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  • 特開-油量検知装置、及び、油量検知方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134578
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】油量検知装置、及び、油量検知方法
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F01M11/12 H
F01M11/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044837
(22)【出願日】2023-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼野 友紀
(72)【発明者】
【氏名】日下 優
(72)【発明者】
【氏名】小澤 智也
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BL07
3G015EA15
3G015FC02
3G015FC04
3G015FC05
3G015FC11
3G015FD01
3G015FD02
3G015FE01
(57)【要約】
【課題】オイルを貯留するオイルパンの形状や、貯留される適正なオイル量、エンジン(オイルポンプ)の停止条件等が異なったとしても、より簡便な変更で対応すること、すなわち、精度よくオイル量を検知してオイル量が適正であるか否かを判定することが可能な油量検知装置を提供する。
【解決手段】油量検知装置1を構成するECU60は、オイルポンプ20の駆動が停止されたときに開閉弁40を開弁し、開閉弁40を開弁した後、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間を計時し、該計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定する一方、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯留するオイルパンと、
前記オイルパンに貯留されているオイルを昇圧して吐出するオイルポンプと、
前記オイルポンプの吐出口に接続され、前記オイルポンプとオイルの供給先とを連通し、前記オイルポンプの駆動時に前記オイルポンプから吐出されるオイルを供給先に送る油路と、
前記油路の下流側に取り付けられ、一端が前記油路に接続されるとともに他端が大気解放され、前記油路と大気との連通を断続する開閉弁と、
前記オイルポンプと前記開閉弁との間に取り付けられ、前記油路内の圧力を検出する油圧センサと、
大気圧を検出する大気圧センサと、
前記開閉弁を開閉するとともに、前記開閉弁を開弁した後の前記油圧センサにより検出される前記油路内の圧力の変化に基づいて、油量が適正であるか否かを判定するコントロールユニットと、を備え、
前記コントロールユニットは、前記オイルポンプの駆動が停止されたときに前記開閉弁を開弁し、前記開閉弁を開弁した後、前記油路内の圧力が、前記大気圧センサにより検出される大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間を計時し、該計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定し、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定することを特徴とする油量検知装置。
【請求項2】
オイルの温度を検出する油温センサをさらに備え、
前記コントロールユニットは、前記油温センサにより検出されたオイルの温度に応じて前記所定時間を補正することを特徴とする請求項1に記載の油量検知装置。
【請求項3】
前記油路は、前記オイルポンプよりも上方に延び、
前記開閉弁は、前記オイルポンプよりも上方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の油量検知装置。
【請求項4】
前記コントロールユニットにより、油量が適正ではないと判定された場合に、警告を発する警告手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の油量検知装置。
【請求項5】
請求項1に記載された油量検知装置を用いた油量検知方法であって、
前記オイルポンプの駆動が停止されたときに、前記開閉弁を開弁する開弁ステップと、
前記開弁ステップにおいて前記開閉弁が開弁された後、前記油圧センサにより検出される前記油路内の圧力が、前記大気圧センサにより検出される大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間を計時する計時ステップと、
前記計時ステップで計時された計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定し、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定する判定ステップと、を備えることを特徴とする油量検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルの量を検知する油量検知装置、及び、該油量検知装置を用いた油量検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン各部(例えばクランクシャフトや動弁系等の摺動部)の潤滑や、冷却、清浄等のためにオイルが用いられている。エンジンを適切に稼働させる(運転する)ためには適正な量のオイルが必要とされる。一方、エンジンの運転に伴い、燃焼や漏れなどによりオイル量が低下する(減少する)ことがある。そのため、オイル量を検知して、オイル量が適正値よりも少なくなると警告を発する装置が多く提案されている。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、エンジンオイルを貯留するオイルパンにおけるエンジンオイルの油面位置を検出するエンジンオイルのレベル検出装置が開示されている。