IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー イノベーション  カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2024-134547セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子
<>
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図1
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図2
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図3
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図4
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図5
  • 特開-セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134547
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20240926BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240926BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240926BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/443 B
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/426
H01M50/489
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043961
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0035933
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】オ ウン ジ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性を有するセパレータを提供する。
【解決手段】多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面上に配置される耐熱性接着層と、を含み、前記耐熱性接着層は、無機粒子、および複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子を含む、セパレータとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面上に配置される耐熱性接着層と、を含み、
前記耐熱性接着層は、無機粒子、および複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子を含むバインダー成分を含み、前記有機粒子の平均粒径D50が0.1~1.5μmである、セパレータ。
【請求項2】
前記耐熱性接着層は、前記バインダー成分の全重量を基準として、前記有機粒子を50重量%以上含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記耐熱性接着層は、前記バインダー成分として、有機バインダーをさらに含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記有機バインダーは、アクリル系重合体、シラン系化合物、スチレンブタジエンゴム、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルアセテートからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記耐熱性接着層は、前記耐熱性接着層の全重量を基準として、無機粒子30~85重量%、有機粒子10~60重量%、および有機バインダー1~15重量%を含む、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径(D50)の比が0.5~2.5である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記有機粒子の粒度分布D10/D90が0.3~0.9である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は50~90℃である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記耐熱性接着層の厚さは0μm超過5μm以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記有機粒子は、一次粒子が表面の溶融により互いに凝集し、複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)が形成された二次粒子であるか、または表面に複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する一次粒子である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記セパレータは、厚さ200μmのカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)上に前記セパレータの耐熱性接着層を対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に準じてINSTRON社製のUTM装置を用いて180度剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm~4.0gf/15mmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記セパレータは、下記式により測定される通気度変化量ΔGが100sec/100cc以下である、請求項11に記載のセパレータ。
ΔG=G-G
上記式中、Gは、多孔性基材の両面に耐熱性接着層が積層されセパレータのガーレー透気度(sec/100cc)であり、Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度である。ガーレー透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータを用いてASTM D726規格に準じて測定したものである。
【請求項13】
