(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134555
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】介護用飲料容器のための専用スタンド
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240926BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B65D25/20 R
A61G12/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089594
(22)【出願日】2024-06-01
(62)【分割の表示】P 2023044800の分割
【原出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】521374822
【氏名又は名称】有限会社ハンド
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕子
【テーマコード(参考)】
3E062
4C341
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062AC08
3E062BA02
3E062BB02
3E062BB10
3E062CA05
4C341JJ03
4C341LL01
4C341LL30
4C341MN16
(57)【要約】
【課題】 被介護者等が自身で飲料容器を持つことなく、飲料用器内の飲料を摂取できる飲料容器用スタンドを提供する。
【解決手段】 飲料容器の飲み口から吸引力によって飲用できる構成の飲料容器PDを保持するための飲料容器用スタンド100であって、基部10と、基部から所定の高さに設けられた飲料容器収容部20を備える。飲料容器収容部は、水平面に対して所定の角度で傾斜する飲料容器当接面を有し、飲料容器を飲料容器当接面に当接するとき、水平面に対して所定の勾配に維持する傾斜面形成部21を備える。傾斜面形成部による下り勾配の先方は、飲料容器の飲み口DMが飲料容器収容部から外方に突出可能に開放されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な細孔を介して飲料を飲み口から流出させる構成とした飲料用嚥下補助具の本体がペットボトル飲料として市販される飲料におけるペットボトルの開口部に装着されることにより、反転した場合においても該ペットボトル内の飲料が漏れ出ない状態となった該ペットボトルを保持し、寝たきり状態の被介護者または要介護者が横臥位姿勢において前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口から吸引力によって飲用可能とするために、寝具の上面に載置して使用する飲料容器用スタンドであって、
2枚の平行な支持壁部と、前記2枚の支持壁部の相互間に懸架された飲料容器収容基部とで構成される飲料容器収容部を備え、
前記飲料容器収容基部は、その上面において前記支持壁部の幅方向に向かって15°~30°の角度で傾斜する飲料容器当接面を有する傾斜面形成部と、前記飲料容器収容基部に立設され、前記飲料容器当接面の傾斜の低位側において前記ペットボトルに装着した前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口の近傍を支持する飲み口支持部とを備え、基部によって所定の高さに維持されるものであり、
前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口の近傍を前記飲み口支持部に支持させつつ前記ペットボトルを前記飲料容器当接面の傾斜に沿って設置することにより、前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口を前記飲料容器当接面の低位側から先方に露出可能としてなることを特徴とする介護用飲料容器のための専用スタンド。
【請求項2】
前記基部は、前記被介護者または前記要介護者が使用する敷き布団またはベッドマットの下側に挿入可能に構成された固定部材に対して、連結部を介して一体的に連結されている請求項1に記載の介護用飲料容器のための専用スタンド。
【請求項3】
前記基部は、前記適宜面積を有する板状に形成され、
前記2枚の平行な支持壁部は、前記基部の上面に立設されたものであり、
