IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特開-インジェクタ 図1
  • 特開-インジェクタ 図2
  • 特開-インジェクタ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134575
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】インジェクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20240927BHJP
   F02M 53/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F02M51/06 L
F02M53/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044832
(22)【出願日】2023-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 岳雄
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066BA32
3G066CC11
(57)【要約】
【課題】 インジェクタにおけるデポジットの生成を抑制する。
【解決手段】 ノズルボディ43に形成された燃料噴射孔43bを開閉するノズルニードル44と、燃料噴射孔43bを閉鎖する方向へノズルニードル44を押圧する圧力制御室68を備えたインジェクタボディ31と、を備えたインジェクタ10であって、ノズルニードル44は、ノズルボディ43の燃料溜まり室43dの燃料圧力により圧力制御室68側へ押圧される受圧部44aを備え、ノズルボディ43は、燃料溜まり室43dへ燃料を供給する燃料供給路41と、燃料溜まり室43dから燃料を排出する燃料排出路42とを備え、インジェクタボディ31は、インレットコネクタ65と燃料供給路41とを連通する上流側燃料通路32と、燃料排出路42と圧力制御室68とを連通する下流側燃料通路33と、を備え、燃料は、燃料溜まり室43dを経由して圧力制御室68内へ流入する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する燃料噴射孔(43b)が形成されたノズルボディ(43)と、
前記燃料噴射孔(43b)を開閉するノズルニードル(44)と、
流入する燃料の圧力により、前記燃料噴射孔(43b)を閉鎖する方向へ前記ノズルニードル(44)を押圧する圧力制御室(68)を内部に備えたインジェクタボディ(31)と、
通電により開閉用オリフィス(67c)の開閉を制御する電磁アクチュエータ(50)と、を備え、
前記電磁アクチュエータ(50)による前記開閉用オリフィス(67c)の開放時に前記圧力制御室(68)の燃料を排出することにより燃料を噴射するインジェクタ(10)であって、
前記ノズルニードル(44)は、前記ノズルボディ(43)の内部に形成された燃料溜まり室(43d)の燃料の圧力により前記圧力制御室(68)側へ押圧される受圧部(44a)を備え、
前記ノズルボディ(43)は、前記燃料溜まり室(43d)へ燃料を供給する燃料供給路(41)と、前記燃料溜まり室(43d)から燃料を排出する燃料排出路(42)とを備え、
前記インジェクタボディ(31)は、燃料が流入するインレットコネクタ(65)と前記燃料供給路(41)とを連通する上流側燃料通路(32)と、前記燃料排出路(42)と前記圧力制御室(68)とを連通する下流側燃料通路(33)と、を備え、
前記圧力制御室(68)内の燃料は、前記燃料溜まり室(43d)を経由して前記圧力制御室(68)内へ流入する様構成されてなる、インジェクタ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタを備えた、直噴式の内燃機関が公知である。特に、直噴式の内燃機関がディーゼルエンジンである場合、蓄圧式燃料噴射制御装置が広く用いられている。
【0003】
蓄圧式燃料噴射制御装置は、燃料タンク内の燃料を高圧ポンプへ供給する低圧ポンプと、低圧ポンプから供給された燃料をコモンレールへ圧送する高圧ポンプと、高圧ポンプから圧送された高圧燃料を蓄積するコモンレールと、コモンレールから供給される高圧燃料を内燃機関の燃焼室へ噴射するインジェクタと、各種センサの出力を受信し、蓄圧式燃料噴射制御装置を制御する制御装置と、を備える。
【0004】
蓄圧式燃料噴射制御装置に用いられるインジェクタは、燃料を噴射する燃料噴射孔を備えたノズルと、燃料噴射孔を開閉するためのノズルニードルと、ノズルニードルを燃料噴射孔の閉鎖方向へ押圧する背圧を制御する圧力制御室と、圧力制御室内の燃料の流出を制御する背圧制御部と、を備える。
