(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134548
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/463 20210101AFI20240926BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240926BHJP
【FI】
H01M50/463 A
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/443 C
H01M50/414
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044005
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0035915
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】オ ウン ジ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性および通気性を有するセパレータを提供する。
【解決手段】多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に配置され、無機粒子を含む無機粒子層と、前記無機粒子層の上に配置され、2次粒子形状の有機粒子を含む接着層と、を含む、セパレータとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の少なくとも一面上に配置され、無機粒子が互いに接続されて無機粒子間に気孔を形成する無機粒子層と、
前記無機粒子層の上に配置され、複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子が互いに接続されて気孔を形成する接着層と、を含む、セパレータ。
【請求項2】
前記無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径(D50)の比が0.5~1.5である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記有機粒子のD50が0.1~1.5μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記有機粒子の粒度分布D10/D90が0.3~0.9である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は50~90℃である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記接着層の厚さは0μm超過2μm以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記有機粒子は、1次粒子が表面溶融により互いに凝集して複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)が形成された2次粒子であるか、または表面に複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する1次粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記接着層は、前記接着層全体の重量基準で前記有機粒子を70重量%以上含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記接着層は、前記有機粒子を0.2~2.0g/m2で含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記セパレータは、200μm厚のカーボンシート(TOYO Tanso Korea,PF-20HP)上に前記セパレータの接着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着し、ASTM D903に基づき、INSTRON社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)し、測定した電極接着力が1.5gf/15mm~4.0gf/15mmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記セパレータは、下記式で測定される通気度変化量ΔGが50秒/100cc以下である、請求項10に記載のセパレータ。
ΔG=G1-G2
前記式で、G1は多孔質基材の両面に、無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガリー透過率であり、G2は多孔質基材自体のガリー透過率である。ガリー透過率はToyoseiki社のDensometerを用い、ASTMD726規格に従って測定したもので、単位は秒/100ccである。
【請求項12】
前記セパレータは、2枚のセパレータを前記接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した後、ASTMD903に従って180°で剥離したとき、前記接着層同士が接着して一部または全体が剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離してブロッキングが発生しないものである、請求項11に記載のセパレータ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子に関する。具体的には、優れた電極密着性、アンチブロッキング性および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータの高温安定性問題を解決するために、従来は多孔質基材の一面または両面に多孔性無機粒子層が形成されたセラミックコーティングセパレータ(Ceramic Coated Separator,CCS)が使用されている。前記セラミックコーティングセパレータは高温熱収縮率が低く、耐熱性に優れているため、EV用大型バッテリーシステムに適用されている。
