジカル重合)させることにより得ることができる。上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤を使用することができる。例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、1-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合における使用量は、目的とする分子量に応じて、適宜調整し得る。いくつかの態様において、連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~10重量部程度とすることができ、1~5重量部程度としてもよい。
【0141】
添加剤(HRO)は、ここに開示される技術による効果が著しく損なわれない範囲で、適当量用いられ得る。いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する添加剤(HRO)の使用量(複数種の化合物を用いる場合は、それらの合計量)は、例えば80重量部以下とすることができ、粘着剤の高屈折率化と粘着特性や光学特性の低下抑制とをバランスよく両立する観点から、60重量部以下とすることが有利であり、45重量部以下とすることが好ましく、30重量部以下であってもよく、10重量部以下でもよく、3重量部以下でもよく、1重量部以下でもよい。ここに開示される技術は、添加剤(HRO)を含まない粘着剤を用いる態様で好ましく実施され得る。また、粘着剤の高屈折率化の観点から、モノマー成分100重量部に対する添加剤(HRO)の使用量は、例えば1重量部以上とすることができ、3重量部以上、5重量部以上、7重量部以上、10重量部以上、15重量部以上または20重量部以上としてもよい。
【0142】
(架橋剤)
ここに開示される技術において、粘着剤の形成に使用する粘着剤組成物には、粘着剤の凝集力の調整等の目的で、必要に応じて架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系樹脂、金属キレート系架橋剤等の、粘着剤の分野において公知の架橋剤を使用することができる。
【0143】
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族イソシアネート類;上記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合等により変性したポリイソシネート変性体(例えばHDIのイソシアヌレート体、HDIのアロファネート体等);等が挙げられる。イソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0144】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0145】
架橋剤を用いる場合における使用量は、特に限定されず、例えばモノマー成分100重量部に対して0.001重量部~5.0重量部程度の範囲とすることができる。架橋剤の使用効果を適切に発揮する観点から、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.005重量部以上であってよく、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.08重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上または0.4重量部以上であってもよい。また、粘着剤の柔軟性向上の観点から、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する架橋剤の使用量は、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは2.0重量部以下であり、1.0重量部以下でもよく、0.5重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、0.07重量部以下、0.05重量部以下または0.01重量部以下でもよい。架橋剤を使用しなくてもよい。
【0146】
架橋反応をより効果的に進行させるために架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒の例としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が挙げられる。また、粘着剤組成物には、ポットライフ延長等の目的で、架橋遅延剤(例えば、アセチルアセトンのようなβ-ジケトン類やアセト酢酸エステル類等の、ケト-エノール互変異性を生じる化合物)を含有させてもよい。架橋触媒や架橋遅延剤の使用量は、所望の効果が発揮されるように適切に設定し得る。
【0147】
(粘着付与剤)
ここに開示される粘着剤組成物には、粘着付与剤を含有させてもよい。粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等の公知の粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与樹脂の使用量は特に限定されず、所望の使用効果が発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、粘着剤組成物の光硬化性や硬化物(すなわち粘着剤)の透明性等の観点から、モノマー成分100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、30重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下とすることが好ましく、5重量部以下とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、粘着付与剤を使用しない態様で好ましく実施され得る。
【0148】
(その他の添加剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、軟化剤、レベリング剤、光増感剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等の、粘着剤組成物に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じて含んでいてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0149】
(溶媒含有量)
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物は、溶媒含有量が制限されていることが好ましい。上記粘着剤組成物の溶媒含有量は、例えば20重量%未満であることが適当であり、10重量%未満であることが好ましい。溶媒含有量が少なくなるにつれて、粘着剤形成成分の含有量は多くなり、光硬化型粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の体積変化は小さくなる傾向にある。このことは粘着剤内における無機粒子の凝集(分散ムラ)を抑制する観点から有利である。無機粒子の分散ムラが少ないことは、粘着剤の透明性や性能安定の観点から好ましい。いくつかの態様において、粘着剤組成物の溶媒含有量は、5重量%未満であることが好ましく、3重量%未満であることがより好ましく、2重量%未満であることがさらに好ましく、1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満であってもよく、実質的に無溶剤(例えば、溶媒含有量が0.1重量%未満)であってもよい。塗工後の該粘着剤組成物(塗工物)から溶媒を除去する操作(加熱乾燥、風乾等)を行うことなく該塗工物を光硬化させて粘着剤を形成するためには、粘着剤組成物の溶媒含有量が低い(例えば凡そ2重量%未満である)ことが好ましい。塗工物から溶媒を除去する操作を行うことなく該塗工物を光硬化させることにより、無機粒子の凝集(分散ムラ)がよりよく抑制された粘着剤を形成し得る。
【0150】
上記溶媒は、典型的には、25℃において液状であって、エチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有さず、かつ上述した可塑剤や分散剤等の粘着剤形成成分に該当しない化合物である。上記溶媒の例として、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~5の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアルキルアミド類;水;これらの混合溶媒;等が挙げられる。
【0151】
粘着剤組成物の溶媒含有量は、ガスクロマトグラフィーや加熱減量の測定により把握することができる。測定条件は、粘着剤組成物に含まれ得る溶媒の種類や粘着剤形成成分の組成等を考慮して適切に設定される。
【0152】
(粘着剤組成物の製造)
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物の製造方法は特に限定されず、モノマー成分に無機粒子が適切に分散した組成物を得ることのできる適宜の方法を採用することができる。モノマー成分と無機粒子との混合は、一度に行ってもよく、徐々にまたは段階的に行ってもよい。上記混合を段階的に行う態様の例としては、使用する無機粒子の全量とモノマー成分の一部(一部の分量であってもよく、一部の種類であってもよい。)とを混合した後、モノマー成分の残部を一度に、徐々にまたは段階的に加えて混合する態様や、無機粒子の一部(一部の分量であってもよく、一部の種類であってもよい。)とモノマー成分の全量とを混合した後、モノマー成分の残部を一度に、徐々にまたは段階的に加えて混合する態様、モノマー成分の一部と無機粒子の一部とを混合した後、残りのモノマー成分および無機粒子を一度に、徐々にまたは段階的に加えて混合する態様、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物製造方法は、溶媒を除去することを含み得る。例えば、無機粒子が溶媒(例えば、水、低級アルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、ジメチルアセトアミド、これらの混合溶媒等)に分散した無機粒子分散液の形態で提供されている場合、粘着剤組成物の製造過程で上記溶媒の少なくとも一部を除去することにより、溶媒含有量が低減された粘着剤組成物を得ることができる。無機粒子分散液に含まれる溶媒の除去は、該無機粒子分散液を他の粘着剤形成成分の少なくとも一部と混合した後、任意の適切なタイミングで行うことができる。複数の段階に分けて溶媒を除去してもよい。
【0154】
モノマー成分および無機粒子以外の粘着剤形成成分(光重合開始剤、分散剤、可塑剤等)を添加するタイミングや添加態様は、目的とする粘着剤組成物が得られるように適切に選択することができる。特に限定するものではないが、無機粒子分散液および分散剤を用いる態様において粘着剤組成物の製造過程で上記無機粒子分散液に由来する溶媒を除去する場合、使用する分散剤の一部または全部を加えた後に溶媒を除去することにより、上記分散剤の使用効果を好適に発揮することができる。また、無機粒子分散液および光重合開始剤を用いる態様において粘着剤組成物の製造過程で上記無機粒子分散液に由来する溶媒を除去する場合、光重合開始剤の少なくとも一部は溶媒除去後に加えることが好ましい。
【0155】