【0005】
背圧制御部は、圧力制御室に備えられた開閉用オリフィスを閉鎖することにより、ノズルニードルをノズルのシート面に着座させて燃料噴射孔を閉じる。一方、背圧制御部は、開閉用オリフィスを開くことで圧力制御室内の燃料の一部をリークさせることにより、ノズルニードルをノズルのシート面から離座させて、燃料噴射孔から燃料を噴射させる。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-060166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、排気ガス浄化の観点から、蓄圧式燃料噴射制御装置に対し、高い燃料噴射圧力や高精度の噴射性能が求められている。インジェクタからの燃料噴射圧力については、180MPaを超えるシステムが実用化されている。また、高精度の噴射性能を実現するため、インジェクタの可動部、あるいは摺動部に用いられる部品に対しては、高い加工精度が求められている。
【0008】
蓄圧式燃料噴射制御装置に使用されるインジェクタのノズルは、先端が内燃機関の燃焼室へ臨むため、燃焼室からの熱を受ける。このため、ノズル内部の燃料の高温化により、燃料中のデポジット成分がゲル化してデポジットが生成されることがある。ノズル内部に生成されたデポジットが、ノズルニードルが着座するシート面、あるいは、ノズルニードルの先端付近に付着すると、ノズルがシート不良を起こし、燃料噴射精度が悪化する。また、デポジットがノズルニードル摺動部に付着した際は、摺動抵抗の増加により、燃料噴射精度の悪化やノズルの摺動不良に繋がる。
【0009】
また、ノズルに形成された燃料噴射孔から燃料が噴射される際、高圧燃料の持つ圧力エネルギが熱エネルギに変換される。この時、燃料噴射孔、ひいてはノズルが高温化され、燃料中のデポジット成分がゲル化してデポジットが生成されることがある。デポジットにより燃料噴射孔の詰まりが生じた際は、燃料噴射精度が悪化する。
【0010】
さらに近年、バイオ燃料が使用されることがあり、市場において蓄圧式燃料噴射制御装置に使用される燃料が多様化している。燃料の多様化によるデポジット生成への影響も指摘されていた。
【0011】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、インジェクタのノズル内部において、燃料由来のデポジットの生成が抑制されたインジェクタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
燃料を噴射する燃料噴射孔43bが形成されたノズルボディ43と、
前記燃料噴射孔43bを開閉するノズルニードル44と、
流入する燃料の圧力により、前記燃料噴射孔43bを閉鎖する方向へ前記ノズルニードル44を押圧する圧力制御室68を内部に備えたインジェクタボディ31と、
通電により開閉用オリフィス67cの開閉を制御する電磁アクチュエータ50と、を備え、
前記電磁アクチュエータ50による前記開閉用オリフィス67cの開放時に前記圧力制御室68の燃料を排出することにより燃料を噴射するインジェクタ10であって、
前記ノズルニードル44は、前記ノズルボディ43の内部に形成された燃料溜まり室43dの燃料の圧力により前記圧力制御室68側へ押圧される受圧部44aを備え、
前記ノズルボディ43は、前記燃料溜まり室43dへ燃料を供給する燃料供給路41と、前記燃料溜まり室43dから燃料を排出する燃料排出路42とを備え、
前記インジェクタボディ31は、燃料が流入するインレットコネクタ65と前記燃料供給路41とを連通する上流側燃料通路32と、前記燃料排出路42と前記圧力制御室68とを連通する下流側燃料通路33と、を備え、
前記圧力制御室68内の燃料は、前記燃料溜まり室43dを経由して前記圧力制御室68内へ流入する様構成されてなる、インジェクタ10が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインジェクタによれば、インジェクタのノズル内部において、燃料由来のデポジットの生成が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るインジェクタを備えた燃料噴射制御装置の全体構成である。
図2】本発明の実施の形態に係るインジェクタ10の断面図である。
図3】比較例としての従来のインジェクタ100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。尚、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また、それぞれの図中、同じ符号が付されているものは同一の要素を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化または省略されている。また、重複する説明については、適宜簡略化または省略されている。
