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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134565
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 33/00 20060101AFI20240927BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240927BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 63/16 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F02M33/00 C
F02M21/02 G
F02B37/00 302E
B01D53/22
B01D63/16
B01D65/02 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044816
(22)【出願日】2023-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅彦
【テーマコード(参考)】
3G005
4D006
【Fターム(参考)】
3G005DA06
3G005EA16
4D006GA41
4D006HA81
4D006JA70A
4D006KC14
4D006KC20
4D006KE08P
4D006MA01
4D006MA04
4D006MA06
4D006MC05
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB62
4D006PB63
4D006PC71
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】 内燃機関において、吸気中の窒素の除去と排気再循環とを効率良く行う。
【解決手段】 内燃機関1は、燃焼室2を有する機関本体3と、燃焼室に接続した吸気通路4と、燃焼室に接続した排気通路5と、吸気通路に設けられた分離装置15とを有する。吸気通路は、空気吸込口16と分離装置とを接続する吸気上流部18と、分離装置と燃焼室とを接続する吸気下流部19とを有する。分離装置は、酸素を透過させる一方、窒素の透過を阻害する分離膜32と、分離膜によって区画された第1室33及び第2室34とを有する。第1室は、吸気上流部に接続されている。第2室は、吸気下流部に接続されている。排気通路と、吸気下流部とが、排気通路を流れる排気の一部を吸気下流部に戻すEGR通路76によって接続されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であって、
燃焼室を有する機関本体と、
前記燃焼室に接続した吸気通路と、
前記燃焼室に接続した排気通路と、
前記吸気通路に設けられた分離装置とを有し、
前記吸気通路は、空気吸込口と前記分離装置とを接続する吸気上流部と、前記分離装置と前記燃焼室とを接続する吸気下流部とを有し、
前記分離装置は、酸素を透過させる一方、窒素の透過を阻害する分離膜と、前記分離膜によって区画された第1室及び第2室とを有し、
前記第1室は、前記吸気上流部に接続され、
前記第2室は、前記吸気下流部に接続され、
前記排気通路と、前記吸気下流部とが、前記排気通路を流れる排気の一部を前記吸気下流部に戻すEGR通路によって接続されている内燃機関。
【請求項2】
前記吸気上流部に過給機が設けられている請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記過給機は、前記排気通路に設けられたタービンと、前記タービンを迂回するウェイストゲートと、前記ウェイストゲートを開閉するウェイストゲートバルブと、前記吸気上流部に設けられたコンプレッサとを有するターボチャージャである請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記吸気上流部の前記過給機より下流側の部分に第1冷却装置が設けられている請求項2に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記EGR通路に第2冷却装置が設けられている請求項1に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記分離装置は、筒形の側壁部と、前記側壁部の両端を閉じる一対の端壁部とを有するケースを有し、
前記分離膜は、筒形に形成され、前記ケースの内部に配置され、
前記第1室は、前記側壁部と前記分離膜との間に画定され、
前記第2室は、前記分離膜の内側に画定され、
前記側壁部には、前記吸気上流部が接続する分離装置入口が設けられ、
前記端壁部の一方には、前記吸気下流部が接続する分離装置出口が設けられている請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記吸気下流部の圧力を測定する圧力センサと、