前記セパレータは、2枚のセパレータを前記接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した後、ASTM D903に準じて180度剥離したとき、前記接着層同士が互いに接着して一部または全体が剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離されてブロッキングが発生しない、請求項12に記載のセパレータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子に関する。具体的には、優れた電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレータの高温安定性の問題を解決するために、多孔性基材の片面または両面に多孔性無機粒子層が形成されたセラミックコーティングセパレータ(Ceramic Coated Separator、CCS)が用いられている。前記セラミックコーティングセパレータは、高温熱収縮率が低く、耐熱性に優れるという利点があり、EV用大型電池システムに適用されている。
【0003】
しかし、従来のセラミックコーティングセパレータは、電極との接着性が不足しており、セル組立工程中にセパレータと電極が分離され、電極組立体の歪み、変形などが発生する場合が多い。すなわち、上記のようにセパレータのセラミックコーティング層と電極との接着性が不足している場合、セルスタッキング(cell stacking)時にゼリーロール(jelly roll)内で電極とセパレータとの間に整列不良(misalignment)の問題が発生する。上記のように整列不良が発生したスタックセル(stack cell)電池を駆動する場合、整列不良による局部的な抵抗の発生や、持続的な使用による物理的損傷で電極間の短絡(short)が発生し、火災などの安全性の問題がある。
したがって、セラミックコーティングセパレータと電極の接着性の向上は、電池の安定性のために必ず改善されなければならない問題である。
【0004】
前記セパレータと電極の接着性を向上させる1つの方法として、前記セラミックコーティングセパレータの無機粒子層の上部に接着性有機物層を形成する方法があるが、前記有機物層により通気性が悪くなり、薄膜化が難しく、電極接着性が依然として不良であり、また、セパレータ巻き取り時に接着性有機物層が脱離するブロッキング現象が発生する。したがって、セパレータのイオン伝導度が低下するか、または/および電極組立体のアライメント時に厚さの偏差が発生し、電池の性能を阻害するなどの解決すべき問題を依然として抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本登録特許第4414165号公報(公開日:2005.03.03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した問題を解決するために、本開示の一実施形態は、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【0007】
一態様として、耐熱性接着層の厚さが5μm以下であり、セパレータの全体の厚さが20μm以下、15μm以下であるセパレータを提供することができ、上記範囲においても優れた電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を達成するための一手段として、本開示は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面上に配置される耐熱性接着層と、を含み、
前記耐熱性接着層は、無機粒子、および複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子を含むバインダー成分を含み、前記有機粒子の平均粒径D50が0.1~1.5μmである、セパレータを提供する。一実施例では、無機粒子と有機粒子は空間的に混合および分散される。例えば、有機粒子は、無機粒子と分散及び混合され、複数の突出部及び複数の谷部を含む。そして、無機粒子および有機粒子は、多孔質基材の少なくとも1つの表面に保持され、結合される。
【0009】
一実施形態において、前記耐熱性接着層は、前記バインダー成分の全重量を基準として、前記有機粒子を50重量%以上含んでもよい。
一実施形態において、前記耐熱性接着層は、前記バインダー成分として、有機バインダーをさらに含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記有機バインダーは、アクリル系重合体、シラン系化合物、スチレンブタジエンゴム、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルアセテートなどからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記耐熱性接着層は、前記耐熱性接着層の全重量を基準として、無機粒子30~85重量%、有機粒子10~60重量%、および有機バインダー1~15重量%を含んでもよい。
【0012】
一実施形態において、前記無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径(D50)の比が0.5~2.5であってもよい。
一実施形態において、前記有機粒子の粒度分布D10/D90が0.3~0.9であってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は50~90℃であってもよい。
一実施形態において、前記耐熱性接着層の厚さは0μm超過5μm以下であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記有機粒子は、一次粒子が表面の溶融により互いに凝集し、複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)が形成された二次粒子であるか、または表面に複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する一次粒子であってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記セパレータは、厚さ200μmのカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)上に前記セパレータの耐熱性接着層を対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に準じてINSTRON社製のUTM装置を用いて180度剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm~4.0gf/15mmであってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記セパレータは、下記式により測定される通気度変化量ΔGが100sec/100cc以下であってもよい。
【0017】
ΔG=G-G