前記基部、前記2枚の平行な支持壁部および前記飲料容器収容基部によって空間が形成され、
前記空間は、錘収容部として形成されたものであり、該錘収容部に適宜な重量の錘を設置することができる請求項2に記載の介護用飲料容器のための専用スタンド。
【請求項4】
前記空間は、廃液用タンクを設置するために形成されたものであり、該空間には箱状の廃液タンクが設置されるものであり、前記廃液用タンクは、矩形の箱状に構成され、前記基部の上面および平行に立設された2枚の支持壁部との間で摺動可能に設けられ、引き出しおよび収納を可能としているものである請求項3に記載の介護用飲料容器のための専用スタンド。
【請求項5】
適宜な細孔を介して飲料を飲み口から流出させる構成とした飲料用嚥下補助具の本体が飲料容器の開口部に装着されることにより、反転した場合においても飲料が漏れ出ない状態となった該飲料容器を保持し、寝たきり状態の被介護者または要介護者が横臥位姿勢において前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口から吸引力によって飲用可能とするために、寝具の上面に載置して使用する飲料容器用スタンドであって、
前記被介護者または前記要介護者が使用するベッド側部に使用される手摺用のパイプその他の支柱によって構成される基部と、この基部の上方に設けられる飲料容器収容部とを備え、
前記飲料容器収容部は、前記基部の上端に設けられた飲料容器収容基部と、この飲料容器収容基部の両側に立設された2枚の支持壁部と、前記飲料容器収容基部の上面において前記支持壁部の幅方向に向かって15°~30°の角度で傾斜する飲料容器当接面を有する傾斜面形成部とを備え、
前記飲料容器当接面の傾斜の低位側から先方には、前記飲料容器に装着した前記飲料用嚥下補助具の前記飲み口が前記飲料容器収容部から露出可能に構成することを特徴とする介護用飲料容器のための専用スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器用スタンドに関し、特に、飲料用嚥下補助具を装着したペットボトル飲料を保持するものに関する。
【背景技術】
【0002】
疾病や事故等による入院時や高齢による要介護状態または要介助状態となった場合には、臥位姿勢とならざるを得ないが、このような状況下においても飲食を行う必要がある。こときに注意すべきは誤嚥であり、誤嚥を原因とする肺炎(誤嚥性肺炎)などの発症を防止することが重要である。誤嚥とは、食物や飲料が食道ではなく気道に入ることであり、通常はむせることで排出されることになるが、嚥下機能が低下すると排出し難くなるため、気管へ飲食物が入り、これが原因で肺に炎症が起こり、肺炎を誘引させることがある。
【0003】
今年では、要介護等の状態にある高齢者を在宅で介護することが多くなっており、常時臥位姿勢の要介護者等の飲食を家族などが介護者として介護している。しかし、飲食物の摂取に際し、要介護者等が誤嚥することは稀ではなく、そのため流動食を提供するなど各種の工夫が余儀なくされている。このとき、食物に関しては臥位姿勢の状態で摂取することは稀であるため、食材の調理方法を工夫することで対応可能であるが、飲料に関しては、その都度起き上がることをせず、横臥位(側臥位)の状態においてストローなどで吸引するか、仰臥位(背臥位)の状態で摂取する際には、昔ながらのいわゆる「吸い飲み」が使用されてきた。
【0004】
ところが、高齢者の要介護者等の場合には、嚥下機能の低下(各種の筋力の低下)により、臥位姿勢での飲料の嚥下は非常に難しく、誤嚥を防止できる飲料供給用の保護具が切望されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3191758号公報
【特許文献2】特表2020-507428号公報
【特許文献3】実用新案登録第3188291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、従来は、チューブの内部に流速抑制用の材料を挿入し、容器から流下する液体の速度を抑制し、口腔の動きの遅延による誤嚥を防止させるものが提案されていた(特許文献1参照)。この技術は、チューブと速度制御用部材とを分離可能とするものであり、洗浄を簡便に行え得るものとして有用であるが、専用容器に専用チューブが必要となり、市販される飲料を摂取しようとするときは、購入した飲料の内容物を当該専用容器に入れ替える手間が必要であった。
【0007】