ここに開示される粘着剤組成物の粘度は、例えば凡そ0.05Pa・s~凡そ1000Pa・s程度の範囲内であり得る。ここで、粘着剤組成物の粘度は、BM型粘度計を使用して、測定温度25℃、回転数30rpmの条件で測定される。いくつかの態様において、塗工性等の観点から、粘着剤組成物の粘度は、例えば凡そ0.1Pa・s以上であってよく、凡そ0.2Pa・s以上であることが有利であり、凡そ0.5Pa・s以上または凡そ1Pa・s以上であることが好ましく、凡そ5Pa・s以上であってもよく、10Pa・s以上であってもよく、15Pa・s以上であってもよく、20Pa・s以上であってもよい。粘着剤組成物の粘度が不足する場合、粘度を高める方法としては、例えばモノマー成分を適度に部分重合させる方法、すなわちモノマー成分の重合転化率をより高くする方法を採用し得る。モノマー成分の部分重合は、例えば光(例えば紫外線)を照射することにより行うことができる。
また、いくつかの態様において、粘着剤組成物の粘度は、例えば500Pa・s以下であってよく、塗工性等の観点から200Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下であってもよく、100Pa・s以下であってもよく、80Pa・s以下、60Pa・s以下、50Pa・s以下または40Pa・s以下であってもよく、30Pa・s以下、20Pa・s以下または10Pa・s以下であってもよい。粘着剤組成物の粘度を低下させる方法としては、例えばモノマー成分の重合転化率をより低くする方法や、低粘度の可塑剤を添加する方法等を採用し得る。
【0156】
ここに開示される光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の少なくとも一部(一部の分量であってもよく、一部の種類であってもよい。)を未重合の形態で含む。いくつかの態様において、モノマー成分は、該モノマー成分のうち一部のモノマー(例えば、単官能モノマーの少なくとも一部)の部分重合物と、残りのモノマー(未重合のモノマー)との混合物として粘着剤組成物に含まれていてもよい。他のいくつかの態様において、モノマー成分は、実質的に未重合の形態で粘着剤組成物に含まれていてもよい。粘着剤組成物におけるモノマー成分の重合転化率(モノマーコンバージョン)は、例えば75重量%以下であってよく、塗工性の観点から60重量%未満であることが好ましく、50重量%未満であってもよく、35重量%未満、20重量%未満または10重量%未満であってもよく、5重量%未満または1重量%未満であってもよく、実質的に0重量%であってもよい。ここで、モノマー成分の重合転化率が実質的に0重量%であるとは、少なくとも意図的にはモノマー成分を重合させていないことをいう。
【0157】
いくつかの態様において、モノマー成分は、あらかじめ形成されたオリゴマー(例えば、重量平均分子量が凡そ10000以下、5000以下または3000以下の所定範囲となるように製造されたオリゴマー)と、モノマー成分の一部の部分重合物または未重合物との混合物として粘着剤組成物に含まれていてもよい。かかる態様において、上記オリゴマー以外のモノマー成分の重合転化率は、例えば80重量%以下であってよく、塗工性の観点から70重量%未満であることが好ましく、60重量%未満であってもよく、50重量%未満、35重量%未満、20重量%未満または10重量%未満であってもよく、5重量%未満または1重量%未満であってもよく、実質的に0重量%であってもよい。
【0158】
<粘着剤>
この明細書により、ポリマーを構成するモノマー成分と無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物の光硬化物である粘着剤が提供される。上記粘着剤は、ポリマーを構成するモノマー成分と無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物(ここに開示されるいずれかの光硬化型粘着剤組成物であり得る。)に光を照射して重合反応および/または架橋反応を進行させることにより形成することができる。光硬化型粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合には、乾燥後に光を照射するとよい。
【0159】
ここに開示される粘着剤は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、該組成物を光硬化させることにより形成され得る。粘着剤組成物の塗布(塗工)には、公知のコーティング法を利用することができ、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターを用いることができる。
【0160】
いくつかの態様において、上記粘着剤組成物の光硬化は紫外線照射により行うことが好ましい。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線は、塗布された粘着剤組成物に直接照射することも可能だが、紫外線照射による硬化を阻害する酸素を遮断するために、光透過性を有する被覆材を介して照射することが好ましい。例えば、塗布された粘着剤組成物の表面を上記被覆材で覆い、該被覆材を介して紫外線を照射する。いくつかの態様において、上記被覆材として樹脂フィルムを用いることができ、該樹脂フィルムの材質は、例えば後述する支持基材と同様の材質から選択することができる。上記樹脂フィルムは、剥離性を有する樹脂フィルムであってもよく、非剥離性の樹脂フィルムであって光硬化後の粘着剤とともに基材付き粘着シートを構成するものであってもよい。紫外線照射の照度や時間は、粘着剤組成物の組成や、形成される粘着剤の厚さなどにより適宜設定される。
【0161】
粘着剤の厚さ(具体的には、粘着剤の膜状物(粘着膜)の厚さ、例えば粘着シートを構成する粘着剤層の厚さ)は特に限定されず、例えば3μm以上とすることができる。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であることが適当であり、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。いくつかの態様において、後述する無機粒子の表面偏析による効果を得やすくする観点から、粘着剤の厚さは、例えば20μm以上であることが適当であり、例えば25μm以上であってよく、30μm以上であってもよく、35μm以上、40μm以上または45μm以上であってもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤の厚さは、例えば300μm以下であってよく、250μm以下でもよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、120μm以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤の厚さは例えば100μm以下であってよく、90μm以下であってもよく、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下または60μm以下であってもよい。粘着剤の厚さが大きすぎないことは、粘着シートの薄型化や透明性等の観点から有利となり得る。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層の厚さが3μm~200μm(より好ましくは5μm~200μm、例えば5μm~100μm)の範囲となる態様で好ましく実施され得る。なお、基材の第1面および第2面に第1粘着剤層および第2粘着剤層を有する粘着シートの場合、上述した粘着剤の厚さは、少なくとも第1粘着剤層の厚さに適用され得る。第2粘着剤層の厚さも同様の範囲から選択され得る。また、基材レスの粘着シートの場合、該粘着シートの厚さは粘着剤層の厚さと一致する。
【0162】
(無機粒子の偏析)
いくつかの態様に係る粘着剤(ここに開示されるいずれかの光硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。)は、無機粒子が偏析している表面を有する。ここで、粘着剤の表面に無機粒子が偏析しているとは、粘着剤に含まれる無機粒子のうち少なくとも一部の分量が該粘着剤の表面部に偏って存在することをいい、該表面部にのみ無機粒子が存在する態様(粘着剤の内部には実質的に無機粒子が存在しない態様)を排除するものではないが、かかる態様には限定されない。無機粒子が偏析した表面を有する粘着剤は、該粘着剤に含まれる無機粒子の少なくとも一部が上記表面付近に濃縮されていることにより、該表面において上記無機粒子による高屈折率化の効果を効率よく発揮することができる。このことは、粘着剤の高屈折率化と該粘着剤全体としての(バルクでの)柔軟性とを両立する観点から有利となり得る。
【0163】
無機粒子が偏析した表面を有する粘着剤は、モノマー成分と無機粒子とを含む光硬化型粘着剤組成物(好ましくは、溶媒含有量が制限された光硬化型粘着剤組成物)を光硬化させることによって形成され得る。その理由としては、特に限定的に解釈されるものではないが、ここに開示される光硬化型粘着剤組成物に光(例えば紫外線)を照射すると、酸素阻害の少ない内部から硬化が進行し、このとき相対的に硬化の早い部分から硬化の遅い部分へと無機粒子が押し出される傾向にあることが、上記偏析を生じる要因となっていることが考えられる。
【0164】
粘着剤の表面に無機粒子が偏析していることは、例えば、粘着剤の断面を顕微鏡で観察することにより把握することができる。上記観察は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)等により行うことができる(例えば、図3(A)を参照)。偏析の程度をより詳細に把握するために、上記電子顕微鏡像の画像解析を行ってもよい。また、粘着剤の表面に無機粒子が偏析していることは、例えば、粘着剤の表面部と内部(例えば、粘着剤層の厚みの中心部)とで無機粒子の存在量を対比することによっても把握することができる。上記対比は、例えば、上記表面から内側に向かって厚さ1μmの範囲と、より内側における厚さ1μmの範囲(例えば、粘着剤層の厚み中心から上記表面側およびその反対側に向かって厚さ0.5μmの範囲)との対比であり得る。
【0165】
ここに開示される粘着剤層のいくつかの態様において、該粘着剤層は、下記式:
1.05≦(C/C);
を満たす程度に無機粒子が偏析している表面を有することが好ましい。ここで、上記式中のCは、上記表面(例えば、上記表面から内側に向かって厚さ1μmの範囲)における上記無機粒子の濃度を表し、上記式中のCは、上記粘着剤層の厚み中心(例えば、該厚み中心から粘着剤層の表面側およびその反対側に向かってそれぞれ0.5μm、合計1μmの厚さ範囲)における上記無機粒子の濃度を表す。濃度C、Cは、各厚さ範囲について、無機粒子の構成元素(例えば金属元素)から選択される特定種類の元素の存在量[atomic%]と、無機粒子以外の粘着剤構成成分に含まれる構成元素から選択される特定種類の元素の存在量[atomic%]との比から求めることができる。例えば、無機粒子としてジルコニウム粒子を含有する粘着剤層では、各厚さ範囲における炭素(C)の存在量[atomic%]に対するジルコニウム(Zr)の存在量[atomic%]の比(Zr/C比)の値を、上記式における濃度C、Cの値として用いることができる。各厚さ範囲における元素の存在量は、例えば、TEM-EDX分析により求めることができる。いくつかの好ましい態様において、上記(C/C)は、例えば1.10以上であってよく、1.20以上であってもよく、1.30以上であってもよく、1.40以上であってもよく、1.50以上、1.60以上または1.70以上であってもよい。上記(C/C)の上限は特に限定されず、例えば20以下であってよく、10以下であってもよく、5以下であってもよく、3以下であってもよい。