前記ケースに設けられ、前記分離膜の外面に向けて空気を噴射する空気噴射装置とを有し、
前記空気噴射装置は、前記吸気下流部の圧力に基づいて空気を噴射する請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記分離装置を振動させる振動装置を有する請求項1~7のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記分離装置は、前記第1室に接続された一端を有する排出管を有し、
前記排出管の他端は、前記機関本体の高温部に向けて開口している請求項1~7のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【請求項10】
前記燃焼室又は前記吸気下流部に、燃料としての水素を供給する燃料供給装置が設けられている請求項1~7のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和又は影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて内燃機関に関する研究開発が行われている。特許文献1は、空気から窒素を除去して酸素を燃焼室に供給する分離装置を有する内燃機関を開示している。吸気中の窒素濃度が低下することによって、燃料の燃焼時に発生する窒素酸化物(NO)の発生量が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6325516号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、空気にEGRガスを加えた後に、分離装置において窒素と酸素とを分離している。しかし、EGRガスは水を含むため、分離装置が分離膜を使用している場合には、水によって分離膜の機能が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、内燃機関において、吸気中の窒素の除去と排気再循環とを効率良く行うことを課題とする。そして、本発明は、気候変動の緩和又は影響軽減に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、内燃機関(1)であって、燃焼室(2)を有する機関本体(3)と、前記燃焼室に接続した吸気通路(4)と、前記燃焼室に接続した排気通路(5)と、前記吸気通路に設けられた分離装置(15)とを有し、前記吸気通路は、空気吸込口(16)と前記分離装置とを接続する吸気上流部(18)と、前記分離装置と前記燃焼室とを接続する吸気下流部(19)とを有し、前記分離装置は、酸素を透過させる一方、窒素の透過を阻害する分離膜(32)と、前記分離膜によって区画された第1室(33)及び第2室(34)とを有し、前記第1室は、前記吸気上流部に接続され、前記第2室は、前記吸気下流部に接続され、前記排気通路と、前記吸気下流部とが、前記排気通路を流れる排気の一部を前記吸気下流部に戻すEGR通路(76)によって接続されている。
【0007】
この態様によれば、EGR通路が吸気下流部に接続されているため、EGRガスは分離装置を通過しない。そのため、EGRガス中の水分が分離膜に付着することがなく、分離膜の機能が低下することが抑制される。これにより、内燃機関において、吸気中の窒素の除去と排気再循環とを効率良く行うことができる。
【0008】
上記の態様において、前記吸気上流部に過給機(22)が設けられてもよい。
【0009】
この態様によれば、分離装置に供給される空気が加圧されることによって、分離膜を透過する酸素量を増加させることができる。また、空気が第1室に滞留することなく、効率良く外部に排出される。
【0010】
上記の態様において、前記過給機は、前記排気通路に設けられたタービン(71)と、前記タービンを迂回するウェイストゲート(72)と、前記ウェイストゲートを開閉するウェイストゲートバルブ(73)と、前記吸気上流部に設けられたコンプレッサ(74)とを有するターボチャージャであってもよい。
【0011】
この態様によれば、分離装置に供給される空気の圧力を調節することができる。
【0012】
上記の態様において、前記吸気上流部の前記過給機より下流側の部分に第1冷却装置(23)が設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、過給機で圧縮され、かつ温度が上昇した空気が、第1冷却装置で冷却されることによって収縮するため、より多くの空気を分離装置に供給することができる。
【0014】
上記の態様において、前記EGR通路に第2冷却装置(78)が設けられてもよい。
【0015】
この態様によれば、EGRガスが第2冷却装置で冷却されることによって、燃焼室に供給される吸気の温度が低下するため、燃焼室の温度上昇が抑制される。
【0016】
上記の態様において、前記分離装置は、筒形の側壁部(35)と、前記側壁部の両端を閉じる一対の端壁部(36)とを有するケース(31)を有し、前記分離膜は、筒形に形成され、前記ケースの内部に配置され、前記第1室は、前記側壁部と前記分離膜との間に画定され、前記第2室は、前記分離膜の内側に画定され、前記側壁部には、前記吸気上流部が接続する分離装置入口(43)が設けられ、前記端壁部の一方には、前記吸気下流部が接続する分離装置出口(44)が設けられてもよい。