このエンジンオイルのレベル検出装置は、エンジンオイルの油面位置(油面の高さ)が所定レベル(所定高さ)に達したことに応じてオンされるオイルレベルスイッチを備え、エンジンが停止された時点を基準とした基準時点からオイルレベルスイッチがオンするまでの時間を計測し、計測した時間に基づきエンジンオイルの油面位置を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-153627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、エンジンの排気量等によって適正なオイル量は異なる。また、エンジンの型式等によってオイルパンの形状も異なってくる。そのため、エンジン(機種)が異なると、オイルパンの油面高さも異なり得る。また、エンジンに加えて電動モータを駆動力源として備えるHEV(ハイブリッド車)では、エンジンは停止していても車両は走行しているという状態(EV走行状態)があり、そのような状態では、エンジンが停止していても、車両の加減速や旋回などによってオイルが動くことにより、オイルパン内の油面高さが安定しない。そのため、コンベンショナルなエンジン車とHEV(ハイブリッド車)とではオイル量の検知タイミング等を変更する必要も生じ得る。
【0006】
そのため、オイルレベルスイッチを用いて油面の高さを検知する方法では、機種(車種やエンジン型式等)が変ると、オイルレベルスイッチの取り付け位置等をチューニングする必要や、オイル量の検知タイミングを変えるために制御装置のプログラムを書き換える必要等が生じ得る。その結果、仕様の増加や工数の増大を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、オイルを貯留するオイルパンの形状や、貯留される適正なオイル量、エンジン(オイルポンプ)の停止条件等が異なったとしても、より簡便な変更で対応すること、すなわち、精度よくオイル量を検知してオイル量が適正であるか否かを判定することが可能な油量検知装置、及び、油量検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る油量検知装置は、オイルを貯留するオイルパンと、オイルパンに貯留されているオイルを昇圧して吐出するオイルポンプと、オイルポンプの吐出口に接続され、オイルポンプとオイルの供給先とを連通し、オイルポンプの駆動時にオイルポンプから吐出されるオイルを供給先に送る油路と、油路の下流側に配設され、一端が油路に接続されるとともに他端が大気解放され、油路と大気との連通を断続する開閉弁と、オイルポンプと開閉弁との間に取り付けられ、油路内の圧力を検出する油圧センサと、大気圧を検出する大気圧センサと、開閉弁を開閉するとともに、開閉弁を開弁した後の油圧センサにより検出される油路内の圧力の変化に基づいて、油量が適正であるか否かを判定するコントロールユニットとを備え、コントロールユニットが、オイルポンプの駆動が停止されたときに開閉弁を開弁し、開閉弁を開弁した後、油路内の圧力が、大気圧センサにより検出される大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間を計時し、該計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定し、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る油量検知方法は、上記油量検知装置を用いた油量検知方法であって、オイルポンプの駆動が停止されたときに、開閉弁を開弁する開弁ステップと、開弁ステップにおいて開閉弁が開弁された後、油圧センサにより検出される油路内の圧力が、大気圧センサにより検出される大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間を計時する計時ステップと、計時ステップで計時された計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定し、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定する判定ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オイルを貯留するオイルパンの形状や、貯留される適正なオイル量、エンジン(オイルポンプ)の停止条件等が異なったとしても、より簡便な変更で対応すること、すなわち、精度よくオイル量を検知してオイル量が適正であるか否かを判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る油量検知装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る油量検知装置による油量検知(判定)方法を説明するための図である。
図3】実施形態に係る油量検知装置による油量検知(判定)処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
まず、図1を用いて、実施形態に係る油量検知装置1の構成について説明する。図1は、油量検知装置1の構成を示すブロック図である。
【0014】
オイルパン10は、例えば、エンジン(クランクケース)の下部に設けられ、エンジンオイル(以下、単に「オイル」という)を貯留する。ここで、エンジンは、どのような型式のものでもよいが、例えば、水平対向型の4気筒ガソリンエンジンなどである。また、油量検知装置1は、コンベンショナルなエンジン車のエンジンにもHEV(ハイブリッド車)のエンジンにも同様に適用することができる。
【0015】
オイルポンプ20は、例えばエンジンによって駆動され、オイルパン10に貯留されているオイルを、ストレーナ12を介して吸入ポートから吸入し(吸い上げ)、昇圧して吐出ポートから吐出する。なお、オイルポンプ20としては、例えば、トロコイドポンプ(内接ギヤポンプ)や、ベーンポンプなどが好適に用いられる。
【0016】
オイルポンプ20の吐出口には、オイルポンプ20とオイルの供給先とを連通する油路30が接続されている。オイルポンプ20の駆動時にオイルポンプ20から吐出されるオイルは、油路30及び該油路30に介装されたオイルフィルタ50を通してオイルの供給先(例えば、エンジンの動弁機構等の潤滑部等)に送られる。そして、エンジンの潤滑部の潤滑等に用いられたオイルはオイルパン10に滴下して回収され、一時的に貯留される。
【0017】
油路30の下流側(オイルの供給先側、ただし、オイルフィルタ50よりも上流側)には、一端が油路30に接続されるとともに他端が大気解放され、油路30と大気との連通を断続する開閉弁40が取り付けられている。すなわち、開閉弁40が開弁された場合に、油路30が大気開放される。一方、開閉弁40が閉弁された場合には、油路30の大気との連通が遮断される。