【0003】
しかし、従来のセラミックコーティングセパレータは電極との接着性が不足しており、セル組立工程中にセパレータと電極が分離して電極組立体の反り、変形などが発生する場合が多い。つまり、前記のようにセパレータのセラミックコーティング層と電極間の接着性が不足している場合、セルスタッキング(cell stacking)時にゼリーロール(jelly roll)内で電極とセパレータ間のミスアライメント(misalignment)の問題が発生する。前記のようにミスアライメントが発生したスタックセル(stack cell)電池を駆動する場合、ミスアライメントによる局部的な抵抗の発生や、持続的な使用による物理的損傷で電極間の短絡(short)が発生し、火災などの安全性の問題がある。
【0004】
したがって、セラミックコーティングセパレータと電極の接着性向上は、電池の安定性のために必ず改善しなければならない問題である。
【0005】
前記セパレータと電極の接着性を向上させる一つの方法として、前記セラミックコーティングセパレータの無機粒子層上部に接着性有機物層を形成する方法があるが、前記有機物層によって通気性が悪くなり、薄膜化が難しく、依然として電極接着性が不良であり、また、セパレータ巻取り時に接着性有機物層が脱離するブロッキング現象が発生する。したがって、セパレータのイオン伝導度が低下したり、および/または電極組立体のアライメントの時に厚さの偏差が発生し、電池の性能を阻害するなどの解決すべき問題を依然として抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本登録特許公報第4414165号(公開日:2005.03.03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様は、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【0008】
一態様として、接着層の厚さが2μm以下であり、セパレータの全体の厚さが20μm以下、15μm以下であるセパレータを提供することができ、前記範囲でも優れた電極接着性、アンチブロッキング性および通気性を有するセパレータおよび前記セパレータを含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を達成するための一手段として、本開示は、多孔質基材、前記多孔質基材の少なくとも一面上に配置され、無機粒子が互いに接続され、無機粒子間に気孔を形成する無機粒子層、および前記無機粒子層の上に配置され、複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子が互いに接続され、気孔を形成する接着層、を含む、セパレータを提供する。
【0010】
一態様において、前記無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径(D50)の比が0.5~3であってもよい。
【0011】
一態様において、前記有機粒子のD50は0.1μm~2μmであってもよい。
【0012】
一態様において、前記有機粒子の粒度分布において、D10/D90値が0.3~0.9であってもよい。
【0013】
一態様において、前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は50~90℃であってもよい。
【0014】
一態様において、前記接着層の厚さは0μm超過2μm以下であってもよい。
【0015】
一態様において、前記有機粒子は、1次粒子が表面溶融により互いに凝集して複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)が形成された2次粒子であるか、または表面に複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する1次粒子であってもよい。
【0016】
一態様において、前記接着層は、前記接着層全体の重量基準で有機粒子を70重量%以上含めてもよい。
【0017】
一態様では、前記接着層は、前記有機粒子を0.2~2.0g/m2で含めてもよい。
【0018】
一態様で前記セパレータは、200μmの厚さのカーボンシート(TOYO Tanso Korea、PF-20HP)上に前記セパレータの接着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に基づき、INSTRON社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm~4.0gf/15mmであってもよい。
【0019】
一態様において、前記セパレータは、下記式で測定される通気度変化量ΔGが50秒/100cc以下であってもよい。
【0020】
ΔG=G1-G2
【0021】
前記式で、G1は多孔質基材の両面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガリー透過率であり、G2は多孔質基材自体のガリー透過率である。ガリー透過率はToyoseiki社のDensometerを利用してASTM D726規格に従って測定したもので、単位は秒/100ccである。
【0022】
一態様において、前記セパレータは、2枚のセパレータを前記接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した後、ASTM D903に従って180度剥離したとき、前記接着層同士が互いに接着して一部または全体が剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離してブロッキングが発生しないものであることができる。
【0023】
