(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134559
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】脱泡装置
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20240927BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240927BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240927BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D19/00 E
H01M4/139
H01M4/04 A
H01G13/00 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044806
(22)【出願日】2023-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 航大
(72)【発明者】
【氏名】吉川 桂介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 善彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 努
【テーマコード(参考)】
4D011
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4D011AA16
4D011AB02
4D011AD01
4D011AD02
5E082AB10
5E082MM23
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】処理能力の向上が図られる脱泡装置を提供する。
【解決手段】電極活物質と分散媒とを含む電極用スラリーSを脱泡させる脱泡装置1である。脱泡装置1は、スラリーSを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第1の回転皿11と、第1の回転皿11の径方向外側を囲むように第1の回転皿11の径方向外側に配置されて、第1の回転皿11から飛散されたスラリーSが衝突するとともに、スラリーSを下方に流下させるように固定された第1の固定壁部21と、第1の固定壁部21の鉛直方向下方に配置されるとともに、第1の固定壁部21から流下してきたスラリーSを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第2の回転皿12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質と分散媒とを含む電極用のスラリーを脱泡させる脱泡装置であって、
上記スラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第1の回転皿と、
上記第1の回転皿の径方向外側を囲むように上記第1の回転皿の径方向外側に配置されて、上記第1の回転皿から飛散された上記スラリーが衝突するとともに、該スラリーを下方に流下させるように固定された固定壁部と、
上記固定壁部の鉛直方向下方に配置されるとともに、上記固定壁部から流下してきた上記スラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第2の回転皿と、
を備える、脱泡装置。
【請求項2】
上記固定壁部は、水平断面において上記固定壁部で囲まれた領域の面積は、水平断面の鉛直方向位置が下方であるほど小さい、請求項1に記載の脱泡装置。
【請求項3】
上記第1の回転皿から飛散された上記スラリーが衝突する上記固定壁部は、鉛直方向下方に向かうほど上記第1の回転皿の回転中心軸に近づくように傾斜している、請求項1又は2に記載の脱泡装置。
【請求項4】
上記第1の回転皿の側壁部は鉛直方向上方に向かうほど上記回転中心軸から離れるように傾斜しており、
上記固定壁部は、上記第1の回転皿の側壁部よりも緩やかに傾斜している、請求項3に記載の脱泡装置。
【請求項5】
上記第1の回転皿の側壁部は鉛直方向上方に向かうほど上記回転中心軸から離れるように傾斜しており、
上記固定壁部は、上記第1の回転皿の側壁部と平行となるように傾斜している、請求項3に記載の脱泡装置。
【請求項6】
鉛直方向から見て、上記固定壁部の下端は、上記第2の回転皿の上端で囲まれる領域内に収まっている、請求項1又は2に記載の脱泡装置。