【0016】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係るインジェクタを備えた燃料噴射制御装置の全体構成を示している。本実施形態に係る燃料噴射制御装置は、蓄圧式燃料噴射制御装置1である。蓄圧式燃料噴射制御装置1は、車両に搭載された図示されない内燃機関の気筒内に燃料を噴射するための装置であって、燃料タンク2と、低圧ポンプ11と、燃料フィルタ12と、高圧ポンプ3と、流量制御弁19と、コモンレール5と、圧力制御弁13と、インジェクタ10と、電子制御ユニット9(ECU)等を主たる要素として備えている。
【0017】
低圧ポンプ11と高圧ポンプ3とは低圧燃料通路21で接続され、高圧ポンプ3とコモンレール5、及びコモンレール5とインジェクタ10はそれぞれ高圧燃料通路23、25で接続されている。また、高圧ポンプ3、コモンレール5、インジェクタ10には、インジェクタ10から噴射されない余剰燃料を燃料タンク2に戻すためのリターン通路27、28、29がそれぞれ接続されている。
【0018】
低圧ポンプ11は、燃料タンク2内の燃料を吸い上げて圧送し、低圧燃料通路21を介して高圧ポンプ3に燃料を供給する。この低圧ポンプ11は燃料タンク2内に備えられたインタンク式の電動ポンプであって、バッテリから供給される電流によって作動する。ただし、低圧ポンプ11は、燃料タンク2の外部に設けられるものであってもよく、また、高圧ポンプ3と一体に設けられるものであってもよい。
【0019】
高圧ポンプ3には、低圧燃料の入り口部分と連通し、高圧ポンプ3の吐出量を調節するための流量制御弁19が備えられている。流量制御弁19には、例えば供給電流値によって燃料の通路を開閉するための弁部材のストローク量が可変とされ、燃料通過路の面積が調節可能な電磁比例式の制御弁が用いられる。
【0020】
高圧ポンプ3は、低圧ポンプ11によって、流量制御弁19を介して導入される燃料を加圧し、高圧燃料通路23を介してコモンレール5に圧送する。
【0021】
コモンレール5は、高圧ポンプ3によって加圧された高圧状態の燃料を蓄積し、高圧燃料通路25を介して接続された各インジェクタ10に燃料を供給する。このコモンレール5には、レール圧センサ15、及び圧力制御弁13が取り付けられている。
【0022】
レール圧センサ15は、コモンレール5内の燃料の圧力(以下、レール圧とも称する)を検出する。レール圧センサ15のセンサ信号は電子制御ユニット9へ送られる。
【0023】
圧力制御弁13は、コモンレール5から燃料タンク2へと戻す高圧の燃料の流量を調節することにより、レール圧を調節するために用いられる。圧力制御弁13には、例えば供給電流値によって燃料の通路を開閉するための弁部材のストローク量が可変とされ、燃料通過路の面積が調節可能な電磁比例式の制御弁が用いられる。また、圧力制御弁13の代わりに、所定の圧力に達すると開弁する、機械式の安全弁を用いてもよい。
【0024】
電子制御ユニット9は、公知の構成のマイクロコンピュータを中心に、RAMやROM等の記憶素子を有し、インジェクタ10を駆動するための駆動回路や、流量制御弁19や圧力制御弁13への通電を行うための通電回路を備える。また、電子制御ユニット9には、レール圧センサ15の検出信号が入力される他、内燃機関の回転数やアクセル開度、燃料温度などの各種の検出信号が、内燃機関の動作制御や燃料噴射制御に供するために入力されるようになっている。
【0025】
本実施形態に係るインジェクタ10の構造について、図2を参照しつつ説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るインジェクタ10の断面図である。
【0026】
インジェクタ10は、インジェクタボディ31と、背圧制御部70と、バルブピストン61と、ノズル40と、ノズルスプリング63と、インレットコネクタ65と、を備える。尚、インジェクタ10の説明に際しては、特に断りがない限り、ノズル40側を下側とし、その反対側、すなわち、背圧制御部70側を上側とする。
【0027】
インジェクタボディ31には、上下方向に貫通する段付きの貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aの中心軸はインジェクタボディ31の中心軸、すなわち、インジェクタ10の中心軸に一致する。貫通孔31aには、バルブピストン61が上下方向に移動自在に収容されている。また、貫通孔31aには、後述のホルダ51、ガイド部材71、バルブボディ67が収容されている。
【0028】