また、とろみを付けた飲料の提供には、「吸い飲み」の出口に容量の大きい摂食取付具を装着可能とするものがあった(特許文献2参照)。ところが、この技術により摂取できる飲料はとろみのついたものに限定され、仮に流動性のある(粘度の低い)飲料を提供しようとする場合には、摂食取付具をスプーンのように使用することとなり、結果として仰臥位での飲料の摂取は困難なものであった。
【0008】
そこで、市販の飲料を飲料容器から直接摂取できるものが切望されているところ、そのような補助具は開発されていない。なお、飲料容器に取り付け可能な補助具には、飲料が脈動しないように通孔を設けたものが考案されている(特許文献3参照)が、これは要介護者等に使用できるものではなかった。
【0009】
そこで、本願の発明者は、臥位姿勢の飲料摂取者において誤嚥を防止しつつ飲料の嚥下動作を容易に行い得る飲料用嚥下補助具を開発した(特願2022-173863)。この飲料用嚥下補助具は、飲料容器の開口部に装着可能な本体を有し、適宜な細孔を介して飲料を流出させる構成としたものであって、飲料容器を反転させても内容物が漏れ出ることがなく、飲料摂取者において任意に吸引する場合にのみ、飲料容器の可撓性の範囲で流出させることができるものであった。
【0010】
上記構成の飲料用嚥下補助具は、飲料摂取者が横臥姿勢の状態で飲料を摂取できることから、寝たきり状態の被介護者または要介護者において、介護者(介護従事者)による介護を要することなく飲料を摂取できることにおいて優れたものであった。ところが、被介護者等の腕力や握力の低下等により、自身で飲料容器を保持できない場合には、介護者等の介護が必要となっていた。そこで、被介護者等が飲料を摂取できる状態に予め容器を設置できるスタンドの開発が切望されていた。
【0011】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、被介護者等が自身で飲料容器を持つことなく、飲料用器内の飲料を摂取できる飲料容器用スタンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、第1の発明は、飲料容器の飲み口から吸引力によって飲用できる構成の飲料容器を保持するための飲料容器用スタンドであって、基部と、この基部から所定の高さに設けられた飲料容器収容部を備え、前記飲料容器収容部は、水平面に対して所定の角度で傾斜する飲料容器当接面を有し、前記飲料容器を該飲料容器当接面に当接するとき、水平面に対して所定の勾配に維持する傾斜面形成部を備え、前記傾斜面形成部による下り勾配の先方は、前記飲料容器の飲み口が前記飲料容器収容部から外方に突出可能に開放されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、飲料容器は、基部から所定の高さに設置される飲料容器収容部に収容され、傾斜面形成部の飲料容器当接面に当接されることにより、所定の勾配をもって設置されるとともに、飲み口を外方に突出させることができることから、飲用容器の飲み口側を下にして設置すれば、被介護者等は飲料容器を手で操作することなく、吸引することによる飲料の摂取が可能となる。このとき、飲料容器収容部の基部からの高さを概ね140mm~150mmとすることにより、被介護者等が側臥位姿勢となるとき、または仰臥位姿勢から側臥位姿勢への途中姿勢となるとき、口元を飲み口に到達させることができる程度となる。また、飲料容器当接面を水平面に対して15°~30°の傾斜角とすることにより、飲料用器内の飲料の半分程度までは常時飲み口から流出させることが可能となる。
【0014】
上記構成の発明において、前記基部と前記飲料容器収容部との間には、錘収容部が形成され、該錘収容部に適宜な重量の錘を設置することができるように構成することができる。
【0015】
上記構成によれば、軽量な材料で構成した飲料容器用スタンドであっても、錘の設置により傾倒や移動を防止でき、被介護者の摂取し易い位置に設置しておけば、いつでも同じ姿勢により飲料を摂取することが可能となる。
【0016】
上記構成の発明において、前記基部と前記飲料容器収容部との間には、適宜な空間が設けられ、該空間には廃液用タンクを設置可能としてなる構成とすることができる。
【0017】
上記構成によれば、適宜高さに設置される飲料容器収容部から飲料を摂取する際に失敗したときのこぼれた飲料を廃液用タンクで受け止めることができる。この廃液タンクは、箱状として上面全体を開口させることにより、こぼれた飲料を幅広く受け止めることができる。また、基部と飲料容器収容部との間の空間部分に設置するため、適宜引き出してセットすることも可能となる。被介護者等は、概ね側臥位姿勢によって飲料を摂取するため、口元から下方に廃液用タンクをセットした場合でも飲料摂取に支障を来すものではない。また、廃液用タンクは、上述の錘収容部の代わりに設置するため、予めタンク内に適量の水等を貯留させることにより、錘として機能させることもできる。