【請求項7】
上記第1の回転皿の径方向外側に配置された上記固定壁部を第1の固定壁部として備え、
上記第2の回転皿の径方向外側を囲むように上記第2の回転皿の径方向外側に配置されて、上記第2の回転皿から飛散された上記スラリーが衝突するとともに、該スラリーを下方に流下させるように固定された第2の固定壁部を備える、請求項1又は2に記載の脱泡装置。
【請求項8】
上記第2の固定壁部の鉛直方向下方に配置されるとともに、上記第2の固定壁部から流下してきた上記スラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第3の回転皿を備える、請求項7に記載の脱泡装置。
【請求項9】
上記第3の回転皿の径方向外側を囲むように上記第3の回転皿の径方向外側に配置されて、上記第3の回転皿から飛散された上記スラリーが衝突するとともに、該スラリーを下方に流下させるように固定された第3の固定壁部と、を備える、請求項8に記載の脱泡装置。
【請求項10】
上部に開口部を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口部を覆う蓋体とを備え、
上記第1の回転皿、上記固定壁部及び上記第2の回転皿は上記蓋体に吊り下げられた状態で上記容器本体内に収容される、請求項1又は2に記載の脱泡装置。
【請求項11】
上記第1の回転皿と上記第2の回転皿とを同軸上に固定するとともに、上記蓋体に回転可能に取り付けられた回転軸を備える、請求項10に記載の脱泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池の作製工程において、電極活物質と分散媒に均一に分散させるために両者を混錬装置で混錬するとともに、混錬により形成されたスラリーに含まれる気泡を取り除くために脱泡装置でスラリーを脱泡することが行われている。このような脱泡装置として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、容器内に回転皿を有し、混錬されたスラリーを当該回転皿に供給して回転皿の遠心力で当該スラリーを飛散させることで薄膜化するとともに容器の内壁に衝突させることで、スラリーの脱泡を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-017500号公報
【特許文献2】特開2016-072200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のリチウムイオン二次電池の需要の高まりに応じて、スラリーの生産量の増大が求められている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示の構成では、大量のスラリーの脱泡を行うには長時間を要するため生産量の増大に対応することが困難である。そのため、脱泡装置における処理能力の改善が要求される。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、処理能力の向上が図られる脱泡装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電極活物質と分散媒とを含む電極用スラリーを脱泡させる脱泡装置であって、
上記スラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第1の回転皿と、
上記第1の回転皿の径方向外側を囲むように上記第1の回転皿の径方向外側に配置されて、上記第1の回転皿から飛散された上記スラリーが衝突するとともに、該スラリーを下方に流下させるように固定された固定壁部と、
上記固定壁部の鉛直方向下方に配置されるとともに、上記固定壁部から流下してきた上記スラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第2の回転皿と、
を備える、脱泡装置にある。
【発明の効果】
【0007】
上記一態様の脱泡装置によれば、第1の回転皿により飛散されたスラリーは薄膜化されるとともに固定壁部に衝突して下方に流下されることによりスラリーの脱泡が行われる。さらに、固定壁部から流下したスラリーは第2の回転皿によって再度飛散されて薄膜化されるため、さらなる脱泡が行われることとなる。これにより、スラリーの飛散回数及び流下距離が増えるため、脱泡が促進されることにより、脱泡装置の処理能力が向上されることとなる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、処理能力の向上が図られる脱泡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、脱泡装置の鉛直方向断面概念図。
