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特開2024-1345733レベルインバータの制御装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134573
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】3レベルインバータの制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240927BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20240927BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20240927BHJP
   H02M 7/483 20070101ALI20240927BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 W
H02M7/48 J
H02P27/06
H02P21/22
H02M7/483
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044830
(22)【出願日】2023-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗世
(72)【発明者】
【氏名】福田 純一
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505AA19
5H505BB06
5H505CC04
5H505CC09
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE07
5H505EE41
5H505EE55
5H505GG04
5H505HA05
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB02
5H505JJ03
5H505KK05
5H505LL22
5H505LL41
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA34
5H770DA41
5H770EA19
5H770EA25
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770HA07Z
5H770HA14W
5H770JA11W
5H770JA18W
(57)【要約】
【課題】蓄電部の電圧の制御性を高めることができる3レベルインバータの制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置40は、第1,第2コンデンサ21,22と、回転電機10と、インバータ30と、を備えるシステムに適用される。制御装置40は、指令電圧に基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の組合せである駆動パターンを選択する選択部と、駆動パターンに基づいて、スイッチング制御を行う制御部と、を備える。2つの異なる駆動状態であって、3つの線間電圧が同等となり、かつ中性点Oに流れる電流の向きが互いに逆向きとなる各駆動状態を特定駆動状態とする。選択部は、指令電圧に基づいて、各特定駆動状態となる期間が1スイッチング周期内に生じるように駆動パターンを選択する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)と、
3相分の巻線(11U~11W)を有する回転電機(10)と、
前記回転電機における各相の前記巻線を、前記第1蓄電部の正極側、前記第1蓄電部の負極側と前記第2蓄電部の正極側との間の中性点、及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかに接続する3相分のスイッチ(SUH~SWL,QU~QW,Su1~Sw4)を有する3レベルインバータ(30)と、を備えるシステムに適用される3レベルインバータの制御装置(40)において、
前記回転電機の制御量を指令値に制御するための指令電圧に基づいて、1スイッチング周期における各相の前記スイッチの駆動状態の組み合わせである駆動パターンを選択する選択部と、
選択された前記駆動パターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、を備え、
2つの異なる前記駆動状態であって、前記巻線の3つの線間電圧が同等となり、かつ前記中性点に流れる電流の向きが互いに逆向きとなる前記各駆動状態を特定駆動状態とし、
前記選択部は、前記指令電圧に基づいて、前記各特定駆動状態とされる期間が前記1スイッチング周期内に生じるように前記駆動パターンを選択する、3レベルインバータの制御装置。
【請求項2】
前記第1蓄電部の電圧と前記第2蓄電部の電圧との少なくともいずれかに基づいて、前記1スイッチング周期における前記駆動パターンに含まれる前記各特定駆動状態の出現期間の合計に対する、前記各特定駆動状態の出現期間の割合を調整する調整部を備える、請求項1に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項3】
各相のうち、前記各特定駆動状態における前記巻線と前記第1蓄電部の正極側、前記中性点及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかとの接続箇所が他の相と異なる相を特定相とし、
前記駆動パターンには、同一の前記指令電圧に対して選択可能な2つのモードであって、前記各特定駆動状態とされる期間の前記特定相が互いに異なる各モードが含まれており、
前記各特定駆動状態とされる期間において前記特定相に流れる電流を特定相電流とし、
前記選択部は、前記指令電圧と各相の前記巻線に流れる電流とに基づいて、選択した前記駆動パターンに含まれる前記各モードのうち、前記特定相電流による前記第1蓄電部の蓄積電荷の変化量及び前記第2蓄電部の蓄積電荷の変化量が大きい方のモードを選択する、請求項1に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記駆動状態が3回変化するまでに、前記各特定駆動状態が現れるように前記駆動パターンを選択する、請求項1に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記1スイッチング周期において最初の前記駆動状態及び最後の前記駆動状態が前記各特定駆動状態であり、かつ今回の前記1スイッチング周期で最初に出現する前記特定駆動状態と、前回の前記1スイッチング周期で最後に出現した前記特定駆動状態とが同じ前記駆動状態となるように、前記駆動パターンを選択する、請求項1に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項6】
各相の前記巻線と、前記第1蓄電部の正極側、前記中性点又は前記第2蓄電部の負極側とが接続される前記駆動状態をゼロ電圧駆動状態とし、
前記選択部は、前記ゼロ電圧駆動状態のうち各相の前記巻線と前記中性点とが接続される前記駆動状態を含むように前記駆動パターンを選択する、請求項5に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項7】
前記3レベルインバータは、前記各スイッチに電流が流れることに起因して発生する導通損失が、前記第1蓄電部の正極側又は前記第2蓄電部の負極側と各相の前記巻線とが前記スイッチにより接続される場合よりも、各相の前記巻線と前記中性点とが前記スイッチにより接続される場合に大きいものであり、
前記回転電機の動作点が、前記スイッチに電流が流れることに起因して発生する導通損失が許容値以上となる特定範囲内であるか否かを判定する判定部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記特定範囲内であると判定された場合に、前記特定範囲外であると判定された場合に比べて、前記スイッチが前記ゼロ電圧駆動状態とされる期間において、各相の前記巻線と前記中性点とが接続される期間を短くするように、前記スイッチング制御を行う、請求項6に記載の3レベルインバータの制御装置。
【請求項8】
直列接続された第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)と、
3相分の巻線(11U~11W)を有する回転電機(10)と、
前記回転電機における各相の前記巻線を、前記第1蓄電部の正極側、前記第1蓄電部の負極側と前記第2蓄電部の正極側との間の中性点、及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかに接続する3相分のスイッチ(SUH~SWL,QU~QW,Su1~Sw4)を有する3レベルインバータ(30)と、を備えるシステムに適用され、コンピュータ(40)によって実行されるプログラムにおいて、
前記回転電機の制御量を指令値に制御するための指令電圧に基づいて、1スイッチング周期における各相の前記スイッチの駆動状態の組み合わせである駆動パターンを選択する選択ステップと、
選択された前記駆動パターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う制御ステップと、を含む処理を前記コンピュータに実行させ、
2つの異なる前記駆動状態であって、前記巻線の3つの線間電圧が同等となり、かつ前記中性点に流れる電流の向きが互いに逆向きとなる前記各駆動状態を特定駆動状態とし、
前記選択ステップにおいて、前記指令電圧に基づいて、前記各特定駆動状態とされる期間が前記1スイッチング周期内に生じるように前記駆動パターンを選択する処理を実行する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3レベルインバータの制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3レベルインバータが有するスイッチをオンオフする制御装置が知られている。この制御装置は、空間ベクトル変調制御により、スイッチをオンオフする。
【0003】
3レベルインバータの直流側には、直列接続されている第1蓄電部及び第2蓄電部が接続される。制御装置は、第1蓄電部の電圧及び第2蓄電部の電圧が所定の範囲内となるようにスイッチング制御を行う。これにより、スイッチに過電圧が印加されることが抑制される。このような制御装置の例として、特許文献1に開示された制御装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-37592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1蓄電部の電圧及び第2蓄電部の電圧における変動周期が長いことに起因して、各蓄電部の電圧の制御性が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みたものであり、その主たる目的は、蓄電部の電圧の制御性を高めることができる3レベルインバータの制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部と、
3相分の巻線を有する回転電機と、