また、インジェクタボディ31には、上流側燃料通路32及び下流側燃料通路33が形成されている。上流側燃料通路32の一端は、インレットコネクタ65を介してコモンレール5に接続されている。上流側燃料通路32の他端は、ノズル40の燃料供給路41に接続されている。また、下流側燃料通路33の一端は、ノズル40の燃料排出路42に接続されている。下流側燃料通路33の他端は、バルブボディ67に形成された、圧力制御室68に接続されている。尚、インレットコネクタ65は、内部に燃料フィルタ66を備える。
【0029】
ノズル40は、ノズルボディ43と、ノズルニードル44と、ノズルナット45とを備える。ノズルボディ43には、上端から下方へ凹む孔43aが形成されている。孔43aには、ノズルニードル44が上下方向に摺動自在に収容されている。ノズルニードル44の上端部は、バルブピストン61の下端部に当接している。また、インジェクタボディ31内の下端部には、ノズルニードル44を下方へ押圧するノズルスプリング63を収容するノズルスプリング室31bが形成されている。ノズルスプリング室31bは、貫通孔31aの一部をなす。
【0030】
孔43aの下端部は、ノズルニードル44のシート部であるノズルシート部43cとなっている。ノズルシート部43cには、孔43aとノズルボディ43の外部とを連通する、燃料噴射孔43bが形成されている。また、孔43aにおける、ノズルシート部43cの上方には、燃料溜まり室43dが形成されている。燃料溜まり室43dは、ノズルニードル44の受圧部44aに対向する位置に形成されている。ノズルニードル44は、受圧部44aに作用する燃料溜まり室43dの燃料圧力により上方へ押圧される。
【0031】
ノズルボディ43には、燃料供給路41及び燃料排出路42が形成されている。燃料供給路41の一端は、インジェクタボディ31に形成された上流側燃料通路32の他端に接続されている。燃料供給路41の他端は、燃料溜まり室43dに接続されている。また、燃料排出路42の一端は燃料溜まり室43dに接続されている。燃料排出路42の他端は、インジェクタボディ31に形成された下流側燃料通路33の一端に接続されている。また、ノズルボディ43は、ノズルナット45により、インジェクタボディ31に固定されている。
【0032】
背圧制御部70は、バルブボディ67と、バルブナット69と、電磁アクチュエータ50と、を備える。
【0033】
バルブボディ67は、インジェクタボディ31内の上部に取り付けられている。バルブボディ67には、下端から上方へ凹む孔67aが形成されている。当該孔67aには、バルブピストン61の上部が上下方向に摺動自在に挿入される。これにより、バルブピストン61の頂部61aよりも上方となる孔67a部分が、圧力制御室68となる。
【0034】
バルブボディ67には、開閉用オリフィス67c及び導入側オリフィス67bが形成されている。開閉用オリフィス67cは、圧力制御室68とバルブボディ67の上側に位置する低圧室34とを連通する通路である。導入側オリフィス67bは、圧力制御室68と、インジェクタボディ31に形成された環状油路31cとを連通する。
【0035】
環状油路31cは、インジェクタボディ31の貫通孔31aの一部をなし、バルブボディ67を取り囲む様形成された環状の油路である。環状油路31cは、バルブボディ67の導入側オリフィス67bに対向する部分に形成され、下流側燃料通路33の他端に連通する。すなわち、下流側燃料通路33の他端は、環状油路31c、導入側オリフィス67bを介して圧力制御室68に連通する。
【0036】
上記構成により、圧力制御室68には、インレットコネクタ65から導入された燃料が、上流側燃料通路32、燃料供給路41、燃料溜まり室43d、燃料排出路42、下流側燃料通路33、環状油路31c、導入側オリフィス67b、をこの順で経由して流入する。
【0037】
開閉用オリフィス67cは、後述する電磁アクチュエータ50によって上下動(往復動)するアーマチュア72により開閉される。開閉用オリフィス67cが開かれた際、圧力制御室68内の燃料は、開閉用オリフィス67cから流出する。開閉用オリフィス67cから流出した燃料は、バルブボディ67の上方に形成された低圧室34に流れ込む。ここで、開閉用オリフィス67cの流路断面積は、導入側オリフィス67bの流路断面積よりも大きくなっている。このため、開閉用オリフィス67cが開かれた際、圧力制御室68内の燃料圧力は、導入側オリフィス67bより上流側の燃料圧力よりも低くなる。
【0038】
開閉用オリフィス67cが閉鎖される際には、アーマチュア72の下端面が、開閉用オリフィス67cの低圧室34側端面に形成されたシート面に着座する。
【0039】
インジェクタボディ31の上端部には、筒状のホルダ51の下端部が挿入されている。ホルダ51は、ナット52を介して、インジェクタボディ31に固定されている。そして、インジェクタボディ31内におけるバルブボディ67よりも上方の空間、及びホルダ51内の空間には、アーマチュア72を上下動させる電磁アクチュエータ50が収容されている。