【
図3】実施形態1における、固定壁部の斜視概念図。
【
図4】実施形態1における、鉛直方向上方から見た、回転皿と固定壁部との位置関係を説明するための概念図。
【
図5】実施形態2における、脱泡装置の鉛直方向断面概念図。
【
図6】実施形態3における、脱泡装置の鉛直方向断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
上記脱泡装置に係る実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
本実施形態1の脱泡装置1は、
図1に示すように、混錬装置2で生成されたスラリーSの脱泡を行うものである。スラリーSは、二次電池やキャパシタの電極を構成する活物質とその分散媒とを混錬したものであるが、具体的な組成は限定されない。スラリーSが高い粘度を有する場合は、混錬過程で生じた気泡が残存しやすいため、本実施形態1の脱泡装置1により効率よく脱泡を行うことができる。本実施形態1では、スラリーSは、リチウムイオン二次電池の電極の形成材料となる活物質とその分散媒を混錬したものである。なお、スラリーSはキャパシタの電極の形成材料として用いてもよい。
【0011】
1.脱泡装置1の主要構成
図1に示すように、脱泡装置1は主要構成として、容器本体40、蓋体41、第1の回転皿11、第2の回転皿12、第1の固定壁部21、第2の固定壁部22、回転軸30、モータ31、スラリー供給ノズル35、減圧ポンプ3、抜き取り用ポンプ4、タンク5を備える。以下に、各構成について詳述する。
【0012】
2.容器本体40及び蓋体41
図1に示すように、容器本体40は上面が開口し、下部に抜き取り孔42を有する略円筒状の容器である。容器本体40は上面が開口部は蓋体41に覆われ、抜き取り孔42は後述の抜き取り用ポンプ4に接続されることにより、容器本体40内を密閉可能に構成されている。容器本体40内の底部領域は、脱泡されたスラリーSが一時的に滞留する滞留部43となっている。なお、滞留部43に貯留される脱泡されたスラリーSの量、すなわち、液面高さは図示しない液面センサによって監視されている。
【0013】
蓋体41には、回転軸30及びスラリー供給ノズル35が挿通されている。回転軸30はモータ31に接続されており、モータ31の駆動により回転軸30は回転中心軸30aを中心に回転する。モータ31の駆動制御は図示しない制御部により行われる。回転軸30の回転速度は限定されないが、後述の各回転皿11~13からスラリーSが飛散されて、固定壁部21、22又は容器本体40の内側面と衝突する際の衝撃でスラリーSに気泡が生じない程度の回転速度とすることができる。
【0014】
また、蓋体41に設けられたスラリー供給ノズル35は混錬装置2に接続されている。容器本体40及び蓋体41の形成材料は限定されず、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。なお、本実施形態1では、鉛直方向をYとし、水平方向の一つをXとする。回転軸30の回転中心軸30aは鉛直方向Yに平行となっている。回転軸30の下端は、滞留部43に滞留するスラリーSの液面431に接触しないように、予め設定された液面最大高さの位置よりも上方に位置するように構成されている。
【0015】
蓋体41には減圧ポンプ3のノズル部3aが接続されている。蓋体41を容器本体40に取り付け、容器本体40を密閉した状態で減圧ポンプ3を作動させることにより容器本体40の内部を減圧することができる。スラリーSの脱泡を行う際には、減圧ポンプ3により予め容器本体40内を減圧しておくものとする。これにより、スラリーSにおける気泡の消滅(破泡)を促すことができるとともに、容器本体40内でスラリーSに気泡が新たに発生することを抑制することができる。
【0016】
3.第1の回転皿11
第1の回転皿11は、
図2に示すように、円形の底部111と底部111の外縁から立ち上がった側壁部112とを備えた皿形状をなしている。なお、底部111の中央には回転軸30が挿通されて固定される挿通孔113が形成されている。底部111は水平方向Xに平行となっている。なお、挿通孔113は回転軸30が挿通された状態では回転軸30との間に隙間はなく、スラリーSが挿通孔113から漏れ出ることはない。第1の回転皿11の側壁部112は、鉛直方向上方に向かうほど広がるように傾斜しており、側壁部112の上端112aが最も広がっている。
【0017】