また、上述の課題を達成するための他の一手段として、本開示の一態様によれば、前述の実施例のセパレータを含む、電気化学素子を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本開示のセパレータは、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性または通気性を有することができる。
【0025】
一態様の前記セパレータは、200μmの厚さのカーボンシートの上にセパレータの接着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に基づきUTM装置を利用して180°で剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm以上、2.0gf/15mm以上、2.3gf/15mm以上、2.5gf/15mm以上または3.0gf/15mm以上であってもよい。一例として、1.5gf/15mm~4.0gf/15mmであってもよい。前記態様実施例によれば、高いガラス転移温度を有する重合体の1次粒子の表面が溶融して凝集した形態の2次粒子形状である有機粒子を比較的少量含む場合でも、十分な電極接着性を確保することができる。
【0026】
一態様のセパレータは、薄い厚さでも優れた電極接着性を確保できるとともに、アンチブロッキング性に優れることができる。例えば、多孔質基材-無機粒子層-接着層が積層されたセパレータ2つを接着層が互いに対面するように積層して配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着する。その後、接着された部分を剥離して接着層が一部または全体が剥離してセパレータ表面間のブロッキングを引き起こしたかどうかをSEMを通じて確認する場合、前記接着層が互いのセパレータから一部が剥離する現象であるブロッキングが発生しない優れたブロッキング防止性能を持つことができる。
【0027】
一態様として前記セパレータは、接着層を無機粒子層上に配置するなど、多層構造を持っても優れた通気性を持つことができ、下記式で表現される通気度変化量(ΔG)が50秒/100cc以下、40秒/100cc以下、35秒/100cc以下または30秒/100cc以下であってもよい。
【0028】
ΔG=G1-G2
【0029】
前記式で、G1は多孔質基材の両面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガリー透過率であり、G2は多孔質基材自体のガリー透過率である。ガリー透過率はToyoseiki社のDensometerを用い、ASTMD726規格に従って測定したもので、単位は秒/100ccである。また、前記多孔質基材の一面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータの場合にも前記通気度変化量を満足することができる。
【0030】
前記一態様のセパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性および通気性のうち二つ以上が優れていることができ、より好ましくは、電極接着性、アンチブロッキング性および通気性の全てが優れていることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一態様による有機粒子の形態をSEMにより観察した写真である。
【
図2】本発明の一態様による有機粒子の形態を示す図である。
【
図3】実施例1セパレータの接着層をSEMで観察した写真である。
【
図4】比較例1のセパレータの接着層をSEMで観察した写真である。
【
図5】比較例2のセパレータの接着層をSEMで観察した写真である。
【
図6】比較例3のセパレータの接着層をSEMで観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、態様または実施例を通じて本開示をさらに詳細に説明する。ただし、以下の本発明の態様は、本開示を説明するための一つの参考であって、本開示がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0033】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0034】
また、ある部分があるコンポーネントを「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他のコンポーネントを除外するのではなく、他のコンポーネントをさらに含めることができることを意味する。
【0035】
本開示において、有機粒子(100)は、高分子粒子であることができ、
図1および
図2に示すように、複数の突出部(protrusion part)(10)と複数の谷部(valley part)(20)が形成されたものであることができる。一例として、前記有機粒子は、重合された複数の1次粒子が表面溶融によって互いに凝集した凝集体、すなわち、2次粒子であることができる。前記複数の突出部(10)および複数の谷部(20)は、前記1次粒子の凝集によって形成されたものであってもよい。前記2次粒子形態のバインダー粒子は、1次粒子の一部に相当する複数の突出部を有し、また、その突出した突出部と突出部の間に谷(valley)や陥没部(shrinked cavity)が形成されている粒子形態を意味することができる。例えば、有機粒子の表面上に3個以上、4個以上、5個以上、5個以上、6個以上、8個以上の1次粒子形態の凸状の複数の突出部(bump part or protrusion part )および前記突出部の間に形成される複数の谷部(valley part)や陥没部を含む形態を意味する。
【0036】
または、表面に複数の突出部と複数の谷部を持つ1次粒子である可能性がある。
【0037】
前記有機粒子の突出部および谷部は、サイズおよび形状が不規則なものであってもよい。前記「不規則的」という用語は、実質的に直線的でない、実質的に均一でない、または実質的に対称的でないことを意味する。前記「突出部」という用語は、粒子の表面に突出する部分を意味し、
図1および