前記回転電機における各相の前記巻線を、前記第1蓄電部の正極側、前記第1蓄電部の負極側と前記第2蓄電部の正極側との間の中性点、及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかに接続する3相分のスイッチを有する3レベルインバータと、を備えるシステムに適用される3レベルインバータの制御装置において、
前記回転電機の制御量を指令値に制御するための指令電圧に基づいて、1スイッチング周期における各相の前記スイッチの駆動状態の組み合わせである駆動パターンを選択する選択部と、
選択された前記駆動パターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、を備え、
2つの異なる前記駆動状態であって、前記巻線の3つの線間電圧が同等となり、かつ前記中性点に流れる電流の向きが互いに逆向きとなる前記各駆動状態を特定駆動状態とし、
前記選択部は、前記指令電圧に基づいて、前記各特定駆動状態とされる期間が前記1スイッチング周期内に生じるように前記駆動パターンを選択する。
【0008】
本発明によれば、指令電圧に基づいて、1スイッチング周期における各相のスイッチの駆動状態の組み合わせである駆動パターンが選択される。ここで、駆動パターンは、指令電圧に基づいて、各特定駆動状態とされる期間が1スイッチング周期内に生じるように選択される。そして、選択された駆動パターンに基づいて、スイッチのスイッチング制御が行われる。この場合、各特定駆動状態のうち一方の駆動状態とされるスイッチング周期内の期間、及び他方の駆動状態とされるスイッチング周期内の期間において、各蓄電部の電圧が互いに逆方向に変化する。そのため、特定駆動状態のうちいずれか一方の駆動状態とされる期間のみがスイッチング周期内に生じる場合と比較して、各蓄電部の電圧を短い間隔で変動させることができ、各蓄電部の電圧の変動周期を短くできる。その結果、各蓄電部の電圧の制御性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るモータ制御システムの構成図。
図2】制御装置が行う処理の機能ブロック図。
図3】ベクトル空間を示す図。
図4】電圧ベクトルの説明に用いる図。
図5】スイッチが駆動状態HMMとされる期間の電流経路を示す図。
図6】スイッチが駆動状態MLLとされる期間の電流経路を示す図。
図7】スイッチの駆動パターンの一例を示す図。
図8】制御装置が行う制御の処理手順を示すフローチャート。
図9】特定範囲及び電圧制御範囲の説明に用いる図。
図10】スイッチング制御の一例を示すタイムチャート。
図11】第2実施形態に係るモータ制御システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において制御装置は、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されている。
【0011】
図1に示すように、モータ制御システムは、回転電機10、バッテリ20、インバータ30、及び制御装置40を備えている。回転電機10は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機10は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU相巻線11U、V相巻線11V、W相巻線11Wを備えている。各相巻線11U,11V,11Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機10は、例えば永久磁石同期機である。
【0012】
バッテリ20は、インバータ30を介して回転電機10に電気的に接続されている。本実施形態では、バッテリ20は、例えば単電池としての電池セルの直列接続体として構成された組電池である。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池を用いることができる。バッテリ20の端子間電圧は、例えば百V以上である。
【0013】
インバータ30は、スイッチング操作により、バッテリ20から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、変換した交流電力を回転電機10へと供給する電力変換回路である。インバータ30のバッテリ20側には、蓄電部としての第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22が設けられている。第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22は、直列接続されている。第1,第2コンデンサ21,22の直列接続体には、バッテリ20が並列接続されている。本実施形態では、第1コンデンサ21の静電容量と、第2コンデンサ22の静電容量とは同一の値とされている。なお、第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22はインバータ30の外部に設けられてもよいし、インバータ30に内蔵されていてもよい。
【0014】
インバータ30は、T型の3レベルインバータであり、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を3相分備えている。各スイッチSUH~SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。このため、各スイッチSUH~SWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWLは、対応するフリーホイールダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0015】
U相上アームスイッチSUHのエミッタは、U相下アームスイッチSULのコレクタに接続されている。U相上アームスイッチSUHとU相下アームスイッチSULとの接続点は、U相巻線11Uの第1端に接続されている。V相上アームスイッチSVHのエミッタは、V相下アームスイッチSVLのコレクタに接続されている。V相上アームスイッチSVHとV相下アームスイッチSVLとの接続点は、V相巻線11Vの第1端に接続されている。W相上アームスイッチSWHのエミッタは、W相下アームスイッチSWLのコレクタに接続されている。W相上アームスイッチSWHとW相下アームスイッチSWLとの接続点は、W相巻線11Wの第1端に接続されている。各相巻線11U,11V,11Wの第2端は互いに接続されている。
【0016】
各上アームスイッチSUH~SWHのコレクタは、バスバー等の正極側母線31により接続されている。正極側母線31は、バッテリ20の正極端子及び第1コンデンサ21の第1端に接続されている。第1コンデンサ21の第2端は、中性点Oを介して第2コンデンサ22の第1端に接続されている。各下アームスイッチSUL~SWLのエミッタは、バスバー等の負極側母線32により接続されている。負極側母線32は、バッテリ20の負極端子及び第2コンデンサ22の第2端に接続されている。
【0017】
インバータ30は、双方向での電流の導通及び遮断を行うクランプスイッチQU,QV,QWを備えている。本実施形態では、各クランプスイッチQU~QWを構成するスイッチとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。各クランプスイッチQU~QWを構成する各スイッチは、対応するフリーホイールダイオードDU,DV,DWを有している。
【0018】
具体的には、U相を例に説明すると、U相クランプスイッチQUを構成する2つのスイッチは、互いのエミッタが接続されている。U相クランプスイッチQUを構成する各スイッチのうち、一方のコレクタは、U相上アームスイッチSUHとU相下アームスイッチSULとの接続点に接続され、他方のコレクタは、中性点Oに接続されている。なお、U,V,W相クランプスイッチQU~QWは、オンされている場合に双方向の電流の流通を許容し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。U,V,W相クランプスイッチQU~QWは、互いのコレクタが接続されて構成されてもよい。U,V,W相クランプスイッチQU~QWとして、逆阻止IGBT(RB-IGBT)が用いられてもよい。
【0019】
モータ制御システムは、第1電圧センサ41、第2電圧センサ42、相電流センサ43及び回転角センサ44を備えている。第1電圧センサ41は、第1コンデンサ21の電圧を検出する。第2電圧センサ42は、第2コンデンサ22の電圧を検出する。相電流センサ43は、各相巻線11U,11V,11Wに流れるU,V,W相電流を検出する。なお、相電流センサ43は、3相の電流のうち少なくとも2相の電流を検出できればよい。回転角センサ44は、例えばレゾルバであり、回転電機10の電気角を検出する。各センサ41~44の検出値は、制御装置40に入力される。
【0020】
制御装置40は、CPUや各種メモリを備えるマイクロコンピュータを主体として構成される。マイクロコンピュータが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイクロコンピュータがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイクロコンピュータは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図8等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介してダウンロード及び更新が可能である。
【0021】
制御装置40は、回転電機10の制御量を指令値に制御するための制御であって、インバータ30の各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフするスイッチング制御を行う。ここでは、図2を用いて、制御装置40のスイッチング制御について説明する。図2に示す例では、スイッチング制御において、電流フィードバック制御が行われる。制御量は、回転電機10のトルクであり、指令値は、上位の制御装置から入力される指令トルクTrq*である。
【0022】
制御装置40は、指令電流設定部50を備えている。指令電流設定部50は、指令トルクTrq*に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。例えば、指令電流設定部50は、指令トルクTrq*と、d,q軸指令電流Id*,Iq*とが関係付けられたマップ情報又は数式情報に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定すればよい。
【0023】
制御装置40は、2相変換部51を備えている。2相変換部51は、各相巻線11U,11V,11Wに流れるU,V,W相電流と、回転電機10の電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。2相変換部51は、各相電流として、相電流センサ43の検出値を用いることが可能であり、電気角θeとして、回転角センサ44の検出値を用いることが可能である。
【0024】