上記式中、Gは、多孔性基材の両面に耐熱性接着層が積層されたセパレータのガーレー透気度であり、Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度である。ガーレー透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータを用いてASTM D726規格に準じて測定したものであり、単位はsec/100ccである。
【0018】
一実施形態において、前記セパレータは、2枚のセパレータを前記接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した後、ASTM D903に準じて180度剥離したとき、前記接着層同士が互いに接着して一部または全体が剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離されてブロッキングが発生しないものであってもよい。
【0019】
また、前述した課題を達成するための他の一手段として、本開示の一実施形態によると、前述した実施形態のセパレータを含む、電気化学素子を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本開示のセパレータは、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性、または通気性を有することができる。
一実施形態の前記セパレータは、厚さ200μmのカーボンシート上にセパレータの接着層を対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に準じてUTM装置を用いて180度剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm以上、2.0gf/15mm以上、2.3gf/15mm以上、2.5gf/15mm以上、3.0gf/15mm以上、または1.5gf/15mm~4.0gf/15mmであってもよい。前述した実施形態によると、高いガラス転移温度を有する重合体の一次粒子の表面が溶融して凝集した形態の二次粒子状である有機粒子を相対的に少量含む場合にも十分な電極接着性を確保することができる。
【0021】
一実施形態のセパレータは、薄い厚さでも優れた電極接着性を確保できるとともに、アンチブロッキング性に優れることができる。例えば、多孔性基材と耐熱性接着層が積層された2枚のセパレータを接着層が互いに対面するように積層して配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着する。次に、接着された部分を剥離し、接着層の一部または全体が剥離してセパレータ表面間のブロッキングを引き起こしたか否かをSEMにより確認する場合、前記接着層が互いのセパレータから一部脱離する現象であるブロッキングが発生しない、優れたブロッキング防止性能を有することができる。
【0022】
一実施形態のセパレータは、耐熱性接着層を多孔性基材上に配置する多層構造を有する場合にも優れた通気性を有することができ、下記式で表される通気度変化量(ΔG)が100sec/100cc以下、95sec/100cc以下、または90sec/100cc以下であってもよい。
【0023】
ΔG=G-G
上記式中、Gは、多孔性基材の両面に耐熱性接着層が積層されセパレータのガーレー透気度であり、Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度である。ガーレー透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータを用いてASTM D726規格に準じて測定したものであり、単位はsec/100ccである。また、前記多孔性基材の片面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータの場合にも前記通気度変化量を満たすことができる。
【0024】
前述した一実施形態のセパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性のうち2つ以上が優れ、より好ましくは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性の全てが優れることができる。
【0025】
具体的な一実施形態のセパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性のうち2つ以上が優れ、より具体的な一実施形態のセパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性の全てが優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一態様に係る有機粒子の形状をSEMにより観察した写真である。
図2】本発明の一態様に係る有機粒子の形状を示したものである。
図3】実施例1のセパレータの耐熱性接着層をSEMにより観察した写真である。
図4】比較例1のセパレータの耐熱性接着層をSEMにより観察した写真である。
図5】比較例2のセパレータの耐熱性接着層をSEMにより観察した写真である。
図6】比較例3のセパレータの耐熱性接着層をSEMにより観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態または実施例により本開示をより詳細に説明する。ただし、下記の実施形態または実施例は、本開示を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本開示は、これに限定されず、様々な形態で実現可能である。
【0028】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本開示が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本開示における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本開示を限定するためのものではない。
【0029】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
また、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0030】
本開示において、有機粒子100は、高分子粒子であってもよく、図1および2に示すように、複数の突出部(protrusion part)10と複数の谷部(valley part)20が形成されたものであってもよい。一例として、前記有機粒子は、重合した複数の一次粒子が表面の溶融により互いに凝集した凝集体、すなわち二次粒子であってもよい。前記複数の突出部10および複数の谷部20は、前記一次粒子の凝集により形成されたものであってもよい。前記二次粒子状のバインダー粒子とは、一次粒子の一部に該当する複数の突出部を有し、また、その突出した突出部と突出部との間に谷(valley)や陥没部位(shrinked cavity)が形成されている粒子状を意味し得る。例えば、有機粒子の表面上に、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、8個以上の一次粒子状の凸状の複数の突出部(bump part)、および前記突出部の間に形成される複数の谷部(valley part)や陥没部位を含む形態を意味する。