【0017】
この態様によれば、第2室に対して第1室を大きくすることができると共に、第1室の空気と分離膜との接触面積を大きくすることができる。
【0018】
上記の態様において、前記吸気下流部の圧力を測定する圧力センサ(P2)と、前記ケースに設けられ、前記分離膜の外面に向けて空気を噴射する空気噴射装置(51)とを有し、前記空気噴射装置は、前記吸気下流部の圧力に基づいて空気を噴射してもよい。
【0019】
この態様によれば、分離膜の外面に異物が付着していると推定されるときに、空気噴射装置から噴射される空気によって異物を分離膜の外面から吹き払うことができる。
【0020】
上記の態様において、前記分離装置を振動させる振動装置(56)を有してもよい。
【0021】
この態様によれば、分離膜が振動するため、分離膜の外面に異物が付着し難くなると共に、分離膜の外面に付着した異物が脱落し易くなる。
【0022】
上記の態様において、前記分離装置は、前記第1室に接続された一端を有する排出管(46)を有し、前記排出管の他端は、前記機関本体の高温部に向けて開口してもよい。
【0023】
この態様によれば、分離装置から排出される、酸素が分離されたガスを利用して機関本体を冷却することができる。
【0024】
上記の態様において、前記燃焼室又は前記吸気下流部に、燃料としての水素を供給する燃料供給装置(81)が設けられてもよい。
【0025】
この態様によれば、燃料が硫黄を含まず、支燃ガスに含まれる窒素が少ないため、排気浄化触媒の小型化又は省略が可能になる。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、内燃機関において、吸気中の窒素の除去と排気再循環とを効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る内燃機関の説明図
図2】分離装置の水平断面図
図3】分離装置の垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係る内燃機関の実施形態について説明する。内燃機関は、車両や船舶等の移動体に設けられてよく、地面や建造物に設けられてもよい。以下の実施形態では、内燃機関が、駆動源として車両に搭載された例について説明する。
【0029】
図1に示すように、内燃機関1は、燃焼室2を有する機関本体3と、燃焼室2に接続した吸気通路4と、燃焼室2に接続した排気通路5とを有する。機関本体3は、シリンダ7が形成されている。機関本体3は、シリンダブロック3A及びシリンダヘッド3Bを含む。シリンダ7には、ピストン8が摺動可能に設けられている。機関本体3には、クランクシャフト9が回転可能に支持されている。ピストン8は、コンロッド10を介してクランクシャフト9に接続されている。燃焼室2は、シリンダ7と、ピストン8によって画定されている。
【0030】
機関本体3には、燃焼室2に接続する吸気ポート11及び排気ポート12が形成されている。吸気ポート11には吸気管14が接続されている。吸気通路4は、吸気管14及び吸気ポート11によって形成されている。吸気管14は、下流端において吸気ポート11に接続している。吸気通路4には分離装置15が設けられている。吸気通路4は、空気吸込口16と分離装置15とを接続する吸気上流部18と、分離装置15と燃焼室2とを接続する吸気下流部19とを有する。吸気管14には、上流側から順に、空気吸込口16、エアクリーナ21、過給機22、第1冷却装置23、分離装置15、スロットルバルブ24が設けられている。
【0031】
図1図3に示すように、分離装置15は、ケース31と、分離膜32と、分離膜32によって区画された第1室33及び第2室34とを有する。ケース31は、筒形の側壁部35と、側壁部35の両端を閉じる一対の端壁部36とを有する。本実施形態では、側壁部35は円筒形に形成され、各端壁部36は円形に形成されている。すなわち、ケース31は、円筒形に形成されている。
【0032】
分離膜32は、酸素を透過させる一方、窒素の透過を阻害する材料によって形成されている。分離膜32は、例えば、分離膜32は、ナノウインドウを有するグラフェンであるとよい。ナノウインドウは、グラフェンの一部の炭素原子を欠いて形成されている。ナノウインドウは、窒素よりも酸素が透過し易いように設計されているとよい。ナノウインドウのリムを構成する1つ以上の原子はヘテロ原子と置換されているとよい。ヘテロ原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄、リン、塩素、ヨウ素、臭素、ホウ素原子であってよい。ナノウインドウのファンデルワールス直径は、2.97Åであるとよい。分離膜32は、酸素の透過速度定数が47μs-1、窒素の透過に対して酸素の透過が50倍よりも大きい選択性を有するとよい。分離膜32の詳細は、例えば、WO2019/013059A1を参照されたい。
【0033】