制御装置40は、d軸偏差算出部52a及びq軸偏差算出部52bを備えている。d軸偏差算出部52aは、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部52bは、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
【0025】
制御装置40は、d軸指令電圧算出部53a及びq軸指令電圧算出部53bを備えている。d軸指令電圧算出部53aは、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vdを算出する。q軸指令電圧算出部53bは、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vqを算出する。なお、d軸指令電圧算出部53a及びq軸指令電圧算出部53bで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0026】
制御装置40は、固定座標変換部54を備えている。固定座標変換部54は、d,q軸指令電圧算出部53a,53bから出力されたd,q軸指令電圧Vd,Vq及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸指令電圧Vd,Vqを、2相固定座標系におけるα,β軸指令電圧Vα,Vβに変換する。固定座標変換部54は、電気角θeとして、回転角センサ44の検出値を用いることが可能である。
【0027】
制御装置40は、変調部55を備えている。変調部55は、α,β軸指令電圧Vα,Vβにより定まる電圧ベクトルを、回転電機10の制御量を指令値に制御するための指令電圧ベクトルVαβとし、指令電圧ベクトルVαβが存在するセクタ及びセクタ内での存在領域を特定する。セクタは、指令電圧ベクトルVαβが存在し得るベクトル空間を、指令電圧ベクトルVαβの偏角に関して6つに分割するものである。指令電圧ベクトルVαβの偏角は、指令電圧ベクトルVαβとU相軸線とがなす角度であり、具体的には電気角θeである。電気角θeの符号は、左回り(反時計回り)を正とする。図3に、ベクトル空間を6つに分割する第1~第6セクタを示す。ベクトル空間では、U,V,W相の軸線が、電気角で120°ずつずれて配置されている。各セクタは、互いに60度の電気角差を有する2相の軸線に挟まれた領域である。図3では、第1セクタを示す範囲に、ドットハッチを施している。
【0028】
第1~第6セクタは、さらに4つの存在領域に分けられる。詳しくは、各セクタを区画する2相の軸線のうち偏角が小さい方の軸線におけるセクタの端点を第1端点とし、偏角が大きい方の軸線におけるセクタの端点を第2端点とし、ベクトル空間の原点及び第1端点の中間点を第1中間点とし、原点及び第2端点の中間点を第2中間点とし、第1端点及び第2端点の中間点を中間端点とする。この場合、第1領域R1は、原点、第1中間点及び第2中間点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第2領域R2は、第1中間点、第2中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第3領域R3は、第2端点、第2中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第4領域R4は、第1端点、第1中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。図4に、第1セクタを例にして、存在領域としての第1~第4領域R1~R4を示す。第1セクタでは、第1端点は「HLL」であり、第2端点は「HHL」であり、第1中間点は「MLL」及び「HMM」であり、第2中間点は「MML」及び「HHM」であり、中間端点は「HML」である。
【0029】
変調部55は、電気角θeに基づいて、指令電圧ベクトルVαβが存在するセクタを特定する。例えば、変調部55は、0°≦θe<60°の場合、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタに存在すると特定する。また、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβの大きさ及びセクタ内の角度に基づいて、指令電圧ベクトルVαβの存在領域を特定する。例えば、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβの大きさ及びセクタ内の角度と、存在領域としての第1~第4領域R1~R4とが対応付けられた情報(具体的には、マップ情報又は数式情報)を用いて、指令電圧ベクトルVαβが、各セクタ内の第1~第4領域R1~R4のうちいずれに存在するかを特定する。セクタ内の角度は、電気角θeとセクタ番号とから算出される。
【0030】
変調部55は、特定した指令電圧ベクトルVαβのセクタ及び存在領域に基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態を都度定める。インバータ30が実現可能な各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態は、図3に示すように定められている。
【0031】
各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態は各相電圧の組により表され、各相電圧は3段階のレベルH,M,Lにより表される。レベルHの相電圧は、対象となる相において、上アームスイッチSUH,SVH,SWHがオンされると共に、下アームスイッチSUL,SVL,SWL及びクランプスイッチQU,QV,QWがオフされることにより出力される電圧である。レベルMの相電圧は、対象となる相において、クランプスイッチQU,QV,QWがオンされると共に、上アームスイッチSUH,SVH,SWH及び下アームスイッチSUL,SVL,SWLがオフされることにより出力される電圧である。レベルLの相電圧は、対象となる相において、下アームスイッチSUL,SVL,SWLがオンされると共に、上アームスイッチSUH,SVH,SWH及びクランプスイッチQU,QV,QWがオフされることにより出力される電圧である。
【0032】
例えば、駆動状態HMLは、U相電圧がレベルHであり、V相電圧がレベルMであり、W相電圧がレベルLであることを表す。駆動状態HMLでは、U相上アームスイッチSUH、V相クランプスイッチQV及びW相下アームスイッチSWLがオンされると共に、V,W相上アームスイッチSVH,SWH、U,W相クランプスイッチQU,QW及びU相,V相下アームスイッチSUL,SVLがオフされる。
【0033】
なお、バッテリ20の電圧をVHとし、中性点Oの電位を基準電位(0V)とした場合、レベルHの相電圧は「VH/2」であり、レベルMの相電圧は「0」であり、レベルLの相電圧は「-VH/2」である。
【0034】
ベクトル空間の原点では、セクタに関わらず、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HHH,MMM又はLLLとなる。言い換えると、原点では、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態が、各相の巻線11U~11Wと第1コンデンサ21の第1端、中性点O又は第2コンデンサ22の第2端とが接続される駆動状態とされる。本実施形態では、各駆動状態HHH,MMM,LLLを、ゼロ電圧駆動状態と称する。
【0035】
図3及び図4に示すように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの2つの異なる駆動状態MML,HHMは、ベクトル空間での位置が同一である。これら2つの駆動状態MML,HHMでは、各巻線11U~11Wの3つの線間電圧(具体的には、UV相電圧、VW相電圧及びWU相電圧)が同等となる。なお、2つの駆動状態MML,HHMにおいて各巻線11U~11Wに印加される各線間電圧は、第1,第2コンデンサ21,22の電圧が変動することに伴い変化し得るが、第1,第2コンデンサ21,22の電圧が所定範囲内である場合において、2つの駆動状態MML,HHMにおいて印加される各線間電圧は同等となる。第1,第2コンデンサ21,22における電圧の所定範囲は、例えば回転電機10の制御性や各スイッチSUH~SWL,QU~QWの信頼性等に鑑みて定められている。同様に、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの2つの異なる駆動状態MLL,HMMは、ベクトル空間での位置が同一であり、これら2つの駆動状態MLL,HMMでは、各線間電圧が同等となる。
【0036】
図5及び図6に、2つの異なる駆動状態HMM,MLLとされる期間の電流経路の一例を示す。ここでは、第1,第2コンデンサ21,22の電圧がUV相電圧、WU相電圧より高い場合の電流経路を示す。この場合、各駆動状態HMM,MLLにおいて、U相の各スイッチSUH,SUL,QU側からU相巻線11Uに向かう向きにU相電流が流れ、V,W相巻線11V,11WからV,W相の各スイッチSVH,SVL,QV,SWH,SWL,QW側に向かう向きにV,W相電流が流れる。図5に示すように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HMMとされる期間では、中性点Oには電流が流入する。図6に示すように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MLLとされる期間では、中性点Oから電流が流出する。つまり、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HMM,MLLとされる各期間では、中性点Oに流れる電流の向きが互いに逆となる。同様にして、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MML,HHMとされる各期間では、中性点Oに流れる電流の向きが互いに逆となる。
【0037】
つまり、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの2つの異なる駆動状態MML,HHMや駆動状態MLL,HMMでは、各線間電圧が同等となり、かつ中性点Oに流れる電流の向きが互いに逆向きとなる。本実施形態では、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態MML,HHMや駆動状態MLL,HMMを、特定駆動状態と称する。なお、他にも、駆動状態LML,MHM、駆動状態LMM,MHH、駆動状態LLM,MMH、駆動状態MLM,HMHが、特定駆動状態に該当する。
【0038】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβを、複数の電圧ベクトルに分解する。この際、指令電圧ベクトルVαβは、指令電圧ベクトルVαβの存在領域の頂点に対応する電圧ベクトルに分解される。変調部55は、分解された電圧ベクトルの大きさに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの1スイッチング周期において、電圧ベクトルに対応する駆動状態とされる期間を算出する。なお、ここでの1スイッチング周期は、所定の時間幅で都度出力される電圧ベクトルを平均化する際の期間である。変調部55は、1スイッチング周期において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態が算出した期間となるように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフさせる駆動指令を生成する。駆動指令に基づいて各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動されることにより、1スイッチング周期で平均化された平均電圧ベクトルが出力される。