図1に示すように、第1の回転皿11は回転軸30に固定されて一体となっており、符号Rで示すように回転軸30とともに回転中心軸30aを回転可能となっている。これにより、第1の回転皿11は回転軸30を介して蓋体41の裏面に吊り下げられた状態で取り付けられている。第1の回転皿11の大きさは限定されず、容器本体40内に収まる大きさとすることができる。第1の回転皿11の形成材料は限定されず、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。
【0018】
第1の回転皿11には、符号P0で示すようにスラリー供給ノズル35からスラリーSが供給される。そして、第1の回転皿11は回転中心軸30aに回転することで、供給されたスラリーSは、符号P1で示すように、遠心力によって第1の回転皿11の底部111(
図2参照)に沿って径方向外方に引き伸ばされ薄膜化し、さらに遠心力が作用して、第1の回転皿11の側壁部112(
図2参照)を上りつつ薄膜化される。そして、スラリーSは側壁部112の外縁に到達すると、P1で示すように、遠心力により径方向外方に膜状に飛散することとなる。
【0019】
4.第1の固定壁部21
図1に示すように、第1の固定壁部21は、第1の回転皿11の径方向外側を囲むように設けられている。第1の固定壁部21の形成材料は限定されず、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。
図3に示すように、第1の固定壁部21は、筒状であって、下方に向かうほど小さくなっている。換言すると、水平断面において第1の固定壁部21で囲まれた領域の面積が、水平断面の鉛直方向位置が下方であるほど小さくなっている。本実施形態1では、逆円錐形状であって下端(円錐形状の先端)が除去された形状となっている。これにより、第1の固定壁部21の下端は開口部211となっているともに、第1の固定壁部21の側壁部212は、鉛直方向上方に向かうほど広がるように傾斜している。なお、本実施形態1では、逆円錐形状としたが、これに限定されず、側壁部212は、鉛直方向上方に向かうほど広がるような多角形形状であってもよい。
【0020】
本実施形態において第1の固定壁部21の側壁部212の傾斜角度は限定されないが、本実施形態1では、
図1に示すように、第1の固定壁部21の側壁部212の傾斜は、第1の回転皿11の側壁部112の傾斜よりも緩やかとなっている。また、第1の固定壁部21の側壁部212の傾斜は必ずしも一様でなくてもよく、一部に傾斜の程度が異なる領域を含んでいてもよい。
【0021】
図3に示すように、第1の固定壁部21の上端には水平方向外方に延在した外縁部213が形成されている。外縁部213には固定用のねじ穴214が設けられている。そして、第1の固定壁部21は、蓋体41の裏面にスペーサ51を介してねじ穴214でボルト固定されている。すなわち、第1の固定壁部21は、スペーサ51を介して蓋体41に吊り下げられた状態で固定されている。なお、本実施形態1では、第1の固定壁部21をスペーサ51を介して蓋体41の裏面に取り付けたが、これに限らず、第1の固定壁部21の上端にブラケットを設けるとともに当該ブラケットと蓋体41とをスペーサ51を介して接合することとしてもよい。この場合は、取り付け自由度が向上する。
【0022】
図1に示すように、鉛直方向Yにおいて、第1の固定壁部21の上端位置21aは、第1の回転皿11の上端位置11aよりも上方に位置している。これにより、第1の固定壁部21の側壁部212の上方領域の内側面が第1の回転皿11の外縁と径方向に対向する。これにより、第1の回転皿11から径方向外方に膜状に飛散されたスラリーSは第1の固定壁部21の側壁部212の上方領域の内側面に衝突することとなる。そして、
図3に示すように、固定壁部21の側壁部212の上方領域の内側面212aは傾斜面となっており、本実施形態1では、固定壁部21の側壁部212の内側面の全域が傾斜面となっている。
【0023】
また、
図1に示すように、鉛直方向Yにおいて、第1の固定壁部21の下端位置21bは、第1の回転皿11の下端位置11bよりも下方に位置している。これにより、第1の固定壁部21の側壁部212で囲まれる領域内に第1の回転皿11の全体が収まった状態となっている。なお、第1の回転皿11の下端と第1の固定壁部21の内側面とは接触しておらず、両者の間には、第1の固定壁部21の内側面を流下するスラリーSが第1の回転皿11に接触しない程度の十分な空間が形成されている。
【0024】
図1に示すように、第1の回転皿11から径方向外方に膜状に飛散されたスラリーSは第1の固定壁部21の側壁部212の上方領域の内側面212a(