図2に10で示されている。前記「谷部または陥没部」とは、粒子の表面の凹部(concavity)を意味し、前記有機粒子の中心から放射状に形成された前記複数の突出部間の高さ差によって形成されるか、または突出部と突出部の間に形成された凹部を意味し、
図1および
図2に20で示されている。
【0038】
本開示において「Dn」(nは実数)とは、体積基準の積算分率でn%に相当する粒子の直径を意味する。例えば、「D50」とは、体積基準の積算分率で50%に相当する粒子の直径を意味する。「D90」とは、体積基準の積算分率で90%に相当する粒子の直径を意味する。「D10」とは、体積基準の積算分率で10%に相当する粒子の直径を意味する。前記Dnは、測定対象である粒子に対してISO 13320-1規格に従って試料を採取し、粒度分析機であるMicrotrac社のS3500を利用して分析された粒度分布結果から導き出すことができる。
【0039】
本開示のセパレータは、一態様として、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一面上に配置され、無機粒子が互いに接続され、無機粒子間に気孔を形成する無機粒子層と、前記無機粒子層の上に配置され、複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子が互いに接続され、気孔を形成する接着層と、を含むセパレータであることができる。
【0040】
以下、セパレータの各構成について詳しく説明する。
【0041】
一態様において、前記多孔質基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の多孔質基材であってもよいが、特に限定されず、電気化学素子のセパレータの多孔質基材として知られている全ての多孔質基材を使用してもよい。一態様において、多孔質基材はフィルムまたはシートで製造することができるが、特に限定されない。一例として多孔質基材はポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含み、2層以上の多層膜が使用できる。
【0042】
一態様において、前記多孔質基材の厚さは、例えば1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、または6μm以上であってもよい。上限は限定されるものではないが、例えば100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、12μm以下、または前記数値の間の値であってもよく、非限定的に1~100μm、高容量電池の実現のために3~50μm、5~20μm、または5~15μmであってもよい。
【0043】
一態様において、前記無機粒子層は、無機粒子および前記無機粒子を互いに連結する有機バインダーを含むことができ、前記無機粒子が前記有機バインダーによって連結および固定されて無機粒子間に気孔を形成した多孔質無機粒子層であってもよい。一態様において、前記無機粒子層は、多孔質基材の一面または両面上に配置され、多孔質基材の全表面を基準として面積分率60%以上、70%以上、80%以上または90%以上、好ましくは、一部の欠陥がある場合を除き、100%塗布されたものであってもよい。
【0044】
一態様において、前記無機粒子層は、多孔質基材の一面または両面上に配置することができ、前記多孔質基材の両面に無機粒子層が配置される場合、一面と他の一面に配置された無機粒子層の厚さは、互いに同じか、または異なってもよい。
【0045】
一態様において、多孔質基材の一面上に配置される無機粒子層の厚さは、0μm超過、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、または0.5μm以上であることができ、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、または前記数値の間の値であってもよい。具体的には、0μm超過5μm以下、0.1~5μm、0.2~3μm、0.5~2μmの厚さを有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
一態様として、前記無機粒子は、セパレータの耐熱性向上のために添加するものであり、特にその種類を限定するものではない。非限定的な例によると、無機粒子は金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物のうち1つまたは2つ以上を含めてもよい。具体例としては、SiO2、SiC、MgO、Y2O3、Al2O3、CeO2、CaO、ZnO、SrTiO3、ZrO2、TiO2およびAlO(OH)などからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含めてもよいが、これに限定されるものではない。電池の安定性向上のために、前記無機粒子は、ベーマイト(boehmite)、類似ベーマイト(pseudo-boehmite)、アルミニウムハイドロキシド(aluminum hydroxide)およびマグネシウムハイドロキシド(magnesium hydroxide)などの金属水酸化物粒子がより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0047】
一態様として、前記無機粒子としてベーマイトを使用する場合、ベーマイトの比表面積(BET)は10m2/g以上または15m2/g以上であってもよいが、これに特に限定されるものではない。
【0048】
一態様において、無機粒子のD50は、0μm超過、0.05μm以上、0.1μm以上、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または前記数値の間の値であってもよい。例えば、0μm超過5μm以下または0μm超過3μm以下、0.05μm以上2μm以下、0.1μm以上1μm以下または0.1μm以上0.5μm以下であってもよい。
【0049】