【0039】
例えば図4に示すように、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在すると特定された場合では、指令電圧ベクトルVαβは、駆動状態MLL,HMM及び駆動状態MML,HHMに対応する電圧ベクトルV1,V2に分解される。V1は、駆動状態MLL,HMMに対応する電圧ベクトルがta倍(0<ta<1)されたベクトルであり、V2は、駆動状態MML,HHMに対応する電圧ベクトルがtb倍(0<tb<1)されたベクトルである。この場合、1スイッチング周期をTSとすると、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MLL又はHMMとされる期間はta×TSであり、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MML,HHMとされる期間はtb×TSである。1スイッチング周期のうち期間ta×TS及びtb×TS以外の期間は、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HHH,MMM又はLLLとされる期間である。
【0040】
なお、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第2領域R2に存在すると特定された場合では、指令電圧ベクトルVαβは、駆動状態MLL,HMM、駆動状態MML,HHM及び駆動状態HMLに対応する電圧ベクトルに分解される。指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第3領域R3に存在すると特定された場合では、指令電圧ベクトルVαβは、駆動状態MML,HHM、駆動状態HML及び駆動状態HHLに対応する電圧ベクトルに分解される。指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第4領域R4に存在すると特定された場合では、指令電圧ベクトルVαβは、駆動状態MLL,HMM、駆動状態HML及び駆動状態HLLに対応する電圧ベクトルに分解される。そして、指令電圧ベクトルVαβが分解された各電圧ベクトルの大きさに基づいて、各電圧ベクトルに対応する駆動状態とされる期間が算出される。
【0041】
指令電圧ベクトルVαβが第2~第6セクタに存在すると特定された場合も第1セクタの場合と同様の処理が行われる。例えば、指令電圧ベクトルVαβが第2セクタの第1領域R1に存在すると特定された場合では、指令電圧ベクトルVαβは、駆動状態HHH,MMM,LLL、駆動状態MML,HHM及び駆動状態LML,MHMに対応する電圧ベクトルに分解される。分解された電圧ベクトルの大きさに基づいて、電圧ベクトルに対応する駆動状態HHH,MMM,LLL、駆動状態MML,HHM及び駆動状態LML,MHMとされる期間が算出される。
【0042】
変調部55は、スイッチング制御において、第1,第2コンデンサ21,22の電圧が所定の範囲内となるように、第1,第2コンデンサ21,22の電圧を制御する。例えば、変調部55は、第1,第2コンデンサ21,22が充放電されるように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフさせる。
【0043】
ところで、第1,第2コンデンサ21,22の電圧の変動周期が長いことに起因して、第1,第2コンデンサ21,22の電圧の制御性が低下することが懸念される。
【0044】
例えば、2スイッチング周期のうち前半のスイッチング周期の間に、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がHHH→HHM→HMM→MMMの順で移り変わり、後半のスイッチング周期の間に各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がMMM→MML→MLL→LLLの順で移り変わるように、スイッチング制御が行われることがある。各コンデンサ21,22の電圧が各相間電圧よりも高い状況を想定すると、各駆動状態HHM,MML及び各駆動状態HMM,MLLでは、先の図5及び図6で説明した場合と同様に、中性点Oに流れる電流の向きが逆となる。そして、上述したスイッチング制御の駆動パターンでは、第2コンデンサ22は、前半のスイッチング周期において充電され、後半のスイッチング周期において放電される。また、第1コンデンサ21は、前半のスイッチング周期において放電され、後半のスイッチング周期において充電される。つまり、2スイッチング周期の間に、各コンデンサ21,22が1度だけ充放電される。この場合、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の変化回数当たりにおける各コンデンサ21,22の電圧の変動回数が少なくなり、第1,第2コンデンサ21,22の電圧の制御性が低下することが懸念される。
【0045】
そこで、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの1スイッチング周期における各駆動状態の組み合わせである駆動パターンを選択する。この際、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態とされる期間が1スイッチング周期内に生じるように駆動パターンを選択する。変調部55は、選択された駆動パターンに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWのスイッチング制御を行う。
【0046】
図7に、上述した特徴を有する変調部55により選択される駆動パターンの一例を示す。ここでは、第1セクタを例にして説明する。図7に示す駆動パターンのように、変調部55は、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態が3回変化するまでに、各特定駆動状態HMM,MLL又はHHM,MMLが現れるように駆動パターンを選択することが可能である。
【0047】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在すると特定した場合に、図7の第1領域R1の欄に示す駆動パターンにおけるモードA~Dのうちいずれかで各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフする。第1領域R1のモードA,Bでは、駆動状態HMM,MMM,MML,MLLが組み合わされている。第1領域R1のモードA,Bでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに異なるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間がある。また、第1領域R1のモードC,Dでは、駆動状態HHM,HMM,MMM,MMLが組み合わされている。第1領域R1のモードC,Dでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに異なるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間がある。
【0048】
指令電圧ベクトルVαβが各セクタの第1領域R1に存在する場合における駆動パターンの各モードA~Dには、駆動状態HHH,LLLが含まれておらず、駆動状態MMMが含まれている。つまり、変調部55は、ゼロ電圧駆動状態のうち各巻線11U~11Wと中性点Oとが接続される駆動状態MMMを含むように駆動パターンを選択する。
【0049】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第2領域R2に存在すると特定した場合、図7の第2領域R2の欄に示す駆動パターンにおけるモードA~Dのうちいずれかで各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフする。第2領域R2のモードA,Bでは、HMM,HML,MML,MLLが組み合わされている。第2領域R2のモードA,Bでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに変わるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間がある。第2領域R2のモードC,Dでは、HHM,HMM,HML,MMLが組み合わされている。第2領域R2のモードC,Dでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに変わるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間がある。
【0050】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第3領域R3に存在すると特定した場合、図7の第3領域R3の欄に示す駆動パターンにおけるモードA~Dのうちいずれかで各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフする。第3領域R3のモードA,Bでは、駆動状態HHM,HHL,HML,MMLが組み合わされている。第3領域R3のモードA,Bでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに変わるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間がある。第3領域R3では、モードCはモードAと同じ駆動パターンであり、モードDはモードBと同じ駆動パターンである。
【0051】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第4領域R4に存在すると特定した場合、図7の第4領域R4の欄に示す駆動パターンにおけるモードA~Dのうちいずれかで各スイッチSUH~SWL,QU~QWをオンオフする。第4領域R4のモードA,Bでは、駆動状態HMM,HML,HLL,MLLが組み合わされている。第4領域R4のモードA,Bでは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の遷移順序が互いに変わるものの、スイッチング周期の最初及び最後において、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間がある。第4領域R4では、モードCはモードAと同じ駆動パターンであり、モードDはモードBと同じ駆動パターンである。