または、表面に複数の突出部と複数の谷部を有する一次粒子であってもよい。
【0031】
前記有機粒子の突出部および谷部は、大きさおよび形状が不規則的であってもよい。前記「不規則的」という用語は、実質的に直線的でない、実質的に均一でない、または実質的に対称的でないことを意味する。前記「突出部」という用語は、粒子の表面に突出する部分を意味し、図1および2に10で示されている。前記「谷または陥没部」とは、粒子の表面の凹部(concavity)を意味し、前記有機粒子の中心から放射状に形成された前記複数の突出部間の高さの差により形成されるか、または突出部と突出部との間に形成された凹部を意味し、図1および2に20で示されている。
【0032】
本開示において、「Dn」(nは実数)とは、体積基準の積算分率でn%に相当する粒子の直径を意味する。例えば、「D50」とは、体積基準の積算分率で50%に相当する粒子の直径を意味する。「D90」とは、体積基準の積算分率で90%に相当する粒子の直径を意味する。「D10」とは、体積基準の積算分率で10%に相当する粒子の直径を意味する。前記Dnは、測定対象である粒子に対してISO 13320-1規格に準じて試料を採取し、粒度分析器であるMicrotrac社製のS3500を用いて分析された粒度分布結果から導き出すことができる。
【0033】
本開示のセパレータは、一態様として、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面上に配置される耐熱性接着層と、を含み、前記耐熱性接着層は、無機粒子、および複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子を含み、前記有機粒子の平均粒径D50が0.1~1.5μmである、セパレータであってもよい。
【0034】
以下、セパレータの各構成について詳しく説明する。
一実施形態において、前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系多孔性基材であってもよいが、特に限定されず、電気化学素子のセパレータの多孔性基材として公知の全ての多孔性基材を用いてもよい。一実施形態において、多孔性基材は、フィルムまたはシート状に製造されてもよいが、特に限定されない。一例として、多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含み、2層以上の多層膜が用いられてもよい。
【0035】
一実施形態において、前記多孔性基材の厚さは、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、または6μm以上であってもよい。上限は限定されるものではないが、例えば、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、12μm以下、または上記数値の間の値であってもよく、非限定的に1~100μm、高容量電池の実現のために3~50μm、5~20μm、または5~15μmであってもよい。
【0036】
一実施形態において、耐熱性接着層は、無機粒子がバインダー成分により連結、固定されて気孔を形成し、前記有機粒子が前記無機粒子またはバインダー成分と連結、固定されて気孔を形成した多孔性層であってもよい。一実施形態において、前記耐熱性接着層は、多孔性基材の片面または両面上に配置され、多孔性基材の全表面を基準として面積分率60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、好ましくは、一部の欠陥がある場合を除き、100%塗布されてもよい。
【0037】
一実施形態として、前記無機粒子は、セパレータの耐熱性を向上させるために添加するものであり、その種類は特に限定されない。非限定的な例として、無機粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物、および金属炭化物のうち1つまたは2つ以上を含んでもよい。具体例として、SiO、SiC、MgO、Y、Al、CeO、CaO、ZnO、SrTiO、ZrO、TiO、およびAlO(OH)などからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよいが、これに限定されない。電池の安定性を改善するために、前記無機粒子は、ベーマイト(boehmite)、擬ベーマイト(pseudo-boehmite)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、および水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)などの金属水酸化物粒子がより好ましいが、これに限定されない。
【0038】
一実施形態として、前記無機粒子としてベーマイトを用いる場合、ベーマイトの比表面積(BET)は10m/g以上、または15m/g以上であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0039】
一実施形態において、無機粒子のD50は0μm超過、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または上記数値の間の値であってもよい。例えば、0μm超過5μm以下、または0μm超過3μm以下、0.05μm以上2μm以下、0.1μm以上1μm以下、または0.1μm以上0.5μm以下であってもよい。
【0040】
前述した実施形態のD50数値範囲を満たす無機粒子を設ける方法は、特に限定されず、非限定的な例として、上記のD50数値範囲を満たす単独無機粒子として設けられるか、または互いに異なるD50を有する無機粒子を混合して上記のD50数値範囲を満たす混合無機粒子として設けられてもよい。
【0041】
一実施形態の耐熱性接着層は、バインダー成分として前記複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子を含み、前記有機粒子の平均粒径D50が0.1~1.5μmであるものを含むことで、薄膜であり、具体的には50μm以下の厚さであり、かつ、電極との接着性に優れ、多孔性基材自体の透気度に比べて耐熱性接着層の形成後にも透気度の増加が少なく、ブロッキングが発生せず、電池組立時に発生する問題を解消することができる。また、一般的な球状有機粒子を用いる場合に比べて、電極との接着性にさらに優れたセパレータを提供することができる。
【0042】