【0166】
無機粒子が偏析している表面を有する粘着剤のいくつかの態様において、該偏析部の厚さ(表面からの厚さ範囲)は、例えば20nm以上であってよく、30nm以上であることが有利であり、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であってもよく、60nm以上であってもよく、70nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、700nm以上、900nm以上または1000nm以上であってもよい。
また、上記偏析部の厚さは、上述したいずれかの下限値以上であって、かつ粘着剤層の厚さの30%以下(例えば、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下または1%以下)とすることができる。いくつかの態様において、上記偏析部の厚さは、例えば5μm以下であってよく、3μm以下であってもよく、2μm以下(例えば1.5μm以下)であってもよい。上記偏析部の厚さは、例えば、粘着剤の断面のTEM観察により把握することができる。
【0167】
無機粒子が偏析している表面を有する粘着剤のいくつかの態様において、上記無機粒子の偏析厚みは、上記粘着剤をその表面からの距離に応じて厚さ1.0μm毎の領域(例えば、表面から厚さ1.0μmまでの範囲、表面からの厚さが1.0μmを超えて2.0μm以下の範囲、表面からの厚さが2.0μmを超えて3.0μm以下の範囲等の領域)に区切り、上述した濃度C,Cと同様にして(すなわちTEM-EDX分析に基づいて)各領域における無機粒子濃度を求めた場合に、最も無機粒子濃度の低い領域における無機粒子濃度CMINに対して、CMINの1.05倍以上の無機粒子濃度を有する領域であって粘着剤の表面から連続する領域の合計厚さとして定義することができる。かかる定義に基づいて特定される無機粒子の偏析厚み(以下、「偏析厚みT(≧1.05)」ともいう。)は、1.0μm以上であることが適当であり、2.0μm以上であってもよく、3.0μm以上であってもよい。また、いくつかの態様において、上記偏析厚みT(≧1.05)は、例えば10.0μm以下であってよく、7.0μm以下であってもよく、5.0μm以下、3.0μm以下または2.0μm以下であってもよい。
【0168】
同様にして、粘着剤における無機粒子の偏析厚みT(≧1.10)(すなわち、CMINの1.10倍以上の無機粒子濃度を有する領域であって粘着剤の表面から連続する領域の合計厚さ)、偏析厚みT(≧1.20)、偏析厚みT(≧1.30)等を決定することができる。これらの偏析厚みは、それぞれ、好ましくは1.0μm以上であり、2.0μm以上であってもよく、3.0μm以上であってもよく、また、例えば10.0μm以下であってよく、7.0μm以下であってもよく、5.0μm以下、3.0μm以下または2.0μm以下であってもよい。
【0169】
(屈折率)
ここに開示される粘着剤の屈折率は、特に限定されず、無機粒子による高屈折率化の硬化が発揮され得る屈折率であればよい。いくつかの態様において、粘着剤の屈折率は、従来の一般的なアクリル系粘着剤の屈折率よりも高い。ここに開示される技術によると、屈折率が例えば1.480以上(好ましくは1.490以上、より好ましくは1.500以上)である粘着剤、該粘着剤を形成することのできる粘着剤組成物、および上記粘着剤を含む粘着シートが提供され得る。上記粘着剤の屈折率は、1.510以上、1.520以上、1.530以上、1.540以上または1.550以上であってもよく、1.560以上(例えば1.560超)であってもよく、1.570以上、1.580以上または1.590以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤の屈折率は、例えば1.600以上であってよく、1.605以上であってもよく、1.610以上でもよく、1.615以上でもよく、1.620以上でもよく1.625以上でもよく、1.630以上、1.635以上または1.640以上でもよい。より高い屈折率を有する粘着剤によると、より屈折率が高い材料に貼り付けられる使用態様においても、被着体との界面における光線反射を好適に抑制し得る。粘着剤の屈折率の上限は、被着体の屈折率等に応じて異なり得るので特定の範囲に限定されず、例えば1.700以下であってよく、1.670以下でもよい。より柔軟性や低温性を重視する観点から、または被着体の屈折率に応じて、いくつかの態様において、粘着剤の屈折率は、例えば1.660以下であってよく、1.650以下であってもよい。ここに開示される技術は、粘着剤の屈折率が1.645以下、1.635以下、1.625以下または1.610以下である態様や、1.600未満、1.580未満、1.560未満または1.540未満である態様でも実施することができる。
【0170】
なお、本明細書において粘着剤の屈折率とは、該粘着剤の表面の屈折率をいう。粘着剤の屈折率は、プリズムカプラを用いて、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で測定することができる。プリズムカプラとしては、市販の測定装置を用いることができ、例えばメトリコン社製のモデル「2010M」またはその相当品が用いられる。測定サンプルとしては、評価対象の粘着剤からなる粘着剤層を用いることができる。粘着剤の屈折率は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0171】
(ヘイズ値)
ここに開示される粘着剤(粘着剤層の形態であり得る。)の、後述の実施例に記載の方法で測定されるヘイズ値(以下、単に「ヘイズ値」と表記することがある。)は、例えば25%以下、20%以下または15%以下であり得る。いくつかの態様において、粘着剤のヘイズ値は、10%以下(例えば10%未満)であることが適当であり、8.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下でもよく、2.0%以下でもよく、1.8%以下(例えば1.5%以下)でもよく、1.2%以下でもよく、1.0%以下(例えば1.0%未満)でもよく、0.80%以下または0.70%以下でもよい。このように透明性の高い粘着剤は、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着剤を通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。粘着剤のヘイズ値の下限は特に制限されず、透明性向上の観点からはヘイズ値は小さいほど好ましい。一方、いくつかの態様では、他の特性とのバランスを考慮して、粘着剤のヘイズ値は、例えば0.05%以上であってよく、0.10%以上であってもよく、0.20%以上であってもよい。粘着剤に関するこれらのヘイズ値は、ここに開示される技術を基材レス粘着シート(典型的には、粘着剤層からなる粘着シート)の形態で実施する場合における該粘着シートのヘイズ値にも適用され得る。
【0172】
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの、全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表すことができる。
Th(%)=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値(%)であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。ヘイズ値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。粘着剤のヘイズ値は、例えば、該粘着剤の組成や厚さ等の選択によって得ることができる。
【0173】
(全光線透過率)
ここに開示される粘着剤(粘着剤層の形態であり得る。)の、後述の実施例に記載の方法で測定される全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」と表記することがある。)は、例えば70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であり得る。いくつかの態様において、粘着剤の全光線透過率は、83%以上であることが適当であり、85%以上(例えば86%以上、88%以上、89%以上または90%以上)であることが好ましい。このように透明性の高い粘着剤は、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着剤を通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。全光線透過率の上限は、実用上、例えば凡そ98%以下であってよく、96%以下であってもよく、95%以下であってもよい。いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、粘着剤の全光線透過率は、94%以下であってもよく、93%以下であってもよく、92%以下であってもよい。粘着剤に関するこれらの全光線透過率の値は、ここに開示される技術を基材レス粘着シート(典型的には、粘着剤層からなる粘着シート)の形態で実施する場合における該粘着シートの全光線透過率の値にも適用され得る。
全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。粘着剤の全光線透過率は、例えば、該粘着剤の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0174】
(貯蔵弾性率G’)
粘着剤の貯蔵弾性率G’は、例えば10MPa以下であってよく、7.0MPa以下であってもよく、5.0MPa以下であってもよく、3.0MPa以下であってもよい。いくつかの態様において、粘着剤の貯蔵弾性率G’は、室温付近からそれ以上の温度域における柔軟性の観点から、例えば2.5MPa以下であることが適当であり、2.0MPa以下であることが好ましく、1.5MPa以下であることがより好ましく、1.2MPa以下であってもよく、1.0MPa以下であってもよく、0.8MPa以下であってもよく、0.7MPa以下、0.6MPa以下または0.5MPa以下であってもよい。上記貯蔵弾性率G’の下限は特に限定されず、例えば0.01MPa以上であってよく、0.05MPa以上であってもよく、0.1MPa以上であってもよく、0.3MPa以上であってもよい。上記貯蔵弾性率G’が所定値以上であることにより、粘着剤は、例えば室温付近から高温域において適度な凝集力を有するものとなりやすい。
【0175】
(粘着剤のガラス転移温度)
粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、低温域での柔軟性や、高温域での凝集力(耐熱性等)を考慮して設定され得る。いくつかの態様において、粘着剤のTgは、例えば30℃以下であってよく、25℃以下であることが適当であり、20℃以下であることが好ましく、15℃以下、12℃以下または10℃以下であってもよい。また、粘着剤のTgは、例えば-55℃以上であってよく、高屈折率化を容易とする観点から-50℃以上であることが有利であり、-40℃以上であってもよく、-30℃以上であってもよく、-20℃以上、-10℃以上、-5℃以上または0℃以上であってもよい。上記Tgを有する粘着剤によると、適度な凝集力が得られやすい傾向がある。また、高屈折率と低弾性率とを両立した粘着剤を形成しやすい傾向がある。