【0052】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが存在するセクタ及び存在領域が前回のスイッチング周期と同じである場合、駆動パターンのモードA,Bを交互に選択したり、モードC,Dを交互に選択したりする。言い換えると、変調部55は、1スイッチング周期において最初の駆動状態及び最後の駆動状態が各特定駆動状態であり、かつ今回の1スイッチング周期で最初に出現する特定駆動状態と、前回の1スイッチング周期で最後に出現した特定駆動状態とが同じ駆動状態となるように、駆動パターンを選択する。
【0053】
なお、上述した駆動パターンの選択処理は、指令電圧ベクトルVαβが第2~第6セクタに存在する場合にも適用可能である。例えば、上述した駆動パターンの選択処理を、第2セクタに適用すると、変調部55により選択される駆動パターンは以下のようになる。第2セクタの第1領域R1における駆動パターンのモードAでは駆動状態MML,MMM,MHM,HHMがこの順で出現し、モードBではHHM,MHM,MMM,MMLがこの順で出現し、モードCでは駆動状態LML,MML,MMM,MHMがこの順で出現し、モードDでは駆動状態MHM,MMM,MML,LMLがこの順で出現する。第2セクタの第2領域R2における駆動パターンのモードAでは駆動状態MML,MHL,MHM,HHMがこの順で出現し、モードBでは駆動状態HHM,MHM,MHL,MMLがこの順で出現し、モードCでは駆動状態LML,MML,MHL,MHMがこの順で出現し、モードDでは駆動状態MHM,MHL,MML,LMLがこの順で出現する。
【0054】
第2セクタの第3領域R3における駆動パターンのモードAでは駆動状態LML,LHL,MHL,MHMがこの順で出現し、モードBでは駆動状態MHM,MHL,LHL,LMLがこの順で出現し、モードCはモードAと同じであり、モードDはモードBと同じである。第2セクタの第4領域R4における駆動パターンのモードAでは駆動状態MML,MHL,HHL,HHMがこの順で出現し、モードBでは駆動状態HHM,HHL,MHL,MMLがこの順で出現し、モードCはモードAと同じであり、モードDはモードBと同じである。
【0055】
変調部55は、指令電圧ベクトルVαβと各巻線11U~11Wに流れる電流とに基づいて、選択した駆動パターンに含まれる各モードのうち、特定相に流れる電流である特定相電流による第1コンデンサ21の蓄積電荷の変化量及び第2コンデンサ22の蓄積電荷の変化量が大きい方のモードを選択する。ここで、特定相は、各相のうち、各特定駆動状態における相電圧のレベルが他の相と異なる相である。特定相電流は、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態とされる期間において、特定相に流れる電流である。変調部55は、各巻線11U~11Wに流れる電流として、相電流センサ43の検出値を用いることが可能である。
【0056】
詳しくは、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在すると特定された場合を例に説明する。各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間の特定相はU相であり、特定相電流は各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間に流れるU相電流である。また、各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間の特定相はW相であり、特定相電流は各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間に流れるW相電流である。各特定駆動状態HMM,MLLはモードA,Bで用いられる駆動状態であり、各特定駆動状態HHM,MMLはモードC,Dで用いられる駆動状態である。つまり、第1セクタの第1領域R1における駆動パターンには、同一の指令電圧ベクトルVαβに対して選択可能な2つのモード(例えば、モードA,CやモードB,D)であって、各特定駆動状態とされる期間の特定相が互いに異なる各モードが含まれている。この場合、変調部55は、各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間にU相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量と、各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間にW相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量とを比較する。
【0057】
各特定駆動状態HMM,MLLとされる期間にU相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量は、例えば|IU|×ta×TSである。各特定駆動状態HHM,MMLとされる期間にW相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量は、例えば|IW|×tb×TSである。ここで、|IU|,|IW|はU,W相電流の大きさを示し、TSは1スイッチング周期の長さを示す。先の図4で説明したように、係数ta,tbは、電圧ベクトルV1,V2を定数倍するものである。この場合、ta×TSは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態MLL,HMMとされる合計期間に相当し、tb×TSは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態MML,HHMとされる合計期間に相当する。
【0058】
変調部55は、|IU|×ta×TS>|IW|×tb×TSであると判定した場合、駆動パターンのモードA,Bのうちいずれかを選択する。一方、変調部55は、|IU|×ta×TS≦|IW|×tb×TSであると判定した場合、駆動パターンのモードC,Dのうちいずれかを選択する。
【0059】
なお、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第2領域R2に存在すると特定した場合も、特定相電流による各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量の比較に応じて、駆動パターンのモードA,B又はモードC,Dを選択可能である。変調部55は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第3,第4領域R3,R4に存在すると特定した場合、駆動パターンのモードA,CやモードB,Dは同じであるため、上述した処理を行わなくてもよい。
【0060】
上述した各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動パターンのモード選択処理は、指令電圧ベクトルVαβが第2~第6セクタに存在する場合にも適用可能である。
【0061】
具体的には、指令電圧ベクトルVαβが第4セクタに存在する場合、駆動パターンのモード選択は以下のように行われる。各特定駆動状態LMM,MHHとされる期間の特定相はU相であり、特定相電流は各特定駆動状態LMM,MHHとされる期間に流れるU相電流である。また、各特定駆動状態LLM,MMHとされる期間の特定相はW相であり、特定相電流は各特定駆動状態LLM,MMHとされる期間に流れるW相電流である。この場合、変調部55は、各特定駆動状態LMM,MHHとされる期間にU相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量と、各特定駆動状態LLM,MMHとされる期間にW相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量とを比較する。変調部55は、その比較結果に応じて、駆動パターンのモードを選択する。具体的には、変調部55は、U相側の特定駆動状態LMM,MHHと、W相側の特定駆動状態LLM,MMHとのいずれを1スイッチング周期内に出現させるかを選択する。
【0062】
指令電圧ベクトルVαβが第2セクタ又は第5セクタに存在する場合、駆動パターンのモード選択は以下のように行われる。各特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHとされる期間の特定相はV相であり、特定相電流は各特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHとされる期間に流れるV相電流である。この場合、変調部55は、各特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHとされる期間にV相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量と、各特定駆動状態MML,HHM又はLLM,MMHとされる期間にW相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量とを比較する。変調部55は、その比較結果に応じて、駆動パターンのモードを選択する。具体的には、変調部55は、V相側の特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHと、W相側の特定駆動状態MML,HHM又はLLM,MMHとのいずれを1スイッチング周期内に出現させるかを選択する。
【0063】
指令電圧ベクトルVαβが第3セクタ又は第6セクタに存在する場合、駆動パターンのモード選択は以下のように行われる。変調部55は、各特定駆動状態LMM,MHH又はMLL,HMMとされる期間にU相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量と、各特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHとされる期間にV相電流が流れることにより生じる各コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量とを比較する。変調部55は、その比較結果に応じて、駆動パターンのモードを選択する。具体的には、変調部55は、U相側の各特定駆動状態LMM,MHH又はMLL,HMMと、V相側の各特定駆動状態LML,MHM又はMLM,HMHとのいずれを1スイッチング周期内に出現させるかを選択する。
【0064】
変調部55は、調整係数kに基づいて、1スイッチング周期における駆動パターンに含まれる2つの異なる特定駆動状態の出現期間の合計に対する、各特定駆動状態の出現期間の割合を調整する。ここで、変調部55は、指令電圧ベクトルVαβ及び各コンデンサ21,22の電圧に基づいて、調整係数kの値を調整する。変調部55は、第1コンデンサ21の電圧として、第1電圧センサ41の検出値を用いることが可能であり、第2コンデンサ22の電圧として、第2電圧センサ42の検出値を用いることが可能である。
【0065】
具体的には、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在すると特定し、かつ駆動パターンのモードAで各スイッチSUH~SWL,QU~QWを駆動する場合を例に説明する。この場合、変調部55は、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが特定駆動状態HMMとなる期間を(1-k)×ta×TSとし、特定駆動状態MLLとなる期間をk×ta×TSとすると共に、調整係数k(0≦k≦1)の値を調整する。なお、ta×TSは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが各特定駆動状態MLL,HMMとされる期間の合計期間である。