【0018】
第2の本発明は、飲料容器の飲み口から吸引力によって飲用できる構成の飲料容器を保持するための飲料容器用スタンドであって、適宜面積を有する板状の基部と、前記基部の上面に平行に立設され、適宜高さおよび適宜幅を有する同一形状の2枚の支持壁部と、前記支持壁部の上方において2枚の支持壁部の相互間に懸架され、前記基部と平行な平面を有し、前記2枚の支持壁部とともに飲料容器収容部を構成する飲料容器収容基部と、前記飲料容器収容基部の上面において前記支持壁部の幅方向に向かって傾斜する飲料容器当接面を有する傾斜面形成部とを備え、前記飲料容器当接面の傾斜の低位側から先方には、前記飲料容器の飲み口が前記飲料容器収容部から露出可能に構成することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、第1の発明と同様に、飲料容器は、飲料容器収容基部と2枚の支持壁部とで構成される飲料容器収容部に収容可能となり、また、飲料容器当接面に当接されることにより、所定の傾斜角をもって設置されることとなるから、飲用容器の飲み口側を下にして設置すれば、被介護者等は飲料容器を手で操作することなく、吸引することによる飲料の摂取が可能となる。この構成においても、飲料容器収容部の基部からの高さを概ね140mm~150mmとすることにより、被介護者等が側臥位姿勢となるとき、または仰臥位姿勢から側臥位姿勢への途中姿勢となるとき、口元を飲み口に到達させることができる程度となる。また、飲料容器当接面は、飲料容器収容基部に対して15°~30°の傾斜角とし、基部が水平な状態で設置されることにより、飲料用器内の飲料の半分程度までは常時飲み口から流出させることが可能となる。
【0020】
上記構成の発明において、前記飲料容器当接面の傾斜の低位側には、前記飲料容器収容基部から立設され、前記飲料容器の飲み口近傍を支持する飲み口支持部が設けられる構成とすることができる。
【0021】
上記構成によれば、飲料容器を傾斜して設置する際、飲料容器の飲み口近傍が飲み口支持部に支持されるため、当該傾斜に沿って滑落することを防止できる。また、この飲み口支持部から先端側には、飲用容器の飲み口がスタンドから外方に突出させた状態となるため、被介護者等は、スタンドに接触することなく飲み口に咥えて飲料摂取を行うことができる。
【0022】
なお、上記構成の発明においても、前記基部と前記飲料容器収容基部との間に形成される空間は、錘収容部として形成されたものであり、該錘収容部に適宜な重量の錘を設置することができるものとすることができ、また、前記基部と前記飲料容器収容部との間に形成される空間は、廃液用タンクを設置するために形成されたものであり、該空間には箱状の廃液タンクが設置されるものとすることができる。これらの錘収容部、廃液用タンクは、第1の発明と同様に機能し得るものである。
【0023】
上記構成の廃液用タンクを備える発明にあっては、前記廃液用タンクは、矩形の箱状に構成され、前記基部の上面および平行に立設された2枚の支持壁部との間で摺動可能に設けられるものとすることができる。
【0024】
上記構成によれば、廃液用タンクは、平行な2枚の支持壁部の間に配置され、基部上にもうけられることから、適度な大きさの矩形箱状に形成することにより、これらの平面に摺接され得るものとなる。そして、摺動可能に設けることにより、当該支持壁部の幅方向に向かって廃液用タンクを引き出すことができる。この引き出し可能な構成により、被介護者等の飲料摂取の姿勢に応じて、引き出し長さを調整することも可能となる。
【0025】
上記第2の発明における前記傾斜面形成部は、前記飲料容器収容基部の上面において前記支持壁部の幅方向に移動可能に設けられるものであってもよい。
【0026】
上記構成の場合には、傾斜面形成部が有する飲料容器当接面の角度を変更することなく、移動させることにより、横向きにした飲料容器の下側の側部との当接位置を変化させることができ、その位置に応じて横向きの飲料容器の傾斜角度を調整することができる。
【0027】
上記各構成の発明において、前記飲料容器はペットボトルであり、前記飲み口は、前記ペットボトルの開口部に設置され、該ペットボトルの可撓性の範囲でのみ流出可能な細孔を有する構造としたものであることが好ましい。