図3参照)に衝突した後、矢印P2で示すように第1の固定壁部21の側壁部212の内側面に沿って自重で下方に流下する。そして、第1の固定壁部21の下端の開口部211に到達したスラリーSは矢印P3で示すように下方に滴下することとなる。
【0025】
5.第2の回転皿12
第2の回転皿12は、
図1に示すように、第1の固定壁部21の鉛直方向下方に設けられている。本実施形態1では、
図2に示すように、第2の回転皿12の形状は第1の回転皿11と同一形状となっている。また、第2の回転皿12は、第1の回転皿11と同様に回転軸30に固定されて、回転軸30と一体的に回転可能となっているとともに、第1の回転皿11と同様に回転軸30を介して蓋体41の裏面に吊り下げられた状態で取り付けられている。さらに、第1の回転皿11と第2の回転皿12とが同一に回転軸30に取り付けられることにより、第1の回転皿11と第2の回転皿12とが同軸上に固定されることとなる。なお、第2の回転皿12の形状は第1の固定壁部21と異なる形状であってもよい。
【0026】
図1に示すように、第2の回転皿12の上端122aは、第1の固定壁部21の下端の開口部211よりも広がっている。そして、
図4に示すように、鉛直方向から見て、第1の固定壁部21の下端の開口部211は、第2の回転皿12の上端122aで囲まれる領域内に収まっている。
【0027】
図1に示すように、鉛直方向Yにおいて、第2の回転皿12の上端位置12aは、第1の固定壁部21の下端よりも鉛直方向上方に位置している。すなわち、第2の回転皿12の側壁部122で囲まれる領域内に第1の固定壁部21の下端が入り込んだ状態となっている。なお、第1の固定壁部21の下端と第2の回転皿12とは接触しておらず、両者の間には、第2の回転皿12から飛散するスラリーSが第1の固定壁部21の裏面に接触しない程度の十分な空間が形成されている。
【0028】
図1に示すように、第2の回転皿12には、符号P3で示すように第1の固定壁部21から流下してきたスラリーSが供給される。そして、第2の回転皿12は回転中心軸30aに回転することで、供給されたスラリーSは、符号P4で示すように、遠心力によって第2の回転皿12の底部121(
図2参照)に沿って径方向外方に引き伸ばされ薄膜化し、さらに遠心力が作用して、第2の回転皿12の側壁部122(
図2参照)を上りつつ薄膜化される。そして、スラリーSは第2の回転皿12の側壁部122の外縁に到達すると、P4で示すように、遠心力により径方向外方に膜状に飛散することとなる。
【0029】
6.第2の固定壁部22
図1に示すように、第2の固定壁部22は、第2の回転皿12の径方向外側を囲むように設けられている。第2の固定壁部22の形成材料は限定されず、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。
図3に示すように、本実施形態1では、第2の固定壁部22の形状は、第1の固定壁部21と同一となっている。なお、第2の固定壁部22の形状は、第1の固定壁部21と異なっていてもよい。
【0030】
図3に示すように、第2の固定壁部22の上端の外縁部223に形成された固定用のねじ穴224を利用して、第1の固定壁部21の上端の外縁部213に形成されたねじ穴214とスペーサ52とを介して
図1に示すように、第1の固定壁部21の裏面に第2の固定壁部22がボルト固定されている。すなわち、蓋体41に吊り下げられた第1の固定壁部21に対して、さらに第2の固定壁部22が吊り下げられた状態で固定されている。
【0031】
そして、
図1に示すように、第1の固定壁部21と第1の回転皿11との位置関係と同様に、第2の固定壁部22の側壁部222(
図3参照)で囲まれた領域内に、第2の回転皿12の全体が収まった状態となっている。なお、第2の回転皿12の下端と第2の固定壁部22の内側面とは接触しておらず、両者の間には、第2の固定壁部22の内側面を流下するスラリーSが第2の回転皿12に接触しない程度の十分な空間が形成されている。
【0032】
図1に示すように、第2の回転皿12から径方向外方に膜状に飛散されたスラリーSは第2の固定壁部22の側壁部222の上方領域の内側面222a(
図3参照)に衝突した後、矢印P5で示すように第2の固定壁部22の側壁部222の内側面に沿って自重で下方に流下する。そして、第2の固定壁部22の下端の開口部221に到達したスラリーSは矢印P6で示すように下方に滴下することとなる。
【0033】
7.第3の回転皿13
第3の回転皿13は、
図1に示すように、第2の固定壁部22の鉛直方向下方に設けられている。本実施形態1では、