分離膜32は、筒形に形成され、ケース31の内部に配置されている。分離膜32は、ケース31と同心状に配置される。分離膜32は、通気性を有するシート状の支持部材37の表面に支持されているとよい。分離膜32は、一対の支持部材37の間に挟持されているとよい。分離膜32と支持部材37とは、縁部において互いに結合されているとよい。分離膜32及び支持部材37は、表面積を増加させるためにプリーツ構造を有するとよい。分離膜32及び支持部材37の軸方向における両端部は、プレート38によって閉塞されている。分離膜32及び一対のプレート38は、分離膜組立体39としてユニット化されているとよい。一方のプレート38の中央部には、厚み方向に貫通する接続孔41が形成されているとよい。
【0034】
各プレート38は、ケース31の端壁部36の内面に当接する。分離膜32は、ケース31の側壁部35の内側に同心状に配置される。第1室33は、側壁部35と分離膜32との間に画定される。詳細には、第1室33は、側壁部35の内面と、分離膜32の外面と、一対の端壁部36の内面とによって画定される。第2室34は、分離膜32の内側に画定される。詳細には、第2室34は、分離膜32の内面と、一対のプレート38の内面とによって画定される。
【0035】
側壁部35には、吸気上流部18が接続する分離装置入口43が設けられている。第1室33は、分離装置入口43を介して、吸気上流部18に接続している。端壁部36の一方には、吸気下流部19が接続する分離装置出口44が設けられている。分離装置出口44は、一方のプレート38に形成された接続孔41に接続している。第2室34は、分離装置出口44を介して吸気下流部19に接続されている。
【0036】
また、分離装置15は、第1室33に接続された一端を有する排出管46を有する。排出管46の一端は、側壁部35に結合されているとよい。排出管46の一端は、側壁部35において分離装置入口43と相反する側に接続しているとよい。排出管46の他端は、機関本体3の高温部に向けて開口しているとよい。例えば、排出管46の他端は、機関本体3のシリンダヘッドやシリンダブロックに向けて開口しているとよい。また、排出管46の他端には、排出する流体の流速を増加させるためのノズル47が設けられてもよい。排出管46には、内部を流れるガスの流量及び圧力を調節するための排出管流量制御弁48が設けられている。排出管46には、マフラーが設けられてもよい。
【0037】
ケース31は、互いに着脱可能な複数のピースによって形成されているとよい。分離膜組立体39は、ケース31に着脱可能に取り付けられるとよい。
【0038】
ケース31には、分離膜32の外面に向けて空気を噴射する空気噴射装置51が設けられてもよい。空気噴射装置51は、ケース31の側壁部35に支持されたノズル52と、ノズル52に圧縮空気を供給するブロア53とを有するとよい。空気噴射装置51は、圧縮空気を分離膜32の外面に吹き付けることによって、分離膜32の外面に付着した異物を吹き払う。ノズル52は、側壁部35に複数設けられてもよい。複数のノズル52は、側壁部35の周方向に間隔をおいて配置されているとよい。
【0039】
ケース31は、ブラケット55を介して機関本体3に支持されているとよい。分離装置15が機関本体3に支持された状態において、軸線は上下方向に延び、かつ分離装置出口44はケース31の下端に配置される。他の実施形態では、ケース31は、ブラケット55を介して車体フレームに支持されてもよい。
【0040】
分離装置15には、分離装置15を振動させる振動装置56が設けられているとよい。振動装置56は、偏心錘が回転軸に結合された電動モータであるとよい。本実施形態では、機関本体3は振動装置を兼ねる。振動装置56によって分離膜32が振動するため、分離膜32の外面に異物が付着し難くなると共に、分離膜32の外面に付着した異物が脱落し易くなる。振動装置56は、振動数を変更可能に形成されているとよい。機関本体3が振動装置56である場合、機関本体3の回転数に応じて振動数が変化する。
【0041】
図1に示すように、排気ポート12には、排気管61が接続されている。排気ポート12及び排気管61によって排気通路5が形成されている。排気管61は、上流端において排気ポート12に接続している。排気管61には、上流側から順に、過給機22、マフラー62、及び排気出口63が設けられている。
【0042】
本実施形態の内燃機関1は、排気管61に触媒コンバータを有しない。他の実施形態では、排気管61に小型の触媒コンバータが設けられてもよい。触媒コンバータの内部には、少なくとも窒素酸化物を窒素に還元するための触媒が設けられているとよい。触媒は、例えば公知の三元触媒であってよい。
【0043】
過給機22は、排気通路5に設けられたタービン71と、タービン71を迂回するウェイストゲート72と、ウェイストゲート72を開閉するウェイストゲートバルブ73と、吸気上流部18に設けられたコンプレッサ74とを有するターボチャージャである。
【0044】