【0028】
上記のような構成により、ペットボトルを横向きにし、飲み口部分を斜め下方に位置させた状態においても、ペットボトル内の飲料は漏れ出ることがなく、被介護者等が任意に吸引するときのみ飲料摂取が可能となるから、ペットボトルを予めスタンドに設置しておけば、介護者(介護従事者)は、その後、少なくとも飲料摂取に関する限り介護から解放され得ることとなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、適宜な高さにおいて、飲料容器を横向きに設置できることから、被介護者等が自身で飲料容器を持つことなく、飲料用器内の飲料を摂取できる。また、飲料容器が被介護者等の任意の吸引によってのみ流出させる構造である場合、飲料が漏れ出ることはなく、設置状態を維持させることができる。なお、廃液用タンクを設ける構成の場合には、飲料摂取の失敗、または容器の不具合等で、飲料がこぼれることがあるときでも、当該廃液用タンクによって回収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】
図2中のIII-III線による断面を示す説明図である。
【
図7】第2の実施形態の第1の変形例を示す説明図である。
【
図8】第2の実施形態の第2の変形例を示す説明図である。
【
図9】第2の実施形態の第3の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態の構成>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図2に飲用容器スタンドに係る第1の実施形態を示す。この図に示されるように、本実施形態に飲料容器スタンド100は、基部10と飲料容器収容部20とを備える構成であり、飲料容器(ペットボトル飲料)PDなどの飲料を介護なしで摂取するためのものである。すなわち、要介護状態となり、床に伏せった被介護者等が、腕力や握力の低下等により、自身で飲料容器を保持できない場合には、介護者等による介助を要することなる僅かな寝返りによって摂取できるようにするものである。
【0032】
そこで、本実施形態の飲料容器スタンド100を構成する基部10は、被介護者等が床に伏せっているときの寝具の上面に載置できるように、平板板状で構成している。この基部10の形状は、任意であるが、矩形の基部10とする場合には、幅Wを120mm以上とし、奥行きDを170mm以上とすることが好ましい。
【0033】
また、飲料容器収容部20は、基部10に立設した2枚の平行な支持壁部31,32に懸架される飲料容器収容基部21によって形成される空間部分で構成している。2枚の支持壁部31,32の間隔Cを100mm程度することにより、市販される500mL程度のペットボトル飲料PDが転がることなく収容できる間隔を得ることができる。2枚の支持壁部31,32によって構成されているため、前面側および背面側は開放されており、収容すべき飲料容器(ペットボトル飲料)PDの大きさに応じて、前後端のいずれを突出させることができるものであり、少なくとも飲料容器(ペットボトル飲料)の飲み口DMの周辺の適宜な範囲を突出させることができるものである。
【0034】
この飲料容器収容部20には、断面略三角形状の所定勾配(傾斜面)を有する傾斜面形成部22が設けられており、この傾斜面形成部22は、飲料容器収容基部21の上面に設けられ、飲料容器(ペットボトル飲料)PDが当接できる飲料容器当接面を形成している。この傾斜面形成部22は、飲料容器収容基部21と一体に構成してもよいが、個別に構成して傾斜面形成部22を飲料容器収容基部21の上面に載置するものとしてよい。いずれにしても、飲料容器収容部20の内部において、飲料容器(ペットボトル飲料)PDを横向きに載置したとき、その一端(飲み口DM)を下方とするように傾斜させるようになっていればよいものである。
【0035】
ところで、飲料容器収容基部21を設置すべき高さHは、基部10の上面から飲料容器収容基部21の上面までの長さで140mm程度を標準としている。この高さHは、130mm~160mmの範囲であることが好ましく、140mm~150mmがより好ましい。これは、床に伏している被介護者が、寝具上において仰臥位姿勢から側臥位姿勢になり、口元を横向きとしたときに、ちょうど口元に飲料容器(ペットボトル飲料)PDの飲み口DMと同程度の高さとするためである。
【0036】