次に、本実施形態の耐熱性接着層中のバインダー成分のうち、電極接着力に最も大きく寄与する有機粒子について詳しく説明する。
本開示において、前記有機粒子は、一次粒子が表面の溶融により凝集した形態の二次粒子であるか、または凸状に突出した複数の突出部、および突出部の間に複数の陥没部位や複数の谷(valley)を有する単一粒子であってもよい。
【0043】
前記有機粒子は、特に限定されず、例えば、0.1~1.5μm、0.2~1.5μm、または0.3~1μmのD50粒径を有する「二次粒子状の有機粒子」であってもよい。前記二次粒子状のバインダー粒子の典型的な形状は、図1に示すように、重合した複数の一次粒子が互いに溶融、例えば、表面などが溶融して凝集し、凝集体の表面が一次粒子により突出し、また、一次粒子の間に谷が形成されている粒子状を意味し得る。他の例として、凝集しなくても、1つの粒子において、3個以上の凸状の突出部、および突出部の間に複数の谷(valley)や複数の陥没部位(shrinked cavity part)が形成された粒子を意味し得る。例えば、有機粒子の表面上に、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上の凸状の突出部(protrusion part)、および前記突出部の間に複数の谷(valley)や複数の陥没部位(shrinked cavity part)が形成された粒子を意味し得る。
【0044】
上記の大きさおよび形状を有する本発明の前記有機粒子は、図5のような球状を有する有機粒子に比べて、相対的に少量含まれても、十分な電極との接着性の改善および通気性およびアンチブロッキング性の著しい改善が可能である。
【0045】
また、前記有機粒子の平均粒径(D50)は、上記の形状を有するものであれば特に限定されず、例えば、1.5μm以下、1μm以下、0.5μm以下、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上であってもよく、好ましくは、0.1~1.5μm、または0.2~1.0μmであってもよい。
【0046】
上記の平均粒径の範囲にて、無機粒子とのバインディング効果をよりよく達成するとともに、電極との接着力が著しく改善される。特に0.1~1.5μmの大きさの場合、移送または積層過程で接着層同士がブロッキングするか、または耐熱性接着層と接する他の部位に接着剤が付着して無機粒子層上部の接着層が脱離するブロッキング現象が著しく減少し、電極との接着力も著しく増加し、また、薄膜化が可能になるためより好ましい。
【0047】
一実施形態において、前記有機粒子の粒度分布は、D10/D90値が0.3以上、0.4以上、0.9以下、0.8以下、または上記数値の間の値であってもよい。または0.3~0.9、または0.4~0.8であってもよい。上記の有機粒子の粒度分布範囲を満たす場合、電極接着力の確保のための有機粒子の含量をさらに低減することができ、これにより、通気性、アンチブロッキング性の確保にさらに有利であるため好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0048】
一実施形態において、前記有機粒子は、無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径の比が0.5以上、0.6以上、0.7以上、2.5以下、1.5以下、1.3以下、1.0以下、または上記数値の間の値である場合、無機粒子層の表面凹凸または空隙内に流入する有機粒子の含量をさらに低減することができ、これにより、通気性、アンチブロッキング性の確保にさらに好ましいが、これに限定されない。好ましくは、有機粒子の平均直径/無機粒子の平均直径の比が0.5~2.5、0.5~1.5、0.6~1.3、または0.7~1.0であってもよい。
【0049】
一実施形態において、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性を有するセパレータを提供するために、前記耐熱性接着層は、前記バインダー成分の全重量を基準として、前記有機粒子を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上、または100%含んでもよい。前記二次粒子状の有機粒子が多く含まれるほど、本開示の目的を達成するのに有利であるため、含量の上限は特に限定されない。
【0050】
前記有機粒子が図1に示すように上記で定義された特定の形状を有することで、前記有機粒子と同様の重合体であるが、その形状が図5に示すように谷のない球状や円形状のものに比べて、相対的に著しい電極接着性、通気性、アンチブロッキング性などの優れた物性を有することができる。したがって、本発明の前記有機粒子の組成は、特に限定されず、当該技術分野で電極接着性を改善するために通常用いられる有機粒子の組成であれば全て適用可能である。
【0051】
非限定的な例として、前記有機粒子は、架橋されるかまたは架橋されていない粒子状のアクリル系高分子またはフッ素系高分子から製造されてもよく、またはコア-シェル構造であってもよい。前記コア-シェル構造の粒子状のアクリル系高分子は、例えば、コアのゴムまたは架橋体粒子の表面上にアクリル系単量体と必要に応じて他のコモノマーおよび架橋剤を含んで重合したものであってもよいが、特に限定されない。
【0052】
前述した実施形態に係る前記特定の形状の有機粒子は、その構造的特徴により少量でも電極接着力を著しく改善することができ、高いガラス転移温度を有する場合、アンチブロッキング性をさらに改善することができるため好ましい。この場合、前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は50℃以上、60℃以上、90℃以下、80℃以下、70℃以下、または上記数値の間の値であってもよく、例えば、50~90℃、55~75℃、または60~70℃であってもよいが、これに限定されない。
【0053】
一実施形態において、前記耐熱性接着層は、選択的に、当該技術分野でセパレータの電極接着性有機物層に添加されることが知られている滑剤、界面活性剤などのその他の成分をさらに含んでもよく、特に限定されない。
【0054】
一実施形態において、前記耐熱性接着層は、バインダー成分として前記有機粒子の他に有機バインダーをさらに含んでもよい。前記有機バインダーは、耐熱性接着層中の無機粒子を連結および固定する役割を行うことができるものであれば限定されない。一例として、前記有機バインダーは、粒子状または非粒子状であってもよく、粒子状の場合は、前記複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子とは区別される形態の粒子であってもよい。また、前記有機バインダーは、水系ラテックスであってもよい。
【0055】