過給機22のコンプレッサ74は、吸気上流部18に設けられている。吸気上流部18の過給機22より下流側の部分には、第1冷却装置23が設けられている。第1冷却装置23は、いわゆるインタークーラである。第1冷却装置23は、冷却媒体と吸気とを熱交換させる熱交換器である。第1冷却装置23は、冷却媒体の流量を制御する流量制御弁を有し、流量制御弁を制御することによって第1冷却器を流れる空気の温度を調節する。冷却媒体は、液体又は気体であるとよい。
【0045】
排気通路5と、吸気下流部19とは、排気通路5を流れる排気の一部を吸気下流部19に戻すEGR通路76によって接続されている。EGR通路76の一端は、排気通路5の過給機22、すなわちタービン71とマフラー62との間の部分に接続されている。EGR通路76の他端は、吸気下流部19のスロットルバルブ24よりも上流側又は下流側の部分に接続されているとよい。EGR通路76には、EGR通路76を流れるEGRガスの流量を調節するEGRバルブ77と、EGRガスを冷却する第2冷却装置78が設けられている。第2冷却装置78は、いわゆるEGRクーラである。第2冷却装置78は、冷却媒体と吸気とを熱交換させる熱交換器である。第2冷却装置78は、冷却媒体の流量を制御する流量制御弁を有し、流量制御弁を制御することによって第2冷却器を流れるEGRガスの温度を調節する。冷却媒体は、液体又は気体であるとよい。
【0046】
燃焼室2又は吸気下流部19に、燃料としての水素を供給する燃料供給装置81が設けられている。燃料供給装置81は、水素タンク等の水素供給源と接続されている。水素供給源に貯留されている水素は、液体又は気体であるとよい。燃料供給装置81は、機関本体3に設けられ、燃焼室2に直接に水素を噴射してもよい。また、燃料供給装置81は、機関本体3に設けられ、吸気ポート11に水素を噴射してもよい。燃料供給装置81が噴射する水素は、液体又は気体であるとよい。
【0047】
内燃機関1は、第1室33内の吸気の圧力を検出する第1圧力センサP1と、吸気下流部19を流れる吸気の圧力を検出する第2圧力センサP2と、第1室33内の吸気の温度を検出する第1温度センサT1と、EGR通路76の第2冷却装置78より吸気下流部19側を流れるEGRガスの温度を検出する第2温度センサT2と、排出管46を流れるガスの流量を測定する第1流量センサF1と、EGR通路76の第2冷却装置78より吸気下流部19側を流れるEGRガスの流量を検出する第2流量センサF2とを有する。
【0048】
内燃機関1は、制御装置83を有する。制御装置83は、電子制御装置であり、マイクロプロセッサ(MPU)、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及びインターフェースを有する演算装置である。制御装置83は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって各種のアプリケーションを実現する。制御装置83は、単一のユニットによって形成されてもよく、互いに協働する複数のユニットによって形成されてもよい。制御装置83には、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2、第1温度センサT1、第2温度センサT2、第1流量センサF1、及び第2流量センサF2が接続されている。また、制御装置83には、過給機22、第1冷却装置23、スロットルバルブ24、排出管流量制御弁48、空気噴射装置51、及び第2冷却装置78が接続されている。制御装置83は、各センサからの信号に基づいて、過給機22、第1冷却装置23、スロットルバルブ24、第2冷却装置78、EGRバルブ77、排出管流量制御弁48、及び空気噴射装置51を制御する。
【0049】
次に、内燃機関1の作用について説明する。内燃機関1の駆動時には、ピストン8の下降によって吸気通路4に負圧が生じる。これにより、空気が吸気入口から吸気通路4に吸い込まれる。吸気入口から吸い込まれた空気は、エアクリーナ21において異物が除去された後、過給機22において圧縮される。その後、空気は、第1冷却装置23において冷却され、分離装置15に流れる。
【0050】
空気は、分離装置入口43から第1室33に供給される。第1室33中の空気は、分離装置入口43から排出管46に流れる。このとき、空気の一部は、分離膜32を通過して第2室34に流れる。分離膜32は、窒素に対して酸素をより多く透過する選択性を有するため、第2室34の内のガスは、空気よりも酸素濃度が高く、かつ窒素濃度が低い酸素富化ガスになる。第2室34の酸素富化ガスは、窒素濃度が低いほど好ましく、窒素をほとんど含まないことが好ましい。一方、第1室33の内のガスは、空気よりも窒素濃度が高く、かつ酸素濃度が低い窒素富化ガスになる。第1室33の窒素富化ガスは、酸素濃度が低いほど好ましい。第1室33から排出管46に流れる窒素富化ガスは、排出管46の端部から機関本体3の高温部に噴射され、高温部を冷却する。
【0051】
分離膜32を透過した酸素富化ガスは、吸気下流部19を介して第2室34から燃焼室2に流れる。このとき、吸気下流部19において、酸素富化ガスにEGRガスが供給され、混合される。燃焼室2において、酸素富化ガス及びEGRガスに燃料供給装置81から水素が供給され、水素が燃焼する。これにより、水素と酸素とが反応して水が生成される。このとき、燃焼室2に供給される酸素富化ガスが窒素ガスをほとんど含まない場合、窒素酸化物の生成が抑制される。これにより、燃焼室2から排出される排気の主な成分は水(水蒸気)となる。