図2に示すように、第3の回転皿13の形状は第1の回転皿11及び第2の回転皿12と同一形状となっている。また、第3の回転皿13は、第1の回転皿11及び第2の回転皿12と同様に回転軸30に固定されて、回転軸30と一体的に回転可能となっているとともに、第1の回転皿11及び第2の回転皿12と同様に回転軸30を介して蓋体41の裏面に吊り下げられた状態で取り付けられている。なお、第3の回転皿13の形状は、第1の回転皿11及び第2の回転皿12と異なる形状であってもよい。
【0034】
また、第2の回転皿12と第1の固定壁部21との位置関係と同様に、
図4に示すように、鉛直方向から見て、第2の固定壁部22の下端の開口部221は、第3の回転皿13の上端132aで囲まれる領域内に収まっている。
【0035】
また、
図1に示すように、鉛直方向Yにおいて、第3の回転皿13の上端位置13aは、第2の固定壁部22の下端22bよりも鉛直方向上方に位置している。すなわち、第3の回転皿13の側壁部132で囲まれる領域内に第2の固定壁部22の下端が入り込んだ状態となっている。なお、第2の固定壁部22の下端と第3の回転皿13とは接触しておらず、両者の間には、第3の回転皿13から飛散するスラリーSが第2の固定壁部22の裏面に接触しない程度の十分な空間が形成されている。
【0036】
図1に示すように、第3の回転皿13には、符号P6で示すように第2の固定壁部22から流下してきたスラリーSが供給される。そして、第3の回転皿13は回転中心軸30aに回転することで、供給されたスラリーSは、符号P7で示すように、遠心力によって第3の回転皿13の底部131(
図2参照)に沿って径方向外方に引き伸ばされ薄膜化し、さらに遠心力が作用して、第3の回転皿13の側壁部132(
図2参照)を上りつつ薄膜化される。そして、スラリーSは側壁部132の外縁に到達すると、矢印P7で示すように、遠心力により径方向外方に膜状に飛散することとなる。そして、第3の回転皿13から径方向外方に膜状に飛散されたスラリーSは、容器本体40の内側面に衝突し、その後、容器本体40の内側面下方に滴り落ち、容器本体40の下部の滞留部43に一時的に貯留される。
【0037】
8.滞留部43のスラリーSの抜き取り
図1に示すように、滞留部43の脱泡されたスラリーSは、容器本体40の抜き取り孔42に接続された抜き取り用ポンプ4により抜き取られてタンク5に回収される。そして、電極形成工程において、当該タンク5からスラリーSが必要に応じて取り出される。
【0038】
9.作用効果
本実施形態1の脱泡装置1によれば、第1の回転皿11により飛散されたスラリーSは薄膜化されるとともに第1の固定壁部21に衝突して下方に流下されることによりスラリーの脱泡が行われる。さらに、第1の固定壁部21から流下したスラリーSは第2の回転皿12によって再度飛散されて薄膜化されるため、さらなる脱泡が行われることとなる。これにより、スラリーSの飛散回数及び流下距離が増えるため、脱泡が促進されることにより、脱泡装置1の処理能力が向上されることとなる。
【0039】
本実施形態1では、水平断面において第1の固定壁部21で囲まれた領域の面積は、水平断面の鉛直方向位置が下方であるほど小さい。これにより、第1の固定壁部21の側壁部212が傾斜面となるため、当該側壁部212に衝突してきたスラリーSを比較的ゆっくりと流下させて、脱泡作用の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態1では、第1の回転皿11から飛散されたスラリーSが衝突する第1の固定壁部21は、鉛直方向下方に向かうほど第1の回転皿11の回転中心軸30aに近づくように傾斜している。これにより、第1の固定壁部21に衝突してきたスラリーSを比較的ゆっくりと流下させて、脱泡作用の向上を図ることができるとともに、当該スラリーSを集めて、再度回転皿で飛散させやすくすることができる。
【0041】
また、本実施形態1では、第1の回転皿11の側壁部112は鉛直方向上方に向かうほど回転中心軸30aから離れるように傾斜しており、第1の固定壁部21は、第1の回転皿11の側壁部112よりも緩やかに傾斜している。これにより、第1の回転皿11の側壁部112において遠心力により、スラリーSの薄膜化を行うことができ、さらに第1の固定壁部21の傾斜部において比較的ゆっくりとスラリーSを流下させて脱泡作用を一層向上することができる。
【0042】
また、本実施形態1では、鉛直方向から見て、第1の固定壁部21の下端である開口部211は、第2の回転皿12の上端で囲まれる領域内に収まっている。これにより、第1の固定壁部21の下端である開口部211から滴り落ちるスラリーSを確実に第2の回転皿12に受け入れて、再度飛散させることができる。そのため、脱泡作用を一層向上することができる。