【0040】
電磁アクチュエータ50は、ガイド部材71と、アーマチュア72と、電磁石80と、バルブスプリング76と、アーマチュアスプリング74と、を備える。
【0041】
ガイド部材71は、アーマチュア72を上下方向に摺動自在に支持するものである。このガイド部材71は、例えば筒状のガイド部71aと、ガイド部71aの外周側に設けられた鍔部71bと、を備える。ガイド部71aには、上下方向に貫通する貫通孔71cが形成されている。この貫通孔71cにアーマチュア72のアーマチュアボルト72bが挿入されることにより、アーマチュア72は、ガイド部71aに摺動自在に支持される。
【0042】
鍔部71bには、低圧室34内の燃料が通過する燃料通路71dが形成されている。低圧室34から燃料通路71dに流れ込んだ燃料は、図示せぬ流路を通って、後述の燃料排出用接続口53に流出することとなる。なお、燃料排出用接続口53は、燃料タンク2に接続されている。このため、燃料排出用接続口53に流出した燃料は、燃料タンク2に戻される。
【0043】
ガイド部材71は、インジェクタボディ31内に収容されている。そして、鍔部71bがバルブボディ67とバルブナット69に挟み込まれる様に配置される。すなわち、ガイド部材71とバルブボディ67とが、バルブナット69によりインジェクタボディ31に固定されている。
【0044】
アーマチュアボルト72bには、ガイド部材71の上面からガイド部材71の外部へ突出した箇所に、アーマチュアプレート72aが取り付けられている。すなわち、アーマチュア72は、アーマチュアプレート72a及びアーマチュアボルト72bを備える。
【0045】
アーマチュアプレート72aには、上下方向に貫通する貫通孔72cが形成されている。この貫通孔72cに、アーマチュアボルト72bが摺動自在に挿入されている。ここで、アーマチュアボルト72bは、アーマチュアプレート72aと共に移動(上下動)するものである。このため、アーマチュアプレート72aは、アーマチュアボルト72bに取り付けられたCリング73と、アーマチュアプレート72aをCリング73へ押しつけるアーマチュアスプリング74とで、挟み込まれている。これにより、アーマチュアボルト72bは、アーマチュアプレート72aと共に移動(上下動)することができる。
【0046】
電磁石80は、磁極81にソレノイドコイル82が設けられた構成となっている。電磁石80は、アーマチュアプレート72aの上方に設けられている。このため、電磁石80は、電磁石80のソレノイドコイル82に通電がなされると、磁力によってアーマチュア72を引き付ける。すなわち、アーマチュア72を上方へ移動させる。
【0047】
アーマチュアボルト72bは、鍔部75を有し、該鍔部75はガイド部材71の下側に位置する。ソレノイドコイル82への通電がなされない状態において、鍔部75とガイド部材71との間に所定の間隙が形成される様、各部の寸法が設定されている。そして、ソレノイドコイル82への通電がなされた時、鍔部75がガイド部材71の下側端面に当接することにより、アーマチュア72の上昇が終了する。尚、ソレノイドコイル82に供給される電力は、通電用接続口83に接続された図示せぬ電力供給源から供給される。
【0048】
電磁石80は、ホルダ51内に収容される。また、ホルダ51内には、電磁石80の上方に、固定部材54も収容される。そして、ホルダ51の上端部をかしめることにより、ホルダ51の内周面に形成された段部と固定部材54とによって電磁石80が挟持され、電磁石80がホルダ51に固定される。また、固定部材54には、上述の燃料排出用接続口53も形成されている。
【0049】
バルブスプリング76は、アーマチュア72をバルブボディ67の開閉用オリフィス67c側へ押圧するものである。バルブスプリング76は、電磁石80を上下に貫通する貫通孔84内に配置されている。また、バルブスプリング76の上端部近傍は、固定部材54の下面部中央に形成されるバルブスプリング用凹部54aに収容されている。そして、バルブスプリング76の上端は、バルブスプリング用凹部54aの底部に当接している。また、バルブスプリング76の下端は、アーマチュアボルト72bの上端部に当接している。これにより、自然長から圧縮された長さに応じた力で、バルブスプリング76は、アーマチュア72を電磁石80から遠ざかる方向へ押す。
【0050】
このように構成されたインジェクタ10では、コモンレール5から供給される高圧燃料は、インレットコネクタ65から流入し、上流側燃料通路32及び燃料供給路41を経由して、燃料溜まり室43d内のノズルニードル44の受圧部44aに作用する。また、燃料溜まり室43d内の高圧燃料は、燃料排出路42、下流側燃料通路33、環状油路31c、導入側オリフィス67bを経由して、圧力制御室68内のバルブピストン61の頂部61aにも作用するようになっている。