また、傾斜面形成部22による飲料容器当接面の傾斜角度は、水平面(基部10)に対して15°~30°としている。好ましくは15°~20°である。角度が急峻な場合には、飲料容器(ペットボトル飲料)PDが滑落するおそれがあること、角度が緩やかな場合には飲み残しが多くなるためである。なお、傾斜角度を15°とするためには、傾斜面形成部22の最大高さを20mm~25mmの範囲内とし、傾斜方向の長さを70mm~100mmとすればよい。
【0037】
さらに、この飲料容器スタンド100に使用する飲料容器(ペットボトル飲料)PDは、その飲み口DMに本願の発明者が開発した飲料用嚥下補助具(特願2022-173863)を装着したものである。この飲料用嚥下補助具(交換用キャップ)は、飲料容器の開口部に通常のキャップと交換して装着できる本体を有し、適宜な細孔を介して飲料を流出させる構成としたものであって、飲料容器を反転させても内容物が漏れ出ることがなく、飲料摂取者において任意に吸引する場合にのみ、飲料容器の可撓性の範囲で流出させることができるものである。そこで、本実施形態は、上記交換用キャップを装着したペットボトル飲料PDを前提としているが、同様の機能を有する飲料容器であれば他の構成のものを使用することができる。
【0038】
なお、上記構成では、基部10と飲料容器収容基部21との間には、2枚の支持壁部31,32によって包囲させた空間40が存在する。この空間40には、適度な重量を有する錘を置くことにより、飲料容器用スタンド100の全体姿勢を安定させることができるものである。
【0039】
<使用態様>
本実施形態は上記のような構成としたことから、
図2および
図3に示すように、飲料容器(ペットボトル飲料)PDを飲料容器収容部20に収容し、飲み口DMを傾斜面形成部22の飲料容器当接面の勾配に沿って下向きに載置し、当該飲み口DMを飲料容器用スタンド100から突出させるようにセットするのである。このように飲料容器(ペットボトル飲料)PDをセットすることにより、飲料容器PDの内部飲料は、傾斜に沿って飲み口DMに向かって流下し、飲み口DMが飲料の表面から上位とならない範囲で、飲み口DMを被介護者が吸引すれば、いつでも飲料を摂取することができる。
【0040】
そして、この飲料容器用スタンド100は、基部10を寝具(専ら敷き布団またはベッドマット)の上部に載置するものであるため、通常は仰臥位姿勢となっている被介護者が、自ら僅かに寝返ることによって側臥位姿勢となることにより、口元が飲み口DMの高さになり、介護者等の介助を要することなく飲料を摂取することが可能となるのである。
【0041】
<第2の実施形態>
図4に第2の実施形態を示す。本実施形態の飲料容器用スタンド200は、飲料容器当接面の傾斜の低位側に、飲料容器収容基部21から立設した飲み口支持部50を設けたものである。この飲み口支持部50は、板状部材で構成され、飲料容器(ペットボトル飲料)PDの飲み口DMの近傍を係入し得る切欠部51を有する構成である。そして、この切欠部51を飲料容器(ペットボトル飲料)PDの飲み口DMがある部分を係入させることで、その飲み口DMを位置決めすることができるのである。
【0042】
図5に示すように、飲み口DMが位置決めされた飲料容器(ペットボトル飲料)PDは、傾斜面形成部22の勾配によって斜め下方への摺動が制限され、飲料容器収容部20に収容させた飲料容器(ペットボトル飲料)PDの位置が安定することとなる。
【0043】
このような構成により、被介護者が、飲料容器(ペットボトル飲料)PDの飲み口DMな何度も接触し、飲料を摂取することがあっても、その位置が安定するため、繰り返し同じ位置にある飲み口DMを吸引することが可能となる。
【0044】
なお、上記構成(第1の実施形態も同様)には、基部10と飲料容器収容基部21との間の空間40に錘を設置することで、飲料容器用スタンド100,200を安定させることができるものであるが、
図4中に図示したように、錘に代えて、交換用の飲料容器(ペットボトル飲料)を載置させてもよい。
【0045】
<第3の実施形態>
図6に第3の実施形態を示す。本実施形態の飲料容器用スタンド300は、傾斜面形成部22を飲料容器収容基部21と独立して設け、適宜交換または移動可能とするものである。
図6は、二種類の傾斜面形成部22を有する補助部材60,70を同時に図したものである。このうちの一方60は、飲料容器当接面のみを有する傾斜面形成部22であり、他方70は、その下位側先端に飲み口支持部50を一体的に設けたものである。なお、傾斜面形成部22と飲み口支持部50とを一体化するために、中間部分には、接続部23を設ける構成としている。