【0066】
本実施形態では、1スイッチング周期での各コンデンサ21,22の電圧変動振幅ΔVが低減されるように、調整係数kの値が調整される。例えば、1スイッチング周期での各コンデンサ21,22の電圧変動振幅ΔVは、下式(e1)で表される。
【0067】
【数1】
ここで、cは、第1,第2コンデンサ21,22の静電容量であり、Qnpは、第1コンデンサ21に蓄積された電荷量と第2コンデンサ22に蓄積された電荷量との差に相当し、tb×TSは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MMLとされる期間に相当する。Iaは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MLL又はHMMとされる期間において中性点Oに流れる電流であり、ここではIa=IUである。U相電流IUの符号は、中性点OからU相巻線11Uへと電流が流れる方向を正としている。Ibは、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MMLとされる期間において中性点Oに流れる電流であり、ここではIb=-IWである。W相電流IWの符号は、中性点OからW相巻線11Wへと電流が流れる方向を正としている。第1,第2コンデンサ21,22に蓄積された電荷量の差Qnpとしては、第1,第2電圧センサ41,42の検出値に基づいて算出されたものを用いることが可能である。
【0068】
例えば、変調部55は、1スイッチング周期での各コンデンサ21,22の電圧変動振幅ΔVが0となるように調整係数kを調整する。なお、上式(e1)においてΔV=0とすると、調整係数kは下式(e2)で表される。
【0069】
【数2】
また、例えば、変調部55は、1スイッチング周期での各コンデンサ21,22の電圧変動振幅ΔVが0となるように調整係数kを調整できない場合であっても、調整係数kを調整可能な範囲でΔVが最小となるように、調整係数kを調整することもできる。
【0070】
なお、上述した調整係数kによる調整処理は、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在する場合に限らず、指令電圧ベクトルVαβが第2~第6セクタの第1領域R1に存在する場合にも適用可能である。また、指令電圧ベクトルVαβが第1~第6セクタの第2~第4領域R2~R4に存在する場合にも、調整係数kによる調整処理は適用可能である。この場合、指令電圧ベクトルVαβが存在するセクタ及び存在領域に応じて電圧変動振幅ΔVを考慮することにより、1スイッチング周期内に出現する2つの異なる特定駆動状態の出現期間を調整可能である。
【0071】
図8に、制御装置40により実行される制御の処理手順を示す。この制御は所定の周期で繰り返し実行される。
【0072】
ステップS10では、上位の制御装置から入力される指令トルクTrq*、各相巻線11U~11Wに流れる相電流、第1,第2コンデンサ21,22の電圧及び回転電機10の電気角を取得する。本実施形態では、相電流センサ43の検出値を相電流として取得し、第1電圧センサ41の検出値を第1コンデンサ21の電圧として取得し、第2電圧センサ42の検出値を第2コンデンサ22の電圧として取得し、回転角センサ44の検出値を回転電機10の電気角として取得する。
【0073】
ここで、各スイッチSUH~SWL,QU~QWに電流が流れることに起因して発生する導通損失が、駆動状態HHH,LLLの場合よりも駆動状態MMMの場合に大きくなることがある。本実施形態では、各クランプスイッチQU~QWがオンされる駆動状態MMMでは、6つのIGBTに電流が流れ、各上アームスイッチSUH~SWH又は各下アームスイッチSUL~SWLがオンされる駆動状態HHH,LLLでは、3つのIGBTに電流が流れる。この場合、各スイッチSUH~SWL,QU~QWがゼロ電圧駆動状態のうち駆動状態MMMとされると、電流が流れるスイッチの数が多いことに起因して、スイッチング制御における導通損失が大きくなることが懸念される。
【0074】
そこで、本実施形態では、回転電機10の動作点に応じて、スイッチング制御の方式が切り替えられる。
【0075】
ステップS11では、回転電機10の動作点が、電圧制御範囲E2内であるか否かを判定する。電圧制御範囲E2は、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの導通電流に起因して発生する導通損失が所定の許容値以上となる特定範囲E1の外に設けられた範囲であり、各コンデンサ21,22の電圧変動振幅が比較的大きい範囲である。ステップS11において否定判定した場合、ステップS17に進む。一方、ステップS11において肯定判定した場合、ステップS12に進む。
【0076】
詳しくは、図9に示すように、回転電機10の動作点は、回転電機10のトルク及び回転速度によって定められる。特定範囲E1及び電圧制御範囲E2は、回転電機10の動作点の範囲である。特定範囲E1は、回転電機10のトルクが、第1トルク値Tq1から回転電機10が出力可能な最大トルク値Tqcまでの値であり、かつ、回転電機10の回転速度が、低回転速度側に設けられた下限値N0から下限値N0より高い第1回転速度値N1までの値となる範囲である。下限値N0は、例えば0である。つまり、特定範囲E1は、スイッチング制御の変調率が低変調率となる側に設けられている。特定範囲E1では、スイッチング制御における導通損失が大きくなることがあり、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態MMMの出現期間が短くされることが望ましい。
【0077】
電圧制御範囲E2は、回転電機10のトルクが、第1トルク値Tq1より低い第2トルク値Tq2から最大トルク値Tqcまでの値であり、かつ、回転電機10の回転速度が、第1回転速度値N1から第2回転速度値N2までの値となる範囲である。第2回転速度値N2は、第1回転速度値N1より高く、かつ所定回転速度値Ncよりも低い値である。所定回転速度値Ncは、回転電機10の回転速度が高いほど、回転電機10の出力可能なトルクが低減する領域のうち低回転速度側に設けられる値である。電圧制御範囲E2では、各コンデンサ21,22の電圧変動振幅が比較的大きくなるため、各コンデンサ21,22の電圧の制御性を向上することが望ましい。
【0078】
そこで、本実施形態では、ステップS11において、回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2内であると判定した場合に、以下のステップS12~S16までの処理を行う。なお、回転電機10の動作点を定めるトルクとしては指令トルクを用いることが可能であり、回転速度としては、回転角センサ44の検出値に基づいて算出したものを用いることが可能である。ステップS11の処理が「判定部」に相当する。
【0079】
ステップS12では、指令電圧ベクトルVαβを算出する。ステップS13では、指令電圧ベクトルVαβが存在するセクタ及びセクタ内の存在領域を特定する。ステップS12,13において、制御装置40は、先の図2で説明した指令電流設定部50、2相変換部51、d,q軸偏差算出部52a,52b、d,q軸指令電圧算出部53a,53b、固定座標変換部54、及び変調部55として機能する。
【0080】
ステップS14では、指令電圧ベクトルVαβと相電流とに基づいて、駆動パターンを選択する。指令電圧ベクトルVαβに基づいて、2つの異なる特定駆動状態とされる期間が1スイッチング周期内に生じるように、駆動パターンを選択する。さらに、本実施形態では、1スイッチング周期において最初の駆動状態及び最後の駆動状態が各特定駆動状態であり、かつ今回の1スイッチング周期で最初に出現する特定駆動状態と、前回の1スイッチング周期で最後に出現した特定駆動状態とが同じ駆動状態となるように、駆動パターンを選択する。また、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がゼロ電圧駆動状態とされる期間において駆動状態MMMを選択する。指令電圧ベクトルVαβと相電流とに基づいて、選択した駆動パターンに含まれる2つのモードのうち、特定相電流による第1,第2コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量が大きい方のモードを選択する。なお、ステップS14の処理が「選択部」に相当する。
【0081】
ステップS15では、調整係数kを算出する。本実施形態では、1スイッチング周期での各コンデンサ21,22の電圧変動振幅ΔVが0又は最小となるように調整係数kを調整する。なお、ステップS15の処理が「調整部」に相当する。
【0082】
ステップS16では、ステップS12~S15の処理により定めた各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動パターン及びモードに基づいて、スイッチング制御を行う。
【0083】
ステップS17では、通常制御を行う。通常制御では、ステップS14における駆動パターンの選択処理とは異なり、2つの異なる特定駆動状態とされる期間が1スイッチング周期内に生じるように駆動パターンを選択しなくてよい。また、通常制御では、指令電圧ベクトルVαβが各セクタの第1領域R1に存在すると特定した場合に、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がゼロ電圧駆動状態のうち駆動状態MMMに限定されるように駆動パターンを選択しなくてもよい。この場合、通常制御では、ステップS11において肯定判定した場合に比べて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWがゼロ電圧駆動状態とされる期間において、駆動状態MMMとなる期間を短くするように、スイッチング制御を行う。例えば、通常制御では、1スイッチング周期の間に、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がHHH→HHM→HMM→MMMや、MMM→MML→MLL→LLLの順で移り変わる。なお、ステップS16,S17の処理が「スイッチ制御部」に相当する。
【0084】
図10に、本実施形態に係るスイッチング制御と、比較例のスイッチング制御とを比較した一例を示す。図10において、(a)は相電流の推移を示し、(b)は各コンデンサ21,22の電圧の推移を示す。図10(b)において、実線が第1コンデンサ21の電圧の推移を示し、破線が第2コンデンサ22の電圧の推移を示す。ここでは、比較例として通常制御が行われている。なお、図10(a),(b)において、本実施形態と比較例との各グラフにおける縦軸及び横軸のスケールを一致させている。
【0085】