非限定的な一例として、有機バインダーは、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)などのアクリル系重合体;(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン)((3-aminopropyl)trimethoxysilane)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)((3-glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)、およびこれらのオリゴマーまたはこれらから製造されるシラン系化合物;スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber);カルボキシルメチルセルロース(carboxylmethylcellulose、CMC);ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVdF);ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP);およびポリビニルアセテート(polyvinylaccetate、PVAc);などからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよいが、これに限定されない。
【0056】
具体的な一実施形態において、前記耐熱性接着層は、前記耐熱性接着層の全重量を基準として、無機粒子30~85重量%、有機粒子10~60重量%、および有機バインダー1~15重量%を含んでもよいが、特に限定されない。
【0057】
一実施形態において、耐熱性接着層は、耐熱性接着層の全重量を基準として、無機粒子を30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、85重量%以下、80重量%以下、または上記数値の間の値で含んでもよく、具体的には30~85重量%、または40~80重量%含んでもよい。前述した一実施形態における含量範囲で無機粒子を含む場合、セパレータの耐熱性をさらに改善することができるが、特に限定されない。
【0058】
一実施形態において、耐熱性接着層は、耐熱性接着層の全重量を基準として、前記有機粒子を10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、または上記数値の間の値で含んでもよく、具体的には10~60重量%、15~55重量%、または20~50重量%含んでもよい。前述した一実施形態における含量範囲で前記有機粒子を含む場合、電極接着性、アンチブロッキング性、または通気性をさらに改善することができるが、特に限定されない。
【0059】
一実施形態において、耐熱性接着層は、耐熱性接着層の全重量を基準として、有機バインダーを1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、または上記数値の間の値で含んでもよく、具体的には1~15重量%、2~12重量%、3~10重量%含んでもよい。前述した一実施形態における含量範囲で有機バインダーを含む場合、セパレータ中の無機粒子をさらに堅固に連結および固定することができるが、特に限定されない。
【0060】
一実施形態において、耐熱性接着層は、バインダー成分として、選択的に、前記有機バインダー、および前記複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子の他に、当該技術分野で周知の全てのバインダーをさらに含んでもよく、特に限定されない。
【0061】
一実施形態において、耐熱性接着層は、多孔性基材の片面または両面上に配置されてもよく、前記多孔性基材の両面に耐熱性接着層が配置される場合、片面と他面に配置された耐熱性接着層の厚さは、互いに同一でも異なってもよい。一実施形態において、多孔性基材の片面上に配置される耐熱性接着層の厚さは0μm超過、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、または上記数値の間の値であってもよく、前記耐熱性接着層の厚さは0μm超過5μm以下、高容量電池の実現のために、具体的には0μm超過3μm以下、または0μm超過2.5μm以下であってもよい。
【0062】
前記耐熱性接着層は、当該技術分野で公知の全ての方法を活用して多孔性基材上に配置する通常の製造方法で製造されればよく、特に限定されない。非限定的な例として、無機粒子、有機バインダー、および有機粒子の混合物に水を添加し撹拌して耐熱性接着層用スラリーに製造した後、製造されたスラリーをスロットダイコーティング(slot die coating)、ロールコーティング(roll coating)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、バーコーティング(bar coating)、ダイコーティング(die coating)、スリットコーティング(slit coating)、およびインクジェット印刷(inkjet printing)のいずれか1つまたはこれらを組み合わせた方法で多孔性基材の片面または両面に塗布し、前記多孔性基材上に耐熱性接着層を形成することができる。
前述した実施形態に係るセパレータは、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性、または通気性を有することができる。
【0063】
一実施形態において、前記セパレータは、厚さ200μmのカーボンシート上にセパレータの接着層を対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に準じてUTM装置を用いて180度剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm以上、2.0gf/15mm以上、2.5gf/15mm以上、または3gf/15mm以上であってもよい。または1.5gf/15mm~4.0gf/15mm、2.0~4.0gf/15mmであってもよい。
【0064】
前述した実施形態によると、上記の形状を有するとともに、高いガラス転移温度を有する有機粒子は、少量用いて薄く塗布するか、または塗布面積が十分でなくてもよりよく分布するため、無機粒子層に塗布される場合にも、十分な電極接着性を確保するとともにアンチブロッキング性を向上させることができるためより好ましい。
【0065】
例えば、多孔性基材と耐熱性接着層が順次積層されたセパレータを接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着する。次に、接着された部分を剥離し、接着層の一部または全体が剥離してセパレータ表面間のブロッキングを引き起こしたか否かをSEMにより確認する場合、前記接着層が互いのセパレータから一部脱離する現象であるブロッキングが発生しない、優れたブロッキング防止性能を有することができる。
【0066】