【0176】
粘着剤の貯蔵弾性率G’およびガラス転移温度Tgは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。粘着剤の貯蔵弾性率G’およびガラス転移温度Tgは、例えば、粘着剤の組成の選択、架橋の程度や架橋構造の選択等により調節し得る。
【0177】
(表面弾性率E
ここに開示される粘着剤の表面弾性率Eは、特に限定されず、例えば0.25~1000MPaの範囲内であり得る。いくつかの態様において、粘着剤の表面弾性率Eは、粘着剤の取扱い性や加工性等の観点から、例えば0.5MPa以上であってよく、1.0MPa以上であってもよく、2.5MPa以上であってもよく、5.0MPa以上、10MPa以上であってもよく、25MPa以上、50MPa以上、75MPa以上、100MPa以上または125MPa以上であってもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤の表面弾性率Eは、例えば750MPa以下であってよく、粘着剤表面のタック感向上等の観点から550MPaであってもよく、450MPa以下であってもよく、400MPa以下であってもよく、350MPa以下、300MPa以下、250MPa以下、200MPa以下または150MPa以下であってもよい。無機粒子が偏析した表面を有する粘着剤において、該表面の表面弾性率Eは、上述したいずれかの上限値および下限値により特定される範囲内にあることが適当であり、例えば、上記表面弾性率Eが5.0MPa以上、10MPa以上、25MPa以上または50MPa以上であることが好ましい。また、第1粘着面および第2粘着面を有する両面粘着シート(基材レス両面粘着シートおよび基材付き両面粘着シートを包含する。)では、少なくとも一方の粘着面(第1粘着面と第2粘着面とで表面弾性率Eが異なる場合には、より表面弾性率Eの低い粘着面)の表面弾性率Eが、上述したいずれかの上限値および下限値により特定される範囲内にあることが好ましい。粘着剤の表面弾性率Eは、後述の実施例に記載された方法により測定することができる。
【0178】
(E/G’)比
ここに開示される粘着剤のいくつかの態様において、該粘着剤は、上記貯蔵弾性率G’[MPa]に対する上記表面弾性率E[MPa]の比、すなわち(E/G’)比が、1.0より大きいことが好ましい。上記(E/G’)比は、粘着剤の表面弾性率Eを「MPa」の単位で表したときの数値部分を、該粘着剤の貯蔵弾性率G’ を「MPa」の単位で表したときの数値部分で除算することにより求められる無次元数である。(E/G’)比が大きいことは、該粘着剤の最表面部の硬さの割に、該粘着剤全体としては(バルク特性としては)は柔らかいことを意味する。いくつかの好ましい態様において、粘着剤の(E/G’)比は、例えば5以上であってよく、10以上であることが好ましく、25以上であってもよく、50以上であってもよく、75以上、100以上、150以上または200以上であってもよい。また、いくつかの態様において、粘着剤の(E/G’)比は、例えば1000以下であってもよく、800以下であってもよく、600以下であってもよく、500以下、400以下または300以下であってもよい。無機粒子が偏析した表面を有する粘着剤において、該表面の表面弾性率Eと貯蔵弾性率Gとから算出される(E/G’)比は、上述したいずれかの上限値および下限値により特定される範囲内にあることが適当であり、例えば、上記(E/G’)比が10以上、25以上、50以上または75以上であることが好ましい。また、第1粘着面および第2粘着面を有する両面粘着シート(基材レス両面粘着シートおよび基材付き両面粘着シートを包含する。)では、少なくとも一方の粘着面(第1粘着面と第2粘着面とで表面弾性率Eが異なる場合には、より表面弾性率Eの低い粘着面)の表面弾性率Eと貯蔵弾性率Gとから算出される(E/G’)比が、上述したいずれかの上限値および下限値により特定される範囲内にあることが好ましい。
【0179】
<粘着シート>
この明細書により、ここに開示されるいずれかの粘着剤(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤、例えば該粘着剤組成物の光硬化物であり得る。)を、好ましくは粘着剤層の形態で有する粘着シートが提供される。
上記粘着シートは、非剥離性の基材(支持基材)の片面または両面に上記粘着剤層を有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナーに保持された形態等の基材レスの粘着シート(すなわち、非剥離性の基材を有しない粘着シート。典型的には粘着剤層からなる粘着シート)であってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0180】
この明細書により提供され得る粘着シートの一構成例を図1に模式的に示す。この粘着シート1は、粘着剤層11からなる両面粘着タイプの基材レス粘着シート(基材レス両面粘着シート)である。使用前(被着体への貼付け前)の粘着シート1は、例えば図1に示すように、粘着剤層11の第1面11Aおよび第2面11B(いずれも粘着面)が、少なくとも粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー21,22によってそれぞれ保護された剥離ライナー付き粘着シートの構成要素であり得る。また、剥離ライナー21を使用せず、両面が剥離面となっている剥離ライナー22を使用し、この剥離ライナー22上に保持された粘着剤層11(粘着シート1)を巻回または積層することで粘着剤層11の第1面11Aが剥離ライナー22の背面に当接して保護された形態の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。ここに開示される技術は、透明性や柔軟性等の観点から、このように粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートの形態で好ましく実施され得る。
【0181】
ここに開示される粘着シートの他の構成例を図2に模式的に示す。この粘着シート2は、第1面15Aおよび第2面15Bを有する支持基材15と、支持基材15の第1面15A(非剥離面)上に配置されている粘着剤層11と、を含む基材付き片面粘着シートである。使用前の粘着シート2は、例えば図2に示すように、粘着剤層11の第1面11A(粘着面)が、少なくとも粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー21によって保護された剥離ライナー付き粘着シートの構成要素であり得る。また、剥離ライナー21を使用せず、第2面15Bが剥離面となっている支持基材15を使用し、粘着シート2を巻回または積層することで粘着剤層11の第1面11Aが支持基材15の第2面15Bに当接して保護された形態であってもよい。あるいは、ここに開示される粘着シートは、第1面および第2面がいずれも非剥離面である支持基材と、上記第1面上に配置されている第1粘着剤層と、上記第2面上に配置されている第2粘着剤層と、を有する基材付き両面粘着シートとして構成されていてもよい。
【0182】
いくつかの態様において、粘着シートのヘイズ値は、例えば25%以下、20%以下または15%以下であり得る。いくつかの態様において、粘着シートのヘイズ値は、10%以下(例えば10%未満)であることが適当であり、8.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下でもよく、2.0%以下でもよく、1.8%以下(例えば1.5%以下)でもよい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。粘着シートのヘイズ値の下限は特に制限されず、透明性向上の観点からはヘイズ値は小さいほど好ましい。一方、いくつかの態様では、他の特性とのバランスを考慮して、粘着シートのヘイズ値は、例えば0.05%以上であってよく、0.10%以上であってもよく、0.30%以上、0.50%以上または0.70%以上であってもよい。粘着シートのヘイズ値は、基材レス粘着シートまたは基材付き両面粘着シートの場合は、上述した粘着剤のヘイズ値と同様の方法で測定することができる。片面粘着シートのヘイズ値は、該片面粘着シートの粘着面に無アルカリガラス板(厚さ0.7~0.8mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.06%)を貼り合わせた試験片を用いる他は、上述した粘着剤のヘイズ値と同様の方法で測定することができる。粘着シートの上記ヘイズ値は、粘着剤のヘイズ値や、基材を有する構成では基材種や基材厚さの選択によって調節することができる。
【0183】
いくつかの態様において、粘着シートの全光線透過率は、例えば70%以上(好ましくは75%以上)であり得る。いくつかの態様において、粘着シートの全光線透過率は、80%以上であることが適当であり、83%以上(例えば85%以上、86%以上または87%以上)であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。全光線透過率の上限は、実用上、例えば凡そ98%以下であってよく、96%以下であってもよく、95%以下であってもよい。いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、粘着シートの全光線透過率は、94%以下であってもよく、93%以下であってもよく、92%以下、91%以下または90%以下であってもよい。粘着シートの全光線透過率は、基材レス粘着シートまたは基材付き両面粘着シートの場合は、上述した粘着剤の全光線透過率と同様の方法で測定することができる。片面粘着シートの全光線透過率は、該片面粘着シートの粘着面に無アルカリガラス板(厚さ0.7~0.8mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.06%)を貼り合わせた試験片を用いる他は、上述した粘着剤の全光線透過率と同様の方法で測定することができる。粘着シートの全光線透過率は、粘着剤の全光線透過率や、基材を有する構成では基材種や基材厚さの選択によって調節することができる。
【0184】
(剥離強度)
粘着シートのガラス板に対する剥離強度は、特に限定されない。いくつかの態様において、粘着シートは、ガラス板に対する剥離強度が、例えば0.1N/25mm以上であってよく、0.5N/25mm以上であってもよい。いくつかの態様において、上記ガラス板に対する剥離強度は、0.7N/25mm以上であることが好ましく、1.0N/25mm以上であることがより好ましく、1.5N/25mm以上(例えば1.5N/25mm超)であってもよく、2.0N/25mm以上であってもよく、2.5N/25mm以上であってもよく、3.0N/25mm以上、3.5N/25mm以上、4.0N/25mm以上または4.5N/25mm以上であってもよい。このように対ガラス板剥離強度が所定値以上である粘着シートは、例えばガラス製部材等の接合や固定に好適である。上記剥離強度の上限は特に制限されず、例えば30N/25mm以下、25N/25mm以下、20N/25mm以下または15N/25mm以下であり得る。なお、粘着シートが粘着剤層のみからなる基材レスの粘着シートの場合、上記対ガラス板剥離強度は、粘着剤の対ガラス板剥離強度ということができるものとする。