本実施形態では、ステップS12~S16の処理が実行されることにより、比較例に比べて各コンデンサ21,22の充放電周期(すなわち、変動周期)が短くされる。これにより、本実施形態では、比較例に比べて、各コンデンサ21,22の電圧の変動振幅V0-pが低減される。図10(b)に示すSC1は、比較例での各コンデンサ21,22の充放電周期を示し、SC2は、本実施形態での各コンデンサ21,22の充放電周期を示す。図10に示す一例では、本実施形態に係るスイッチング制御を行うことにより、各コンデンサ21,22の充放電周期を比較例の半分に短縮でき、各コンデンサ21,22の電圧の変動振幅V0-pを比較例の40%に低減できた。
【0086】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0087】
指令電圧ベクトルVαβに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の組み合わせである駆動パターンが選択される。ここで、指令電圧ベクトルVαβに基づいて、2つの異なる特定駆動状態とされる期間が1スイッチング周期内に生じるように、駆動パターンが選択される。そして、選択された駆動パターンに基づいて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWのスイッチング制御が行われる。この場合、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが特定駆動状態のうち一方の駆動状態とされる1スイッチング周期内の期間、及び他方の駆動状態とされる1スイッチング周期内の期間において、各コンデンサ21,22の電圧が互いに逆方向に変化する。そのため、2つの異なる特定駆動状態のうちいずれか一方の駆動状態とされる期間のみが1スイッチング周期内に生じる場合と比較して、各コンデンサ21,22の電圧を短い間隔で変動させることができ、各コンデンサ21,22の電圧の変動周期を短くできる。その結果、各コンデンサ21,22の電圧の制御性を向上することができる。
【0088】
調整係数kに基づいて、1スイッチング周期における駆動パターンに含まれる各特定駆動状態の出現期間の合計に対する、各特定駆動状態の出現期間の割合が調整される。これにより、各コンデンサ21,22の電圧が互いに逆方向に変化する際の変化量が調整可能となる。そのため、各コンデンサ21,22の電圧を的確に制御することができる。その結果、各コンデンサ21,22の電圧の制御性を的確に向上することができる。
【0089】
指令電圧ベクトルVαβと相電流とに基づいて、選択した駆動パターンに含まれる各モードのうち、特定相電流による第1,第2コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量が大きい方のモードが選択される。そして、選択された駆動パターン及びモードに基づいて、スイッチング制御が行われる。この場合、選択した駆動パターンに含まれる各モードのうち、特定相電流による第1,第2コンデンサ21,22の蓄積電荷の変化量が小さい方のモードが選択される場合に比べて、スイッチング周期内での各コンデンサ21,22の電圧の変動量を低減することができる。
【0090】
各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態が3回変化するまでに、1スイッチング周期内における2つの異なる特定駆動状態が現れるように駆動パターンが選択される。この場合、2つの異なる特定駆動状態が現れるまでに、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態が4回以上変化する場合に比べて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態の変化回数当たりにおける各コンデンサ21,22の電圧の変動回数を多くできる。このため、各コンデンサ21,22の電圧の変動周期を的確に短縮することができる。
【0091】
1スイッチング周期において最初及び最後の駆動状態が2つの異なる特定駆動状態であり、かつ今回のスイッチング周期で最初に出現する各スイッチSUH~SWL,QU~QWの特定駆動状態と、前回のスイッチング周期で最後に出現した各スイッチSUH~SWL,QU~QWの特定駆動状態とが同じ駆動状態となるように、駆動パターンが選択される。これにより、連続するスイッチング周期間において不要なスイッチングが行われることを抑制できる。その結果、スイッチング損失を低減するのに好適なスイッチング制御を実現することができる。
【0092】
第1~第6セクタの第1領域R1では、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態をゼロ電圧駆動状態とすることがある。この場合、1スイッチング周期における最初の特定駆動状態から最後の特定駆動状態へと遷移する間に、各スイッチSUH~SWL,QU~QWがゼロ電圧駆動状態とされる。この際に、不要なスイッチングを抑制することが望ましい。
【0093】
この点、第1~第6セクタの第1領域R1における駆動パターンは、ゼロ電圧駆動状態のうち駆動状態MMMが含まれるように定められている。この場合、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がゼロ電圧駆動状態のうち駆動状態HHH,LLLとされる場合に比べて、1スイッチング周期内において不要なスイッチングが行われることを抑制できる。その結果、スイッチング損失を低減するのに好適なスイッチング制御を実現することができる。
【0094】
回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2内であるか否かが判定される。回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2内であると判定された場合、各コンデンサ21,22における電圧の制御性向上を図るスイッチング制御であり、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がゼロ電圧駆動状態のうち駆動状態MMMとされるスイッチング制御が行われる。一方、回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2外であると判定された場合に、通常制御が行われる。
【0095】
通常制御では、ゼロ電圧駆動状態が駆動状態MMMに限定されず、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HHH,LLLとされ得る。この場合、回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2内である場合に比べて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MMMとなる期間を短くできる。これにより、スイッチング制御における導通損失が大きくなり得る状況では、各スイッチSUH~SWL,QU~QWがゼロ電圧駆動状態とされる期間おいて、導通損失の低減が図られる。そのため、スイッチング制御における導通損失が大きくなることを抑制しつつ、各コンデンサ21,22の電圧の制御性を向上することができる。
【0096】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、インバータの構成を変更する。
【0097】
図11に示すように、インバータ30は、中性点クランプ型の3レベルインバータである。インバータ30は、U相第1~第4スイッチSu1~Su4、V相第1~第4スイッチSv1~Sv4、W相第1~第4スイッチSw1~Sw4及び第1~第6クランプダイオードDc1~Dc6を備えている。本実施形態では、各スイッチSu1~Su4,Sv1~Sv4、Sw1~Sw4として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。この場合、スイッチSu1~Su4,Sv1~Sv4、Sw1~Sw4の高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。なお、図11において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0098】
U相第1~第4スイッチSu1~Su4は、エミッタとコレクタとが接続される形で直列接続されている。U相第1スイッチSu1のコレクタには、正極側母線31を介してバッテリ20の正極端子が接続され、U相第4スイッチSu4のエミッタには、負極側母線32を介してバッテリ20の負極端子が接続されている。U相第2スイッチSu2とU相第3スイッチSu3との接続点には、回転電機10のU相の入力端子が接続されている。また、U相第1スイッチSu1とU相第2スイッチSu2との接続点には、第1クランプダイオードDc1のカソードが接続され、第1クランプダイオードDc1のアノードには、第2クランプダイオードDc2のカソードが接続されている。第2クランプダイオードDc2のアノードには、U相第3スイッチSu3とU相第4スイッチSu4との接続点が接続されている。なお、U相の各スイッチSu1,Su2,Su3,Su4には、フリーホイールダイオードDu1,Du2,Du3,Du4が逆並列に接続されている。
【0099】
V相第1~第4スイッチSv1~Sv4は、エミッタとコレクタとが接続される形で直列接続されている。V相第1スイッチSv1のコレクタには、正極側母線31を介してバッテリ20の正極端子が接続され、V相第4スイッチSv4のエミッタには、負極側母線32を介してバッテリ20の負極端子が接続されている。V相第2スイッチSv2とV相第3スイッチSv3との接続点には、回転電機10のV相の入力端子が接続されている。また、V相第1スイッチSv1とV相第2スイッチSv2との接続点には、第3クランプダイオードDc3のカソードが接続され、第3クランプダイオードDc3のアノードには、第4クランプダイオードDc4のカソードが接続されている。第4クランプダイオードDc4のアノードには、V相第3スイッチSv3とV相第4スイッチSv4との接続点が接続されている。なお、V相の各スイッチSv1,Sv2,Sv3,Sv4には、フリーホイールダイオードDv1,Dv2,Dv3,Dv4が逆並列に接続されている。
【0100】
W相第1~第4スイッチSw1~Sw4は、エミッタとコレクタとが接続される形で直列接続されている。W相第1スイッチSw1のコレクタには、正極側母線31を介してバッテリ20の正極端子が接続され、W相第4スイッチSw4のエミッタには、負極側母線32を介してバッテリ20の負極端子が接続されている。W相第2スイッチSw2とW相第3スイッチSw3との接続点には、回転電機10のW相の入力端子が接続されている。また、W相第1スイッチSw1とW相第2スイッチSw2との接続点には、第5クランプダイオードDc5のカソードが接続され、第5クランプダイオードDc5のアノードには、第6クランプダイオードDc6のカソードが接続されている。第6クランプダイオードDc6のアノードには、W相第3スイッチSw3とW相第4スイッチSw4との接続点が接続されている。なお、W相の各スイッチSw1,Sw2,Sw3,Sw4には、フリーホイールダイオードDw1,Dw2,Dw3,Dw4が逆並列に接続されている。
【0101】
第1クランプダイオードDc1及び第2クランプダイオードDc2の接続点、第3クランプダイオードDc3及び第4クランプダイオードDc4の接続点、並びに第5クランプダイオードDc5及び第6クランプダイオードDc6の接続点には、中性点Oが接続されている。