【0051】
電磁石80のソレノイドコイル82への通電がなされていない状態においては、アーマチュア72は、バルブスプリング76によって押し下げられる。これにより、アーマチュア72の下端部が、開閉用オリフィス67cの低圧室34側端面に形成されたシート面に着座し、開閉用オリフィス67cを閉塞する。また、電磁石80のソレノイドコイル82への通電がなされている状態においては、アーマチュア72が上方に引付けられ、開閉用オリフィス67cが開かれる。
【0052】
したがって、電磁石80のソレノイドコイル82への通電がなされていない状態では、アーマチュア72によって圧力制御室68が低圧室34側と遮断されている。このため、ノズルニードル44は、バルブピストン61を介して受ける圧力制御室68の背圧と、ノズルスプリング63の押圧力とにより、ノズルボディ43のノズルシート部43cに押しつけられる。これにより、燃料噴射孔43bは閉鎖される。
【0053】
一方、電磁石80のソレノイドコイル82への通電がなされている状態では、圧力制御室68内の燃料圧力が開閉用オリフィス67cを介して低圧室34へ開放される。すなわち、圧力制御室68におけるバルブピストン61の頂部61aに作用していた高圧が開放される。そして、ノズルニードル44の受圧部44aに作用している燃料圧力が、圧力制御室68内の燃料圧力とノズルスプリング63の押圧力との合力を上回ることにより、ノズルニードル44が上昇する。これにより、燃料噴射孔43bが開放されて、該燃料噴射孔43bから燃料噴射が行われる。
【0054】
上記構成により、本発明に係るインジェクタ10においては、インレットコネクタ65から燃料溜まり室43dに到達した燃料のうち、一部は燃料噴射孔43bから噴射され、一部は燃料排出路42、下流側燃料通路33を経由して圧力制御室68へ流入する。圧力制御室68へ流入する燃料は、燃料溜まり室43dを通過する際に、ノズル40周辺の熱の一部を回収するため、ノズル40の高温化が抑制される。ノズル40の高温化が抑制されることにより、ノズルボディ43におけるデポジットの生成が抑制される。
【0055】
図3は、比較例としての従来のインジェクタ100を示す図である。以下、図3を参照しつつ、比較例のインジェクタ100の構成について説明する。比較例のインジェクタ100の説明については、図2に示される本発明に係るインジェクタ10と異なる部分について主に説明し、本発明に係るインジェクタ10と同一の部分については説明を省略する。
【0056】
比較例のインジェクタ100におけるノズルボディ430は、燃料排出路42を備えていない。また、比較例のインジェクタ100におけるインジェクタボディ310は、下流側燃料通路33を備えておらず、代わりに燃料通路300を備える。
【0057】
燃料通路300の一端は、インレットコネクタ65を介してコモンレール5に接続されている。燃料通路300の他端は、一端側から略水平に伸び、環状油路31cに接続されている。
【0058】
すなわち、インジェクタボディ310は、インレットコネクタ65から導入された燃料が流れる経路として、上流側燃料通路32及び燃料通路300を備える。上流側燃料通路32側の経路においては、インレットコネクタ65から導入された燃料は、上流側燃料通路32、ノズルボディ43の燃料供給路41をこの順で経由して燃料溜まり室43dへ流入する。一方、燃料通路300側の経路においては、インレットコネクタ65から導入された燃料は、燃料通路300、環状油路31c、導入側オリフィス67bをこの順で経由して圧力制御室68へ流入する。
【0059】
比較例のインジェクタ100においては、ノズルボディ430を経由して圧力制御室68へ至る燃料の流路が存在しない。よって、ノズル400周辺の熱の一部を回収する構成を有していない。
【0060】
一方、本発明に係るインジェクタ10においては、ノズル40周辺の熱の一部を回収する構成を有するため、ノズル40の高温化が抑制される。ノズル40の高温化が抑制されることにより、ノズルボディ43におけるデポジットの生成が抑制される。
【0061】
以上、説明した様に、本発明によれば、インジェクタのノズル内部において、燃料由来のデポジットの生成が抑制される。
【符号の説明】
【0062】
10:インジェクタ、31:インジェクタボディ、32:上流側燃料通路、33:下流側燃料通路、41:燃料供給路、42:燃料排出路、43:ノズルボディ、43b:燃料噴射孔、43d:燃料溜まり室、44:ノズルニードル、44a:受圧部、50:電磁アクチュエータ、65:インレットコネクタ、68:圧力制御室
図1
図2
図3