【0185】
上記剥離強度は、被着体としてのアルカリガラス板に圧着して23℃、50%RHの環境で30分間放置した後、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定することにより把握される。測定にあたっては、必要に応じて、測定対象の粘着シートに適切な裏打ち材(例えば、厚さ25μm程度~50μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)を貼り付けて補強することができる。剥離強度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0186】
(粘着シートの厚さ)
ここに開示される粘着シート(基材レス粘着シートまたは基材付き粘着シート)の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、350μm以下でもよく、200μm以下でもよく、120μm以下でもよく、75μm以下でもよく、50μm以下でもよく、30μm以下でもよい。また、粘着シートの厚さは、取扱い性等の観点から、例えば5μm以上であってもよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、25μm以上でもよく、80μm以上でもよく、130μm以上でもよい。なお、粘着シートの厚さとは、被着体に貼り付けられる部分の厚さをいう。例えば図2に示す構成の粘着シート2では、粘着剤層11と支持基材15との合計厚さを指し、剥離ライナー21の厚さは含まない。
【0187】
<支持基材>
いくつかの態様に係る粘着シートは、支持基材の片面または両面に粘着剤層を備える基材付き粘着シートの形態であり得る。支持基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例として、ポリプロピレン(PP)やエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレン(PE)フォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチック基材等が挙げられる。
【0188】
いくつかの態様において、各種のフィルム基材を好ましく用いることができる。上記フィルム基材は、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質の基材であってもよく、非多孔質の基材であってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造の基材であってもよい。いくつかの態様において、上記フィルム基材としては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)ものが好ましく用いられ得る。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造(例えば、3層構造)であってもよい。
【0189】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル;ポリオレフィン;ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA);透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリカーボネート(PC);ポリウレタン(PU);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;アクリル樹脂;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;ポリアリレート;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;等の樹脂を用いることができる。
【0190】
上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。例えば、PETフィルム、PBTフィルム、PENフィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、PP/PEブレンドフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、CPIフィルム、TACフィルム等が好ましく用いられ得る。強度や寸法安定性の観点から好ましい樹脂フィルムの例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルムおよびPEEKフィルムが挙げられる。入手容易性等の観点からPETフィルムおよびPPSフィルムが特に好ましく、なかでもPETフィルムが好ましい。
【0191】
樹脂フィルムには、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0192】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0193】
上記基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材に所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。
【0194】
いくつかの態様において、支持基材としては、光透過性を有する基材(以下、光透過性基材ともいう。)を好ましく採用し得る。これにより、光透過性を有する基材付き粘着シートを構成することが可能となる。光透過性基材の全光線透過率は、例えば50%超であってよく、70%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、支持基材の全光線透過率は80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、95%以上(例えば95~100%)であってもよい。上記全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。上記光透過性基材の好適例として、光透過性を有する樹脂フィルムが挙げられる。上記光透過性基材は、光学フィルムであってもよい。
【0195】
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば500μm以下であってよく、粘着シートの取扱い性や加工性の観点から300μm以下であることが好ましく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、10μm以上でもよく、25μm以上でもよい。
【0196】
基材のうち粘着剤層が積層される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布による下塗り層の形成等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。下塗り層の形成に用いるプライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。必要に応じて基材に施され得る他の処理として、帯電防止層形成処理、着色層形成処理、印刷処理等が挙げられる。これらの処理は、単独でまたは組み合わせて適用することができる。
【0197】
<剥離ライナー付き粘着シート>
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の表面(粘着面)を剥離ライナーの剥離面に当接させた粘着製品の形態をとり得る。したがって、この明細書により、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、該粘着シートの粘着面に当接する剥離面を有する剥離ライナーと、を含む剥離ライナー付き粘着シート(粘着製品)が提供される。
【0198】
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙(ポリエチレン等の樹脂がラミネートされた紙であり得る。)等のライナー基材の表面に剥離層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナー等を用いることができる。表面平滑性に優れることから、ライナー基材としての樹脂フィルムの表面に剥離層を有する剥離ライナーや、低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナーを好ましく採用し得る。樹脂フィルムとしては、粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエステルフィルム(PETフィルム、PBTフィルム等)、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。上記剥離層の形成には、例えば、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等の、公知の剥離処理剤を用いることができる。
【0199】
<用途>
ここに開示される粘着剤組成物、粘着剤および粘着シートの用途は限定されず、各種用途に利用することができる。ここに開示される粘着剤(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。)や粘着シートは、粘着剤の屈折率が無機粒子によって効率よく高められていることから、各種用途に適合するものとなり得る。いくつかの好ましい態様に係る粘着剤は、上記無機粒子が偏在している表面を有することにより、高屈折率と柔軟性とをバランスよく両立することができる。その特徴を活かして、上記粘着剤または該粘着剤を有する粘着シートは、高屈折率および柔軟性が要求される各種用途に利用され得る。例えば、携帯電子機器等の電子機器において、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等の表示装置(画像表示装置)や、タッチパネル等の入力装置等の機器(光学機器)、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイ等において、高屈折率であり得る部材の接合や固定、保護等の手段として好ましく用いられ得る。かかる使用形態における貼付け対象物は、例えば、ウィンドウガラスやカバーガラス等のガラス部材であり得る。また、ここに開示される粘着剤や粘着シートは、例えば携帯電子機器が有する3次元形状等の曲面形状の表面にも追従、密着しやすいので、かかる曲面形状を有する電子機器用途にも好適である。
【0200】
上記携帯電子機器の例には、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0201】