【0102】
中性点クランプ型のインバータ30では、各スイッチSu1~Sw4の駆動状態が以下のように定められている。レベルHの相電圧は、対象となる相において、第1,第2スイッチSu1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2がオンされると共に、第3,第4スイッチSu3,Su4,Sv3,Sv4,Sw3,Sw4がオフされることにより出力される。レベルMの相電圧は、対象となる相において、第2,第3スイッチSu2,Su3,Sv2,Sv3,Sw2,Sw3がオンされると共に、第1,第4スイッチSu1,Su4,Sv1,Sv4,Sw1,Sw4がオフされることにより出力される。レベルLの相電圧は、対象となる相において、第3,第4スイッチSu3,Su4,Sv3,Sv4,Sw3,Sw4がオンされると共に、第1,第2スイッチSu1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2がオフされることにより出力される。
【0103】
例えば、各スイッチSu1~Sw4が駆動状態HMLとされる期間では、U相第1,第2スイッチSu1,Su2、V相第2,第3スイッチSv2,Sv3及びW相第3,第4スイッチSw3,Sw4がオンされると共に、U相第3,第4スイッチSu3,Su4、V相第1,第4スイッチSv1,Sv4及びW相第1,第2スイッチSw1,Sw2がオフされる。
【0104】
上述した中性点クランプ型のインバータ30であっても、先の図8に示した各ステップS10~S17の処理が、制御装置40により実行可能である。
【0105】
なお、中性点クランプ型のインバータ30では、各スイッチSu1~Sw4が駆動状態MMMとなる場合に、6つのIGBGがオン状態とされると共に、6つのクランプダイオードが導通状態とされる。各スイッチSu1~Sw4が駆動状態HHH,LLLとなる場合に、6つのIGBTがオン状態とされる。この場合、クランプダイオードの導通損失によっては、本実施形態においても、ゼロ電圧駆動状態とされる期間において各スイッチSu1~Sw4が駆動状態MMMとされることに起因して、スイッチング制御における導通損失が大きくなる可能性が生じる。そのため、先の図8のステップS11において、回転電機10の駆動状態に基づいて、スイッチング制御の方式を切り替えることにより、スイッチング制御における導通損失が大きくなることを抑制しつつ、各コンデンサ21,22の電圧の制御性を向上することができる。
【0106】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0107】
・変調部55は、調整係数kに代えて、第1コンデンサ21の電圧と第2コンデンサ22の電圧との少なくともいずれかに基づいて、駆動パターンに含まれる各特定駆動状態の出現期間の合計に対する、各特定駆動状態の出現期間の割合を調整してもよい。例えば、指令電圧ベクトルVαβが第1セクタの第1領域R1に存在すると特定され、かつ駆動パターンのモードAで各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動される場合では、変調部55は、検出された第1コンデンサ21の電圧が高いほど、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態HMMとなる期間を長くすると共に、駆動状態MLLとなる期間を短くするとよい。また、例えば、変調部55は、検出された第2コンデンサ22の電圧が高いほど、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MLLとなる期間を長くすると共に、駆動状態HMMとなる期間を短くするとよい。
【0108】
本実施形態でも、2つの異なる特定駆動状態で各スイッチSUH~SWL,QU~QWを駆動する期間の割合が調整可能であり、各コンデンサ21,22の電圧を的確に制御することができる。
【0109】
・先の図8のステップS17において、通常制御の駆動パターンに代えて、ステップS14で説明した駆動パターンを選択することとしてもよい。ただし、本実施形態のステップS17では、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態がゼロ電圧駆動状態とされる期間において駆動状態HHH又はLLLとなるように、駆動パターンを選択する。これにより、ステップS14で説明した駆動パターンが用いられる場合に比べて、各スイッチSUH~SWL,QU~QWが駆動状態MMMとなる期間を短くできる。
【0110】
・先の図8のステップS11において、回転電機10の動作点が電圧制御範囲E2内であるか否かを判定することに代えて、特定範囲E1内であるか否かを判定してもよい。この場合、ステップS11において否定判定した場合、ステップS12に進む。一方、ステップS11において肯定判定した場合、ステップS17に進む。
【0111】
・先の図8のステップS11,S17の処理を行わなくてもよい。すなわち、回転電機10の動作点に応じて、スイッチング制御の方式が切り替えられることなく、ステップS12~S16の処理が行われてもよい。
【0112】
・インバータを構成する半導体スイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、NチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。また、各スイッチは、対応するボディダイオードを有する。
【0113】
・インバータに接続される蓄電部は、コンデンサに限らず、充放電可能な蓄電池であってもよい。
【0114】
・回転電機としては、各相の巻線が星形結線されるものに限らず、Δ結線されるものであってもよい。
【0115】
・インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、車両に限られず、例えば航空機又は船舶等の移動体であってもよい。移動体が航空機の場合、回転電機は航空機の飛行動力源となり、移動体が船舶の場合、回転電機は船舶の航行動力源となる。また、インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、移動体に限られない。
【0116】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0117】
・以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
直列接続された第1蓄電部(21)及び第2蓄電部(22)と、
3相分の巻線(11U~11W)を有する回転電機(10)と、
前記回転電機における各相の前記巻線を、前記第1蓄電部の正極側、前記第1蓄電部の負極側と前記第2蓄電部の正極側との間の中性点、及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかに接続する3相分のスイッチ(SUH~SWL,QU~QW,Su1~Sw4)を有する3レベルインバータ(30)と、を備えるシステムに適用される3レベルインバータの制御装置(40)において、
前記回転電機の制御量を指令値に制御するための指令電圧に基づいて、1スイッチング周期における各相の前記スイッチの駆動状態の組み合わせである駆動パターンを選択する選択部と、
選択された前記駆動パターンに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、を備え、
2つの異なる前記駆動状態であって、前記巻線の3つの線間電圧が同等となり、かつ前記中性点に流れる電流の向きが互いに逆向きとなる前記各駆動状態を特定駆動状態とし、
前記選択部は、前記指令電圧に基づいて、前記各特定駆動状態とされる期間が前記1スイッチング周期内に生じるように前記駆動パターンを選択する、3レベルインバータの制御装置。
[構成2]
前記第1蓄電部の電圧と前記第2蓄電部の電圧との少なくともいずれかに基づいて、前記1スイッチング周期における前記駆動パターンに含まれる前記各特定駆動状態の出現期間の合計に対する、前記各特定駆動状態の出現期間の割合を調整する調整部を備える、構成1に記載の3レベルインバータの制御装置。
[構成3]
各相のうち、前記各特定駆動状態における前記巻線と前記第1蓄電部の正極側、前記中性点及び前記第2蓄電部の負極側のうちいずれかとの接続箇所が他の相と異なる相を特定相とし、
前記駆動パターンには、同一の前記指令電圧に対して選択可能な2つのモードであって、前記各特定駆動状態とされる期間の前記特定相が互いに異なる各モードが含まれており、
前記各特定駆動状態とされる期間において前記特定相に流れる電流を特定相電流とし、
前記選択部は、前記指令電圧と各相の前記巻線に流れる電流とに基づいて、選択した前記駆動パターンに含まれる前記各モードのうち、前記特定相電流による前記第1蓄電部の蓄積電荷の変化量及び前記第2蓄電部の蓄積電荷の変化量が大きい方のモードを選択する、構成1又は構成2に記載の3レベルインバータの制御装置。
[構成4]
前記選択部は、前記駆動状態が3回変化するまでに、前記各特定駆動状態が現れるように前記駆動パターンを選択する、構成1~3のいずれか1つに記載の3レベルインバータの制御装置。
[構成5]
前記選択部は、前記1スイッチング周期において最初の前記駆動状態及び最後の前記駆動状態が前記各特定駆動状態であり、かつ今回の前記1スイッチング周期で最初に出現する前記特定駆動状態と、前回の前記1スイッチング周期で最後に出現した前記特定駆動状態とが同じ前記駆動状態となるように、前記駆動パターンを選択する、構成1~4のいずれか1つに記載の3レベルインバータの制御装置。
[構成6]
各相の前記巻線と、前記第1蓄電部の正極側、前記中性点又は前記第2蓄電部の負極側とが接続される前記駆動状態をゼロ電圧駆動状態とし、
前記選択部は、前記ゼロ電圧駆動状態のうち各相の前記巻線と前記中性点とが接続される前記駆動状態を含むように前記駆動パターンを選択する、構成5に記載の3レベルインバータの制御装置。
[構成7]
前記3レベルインバータは、前記各スイッチに電流が流れることに起因して発生する導通損失が、前記第1蓄電部の正極側又は前記第2蓄電部の負極側と各相の前記巻線とが前記スイッチにより接続される場合よりも、各相の前記巻線と前記中性点とが前記スイッチにより接続される場合に大きいものであり、
前記回転電機の動作点が、前記スイッチに電流が流れることに起因して発生する導通損失が許容値以上となる特定範囲内であるか否かを判定する判定部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記特定範囲内であると判定された場合に、前記特定範囲外であると判定された場合に比べて、前記スイッチが前記ゼロ電圧駆動状態とされる期間において、各相の前記巻線と前記中性点とが接続される期間を短くするように、前記スイッチング制御を行う、構成6に記載の3レベルインバータの制御装置。
【符号の説明】
【0118】
10…回転電機、11U,11V,11W…U,V,W相巻線、21,22…第1,第2コンデンサ、30…インバータ、40…制御装置。
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