一態様において、無機粒子層の有機バインダーは、無機粒子を連結、固定して無機粒子同士が連結されて無機粒子間の空間が形成された多孔質無機粒子層を形成できるものであれば、その種類は限定しない。一例として、前記有機バインダーは粒子形態であるか、または非粒子形態であってもよく、粒子形態である場合は、前記複数の突出部(protrusion part)と複数の谷部(valley part)を有する有機粒子と区別される形態の粒子であることができる。また、前記有機バインダーは、水系ラテックスであってもよい。
【0050】
前記有機バインダーの例としては、非限定的な例として、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)等のアクリル系重合体、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane),(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン)((3-aminopropyl)trimethoxysilane),(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)((3-glycidyloxypropyl)trimethoxysilane)およびこれらのオリゴマーまたはこれらから製造されるシラン系化合物、スチレンブタジエンゴム(styrene butadiene rubber)、カルボキシルメチルセルロース(carboxylmethylcellulose、CMC)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone、PVP)、およびポリビニルアセテート(polyvinylaccetate、PVAc)、などからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含めてもよいが、これらに限定されない。
【0051】
前記有機バインダーの含有量は、無機粒子100重量部に対して、0.1~30重量部、0.2~10重量部、または0.2~5重量部を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記無機粒子層は、当該技術分野で公知の無機粒子層を多孔質基材の上に配置する通常の製造方法で製造すれば十分であり、特に限定されない。非限定的な例として、前記無機粒子、有機バインダーを含む水または有機溶液のスラリーを製造した後、スロットダイコーティング(slot die coating)、ロールコーティング(roll coating)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、バーコーティング(bar coating)、ダイコーティング(die coating)、スリットコーティング(slit coating)およびインクジェットプリンティング(inkjet printing)のいずれかまたはこれらを組み合わせた方法で多孔質基材の一面または両面に塗布して、前記多孔質基材上に無機粒子層を形成することができる。
【0053】
次に、本態様の接着層および前記接着層を形成する有機粒子について詳細に説明する。
【0054】
本開示における接着層は、
図1および
図2に示す態様の有機粒子を含む組成物を塗布して形成した多孔性層であり、前記特定の形態の有機粒子を含むことにより、薄膜でありながら、具体的には20μm以下の厚さでありながら、電極との接着性に優れ、多孔質基材自体の透過度に比べ、接着層形成後も透過度の増加が少なく、ブロッキングが発生せず、電池組立時に発生する問題を解消することができる。また、一般的な球形の有機粒子を使用するのに比べ、電極との接着性がより優れたセパレータを提供することができる。
【0055】
前記有機粒子は、1次粒子が表面の溶融によって凝集した形態の2次粒子であるか、またはふくらんで突出した複数の突出部と突出部と突出部の間に複数の陥没部や複数の谷(valley)を有する単一粒子であってもよい。
【0056】
前記有機粒子は特に限定しないが、例えば0.1~1.5μm、0.2~1.5μm、または0.3~1μmのD50粒径を有する「2次粒子形態の有機粒子」であってもよい。前記2次粒子形態のバインダー粒子の典型的な形態は、
図1に示すように、重合した複数の1次粒子が互いに溶融、例えば表面などが溶融して凝集し、凝集体の表面が1次粒子によって突出し、また1次粒子の間に谷が形成されている粒子形態を意味することができる。別の例としては、凝集していなくても、一つの粒子で3つ以上の凸状の突出部と突出部の間に複数の谷(valley)や複数の陥没部(shrinked cavity part)が形成された粒子を意味することができる。例えば、有機粒子の表面上に3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上の凸状の突出部(protrusion part)および前記突出部の間に複数の谷(valley)または複数の陥没部(shrunked cavity part)が形成された粒子を意味することができる。
【0057】
前記サイズと形態を有する本発明の前記有機粒子は、
図5のような形態の球形を有する有機粒子に比べ、比較的少量含まれても十分な電極との接着性改善および通気性およびアンチブロッキング性を著しく改善することができる。
【0058】
また、前記有機粒子の平均粒径(D50)は、前記の形態を有するものであれば特に限定するものではないが、例えば10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上であることができ、好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.1~2μm、さらに好ましくは0.1~1.5μm、非常に好ましくは0.2~1.0μmであってもよい。
【0059】
前記平均粒径の範囲で無機粒子とバインディング効果をより良く達成すると同時に、電極との接着力が著しく改善される。特に0.1~1.5μmの大きさである場合、搬送または積層過程で接着層同士がブロッキングしたり、接着層と接する他の部位に接着剤が付着して無機粒子層の上部の接着層が脱離するブロッキング現象が著しく減少し、電極との接着力も飛躍的に増加し、また、薄膜化が可能になり、さらによい。