ここに開示される粘着剤や粘着シートが貼り付けられる材料(被着体材料)としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、銀、金、鉄、錫、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、亜鉛等、またはこれらの2種以上を含む合金等の金属材料や、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(PET系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆるアラミド樹脂等)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、液晶ポリマー等の各種樹脂材料(典型的にはプラスチック材)、アルミナ、ジルコニア、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、カーボン等の無機材料等が挙げられる。ここに開示される粘着剤や粘着シートは、上記材料から構成された部材(例えば光学部材)に貼り付けられて用いられ得る。
【0202】
ここに開示される粘着剤や粘着シートの貼付け対象物である部材や材料(両面粘着シートにおいては、少なくとも一方の被着体)は、一般的なアクリル系粘着剤よりも屈折率が高い材料からなるものであり得る。被着体材料の屈折率は、例えば1.50以上であり、なかには屈折率が1.55以上または1.58以上の被着体材料もあり、さらには屈折率が1.62以上(例えば1.66程度)のものも存在する。そのような高屈折率の被着体材料は、典型的には樹脂材料である。より具体的には、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリイミド系樹脂、アラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等であり得る。そのような材料に対して、ここに開示される粘着剤や粘着シートを用いることの効果(屈折率差を原因とする光線の反射抑制)は好ましく発揮され得る。上記被着体材料の屈折率の上限は、例えば1.80以下であり、1.70以下であり得る。ここに開示される粘着剤や粘着シートは、上記のような高屈折率の被着体(例えば部材)に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。そのような被着体の好適例として、屈折率が1.50~1.80(好ましくは1.55~1.75、例えば1.60~1.70)の樹脂フィルムが挙げられる。上記屈折率は、粘着剤の屈折率と同様の方法で測定され得る。
【0203】
粘着剤や粘着シートの貼付け対象物である部材や材料(両面粘着シートにおいては、少なくとも一方の被着体)は、光透過性を有するものであり得る。このような被着体では、ここに開示される技術による効果(被着体と粘着シートとの界面における光線反射の抑制)の利点が得られやすい。上記被着体の全光線透過率は、例えば50%よりも大きく、好ましくは70%以上であり得る。いくつかの好ましい態様では、上記被着体の全光線透過率は80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、95%以上(例えば95~100%)であり得る。ここに開示される技術は、全光線透過率が所定値以上の部材(例えば光学部材)に粘着剤や粘着シートを貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。上記全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。
【0204】
いくつかの好ましい態様において、粘着剤や粘着シートの貼付け対象物(被着体、例えば部材)は、上述の屈折率を有し、かつ上述の全光線透過率を有するものであり得る。具体的には、屈折率が1.50以上(例えば1.55以上、1.58以上、1.62以上、1.66程度等)であり、かつ全光線透過率が50%よりも大きい(例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらには95%以上であり得る)被着体、例えば部材に貼り付ける態様で、ここに開示される粘着剤や粘着シートは好ましく用いられ得る。このような部材に貼り付けられる態様において、ここに開示される技術による効果は特に好ましく発揮される。
【0205】
ここに開示される粘着剤は、上述した被着体に粘着剤組成物を付与(典型的には塗布)して乾燥および/または硬化させることにより、該被着体上に形成することができる。したがって、上記の例示において、粘着剤や粘着シートの貼付け対象物、粘着剤や粘着シートが貼り付けられる、粘着剤や粘着シートを貼り付ける等の記載は、それぞれ、粘着剤組成物を付与して粘着剤が形成される対象物、粘着材組成物を付与して粘着剤が形成される、粘着剤組成物を付与して粘着剤を形成する、と読み替えることができる。
【0206】
好ましい用途の一例として、光学用途が挙げられる。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等に用いられる光学用粘着剤や光学用粘着シートとして、ここに開示される粘着剤や粘着シートを好ましく用いることができる。
【0207】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」や「偏光シート」等を含み、「導光板」は、「導光フィルム」や「導光シート」等を含むものとする。また、上記「偏光板」は、円偏光板を含むものとする。
【0208】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED(μLED)、ミニLED(miniLED)、PDP、電子ペーパー等が挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。
【0209】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、PET、金属薄膜等からなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0210】
ここに開示される技術は、例えば、光の透過、反射、拡散、導波、集光、回折等の1または2以上の機能を有するフィルムや蛍光フィルム等の光学フィルムを、他の光学部材(他の光学フィルムであり得る。)に接合するために好ましく用いられ得る。なかでも、光の導波、集光、回折の少なくとも1つの機能を有する光学フィルムの接合においては、接合層のバルク全体が高屈折率であることが望ましく、ここに開示される技術の好ましい適用対象となり得る。
【0211】
ここに開示される粘着剤は、例えば、導光フィルム、拡散フィルム、蛍光フィルム、調色フィルム、プリズムシート、レンチキュラーフィルム、マイクロレンズアレイフィルム等の光学フィルムの接合に好ましく用いられ得る。これらの用途では、光学部材の小型化の傾向や高性能化の観点から、薄型化や光取出し効率の向上が求められている。かかる要請に応え得る粘着剤として、ここに開示される粘着剤は好ましく利用され得る。より詳しくは、例えば導光フィルムや拡散フィルムの接合では、接合層としての粘着剤層の屈折率を調整(例えば高屈折率化)することによって薄型化に寄与し得る。蛍光フィルムの接合では、蛍光発光体と粘着剤との屈折率差を適切に調整することにより、光取出し効率(発光効率としても把握され得る。)を向上させることができる。調色フィルムの接合では、調色用顔料との屈折率差が小さくなるように粘着剤の屈折率を適切に調整することで散乱成分を低減し、光透過性の向上に貢献し得る。プリズムシート、レンチキュラーフィルム、マイクロレンズアレイフィルム等の接合においては、粘着剤の屈折率を適切に調整することにより、光の回折を制御し、輝度および/または視野角の向上に貢献し得る。
【0212】
ここに開示される粘着剤や粘着シートは、高屈折率の被着体(高屈折率の層や部材等であり得る。)に貼り付けられる態様で好ましく用いられて、上記被着体との界面反射を抑制することができる。かかる態様で用いられる粘着剤や粘着シートは、上述のように被着体との屈折率差が小さく、かつ被着体との界面における密着性が高いことが好ましい。また、外観の均質性を高める観点から、粘着剤(層)の厚みの均一性が高いことが好ましく、例えば粘着面の表面平滑性が高いことが好ましい。高屈折率の被着体の厚みが比較的小さい場合(例えば5μm以下、4μm以下、または2μm以下である場合)には、反射光の干渉による色付きや色むらを抑制する観点から、界面での反射を抑えることが特に有意義である。このような使用態様の一例として、偏光子と第1位相差層と第2位相差層とをこの順に備える位相差層付き偏光板において上記偏光子と上記第1位相差層との接合および/または上記第1位相差層と上記第2位相差層との接合に用いられる態様が挙げられる。
【0213】
また、ここに開示される粘着剤や粘着シートは、高屈折率化に適することから、光半導体等の発光層(例えば、主に無機材料により構成された高屈折の発光層)に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。発光層と粘着剤(層)との屈折率差を小さくすることにより、それらの界面における反射を抑制し、光取出し効率を向上させ得る。かかる態様で用いられる粘着剤や粘着シートは、高屈折率の粘着剤(層)を備えることが好ましい。また、輝度向上の観点から、粘着剤や粘着シートは低着色であることが好ましい。このことは、粘着剤や粘着シートに起因する非意図的な着色を抑制する観点からも有利となり得る。
【0214】
ここに開示される粘着シートは、自発光素子を構成要素として含む発光装置において、上記自発光素子よりも視認側に配置される態様で好ましく用いられ得る。ここで、自発光素子とは、流れる電流値によって発光輝度を制御することが可能な発光素子を意味する。自発光素子は、単一体で構成されていてもよく、集合体で構成されていてもよい。自発光素子の具体例には、発光ダイオード(LED)および有機ELが含まれるが、これらに限定されない。上記自発光素子を構成要素として含む発光装置の例には、照明として利用される光源モジュール装置(例えば、面状発光体モジュール)や、画素を形成した表示装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0215】
ここに開示される粘着剤は、カメラや発光装置等の構成部材として用いられるマイクロレンズその他のレンズ部材(例えば、マイクロレンズアレイフィルムを構成するマイクロレンズや、カメラ用マイクロレンズ等のレンズ部材)において、レンズ面を覆うコーティング層、上記レンズ面に対向する部材(例えば、レンズ面に対応する表面形状を有する部材)との接合層、上記レンズ面と上記部材との間に充填される充填層、等として好ましく用いられ得る。ここに開示される粘着剤は、高屈折率化に適することから、高屈折率のレンズ(例えば、高屈折率樹脂により構成されたレンズや、高屈折率樹脂製の表面層を有するレンズ)であっても該レンズとの屈折率差を低減することができる。このことは、上記レンズおよび該レンズを備えた製品の薄型化の観点から有利であり、収差の抑制やアッベ数の向上にも貢献し得る。ここに開示される粘着剤は、例えば適切な透明部材の凹部または空隙に充填された形態で、それ自体をレンズ樹脂として利用することも可能である。
【0216】
ここに開示される粘着剤や粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)ここに開示される粘着剤や粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される粘着剤や粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、支持体が光学部材(例えば、光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように支持体として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば、粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される粘着シートが支持体を有するタイプの粘着シートであって、上記支持体として上記機能性フィルムを用いた場合には、ここに開示される粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