【0052】
排気は、燃焼室2から排気通路5に流れ、過給機22のタービン71を回転させる。その後、排気の一部は、EGR通路76を介して吸気下流部19に戻される。排気の大部分は、排気出口63から大気中に放出される。
【0053】
制御装置83は、第1圧力センサP1からの信号に基づいて第1室33の空気の圧力を取得し、第1室33の空気の圧力が所定の第1圧力範囲内となるように、排出管流量制御弁48を制御するとよい。第1圧力範囲は、分離膜32において酸素の透過が促進される圧力に設定されているとよい。排出管流量制御弁48の開度が増加すると、第1室33の圧力が低下する。
【0054】
制御装置83は、第1温度センサT1からの信号に基づいて第1室33の空気の温度を取得し、第1室33の空気の温度が所定の第1温度範囲内となるように、第1冷却装置23を制御するとよい。第1温度範囲は、分離膜32において酸素の透過が促進される温度に設定されているとよい。
【0055】
制御装置83は、第2流量センサF2からの信号に基づいてEGR通路76を流れるEGRガスの流量を取得し、EGRガスの流量が所定の第1流量範囲内となるように、EGRバルブ77を制御するとよい。酸素富化ガスを支燃ガスとする場合、空気を支燃ガスとする場合に比べて、燃焼温度が上昇する。そのため、燃焼室2における燃焼温度を低下させるために、EGRガスが使用される。
【0056】
制御装置83は、第2温度センサT2からの信号に基づいてEGR通路76を流れるEGRガスの温度を取得し、EGRガスの温度が所定の第2温度範囲内となるように、第2冷却装置78を制御するとよい。
【0057】
制御装置83は、第2圧力センサP2からの信号に基づいて吸気下流部19の酸素富化ガスの圧力を取得し、吸気下流部19の酸素富化ガスの圧力に基づいて空気噴射装置51を制御するとよい。制御装置83は、例えば、吸気下流部19の圧力が所定の第1圧力閾値以下であるときに、空気噴射装置51から分離膜32に向けて空気を噴射するとよい。また、制御装置83は、第1室33の空気の圧力と、吸気下流部19の酸素富化ガスの圧力との差が所定の第2圧力閾値以上である場合に、空気噴射装置51から分離膜32に向けて空気を噴射してもよい。すなわち、制御装置83は、少なくとも吸気下流部19の圧力に基づいて分離膜32の目詰まりを検出し、目詰まりを検出したときに空気噴射装置51によって分離膜32上の異物を吹き払うとよい。
【0058】
上記の内燃機関1によれば、EGR通路76が吸気下流部19に接続されているため、EGRガスは分離装置15を通過しない。そのため、EGRガス中の水分が分離膜32に付着することがなく、分離膜32の機能が低下することが抑制される。これにより、内燃機関1において、吸気中の窒素の除去と排気再循環とを効率良く行うことができる。
【0059】
また、過給機22によって、分離装置15に供給される空気が加圧されるため、分離膜32を透過する酸素量を増加させることができる。また、空気が第1室33に滞留することなく、効率良く外部に排出される。過給機22が、ウェイストゲートバルブ73を有するターボチャージャであるため、分離装置15に供給される空気の圧力を調節することができる。
【0060】
筒形のケース31内に筒形の分離膜32を同心状に配置したため、第2室34に対して第1室33を大きくすることができると共に、第1室33の空気と分離膜32との接触面積を大きくすることができる。
【0061】
燃料が水素である場合、燃料が硫黄を含まず、支燃ガスに含まれる窒素が少ないため、排気浄化触媒の小型化又は省略が可能になる。
【0062】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、内燃機関1の燃料は、水素に代えてガソリンや灯油、天然ガス等の公知の燃料であってもよい。過給機22は、ターボチャージャに代えて、スーパーチャージャ等の圧縮機であってもよい。過給機22は、電動モータによって駆動される圧縮機であってもよい。分離装置15の分離膜32は、酸素を透過する一方で窒素の透過を阻害する複数の中空糸膜によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :内燃機関
2 :燃焼室
3 :機関本体
4 :吸気通路
5 :排気通路
15 :分離装置
16 :空気吸込口
18 :吸気上流部
19 :吸気下流部
22 :過給機
23 :第1冷却装置
31 :ケース
32 :分離膜
33 :第1室
34 :第2室
35 :側壁部
36 :端壁部
39 :分離膜組立体
43 :分離装置入口
44 :分離装置出口
46 :排出管
51 :空気噴射装置
56 :振動装置
71 :タービン
72 :ウェイストゲート
73 :ウェイストゲートバルブ
74 :コンプレッサ
76 :EGR通路
77 :EGRバルブ
78 :第2冷却装置
83 :制御装置
図1
図2
図3