【0060】
一態様において、前記有機粒子の粒度分布は、D10/D90値が0.3以上、0.4以上、0.9以下、0.8以下または前記数値の間の値であってもよい。または0.3~0.9または0.4~0.8であってもよい。前記有機粒子の粒度分布範囲を満たす場合、電極接着力確保のための有機粒子の含有量をさらに減らすことができ、これにより通気性、アンチブロッキング性の確保にさらに有利であり、好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0061】
一態様において、前記有機粒子は、無機粒子の平均粒径(D50)に対する前記有機粒子の平均粒径の比が0.5以上、0.6以上、0.7以上、3以下、1.7以下、1.5以下、1.3以下、1.0以下または前記数値の間の値である場合、無機粒子層の表面凹凸または空隙内に流入する有機粒子の含有量をさらに減らすことができ、これにより通気性、アンチブロッキング性の確保にさらに好ましいが、これに限定されるものではない。好ましくは、有機粒子の平均直径/無機粒子の平均直径比が0.5~3、0.5~2.0、0.5~1.7、0.5~1.5、0.6~1.3または0.7~1.0であってもよい。
【0062】
一態様として、前記接着層は、薄い厚さでも優れた電極接着性、アンチブロッキング性および通気性を有するセパレータを提供するために、前記有機粒子は、前記接着層全体の重量基準で、有機粒子を70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上または100%含めてもよい。前記2次粒子形態の有機粒子が多く含まれるほど、本開示の目的を達成するのに有利であるため、含有量の上限については特に限定しない。
【0063】
一態様によると、前記セパレータは、無機粒子層の上部に形成される接着層を構成する有機粒子が、
図1のように、前記で定義した特定の形態を持つことで、前記有機粒子と同じ重合体であるが、その形態が
図5のように谷のない球形や円形のものに比べて、比較的顕著な電極接着性、通気性、アンチブロッキング性などの優れた物性を持つことができる。したがって、本発明の前記有機粒子の組成は特に限定されず、当該技術分野で電極接着性を改善するために通常使用される有機粒子の組成であれば全て適用可能である。
【0064】
非限定的な例として、前記有機粒子は、架橋されたり、架橋されていない粒子型アクリル系重合体またはフッ素系重合体で製造されたものであることができ、またはコア-シェル構造のものであってもよい。前記コア-シェル構造の粒子状アクリル系重合体は、例えばコアのゴムまたは架橋体粒子表面にアクリル系単量体と必要に応じて他の共単量体および架橋剤を含んで重合されたものであってもよいが、特に限定されるものではない。
【0065】
前記態様による前記特定の形態の有機粒子は、その構造的特徴により、少量でも電極接着力を著しく改善することができ、高いガラス転移温度を有する場合、アンチブロッキング性をさらに改善することができるので好ましい。この場合、前記有機粒子のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上、60℃以上、90℃以下、80℃以下、70℃以下または前記数値の間の値であることができ、例えば、50~90℃、55~75℃または60~70℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
一態様において、接着層は、前記有機粒子の他に、選択的に当該技術分野でセパレータの電極接着性有機物層に添加されることが知られている活性剤、界面活性剤などの他の成分をさらに含むことができ、特に限定されるものではない。
【0067】
一態様において、前記接着層は、前記有機粒子が互いに連結固定された多孔質粒子層であり、無機粒子層の全表面を基準にして面積割合60%以上、70%以上80%以上または100%であることができ、特異的に発生する欠陥を除いて100%積層されるものであってもよい。一態様で多孔質基材上に多孔性無機粒子層を形成した後、多孔性無機粒子層上に前記の形態およびサイズの多孔性接着層を積層してセパレータの通気性、イオン伝導度をより一層改善することができるが、特に限定されるものではない。
【0068】
一態様において、前記接着層の厚さは、0μm超過、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、0.9μm以下、0.7μm以下または前記数値の間の値であることができ、前記接着層の厚さは、0μm超過2μm以下、高容量電池の実現のために0.1~1μmであってもよい。
【0069】
一態様において、多孔質基材の一面または両面に無機粒子層および接着層をそれぞれ配置したセパレータの総厚さは、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下または前記数値の間の値であってもよい。前記セパレータの総厚は、5~50μm、高容量電池の実現のために5~25μmまたは7~20μmであってもよいが、特に限定されるものではない。
【0070】
一態様において前記接着層内の有機粒子の含有量は、0.2g/m2以上、0.5g/m2以上、1g/m2以上、2.0g/m2以下、1g/m2以下、0.5g/m2以下または前記数値の間の値であることができ、好ましくは0.2~1.0g/m2であってもよい。
【0071】
前記特定の形態の有機粒子を製造する方法は特に限定されないが、一態様では、アクリル系やフッ素系などの各種ラジカル重合性単量体を乳化重合、懸濁重合などの重合方法によって1次粒子の重合溶液を製造し、これを200℃~300℃の高温で数秒間噴霧乾燥し、サイズ別に分類することにより、2次粒子の凝集体の形で製造したり、懸濁重合などをした後、真空蒸留して非反応単量体を重合体粒子から除去することにより、突出部と谷部を形成することができるが、これに限定されない。