一実施形態のセパレータは、下記式で表される通気度変化量(ΔG)が100sec/100cc以下、95sec/100cc以下、または90sec/100cc以下であってもよい。
【0067】
ΔG=G-G
上記式中、Gは、多孔性基材の両面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガーレー透気度(sec/100cc)であり、Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度である。ガーレー透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータを用いてASTM D726規格に準じて測定したものである。
【0068】
一実施形態に係る前記セパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性のうち2つ以上が優れ、より好ましくは、電極接着性、アンチブロッキング性、および通気性の全てが優れることができる。
【0069】
他の一実施形態は、前記セパレータを含む電気化学素子を提供する。前記電気化学素子は、エネルギー貯蔵装置であってもよく、特に限定されないが、非限定的な一例としてリチウム二次電池が挙げられる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も公知であるため、本開示では具体的に説明しない。
【0070】
一実施形態に係るリチウム二次電池は、正極と負極との間に前述したセパレータを含んでもよい。この際、前記正極および前記負極は、リチウム二次電池に通常用いられるものであれば限定なく全て使用可能である。
【0071】
以下、実施例および比較例に基づいて本開示をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本開示をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本開示が下記の実施例および比較例により限定されるものではない。
以下、セパレータの物性の測定方法は次のとおりである。
【0072】
1.電極接着力
厚さ200μmのカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)上にセパレータの耐熱性接着層を対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に準じてINSTRON社製のUTM装置を用いて180度剥離(peel)して電極接着力を測定する。セパレータの耐熱性接着層の接着力があまりにも低く、UTM装置を用いて剥離することさえできない場合は「測定不可」と評価する。
【0073】
2.通気度変化量
通気度変化量ΔGは、下記のように計算する。
ΔG=G-G
上記式中、Gは、多孔性基材の両面に耐熱性接着層が積層されたセパレータのガーレー透気度(sec/100cc)であり、Gは、多孔性基材自体のガーレー透気度である。ガーレー透気度は、Toyoseiki社製のデンソメータを用いてASTM D726規格に準じて測定するものであり、100ccの空気がセパレータ1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録する。単位はsec/100ccである。
【0074】
3.アンチブロッキング(anti-blocking)性
多孔性基材と耐熱性接着層が積層された2枚のセパレータを前記耐熱性接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した。次に、ASTM D903に準じて180度剥離したとき、前記接着層同士が互いに接着して一部または全体が剥離する現象が発生するか否かを評価した。一部でも剥離する場合はブロッキングが発生したものとし、剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離される場合はブロッキングが発生しなかったものとした。ブロッキング発生の有無は、SEMにより確認する。SEMによりブロッキング発生が確認される場合は「NG」と評価し、ブロッキング発生が確認されない場合は「OK」と評価する。
【0075】
4.平均粒径の測定方法
ISO 13320-1規格に準じて、粒度分析器としてMicrotrac社製のS3500を用いて平均粒径(D50、D10、およびD90)を測定した。
5.ガラス転移温度
ガラス転移温度はTA社のDSC装備(モデル名:Q200)を用いて-50℃から300℃まで窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分で昇温して測定した。このとき、2回(1回目、2回目の実行、冷却)にかけて昇温して測定した。
6.厚さ
厚さは、0.1μm測定精度を有する接触式厚さ測定器を用いて測定した。測定は、TESA社のTESAμ-Hite Electronic Height Gaugeを用いて、0.63Nの測定圧力で行った。
【0076】
[実施例1]
1)耐熱性接着層用スラリーの製造
図1のような形状の有機粒子として平均粒径(D50)が550nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックス(メチルメタクリレートとブチルメタクリレートを重合したアクリル系ラテックス)35重量%、無機粒子としてD50が600nmのベーマイト粒子(Nabaltec社、Apyral AOH60)60重量%、有機バインダーとして水溶性アクリル系バインダー(Ashland社、PVP K120)5重量%を水に固形分含量が40重量%になるように添加して撹拌し、均一に混合された耐熱性接着層用スラリーを製造した。この際、有機粒子のD10/D90は0.57であった。
【0077】
2)セパレータの製造
ガーレー透気度が125sec/100cc、厚さ8.5μmのポリオレフィン系多孔性基材(SK innovation社、ENPASS)の両面にスロットコーティングダイを用いて耐熱性接着層用スラリーをコーティングした後、40℃に維持される乾燥機に通して乾燥し、ロール状に巻き取った。この際、各耐熱性接着層の厚さは2μmであり、セパレータの総厚さは12.5μmであった。図3に接着層の表面写真を示し、その物性を表1に示した。
【0078】
[実施例2]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、D50が400nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃の有機粒子40重量%、無機粒子としてD50が600nmのベーマイト粒子55重量%、有機バインダーとして水溶性アクリル系高分子5重量%を用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。この際、有機粒子のD10/D90は0.45であった。その結果を表1に示した。
【0079】
[実施例3]