【0046】
いずれの補助部材60,70を使用する場合においても、上述の飲料容器用スタンド100,200と同様の構成となるものである。すなわち、飲み口支持部50を有する補助部材70を使用する場合には、第2の実施形態200と同様の構成となり、これを有しない補助部材60を使用すれば第1の実施形態100と同じ構成となる。
【0047】
なお、これらの補助部材60,70は、いずれも独立して設けられているため、飲料容器収容部20の内部において、少なくとも奥行き方向へ移動可能となる。そこで、収容すべき飲料容器(ペットボトル飲料)PDの大きさや形状等に応じて、飲み口DMが適度に飲料容器用スタンド300から突出させるように、調整することが可能となるものである。
【0048】
このように、各種の実施形態100,200,300によれば、適度な高さに飲料容器(ペットボトル飲料)PDを載置することにより、飲み口DMを突出させた状態として保持し得るものであるから、被介護者の飲料摂取を容易にすることができるものである。なお、被介護者とは、高齢による身体機能の低下による寝たきり状態に近い者であるほか、手術の前後や後遺障害等により一時的に身体的機能が低下している者を含み、僅かに寝返ることができる者に対して使用し得るものである。
【0049】
<変形例>
上記の各実施形態100,200,300は本発明の例示であって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、上記実施形態の各要素を変更し、他の要素を追加するものであってもよい。
【0050】
そこで、
図7~
図9に、第2の実施形態200の変形例を示す。ただし、第1および第3の実施形態100,300も同様に変形し得るものである。まず、
図7に示す第1の変形例400は、基部として支柱410を使用するものである。この支柱410は、例えば、ベッドなどの側部に使用される手摺用のパイプを利用して飲料容器収容部20を支持させるものである。この種の構成の場合には、パイプに設けられる固定金具411,412によって高さ調整をしつつ、適宜高さに飲料容器収容部20をセットすることができるものとなる。被介護者は側臥位姿勢となって飲料を摂取するので、ベッドの側部に設置することができれば、その用に供することができる。なお、使用するベッド等の手摺用部材が棒状部材の場合は、支柱410をパイプ状とすればよく、断面形状は、その手摺の形状に応じて変更すればよい。
【0051】
また、
図8に示す第2の変形例500は、基部10と飲料容器収容基部21との間の空間40に廃液タンク80を設置したものである。廃液タンク80は、箱状に形成され上面が開口したものである。この廃液タンク80を飲料容器(ペットボトル飲料)の飲み口下方に設置することにより、飲み口からこぼれた飲料を収容することができるのである。この箱状の廃液タンク80は、2枚の支持壁部31,32の内側の幅と同程度の幅寸法とし、底面を平滑な状態にすることにより、基部10の上面を摺動させることができる。この場合には、必要なときに引き出しておき、使用しないときは収納させることができる。また、使用時には、予め適量の液体(例えば、普通の水道水など)を貯留させておけば、錘としての機能も同時に発揮させることができる。
【0052】
さらに、
図9に示す第3の変形例600は、基部10よりも適宜間隔を有する固定部材90を有する構成としたものである。この固定部材90は、敷き布団またはベッドマットの下側に挿入するためのものである。基部10と固定部材90とは、連結部91によって連結された一体形状とするものであるから、固定部材90を敷き布団またはベッドマットの下側に挿入することにより、基部10が安定し、飲料容器用スタンド600の全体を安定させることができる。この場合には、基部10と飲料容器収容基部21との間の空間40に錘等を設置する必要がなく、上述の廃液タンク80を使用する場合には、こぼれる飲料を受け止めるためにのみ使用するものとすることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 基部
20 飲料容器収容部
21 飲料容器収容基部
22 傾斜面形成部
23 接続部
31,32 支持壁部
40 空間
50 飲み口支持部
51 切欠部
60,70 補助部材
80 廃液タンク
90 固定部材
91 連結部91
410 支柱
411,412 固定金具
PD 飲料容器(ペットボトル飲料)
DM 飲料容器(ペットボトル飲料)の飲み口