【0072】
前記接着層は、当該技術分野で公知の全ての方法を活用して無機粒子層上に配置することができ、その手段は特に限定されない。非限定的な例として、前記有機粒子に水を添加して攪拌して接着層用スラリーに製造した後、製造されたスラリーをスロットダイコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スリットコーティングおよびインクジェットプリンティングのいずれかまたはこれらを組み合わせた方法で無機粒子層の上に塗布して乾燥して前記無機粒子層の上に接着層を配置することができる。
【0073】
一態様において、前記セパレータは、200μmの厚さのカーボンシート上にセパレータの接着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に従ってUTM装置を利用して180°で剥離(peel)して測定した電極接着力が1.5gf/15mm以上、2.0gf/15mm以上、2.5gf/15mm以上または3gf/15mm以上であってもよい。または1.5gf/15mm~4.0gf/15mm、2.0~4.0gf/15mmであってもよい。
【0074】
前記態様によると、前記形態を有し、同時に高いガラス転移温度を有する有機粒子は少量で使用して薄く塗布したり、または塗布面積が十分でなくてもよく分布して無機粒子層に塗布される場合にも十分な電極接着性を確保すると同時にアンチブロッキング性を向上させることができるので、より好ましい。
【0075】
例えば、多孔質基材、無機粒子層および接着層が順次積層されたセパレータ2枚を接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した後、分離したときに接着層が一部または全体が剥離してセパレータ表面間のブロッキングを引き起こしたかどうかをSEMで確認した場合、ブロッキングの発生が確認されない優れたアンチブロッキング性を確保することができます。
【0076】
一態様のセパレータは、下記式で表される通気度変化量(ΔG)が50秒/100cc以下、45秒/100cc以下、40秒/100cc以下、35秒/100cc以下または30秒/100cc以下であってもよい。
【0077】
ΔG=G1-G2
【0078】
前記式で、G1は多孔質基材の両面に無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガリー透過率であり、G2は多孔質基材自体のガリー透過率である。ガリー透過率はToyoseiki社のDensometerを利用してASTM D726規格に従って測定したもので、単位は秒/100ccである。
【0079】
一態様による前記セパレータは、電極接着性、アンチブロッキング性および通気性のうち二つ以上が優れていることができ、より好ましくは、電極接着性、アンチブロッキング性および通気性の全てが優れていることができる。
【0080】
別の一態様は、前記セパレータを含む電気化学素子を提供することである。前記電気化学素子は、エネルギー貯蔵装置であることができ、特に限定されないが、非限定的な一例としては、リチウム二次電池を挙げることができる。前記リチウム二次電池は公知であり、その構成も公知であるため、本開示では具体的に説明しない。
【0081】
一態様によるリチウム二次電池は、正極と負極の間に前記セパレータを含むものであってもよい。このとき、前記正極および負極は、通常リチウム二次電池に使用されるものであれば、限定することなく全て使用してもよい。
【0082】
以下、実施例および比較例に基づいて本開示をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本開示をより詳細に説明するための一例であり、本開示が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0083】
以下、セパレータ物性測定方法は以下の通りである。
【0084】
1.電極の接着力
200μm厚のカーボンシート(TOYO Tanso Korea,PF-20HP)の上にセパレータの接着層が対面するように積層した後、熱プレス機で80℃、20MPaで30秒間圧着して接着した後、ASTM D903に基づき、INSTRON社のUTM装置を利用して180°で剥離(peel)して電極接着力を測定する。セパレータの接着層の接着力が低すぎて、UTM装置を利用して剥離することさえできない場合は「測定不可」と評価する。
【0085】
2.通気度変化量
通気度変化量ΔGは以下のように計算する。
【0086】
ΔG=G1-G2
【0087】
前記式で、G1は多孔質基材の両面に、無機粒子層、接着層が順次積層されたセパレータのガリー透過率であり、G2は多孔質基材自体のガリー透過率である。ガリー透過率は、Toyoseiki社のDensometerを用い、ASTM D726規格に従って測定するもので、100ccの空気がセパレータ1平方インチの面積を通過するのにかかる時間を秒単位で記録する。単位は秒/100ccである。
【0088】
3.アンチブロッキング(anti-blocking)性
多孔質基材-無機粒子層-接着層が積層された2枚のセパレータを、前記接着層が互いに対面するように配置した後、60℃の温度、7.5MPaの圧力で1時間圧着した。次に、ASTM D903に従って180°で剥離したとき、前記接着層同士が接着して一部または全体が剥離する現象が発生するかどうかを評価した。一部でも剥離する場合はブロッキングが発生したものとし、剥離する現象が発生せず、接着層がそのまま分離する場合はブロッキングが発生しないものとした。ブロッキング発生の有無はSEMで確認する。SEMを通じてブロッキングの発生が確認されれば「NG」と評価し、ブロッキングの発生が確認されない場合は「OK」と評価する。
【0089】
4.平均粒径の測定方法
ISO 13320-1規格に基づき、粒度分析器であるMicrotrac社のS3500を利用して平均粒径(D50)、D10およびD90を測定した。
【0090】
5.ガラス転移温度