実施例1の有機粒子の代わりにD50が1.5μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含量で用い、無機粒子のD50が1000nmのベーマイト粒子を表1に記載された含量で用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0080】
[実施例4]
実施例1の有機粒子の代わりにD50が1μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含量で用い、無機粒子のD50が750nmのベーマイト粒子を表1に記載された含量で用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0081】
[実施例5]
実施例1と同様に実施するが、耐熱性接着層用スラリーの製造時、水溶性アクリル系バインダーを用いずに耐熱性接着層用スラリーを製造した。すなわち、有機粒子として実施例1と同様のアクリル系ラテックス40重量%、無機粒子としてD50が600nmのベーマイト粒子60重量%を水に固形分含量が40重量%になるように添加して撹拌し、均一に混合された耐熱性接着層用スラリーを製造した。
その他、実施例1と同様に実施した。その物性を表1に示した。
【0082】
[実施例6]
実施例1の有機粒子の代わりにD50が1.5μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含量で用い、無機粒子のD50が600nmのベーマイト粒子を表1に記載された含量で用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0083】
[比較例1]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、前記実施例1のアクリル系ラテックスを有機溶液に溶解して塗布したことを除いては同様に実施した。その結果を図4および表1に示した。
【0084】
[比較例2]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、前記実施例1の有機粒子の代わりに、完全球状の有機バインダー粒子として、実施例1と同様の単量体を用いて懸濁重合して製造された図5の球状のD50が550nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを同一含量で添加したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を図5および表1に示した。
【0085】
[比較例3]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、前記実施例1の有機粒子の代わりに、完全球状の有機バインダー粒子として、D50が200nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックス45重量%、無機粒子としてD50が600nmのベーマイト粒子50重量%、有機バインダーとしてアクリル系高分子5重量%を用いたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を図6および表1に示した。
【0086】
[比較例4]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、前記実施例1の有機粒子と同様の単量体を用いて懸濁重合して製造された有機粒子として、図1のような形状の粒子を用いた。ただし、D50が2μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含量でコーティングしたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0087】
[比較例5]
耐熱性接着層用スラリーの製造時、前記実施例1の有機粒子と同様の単量体を用いて懸濁重合して製造された有機粒子として、図1のような形状の粒子を用いた。ただし、D50が5μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含量でコーティングしたことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
本発明の前記実施例および比較例で製造されたセパレータの物性評価結果を下記表1にまとめて示した。
【0088】
【表1】
【0089】
前記表1の結果および図面を参照すると、図3に示すように、表面上に凸状の突出部、および前記突出部の間に介在した谷部(valley part)を含む二次粒子状を有する有機粒子により耐熱性接着層が形成されたものであり、有機粒子の平均直径が0.1~1.5μmの範囲を満たし、前記有機粒子がバインダー成分のうち50重量%以上用いられ、前記無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径(D50)の比が0.5~1.5の範囲を満たす範囲で耐熱性接着層が多孔性基材上によく形成されたことを確認することができた。また、電極接着力が1.5gf/15mm~4.0gf/15mmの範囲を満たし、通気度変化量が100sec/100cc以下であり、ブロッキングが発生しない物性を同時に満たすことができることを確認した。
【0090】
これに対し、比較例1は、溶解性アクリル系高分子を用いたものであり、図4に示すように表面の空隙を塞いで通気性に劣り、電極接着力も非常に低かった。
【0091】
実施例1と比較して比較例2は、図5を参照すると、同一直径基準の周長が有機粒子よりも小さい完全球状の有機バインダー粒子を用いた結果、同一含量基準に実施例1に比べて電極接着力に劣るものであった。
【0092】
比較例3は、無機粒子の平均粒径に対する有機バインダー粒子の平均粒径が過度に小さい結果、図6に示すように、無機粒子の表面凹凸の間または無機粒子の間に有機バインダー粒子が埋もれて接着力に劣るものであった。
【0093】
比較例4および5は、実施例1と同様の有機粒子を用いるが、平均粒径が2μm、5μmのものを用いたものであり、この場合、接着力は発揮されるが、通気度変化量が大きく、ブロッキングが発生することを確認した。また、セパレータの製造後に粉落ちが発生した。
【0094】
以上、特定の事項と限定された実施例により本開示を説明したが、これは本開示のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本開示は上記の実施例に限定されない。本開示が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0095】
したがって、本開示は、上記で説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本開示の範囲に属するといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6