【0018】
なお、油路30は、オイルポンプ20よりも上方(鉛直方向で上側)に延びるように設けられている。また、開閉弁40は、オイルポンプ20よりも上方(鉛直方向で上側)に配置されている(取り付けられている)。そのため、オイルポンプ20が停止されたときに油路30内にあるオイルは、自重(重力)により、オイルポンプ20を介してオイルパン10に戻る。
【0019】
開閉弁40としては、例えば、電磁式のオン・オフ弁を用いることができる。また、開閉弁40は、エンジン制御装置(以下、「ECU」という)60により駆動(開弁、閉弁)される。
【0020】
ECU60は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
【0021】
ECU60には、例えば、クランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサ72、エンジンの気筒判別を行うためのカム角センサ、吸入空気量を検出するエアフローメータ、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセル開度センサ、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ、エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサ等の各種センサが接続されている。
【0022】
また、ECU60には、オイルポンプ20と開閉弁40との間(オイルポンプ20近傍が好ましい)に取り付けられ、油路30内の圧力(油圧)を検出する油圧センサ71、大気圧を検出する大気圧センサ73、オイルの温度(油温)を検出する油温センサ74等も接続されている。なお、油温センサ74としては、例えばサーミスターなどが用いられる。
【0023】
また、ECU60は、インジェクタを駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルを開閉する電動モータを駆動するモータドライバ等を備えている。さらに、ECU60は、開閉弁40を開閉するドライバ回路を備えている。
【0024】
ECU60では、カム角センサの出力から気筒が判別され、クランク角センサ72の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU60では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、アクセル開度、スロットル開度、混合気の空燃比、及びエンジンの水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU60は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットルバルブ(電動モータ)等の各種デバイスを制御することによりエンジンを総合的に制御する。
【0025】
特に、ECU60は、オイルを貯留するオイルパン10の形状や、貯留される適正なオイル量、エンジン(オイルポンプ20)の停止条件等が異なったとしても、より簡便な変更で対応すること、すなわち、精度よくオイル量を検知してオイル量が適正であるか否かを判定する機能を有している。ECU60では、EEPROM等に記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、当該機能が実現される。ECU60は、特許請求の範囲に記載のコントロールユニットとして機能する。
【0026】
ECU60は、開閉弁40を開閉(駆動)するとともに、開閉弁40を開弁した後の油圧センサ71により検出される油路30内の圧力の変化に基づいて、油量が適正であるか否かを判定する。
【0027】
より具体的には、ECU60は、エンジンが停止されて、オイルポンプ20の駆動が停止されたときに開閉弁40を開弁する。また、ECU60は、開閉弁40を開弁したときに、開閉弁40を開弁してからの時間を計時するタイマ60aを起動する(計時を開始する)。
【0028】
開閉弁40が開弁されることにより、油路30内の圧力(大気圧+油路内オイル自重)は、時間の経過とともに、徐々に低下して行き、大気圧になる。ここで、大気圧になるまでに要する時間は、オイルパン10内の油量(油面の高さ)により変わる(依存する)。
【0029】
そのため、ECU60は、開閉弁40を開弁した後、油圧センサ71により検出される油路30内の圧力が、大気圧センサ73により検出される大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間(経過時間)を計時する。
【0030】
そして、ECU60は、図2に実線で示されるように、計時時間(経過時間)が所定時間T以上である場合に油量が適正(正常)であると判定する。一方、ECU60は、図2に破線で示されるように、該計時時間(経過時間)が所定時間T未満である場合に油量が適正ではない(油量が低下している)と判定する。なお、図2は、油量検知装置1による油量検知(判定)方法を説明するための図である。図2の横軸は計時時間(sec)であり、縦軸は油路30内の圧力(MPa)である。
【0031】
ところで、オイルの温度(油温)によりオイルの粘度が変化する。すなわち、オイルの温度により油路30内の圧力が大気圧になるまでに要する時間が変化する(影響を受ける)。そのため、ECU60は、より正確に油量を検知(判定)するために、油温センサ74により検出されるオイルの温度に応じてしきい値としての所定時間を補正する。より具体的には、ECU60は、油温が低くなるほど、しきい値としての所定時間を長くする。
【0032】
また、ECU60は、油量が適正ではない(油量が低下している)と判定した場合に、油量が適正ではないことを運転者に知らせる(認知させる)ために、オイル警告灯75(特許請求の範囲に記載の警告手段に相当する)を点灯して警告を発する。
【0033】
次に、図3を参照しつつ、油量検知装置1の動作(油量検知装置1を用いた油量検知方法)について説明する。図3は、油量検知装置1による油量検知(判定)処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてECU60において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0034】