ガラス転移温度はTA社のDSC装備(モデル名:Q200)を用いて-50℃から300℃まで窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分で昇温して測定した。このとき、2回(1回目、2回目の実行、冷却)にかけて昇温して測定した。
【0091】
[実施例1]
1)接着層用スラリーの製造
図1のような形の有機粒子で平均粒径(D50)が550nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックス(メチルメタクリレートとブチルメタクリレートを重合したアクリル系ラテックス)を水に固形分含量が5重量%になるように添加し、攪拌して均一に混合された接着層用スラリーを製造した。この時、有機粒子のD10/D90は0.57であった。
【0092】
2)無機粒子層用スラリーの製造
無機粒子としてD50が600nmのベーマイト粒子(Nabaltec社、Apyral AOH60)100重量部に対して、水溶性アクリル系バインダー(Ashland社、PVP K120)3重量部および水を混合して無機粒子の含有量が40重量%のスラリーを製造した。
【0093】
3)セパレータ製造
ギャリ透過度が125秒/100cc、厚さ8.5μmのポリオレフィン系多孔質基材(SKinnovation社、ENPASS)の両面にスロットコーティングダイ2台を使用して前記無機粒子層用スラリーを塗布し、40℃で十分に乾燥して無機粒子層を形成した。続いて、前記無機粒子層の上面に前記接着層用スラリーを塗布し、40℃で十分に乾燥して接着層を形成した。前記セパレータの無機粒子層の厚さは1.5μmであり、接着層の厚さは0.5μmであり、セパレータの総厚さは12.5μmであった。コーティングされた接着層内の有機粒子の含有量は0.4g/m
2であった。
図3に接着層の表面写真を掲載し、その物性を表1に記載した。
【0094】
[実施例2]
実施例1で接着層用スラリーの製造時にD50が400nmであることを除いて、同様に実施し、セパレータを製造した。その結果を表1に記載した。
【0095】
[実施例3]
実施例1の有機粒子の組成でD50が1.8μm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載の含有量でコーティングした以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0096】
[実施例4]
接着層用スラリーを製造する際に、実施例1の有機粒子と同じ組成でD50が1.0μm、ガラス転移温度(Tg)が62℃のアクリル系ラテックスを表1に記載の含有量でコーティングした以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。その結果を表1に示した。
【0097】
[比較例1]
実施例1のアクリル系ラテックスを有機溶液に溶かして無機粒子層に塗布した以外は同様に実施した。その結果を
図4および表1に記載した。
【0098】
[比較例2]
実施例1の有機粒子の代わりに、完全球形の有機粒子として実施例1と同じ単量体を用いて懸濁重合して製造した
図5の球形のD50が540nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含有量でコーティングした以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。その結果を
図5および表1に示した。
【0099】
[比較例3]
実施例1の有機粒子の代わりに、完全球状の有機粒子としてD50が200nm、ガラス転移温度(Tg)が65℃のアクリル系ラテックスを表1に記載された含有量でコーティングした以外は、実施例1と同じ条件でセパレータを製造した。その結果を
図6および表1に示した。
【0100】
本発明の前記実施例および比較例で製造されたセパレータの物性評価結果を下記表1にまとめて示した。
【0101】
【0102】
前記表1の結果および図面を参照してみると、
図3のように、表面上に凸状の突出部および前記突出部の間に介在された谷部(valley part)を含む2次借款形態を有する有機粒子で接着層が形成されたもので、有機粒子と無機粒子の平均粒径比が0.5~1.5の間であり、有機粒子の平均粒径の大きさが1.5μm以下である実施例1および2の場合、最も優れた電極接着性、アンチブロッキング性およびそれを含む接着層が無機粒子層上によく形成されたことを確認することができた。
【0103】
また、有機粒子の平均サイズが1μmであり、有機粒子/無機粒子の比が1.67である実施例4の場合、実施例1および2に比べ劣るが、比較例に比べれば著しく優れた電極接着性およびアンチブロッキング特性を有することが分かり、平均サイズが1.8μmであり、有機粒子/無機粒子の比が3である実施例3の場合、実施例1、2および4に比べアンチブロッキング性で劣るが、比較例に比べれば優れた接着性を示していることが分かる。
【0104】
一方、比較例1は可溶性アクリル系重合体を使用したもので、
図4のように表面の空隙を塞いで通気性が劣り、電極接着力も非常に低かった。また、球形の接着層を有する比較例2および3の場合、
図5および
図6のように接着層が球形であり、この場合、電極接着力が劣り、アンチブロッキング性が非常に不良であった。
【0105】
以上のように本開示では特定の事項と限定された実施例によって説明したが、これは本開示のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本開示は前記の実施例に限定されるものではなく、本開示が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0106】
したがって、本開示は、前記説明した実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等または等価な変形がある全てのものが本開示の範疇に属するといえる。
【符号の説明】
【0107】
100:有機粒子
10:突出部
20:谷部