【0043】
また、本実施形態1では、第1の回転皿11の径方向外側に配置された第1の固定壁部21を備え、第2の回転皿12の径方向外側を囲むように第2の回転皿12の径方向外側に配置されて、第2の回転皿12から飛散されたスラリーSが衝突するとともに、スラリーSを下方に流下させるように固定された第2の固定壁部22を備える。これにより、スラリーSの飛散回数と流下距離を増大して、脱泡作用を一層向上することができる。
【0044】
また、本実施形態1では、第2の固定壁部22の鉛直方向下方に配置されるとともに、第2の固定壁部22から流下してきたスラリーを径方向外方に飛散させるように回転可能に設けられた第3の回転皿13を備える。これにより、さらにスラリーSの飛散回数と流下距離を増大して、脱泡作用を一層向上することができる。
【0045】
また、本実施形態1では、上部に開口部を有する容器本体40と、容器本体40の開口部を覆う蓋体41とを備え、第1の回転皿11、第1の固定壁部21及び第2の回転皿12は蓋体41に吊り下げられた状態で容器本体40内に収容される。これにより、組付の作業性を向上させることができる。また、本実施形態では、第3の回転皿13も同様に構成されているため、組付の作業性を一層向上させることができる。
【0046】
、第1の回転皿11と第2の回転皿12とを同軸上に固定するとともに、蓋体41に回転可能に取り付けられた回転軸30を備える。これにより、第1の回転皿11と第2の回転皿12の2つの回転体を一つの回転軸30で回転させることができ、部品点数の削減と省スペース化を図ることができる。また、本実施形態では、第3の回転皿13も同様に構成されているため、部品点数の削減と省スペース化を一層図ることができる。
【0047】
以上のごとく、本実施態様によれば、処理能力の向上が図られる脱泡装置1を提供することができる。
【0048】
(実施形態2)
本実施形態2では、
図5に示すように、上述の実施形態1の構成に加えて、第3の回転皿13の鉛直方向下方に、第3の固定壁部23を備える。第3の固定壁部23の形状は、
図3に示す、第2の固定壁部22と同一の形状である。そして、
図5に示すように、第3の回転皿13と第3の固定壁部23との位置関係は、上述の第2の回転皿12と第2の固定壁部22との位置関係と同一となっている。なお、本実施形態2において、実施形態1と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施形態2によれば、
図5に示すように、第3の固定壁部23は第3の回転皿13の径方向外側を囲むように第3の回転皿13の径方向外側に配置される。そして矢印P7で示すように、第3の回転皿13から飛散されたスラリーSが第3の固定壁部23に衝突するとともに、矢印P8で示すように当該スラリーSを下方に流下することができる。矢印S9で示すように、第3の固定壁部23の下端の開口部に到達したスラリーSは、滞留部43に向けて滴り落ちる。これにより、スラリーSの流下距離を増大して、脱泡作用を一層向上することができる。なお、本実施形態2においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態3では、実施形態1の場合に替えて、
図6に示すように、各回転皿11、12、13の側壁部と各固定壁部21、22の側壁部は、互いに平行となるように傾斜している。その他の構成は実施形態1の場合と同等で会って、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態3によれば、上記構成を有することにより、鉛直方向において、交互に配置される各回転皿11、12、13及び各固定壁部21、22において、隣り合うもの同士を所定距離離した状態においても、全体として鉛直方向の大きさを小さくすることができる。そのため、脱泡装置1の小型化を図ることができ、省スペース化を図ることができる。なお、本実施形態3でも実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0052】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 脱泡装置
11 第1の回転皿
12 第2の回転皿
13 第3の回転皿
21 第1の固定壁部
22 第2の固定壁部
23 第3の固定壁部
30 回転軸
31 モータ
35 スラリー供給ノズル
40 容器本体
41 蓋体