ステップS100では、エンジンが停止され(エンジン回転数がゼロになり)、オイルポンプ20が停止したか否かについての判断が行われる。ここで、エンジンが稼働しており、オイルポンプ20が駆動されている場合には、本処理から一旦抜ける。一方、オイルポンプ20が停止したときには、ステップS102に処理が移行する。
【0035】
ステップS102では、開閉弁40が閉弁され、油路30が大気開放される(開弁ステップ)。続くステップS104では、開閉弁40を開弁してからの経過時間を計時するタイマ60aが起動される(計時が開始される)。
【0036】
続いて、ステップS106では、大気圧センサ73により検出された大気圧が読み込まれる。また、ステップS108では、油温センサ74により検出されたオイルの温度(油温)が読み込まれる。そして、オイルの温度(油温)に応じてしきい値としての所定時間が補正される。すなわち、油温が低くなるほど、しきい値としての所定時間が長くされる。また、ステップS110では、油圧センサ71により検出された油路30内の圧力が読み込まれる。
【0037】
次に、ステップS112では、油路30内の圧力が、大気圧と同じか又は略同じまで低下したか否かについての判断が行われる。ここで、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下していない場合には、上述したステップS110に処理が移行し、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下するまで、ステップS110~S112の処理が繰り返して実行される。一方、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下したときには、ステップS114に処理が移行する(計時ステップ)。
【0038】
ステップS114では、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要した計時時間(経過時間)が所定時間以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、計時時間が所定時間以上である場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、計時時間が所定時間未満であるときには、ステップS118に処理が移行する。
【0039】
ステップS116では、油量が適正(正常)であると判定される。その後、ステップS120に処理が移行する(判定ステップ)。
【0040】
一方、ステップS118では、油量が適正ではない(油量が低下している)と判定される(判定ステップ)。そして、オイル警告灯75が点灯されて警告が発せられる。その後、ステップS120に処理が移行する。
【0041】
ステップS120では、開閉弁40が閉弁され、油路30の大気との連通が遮断される。そして、その後、本処理から抜ける。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、オイルポンプ20の駆動が停止されたときに開閉弁40が開弁され、開閉弁40が開弁された後、油路30内の圧力が大気圧と同じか又は略同じまで低下するのに要する時間が計時され、該計時時間が所定時間以上である場合に油量が適正であると判定される一方、該計時時間が所定時間未満である場合に油量が適正ではないと判定される。
【0043】
すなわち、オイルポンプ20が停止すると、油路30内のオイルは自重(重力)によりオイルパン10に戻る。ここで、油路30内の圧力は「大気圧+油路30内のオイル自重」による圧力であるため、開閉弁40の開弁により、時間が経過するに伴って油路30内の圧力は低下して大気圧になる。ここで、大気圧になるまでに要する時間は、オイルパン10内の油量(油面高さ)により変わる(依存する)。そのため、大気圧になるまでに要する時間から油量を検知することができる。また、オイルパン10の形状や貯留されるオイル量等が異なったとしても、しきい値としての所定時間のデータを変更するだけで対応することができる。
【0044】
その結果、オイルを貯留するオイルパン10の形状や、貯留される適正なオイル量、エンジン(オイルポンプ20)の停止条件等が異なったとしても、より簡便な変更(すなわち所定時間のデータ変更のみ)で対応すること、すなわち、精度よくオイル量を検知してオイル量が適正であるか否かを判定することが可能となる。
【0045】
本実施形態によれば、オイルの温度(油温)に応じて上記所定時間が補正される。ところで、油温によりオイルの粘度が変化する。そのため、油温により油路30内の圧力が大気圧になるまでに要する時間が変化する(影響を受ける)。この場合、油温に応じてしきい値としての所定時間が補正されることで、より正確に油量を検知(判定)することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、油路30が、オイルポンプ20よりも上方(鉛直方向で上側)に延び、開閉弁40が、オイルポンプ20よりも上方(鉛直方向で上側)に配置されている。そのため、油路30内のオイルが重力で自然にオイルパン10に戻る時間からオイル量を検知することができる。
【0047】
本実施形態によれば、油量が適正ではないと判定された場合に、オイル警告灯75が点灯される。そのため、油量が適正ではない(低下している)ことを運転者等に知らせる(認知させる)ことができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、エンジンによって駆動される機械式のオイルポンプを用いたが、このような機械式オイルポンプに代えて、電動モータで駆動される電動オイルポンプを用いてもよい(なお、この場合は電動モータの停止を検知してタイマを始動する)。よって、本発明は、コンベンショナルなエンジン車やHEV(ハイブリッド車)のみならず、例えば、BEV(電気自動車)等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 油量検知装置
10 オイルパン
12 ストレーナ
20 オイルポンプ
30 油路
40 開閉弁
50 オイルフィルタ
60 ECU
60a タイマ
71 油圧センサ
72 クランク角センサ
73 大気圧センサ
74 油温センサ
75 オイル警告灯
図1
図2
図3