【0217】
上記より、ここに開示される技術によると、ここに開示される粘着シートと、該粘着シートが貼り付けられた部材とを備える積層体が提供される。粘着シートが貼り付けられる部材は、上述した被着体材料の屈折率を有するものであり得る。また、粘着シートの屈折率と部材の屈折率との差(屈折率差)は、上述した被着体と粘着シートとの屈折率差であり得る。積層体を構成する部材については、上述の部材、材料、被着体として説明したとおりであるので、重複する説明は繰り返さない。
【実施例0218】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において、使用量や含有量を表す「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0219】
<実施例1>
(分散剤Aの合成)
トリスチレン化フェノール415g(1モル)および水酸化カリウム1g(0.018モル)をオートクレーブに仕込み、均一に混合した。この反応系が130℃の条件で、該反応系にエチレンオキシド(EO)352g(8モル)を滴下した。エチレンオキシドの滴下終了後、引き続き130℃において圧力を0.1MPaに維持して1時間熟成させ、トリスチレン化フェノールのEO8モル付加物を得た。
上記トリスチレン化フェノールEO8モル付加物767g(1モル)およびモノクロロ酢酸ナトリウム152g(1.3モル)を反応器に入れ、均一になるように撹拌した。次いで、反応系が60℃の条件で水酸化ナトリウム52gを添加した後、80℃に昇温させ、3時間熟成させた。熟成後、50℃まで冷却し、同温度で98%硫酸117g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去して分散剤Aを得た。
【0220】
(ジルコニア分散体Aの調製)
酸化ジルコニウムのメタノール分散液(堺化学工業製、グレード名「SZR-M」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):3nm、酸化ジルコニウム濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)28.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体Aを得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/POB-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0221】
(光硬化型粘着剤組成物の調製)
上記ジルコニア分散体Aと、共重合モノマーとしてのフェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートP2H-A」;以下、「P2H-A」と表記する。)とを、90:10の重量比で混合した。この混合物100部に対して光重合開始剤0.1部を添加して混合することにより、実施例1に係る光硬化型粘着剤組成物C1を調製した。上記光重合開始剤としては、IGM Resins製の商品名「Omnirad 184」と商品名「Omnirad 651」とを1:1の重量比で使用した。上記光硬化型粘着剤組成物の重合転化率は0%であり、25℃における粘度(BM型粘度計、M2ローター、30rpm)は約1Pa・sであった。
【0222】
(粘着シートの作製)
片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離ライナーR1(厚さ38μm)のシリコーン処理面に、上記粘着剤組成物C1を塗布して粘着剤組成物層を形成した。上記粘着剤組成物層の表面に、片面にシリコーン処理が施されたPETフィルムからなる剥離ライナーR2(厚さ38μm)のシリコーン処理面を被せて空気を遮断し、ブラックライト照射機を用いて照度:2.5mW/cm、積算光量:2400mJ/cmの条件で紫外線照射を行った。これにより上記粘着剤組成物層を光硬化させて、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。このようにして本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0223】
<実施例2~5>
実施例1において粘着剤組成物の調製に使用した共重合モノマーの種類を、実施例2ではエチルカルビトールアクリレート(CBA)(別名:2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート)、実施例3ではメトキシエチルアクリレート(MEA)、実施例4では4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、実施例5ではn-ブチルアクリレート(BA)に変更した。その他の点については実施例1と同様にして、各例に係る光硬化型粘着剤組成物C2~C5を調製した。上記光硬化型粘着剤組成物C2~C5をそれぞれ使用した他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0224】
<実施例6>
本例では、共重合モノマーを使用せず、ジルコニア分散体A100部に対して上記光重合開始剤0.1部を添加して混合することにより、光硬化型粘着剤組成物C6を調製した。この粘着剤組成物C6を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0225】
<実施例7>
実施例1で調製したジルコニア分散体AとP2H-Aとの90:10(重量比)混合物100部に対し、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)0.025部および光重合開始剤(IGM Resins製の商品名「Omnirad 184」)0.1部を添加して混合することにより、光硬化型粘着剤組成物C7を調製した。この粘着剤組成物C7を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0226】
<実施例8>
酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.50部をさらに添加した他は実施例7と同様にして、光硬化型粘着剤組成物C8を調製した。この粘着剤組成物C8を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0227】
<実施例9>
実施例2で調製したジルコニア分散体AとCBAとの90:10(重量比)混合物100部に対し、下記の方法で調製したオリゴマーB10部と、光重合開始剤0.1部とを添加して混合することにより、光硬化型粘着剤組成物C9を調製した。上記光重合開始剤としては、IGM Resins製の商品名「Omnirad 184」と商品名「Omnirad 651」とを1:1の重量比で使用した。この粘着剤組成物C9を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0228】
(オリゴマーBの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、POB-A99部および4HBA1部からなるモノマー成分100部と、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.30部と、連鎖移動剤としての1-チオグリセロール3部と、酢酸エチル300部とを仕込み、70℃に保持した状態で緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間以上十分に窒素置換した後、フラスコ内の液温を72~74℃に保って6時間重合反応を行い、オリゴマーBの溶液を調製した。この溶液を90℃で12時間加熱した後、120℃で3時間減圧処理することにより酢酸エチルを除去して、オリゴマーBを得た。得られたオリゴマーBは、GPCに基づくMwが4,000であり、ガスクロマトグラフィーで検出される酢酸エチルの量が0.1重量部未満であった。オリゴマーBの屈折率(アッベ屈折計を使用、測定波長589nm、測定温度25℃)は1.60であった。
【0229】
<実施例10>
上記ジルコニア分散体A100部に対して、NDDA0.025部と、オリゴマーB10部と、酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.50部と、光重合開始剤0.1部とを添加して混合することにより、光硬化型粘着剤組成物C10を調製した。上記光重合開始剤としては、IGM Resins製の商品名「Omnirad 184」と商品名「Omnirad 651」とを1:1の重量比で使用した。この粘着剤組成物C10を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0230】
<実施例11>
上記ジルコニア分散体A100部に対するオリゴマーBの使用量を20部に変更した他は実施例10と同様にして、光硬化型粘着剤組成物C11を調製した。この粘着剤組成物C11を用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0231】
<比較例1>
(アクリル系ポリマーの合成)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた四つ口フラスコに、モノマー成分としてのPOB-A45部、P2H-A10部および4HBA0.55部と、熱重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2部と、重合溶媒としての酢酸エチル55部とを仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマーP1の溶液(ポリマー濃度50%)を調製した。上記モノマー成分の重合転化率は約97%であり、ポリマーP1のMwは100万であった。
【0232】
(溶剤型粘着剤組成物の調製)
上記ポリマーP1の溶液を酢酸エチルでポリマー濃度40%に希釈した。この溶液250部(不揮発分として100部)に対し、酸化ジルコニウムのメチルエチルケトン分散液(日産化学製、グレード名「OZ-S40K-AC」、動的光散乱法に基づく分散粒子径:10~30nm、酸化ジルコニウム濃度:40%)112.5部およびイソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネート(登録商標)D-110N」)0.1部を添加して混合することにより、溶剤型の粘着剤組成物を調製した。
【0233】
(粘着シートの作製)
上記で調製した粘着剤組成物を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離ライナーR2(厚さ38μm)のシリコーン処理面に塗布し、130℃で3分間加熱して、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。上記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理が施されたPETフィルムからなる剥離ライナーR1(厚さ38μm)のシリコーン処理面を貼り合わせた。このようにして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0234】
<評価>
(屈折率)
各例に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)から剥離ライナーR1を剥がし、露出した粘着剤層表面について、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で、プリズムカプラ(メトリコン社製、モデル「2010M」)を用いて臨界角モードで屈折率を測定した。結果を表1に示した。
【0235】
(全光線透過率およびヘイズ)
各例に係る粘着剤層の両面に無アルカリガラス板(厚さ0.7~0.8mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.06%)を貼り合わせた試験片を用い、23℃の測定環境下において、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製「HM-150」)を用いて、上記試験片の全光線透過率[%]およびヘイズ[%]を測定することにより、粘着剤層の全光線透過率(透過率)[%]およびヘイズ[%]を求めた。
【0236】
(貯蔵弾性率G’およびガラス転移温度)
各例に係る粘着剤層を積層して厚み約1.5mmとし、直径7.9mmの円盤状に打ち抜いたものを測定用サンプルとした。TAインスツルメント社製の「ARES G2」を用いて以下の条件により動的粘弾性測定を行い、25℃における貯蔵弾性率G’[MPa]を求めた。また、上記動的粘弾性測定における損失正接tanδ(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)のピークトップ温度に相当する温度を粘着剤のガラス転移温度(Tg)[℃]として求めた。結果を表1に示した。
[測定条件]
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
温度範囲 :-50℃~150℃
昇温速度:5℃/分
形状:パラレルプレート 7.9mmφ
【0237】
(剥離強度)
各例に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)を厚み50μmのPETフィルムで裏打ちした後、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、23℃、50%RHの測定環境下において、被着体としてのアルカリガラス板(松浪硝子工業社製、厚さ1.35mm、青板縁磨品)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(接着力)[N/25mm]を測定した。万能引張圧縮試験機としては、ミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG-1kN」を使用した。なお、基材付き片面粘着シートの場合、PETフィルムの裏打ちは必須ではない。
【0238】
(断面TEM観察)
粘着剤試料を液体窒素雰囲気下で急速凍結し、ウルトラミクロトーム(Leica社製の型式「UC7」)を用いて、-30℃の凍結雰囲気下にて該試料を約100nm厚に切り出し、超薄切片を得る。得られた超薄切片につき、透過型電子顕微鏡(TEM;日立ハイテクノロジー社製、加速電圧100kV)を用いてTEM観察を実施した。
粘着剤層の表面部および厚み中央部のTEM像において、粘着剤層の表面から厚み200nm以上の範囲にわたって該粘着剤層の厚み中央部に比べて無機粒子濃度の高い部分が認められ、かつ上記無機粒子濃度の高い部分において粘着剤層の面方向に対する無機粒子濃度に顕著な不均一が認められない場合には、偏析「あり」と評価した。一方、粘着剤層の表面から厚み200nm以上の範囲にわたって該粘着剤層の厚み中央部に比べて無機粒子濃度の高い部分が認められないか、そのような部分が一応認められるものの、当該部分において粘着剤層の面方向に対する無機粒子濃度に顕著な不均一が認められない場合には、偏析「なし」と評価した。
【0239】
図3の(A)は、実施例1の粘着剤層の第1面(剥離ライナーR1側の表面)のTEM像であり、(C)は実施例1の粘着剤層の厚み中央部に相当する部分のTEM像である。図3の(B),(D)は、それぞれ、図3(A),(C)において四角で囲んだ部分を拡大したTEM像である。図4の(A)は、比較例1の粘着剤層の第1面(剥離ライナーR2側の表面)のTEM像であり、(C)は比較例1の粘着剤層の厚み中央部に相当する部分のTEM像である。図4の(B),(D)は、それぞれ、図4(A),(C)において四角で囲んだ部分を拡大したTEM像である。
【0240】
図3の(A)から明らかなように、実施例1の粘着剤層は、表面から厚み200nm以上の範囲にわたって無機粒子濃度が高くなっていることが認められた。図3の(B),(D)の対比からも、粘着剤層の中央部に比べて表面部では、画像の面積に占める無機粒子の比率が高いことがわかる。また、表面および中央部のいずれにおいても、粘着剤層の面方向(各図の左右方向)に対して無機粒子濃度の顕著な不均一は認められなかった。
一方、図4の(A)に示されるように、比較例1の粘着剤層では、表面から厚み200nm以上の範囲にわたって面方向に均一に無機粒子濃度が高くなっている部分は認められなかった。図4の(B),(D)を対比すると、画像の面積に占める無機粒子の比率は、粘着剤層の表面部(B)よりも、むしろ中央部(D)のほうが高いことがわかる。また、図4の(B),(D)に示される、比較例1の粘着剤層では、表面および中央部のいずれにおいても無機粒子の凝集(分散ムラ)が認められた。
上記観察結果に基づいて、上述の評価基準に従い、実施例1の粘着剤層は偏析「あり」、比較例1の粘着剤層は偏析「なし」と評価した。結果を表2に示した。
【0241】
(粒子濃度比)
上記と同様にして作製した実施例1および比較例1の粘着剤層の超薄切片を用いて、以下の3つの測定範囲A,BおよびCにつき、炭素(C)およびジルコニウム(Zr)の各存在量をTEM-EDX分析により求め、その結果から、炭素(C)の存在量[atomic%]に対するジルコニウム(Zr)の存在量[atomic%]の比(Zr/C比)を算出した。図5は、測定範囲A,Bを模式的に示す断面図である。測定範囲Cは、厚み中央に対して測定範囲Aと線対称に位置する範囲に相当する。
測定範囲A(第1面):粘着剤層の第1面から深さ1μm、幅2μmの範囲
測定範囲B(中央):粘着剤層の厚み中央の深さ1μm(厚み中心から上下に0.5μm)、幅2μmの範囲
測定範囲C(第2面):粘着剤層の第2面から深さ1μm、幅2μmの範囲
【0242】
上記で算出したZr/C比に基づいて、中央部の無機粒子濃度に対する表面部の無機粒子濃度の比を求めた。具体的には、測定範囲AにおけるZr/C比を、測定範囲BにおけるZr/C比で除算することにより、第1面/中央の粒子濃度比を算出した。また、測定範囲CにおけるZr/C比を、測定範囲BにおけるZr/C比で除算することにより、第2面/中央の粒子濃度比を算出した。結果を表2に示した。
【0243】
(表面弾性率EH1および比(EH1/G’))
実施例1および比較例1に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)の表面弾性率EH1を測定した。具体的には、粘着剤層から剥離ライナーR1を剥がして露出した粘着面について、25℃、50%RHの環境下において、以下の条件で測定を行い、得られた各点の表面弾性率において、全点数の最頻値を表面弾性率EH1[MPa]とした。
[表面弾性率測定条件]
装置:オックスフォード・インストゥルメンツ社製 走査型プローブ顕微鏡(SPM)MFP-3D-SA
探針:Siカンチレバー(バネ定数3N/m相当品)
走査モード:AFMフォースカーブ法
走査範囲:1μm四方(走査ライン;32×32点)
【0244】
上記表面弾性率EH1[MPa]を上記貯蔵弾性率G’で除算して比(EH1/G’)を求めた。結果を表2に示した。
【0245】
【表1】
【0246】
表1において、光硬化型粘着剤組成物の光硬化物であって酸化ジルコニウム粒子を50重量%含有する実施例1の粘着剤層と、実施例1とほぼ同じモノマー組成であって酸化ジルコニウム粒子を50重量%含有するが溶剤型の粘着剤組成物から形成された比較例1とを対比すると、実施例1のほうがより高屈折率である。これは、図3(A)と図4(A)との対比からわかるように、実施例1では粘着剤層の表面に酸化ジルコニウム粒子が偏析していることにより、比較例1に比べて酸化ジルコニウム粒子による屈折率向上効果が効率よく発揮されたためと考えられる。上記偏析が生じていることは、表1に示す第1面/中央の粒子濃度比および第2面/中央の粒子濃度比にも明確に表れている。また、実施例1の粘着剤層は、比較例1の粘着剤層に比べてTgが低く、貯蔵弾性率G’も低い。これは、実施例1のバルク特性が比較例1に比べて柔軟であることを示唆している。また、比較例1に比べて実施例1では、透過率はより高く、ヘイズはより低くなっており、より良好な透明性が得られている。これは、図3図4との対比からわかるように、比較例1に比べて実施例1では酸化ジルコニウム粒子の凝集(分散ムラ)が顕著に抑制されていることによる効果と考えられる。
【0247】
実施例1とは共重合モノマーの種類を異ならせた光硬化型粘着剤組成物の光硬化物である実施例2~5の粘着剤層は、モノマー成分の組成のみから予測される粘着剤(酸化ジルコニウムを含まない場合の粘着剤)の屈折率は比較例1に比べて低いにもかかわらず、いずれも比較例1よりも高い屈折率を示した。実施例1から共重合モノマーを省いた実施例6は、さらに高い屈折率を示した。これは、表1に示すように実施例2~6の粘着剤層においても酸化ジルコニウム粒子が表面に偏析し、屈折率の向上に効果的に貢献したためと考えられる。実施例1の粘着剤組成物C7に多官能性モノマーを加えた実施例7、および、さらに酸化防止剤を添加した実施例8においても、実施例1と同様に、酸化ジルコニウム粒子の粘着剤表面への偏析と、これにより比較例1に比べて貯蔵弾性率G’を抑えつつ屈折率を向上させる効果が認められた。また、実施例2,9の対比から、高屈折率のオリゴマーBの添加により、屈折率を大きく低下させることなく剥離強度を向上させ得ることがわかる。オリゴマーBの添加による上記の効果は、実施例10,11においても同様に認められた。なお、実施例9~11の粘着剤層は、表1に示すように、いずれも酸化ジルコニウム粒子が表面に偏析していた。
【0248】
【表2】
【0249】
比較例1(溶剤型粘着剤層)と実施例1(光硬化型粘着剤層)とでは粘着剤層の構造が異なり、その構造の違いを反映して物性も異なることは、表1に示す偏析の有無や、表面部の粒子濃度と中央部における粒子濃度との比率のほか、表2に示す評価結果、具体的には表面弾性率EH1および粘着剤層の貯蔵弾性率G’(バルク特性)に対する表面弾性率EH1の比の値にも反映されている。
【0250】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0251】
1,2 粘着シート
11 粘着剤層
11A 粘着面(第1粘着面)
11B 粘着面
15 支持基材
21,22 剥離ライナー

図1
図2
図3
図4
図5